インダクタ、半導体集積回路装置、及び、電子回路装置
【課題】 インダクタ、半導体集積回路装置、及び、電子回路装置に関し、強磁性共鳴状態を広帯域化することによって、所望のインダクタンスLを有する微小インダクタを構成する。
【解決手段】 主線状インダクタ要素と、主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とを一部において接合させる。
【解決手段】 主線状インダクタ要素と、主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とを一部において接合させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインダクタ、半導体集積回路装置、及び、電子回路装置に関するものであり、特に、小さなサイズで広い帯域で大きなインダクタンスを持たせるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気回路・電子回路を構築する場合に、基本構成部品となるのは抵抗R、コンデンサC、及び、コイルLである。これらの基本構成部品と能動素子や受動素子を組み合わせることによって、様々な機能を有する半導体集積回路装置をはじめとする電子装置が出来る。また、能動素子或いは受動素子の内部にもこれらの基本構成部品が何らかの形で含まれている。
【0003】
この内、抵抗成分Rは損失を与える成分であるため、高周波領域ではあまり用いられない。このような高周波領域で機能する素子では挿入損失を抑制するためにインピーダンス整合が必要となり、インピーダンス整合は容量成分Cとインダクタンス成分Lとでバランスを取っている。また、発振素子や復調回路は容量成分Cとインダクタンス成分Lとの組合せで構成されることが多い。
【0004】
近年の素子の多機能化や集積度の向上につれて、各構成部品のサイズも小さくなるため、実効的な抵抗成分R、容量成分C、或いは、インダクタンス成分Lも小さくなる。特に、インダクタンス成分Lの低下が著しい。
【0005】
容量成分は半導体技術を用いることによってある程度低下を抑制することは可能であるが、インダクタンス成分Lの低下を抑制することは困難である。したがって、インピーダンス整合における容量成分Cとインダクタンス成分Lとのバランスが崩れるので、様々な機能性素子を作製する際に困難が生じている。
【0006】
加えて、携帯電話などの無線情報通信が飛躍的に広がり、高周波領域で広帯域な通信技術や素子を切望する声が大きい。このような要請に答えるためには、小さなサイズで広帯域において大きなインダクタンス成分Lを出力する材料や素子が必要不可欠である。
【0007】
同じサイズで大きなインダクタンスLを実現するためには、大きな透磁率(絶対値)を有する材料、例えば、強磁性体等の磁性体を用いることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このような磁性細線に外部磁場を印加した状態で高周波信号を入力すると強磁性共鳴が励起され、強磁性共鳴が励起されると磁気モーメントが激しく歳差運動することが知られている(例えば、非特許文献1乃至非特許文献3参照)。強磁性共鳴は強磁性材料内の有効磁場によって決定される。この有効磁場を構成する要因としては、
(1)結晶磁気異方性
(2)反磁場
(3)交換磁場
(4)外部磁場
などが挙げられる。
【0009】
したがって、小さなサイズで大きなインダクタンスLを実現するためには、広帯域で大きな透磁率を有する物質を探索して、その物質によりインダクタを構成すれば良いことになる。
【特許文献1】特開2004−327755号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,Vol.90,182507
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,Vol.90,212505
【非特許文献3】Appl.Phys.Lett.,Vol.91,132509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、強磁性共鳴は、特定の周波数でのみ起こり、広帯域とはいえず、したがって、単に強磁性共鳴を用いても広帯域で大きなインダクタンスLを実現することができないという問題がある。
【0011】
図17は、強磁性共鳴周波数の静外部磁場依存性及び強磁性細線の線幅依存性の説明図であり、強磁性共鳴が特定の周波数でのみ起こっていることが分かる。なお、印加する静外部磁場が大きいほど共鳴周波数は高くなり、また、線幅が細いほど共鳴周波数が高くなる。
【0012】
したがって、本発明は、強磁性共鳴状態を広帯域化することによって、所望のインダクタンスLを有する微小インダクタを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、(1)本発明は、インダクタにおいて、主線状インダクタ要素と、主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とを一部において接合させる。
【0014】
このように、互いに強磁性共鳴特性が異なった線状インダクタ要素を組み合わせることにより、強磁性共鳴状態を広帯域化することができ、それによって、所望のインダクタンスLを有する微小インダクタを構成することが可能になる。なお、「主線状インダクタ要素」とは、電流の流れる方向に沿って延在する線状インダクタ要素を意味する。
【0015】
(2)また、本発明は、上記(1)において、副線状インダクタ要素が複数個であり、複数個の副線状インダクタ要素と主線状インダクタ要素とを一点において交差させる。
【0016】
このように、複数個の副線状インダクタ要素と主線状インダクタ要素とを一点において交差させることによって、より広帯域化が可能になる。但し、交差点は拡大した面状になりやすいので、パターニングの際に注意を要する。
【0017】
(3)また、本発明は、上記(1)または(2)において、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を構成する材料より低抵抗率の導電体層を介して絶縁層上に配置する。
【0018】
一般に、強磁性体は高抵抗であるので高周波領域においては損失を与える成分となるので、低抵抗率の導電体層、例えば、銅層の上に積層することによって、合成抵抗は強磁性体と導電体層との並列接続抵抗となり、低抵抗化が可能になる。
【0019】
(4)また、本発明は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素に対して所定の面内方向に磁場を印加する磁石を設ける。
【0020】
このように、静外部磁場を印加する手段として所定の面内方向に磁場を印加する磁石を用いると、強磁性共鳴周波数の外部磁場方向依存性を利用することができ、同じ形状でも任意の帯域特性を得ることができる。なお、無磁場の場合でも、異なった形状の線状インダクタ要素を組み合わせることによって広帯域化が可能である。
【0021】
(5)また、本発明は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素の主面を硬磁性膜と接するようにして、所定の方向に磁場を印加する。
【0022】
このように、静外部磁場を印加する手段として硬磁性膜、即ち、ハードバイアス膜を用いることによって、磁石を用いた場合に比べて印加磁場の広がりを気にすることなく所定の方向へ磁場を印加することが可能になる。なお、この硬磁性膜は線状インダクタンス要素の下に設けても良いし或いは上に設けても良い。
【0023】
(6)また、本発明は、上記(1)乃至(5)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を、軟磁性材料で構成する。
【0024】
このように、線状インダクタ要素を、結晶磁気異方性が非常に小さな軟磁性材料、典型的にはNiFe合金、即ち、パーマロイを用いることによって、形状磁気異方性によって、即ち、線状インダクタ要素の形状によって強磁性共鳴状態を制御することが容易になり、所望の広帯域特性を得ることが可能になる。
【0025】
(7)また、本発明は、半導体集積回路装置において、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインダクタを回路要素として設ける。
(8)また、本発明は、電子回路装置において、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインダクタを回路要素として設ける。
【0026】
このように、半導体集積回路装置或いは電子回路装置において、上記のインダクタを回路要素として設けることによって、多機能素子や高集積化素子におけるインピーダンス整合をバランス良く実現することが可能になる。なお、「半導体集積回路装置」とはSi超高集積回路装置或いはMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路装置)を含むものであり、また、「電子回路装置」とは強誘電体光デバイスや、発振回路装置或いは復調回路装置等を含むものである。
【発明の効果】
【0027】
開示のインダクタによれば、形状制御、即ち、トポロジカル構造制御によって、インダクタのインダクタンスL及び帯域を制御することが可能となり、それによって、半導体チップ内電子回路や高周波微小電気回路におけるインダクタの設計ルールを大幅に拡張することが可能になる。ひいては、新しい機能性素子や情報通信製品の基盤技術の構築に寄与するところが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ここで、図1乃至図6を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態の微小インダクタの概念的構成図であり、基本的には信号ライン、即ち、主線状インダクタ要素に、強磁性共鳴特性が異なる互いに形状の異なった付随細線、即ち、副線状インダクタ要素を集合させたものである。
【0029】
図1(a)乃至(d)は、主線状インダクタ要素10に対して互いに異なった形状の副線状インダクタ要素111乃至1110を集合させたインダクタを示している。上述のように、パーマロイは結晶磁気異方性が非常に小さいので、図1(b)乃至(d)に示すように形状、即ち、線幅によって強磁性共鳴周波数を制御することができる。また、静外部磁場の方向が一定である場合には、図1(d)に示すように副線状インダクタ要素の交差方向によって強磁性共鳴周波数を制御することができる。
【0030】
このような集合化インンダクタにおいて、静外部磁場を印加した状態で信号ラインに高周波電流を流すと、互いに特定の周波数において強磁性共鳴状態が励起されて直流電圧V(t)〔=I(t)×R(t)〕が発生する(例えば、上述の非特許文献1参照)。したがって、集合化インダクタの強磁性共鳴の帯域特性は、理想的には主線状インダクタ要素と副線状インダクタ要素の強磁性共鳴周波数の重ね合わせ特性として表されることになる。
【0031】
図2は、出力電圧の周波数帯域特性の説明図であり、図における(a)は上述の図1(a)に示したパーマロイによるT字型細線インダクタの周波数帯域特性であり、(b)乃至(d)はそれぞれ、線幅が300nm、650nm、及び、5000nmのパーマロイによる直線型インダクタの周波数帯域特性である。なお、ここでは、500〔Oe〕の静外部磁場を印加した場合の特性を示している。
【0032】
図から明らかなように、直線型インダクタの周波数帯域特性は極めて狭帯域であるのに対して、T字型細線インダクタの周波数帯域特性は広がっているのが分かる。なお、図2の(b)乃至(d)からは、線幅が細いほど周波数が高いことが分かる。
【0033】
このように、形状或いは延在方向の異なる複数の線状インダクタ要素を集合させてインダクタを構成することによって、強磁性共鳴状態の広帯域化が可能となる。また、各線状インダクタ要素のいずれかが設計する素子の稼働する周波数帯域で強磁性共鳴状態となっているため、透磁率が非常に大きく、したがって、大きなインダクタンスを実現することができる。
【0034】
次に、図3乃至図5を参照して、強磁性共鳴状態の線幅依存性、外部磁場強度依存性、及び、外部磁場方向依存性について詳細に検討する。図3(a)は実験試料系の概略的平面図であり、コプレーナ伝送路の信号ライン上に厚さ22nm、幅2μm、長さ100μmのNi81Fe19からなる線状インダクタを設けたものである。また、外部磁場Hextは、線状インダクタの延在方向に対してθの角度で線状インダクタの面内方向に印加する。図3(b)は測定系の回路構成図であり、線状インダクタの両端に発生する直流電圧V0を測定する。
【0035】
また、図3(c)は、測定座標系の説明図であり、角度θで外部磁場Hextが印加された状態で、線状インダクタの内部においてその延在方向に対して角度ψで磁気モーメントm0が歳差運動する。なお、xは信号ライン方向、yは線幅方向、zは膜厚方向を示しており、a,b,cは、磁気モーメントm0を中心にした変換座標系である。
【0036】
この様な系で、磁気モーメントが一様歳差運動をすると仮定すると、共鳴周波数ωk は、下記の式で表される。
ωk2 =γ02×H′c×H′b
H′b=Hextcos(θ−Ψ)+Ms(Ny −Nx)cos2Ψ
H′c=Hextcos(θ−Ψ)+Ms〔Nz−(Nxcos2 Ψ+Nysin2 Ψ)〕
H′eff=Hextsin(θ−Ψ)−〔Ms(Nx−Ny)sin2Ψ〕/2
但し、γ0は磁気回転比であり、H′bはb方向の形状磁気異方性磁場であり、H′cはc方向の形状磁気異方性磁場であり、H′effは有効磁場である。また、Nx,Ny,Nzはそれぞれ、x,y,z方向における反磁場係数を表す。
【0037】
図4は測定結果の説明図である。図4(a)は、θ=30°の場合の強磁性共鳴の発生状況の説明図であり、確かに強磁性共鳴は励起して線状インダクタの両端に直流電圧V0を発生させていることが確認された。また、印加する外部磁場が大きいほど強磁性共鳴が励起される周波数が高くなることが分かる。
【0038】
図4(b)は、強磁性共鳴周波数の外部磁場依存性をグラフ化したものであり、図における実線はθ=Ψの場合の理論曲線である。図から明らかなように、強磁性共鳴周波数は印加する外部磁場が大きいほど高くなっており、また、理論曲線からの乖離も少ない。
【0039】
図4(c)及び図4(d)は、それぞれHext=900〔Oe〕及びHext=30〔Oe〕の場合の直流電圧V0の外部磁場印加角度θ依存性を示す図である。外部磁場が大きな場合には直流電圧V0の外部磁場印加角度θ依存性が明瞭であるが、外部磁場強度小さい場合には外部磁場印加角度θ依存性は明らかではない。
【0040】
図5は、以上の結果から、強磁性共鳴周波数及び直流電圧V0のピークツーピークの値ΔV0の外部磁場印加角度θ依存性を纏めた図である。なお、各図における曲線は理論曲線である。また、○はHext=900〔Oe〕の場合を、△はHext=30〔Oe〕の場合を表している。
【0041】
図5(a)は強磁性共鳴周波数の外部磁場印加角度θ依存性を示す図であり、外部磁場が大きな場合には、理論曲線に沿った明瞭な外部磁場印加角度θ依存性を示しており、θ=0°とθ=90°の場合とで、約4GHzの差があることが分かる。一方、外部磁場が小さな場合には、それほど明瞭な外部磁場印加角度θ依存性を示していない。
【0042】
このことから、印加する外部磁場が形状磁気異方性磁場よりも充分に小さいときには角度依存性を有していないが、印加する外部磁場が形状磁気異方性磁場よりも大きくなると、外部磁場と形状磁気異方性磁場から形成される有効磁場H′effによって強磁性共鳴周波数が角度依存性を有することになることが分かる。
【0043】
図5(b)及び図5(c)は、それぞれHext=900〔Oe〕及びHext=30〔Oe〕の場合のΔV0の外部磁場印加角度θ依存性を示す図であり、いずれの場合にも理論曲線との良好な一致が見られる。
【0044】
以上の結果から、インダクタをT字型或いは十字型のように2つの線状インダクタを集合化したインダクタとすることによって、2つの共鳴周波数を有することができる、また、さらに多くの線状インダクタを集合化することによって、多くの共鳴周波数を有し、その結果、広帯域において強磁性共鳴が励起されることになる。
【0045】
また、図6(a)に示すように、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11を主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11より低抵抗率の導電体層、典型的には、Cu下地層12の上に設けても良い。即ち、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11は抵抗の大きなパーマロイからなるため、損失や信号遅延が大きくなるが、このインダクタに対して低抵抗のCu下地層12を並列接続した構成にすることによって、合成抵抗Rは低抵抗になる。なお、合成抵抗Rは、インダクタの抵抗をRpy、Cu下地層12の抵抗をRCuとすると、
R=(Rpy×RCu)/(Rpy+RCu)
となる。
【0046】
或いは、図6(b)或いは(c)に示すように、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11の下側或いは上側にCoCrPt等のハードバイアス膜13を設けても良い。このハードバイアス膜13の成膜時に所定の方向の磁場を印加しておくことによって、静外部磁場を発生することができる。
【0047】
なお、強磁性体としては、結晶磁気異方性の非常に小さなパーマロイ、即ち、NiFe合金が望ましいが、CoFeやCoNiFe、或いは、CoFeB等の他の軟磁性体を用いても良い。
【実施例1】
【0048】
以上を前提として、次に、本発明の実施例1の微小インダクタを説明する。図7は本発明の実施例1の微小インダクタの説明図であり、図7(a)乃至(d)は4つのタイプの微小インダクタの平面図であり、また、図7(e)は試料測定系の説明図である。
【0049】
図7(a)乃至(d)に示す各試料I乃至Fは、それぞれ線幅5μm、膜厚30nm、長さ200μmのパーマロイからなる線状インダクタ要素を複数本交差させて構成する。試料Hは主線状インダクタ10に対して2本の副インダクタ要素11が45°及び90°で接合し、試料Gは主線状インダクタ10に対して3本の副インダクタ要素11が45°、90°及び135°で接合している。また、試料Fは主線状インダクタ10に対して5本の副インダクタ要素11が順次30°ずれて接合している。また、図7(e)に示すように、測定はコプレーナ伝送路を用いて行った。
【0050】
図8は、強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図であり、ここでは、見やすくするための典型的な試料Iと試料Hのスペクトルを示している。図において矢印で示すように少なくとも3箇所で共鳴が観測できた。約5GHzから各12GHzの広い帯域で直流電流がオフセットを持っていることが分かる。
【0051】
但し、見方を変えると、この帯域でスピン波が励起されていることは間違いないが、大きなインダクタンス成分を有する強磁性共鳴状態ではない可能性がある。そこで、ネットワークアナライザーを用いたインピータス測定を試みた。なお、ここでは共鳴だけに注目しているので、S11パラメータを測定したままで取り出した。
【0052】
図9は、400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図であり、図9(a)は試料Iの周波数依存性であり、図9(b)は試料Hの周波数依存性である。矢印で示すところが外部磁場印加により変化している箇所であり、これが強磁性共鳴に対応する。
【0053】
試料Iの場合には、図9(a)から明らかなように、2つの大きな強磁性共鳴と、8GHz付近にスピン波高次モードに対応する小さな共鳴状態が存在していることが分かる。上述の図5(a)との対比から高周波側のピークが外部磁場と磁気モーメントが平行な状態での強磁性共鳴周波数であり、低周波側のピークが外部磁場と磁気モーメントが垂直な状態での強磁性共鳴周波数であると考えられる。また、試料Hの場合には、図9(b)から明らかなように、2つの強磁性共鳴があるが、低周波側が小さいことが分かる。
【0054】
但し、図9では強磁性共鳴状態の実態が分かりにくいので、Hext=400〔Oe〕におけるS11パラメータとHext=0〔Oe〕におけるS11パラメータの差分δS11を図10に示す。図10の8GHz付近に存在するディップ構造は無磁場状態、即ち、Hext=0〔Oe〕の構造を反映しており、小さな共鳴状態が見えなくなってしまった。
【0055】
しかし、図においてAとBでマークしたように、4つの試料の全てにおいて、2箇所の強磁性共鳴状態が存在していることが確認された。但し、副線状インダクタ要素の数が多い試料F及び試料Gにおいては低周波側の特性が見えにくくなっている。これは、交差点において広い面状領域が形成されて、形状磁気異方性小さくなるためと考えられる。したがって、多数の副線状インダクタ要素を交差させる場合には、線幅をより細くしたり、パターン形成精度を高める必要があり、それによって、多数箇所における強磁性共鳴の励起が可能になる。
【0056】
図11は、インダクタのインダクタンス変化量ΔLの説明図であり、図11(a)はリアクタンスの差分の周波数依存性を示す図であり、また、図11(b)はインピーダンスの差分の周波数依存性を示す図である。図11(a)に示すようにリアクタンスの差分Re(Z400Oe−Z0Oe)においては、S11パラメータと同様にAとBの2箇所のピークが確認された。
【0057】
図11(b)に示すように、ピークAの共鳴(fres≒6.4GHz)におけるインピーダンス変化ΔZimは、
ΔZim≒0.04196×50Ω
である。ここで、キャパシタンス成分を無視すると、
ΔZ=ΔZRe+jΔZIm=ΔR+j2πfΔL
と表される。ここからインダクタンス変化分ΔLを見積もると、
ΔL≒52pH
となり、その分だけ強磁性共鳴によりインダクタンスが増加したことになる。
【0058】
このように、本発明の実施例1においては、主線状インダクタに少なくとも1つの副線状インダクタを交差させることにより、各線状インダクタの形状磁気異方性及び強磁性共鳴の外部磁場印加角度依存性を利用して、小さなサイズのインダクタであっても、複数箇所で強磁性共鳴を発生させ、それによって、広帯域において高い透磁率に起因する大きなインダクタンスを持つようにすることができる。
【実施例2】
【0059】
次に、図12乃至図15を参照して、本発明の実施例2の微小インダクタを説明する。図12は、本発明の実施例2の微小インダクタの説明図であり、図12(a)乃至(d)は4つのタイプの微小インダクタの平面図である。この実施例2においては線幅5μm、膜厚150nm、長さ300μmのパーマロイからなる主線状インダクタ要素に対して異なった交差点で副インダクタ要素を交差・接合させたものである。
【0060】
図12(a)は、主線状インダクタ要素10に対して、直径が16μmの環状副インダクタ要素14を18個接合させたものであり、また、図12(b)は、主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を1個交差させたものである。なお、図12(b)のインダクタは図7(a)の試料Iに似ているが、互いの長さが異なる点で相違している。
【0061】
また、図12(c)は主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を50μmの間隔で2個交差させたものである。また、図12(d)は主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を10μmの間隔で1個交差させるとともに、幅が30μmの副線状インダクタ要素16を50μmの間隔で1個交差させたものである。
【0062】
図13は、400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図であり、少なくとも2か所の強磁性共鳴ピークが見られるものの、形状効果により差異はほとんど見られなかった。これは、各線状インダクタの膜厚が150nmと厚いため、
a.渦電流損失が大きいために、その効果だけが見えているのか、
b.形状磁気異方性よりも外部磁場が強すぎて特性が変わらないのか、或いは、
c.面直方向のスピン波励起モードが支配的になってしまった
のいずれが原因と考えられる。
【0063】
そこで、主線状インダクタ要素のみを用い線幅を変えた場合のS11パラメータを調べて見た。図14は、300〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。図14に示すように、アスペクト比によってスペクトル形状が随分変化することが確認された。特に、高周波側のスペクトル変化が大きいことと、低周波側の共鳴が形状依存性を示さないことから、面直方向のスピン波励起による効果が非常に強いことが推測される。
【0064】
また、図15は、100〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。図に示すように、この場合も面直方向のスピン波励起による効果が強く反映されていると考えられる。
【0065】
したがって、本発明の実施例2においても、各インダクタ要素の膜厚をスキンデプスのオーダーにすることによって、強磁性共鳴状態の広帯域化が可能となる。
【実施例3】
【0066】
次に、図16を参照して、本発明の実施例3の微小インダクタを説明する。図16(a)は試料系の説明図であり、図16(b)の測定結果の説明図である。図16(a)に示すように、本発明の実施例3のインダクタは信号ライン方向で線幅を段階的に変化させたものである。ここでは、膜厚150nmのパーマロイを用いて線幅2μm、長さ50μm細線インダクタ要素21、線幅5μm、長さ50μmの中間インダクタ要素22、及び、線幅20μm、長さ50μmの太線インダクタ要素23を直列接続してインダクタ20を構成した。なお、図における符号24及び25は、それぞれ測定のために用いたコプレーナ伝送路を構成する信号ライン端子とグラウンド線である。また、この実施例3においてはいずれのインダクタ要素も信号ラインと同じ方向であるのでいずれを主線状インダクタ要素として解釈しても良い。
【0067】
図16(b)は、100〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性を示す図であり、ここでは、約5GHzと約7.5GHzにおいて強磁性共鳴のピークが見られる。なお、インダクタ20は3つの線幅の異なるインタクタ要素からなるが、実際には細線インダクタ要素21を信号ライン端子24が覆ってしまっているので、中間インダクタ要素22と太線インダクタ要素23の特性が現れており、細線インダクタ要素21による高周波側のピークが見えていない。
【0068】
しかし、この結果だけからも線幅、したがって、アスクペクト比を変化されることによって、形状磁気異方性の効果が出現して、強磁性共鳴が励起される周波数帯域を広くすることができることが分かる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態及び各実施例を説明してきたが、本発明は、実施の形態及び各実施例に示した条件に限られるものではない。例えば、上記の各実施例においては結晶磁気異方性の小さな磁性体として、パーマロイを用いているが、パーマロイに限られるものではなく、CoFe、CoNiFe、或いは、CoFeB等の他の軟磁性体を用いても良い。
【0070】
また、上記の各実施例においては外部磁場を印加することを前提としているが、図9に示すように、無外部磁場においても強磁性体の内部の固有磁気モーメントの存在により強磁性共鳴が励起されるので、外部磁場は必須ではない。但し、この場合には強磁性共鳴周波数の外部磁場印加角度依存性を利用することはできないので、図1に示すように線幅依存性や膜厚によるアスペクト比依存性を用いる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態の微小インダクタの概念的構成図である。
【図2】出力電圧の周波数帯域特性の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態の実験構成説明図である。
【図4】測定結果の説明図である。
【図5】強磁性共鳴周波数及びΔV0の外部磁場印加角度θ依存性の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例の説明図である。
【図7】本発明の実施例1の微小インダクタの説明図である。
【図8】強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。
【図9】400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図10】S11パラメータの差分δS11の周波数依存性の説明図である。
【図11】インダクタのインダクタンス変化量ΔLの説明図である。
【図12】本発明の実施例2の微小インダクタの説明図である。
【図13】400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図14】300〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。
【図15】100〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図16】本発明の実施例3の微小インダクタの説明図である。
【図17】強磁性共鳴周波数の静外部磁場依存性及び強磁性細線の線幅依存性の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10 主線状インダクタ要素
11 副線状インダクタ要素
12 Cu下地層
13 ハードバイアス膜
14 環状副インダクタ要素
15 副線状インダクタ要素
16 副線状インダクタ要素
20 インダクタ
21 細線インダクタ要素
22 中間インダクタ要素
23 太線インダクタ要素
24 信号ライン端子
25 グラウンド線
【技術分野】
【0001】
本発明はインダクタ、半導体集積回路装置、及び、電子回路装置に関するものであり、特に、小さなサイズで広い帯域で大きなインダクタンスを持たせるための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気回路・電子回路を構築する場合に、基本構成部品となるのは抵抗R、コンデンサC、及び、コイルLである。これらの基本構成部品と能動素子や受動素子を組み合わせることによって、様々な機能を有する半導体集積回路装置をはじめとする電子装置が出来る。また、能動素子或いは受動素子の内部にもこれらの基本構成部品が何らかの形で含まれている。
【0003】
この内、抵抗成分Rは損失を与える成分であるため、高周波領域ではあまり用いられない。このような高周波領域で機能する素子では挿入損失を抑制するためにインピーダンス整合が必要となり、インピーダンス整合は容量成分Cとインダクタンス成分Lとでバランスを取っている。また、発振素子や復調回路は容量成分Cとインダクタンス成分Lとの組合せで構成されることが多い。
【0004】
近年の素子の多機能化や集積度の向上につれて、各構成部品のサイズも小さくなるため、実効的な抵抗成分R、容量成分C、或いは、インダクタンス成分Lも小さくなる。特に、インダクタンス成分Lの低下が著しい。
【0005】
容量成分は半導体技術を用いることによってある程度低下を抑制することは可能であるが、インダクタンス成分Lの低下を抑制することは困難である。したがって、インピーダンス整合における容量成分Cとインダクタンス成分Lとのバランスが崩れるので、様々な機能性素子を作製する際に困難が生じている。
【0006】
加えて、携帯電話などの無線情報通信が飛躍的に広がり、高周波領域で広帯域な通信技術や素子を切望する声が大きい。このような要請に答えるためには、小さなサイズで広帯域において大きなインダクタンス成分Lを出力する材料や素子が必要不可欠である。
【0007】
同じサイズで大きなインダクタンスLを実現するためには、大きな透磁率(絶対値)を有する材料、例えば、強磁性体等の磁性体を用いることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このような磁性細線に外部磁場を印加した状態で高周波信号を入力すると強磁性共鳴が励起され、強磁性共鳴が励起されると磁気モーメントが激しく歳差運動することが知られている(例えば、非特許文献1乃至非特許文献3参照)。強磁性共鳴は強磁性材料内の有効磁場によって決定される。この有効磁場を構成する要因としては、
(1)結晶磁気異方性
(2)反磁場
(3)交換磁場
(4)外部磁場
などが挙げられる。
【0009】
したがって、小さなサイズで大きなインダクタンスLを実現するためには、広帯域で大きな透磁率を有する物質を探索して、その物質によりインダクタを構成すれば良いことになる。
【特許文献1】特開2004−327755号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,Vol.90,182507
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,Vol.90,212505
【非特許文献3】Appl.Phys.Lett.,Vol.91,132509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、強磁性共鳴は、特定の周波数でのみ起こり、広帯域とはいえず、したがって、単に強磁性共鳴を用いても広帯域で大きなインダクタンスLを実現することができないという問題がある。
【0011】
図17は、強磁性共鳴周波数の静外部磁場依存性及び強磁性細線の線幅依存性の説明図であり、強磁性共鳴が特定の周波数でのみ起こっていることが分かる。なお、印加する静外部磁場が大きいほど共鳴周波数は高くなり、また、線幅が細いほど共鳴周波数が高くなる。
【0012】
したがって、本発明は、強磁性共鳴状態を広帯域化することによって、所望のインダクタンスLを有する微小インダクタを構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、(1)本発明は、インダクタにおいて、主線状インダクタ要素と、主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とを一部において接合させる。
【0014】
このように、互いに強磁性共鳴特性が異なった線状インダクタ要素を組み合わせることにより、強磁性共鳴状態を広帯域化することができ、それによって、所望のインダクタンスLを有する微小インダクタを構成することが可能になる。なお、「主線状インダクタ要素」とは、電流の流れる方向に沿って延在する線状インダクタ要素を意味する。
【0015】
(2)また、本発明は、上記(1)において、副線状インダクタ要素が複数個であり、複数個の副線状インダクタ要素と主線状インダクタ要素とを一点において交差させる。
【0016】
このように、複数個の副線状インダクタ要素と主線状インダクタ要素とを一点において交差させることによって、より広帯域化が可能になる。但し、交差点は拡大した面状になりやすいので、パターニングの際に注意を要する。
【0017】
(3)また、本発明は、上記(1)または(2)において、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を構成する材料より低抵抗率の導電体層を介して絶縁層上に配置する。
【0018】
一般に、強磁性体は高抵抗であるので高周波領域においては損失を与える成分となるので、低抵抗率の導電体層、例えば、銅層の上に積層することによって、合成抵抗は強磁性体と導電体層との並列接続抵抗となり、低抵抗化が可能になる。
【0019】
(4)また、本発明は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素に対して所定の面内方向に磁場を印加する磁石を設ける。
【0020】
このように、静外部磁場を印加する手段として所定の面内方向に磁場を印加する磁石を用いると、強磁性共鳴周波数の外部磁場方向依存性を利用することができ、同じ形状でも任意の帯域特性を得ることができる。なお、無磁場の場合でも、異なった形状の線状インダクタ要素を組み合わせることによって広帯域化が可能である。
【0021】
(5)また、本発明は、上記(1)乃至(3)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素の主面を硬磁性膜と接するようにして、所定の方向に磁場を印加する。
【0022】
このように、静外部磁場を印加する手段として硬磁性膜、即ち、ハードバイアス膜を用いることによって、磁石を用いた場合に比べて印加磁場の広がりを気にすることなく所定の方向へ磁場を印加することが可能になる。なお、この硬磁性膜は線状インダクタンス要素の下に設けても良いし或いは上に設けても良い。
【0023】
(6)また、本発明は、上記(1)乃至(5)のいずれかにおいて、主線状インダクタ要素及び副線状インダクタ要素を、軟磁性材料で構成する。
【0024】
このように、線状インダクタ要素を、結晶磁気異方性が非常に小さな軟磁性材料、典型的にはNiFe合金、即ち、パーマロイを用いることによって、形状磁気異方性によって、即ち、線状インダクタ要素の形状によって強磁性共鳴状態を制御することが容易になり、所望の広帯域特性を得ることが可能になる。
【0025】
(7)また、本発明は、半導体集積回路装置において、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインダクタを回路要素として設ける。
(8)また、本発明は、電子回路装置において、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のインダクタを回路要素として設ける。
【0026】
このように、半導体集積回路装置或いは電子回路装置において、上記のインダクタを回路要素として設けることによって、多機能素子や高集積化素子におけるインピーダンス整合をバランス良く実現することが可能になる。なお、「半導体集積回路装置」とはSi超高集積回路装置或いはMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路装置)を含むものであり、また、「電子回路装置」とは強誘電体光デバイスや、発振回路装置或いは復調回路装置等を含むものである。
【発明の効果】
【0027】
開示のインダクタによれば、形状制御、即ち、トポロジカル構造制御によって、インダクタのインダクタンスL及び帯域を制御することが可能となり、それによって、半導体チップ内電子回路や高周波微小電気回路におけるインダクタの設計ルールを大幅に拡張することが可能になる。ひいては、新しい機能性素子や情報通信製品の基盤技術の構築に寄与するところが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
ここで、図1乃至図6を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態の微小インダクタの概念的構成図であり、基本的には信号ライン、即ち、主線状インダクタ要素に、強磁性共鳴特性が異なる互いに形状の異なった付随細線、即ち、副線状インダクタ要素を集合させたものである。
【0029】
図1(a)乃至(d)は、主線状インダクタ要素10に対して互いに異なった形状の副線状インダクタ要素111乃至1110を集合させたインダクタを示している。上述のように、パーマロイは結晶磁気異方性が非常に小さいので、図1(b)乃至(d)に示すように形状、即ち、線幅によって強磁性共鳴周波数を制御することができる。また、静外部磁場の方向が一定である場合には、図1(d)に示すように副線状インダクタ要素の交差方向によって強磁性共鳴周波数を制御することができる。
【0030】
このような集合化インンダクタにおいて、静外部磁場を印加した状態で信号ラインに高周波電流を流すと、互いに特定の周波数において強磁性共鳴状態が励起されて直流電圧V(t)〔=I(t)×R(t)〕が発生する(例えば、上述の非特許文献1参照)。したがって、集合化インダクタの強磁性共鳴の帯域特性は、理想的には主線状インダクタ要素と副線状インダクタ要素の強磁性共鳴周波数の重ね合わせ特性として表されることになる。
【0031】
図2は、出力電圧の周波数帯域特性の説明図であり、図における(a)は上述の図1(a)に示したパーマロイによるT字型細線インダクタの周波数帯域特性であり、(b)乃至(d)はそれぞれ、線幅が300nm、650nm、及び、5000nmのパーマロイによる直線型インダクタの周波数帯域特性である。なお、ここでは、500〔Oe〕の静外部磁場を印加した場合の特性を示している。
【0032】
図から明らかなように、直線型インダクタの周波数帯域特性は極めて狭帯域であるのに対して、T字型細線インダクタの周波数帯域特性は広がっているのが分かる。なお、図2の(b)乃至(d)からは、線幅が細いほど周波数が高いことが分かる。
【0033】
このように、形状或いは延在方向の異なる複数の線状インダクタ要素を集合させてインダクタを構成することによって、強磁性共鳴状態の広帯域化が可能となる。また、各線状インダクタ要素のいずれかが設計する素子の稼働する周波数帯域で強磁性共鳴状態となっているため、透磁率が非常に大きく、したがって、大きなインダクタンスを実現することができる。
【0034】
次に、図3乃至図5を参照して、強磁性共鳴状態の線幅依存性、外部磁場強度依存性、及び、外部磁場方向依存性について詳細に検討する。図3(a)は実験試料系の概略的平面図であり、コプレーナ伝送路の信号ライン上に厚さ22nm、幅2μm、長さ100μmのNi81Fe19からなる線状インダクタを設けたものである。また、外部磁場Hextは、線状インダクタの延在方向に対してθの角度で線状インダクタの面内方向に印加する。図3(b)は測定系の回路構成図であり、線状インダクタの両端に発生する直流電圧V0を測定する。
【0035】
また、図3(c)は、測定座標系の説明図であり、角度θで外部磁場Hextが印加された状態で、線状インダクタの内部においてその延在方向に対して角度ψで磁気モーメントm0が歳差運動する。なお、xは信号ライン方向、yは線幅方向、zは膜厚方向を示しており、a,b,cは、磁気モーメントm0を中心にした変換座標系である。
【0036】
この様な系で、磁気モーメントが一様歳差運動をすると仮定すると、共鳴周波数ωk は、下記の式で表される。
ωk2 =γ02×H′c×H′b
H′b=Hextcos(θ−Ψ)+Ms(Ny −Nx)cos2Ψ
H′c=Hextcos(θ−Ψ)+Ms〔Nz−(Nxcos2 Ψ+Nysin2 Ψ)〕
H′eff=Hextsin(θ−Ψ)−〔Ms(Nx−Ny)sin2Ψ〕/2
但し、γ0は磁気回転比であり、H′bはb方向の形状磁気異方性磁場であり、H′cはc方向の形状磁気異方性磁場であり、H′effは有効磁場である。また、Nx,Ny,Nzはそれぞれ、x,y,z方向における反磁場係数を表す。
【0037】
図4は測定結果の説明図である。図4(a)は、θ=30°の場合の強磁性共鳴の発生状況の説明図であり、確かに強磁性共鳴は励起して線状インダクタの両端に直流電圧V0を発生させていることが確認された。また、印加する外部磁場が大きいほど強磁性共鳴が励起される周波数が高くなることが分かる。
【0038】
図4(b)は、強磁性共鳴周波数の外部磁場依存性をグラフ化したものであり、図における実線はθ=Ψの場合の理論曲線である。図から明らかなように、強磁性共鳴周波数は印加する外部磁場が大きいほど高くなっており、また、理論曲線からの乖離も少ない。
【0039】
図4(c)及び図4(d)は、それぞれHext=900〔Oe〕及びHext=30〔Oe〕の場合の直流電圧V0の外部磁場印加角度θ依存性を示す図である。外部磁場が大きな場合には直流電圧V0の外部磁場印加角度θ依存性が明瞭であるが、外部磁場強度小さい場合には外部磁場印加角度θ依存性は明らかではない。
【0040】
図5は、以上の結果から、強磁性共鳴周波数及び直流電圧V0のピークツーピークの値ΔV0の外部磁場印加角度θ依存性を纏めた図である。なお、各図における曲線は理論曲線である。また、○はHext=900〔Oe〕の場合を、△はHext=30〔Oe〕の場合を表している。
【0041】
図5(a)は強磁性共鳴周波数の外部磁場印加角度θ依存性を示す図であり、外部磁場が大きな場合には、理論曲線に沿った明瞭な外部磁場印加角度θ依存性を示しており、θ=0°とθ=90°の場合とで、約4GHzの差があることが分かる。一方、外部磁場が小さな場合には、それほど明瞭な外部磁場印加角度θ依存性を示していない。
【0042】
このことから、印加する外部磁場が形状磁気異方性磁場よりも充分に小さいときには角度依存性を有していないが、印加する外部磁場が形状磁気異方性磁場よりも大きくなると、外部磁場と形状磁気異方性磁場から形成される有効磁場H′effによって強磁性共鳴周波数が角度依存性を有することになることが分かる。
【0043】
図5(b)及び図5(c)は、それぞれHext=900〔Oe〕及びHext=30〔Oe〕の場合のΔV0の外部磁場印加角度θ依存性を示す図であり、いずれの場合にも理論曲線との良好な一致が見られる。
【0044】
以上の結果から、インダクタをT字型或いは十字型のように2つの線状インダクタを集合化したインダクタとすることによって、2つの共鳴周波数を有することができる、また、さらに多くの線状インダクタを集合化することによって、多くの共鳴周波数を有し、その結果、広帯域において強磁性共鳴が励起されることになる。
【0045】
また、図6(a)に示すように、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11を主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11より低抵抗率の導電体層、典型的には、Cu下地層12の上に設けても良い。即ち、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11は抵抗の大きなパーマロイからなるため、損失や信号遅延が大きくなるが、このインダクタに対して低抵抗のCu下地層12を並列接続した構成にすることによって、合成抵抗Rは低抵抗になる。なお、合成抵抗Rは、インダクタの抵抗をRpy、Cu下地層12の抵抗をRCuとすると、
R=(Rpy×RCu)/(Rpy+RCu)
となる。
【0046】
或いは、図6(b)或いは(c)に示すように、主線状インダクタ要素10及び副線状インダクタ要素11の下側或いは上側にCoCrPt等のハードバイアス膜13を設けても良い。このハードバイアス膜13の成膜時に所定の方向の磁場を印加しておくことによって、静外部磁場を発生することができる。
【0047】
なお、強磁性体としては、結晶磁気異方性の非常に小さなパーマロイ、即ち、NiFe合金が望ましいが、CoFeやCoNiFe、或いは、CoFeB等の他の軟磁性体を用いても良い。
【実施例1】
【0048】
以上を前提として、次に、本発明の実施例1の微小インダクタを説明する。図7は本発明の実施例1の微小インダクタの説明図であり、図7(a)乃至(d)は4つのタイプの微小インダクタの平面図であり、また、図7(e)は試料測定系の説明図である。
【0049】
図7(a)乃至(d)に示す各試料I乃至Fは、それぞれ線幅5μm、膜厚30nm、長さ200μmのパーマロイからなる線状インダクタ要素を複数本交差させて構成する。試料Hは主線状インダクタ10に対して2本の副インダクタ要素11が45°及び90°で接合し、試料Gは主線状インダクタ10に対して3本の副インダクタ要素11が45°、90°及び135°で接合している。また、試料Fは主線状インダクタ10に対して5本の副インダクタ要素11が順次30°ずれて接合している。また、図7(e)に示すように、測定はコプレーナ伝送路を用いて行った。
【0050】
図8は、強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図であり、ここでは、見やすくするための典型的な試料Iと試料Hのスペクトルを示している。図において矢印で示すように少なくとも3箇所で共鳴が観測できた。約5GHzから各12GHzの広い帯域で直流電流がオフセットを持っていることが分かる。
【0051】
但し、見方を変えると、この帯域でスピン波が励起されていることは間違いないが、大きなインダクタンス成分を有する強磁性共鳴状態ではない可能性がある。そこで、ネットワークアナライザーを用いたインピータス測定を試みた。なお、ここでは共鳴だけに注目しているので、S11パラメータを測定したままで取り出した。
【0052】
図9は、400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図であり、図9(a)は試料Iの周波数依存性であり、図9(b)は試料Hの周波数依存性である。矢印で示すところが外部磁場印加により変化している箇所であり、これが強磁性共鳴に対応する。
【0053】
試料Iの場合には、図9(a)から明らかなように、2つの大きな強磁性共鳴と、8GHz付近にスピン波高次モードに対応する小さな共鳴状態が存在していることが分かる。上述の図5(a)との対比から高周波側のピークが外部磁場と磁気モーメントが平行な状態での強磁性共鳴周波数であり、低周波側のピークが外部磁場と磁気モーメントが垂直な状態での強磁性共鳴周波数であると考えられる。また、試料Hの場合には、図9(b)から明らかなように、2つの強磁性共鳴があるが、低周波側が小さいことが分かる。
【0054】
但し、図9では強磁性共鳴状態の実態が分かりにくいので、Hext=400〔Oe〕におけるS11パラメータとHext=0〔Oe〕におけるS11パラメータの差分δS11を図10に示す。図10の8GHz付近に存在するディップ構造は無磁場状態、即ち、Hext=0〔Oe〕の構造を反映しており、小さな共鳴状態が見えなくなってしまった。
【0055】
しかし、図においてAとBでマークしたように、4つの試料の全てにおいて、2箇所の強磁性共鳴状態が存在していることが確認された。但し、副線状インダクタ要素の数が多い試料F及び試料Gにおいては低周波側の特性が見えにくくなっている。これは、交差点において広い面状領域が形成されて、形状磁気異方性小さくなるためと考えられる。したがって、多数の副線状インダクタ要素を交差させる場合には、線幅をより細くしたり、パターン形成精度を高める必要があり、それによって、多数箇所における強磁性共鳴の励起が可能になる。
【0056】
図11は、インダクタのインダクタンス変化量ΔLの説明図であり、図11(a)はリアクタンスの差分の周波数依存性を示す図であり、また、図11(b)はインピーダンスの差分の周波数依存性を示す図である。図11(a)に示すようにリアクタンスの差分Re(Z400Oe−Z0Oe)においては、S11パラメータと同様にAとBの2箇所のピークが確認された。
【0057】
図11(b)に示すように、ピークAの共鳴(fres≒6.4GHz)におけるインピーダンス変化ΔZimは、
ΔZim≒0.04196×50Ω
である。ここで、キャパシタンス成分を無視すると、
ΔZ=ΔZRe+jΔZIm=ΔR+j2πfΔL
と表される。ここからインダクタンス変化分ΔLを見積もると、
ΔL≒52pH
となり、その分だけ強磁性共鳴によりインダクタンスが増加したことになる。
【0058】
このように、本発明の実施例1においては、主線状インダクタに少なくとも1つの副線状インダクタを交差させることにより、各線状インダクタの形状磁気異方性及び強磁性共鳴の外部磁場印加角度依存性を利用して、小さなサイズのインダクタであっても、複数箇所で強磁性共鳴を発生させ、それによって、広帯域において高い透磁率に起因する大きなインダクタンスを持つようにすることができる。
【実施例2】
【0059】
次に、図12乃至図15を参照して、本発明の実施例2の微小インダクタを説明する。図12は、本発明の実施例2の微小インダクタの説明図であり、図12(a)乃至(d)は4つのタイプの微小インダクタの平面図である。この実施例2においては線幅5μm、膜厚150nm、長さ300μmのパーマロイからなる主線状インダクタ要素に対して異なった交差点で副インダクタ要素を交差・接合させたものである。
【0060】
図12(a)は、主線状インダクタ要素10に対して、直径が16μmの環状副インダクタ要素14を18個接合させたものであり、また、図12(b)は、主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を1個交差させたものである。なお、図12(b)のインダクタは図7(a)の試料Iに似ているが、互いの長さが異なる点で相違している。
【0061】
また、図12(c)は主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を50μmの間隔で2個交差させたものである。また、図12(d)は主線状インダクタ要素10に対して、長さが150μmの副線状インダクタ要素15を10μmの間隔で1個交差させるとともに、幅が30μmの副線状インダクタ要素16を50μmの間隔で1個交差させたものである。
【0062】
図13は、400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図であり、少なくとも2か所の強磁性共鳴ピークが見られるものの、形状効果により差異はほとんど見られなかった。これは、各線状インダクタの膜厚が150nmと厚いため、
a.渦電流損失が大きいために、その効果だけが見えているのか、
b.形状磁気異方性よりも外部磁場が強すぎて特性が変わらないのか、或いは、
c.面直方向のスピン波励起モードが支配的になってしまった
のいずれが原因と考えられる。
【0063】
そこで、主線状インダクタ要素のみを用い線幅を変えた場合のS11パラメータを調べて見た。図14は、300〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。図14に示すように、アスペクト比によってスペクトル形状が随分変化することが確認された。特に、高周波側のスペクトル変化が大きいことと、低周波側の共鳴が形状依存性を示さないことから、面直方向のスピン波励起による効果が非常に強いことが推測される。
【0064】
また、図15は、100〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。図に示すように、この場合も面直方向のスピン波励起による効果が強く反映されていると考えられる。
【0065】
したがって、本発明の実施例2においても、各インダクタ要素の膜厚をスキンデプスのオーダーにすることによって、強磁性共鳴状態の広帯域化が可能となる。
【実施例3】
【0066】
次に、図16を参照して、本発明の実施例3の微小インダクタを説明する。図16(a)は試料系の説明図であり、図16(b)の測定結果の説明図である。図16(a)に示すように、本発明の実施例3のインダクタは信号ライン方向で線幅を段階的に変化させたものである。ここでは、膜厚150nmのパーマロイを用いて線幅2μm、長さ50μm細線インダクタ要素21、線幅5μm、長さ50μmの中間インダクタ要素22、及び、線幅20μm、長さ50μmの太線インダクタ要素23を直列接続してインダクタ20を構成した。なお、図における符号24及び25は、それぞれ測定のために用いたコプレーナ伝送路を構成する信号ライン端子とグラウンド線である。また、この実施例3においてはいずれのインダクタ要素も信号ラインと同じ方向であるのでいずれを主線状インダクタ要素として解釈しても良い。
【0067】
図16(b)は、100〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性を示す図であり、ここでは、約5GHzと約7.5GHzにおいて強磁性共鳴のピークが見られる。なお、インダクタ20は3つの線幅の異なるインタクタ要素からなるが、実際には細線インダクタ要素21を信号ライン端子24が覆ってしまっているので、中間インダクタ要素22と太線インダクタ要素23の特性が現れており、細線インダクタ要素21による高周波側のピークが見えていない。
【0068】
しかし、この結果だけからも線幅、したがって、アスクペクト比を変化されることによって、形状磁気異方性の効果が出現して、強磁性共鳴が励起される周波数帯域を広くすることができることが分かる。
【0069】
以上、本発明の実施の形態及び各実施例を説明してきたが、本発明は、実施の形態及び各実施例に示した条件に限られるものではない。例えば、上記の各実施例においては結晶磁気異方性の小さな磁性体として、パーマロイを用いているが、パーマロイに限られるものではなく、CoFe、CoNiFe、或いは、CoFeB等の他の軟磁性体を用いても良い。
【0070】
また、上記の各実施例においては外部磁場を印加することを前提としているが、図9に示すように、無外部磁場においても強磁性体の内部の固有磁気モーメントの存在により強磁性共鳴が励起されるので、外部磁場は必須ではない。但し、この場合には強磁性共鳴周波数の外部磁場印加角度依存性を利用することはできないので、図1に示すように線幅依存性や膜厚によるアスペクト比依存性を用いる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態の微小インダクタの概念的構成図である。
【図2】出力電圧の周波数帯域特性の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態の実験構成説明図である。
【図4】測定結果の説明図である。
【図5】強磁性共鳴周波数及びΔV0の外部磁場印加角度θ依存性の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例の説明図である。
【図7】本発明の実施例1の微小インダクタの説明図である。
【図8】強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。
【図9】400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図10】S11パラメータの差分δS11の周波数依存性の説明図である。
【図11】インダクタのインダクタンス変化量ΔLの説明図である。
【図12】本発明の実施例2の微小インダクタの説明図である。
【図13】400〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図14】300〔Oe〕の外部磁場をθ=30°で印加した場合の強磁性共鳴状態の周波数依存性の説明図である。
【図15】100〔Oe〕の外部磁場をθ=0°で印加した場合のS11パラメータの周波数依存性の説明図である。
【図16】本発明の実施例3の微小インダクタの説明図である。
【図17】強磁性共鳴周波数の静外部磁場依存性及び強磁性細線の線幅依存性の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
10 主線状インダクタ要素
11 副線状インダクタ要素
12 Cu下地層
13 ハードバイアス膜
14 環状副インダクタ要素
15 副線状インダクタ要素
16 副線状インダクタ要素
20 インダクタ
21 細線インダクタ要素
22 中間インダクタ要素
23 太線インダクタ要素
24 信号ライン端子
25 グラウンド線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主線状インダクタ要素と、前記主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とが一部において接合しているインダクタ。
【請求項2】
前記副線状インダクタ要素が複数個であり、前記複数個の副線状インダクタ要素と前記主線状インダクタ要素とが一点において交差している請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素が、前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素を構成する材料より低抵抗率の導電体層を介して絶縁層上に配置されている請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素の主面が、硬磁性膜と接して所定の方向に磁場が印加されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素に対して所定の面内方向に磁場を印加する磁石を備えている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素が軟磁性材料からなる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインダクタを回路要素として設けている半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインダクタを回路要素として設けている電子回路装置。
【請求項1】
主線状インダクタ要素と、前記主線状インダクタ要素と強磁性共鳴特性が異なる少なくとも1つの副線状インダクタ要素とが一部において接合しているインダクタ。
【請求項2】
前記副線状インダクタ要素が複数個であり、前記複数個の副線状インダクタ要素と前記主線状インダクタ要素とが一点において交差している請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素が、前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素を構成する材料より低抵抗率の導電体層を介して絶縁層上に配置されている請求項1または2に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素の主面が、硬磁性膜と接して所定の方向に磁場が印加されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項5】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素に対して所定の面内方向に磁場を印加する磁石を備えている請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項6】
前記主線状インダクタ要素及び前記副線状インダクタ要素が軟磁性材料からなる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインダクタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインダクタを回路要素として設けている半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のインダクタを回路要素として設けている電子回路装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−67845(P2010−67845A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233657(P2008−233657)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、「ナノ磁性体集結群の新奇な磁気特性の究明」委託研究、産業再生法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、「ナノ磁性体集結群の新奇な磁気特性の究明」委託研究、産業再生法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
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