説明

インペラとモータの連結構造

【課題】モータのシャフトにローレットを設けないでもインペラとモータの強固な結合を得る。
【解決手段】インペラ50の樹脂製のベース部51から延びた軸部55にモータMのシャフト38がガイドされ挿入される長い中心孔56が設けられ、軸部先端には大径の固定部材保持部58が開口している。固定部材保持部にはシャフト38と圧入関係となる中心孔71を有する金属製の固定部材70が嵌め込まれ、熱カシメにより抜け止めされる。固定部材70は小判形の外形を有し、固定部材保持部58は固定部材の外形と対応しているので、シャフト38と固定部材70の結合によりインペラ50はシャフトと一体回転する。シャフト38が固定部材70に斜めに圧入されるようなことがあってもシャフトは長い中心孔56への挿入により位置決めされ、インペラ50とシャフト38の回転軸線が合致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポンプ装置に用いられるインペラとモータの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に配置したモータのシャフト先端にインペラを取り付けて、モータとポンプを一体に組み付けたモータ駆動のポンプ装置がある。
このようなポンプ装置として、出願人は特開2010−031836号公報に記載のものを先に提案している。このポンプ装置では、インペラが樹脂製であることから単純な平滑表面をもつシャフトをインペラ側の孔に圧入するだけではシャフトとインペラ間の高い締結力が期待できないため、シャフトとインペラの一体回転とインペラの抜け止めを確実なものとする目的でシャフト側にローレットを形成してインペラの結合筒部に圧入している。
これにより、締結力低下などのおそれなしに長期間の実用が可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−031836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータのシャフトにローレットを施すにはレース工程が必要となり、まず製造コストが高くなる不都合がある。
そして、単純な丸軸の場合と比較して、ローレット軸の圧入ではシャフトとインペラの軸心が合わせづらくなる。軸心が一致しない場合には高回転時に振動が発生して不安定な動作になる可能性があるので、軸心合わせに手間がかかる分だけこの点でもコスト低減が困難となる。
【0005】
したがって本発明は、上述の問題点に鑑み、さらに改良を行い、モータのシャフトにローレットが不要なインペラとモータの結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポンプにおける樹脂製のインペラとモータの連結構造であって、インペラが、その回転軸線上にモータの金属製シャフトがガイドされ挿入されるシャフトガイド部と、固定部材保持部とを有し、金属製でシャフトが圧入される中心孔を備えるとともに周縁が非円形の固定部材を固定部材保持部に保持して、シャフトをシャフトガイド部に挿入するとともに、固定部材の中心孔に圧入してインペラとモータを結合したものとした。
シャフトに従来のようなコストのかかるローレットを形成しないでもインペラを強固にモータのシャフトに結合することができる。
【0007】
固定部材の周縁は中心孔に関してとくに点対称とするのが、偏心によるブレが発生しない点で好ましい。
また、固定部材を板材から形成することにより、コストを低減でき、ローレットに比較して軸方向のサイズも小さくて済む。
固定部材保持部はシャフトガイド部よりモータ側に設けられた凹部であって、固定部材をその凹部の底面に着座させるとともに、固定部材の抜け止め手段を有することが、インペラの正規位置維持のために望ましい。
抜け止め手段としては固定部材保持部の熱カシメとすることができる。
【0008】
シャフトガイド部がインペラのベース部からモータ側へ延びる軸部に設けられるとともに、固定部材保持部が軸部の先端に設けられ、シャフトガイド部の長さが固定部材の軸方向厚さよりも大きいものとするのが好ましい。
ベース部から軸部を延ばすことによりシャフトガイド部を長くすることができる。そして、固定部材の中心孔とシャフトガイド部がずれたり傾いたりしても、シャフトは長いシャフトガイド部によって位置決めされるので、インペラの回転軸線とシャフトの回転軸線が精度良く芯合わせされる。
【0009】
軸部をインペラ室とモータ側空間の間に設けたオイルシールを貫通してモータ側空間へ延ばした場合、固定部材保持部はオイルシールよりもモータ側に位置させるのが好ましい。
固定部材保持部で固定部材の熱カシメを行なっても、オイルシール部から離れているので、シール性能に影響を与えない。
【0010】
さらに軸部の外面には金属製の筒部材を一体にモールドし、該筒部材のモータ側の端を固定部材保持部より所定距離手前で径方向内側へ延ばして、固定部材保持部に保持された固定部材と軸方向に対向させると、固定部材が着座する固定部材保持部の底壁が筒部材を径方向内側へ延ばした部分で裏支えされ、シャフトに固定部材を圧入する際の底壁にかかる反力に対する強度が高まる。
金属製の筒部材をシールリップとの摺接面とすることにより、シールリップの磨耗が防止される。
また、筒部材はベース部において径方向に延びて径方向延在部を形成することにより、インペラの羽根を支持する剛性が高くなる。
そして、径方向延在部をベース部における羽根を避けた領域に少なくとも位置させることにより、羽根間の平坦面を治具などで押すことにより容易確実にインペラ(固定部材)をシャフトに圧入することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インペラにシャフトガイド部と、シャフトが圧入される非円形の金属製固定部材を保持する固定部材保持部とを有することにより、モータのシャフトをシャフトガイド部に挿入して回転軸線を合わせるとともに固定部材で一体回転可能としたので、シャフトに従来のようなコストのかかるローレットを形成しないでもインペラを強固にモータのシャフトに結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態の全体構造を示す外観斜視図である。
【図2】実施の形態の縦断面図である。
【図3】第1蓋とインペラカバーを取り外して示す一部破断上面図である。
【図4】インペラとモータの連結部分を示す拡大断面図である。
【図5】固定部材保持部と固定部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を風呂水ポンプ装置に適用した実施の形態について説明する。
図1は風呂水ポンプ装置1の外観斜視図、図2は上下反転して示すその縦断面図である。ただし、図2においてモータMは一部破断部を除いて外面を示している。以下の説明では組み立て過程を含む内部構造の理解を容易にするため、部材配置の上下関係は図2に示した状態におけるものとする。
風呂水ポンプ装置1は、ケース2内にポンプPとこれを駆動するモータMを収納して構成される。
ケース2は本体部3、第1蓋4および第2蓋5から構成され、内部がモータハウジング6とポンプハウジング7とに区画されて、ポンプハウジング7内にポンプPが構成されている。
【0014】
本体部3は上端が開口し、上部空間を除いて縦隔壁10により横方向(左右)に2分されている。2分された一方は底壁11を備える。2分された他方は縦隔壁10の上端につながる横隔壁12を上壁とし、その下端は底壁11よりも高い位置で開口している。
底壁11を備える空間は横隔壁12の上側空間とつながり、第1蓋4との間にポンプハウジング7を形成する。
横隔壁12を上壁とする空間は下端開口を閉じる第2蓋5との間にモータハウジング6を形成する。本体部3に取り付けられた状態で第2蓋5の外面(下面)は底壁11の下面と面一になる。
以下の説明では、第1蓋4および第2蓋5を含まない状態でも本体部3における対応する空間を便宜的にモータハウジング6およびポンプハウジング7と呼ぶ。
第1蓋4は本体部3の上端を閉じ、その結合部にシールリング8が設けられて水密としている。
【0015】
モータハウジング6には出力軸であるステンレス製のシャフト38の軸心を上下方向にしてモータMが挿入配置され、横隔壁12の上側に延びるポンプハウジング7の上部空間にはシャフト38と軸心を整合させたインペラ50が配置される。
横隔壁12の上面にはインペラを囲むリング状の縦壁21が一体に設けられている。
縦壁21には上からインペラカバー40が被せられて、横隔壁12との間にインペラ室20を形成している。
【0016】
インペラカバー40は円盤部41と当該円盤部の周縁から下方に延びて縦壁21の外周に整合するリング壁42を有しており、リング壁42の下端を横隔壁12上に着座させている。
円盤部41の中央には接続口45から延びる第3吸入通路47が開口している。接続口45は縦隔壁10にそって横隔壁12より下方位置まで所定量延びた底壁46を有する広口で、縦隔壁10に対して垂直な方向に開口している。第3吸入通路47は底壁46の上部から延びている。
【0017】
図3は本体部3の開口を蓋する第1蓋4を取り外して当該開口側から見た図である。図3ではさらにインペラカバー40も取り外して仮想線で示してある。
図3に示すように、横隔壁12上面の縦壁21には略直径線上の対称位置に切り欠き22が設けられ、それぞれ当該切り欠き22から流れ出る水がリングの接線方向を向くようにガイド壁23を備えている。インペラカバー40のリング壁42にも対応する切り欠き43が接線方向に向いて設けられている。また、ポンプハウジング7内の水を呼び水としてインペラ室20内へ戻すための戻し孔24を備えている。
以上のように、インペラ室20にインペラ50を配置してポンプPがいわゆる自吸式遠心ポンプとして構成される。
一方、図2に戻って、ポンプハウジング7の底壁11には円形断面の吸入口15が所定長さ下方に突出して設けられ、吸入口15からはポンプハウジング7内の中間高さまで第1吸入通路16が延びている。第1吸入通路16の下半部は上半部よりも内径を大きくしてあり、その段部の上半部側にはフィルタ格子17が一体成型されている。
【0018】
また、ポンプハウジング7の下端部側壁には吐出口19が設けられている。
第1吸入通路16とインペラカバー40の間に通路部材30を設けてある。通路部材30は下端を第1吸入通路16に接続した逆L形の第2吸入通路31と、そのモータハウジング6側に向いた上端部につながってインペラカバー40の接続口45に嵌め込まれる拡張室32とからなっている。
拡張室32内には第2吸入通路31の上端開口に面して逆止弁35が設置され、第2吸入通路31側への水の逆流を防止する。
なお、インペラカバー40はその所定部位が第1蓋4の底壁に当接して、これによりインペラカバー40ならびに通路部材30がその取付け位置から抜け止めされる。
【0019】
こうして、吸入口15から流入した水(風呂水)は第1吸入通路16、第2吸入通路31および第3吸入通路47を経て円盤部41の中央からインペラ室20へ流入し、インペラ50の回転により径方向へ付勢されて、切り欠きからインペラ室20外へ押し出される。インペラ室外へ押し出された水は横隔壁12にそった空間から縦隔壁10にそったポンプハウジング7へ流れて、吐出口19から吐出される。
なお、図3に示すように、ポンプハウジング7の吐出口19と対向する側壁には呼水口14が設けられ、呼び水をポンプハウジング7に供給できるようになっている。呼水口14は、図2に仮想線で示すように、縦隔壁10の高さの略中間位置で、吐出口19より第1蓋4側になっている。
【0020】
横隔壁12に円筒状のモータ支持部25が設けられ、モータMの軸受け部37が挿入されるとともに、軸受け部37が突出している上端面がモータ支持部25の下端に押し付けられている。この状態で第2蓋5を取り付けることによりモータMがモータハウジング6内に保持される。
第2蓋5の固定は図1に示すように、第2蓋5から延びるフック28を本体部3に形成した爪29と係合させることにより行なわれる。第2蓋5の側壁には切り欠き27が設けられ、モータの電気端子39を外部に臨ませるようになっている。
【0021】
次に、インペラ50とモータMとの連結構造について、図4の拡大断面図により説明する。図4においてもモータMは外面を示している。
まず、横隔壁12にはモータハウジング6側(下方)へ突出するシール保持部26が形成され、シール保持部26の下端面から上述のモータ支持部25がモータハウジング6内に延びている。
シール保持部26およびモータ支持部25は同一の軸線S上に並んでおり、インペラ50およびモータのシャフト38の回転軸線が軸線S上に乗る。
シール保持部26の内側にポンプハウジング7側(上側)からオイルシール65が挿入されて保持される。
【0022】
インペラ50は、円盤状のベース部51と、ベース部51の外径よりも大きな内径を有してベース部51から離間させたリング板52との間に複数の羽根53を備える。羽根53は周方向等間隔に配置され、それぞれ弧状をなして半径線に対して傾斜させてある。
ベース部51の中央はリング板52側に断面山形に膨出している。
ベース部51からはリング板52と反対方向に軸部55が延びている。ベース部51、リング板52、羽根53および軸部55は一体の樹脂製である。
【0023】
軸部55にはモータMのシャフト38と圧入関係となる中心孔56が設けられている。中心孔56の上端はベース部51の板厚内まで延び、下端は中間位置まで延びている。
なお、モータMのシャフト38と中心孔56の同軸度が確保されれば、モータMのシャフト38と中心孔56の間に微小な隙間を設けても良い。ただし、モータMのシャフト38と中心孔56の寸法にバラツキがあっても両者の間に大きな隙間ができないようにするため、モータMのシャフト38と中心孔56はこのバラツキを吸収可能な程度の圧入(軽圧入)関係となることが望ましい。
【0024】
中心孔56の下方にはシャフト38より大径となる中間孔57が形成され、軸部55の先端(下端)にはさらに大径の凹部が固定部材保持部58として開口している。
インペラ50には金属製の筒部材60が一体にモールドされている。筒部材60はベース部51の下面から軸部55の外面にそって延びるシール円筒部62と、ベース部51の板厚内を径方向外方へ羽根53と重なる付近まで延びる補強円板部61と、シール円筒部62の先端から軸部内方へ延びる内径フランジ部63とからなっている。上述の軸部55の中心孔56は内径フランジ部63近くまで延びており、中間孔57よりも十分に長くなっている。
シール円筒部62は上述のように軸部55の所定範囲の外面を覆って露出しており、その外周がオイルシール65との摺動面となる。
軸部55は筒部材60の内径フランジ部63よりも先端側において外径をシール円筒部62と略同一に抑え、シール円筒部62よりも太くならないように設定してある。
【0025】
固定部材保持部58には固定部材70が凹部の底壁59に着座させて嵌め込まれる。固定部材70は、モータMのステンレス製のシャフト38よりも硬度の低い真鍮製であり、板材からプレスカットされ、シャフト38の径よりも小さくて圧入関係となる中心孔71を有する。なお、中心孔71と周縁がプレスカットの破断面となる。
また、例えば軸径2〜3mmのシャフト38に対して固定部材70の板厚は1mm程度とすればよい。
【0026】
図5に示すように、固定部材70は周縁が非円形、ここでは2面幅部72を備える小判形の外形を有する。固定部材保持部58の軸方向から見た形状は固定部材70の外形と対応し、固定部材保持部58の開口端縁部の熱カシメKにより、固定部材70が抜け止めされる。
なお、固定部材70の周縁が非円形とは、周縁にそって中心孔71の中心Gからの距離が不均一であることを意味し、対応する形状の固定部材保持部に嵌め込まれることにより回転が伝達可能となる。したがって、非円形としてD形、多角形、偏心円その他、適宜の形状を採用することができるが、振動発生やそれによるオイルシール65への影響を考慮すると、中心孔71の中心Gに関して点対称の形状が好ましい。
【0027】
図4に戻って、筒部材60の内径フランジ部63の内径は、固定部材70の少なくとも最大径よりも小さく設定され、軸方向から見たときに固定部材70と内径フランジ部63が重なるようになっている。このため、内径フランジ部63位置における軸部55の径方向厚みは中心孔56まわりにおける軸部の厚みよりも薄くなっている。
シール保持部26には、その内径面にオイルシール65の環状基部66が圧入され、環状基部66から内径方向に延びたシールリップ67、68がインペラ50のシール円筒部62に弾性的に当接する。シール円筒部62はシールリップ67、68との摺接面となる。なお、シール円筒部62のシールリップ67、68との摺接面の内周側には中心孔56が存在し、モータMのシャフト38が圧入されるが、この圧入はモータMのシャフト38と中心孔56の同軸度を確保するためのものであるため、軸部55に与える影響が少ない。このため、モータMのシャフト38が圧入されてもシール円筒部62が変形することがない。
ここでは、オイルシール65が取り付けられた状態でその上面は横隔壁12の上面よりも沈んでいる。
【0028】
上記構成の風呂水ポンプ装置1の以下のように組み立てられる。
まず、本体部3のモータハウジング6にモータMを取り付け、そのシャフト38の先端をモータ支持部25およびシール保持部26を貫通させて横隔壁12上面に臨ませる。
そして、インペラ50を以下の手順で取付ける。
まずあらかじめ、インペラ50の固定部材保持部58に固定部材70を嵌め込んだうえ、熱カシメして固定部材70を取り付けておく。
また、横隔壁12のシール保持部26に、環状基部66を圧入して、オイルシール65を取り付ける。
【0029】
このあと、インペラ50をその軸部55先端からモータMの軸受け部37から突出しているシャフト38の一端に押し込む。
ここでは、軸部55先端(固定部材保持部58)の固定部材70の中心孔71がシャフト38の径よりも小さく、金属部材同士の圧入となるため、ベース部51における羽根53を避けたスペース部分を不図示の押圧治具で押し込んでいく。
なお、シャフト38は同一の径でモータMを貫通し、他端が軸受け部37と反対側の軸受け部36から露出している(図2参照)。押圧治具はシャフト38の他端を保持することにより、インペラ50を押し込む力がシャフト38からモータMの軸受けなどに伝達されることがない。このため、インペラ50を押し込む力によりモータMが破壊されることを防ぐことができる。
これにより、インペラ50の軸部55がオイルシール65を通過し、次いでシール円筒部62がシールリップ67、68の穴に進入する。
【0030】
今度は相対的にシャフト38が軸部55の中心孔56にガイドされながら挿入(圧入)される。
シャフト38が固定部材に対して斜めに挿し込まれた場合でも、中心孔56が長いのでシャフト38は当該中心孔56で位置決め(ガイド)され、固定部材70の方が変位してインペラ50の回転軸線とシャフト38の回転軸線が精度良く芯合わせされる。
固定部材70の製品誤差や軸部55との取付け誤差で連結前の固定部材70の中心孔71が軸部55の中心孔56の軸線からずれていた場合でも、樹脂の軸部55は内径フランジ部63位置で薄くなり、また固定部材保持部58の肉厚も薄いので変形して、固定部材70の変位を許し、自動的に芯合わせされる。
【0031】
ベース部51の下面が横隔壁12の上面に略一致するまで押し込んで、インペラ50の取付けが完了し、モータMのシャフト38とインペラ50が連結される。
軸部55の固定部材保持部58は固定部材70の外形と対応し、固定部材70はシャフト38と圧入関係になっているから、インペラ50はシャフト38と一体回転可能となる。
この連結状態において、インペラ50の羽根53を挟んだベース部51とリング板52は横隔壁12上の縦壁21内に収まる。また、インペラ50の軸部55先端はモータMの軸受け部37の端面とわずかな間隙をおいて対向する。
インペラ50とシャフト38の連結したあとは任意の段階で、モータハウジング6の第2蓋5を取り付ける。
【0032】
インペラ50をシャフト38に連結したあと、通路部材30とインペラカバー40を取り付ける。
ここでは、まず逆止弁35を通路部材30の拡張室32内の設定部位に設置するとともに、拡張室32の開口端をインペラカバー40の接続口45に嵌め込んで、あらかじめ通路部材30とインペラカバー40を結合してサブアセンブリとしておく。
それから、インペラカバー40をそのリング壁42が縦壁21に被さるように位置合わせしながら横隔壁12上に載置する一方、通路部材30の下端を第1吸入通路16に接続させて、サブアセンブリを本体部3に組み込む。
最後に第1蓋4を本体部3に取り付けて、風呂水ポンプ装置1の組み立てが完了する。
【0033】
以上の構成になる風呂水ポンプ装置1は図1に示す姿勢、すなわち第1蓋4を下に第2蓋5側を上にして、次の要領で使用する。
まず、一端を風呂水内に位置させたホースの他端を吸入口15に挿し込み、吐出口に接続したホースを例えば洗濯機へ導くとともに、呼水口14を例えば水道水につなぐ。
そして、水がインペラ室20を満たして所定の水位になるまで呼び水として水道水を呼水口14からポンプハウジング7へ供給する。これは、インペラ50の羽根53まわりに水が存在しないと遠心ポンプとして機能しないために、使用開始に当たってまずインペラ室20が水没する程度まで水を供給するものであり、ポンプハウジング7へ供給された呼び水は戻し孔24からインペラ室20に流れ込む。
【0034】
このあとモータMを駆動させれば、インペラ50が回転することにより、円盤部41の中央部が負圧となって第3吸入通路からインペラ室20に空気が吸い込まれ、空気の混ざった呼び水が切り欠きからインペラ室20外へ押し出される。空気はポンプハウジング7内で呼び水から分離して吐出口19から排出される一方、呼び水は戻し孔24からインペラ室20へ供給され続けて上記の負圧生成が継続されるので、最終的に風呂水が吸い上げられて第3吸入通路からインペラ室20へ流れ込む。そして、水位が吐出口19まで達すると、風呂水が洗濯機へ給送される。
なお、使用状態においてモータMはオイルシール65より上部に位置することになるので、使用中においてオイルシール65から少々の水が漏れてもモータM内部にまで及ぶことはない。
【0035】
本実施の形態では、軸部55の中心孔56が発明におけるシャフトガイド部に該当し、固定部材保持部58の内壁を固定部材70に溶着させて熱カシメする構成が抜け止め手段に該当する。また、補強円板部61が径方向延在部に該当する。
【0036】
実施の形態は以上のように構成され、インペラ50の軸方向モータMと反対側から風呂水を吸い込み、径方向へ吐き出す構成のポンプPにおいて、インペラ50が、その回転軸線上にモータMの金属製シャフト38がガイドされて挿入される中心孔56と、固定部材保持部58とを有し、シャフト38が圧入される中心孔71を備えるとともに周縁が非円形の金属製固定部材70を固定部材保持部58に保持して、シャフト38を中心孔56に挿入するとともに、固定部材70の中心孔71に圧入してインペラ50とモータMを結合するものとしたので、シャフト38に従来のようなコストのかかるローレットを形成しないでもインペラ50を強固にモータMのシャフトに結合することができる。
また、シャフト38と固定部材70はともに金属製であるため、圧入される長さが小さくても強い圧入強度を得ることができる。このため、ローレットに比較して軸方向のサイズも小さくて済み、全体のサイズを小型にできる。
さらに、シャフト38は、固定部材70が圧入される箇所にローレットを設ける必要がない。このため、モータの軸受け部37と固定部材70が圧入される箇所を近づけることが可能になる。
【0037】
とくに、固定部材70の周縁は中心孔71の中心Gに関して点対称の小判形としたので、偏心によるブレが発生せず、したがって振動によるノイズも、オイルシール65への悪影響も生じない。
そして固定部材70は簡単な形状であるため、とくに板材から形成することができるから、コストが低減するうえ、この点でもローレットに比較して軸方向のサイズも小さくて済み、全体のサイズを小型にできる。
【0038】
固定部材保持部58が中心孔56よりモータM側に設けられた凹部であって、固定部材70を凹部の底壁59に着座させるとともに、側壁の熱カシメKにより抜け止めしているので、インペラ50がモータM方向への水圧を受けても固定部材70と底壁59の当接で移動が阻止され、また熱カシメKの抜け止めにより、インペラ50の自重などによるモータMから離間する方向への移動も阻止されて、安定してインペラ50の正規位置が維持される。
【0039】
中心孔56がインペラ50のベース部51からモータM側へ延びる軸部55に設けられるとともに、固定部材保持部58が軸部55の先端に設けられ、中心孔56の長さが固定部材70の板厚(軸方向厚さ)よりも大きく形成してあるので、たとえ固定部材70の中心孔71がずれたり圧入の途中で傾いたりした場合であっても、シャフト38は長い方の中心孔56で位置決め(ガイド)され、シャフト38と中心孔56間を例えば軽圧入としてもインペラ50の回転軸線とシャフト38の回転軸線が精度良く芯合わせされる。
【0040】
また、軸部55はオイルシール65を貫通してインペラ室20からモータMの設置空間へ延びて、先端の固定部材保持部58がオイルシール65よりもモータM側に位置しているので、固定部材保持部58で固定部材70の熱カシメなどを行なって変形が生じても、シール性能に影響を与えない。
また、金属性筒部材60のシール円筒部62がオイルシール65との摺接面となっているので、ヒケや湯じわ、残留ガスによる荒れ肌などから逃れられない樹脂面との直接接触と比較して、シールリップ67、68の磨耗が防止される。
【0041】
軸部55の外面には金属製の筒部材60が一体にモールドされ、該筒部材のモータM側の端が固定部材保持部58より所定距離手前で径方向内側へ延びて内径フランジ部63となり、固定部材保持部58に保持された固定部材70と軸方向に対向するように設定したので、固定部材70が着座する固定部材保持部の底壁が内径フランジ部63で裏支えされ、シャフト38に固定部材70を圧入する際の底壁59にかかる反力に対する強度が高まる。
【0042】
筒部材60はベース部51において径方向に延びて補強円板部61となっているので、インペラ50の羽根53を支持する剛性が高い。
そしてとくに、補強円板部61はベース部51における全周にわたって延びているので、羽根53間の平坦面を治具などで押すことにより容易確実にインペラ50(固定部材70)をシャフト38に圧入することができる。
【0043】
なお、実施の形態では、シャフト38を長い中心孔56に圧入することにより、インペラ50の回転軸線とシャフト38の回転軸線を合わせるものとしたが、このほか、シャフト38と中心孔56の圧入関係を廃し、代わりに中間孔57をテーパにするとともにシャフト38にも対応するテーパを形成して、テーパによる軸線合わせを行うようにしてもよい。
【0044】
補強円板部61は全周がベース部51の外周縁近くまで広がっているが、全周でなくても部分的にベース部51における少なくとも羽根53を避けたスペースに延びていれば、当該スペースの平坦面を治具等で押すことにより羽根53に負荷をかけることなくインペラ50をシャフト38に圧入することができる。
【0045】
実施の形態は風呂水ポンプ装置に適用した例を説明したが、本発明はこれに限定されず、種々のポンプ装置におけるモータシャフトとインペラの結合構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 風呂水ポンプ装置
2 ケース
3 本体部
4 第1蓋
5 第2蓋
6 モータハウジング
7 ポンプハウジング
8 シールリング
10 縦隔壁
11 底壁
12 横隔壁
14 呼水口
15 吸入口
16 第1吸入通路
17 フィルタ格子
19 吐出口
20 インペラ室
21 縦壁
22 切り欠き
23 ガイド壁
24 戻し孔
25 モータ支持部
26 シール保持部
27 切り欠き
28 フック
29 爪
30 通路部材
31 第2吸入通路
32 拡張室
35 逆止弁
36、37 軸受け部
38 シャフト
39 電気端子
40 インペラカバー
41 円盤部
42 リング壁
43 切り欠き
45 接続口
46 底壁
47 第3吸入通路
50 インペラ
51 ベース部
52 リング板
53 羽根
55 軸部
56 中心孔
57 中間孔
58 固定部材保持部
59 底壁
60 筒部材
61 補強円板部
62 シール円筒部
63 内径フランジ部
65 オイルシール
66 環状基部
67、68 シールリップ
70 固定部材
71 中心孔
72 2面幅部
M モータ
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ポンプにおける樹脂製のインペラとモータの連結構造であって、
前記インペラが、その回転軸線上にモータの金属製シャフトがガイドされ挿入されるシャフトガイド部と、固定部材保持部とを有し、
前記シャフトが圧入される中心孔を備えるとともに周縁が非円形の金属製の固定部材を前記固定部材保持部に保持して、
前記シャフトを前記シャフトガイド部に挿入するとともに、前記固定部材の中心孔に圧入してインペラとモータを結合したことを特徴とするインペラとモータの連結構造。
【請求項2】
前記固定部材の周縁が前記中心孔に関して点対称であることを特徴とする請求項1に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項3】
前記固定部材が板材から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項4】
ポンプがインペラの軸方向モータと反対側から流体を吸い込み、径方向へ吐き出す構成であり、
前記固定部材保持部が前記シャフトガイド部よりモータ側に設けられた凹部であって、前記固定部材を前記凹部の底壁に着座させるとともに、前記固定部材の抜け止め手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項5】
前記抜け止め手段が前記固定部材保持部の側壁の熱カシメであることを特徴とする請求項4に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項6】
前記シャフトガイド部がインペラのベース部からモータ側へ延びる軸部に設けられるとともに、固定部材保持部が前記軸部の先端に設けられ、
前記シャフトガイド部の長さが前記固定部材の軸方向厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1または5のいずれか1に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項7】
前記軸部がインペラ室とモータ側空間の間に設けたオイルシールを貫通してモータ側空間へ延びて、前記固定部材保持部が前記オイルシールよりもモータ側に位置していることを特徴とする請求項6に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項8】
前記軸部の外面には金属製の筒部材が一体にモールドされ、該筒部材のモータ側の端が前記固定部材保持部より所定距離手前で径方向内側へ延びて、固定部材保持部に保持された前記固定部材と軸方向に対向することを特徴とする請求項6または7に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項9】
前記筒部材は前記ベース部において径方向に延びて径方向延在部を形成していることを特徴とする請求項8に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項10】
前記筒部材の径方向延在部は前記ベース部における羽根を避けた領域に少なくとも位置していることを特徴とする請求項9に記載のインペラとモータの連結構造。
【請求項11】
前記筒部材が前記オイルシールとの摺接面となっていることを特徴とする請求項8から10のいずれか1に記載のインペラとモータの連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202295(P2012−202295A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67720(P2011−67720)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】