説明

インダクタンス式回転角度検出装置およびその実装方法

【課題】モータ駆動式絞り弁装置などに用いるインダクタンス式非接触回転角度検出装置において、固定側導体および電子回路が取付けられた回路基板を接着剤を用いないで、樹脂カバーに固定する。
【解決手段】回路基板としてのTPS基板と電気導体を圧接(プレスフィット)によって電気的に接続し、回路基板と電気導体を同一の成形樹脂で1つの成型体として構成できるようにした。これにより、新たな金属製導体(ボンディングワイヤー)を用意する必要もなく、溶接や半田付けも不要になった。さらには、TPS基板をカバー樹脂と同材料にて覆う事で、基板をカバーに接着する工程の省略化ができ、製造コスト削減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転軸に取付けられた導体とこれに対面する固定子に取付けたコイル導体との間のインダクタンスが両者の回転方向の位置関係に応じて変化することを利用して、回転する導体の回転位置を非接触式で検出することで、回転体の回転位置あるいは回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。
【0002】
また、モータによって駆動される絞り弁で内燃機関の空気通路の開口面積を電気的に制御するモータ駆動式の絞り弁装置であって、絞り弁の回転角度を検出するために上記した回転角度検出装置を備えたものに関する。
【背景技術】
【0003】
この種の非接触式回転角検出装置は、特開2003−254782号公報に記載したものが知られている。
【0004】
また、モータ駆動式の絞り弁制御装置の回転角度検出装置としてこの種の回転角度検出装置を用いることは、特開2008−96231号公報で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−254782号公報
【特許文献2】特開2008−96231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインダクティブ型非接触式の回転角度検出装置では、固定側導体(励磁導体と受信コイル導体)と入出力駆動部及び制御用の電子回路部とが設けられた長方形型の回路基板を樹脂カバー(モータ駆動式の絞り弁制御装置では樹脂材製ギアカバー)の表面に接着によって固定していた。しかし、樹脂カバー成形後に回路基板を接着し、カバー内に這い回された電気導体との電気的接続のための接合等、カバーアッセンブリーを完成させるために、多くの作業工程が必要とされるため、製造コストが高くなる問題が有った。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解消して、精度を落とさずに組立作業性を向上することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の回転角度検出装置では、樹脂カバーが、固定側導体と電子回路が装着された回路基板,外部装置と電気的に接続するためのコネクタ,当該コネクタに形成されるコネクタ端子と回路基板とを接続する電気導体とを備えており、回路基板の少なくとも一部と電気導体とが同一の樹脂によって成形された一つの成形体として構成されている。
【0009】
好適には、回路基板に固定された固定側導体と電気導体とが同一の樹脂によって被覆成形された一つの成形体として構成され、当該成形体が樹脂カバーの成形樹脂によってさらにオーバーモールドされている。
【0010】
好適には、回路基板と電気導体との電気的接続部が成形体若しくは樹脂カバーと同一の樹脂によって被覆成形されている。
【0011】
好適には、固定導体を覆う樹脂層の厚さが、電気導体を覆う樹脂層の厚さより薄く形成されている。
【0012】
好適には、回路基板と電気導体との電気的接続部が圧接(プレスフィット)で接続されている。
【0013】
具体的には、上記特徴を有するインダクタンス型非接触式回転角度検出装置を備えたモータ駆動式の絞り弁制御装置であって、モータへの電源供給用の中継端子が樹脂カバーの成型樹脂と同一の成形樹脂で成形され、モータへの電源供給用の電気導体が回路基板と他の電気導体と一緒に一つの成形体として構成されている。
【0014】
好適には、樹脂カバーはモータの回転を絞り弁に伝達するギア機構を収容する収容体として機能している。
【0015】
好適には、絞り弁軸若しくは絞り弁軸に固定されたスロットルギアに、回転側導体が取り付けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、回路基板を樹脂カバーに接着する必要がないので、精度を落とすことなく組立工数の削減ができた。
【0017】
本発明になる回転角度検出装置を用いることで、モータ駆動式絞り弁の制御精度が向上し、組立て性が改善された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】モータ駆動式絞り弁装置の全体断面図。
【図2】モータ駆動式絞り弁装置の分解正面図。
【図3】インダクタンス式回転角度検出装置の回転導体の一部断面図。
【図4】インダクタンス式回転角度検出装置の回転導体の分解斜視図。
【図5】インダクタンス式回転角度検出装置の透視正面図。
【図6】TPSターミナルの全体斜視図。
【図7】TPSターミナル先端の拡大斜視図。
【図8】TPS基板の全体斜視図。
【図9】TPS基板スルーホール部の拡大斜視図。
【図10】モータ駆動式絞り弁装置のモータ電気的接合部の一部断面図。
【図11】TPS基板とターミナルのブクミ全体斜視図。
【図12】インサート成形品の全体斜視図。
【図13】インダクタンス式回転角度検出装置の全体斜視図。
【図14】実施例2のTPS基板とターミナルのブクミ全体斜視図。
【図15】実施例2のインサート成形品の全体斜視図。
【図16】実施例2のインダクタンス式回転角度検出装置の全体斜視図。
【図17】実施例3のTPS基板とターミナルのブクミ全体斜視図。
【図18】実施例3のインダクタンス式回転角度検出装置の全体斜視図。
【図19】実施例3のインダクタンス式回転角度検出装置の全体斜視図。(追加工後)
【図20】TPS基板の拡大斜視図。
【図21】実施例4のTPS基板とターミナルのブクミ全体斜視図。(ウラ面)
【図22】実施例4のインサート成形品の全体斜視図。(オモテ面)
【図23】実施例4のインサート成形品の断面図。
【図24】実施例4のインサート成形品の拡大断面図。
【図25】実施例4のインダクタンス式回転角度検出装置の全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
まず、本実施例に係わる内燃機関のモータ駆動式絞り弁装置の構成について、図1,図2を用いて説明する。
【0021】
図1はモータ駆動式絞り弁装置(以下、ETBと略称する)の全体断面図、図2は分解正面図である。
【0022】
アルミダイカスト製の絞り弁組体(以下スロットルボディと呼ぶ)3には吸入空気通路1(以下ボアと呼ぶ)とモータ2収納用のモータハウジング2Aが一緒に成形されている。
【0023】
スロットルボディ3にはボア1の一つの直径線に沿って金属製の回転軸(以下スロットルシャフトと呼ぶ)4が配置されている。スロットルシャフト4の両端はニードルベアリング5,6もしくはボールベアリング等の軸受で回転支持されている。ニードルベアリング5,6はスロットルボディ3に圧入固定されている。また、スロットルシャフト4上に設けたスリット部にC型ワッシャ(以下スラストリテーナと呼ぶ)7を挿入後、ニードルベアリング5を圧入することで、スロットルシャフト4の軸方向の可動量を規制している。
【0024】
また、スロットルシャフト4にはエンジンへの空気量を変化させるための絞り弁(以下スロットル弁と呼ぶ)8が組みつけられている。
【0025】
かくして、スロットルシャフト4が回転するとスロットル弁8が回転し、結果的に吸気通路の開口面積が変化して内燃機関の吸入空気量が調節可能となる。
【0026】
スロットルシャフト4の端部にはスロットルギア10がナット11で固定されている。スロットルギア10は金属プレート10Aと、この金属プレート10Aに樹脂成形されたギア部10Bから構成されている。
【0027】
モータハウジング2Aはスロットルシャフト4と並行に形成されており、ブラシ式直流型のモータ2がモータハウジング2A内に差込まれ、ネジ12で固定されている。モータ2の回転軸端部には歯数の最も少ない金属製のギア(以下モータギアと呼ぶ)13が固定されている。
【0028】
モータギア13とスロットルギア10の間にはスロットルボディ3に圧入固定された金属製の軸14(以下中間ギアシャフトと呼ぶ)に回転可能に指示されたギア(以下中間ギアと呼ぶ)15が噛合っている。中間ギア15はモータギア13と噛合う大径ギア15Aとスロットルギア10と噛合う小径ギア15Bとから構成されている。両ギアは樹脂成形により一体に成形により一体に成形される。
【0029】
これらギア13,15A,15B,10は2段の減速歯車機構を構成しており、かくしてモータ2の回転が減速機構を介して、スロットルシャフト4に伝達される。
【0030】
スロットルギア10の背面とスロットルボディ3の側面との間に弦巻ばねで形成されたリターンスプリング16が挟持されている。リターンスプリング16の片側端部はスロットルボディ3に形成された切欠きに係止され、他端はスロットルギア10に形成された切欠きに係止されている。リターンスプリング16はモータ2が通電されていない時スロットル弁8が全開位置を維持するように回転方向に予荷重が与えられている。
【0031】
次に、インダクタンス式回転角度検出装置の搭載方法について図3,図4を用いて説明する。
【0032】
図3はインダクタンス式回転角度検出装置の回転導体の一部断面図であり、図4は同分解斜視図である。
【0033】
インダクタンス式回転角度検出装置は、前述の通り、回転体の回転軸に取付けられた導体とこれに対面する固定子に取付けた導体とで構成される。前者は、図3,図4に示す円板(以下ロータと呼ぶ)17に相当し、後者は回路基板(以下TPS基板と呼ぶ)18に相当する。
【0034】
ロータ17上には、励起導体17Aが印刷されており、ロータ17は樹脂成形体で構成されるカップ上のホルダ(以下ロータホルダと呼ぶ)19に接着固定される。また、ロータホルダ19の中心部には金属製のロータホルダインサータ19Aが一体成形されている。ロータ17の中心には位置決め用の貫通穴17Bが形成されており、ロータホルダインサータ19Aにはこれと対応する位置決め用の突起部19Bが形成されている。これにより、ロータ17とロータホルダ19の中心軸を一致させる。また、ロータホルダインサータ19Aの中心軸上には環状の窓孔19Cが設けられており、これがスロットルシャフト4に圧入固定される。かくして、ロータ17はスロットルシャフト4と同様に回転することになる。
【0035】
以下本実施例の部品構成について図5にて具体的に説明する。図5はインダクタンス式回転角度検出装置の透視正面図である(以降、「TPS」は「回転角度検出装置」を意味する。)。
【0036】
TPS基板18には、環状の励磁導体18A1と放射方向に配置された複数の検出導体18A2とが印刷されており、本導体が回転位置(角度)検出部の駆動電源部及び回転位置(角度)の検出部となる。また、TPS基板18上には、マイクロコンピュータを含む電子回路素子18Bを有しており、本回路により、回転角度検出部の駆動制御および出力信号処理を行う。また、TPS基板18は、樹脂成形品のカバー(以下ギアカバーと呼ぶ)20内に、実装される。
【0037】
ギアカバー20内部には、金属製の配線導体6本が設置され、配線導体は、TPS配線導体21の4本と、モータ配線導体22の2本に大別でき、それぞれの端部はギアカバー20に成形されたコネクタ20Bに集約される。車両搭載時には、エンジンコントロールユニットから伸びた電線を差込みプラグにより、前述のコネクタ20Bと接合することで、電気的信号の授受および電力の供給,アースへの接続を実施する。この金属製配線導体は、外装モールド(オーバーモールドと称す)を行う前に、各々の配線導体位置を精度良くするためにインサート成形(プレモールドと称す)を実施する。この時、ギアカバー20内に取付けられるTPS基板18も配線導体と一緒にインサート成形を行う。インサート成形に関しては、後に別図にて説明をする。
【0038】
次に、TPS基板18とTPS配線導体21の接続方法に関して、図6〜図9を用いて説明する。図6は、TPS配線導体21の全体斜視図であり、図7はその先端部を拡大した図である。図8は、TPS基板18の全体斜視図であり、図9は、接続部を拡大した図である。
【0039】
TPS配線導体21とTPS基板18を同時にインサート成形する前に、4本のTPS配線導体21を事前に電気的に接続する。電気的接続をするために、TPS基板18上に設けた配線用スルーホール18D内壁には金属部材が介在している。そしてTPS基板18上に設けた配線用スルーホール18Dに、弾性構造を持ったTPS配線導体21の反コネクタ側の接続端子21Aを加圧しながら押し込む。その際、配線用スルーホール18Dの内寸よりも大きいサイズの配線導体を加圧することで、接続端子21A部に設けた膨張部(中心に楕円形の孔が設けられている)が圧迫され、この時のばねの力によりTPS基板18とTPS配線導体21が圧接(以下プレスフィット接続と呼ぶ)され、電気的導通を果たす。またTPS配線導体21の反コネクタ側の接続端子21Aに、抜け防止ストッパー21Bを備える事で、一度接続したTPS配線導体21がTPS基板上の配線用スルーホール18Dから抜けないようにする。接続端子21Aに弾性形状を持たす事で、耐振動性やインサート成形時の、樹脂流れによるせん断応力から保護する事が可能である。さらには、プレスフィット接続を行う事で、TPS基板18とTPS配線導体21とを接続する新たな金属製導体を用意する必要がなく、コスト低減にも繋がる。さらに、接続時もはんだ付けのように加熱することなく、常温で接続できるので、はんだ付けのような熱影響を考慮した設計をする必要がなく、また電力を用いない省エネ接続が実現できる。
【0040】
プレスフィット構造にてTPS配線導体21をTPS基板18に接続する際、ばね力による機械的接続になるため、常にTPS基板18にばね力が作用する。そこで、互いに隣り合うTPS基板18の配線用スルーホール18D間に加わる力方向を分散させるため、プレスフィット構造の締結方向を、1つずつ互い違いに設定する。これによりTPS基板18への機械的負荷を低減でき、高価な高強度材の基板を使用しなくて済み、原価低減に繋がる。なお、モータ配線導体22の反コネクタ側の接続端子22Aは、ギアカバーより突出しており、図10に示す通り、モータ2側から突出する配線導体22Bと中継カップリング23を介して樹脂成形部22A1,22B1において、電気的接続を果たす。次に、インサート成形について説明する。
【0041】
図11は、TPS基板18とTPS配線導体21とモータ配線導体22の部組み状態を示す全体斜視図である。インサート成形は、図11の状態にして各々の部品を型にセットし行われる。
ETBは、エンジンルーム内に取付けられるため、高温,低温の環境下に置かれる。そのため、ギアカバー20の外装成形に使用される樹脂は耐熱性が良く且つ、汎用性があるポリブチレンテレフテレート(PBT)等が使用される。(本実施例には、ギアカバーの材料を以下PBTとして記載する。)構成部品を安価に設定するには、インサート成形においても、市場流通性が良く、汎用性の良いPBT樹脂を使用することが望ましい。これにより、特殊樹脂材を使う事による製造タクトの悪化や高価で複雑な金型設計を強いられないで済み、総合的に安価に製造する事が可能である。しかし熱可塑性のPBT材にて、電子基板を含むインサート成形を行う際には、高温・高圧の射出成形を行うため、基板上面に搭載されている電子部品が、熱や流動時に発生するせん断応力等で破損する恐れがある。
【0042】
一方で、TPS基板18を樹脂内に実装する場合、TPS基板18を覆う樹脂厚が厚いと、その分ロータ17の励起導体17AとTPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2との距離が離れてしまい、インダクタンス式回転角度検出装置としての機能,精度を果たせなくなる。インダクタンス式回転角度検出装置を大きくし、受信感度を上げる事も可能であるが、搭載するTPS基板が大きくなるために、部品をコンパクトに集約できない。そのために、TPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2上面の樹脂厚みに関しては、薄くする必要がある。
【0043】
しかし、励磁導体18A1及び検出導体18A2上面の樹脂厚みを薄くしようとすると、樹脂の流れが悪くなるので樹脂成形圧力を上げる必要が有る。ところが、樹脂成形圧力を上げると成形時の樹脂圧力に起因して電子部品がダメージを受けてしまう可能性が有る。
【0044】
そこで本実施例では、PBT樹脂の分子量を調整して流動性を上げたり、あるいは添加剤を加えたりする事で、低圧成形が可能で高流動性を有するPBT樹脂材製の成形樹脂を得た。この樹脂の選択は、PBT樹脂に限ることはない。種々の熱硬化性あるいは熱可塑性樹脂の中からギアカバーを形成するオーバーモールド樹脂の性質によって選択することができる。
【0045】
また、低融点ポリマー材が入ったPBT材を使用すれば、通常の樹脂成形時に必要とされる樹脂成形温度よりも低い温度で成形できるので、樹脂の温度に起因する回路部品や半田接合部へのダメージを緩和できる事となり、回路基板全周(励磁導体18A1,検出導体18A2,電子回路素子18Bや配線導体21,22)をインサート成形する事が可能である。
【0046】
図12は、インサート成形を行うときのゲート位置を示す図である。
【0047】
インサート成形を行う際、樹脂圧力によるTPS基板18の歪を防ぐために、樹脂のゲート位置を、TPS基板18の長手方向と平行に樹脂が流れるようサイドゲート位置24Aを設定する。図12は、例としてTPS基板18横面の一辺をサイドゲート位置24Aとして示したが、他の三辺に設定しても、同様の効果は得られる。図12に示すサイドゲート位置24AはTPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2に近いことから、低圧成形が可能で高流動性を有するPBT樹脂材製の成形樹脂を流し込むと、TPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2の部分に薄い円盤状の層(樹脂フィルム層)25を形成し易い。そしてこの薄い円盤状の層(樹脂フィルム層)25の両サイドから電子回路素子18B,TPS基板と配線導体の電気的接合部18C、および配線導体21,22側に流れ、モータ中継端子部24Bを成形し、最後にコネクタの端子部に至る。242は電子回路素子18Bの成形部、244は回路基板と電気導体の電気的接合部18Cの成形部、246はコネクタ部の配線導体21,22の成形部、248はモータの接続端子22A,22B部の成形部をそれぞれ示す。
【0048】
この実施例ではこのように、励磁導体18A1及び検出導体18A2の部分,電子回路素子18B,電子回路基板と配線導体の電気的接合部,コネクタ部の配線導体21,22の一部,モータとの接続端子22A部が予め樹脂成形によって樹脂で覆われ、結果的に励磁導体18A1及び検出導体18A2を含む電子回路基板と配線導体(21,22)が一つの成形体として構成されていることが特徴である。これによってモータ駆動式の絞り弁装置の樹脂材製ギアカバー、あるいはインダクタンス式回転角度検出装置を自動組立てラインで組み立てるとき、ラインの中に敗戦導体の溶接や半田付けの作業がなくなるので、組立て性が向上する。
【0049】
また、電子回路基板を樹脂材製ギアカバーに接着する工程も不要になり、接着剤の乾燥時間がなくなる分だけ組立て時間が短くできる。
【0050】
さらに、接着剤を用いないので、樹脂材製ギアカバーのスロットルボディ3への取付け面と励磁導体18A1及び検出導体18A2との寸法が樹脂成形によって精度良く決定できる。
【0051】
つまり、接着剤だと、その量によって電子回路基板と樹脂材製ギアカバーの取付け面の間の寸法が製品毎にばらつく可能性が有る。そのばらつきは、乾燥状態によってもばらつくので、管理しにくい。
【0052】
本実施例では、樹脂成形時に治具によって樹脂材製ギアカバー20のスロットルボディ3への取付け面と励磁導体18A1及び検出導体18A2との間の寸法を管理することによって、樹脂材製ギアカバー20のスロットルボディ3への取付け面と励磁導体18A1及び検出導体18A2との寸法がすべての製品で同じにできるので、ロータ17と組み合わせたときの磁気ギャップ(検出ギャップ)がすべての製品で同じにできる。その結果インダクタンス式回転角度検出装置としての磁気的性能が、製品によってばらつくことがない。
【0053】
次に、外装成形(オーバーモールド)時における、インサート成形品24の位置決めについて図12を用いて説明する。
【0054】
インサート成形品24をインサート部品として、ギアカバーの外装成形(オーバーモード)を行う際、インサート成形品24のTPS基板18との位置決めが必要である。センシング機能を満足するためには、ロータ17とTPS基板18中心部に開けられた貫通穴18Cとが同軸上に設置される必要が有る。従って、インサート成形時に、TPS基板上の貫通穴18Cに同径の金型入れ、その部位に樹脂の流れ込みを遮断する。これによりインサート成形24品に、TPS基板上の貫通穴18Cと同径の位置決め穴24Bができ、この穴を外装成形時の位置決め穴として使用し成形することで、精度良く安易に位置決めが可能となる。これにより、図13に示すような、外装成形品が完成する。
【0055】
本実施例では、インサート成形(1次成形;プレモールドとも称す)と外装成形(2次成形;オーバーモールドとも称す)を行う工程にて説明をしてきたが、TPS基板18とTPS配線導体21とモータ配線導体22を部組み状態にした後に、1回の成形でギアカバーを製造する事も可能である。
【0056】
この場合、励磁導体18A1及び検出導体18A2,電子回路素子18B,TPS基板と配線導体の電気的接合部,コネクタ部のTPS配線導体21とモータ配線導体22,モータの接続端子22A部が成形治具にセットされ、樹脂材製ギアカバーの成形樹脂によってモールド成形される。これにより結果的に励磁導体18A1及び検出導体18A2を含むTPS基板と配線導体(21,22)が一つの成形体として構成される。このように構成した場合は、成形工程が1回で済むので、より組立て性が向上する。
【実施例2】
【0057】
他の実施例を図14,図15,図16を用いて説明する。
【0058】
図14は、TPS基板と配線導体の部組み全体斜視図で、その後インサート成形をした形状を図15に示し、完成された図16に外装成形後の全体斜視図を示す。
【0059】
実施例1は、基板全体を流動性の良い樹脂で覆い、TPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2上面の樹脂厚みを薄肉にて成形する例であるが、図14に示すようにインサート成形前に、TPS基板上の励磁導体18部上面に、インサート成形時に使用する樹脂材と同様の樹脂フィルム25Aを貼り付け、インサート成形24を実施することでも、同様の目的は達成可能である。樹脂フィルム25Aは、インサート成形24時と同材料の樹脂を使用する事で、成形後に線膨張係数の違い等による変形や割れなどは発生しないようにする事が可能である。また、外装成形時に使用する位置決め穴24Bの部位を逃がした樹脂フィルム25Aを貼り付けることで、外装成形時にTPS基板中心の位置決めが精度良くできることになる。
【実施例3】
【0060】
他実施例を図17,図18,図19を用いて説明する。
【0061】
図17は、TPS基板全体を樹脂で覆ったインサート成形品24の全体斜視図であり、図18は外装成形(オーバーモールド)後の形状を示し、図19は、TPS基板上の励磁導体18A上面部の樹脂厚みを追加加工にて薄くした全体斜視図である。
【0062】
本実施例では、TPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2のインサート成形24時、TPS基板18全体を、均一の樹脂厚にて覆ってしまう。これにより、樹脂の収縮による基板変形が相殺でき、成形後の変形,歪を極力最小限に抑える。そして、外装成形(オーバーモールド)を実施した後に、励磁導体18A1及び検出導体18A2を覆う樹脂部分をTPS基板18とロータ17が接触しない位置(深さ)まで切削加工によって削り取って両者を近接させ、センシング検出機能を満足させる。追加加工範囲は、ロータ17より大きな径で加工する。
【0063】
尚、切削加工に替えて、外装成形時にインサート成形品を加熱して軟化させ、その状態で励磁導体18A1及び検出導体18A2を覆う樹脂部分をプレス成形して薄くすることも可能である。この方法であれば切削粉の除去が不要であると言う効果が有る。
【実施例4】
【0064】
他の実施例を、図20〜図25を用いて説明する。
【0065】
本の実施例では、TPS基板18上に搭載されている電子部品且つTPS基板上の励磁導体18A1及び検出導体18A2に樹脂が被らないように、インサート成形時に、TPS基板の周囲のみを樹脂材によって覆う額縁上の層24Cを設ける。このように構成した本実施例によれば、励磁導体18A1及び検出導体18A2とが、むき出しになるので、ロータ17と組合せた時、励磁導体17Aとの間の検出ギャップをより小さくでき、TPSの検出精度が向上する。ここで、この実施例では、インサート成形時に成形樹脂が、スルーホール18Fを通してTPS基板18の裏側から表側にあふれ出てしまう虞れがある。このあふれた成形樹脂は各スルーホール18Fでまちまちの量となり、その結果、ロータ側の導体との間の検出ギャップを小さくできない虞れがある。そこで改良案として図23に示す様にTPS基板18の裏側に樹脂フィルム25Aを貼ってから額縁状に樹脂成形する。こうするとTPS基板18の裏側からスルーホール18Fを通って表側に成形樹脂があふれ出ることがなく上記問題を解消できる。
【0066】
図20は、TPS基板の拡大斜視図を示し、図21は、TPS基板と配線導体のブクミの裏面を示した全体斜視図である。上記技術について更に詳しく説明する。
【0067】
TPS基板18には、図20に示すように、スルーホール18Fを有している。この隙間に樹脂が流れ、成形後硬化すると、TPS基板18とスルーホール18F内に入り込んだ樹脂の線膨張係数差により、クラック発生の原因となる事があることがある。それを防ぐために、図21に示すように、インサート成形前に、TPS基板裏面18E側に、インサート成形時に使用する材料と同様の樹脂フィルム25Aを、スルーホール18Fが隠れるように貼り付け、インサート成形24時にスルーホール18Fに樹脂が入り込む事を遮断する。
【0068】
図22は、TPS基板外周をインサート成形した全体斜視図を示し、図23は、図22のTPS基板部の断面図であり、図24はその拡大図を示す。
【0069】
TPS基板18の片面のみインサート成形を行うと、線膨張係数が違う材料同士を一体成形するため、成形収縮した後に、変形やそりが発生し残留応力を生じる事となり、樹脂の割れ原因となる。それを抑えるために、図25に示すよう、TPS基板18の外周を樹脂で覆い尚且つ、基板下面側にて設定したTPS基板下面の樹脂厚24Dと同等の厚みをTPS基板上面の樹脂厚24Eとして設定する。そうすることで、成形後の基板上面と下面の樹脂収縮を相殺することが可能になり、変形,そりの防止対策となる。また、インサート成形後にTPS基板18上面にバリの発生を防ぐため、TPS基板18外周を囲む額縁インサート成形24Cの範囲は、基板上面に搭載される電子部品を避ける位置且つ、TPS基板上面のセンシング部位置を避け、TPS基板18と額縁インサート成形24Cの樹脂が重なり合う範囲24Fを設定し成形を行う。
【0070】
以上の実施例の態様を整理すると以下の通りである。
【0071】
<実施の態様1>
アクチュエータとポジションセンサにより、フィードバック制御される電子制御スロットルボディにおいて、
被回転検出体を覆うと共に、基板が取付けられたケース部材、
前記基板上に環状に配設されると共に、電流の印加によって磁界を発生する励磁導体部、
前記被回転検出体に固定されると共に、前記励磁コイル部と間隔を保って非接触状態に配置され、電磁作用によって前記被回転検出体の回転位置に応じた電流が発生する励起導体部、
前記基板に配設されると共に、前記励起導体に流れる電流に応じた電流が発生する受信導体部、
モータの動力を減速させるためにモータ、絞り弁間に設けられたギア、
前記ギアの回転軸として機能するシャフト、
を備えた回転角度検出装置であって、
前記基板と前記ケース内に配設された端子とを、ケース部材のモールド前に予め電気的に結合し、
前記基板と端子がケースを形成する部材で覆われていることを特徴とする絞り弁装置。
【0072】
<実施の態様2>
実施の態様1に記載したものにおいて、
前記基板上の回転検出部の中心部位が、樹脂に覆われていない事を特徴とする絞り弁装置。
【0073】
<実施の態様3>
実施の態様1に記載したものにおいて、
前記基板と前記ケース内に配設された他端に弾性形状を有した端子とを、ケース部材のモールド前に予めプレスフィット接続にて電気的に結合していることを特徴とする絞り弁装置。
【0074】
<実施の態様4>
実施の態様2,3に記載したものにおいて、
前記基板と前記端子が、一回以上のモールド成形で実装されている事を特徴とする絞り弁装置。
【0075】
<実施の態様5>
実施の態様1,4に記載したものにおいて、
前記基板全周をケース部材で覆った事を特徴とする絞り弁装置。
【0076】
<実施の態様6>
実施の態様5に記載したものにおいて、
前記基板上の回転検出部範囲の樹脂厚が他のケース材の樹脂厚よりも、薄い事を特徴とする絞り弁装置。
【0077】
<実施の態様7>
実施の態様4に記載したものにおいて、
前記基板上の回転検出部範囲並びに電子部品が搭載されている部位を除く範囲を樹脂で覆っていることを特徴とする絞り弁装置。
【0078】
<実施の態様8>
実施の態様7に記載したものにおいて、
基板上面に搭載されている電子部品,励磁導体部とは反対の、ケース部材に覆われる基板裏面に、モールド成形前にケース部材と同様の樹脂フィルムが貼り付けられていることを特徴とする絞り弁装置。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本実施例はインダクタンス型の非接触式回転角度検出装置及びそれを備えた内燃機関のモータによって駆動される絞り弁装置について説明したが、電子部品を有する回路基板をカバー部材に搭載する装置全般に適用することができる。
【0080】
また、2つのデフォルト機構を有する内燃機関のモータ駆動式絞り装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1 ボア
2 モータ
2A モータハウジング
2B モータ上のターミナル
3 スロットルボディ
4 スロットルシャフト
5,6 ニードルベアリング
7 スラストリテーナ
8 スロットル弁
9,12 ネジ
10 スロットルギア
10A スロットルギア金属プレート
10B スロットルギアのギア部
11 ナット
13 モータギア
14 中間ギアシャフト
15 中間ギア
15A 大径ギア部
15B 小径ギア部
15C 中間ギアボス部
16 リターンスプリング
17 ロータ
17A 励起導体
17B 位置決め用貫通穴
18 TPS基板
18A1 励磁導体
18A2 検出導体
18C 貫通穴
18D 配線用スルーホール
18E TPS基板裏面
18F スルーホール
19 ロータホルダ
19A ロータホルダインサータ
19B 位置決め用突起物
19C 環状の窓孔
20 ギアカバー
20A 位置決め用突起物
20B コネクタ
20C 中間ギア用ボス
20D 中間ギア用ボス部
21 TPS配線導体
21A,22A 接続端子
21B 抜け防止ストッパー
22 モータ配線接続
23 中継カップリング
24 インサート成形品
24A サイドゲート位置
24B 位置決め穴
24C 額縁状の層
24D TPS基板下面の樹脂厚
24E TPS基板上面の樹脂厚
24F TPS基板と樹脂の重なり合う範囲
25 円板上の層(樹脂フィルム層)
25A 樹脂フィルム
26 センシング部追加工部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転軸に取付けられた回転側導体と、
これに対面する樹脂カバー部材に取付けた固定側導体と、
両導体の間のインダクタンスが両者の回転方向の位置関係に応じて変化することを利用して、前記回転体の回転位置を検出する電子回路と、を備えた回転角度検出装置であって、
前記樹脂カバーは、
前記固定側導体と前記信号処理回路が装着された回路基板,外部装置と電気的に接続するためのコネクタ,当該コネクタに形成されるコネクタ端子と前記回路基板とを接続する電気導体を有し、
前記回路基板の少なくとも一部と前記電気導体とが同一の樹脂によって成形された一つの成形体として構成されている
インダクタンス型非接触式回転角度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたものにおいて、
前記回路基板に固定された固定側導体と電気導体とが同一の樹脂によって被覆成形された一つの成形体として構成され、
当該成形体が前記コネクタを有する前記樹脂カバーの成形樹脂によってさらにオーバーモールドされている
インダクタンス型非接触式回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1若しくは2のいずれかに記載されたものにおいて、
前記回路基板と前記電気導体との電気的接続部が前記成形体若しくは前記樹脂カバーと同一の樹脂によって被覆成形されている
インダクタンス型非接触式回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたものにおいて、
前記固定導体を覆う樹脂層の厚さが、前記電気導体を覆う樹脂層の厚さより薄く形成されている
インダクタンス型非接触式回転角度検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたものにおいて、
前記回路基板と前記電気導体との電気的接続部が圧接(プレスフィット)で接続されている
インダクタンス型非接触式回転角度検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載されたインダクタンス型非接触式回転角度検出装置を備えたモータ駆動式の絞り弁制御装置において、
前記モータへの電源供給用の中継端子が前記樹脂カバーの成型樹脂と同一の成形樹脂で成形され、モータへの電源供給用の電気導体が上記回路基板と他の電気導体と一緒に一つの成形体として構成されている
モータ駆動式の絞り弁制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のものにおいて、
前記樹脂カバーは前記モータの回転を前記絞り弁に伝達するギア機構を収容する収容体として機能している
モータ駆動式の絞り弁制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載のものにおいて、
前記絞り弁軸若しくは絞り弁軸に固定されたスロットルギアに、前記回転導体が取り付けられている
モータ駆動式の絞り弁制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−220783(P2011−220783A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89124(P2010−89124)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】