説明

インプリント装置およびインプリント方法

【課題】 型と被成型物の間に圧力を均一に加えることができると共に、高速に昇降温することができるインプリント装置及びインプリント方法を提供すること
【解決手段】 型100のパターンをフィルム状の被成型物200に転写するためのインプリント装置1であって、型100を保持するためのステージ11と、被成型物200と共に加圧室12を構成する加圧室用筐体13と、加圧室用筐体13と被成型物200との間を密閉する密閉手段14と、加圧室用筐体13と被成型物200との間を開閉する開閉手段15と、加圧室12内の気圧を調節する加圧手段16と、被成型物200を加熱するための加熱手段17と、型100と被成型物200の間の気体を除去する脱気手段18と、を具備するインプリント装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スループットの高いインプリント装置およびインプリント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロオーダ、ナノオーダの超微細なパターンを形成する方法として、熱ナノインプリント技術が注目されている。これは、熱可塑性を有する樹脂等からなる基板やフィルム等の被成型物を当該樹脂のガラス転移温度以上に加熱し、この被成型物に微細なパターンを有する型を加圧することによって、当該パターンを転写するものである。
【0003】
このナノインプリント技術においては、型と被成型物の平行度や平面度が重要である。型と被成型物とが平行でないと加わる圧力が不均一となり、型に局所的に大きな応力が加わって変形や破損を生じたり、パターンの転写不良を引き起こしたりする原因となるからである。
【0004】
これを解決するものとして、従来、型の裏側に弾性部材を配置するもの(例えば、特許文献1参照)や、可撓性のある膜を介して型を油等で加圧する装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO2007/049530
【特許文献2】国際公開番号WO01/042858
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この場合においても、型と被成型物の平行度や平面度に起因する問題を十分に解決するには至っていない。また、従来の装置は、ヒータと被成型物の間に、被成型物を保持するステージ等があるため、これに多くの熱を必要とし、加熱や冷却に多くの時間を要するという問題があった。これらの問題は、型を大型化する程顕著になる。
【0007】
そこで本発明は、型と被成型物の間に圧力を均一に加えることができると共に、高速に昇降温することができるインプリント装置及びインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1のインプリント装置は、型のパターンをフィルム状の被成型物に転写するためのインプリント装置であって、前記型を保持するためのステージと、前記被成型物と共に加圧室を構成する加圧室用筐体と、前記加圧室用筐体と前記被成型物との間を密閉する密閉手段と、前記加圧室用筐体と前記被成型物との間を開閉する開閉手段と、前記加圧室内の気圧を調節する加圧手段と、前記被成型物を加熱するための加熱手段と、を具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2のインプリント装置は、フィルム状の型のパターンを被成型物に転写するためのインプリント装置であって、前記被成型物を保持するためのステージと、前記型と共に加圧室を構成する加圧室用筐体と、前記加圧室用筐体と前記型との間を密閉する密閉手段と、前記加圧室用筐体と前記型との間を開閉する開閉手段と、前記加圧室内の気圧を調節する加圧手段と、前記被成型物を加熱するための加熱手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記型と前記被成型物の間の気体を除去する脱気手段を具備する方が好ましい。また、前記加熱手段は、電磁波の放射によって加熱するものや、前記加圧室用筐体に所定温度に加熱された気体を供給するものを用いることができる。また、前記被成型物を冷却するための冷却手段を具備する方が好ましい。
【0011】
また、本発明の第2のインプリント装置において、前記型は、所定の成型温度において用いられるフィルム状の型であって、熱可塑性樹脂からなる基層と、前記成型温度において前記樹脂より硬い材料からなり前記基層の成型面側に形成される硬質層と、を有するものを用いることができる。
【0012】
また、本発明の第1のインプリント方法は、型のパターンをフィルム状の被成型物に転写するためのインプリント方法であって、前記型に対し前記被成型物を気体で直接押圧することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2のインプリント方法は、フィルム状の型のパターンを被成型物に転写するためのインプリント方法であって、前記被成型物に対し前記型を気体で直接押圧することを特徴とする。
【0014】
この場合、型のパターンを転写する前に、前記型と前記被成型物の間の気体を除去する方が好ましい。また、前記型又は前記被成型物を電磁波の放射によって加熱するか、あるいは、所定温度の気体によって加熱することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、少なくとも型と被成型物のいずれか一方に可撓性のあるフィルム状のものを用い、これを気体で直接押圧するので、型と被成型物の間に圧力を均一に加えることができ、パターンを正確に転写することが可能となる。
【0016】
また、型又は被成型物と加熱手段との間にある介在物を排除することができるため、電磁波の放射によって加熱するか、あるいは、所定温度の気体によって加熱することにより、被成型物を高速に昇降温することができ、スループットを向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1のインプリント装置1は、図1に示すように、型100のパターンをフィルム状の被成型物200に転写するためのインプリント装置であって、型100を保持するためのステージ11と、被成型物200と共に加圧室12を構成する加圧室用筐体13と、加圧室用筐体13と被成型物200との間を密閉する密閉手段14と、加圧室用筐体13と被成型物200との間を開閉する開閉手段15と、加圧室12内の気圧を調節する加圧手段16と、被成型物200を加熱するための加熱手段17と、で主に構成される。また、型100と被成型物200との間の気体を脱気する脱気手段18を具備する方が好ましい。
【0019】
ステージ11は、型100を保持できるものであればどのようなものでも良いが、例えば、型100を保持する面が型100より大きい平面状に形成されるか、または、当該平面に、型100の厚みと同程度の深さを有し型100を内設できる凹部が形成される。材質は、成型時の加圧や加熱に耐えられる耐圧性、耐熱性を有していればどのようなものでも良いが、型100の熱膨張係数に近いものを用いる方が好ましい。例えば、型100がニッケル製のものであれば、ニッケル製のステージ11を用いることができる。また、型100とステージ11とを一体に形成する方が被成型物200に不要な転写跡が生じるのを防止できる点で好ましい。例えば従来は、パターンを電気鋳造によって形成した後、パターンの部分のみを切り出して用いられていたが、これを切り出さずにそのまま用いれば良い。また、被成型物200を保持する保持具を別途設けても良い。
【0020】
加圧室用筐体13は、開口部を有する有底筒状に形成され、開口部を被成型物200によって閉じることにより、密閉された空間である加圧室12を構成するものである。この開口部は、少なくとも被成型物200に転写されるパターン領域より大きく形成される。材質は、成型時の加圧や加熱に耐えられる耐圧性、耐熱性を有していればどのようなものでも良く、例えば、炭素鋼等の鉄材やSUSなどの金属を用いることができる。
【0021】
密閉手段14は、加圧室12を密室にするために、加圧室用筐体13と被成型物200との間を密接させるものである。例えば、図1に示すように、密閉手段14としてOリング141を用意すると共に、加圧室用筐体13の側壁の端部にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝142を形成し、この溝142にOリング141を配置すれば良い。これにより、被成型物200を加圧室用筐体13とステージ11とによって挟持し、加圧室用筐体13と被成型物200とを密接させることができるので、加圧室12を密閉することができる。また、加圧室用筐体13と被成型物200との間に傾きがあっても、その平行度がOリング141のつぶし代以内であれば、加圧室12を確実に密閉することができる。
【0022】
開閉手段15は、加圧室用筐体13と被成型物200とを近接又離間することにより、加圧室12を開閉するもので、例えば加圧室用筐体13を油圧式又は空圧式のシリンダによって移動するものや、電気モータとボールねじによって移動するもの等を適用することができる。
【0023】
加圧手段16は、型100のパターンを被成型物200に転写可能な圧力まで、加圧室12内の気圧を調節可能であればどのようなものでも良いが、例えば、加圧室用筐体13に加圧室用気体給排流路161を接続し、加圧室用気体給排流路161から加圧室12へ空気や不活性ガス等の気体を給気又は排気すれば良い。気体の供給には、圧縮された気体を有するボンベ162(図1参照)又は加圧ポンプを用いることができる。また、気体の排気には、脱気弁163の開閉によって気体を排気するようにすれば良い。なお、適宜安全弁等を設けても良い。
【0024】
加熱手段17は、型100や被成型物200を少なくとも被成型物のガラス転移温度又は溶融温度まで加熱することができるものであればどのようなものでも良く、ステージ11側にヒータを設けてステージ11側から型100や被成型物200を加熱するものを用いることができる。また、加圧室12内に設けられ、型100又は被成型物200を遠赤外線等の電磁波による放射によって加熱するものを用いることもできる。例えば、加圧室用筐体13の加圧室12側に設けられたセラミックヒータやハロゲンヒータを用いれば良い。このように構成すると、従来の装置のように、加熱手段17と被成型物200との間にステージ11や膜等の介在物がないため熱容量を小さくすることができ、被成型物200を最小限の熱量で高速に加熱することができる。また、これにより冷却も高速にすることができる。また、加圧手段が供給する気体を加熱しておき、加熱気体によって加熱することもできる。勿論、加熱手段17は、これらを複数組み合わせたものでも構わない。なお、加圧室用筐体13と加熱手段17との間に断熱材171を設けても良い。また、熱電対等の温度検出手段を用いて型100や被成型物200の温度を検知し、温度コントローラ等の制御手段(図示せず)によって加熱手段17を制御し温度を調節するようにしても良い。
【0025】
脱気手段18は、型100と被成型物200との間の気体を除去するものである。脱気手段18を設ける方が好ましい理由は、型100と被成型物200との間に気体が存在すると、型100と被成型物200を十分に押圧することができなかったり、加熱むらを生じたりし、転写不良の原因となるからである。この脱気手段18としては、例えば、少なくとも型100及び被成型物200を内包する真空室181を形成し、真空室181を減圧することで型100と被成型物200との間の気体を除去するものを用いれば良い。
【0026】
真空室181は、例えば、加圧室用筐体13の上部を覆う天井部材182と、天井部材182から垂下して設けられ加圧室用筐体13の側部を覆う蛇腹183と、当該蛇腹183とステージ11又はステージ11を載置する基台10との間を密閉するシール部材184と、真空室用気体給排流路を介して真空室181内の気体を排気する真空ポンプ185によって形成される。このシール部材184は、蛇腹183のステージ11側に形成された凹状の溝に配置される。また、真空ポンプは、型100に被成型物200を加圧した際に転写不良が生じない範囲まで真空室181を減圧できるものであれば良い。また、天井部材182は、開閉手段15によって移動可能に形成される。なお、天井部材182、蛇腹183、シール部材184は、真空にした際の外力に耐えられる強度を有するものであることは言うまでもない。
【0027】
また、図1に示すように、上述した加圧室用給排流路と真空室用気体給排流路を共通にすることも可能である。この場合、まず、図2に示すように、加圧室12を解放した状態で真空室181及び加圧室12の気体を排出して型100と被成型物200の間の気体を除去し、次に、図1に示すように、開閉手段15で加圧室12を閉鎖した後、加圧室12に気体を供給して型100に対し被成型物200を押圧すれば良い。
【0028】
また、インプリント装置は、冷却手段を具備していても良い。冷却手段は、型100又は被成型物200を冷却するものであればどのようなものでも良いが、例えば、被成型物200の温度より低い空気や不活性ガス等の気体を被成型物200や型100に送風するファン等を用いることができる。また、加圧室12内の気体を冷却ガスで置換する置換手段を用いても良い。また、ステージ11内にアルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属で形成された冷却流路を形成し、その内部に水や油等の冷却液又は空気や不活性ガス等の冷却気体を流すようにしても良い。
【0029】
ここで、被成型物200としては、成型温度において加圧室12側からの圧力により型100の形状等に応じて変形できるものであれば種々のものを適用することができる。例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、パラフィン、環状オレフィン系熱可塑性樹脂等の樹脂の他、アルミニウム等の金属を用いれば良い。また、熱可塑性材料であれば板状、シート状、フィルム状等の形状を問わず任意に使用することができる。本発明の効果が発現する熱可塑性材料の厚みとして1mm以下の材料が好適に使用でき、特に500μm以下の厚みを有するシート・フィルムが好ましく、200μm以下、100μm以下、50μm以下、と膜厚が薄くなるにつれて本発明の効果が顕著に発現する。
【0030】
型100は、例えば「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」、「シリコン」などから形成されており、その一端面(成型面)に所定のパターンが形成されている。このパターンは、その成型面に精密機械加工を施すことで形成することができる。また、シリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって形成したり、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して形成したりすることもできる。また、後述するフィルム状の型100のようにインプリント技術を用いて形成することも可能である。もちろん型100は、微細パターンが形成できるものであれば材料やその製造方法が特に限定されるものではない。このパターンの幅(成型面の平面方向の寸法)は、用いられる被成型物200の種類にもよるが、100μm以下、10μm以下、2μm以下、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。更に、このパターンの深さ(成型面100aと直交する方向の寸法)は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、このパターンのアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。
【0031】
また、この型100は、インプリントプロセス中に加熱・冷却されるため、できる限り薄型化し、その熱容量を小さくする方が好ましい。
【0032】
次に、型100のパターンをフィルム状の被成型物200に転写するインプリント方法について説明する。
【0033】
[ステップ1]
被成型物200に転写したいパターンを反転させたパターンを有する型100を用意し、ステージ11上に固定する。この型100の上に、フィルム状の被成型物200を配置する(図3参照)。
【0034】
[ステップ2]
脱気手段18によって、型100と被成型物200との間の気体を除去する。例えば、加圧室12を開放した状態で、蛇腹183のシール部材を基台10に当接させて真空室181を形成する(図2参照)。この真空室181内の空気を加圧室12内に設けられた加圧室用気体給排流路161から真空ポンプによって排気する。なお、シール部材には、蛇腹の弾性力によって基台10に当接されるが、別途固定手段で基台に固定するようにしても良い。
【0035】
[ステップ3]
加圧室用筐体13を開閉手段15によって被成型物200側に移動し、Oリング(密閉手段14)を被成型体に当接させて加圧室12を構成する(図1参照)。
【0036】
[ステップ4]
加圧手段16によって加圧室12内を加圧し、被成型物200を型100に押圧する。
【0037】
[ステップ5]
加熱手段17によって被成型物200を被成型物200が流動可能な温度(例えば、樹脂のガラス転移温度)以上に加熱する。例えば、加圧室用筐体13の天井部に形成された遠赤外線ヒータを用いて、型100や被成型物200を直接加熱すれば良い。なお、加圧した後に加熱する場合について説明したが、ステップ4とステップ5は逆でもよく、加熱した後に加圧しても良い。
【0038】
[ステップ6]
型100のパターンを被成型物200に転写するのに十分な所定の時間経過後、加熱手段17による加熱を停止し、冷却手段によって被成型物200を冷却する。
【0039】
[ステップ7]
加圧室12内を大気圧まで減圧した後、加圧室12および真空室181を開放し、被成型物200を型100から離型する。なお、冷却手段として、加圧室12内の気体を冷却気体と置換するものを用いる場合には、冷却と減圧を同時に行うことも可能である。
【0040】
これにより、従来、型100と被成型物200との間に存在した余分な介在物を取り除くことができるので、型100と被成型物200の間に圧力を均一に加えることができると共に、加熱、冷却を高速に行うことができる。
【実施例2】
【0041】
本発明の第2のインプリント装置2は、図4に示すように、フィルム状の型100のパターンを被成型物200に転写するためのインプリント装置であって、被成型物200を保持するためのステージ11と、型100と共に加圧室12を構成する加圧室用筐体13と、加圧室用筐体13と型100との間を密閉する密閉手段14と、型100と被成型物200の間の気体を除去する脱気手段18と、加圧室用筐体13と型100との間を開閉する開閉手段15と、被成型物200を加熱するための加熱手段17と、加圧室12内の気圧を調節する加圧手段16と、で主に構成される。
【0042】
すなわち、本発明の第2のインプリント装置2は、本発明の第1のインプリント装置1において、型100にフィルム状のものを用い、型100と被成型物200の位置を入れ替えたものである。
【0043】
ステージ11は、被成型物200を保持できるものであればどのようなものでも良いが、例えば、被成型物200を保持する面が被成型物200より大きい平面状に形成されるか、または、当該平面に、被成型物200の厚みと同程度の深さを有し被成型物200を内設できる凹部が形成される。材質は、成型時の加圧や加熱に耐えられる耐圧性、耐熱性を有していればどのようなものでも良いが、被成型物200の熱膨張係数に近いものを用いる方が好ましい。
【0044】
加圧室用筐体13は、開口部を有する有底筒状に形成され、開口部を型100によって閉じることにより、密閉された空間である加圧室12を構成するものである。この開口部は、少なくとも被成型物200に転写されるパターン領域より大きく形成される。材質は、成型時の加圧や加熱に耐えられる耐圧性、耐熱性を有していればどのようなものでも良く、例えば、炭素鋼などの鉄材やSUS等の金属を用いることができる。
【0045】
密閉手段14は、加圧室12を密室にするために、加圧室用筐体13と型100との間を密接させるものである。例えば、図4に示すように、密閉手段14としてOリングを用意すると共に、加圧室用筐体13の側壁の端部にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝を形成し、この溝にOリングを配置すれば良い。これにより、型100を加圧室用筐体13とステージ11とによって挟持し、加圧室用筐体13と型100とを密接させることができるので、加圧室12を密閉することができる。また、加圧室用筐体13と型100との間に傾きがあっても、その平行度がOリングのつぶし代以内であれば、加圧室12を確実に密閉することができる。
【0046】
開閉手段15は、加圧室用筐体13と型100とを近接又離間することにより、加圧室12を開閉するもので、例えば加圧室用筐体13を油圧式又は空圧式のシリンダによって移動するものや、電気モータとボールねじによって移動するもの等を適用することができる。
【0047】
加圧手段16、加熱手段17、脱気手段18、冷却手段の構成は、上述した第1のインプリント装置と同様の構成のため説明は省略する。
【0048】
また、このインプリント装置2に用いる型100は、加圧室12側からの圧力により被成型物200の形状等に応じて変形できるフィルム状のものであれば種々のものを用いることができ、例えば図5に示すように、所定のパターン103を有する基層101と、パターン103上に形成される硬質層102と、で構成されるものを用いることができる。
【0049】
基層101は、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂等の熱可塑性樹脂からなるフィルムによって形成される。また、パターンの寸法安定性の観点から、基層101に用いる熱可塑性樹脂の吸水率は3%以下である方が好ましい。
【0050】
また、基層101は、所定のパターン103を有する。当該パターン103はどのように形成しても良いが、例えば熱インプリント法のようなナノインプリント技術を用いることができる。なお、当該パターン103は、凹凸からなる幾何学的な形状のみならず、例えば所定の表面粗さを有する鏡面状態の転写のように所定の表面状態を転写するためのものや、所定の曲面を有するレンズ等の光学素子を転写するためのものも含む。
【0051】
また、このパターン103は、平面方向の凸部の幅や凹部の幅の最小寸法が100μm以下であっても容易に形成される。なお、このパターン10の幅(平面方向の寸法)は、用いられる被成型物200の種類にもよるが、100μm以下、10μm以下、2μm以下、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。
【0052】
また、このパターン103の深さ方向の寸法は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、このパターン103のアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。
【0053】
また、基層101は、成型温度において加圧室12側からの圧力により被成型物200の形状等に応じて変形できる厚さに形成される。
【0054】
また、この型100は、インプリントプロセス中に加熱・冷却されるため、できる限り薄型化し、その熱容量を小さくする方が好ましい。例えば500μm以下、好ましくは100μm以下に形成されるが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0055】
硬質層102は、型100を熱インプリントにおける成型温度に加熱し被成型物200に押圧する際に、基層101に用いられる熱可塑性樹脂より硬い材料によって形成される。熱インプリントにおける成型温度を考慮すると、少なくとも0℃以上100℃以下の範囲において、基層101に用いられる熱可塑性樹脂より硬い材料を用いるのが好ましい。このような材料としては、少なくとも0℃以上100℃以下の範囲において固体である金属又は無機材料が該当する。例えば、白金(Pt)やニッケル(Ni)、パラジウム、ルテニウム、金、銀、銅、ZnO、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属又は金属化合物、SiやSiO等の無機物がある。もちろん、少なくとも0℃以上100℃以下の範囲において、基層101より硬い材料であれば、その他の材料、例えばフッ素系樹脂等を用いることも可能である。なお、硬さは、ビッカース硬さやブリネル硬さ等を、高温硬さ試験機等を用いて比較すれば良い。また、ナノインデンテーションによる試験を行うことで確認することも可能である。
【0056】
また、硬質層102の膜厚は、厚すぎると基層101のパターン103が埋まってしまうため、強度を保持できる範囲で薄く形成される方が好ましく、例えば100nm以下に形成される。なお、硬質層102は、用途に応じて、異なる材料により複数層に形成しても勿論構わない。
【0057】
このような硬質層102の形成方法としては、どのような方法でも良いが、例えば、上記材料を化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)、めっき法等を用いて堆積させる方法がある。例えば、白金(Pt)やニッケル(Ni)等の金属をスパッタリングや蒸着により形成すれば良い。また、銀鏡反応を利用して形成しても良い。また、フッ素系樹脂等の材料を適用する場合には、材料を溶かした溶液を基層101のパターン103上に滴下してスピンコートする方法や、当該材料を溶かした溶液中に基層101を浸漬する方法などを用いることもできる。
【0058】
被成型物200は、種々のものに適用することができ、例えばポリカーボネート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、パラフィン、環状オレフィン系熱可塑性樹脂等の樹脂を用いることができる。また、被成型物200は、フィルム状に形成されるものや基板状のもの、基板上に形成される薄膜状のもの等、種々の形状のものを適用することができる。
【0059】
次に、フィルム状の型100のパターンを被成型物200に転写するインプリント方法について説明する。
【0060】
[ステップ1]
被成型物200を用意しステージ11上に固定する。この被成型物200の上に、被成型物200に転写したいパターンを反転させたパターンを有するフィルム状の型100を配置する。
【0061】
[ステップ2]
脱気手段18によって、型100と被成型物200との間の気体を除去する。例えば、加圧室12を開放した状態で、蛇腹183のシール部材を基台10に当接させて真空室181を形成する。この真空室181内の空気を加圧室12内に設けられた加圧室用気体給排流路161から真空ポンプによって排気する。なお、シール部材には、蛇腹の弾性力によって基台10に当接されるが、別途固定手段で基台に固定するようにしても良い。
【0062】
[ステップ3]
加圧室用筐体13を開閉手段15によって型100側に移動し、Oリング(密閉手段14)を型100に当接させて加圧室12を構成する(図4参照)。
【0063】
[ステップ4]
加圧手段16によって加圧室12内を加圧し、型100を被成型物200に押圧する。
【0064】
[ステップ5]
加熱手段17によって被成型物200を被成型物200が流動可能な温度(例えば、樹脂のガラス転移温度)以上に加熱する。例えば、加圧室用筐体13の天井部に形成された遠赤外線ヒータを用いて、型100や被成型物200を直接加熱すれば良い。なお、加圧した後に加熱する場合について説明したが、ステップ4とステップ5は逆でもよく、加熱した後に加圧しても良い。
【0065】
[ステップ6]
型100のパターンを被成型物200に転写するのに十分な所定の時間経過後、加熱手段17による加熱を停止し、冷却手段によって被成型物200を冷却する。
【0066】
[ステップ7]
加圧室12内を大気圧まで減圧した後、加圧室12および真空室181を開放し、被成型物200を型100から離型する。なお、冷却手段として、加圧室12内の気体を冷却気体と置換するものを用いる場合には、冷却と減圧を同時に行うことも可能である。
【0067】
これにより、従来、型100と被成型物200との間に存在した余分な介在物を取り除くことができるので、型100と被成型物200の間に圧力を均一に加えることができると共に、加熱、冷却を高速に行うことができる。また、被成型物200が基板状のものであってもパターンを転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1のインプリント装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明のインプリント装置の真空室を形成した状態の概略断面図である。
【図3】本発明のインプリント装置の加圧室、真空室を開放した状態の概略断面図である。
【図4】本発明の第2のインプリント装置を示す概略断面図である。
【図5】本発明のインプリント装置に関するフィルム状の型を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 インプリント装置
2 インプリント装置
11 ステージ
12 加圧室
13 加圧室用筐体
14 密閉手段
15 開閉手段
16 加圧手段
17 加熱手段
18 脱気手段
100 型
101 基層
102 硬質層
200 被成型物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型のパターンをフィルム状の被成型物に転写するためのインプリント装置であって、
前記型を保持するためのステージと、
前記被成型物と共に加圧室を構成する加圧室用筐体と、
前記加圧室用筐体と前記被成型物との間を密閉する密閉手段と、
前記加圧室用筐体と前記被成型物との間を開閉する開閉手段と、
前記加圧室内の気圧を調節する加圧手段と、
前記被成型物を加熱するための加熱手段と、
を具備することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
フィルム状の型のパターンを被成型物に転写するためのインプリント装置であって、
前記被成型物を保持するためのステージと、
前記型と共に加圧室を構成する加圧室用筐体と、
前記加圧室用筐体と前記型との間を密閉する密閉手段と、
前記加圧室用筐体と前記型との間を開閉する開閉手段と、
前記加圧室内の気圧を調節する加圧手段と、
前記被成型物を加熱するための加熱手段と、
を具備することを特徴とするインプリント装置。
【請求項3】
前記型と前記被成型物の間の気体を除去する脱気手段を具備することを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、電磁波の放射によって加熱するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記加圧室用筐体に所定温度に加熱された気体を供給するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記被成型物を冷却するための冷却手段を具備することを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項7】
所定の成型温度において用いられるフィルム状の型であって、熱可塑性樹脂からなる基層と、前記成型温度において前記樹脂より硬い材料からなり前記基層の成型面側に形成される硬質層と、を有する型を具備することを特徴とする請求項2記載のインプリント装置。
【請求項8】
型のパターンをフィルム状の被成型物に転写するためのインプリント方法であって、
前記型に対し前記被成型物を気体で直接押圧することを特徴とするインプリント方法。
【請求項9】
フィルム状の型のパターンを被成型物に転写するためのインプリント方法であって、
前記被成型物に対し前記型を気体で直接押圧することを特徴とするインプリント方法。
【請求項10】
前記型と前記被成型物の間の気体を除去することを特徴とする請求項8又は9記載のインプリント方法。
【請求項11】
前記型又は前記被成型物を電磁波の放射によって加熱することを特徴とする請求項8又は9記載のインプリント方法。
【請求項12】
前記型又は前記被成型物を所定温度の気体によって加熱することを特徴とする請求項8又は9記載のインプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154393(P2009−154393A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335093(P2007−335093)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(504097823)SCIVAX株式会社 (31)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】