説明

インバータ制御装置

【課題】力率改善回路とインバータ回路にノイズの干渉が発生する場合でも正確な電流検出を行う。
【解決手段】力率改善回路およびインバータ回路の各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正する信号補正手段18を備え、信号補正手段18は力率改善回路およびインバータ回路の各スイッチングによるノイズが各電流検出に干渉しないように各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正することで正確な電流検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力率改善回路を備えたインバータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては例えば、整流器の後にコイルおよびIGBTおよびダイオードおよび電流検出用抵抗を備えた昇圧チョッパ回路を含む力率改善回路を有した装置があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−052050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のインバータ制御装置は前記IGBTおよびインバータ回路のスイッチングを起因として電流検出用抵抗にノイズが重畳するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、力率改善回路およびインバータ回路のスイッチング信号と電流検出タイミングの両方または一方を補正することで、力率改善回路とインバータ回路とが互いのスイッチングによるノイズの干渉を受けることなく電流検出を行うインバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ制御装置は、力率改善回路およびインバータ回路の各スイッチング信号と各電流検出タイミングの両方または一方を補正する信号補正手段を設け、各回路の電流検出がスイッチングに起因するノイズの干渉を受けないように各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインバータ制御装置は、力率改善回路およびインバータ回路の各電流検出が各スイッチングに起因するノイズの干渉を受けないように各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正することで、ノイズの干渉の影響を受けない正確な電流検出を行うことができるインバータ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1を説明する構成図
【図2】従来の電流検出方法を説明する波形グラフ
【図3】解決すべき課題を説明する波形グラフ
【図4】本発明における信号補正手段による力率改善回路のスイッチング信号補正を説明する波形グラフ
【図5】本発明における信号補正手段によるインバータ回路のスイッチング信号補正を説明する波形グラフ
【図6】本発明における信号補正手段による電流検出タイミングの第1の補正方法を説明する波形グラフ
【図7】本発明における信号補正手段による電流検出タイミングの第2の補正方法を説明する波形グラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、交流電源を力率改善回路にて整流・電圧調整をした後インバータ回路にて任意の交流電力へ変換してモータを駆動するインバータ制御装置において、力率改善回路のスイッチング信号および電流検出タイミングを作成するPFC制御手段と、インバータ回路のスイッチング信号および電流検出タイミングを作成するインバータ制御手段と、各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正する信号補正手段とを備え、信号補正手段は力率改善回路およびインバータ回路の各スイッチングによるノイズが各電流検出に干渉しないように各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正することを特徴とするインバータ制御装置である。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の形態におけるインバータ制御装置の構成を示すものである。
【0012】
図1において、交流電源1は力率改善回路2に接続され、交流電力が直流電力へと変換される。力率改善回路2はダイオードブリッジ3の出力にコイル4とIGBT5とシャント抵抗6とが直列で接続され、IGBT5をONすることによりコイル4に蓄えられた電気エネルギーをOFF時にダイオード7を介して平滑コンデンサ8に蓄える。また、ダイオードブリッジ3および平滑コンデンサ8の出力電圧はそれぞれ入力電圧検出回路9および直流電圧検出回路10を介してPFC制御手段11へ送られ、シャント抵抗6に接続された入力電流検出回路12を介して得られた入力電流とからPFC制御手段11はIGBT5のスイッチング信号と入力電流の検出タイミングを作成する。
【0013】
一方、直流電力を交流電力に変換してモータ13へ送るインバータ回路14はシャント抵抗15と直列に平滑コンデンサ8に接続され、シャント抵抗15に接続されたモータ電流検出回路16を介して得られた入力電流と平滑コンデンサ8の出力電圧とからインバータ制御手段17はインバータ回路14のスイッチング信号とモータ電流の検出タイミングを作成する。PFC制御手段11およびインバータ制御手段17から出力されるスイッチング信号および電流検出タイミングは、信号補正手段18により各スイッチング信号および各電流検出タイミングの両方または一方を補正する。
【0014】
図2は、1シャント方式によるモータ電流検出方法を説明する図であり、図3は、力率改善回路2のIGBT5のスイッチングが1シャント方式電流検出へ与える影響を説明する図である。なお、1シャント方式によるモータ電流検出方法については既に多くの商品で実用されているため既知として詳細は省略し、ここではモータ13のU,V,W各相のスイッチングパターンと電流取得タイミングの一例のみを示す。
【0015】
図2において、力率改善回路2のIGBT5のスイッチングはないものとしてインバータ回路14の各相のスイッチングを行うと、各スイッチング時の電流変化を起因として回路の配線インピーダンスによりシャント抵抗15の両端電圧には、図中に示したリンギングノイズが現実には発生する。このため、各相のスイッチングより波形安定待ち時間を設け、リンギングノイズの収束を待ってから電流取得を実施するといった方法が現実には採用されている。
【0016】
次に図3のように力率改善回路2のIGBT5のスイッチングを行うと、同様の要因によりノイズが発生しインバータ回路14にまで影響を及ぼし、図3に示すように電流検出のタイミングでノイズが重畳されて検出誤差を生じてしまう場合がある。
【0017】
こうした課題を解決するための本発明における信号補正手段の動作を図4から図7を用いて説明する。
【0018】
図4は、力率改善回路2のスイッチングを補正することにより干渉ノイズを回避する一例である。力率改善回路2のスイッチングを遅らせることでIu検出のタイミングを変えることなく干渉ノイズの影響を回避することができる。
【0019】
図5は、インバータ回路14のスイッチングを補正することにより干渉ノイズを回避する一例である。インバータ回路14のスイッチングおよびIu検出のタイミングを早めることで干渉ノイズの影響を回避することができる。
【0020】
図6は、電流検出のタイミングを補正することにより干渉ノイズを回避する一例である。インバータ回路14のIu検出をキャリア周期の後半に実施することで干渉ノイズの影響を回避することができる。
【0021】
図7は、電流検出のタイミングを補正することにより干渉ノイズを回避する一例である。インバータ回路14のIu検出をIGBT5のスイッチングタイミングに応じてさらに遅らせることにより干渉ノイズの影響を回避することができる。
【0022】
なお、力率改善回路2の電流検出についても同様の補正方法により、インバータ回路14の干渉ノイズの影響を回避できる。また、インバータ回路14の電流検出が3シャント方式の場合も同様の補正方法により干渉ノイズを回避できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のインバータ制御装置は、ノイズ対策部品を追加することなく電流誤検出を防ぐことができ、小型で安価なインバータ制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 交流電源
2 力率改善回路
3 ダイオードブリッジ
4 コイル
5 IGBT
6 シャント抵抗
7 ダイオード
8 平滑コンデンサ
9 入力電圧検出回路
10 直流電圧検出回路
11 PFC制御手段
12 入力電流検出回路
13 モータ
14 インバータ回路
15 シャント抵抗
16 モータ電流検出回路
17 インバータ制御手段
18 信号補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力率改善回路を備えたインバータ制御装置において、力率改善回路およびインバータ回路の各スイッチング信号と各電流検出タイミングの両方または一方を補正する信号補正手段を設け、信号補正手段がスイッチングに起因するノイズが電流検出タイミングと重ならないように各スイッチング信号および電流検出タイミングの両方またはいずれか一方を補正することを特徴とするインバータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80740(P2012−80740A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226331(P2010−226331)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】