説明

インプリント装置、モールド及び物品の製造方法

【課題】下地マークと基板上に形成されたアライメントマークとの位置ずれを検出することを可能とし、位置ずれを抑えながら基板上にパターンを形成することができる技術を提供する。
【解決手段】下地マークを有する基板に塗布された樹脂にパターン面を有するモールドを押し付けた状態で当該樹脂を硬化させて前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、前記モールドは、前記パターンを形成するためのパターン部と、前記基板上にアライメントマークを形成するためのマーク部と、前記モールドを樹脂に押し付けた状態において前記下地マークが押し潰されることを防止する凹部とを前記パターン面に含むことを特徴とするインプリント装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、モールド及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術は、ナノスケールの微細パターンの転写を可能にする技術であり、半導体デバイスや磁気記憶媒体の量産用ナノリソグラフィ技術の1つとして実用化されつつある。インプリント技術では、電子線描画装置などを用いて微細パターンが形成されたモールド(型)を原版として、シリコンウエハやガラスプレートなどの基板上に微細パターンが形成される。かかる微細パターンは、基板上に樹脂を塗布し、その樹脂にモールド(のパターン)を押し付けた状態でその樹脂を硬化させることによって形成される。
【0003】
現時点において実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法及び光硬化法がある。熱サイクル法では、熱可塑性の樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂にモールドを押し付ける。そして、樹脂を冷却した後、樹脂からモールドを引き離すことにより基板上にパターンが形成される。また、光硬化法では、紫外線硬化性の樹脂にモールドを押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂からモールドを引き離すことにより基板上にパターンが形成される。熱サイクル法は、温度制御による転写時間の増大及び温度変化による寸法精度の低下を招くが、光硬化法には、そのような問題が存在しない。従って、現時点では、光硬化法は、熱サイクル法と比較して、ナノスケールの半導体デバイスの量産において有利である。
【0004】
このようなインプリント技術を用いたインプリント装置は、特許文献1に開示されている。かかるインプリント装置は、基板ステージ、樹脂の塗布機構、モールドヘッド、光照射系及びアライメントマークを検出する検出機構を有し、基板上の各ショット領域に対して樹脂の塗布とパターンの転写(モールドの押し付け及び引き離し)とを繰り返し実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4185941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプリント装置では、モールドが基板上に塗布された樹脂に押し付けられるため、モールドや基板の変形によって基板に形成されるパターンが目標位置からずれしてしまうことがある。その結果、基板に既に形成されているパターンと新たに形成されたパターンとの間の位置ずれ(オーバーレイ誤差)が生じてしまう。そこで、基板に既に形成されている下地マーク(アライメントマーク)と新たなパターンと共に形成されたアライメントマークとの位置ずれを検出し、かかる検出結果に基づいてオーバーレイ誤差を補正することが考えられる。
【0007】
しかしながら、インプリント装置では、基板上の樹脂にモールドを押し付けてパターンを形成するため、基板に既に形成されている下地マークがモールドによって押し潰されてしまう。従って、実際には、下地マークとアライメントマークとの位置ずれを検出することができず、オーバーレイ誤差を十分に補正することができなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、下地マークと基板上に形成されたアライメントマークとの位置ずれを検出することを可能とし、位置ずれを抑えながら基板上にパターンを形成することができる技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、下地マークを有する基板に塗布された樹脂にパターン面を有するモールドを押し付けた状態で当該樹脂を硬化させて前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、前記モールドは、前記パターンを形成するためのパターン部と、前記基板上にアライメントマークを形成するためのマーク部と、前記モールドを樹脂に押し付けた状態において前記下地マークが押し潰されることを防止する凹部とを前記パターン面に含み、前記インプリント装置は、前記モールドを駆動する駆動部と、前記下地マークと前記基板上に形成された前記アライメントマークとの位置ずれを検出する検出部と、前記基板上の前記アライメントマークを形成すべき第1の領域に樹脂を塗布し、前記第1の領域に前記マーク部が位置し、前記下地マークが形成されている領域に前記凹部が位置する状態で、前記モールドを樹脂に押し付けて前記基板上にアライメントマークを形成する処理と、前記基板上の前記パターンを形成すべき第2の領域に樹脂を塗布し、前記検出部で検出された前記位置ずれから前記第2の領域に対する前記パターン部の位置ずれを求め、前記基板上の目標位置に前記パターン部を位置合わせするための位置制御指令に前記パターン部の位置ずれをオフセットとして加えた位置制御指令に従って前記第2の領域に対して前記パターン部の位置合わせを行った状態で、前記モールドを樹脂に押し付けて前記基板上に前記パターンを形成する処理と、を行う処理部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、下地マークと基板上に形成されたアライメントマークとの位置ずれを検出することを可能とし、位置ずれを抑えながら基板上にパターンを形成する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示すインプリント装置が用いるインプリント技術の原理を説明するための図である。
【図3】図1に示すインプリント装置に用いられるモールド、及び、図1に示すインプリント装置のインプリント動作を説明するための図である。
【図4】図1に示すインプリント装置のインプリント動作を説明するための図である。
【図5】図4(a)乃至図4(c)に示すインプリント動作の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置1の構成を示す概略図である。インプリント装置1は、基板(シリコンウエハやガラスプレートなど)に塗布された樹脂にモールド(型)を押し付けた状態で、かかる樹脂を硬化させて(即ち、インプリント技術を用いて)基板上にパターンを形成する。
【0015】
ここで、インプリント装置1の構成を説明する前に、図2を参照して、インプリント技術の原理を説明する。まず、図2(a)に示すように、樹脂REを基板STに塗布し、かかる樹脂REにモールド100のパターン面110を押し付ける。樹脂REは、本実施形態では、紫外線などの光が照射されることによって硬化する紫外線硬化性の樹脂である。モールド100は、例えば、紫外線を透過する石英などの材料で構成され、基板上にパターンを形成するためのパターン部112をパターン面110に有する。モールド100のパターン面110を基板上に塗布された樹脂REに押し付けることによって、樹脂REがパターン部112(の凹部)に進入する。
【0016】
次に、図2(b)に示すように、モールド100を樹脂REに押し付けた状態で、モールド100を介して樹脂REに紫外線ULを照射する。これにより、樹脂REが硬化し、モールド100のパターン部112(即ち、パターン)が基板STに転写される。なお、本実施形態では、インプリント技術によって基板上にパターンを形成又は転写することをインプリントと称する。
【0017】
次に、図2(c)に示すように、基板上の硬化した樹脂REからモールド100を引き離す。但し、樹脂REは、モールド100のパターン部112に対応する形状のままで基板上に留まる。パターンが転写された樹脂REは、露光装置のフォトリソグラフィ技術によって作成されたレジストパターンと同等であるため、半導体デバイスの製造における以降の工程については、露光装置を用いた場合と同じになる。
【0018】
インプリント装置1の構成について説明する。インプリント装置1は、図1に示すように、光照射系10と、塗布部20と、モールドヘッド30と、基板ステージ40と、検出部50と、処理部60とを備える。
【0019】
光照射系10は、基板上に塗布された樹脂REにモールド100(のパターン面110)を押し付けた状態で、モールド100を介して、樹脂REに紫外線ULを照射する。但し、樹脂REが熱などの他の物理的なエネルギーが与えられること、或いは、化学的な変化を生じさせることによって硬化する樹脂である場合には、光照射系10は、樹脂REに物理的なエネルギーを与える機構や化学的な変化を生じさせる機構に置換される。
【0020】
塗布部20は、例えば、樹脂REを吐出する複数のノズルで構成され、基板ST(即ち、インプリントすべきショット領域)に樹脂REを塗布する機能を有する。具体的には、塗布部20を構成するノズルから樹脂REを吐出させながら基板ステージ40を駆動することで、基板STに樹脂REを塗布することが可能となる。なお、樹脂REを吐出するノズルの数を選択することによって、樹脂REの塗布幅を調整することも可能である。
【0021】
モールドヘッド30は、モールド100を保持するモールドチャック(不図示)と、かかるモールドチャックを上下方向に駆動するアクチュエータ(不図示)とを含み、モールド100を上下方向に駆動する駆動部として機能する。モールドヘッド30は、モールド100を下方向に駆動することによって、基板STに塗布された樹脂REにモールド100(のパターン面110)を押し付けることができる。また、モールドヘッド30は、モールド100を上方向に駆動することによって、基板上の樹脂REからモールド100を引き離すことができる。
【0022】
基板ステージ40は、基板STを保持する基板チャック(不図示)と、かかる基板チャックを駆動する駆動機構とを含む。基板ステージ40は、XYZ座標系において、X軸方向及びY軸方向の少なくとも2つの軸に沿って、基板STを駆動する(即ち、基板STの位置を制御する)ことができる。
【0023】
検出部50は、基板STに形成された位置決めマーク(下地マークやアライメントマーク)を検出する機能を有する。後述するように、検出部50は、本実施形態では、基板STに形成されている下地マークとアライメントマークとの位置ずれを光学的に検出して、基板STとモールド100との位置ずれを検出する。
【0024】
処理部60は、CPUやメモリを含み、インプリント装置1の動作を制御する。例えば、処理部60は、基板上の複数のショット領域に対するインプリントの順番を制御したり、光照射系10、塗布部20、モールドヘッド30、基板ステージ40及び検出部50を制御したりする。
【0025】
図3を参照して、インプリント装置1に用いられるモールド100と共に、インプリント装置1によるインプリント動作(即ち、処理部60で行われる処理)について説明する。
【0026】
モールド100について説明する。図3(g)は、インプリント装置1に用いられるモールド100を示す上面図である。モールド100は、デバイスのパターンを形成するためのパターン部112と、アライメントマークを形成するためのマーク部114A及び114Bと、凹部116A及び116Bとをパターン面110に含む。凹部116A及び116Bは、モールド100を樹脂RE(基板ST)に押し付けた状態において基板STに形成されている下地マークが押し潰されることを防止する。従って、凹部116A及び116Bは、モールド100を樹脂REに押し付けた状態において、基板STに形成されている下地マークに接触しない寸法を有する。また、凹部116A及び116Bは、パターン部112のへこみよりも深いへこみで構成されている。
【0027】
パターン面110は、本実施形態では、矩形形状を有し、パターン面内に平行な2つの辺のそれぞれに沿ってマーク部114A及び凹部116Aとマーク部114B及び凹部116Bが配置されている。また、パターン部112は、マーク部114A及び凹部116Aとマーク部114B及び凹部116Bとの間に配置されている。
【0028】
インプリント装置1によるインプリント動作について説明する。まず、図3(a)に示すように、塗布部20によって、基板上のアライメントマークを形成するべき第1の領域(即ち、マーク部114A及び114Bの大きさに相当する領域)STA1及びSTA2に樹脂REを塗布する。
【0029】
次に、図3(b)に示すように、第1の領域STA1及びSTA2のそれぞれにマーク部114A及び114Bが位置する状態で、モールドヘッド30によって、モールド100を樹脂REに押し付ける。
【0030】
図3(b)に示す状態において、光照射系10によって、第1の領域STA1及びSTA2に塗布された樹脂REに紫外線を照射して樹脂REを硬化させ、樹脂REからモールド100を引き離す。これにより、図3(c)に示すように、基板上の第1の領域STA1及びSTA2のそれぞれにアライメントマークAM1及びAM2が形成される。
【0031】
次に、図3(d)に示すように、塗布部20によって、基板上のパターンを形成するべき第2の領域(即ち、アライメントマークAM1及びAM2が形成されている領域以外の領域)STA3に樹脂REを塗布する。
【0032】
次に、図3(e)に示すように、モールドヘッド30によって、モールド100の中心と基板STの中心とが一致するように、モールド100を樹脂REに押し付ける。具体的には、第2の領域STA3にパターン部112が位置し、基板上に形成されているアライメントマークAM1及びAM2のそれぞれの領域に凹部116A及び116Bが位置する状態で、モールド100を樹脂REに押し付ける。この際、基板上に形成されているアライメントマークAM1及びAM2(即ち、下地マーク)は、凹部116A及び116Bと重なるため、モールド100で押し潰されることなく、以降の工程においても位置決めマークとして用いることができる。なお、モールド100に凹部116A及び116Bがない場合、基板上に形成されているアライメントマークAM1及びAM2は、モールド100に接触して押し潰されてしまうため、以降の工程において位置決めマークとして用いることができない。
【0033】
図3(e)に示す状態において、光照射系10によって、第2の領域STA3に塗布された樹脂REに紫外線を照射して樹脂REを硬化させ、樹脂REからモールド100を引き離す。これにより、図3(f)に示すように、基板上の第2の領域STA3にパターン部112によるパターンPTが形成されると共に、マーク部114A及び114BのそれぞれによるアライメントマークAM3及びAM4が形成される。
【0034】
このように基板上に形成されたアライメントマークAM1乃至AM4を検出部50によって検出することで、アライメントマークAM1乃至AM4の相対的な位置ずれを検出することができる。また、処理部60では、アライメントマークAM1乃至AM4の相対的な位置ずれから、下地に対する基板上に形成されたパターンPTの位置ずれ(即ち、第2の領域STA3に対するパターン部112の位置ずれ)を求める。そして、以降のインプリント動作では、求めたパターン部112の位置ずれに基づいて、モールド100の位置合わせ(第2の領域STA3に対するパターン部112の位置合わせ)を行う。具体的には、基板上の目標位置にパターン部112を位置合わせするための位置制御指令に、求めたパターン部112の位置ずれをオフセットとして加えた位置制御指令に従ってモールド100の位置合わせを行う。これにより、基板STに形成されるパターンPTの位置ずれを抑えることが可能となる。従って、インプリント装置1は、パターンPTの位置ずれを抑えながら(即ち、オーバーレイ誤差を低減させながら)、基板上に高精度にパターンを形成することができる。なお、図3(c)に示す状態において、基板上に形成されたアライメントマークAM1及びAM2を検出部50によって検出し、アライメントマークAM1及びAM2の下地に対する位置ずれに基づいて、モールド100の位置合わせを行うことも可能である。
【0035】
また、下地マークとしてのアライメントマークAM1及びAM2は、インプリント装置1のインプリント動作で形成するのではなく、別のインプリント装置やリソグラフィ装置などで予め形成されていてもよい。換言すれば、基板STが予め下地マークを有していてもよい。
【0036】
図4を参照して、基板STが下地マークBM1及びBM2を有する場合のインプリント装置1によるインプリント動作(即ち、処理部60で行われる処理)について説明する。
【0037】
まず、図4(a)に示すように、塗布部20によって、基板上のアライメントマークを形成するべき第1の領域STA1及びSTA2に樹脂REを塗布する。ここで、第1の領域STA1及びSTA2は、下地マークBM1及びBM2が形成されている領域以外の領域であって、マーク部114A及び114Bの大きさに相当する領域である。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、モールドヘッド30によって、モールド100を樹脂REに押し付ける。具体的には、第1の領域STA1及びSTA2のそれぞれにマーク部114A及び114Bが位置し、下地マークBM1及びBM2のそれぞれが形成されている領域に凹部116A及び116Bが位置する状態で、モールド100を樹脂REに押し付ける。この際、基板上の下地マークBM1及びBM2は、凹部116A及び116Bと重なるため、モールド100で押し潰されることなく、以降の工程においても位置決めマークとして用いることができる。なお、モールド100に凹部116A及び116Bがない場合、基板上の下地マークBM1及びBM2は、モールド100に接触して押し潰されてしまう。
【0039】
図4(b)に示す状態において、光照射系10によって、第1の領域STA1及びSTA2に塗布された樹脂REに紫外線を照射して樹脂REを硬化させ、樹脂REからモールド100を引き離す。これにより、図4(c)に示すように、基板上の第1の領域STA1及びSTA2のそれぞれにアライメントマークAM5及びAM6が形成される。
【0040】
このように形成されたアライメントマークAM5及びAM6と下地マークBM1及びBM2とを検出部50によって検出することで、アライメントマークAM5及びAM6と下地マークBM1及びBM2との相対的な位置ずれを検出することができる。また、処理部60では、アライメントマークAM5及びAM6と下地マークBM1及びBM2との相対的な位置ずれから、下地マークBM1及びBM2に対するパターン部112の位置ずれ(即ち、2の領域STA3に対するパターン部112の位置ずれ)を求める。
【0041】
なお、検出部50で検出されるアライメントマークAM5及びAM6と下地マークBM1及びBM2との相対的な位置ずれは、理想的なインプリント動作が行われていれば0である。但し、実際には、様々な要因によって、理想的なインプリント動作が必ずしも行われていないため、基板STとモールド100とが相対的に位置ずれを起こしてしまう。そこで、本実施形態では、アライメントマークAM5及びAM6と下地マークBM1及びBM2との相対的な位置ずれを検出することで、下地マークBM1及びBM2(即ち、基板ST)に対するパターン部112の位置ずれを求めている。なお、様々な要因には、基板STに樹脂REを塗布した後の気化熱の影響、基板ステージ40の駆動によるベースラインの変動、モールド100の押し付け又は引き離しによる基板STへの影響、紫外線の照射による熱の影響、モールド100の変形などが含まれる。
【0042】
次に、図4(d)に示すように、塗布部20によって、基板上のパターンを形成するべき第2の領域(即ち、下地マークBM1及びBM2が形成されている領域以外の領域)STA3に樹脂REを塗布する。
【0043】
次に、図4(e)に示すように、モールドヘッド30によって、モールド100を樹脂REに押し付ける。この際、求めたパターン部112の位置ずれに基づいて、モールド100の位置合わせ(第2の領域STA3に対するパターン部112の位置合わせ)を行う。具体的には、基板上の目標位置にパターン部112を位置合わせするための位置制御指令に、求めたパターン部112の位置ずれをオフセットとして加えた位置制御指令に従ってモールド100の位置合わせを行う。なお、基板上の下地マークBM1及びBM2のそれぞれは、凹部116A及び116Bと重なるため、モールド100で押し潰されることはない。
【0044】
図4(e)に示す状態において、光照射系10によって、第2の領域STA3に塗布された樹脂REに紫外線を照射して樹脂REを硬化させ、樹脂REからモールド100を引き離す。これにより、図4(f)に示すように、基板上の第2の領域STA3にパターン部112によるパターンPTが形成される。また、基板上の第1の領域STA1及びSTA2には、マーク部114A及び114BのそれぞれによるアライメントマークAM5’及びAM6’が形成される。
【0045】
このように、基板STが下地マークを有する場合には、インプリント動作により基板STに形成されたアライメントマークと下地マークとの相対的な位置ずれから基板STとモールド100との位置ずれを求める。そして、基板STとモールド100との位置ずれに基づいて、基板STとモールド100との位置合わせを行ってから、インプリント動作を行うことで、基板STに形成されるパターンの位置ずれを抑えることが可能となる。従って、インプリント装置1は、パターンの位置ずれを抑えながら(即ち、オーバーレイ誤差を低減させながら)、基板上に高精度にパターンを形成することができる。
【0046】
また、本実施形態では、モールド100は、2つのマーク部114A及び114Bと2つの凹部116A及び116Bとをパターン面110に含むが、それらの数や位置は限定されるものではない。例えば、パターン面110のスクラブライン上の4つの隅のそれぞれにマーク部及び凹部を配置してもよい。
【0047】
図5は、図4(a)乃至図4(c)に示すインプリント動作の詳細を示す図である。図5(a)は、図4(a)の状態を示し、基板STには下地マークBM1が予め形成され、基板ST(の第1の領域STA1)には樹脂REが塗布されている。なお、樹脂REは、一般には、半球状(断面では、円状)に塗布されている。図5(b)は、図4(b)の状態を示し、下地マークBM1の上に凹部116Aが位置した状態でモールド100が押し付けられているため、下地マークBM1がモールド100によって押し潰されることはない。一方、基板上の第1の領域STA1に塗布された樹脂REには、モールド100のマーク部114Aが位置した状態でモールド100が押し付けられている。この状態で紫外線ULを照射することで、図5(c)に示すように、下地マークBM1を押し潰すことなく、基板上にアライメントマークAM5を形成することができる。
【0048】
また、本実施形態では、基板上の複数のショット領域のうちアライメントマークを形成するショット領域の一部の領域(アライメントマークを形成すべき領域)のみにインプリント動作を行うことが可能である。従って、アライメントマークを形成するショット領域に形成されるパターンの位置決め精度を向上させることができる(即ち、アライメントマークを形成するショット領域に形成されるパターンの位置精度を向上させることができる)。一方、従来技術では、アライメントマークを形成するショット領域の全体に対してインプリント動作を行ってアライメントマーク及びパターンを形成する。そして、かかるアライメントマークの位置ずれに基づいてモールドの位置を補正しながら他のショット領域にパターンを形成している。従って、アライメントマークを形成するショット領域に形成されるパターンの位置精度は、他のショット領域に形成されるパターンの位置精度よりも低く、不良品となる可能性が高かった。
【0049】
また、従来技術では、上述したように、アライメントマークを形成するショット領域に形成されるパターンの位置精度に問題があるため、かかるショット領域の数を多くすることはできない。一方、本実施形態では、アライメントマークを形成するショット領域に形成されるパターンの位置精度と他のショット領域に形成されるパターンの位置精度との間に差がないため、アライメントマークを形成するショット領域の数に制限はない。従って、基板上の複数のショット領域の全てを、アライメントマークを形成するショット領域にすることも可能である。
【0050】
物品としてのデバイス(半導体デバイス、液晶表示素子等)の製造方法は、インプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。かかる製造方法は、パターンが転写された基板をエッチングするステップを更に含む。なお、かかる製造方法は、パターンドットメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、エッチングステップの代わりに、パターンが転写された基板を加工する他の加工ステップを含む。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地マークを有する基板に塗布された樹脂にパターン面を有するモールドを押し付けた状態で当該樹脂を硬化させて前記基板上にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記モールドは、前記パターンを形成するためのパターン部と、前記基板上にアライメントマークを形成するためのマーク部と、前記モールドを樹脂に押し付けた状態において前記下地マークが押し潰されることを防止する凹部とを前記パターン面に含み、
前記インプリント装置は、
前記モールドを駆動する駆動部と、
前記下地マークと前記基板上に形成された前記アライメントマークとの位置ずれを検出する検出部と、
前記基板上の前記アライメントマークを形成すべき第1の領域に樹脂を塗布し、前記第1の領域に前記マーク部が位置し、前記下地マークが形成されている領域に前記凹部が位置する状態で、前記モールドを樹脂に押し付けて前記基板上にアライメントマークを形成する処理と、前記基板上の前記パターンを形成すべき第2の領域に樹脂を塗布し、前記検出部で検出された前記位置ずれから前記第2の領域に対する前記パターン部の位置ずれを求め、前記基板上の目標位置に前記パターン部を位置合わせするための位置制御指令に前記パターン部の位置ずれをオフセットとして加えた位置制御指令に従って前記第2の領域に対して前記パターン部の位置合わせを行った状態で、前記モールドを樹脂に押し付けて前記基板上に前記パターンを形成する処理と、を行う処理部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記モールドを樹脂に押し付けた状態において、前記下地マークに接触しない寸法を有することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記パターン面は、矩形形状を有し、
前記マーク部及び前記凹部のそれぞれは、前記パターン面内の平行な2つの辺のそれぞれに沿って配置され、
前記パターン部は、前記2つの辺のそれぞれに沿って配置された前記マーク部及び前記凹部の間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
基板に塗布された樹脂にパターン面を有するモールドを押し付けた状態で当該樹脂を硬化させて前記基板上にパターンを形成するインプリント装置に用いられるモールドであって、
前記パターンを形成するためのパターン部と、
前記基板上にアライメントマークを形成するためのマーク部と、
前記モールドを樹脂に押し付けた状態において前記基板に形成されている下地マークが押し潰されることを防止する凹部と、
を有し、
前記パターン部、前記マーク部及び前記凹部は、1つの面に形成されていることを特徴とするモールド。
【請求項5】
前記凹部は、前記パターン部の前記パターンを形成するためのへこみよりも深いへこみで構成されていることを特徴とする請求項4に記載のモールド。
【請求項6】
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて樹脂のパターンを基板に形成するステップと、
前記パターンが形成された基板を加工するステップと、
を有することを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−129720(P2011−129720A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286966(P2009−286966)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】