説明

インモールド加飾方法及び装置

【課題】本発明は、インモールド加飾方法を改善し、この方法を実施するために適した装置を提供する。
【解決手段】インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを有する射出成形装置(1)を用いて製造する方法及び装置。前記加飾側金型半部分(12)は可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)は台架に固定して構成されている。前記加飾側金型半部分(12)にはIMDフィルム(16)が挿入され、前記コア側金型半部分(11)にはIML成形部品が挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド加飾方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形によって製造されるプラスティック射出成形部品を、射出成形の際に加飾層で加飾することは知られている。この場合、いわゆるインモールド加飾フィルム(IMD=In−Mold−Decoration)が、射出成形金型内に挿入され、IMDフィルムの加飾層が、プラスティック射出成形部品の表面に転写される。IMDフィルムは、熱間エンボス加工フィルムのように構成されており、この場合、加飾層は、キャリアフィルム上に解離可能に、特に解離層を用いて解離可能に配置され、さらに、加飾層は、熱活性接着層を有している。さらに、いわゆるインモールドラべリング成形部品またはインサートモールディング成形部品が、射出成形型内に挿入されることが知られている。IML成形部品(IML=In−Mold−Labeling)は、加飾されるインサート部品であり、インサート部品加飾層が、いわゆるバッキングフィルム上に、ヒートラミネーティング加工及び/または熱間エンボス加工及び/または印刷により、適用されている。IML成形部品は、熱成形によって予め成形されていてもよく、その後トリミングまたは打ち抜きされていてもよい。本発明によるIML成形部品は、平坦なインサート部品(インモールドラべリング)であるか、或いは、3次元成形されるか、基準面に対して予め成形される、インサート部品(インサートモールディング)であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、前記方法を改善し、この方法を実施するために適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明によれば、請求項1の対象及び請求項14の課題によって達成される。
【0005】
インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを有する射出成形装置(1)を用いて製造する方法であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、以下の方法ステップを含んでおり、すなわち
a)IMDフィルム(16)を、前記加飾側金型半部分(12)の、加飾側成形面(12f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IMDフィルム(16)を固定する方法ステップと、
b)IML成形部品(15)を、前記コア側金型半部分(11)の、コア側成形面(11f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IML成形部品(15)を固定し、その際前記IML成形部品(15)がインサート部品加飾層(15d)とバッキングフィルム(15b)とを含んでいる方法ステップと、
c)前記加飾側金型半部分(12)を前記コア側金型半部分(11)上に降下させることによって前記射出成形装置(1)を閉じる方法ステップと、
d)液状の熱可塑性射出成形材(17)を前記コア側金型半部分の前記成形キャビティ内へ射出し、その際、前記液状の射出成形材(17)が前記IML成形部品(15)を前記コア側金型半部分(11)から解離させて、前記加飾側金型半部分(12)の前記成形キャビティ内にある前記IMDフィルム(16)に対して押圧させる方法ステップと、
e)前記成形部品の冷却時間が満了した後に前記射出成形装置(1)を開く方法ステップと、
f)加飾された前記成形部品(14)を取り出す方法ステップと、
を含んでいる方法が提案される。
【0006】
本発明の前記目的は、インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを用いて製造するための射出成形装置(1)であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、少なくとも1つの射出路(13)を有し、前記コア側金型半部分(11)の成形キャビティが前記IML成形部品(15)のための固定手段を有し、前記少なくとも1つの射出路(13)の射出口が、前記コア側金型半部分(11)に挿入される前記IML成形部品(15)の下方に配置されること、により、さらに達成される。
【0007】
提案した上記方法及び提案した上記装置は、インモールド加飾フィルムを用いた加飾の長所と、インモールドラべリング成形部品を用いた加飾の長所とを併せ持ったものであり、同時に新規な構成の可能性をも含んでいる。
【0008】
有利には、ステップa)で挿入されるIMDフィルムとステップb)で挿入されるIML成形部品とは、方法ステップd)を実施した後に、IMDフィルムの構成部分がIML成形部品の表面に付着または接着することなく、IMDフィルムが成形部品から除去することができるほど、IMDフィルムがIML成形部品の表面にほとんど付着しないように、互いに整合されている。
【0009】
方法ステップa)において、IMDフィルムの全面が、前記加飾側金型半部分の前記成形キャビティ部上に配置されるように構成されている。好ましくは網状または帯状の形態のIMDフィルムは、例えばフィルム搬送装置を用いて射出成形装置に導入されてもよい。フィルム搬送装置は、IMDフィルム用供給ローラ、残余フィルム用巻取りローラ、IMDフィルムを歩進的に搬送するための搬送装置、供給されたIMDフィルムを加飾側金型半部分に固定するための固定装置を含んでいてもよい。IMDフィルムは、好ましくはその外縁にレジスタマークを有していてよく、該レジスタマークは、好ましくは射出成形装置に設けられた光学位置センサによって検出される。これにより該位置センサは、射出成形装置に対するIMDフィルムの正確な位置決め、すなわち正確な位置合わせを行うことができるように、フィルム搬送装置を制御することができる。この場合の搬送方向における位置精度は、ほぼ0mmから1mmの公差を有し、好ましくは0.25mmから0.75mmの公差を有する。これによって、成形部品上に位置正確に被着させる必要のある単一のイメージ加飾を備えたIMDフィルムを、レジスタマークにより、適宜位置正確に射出成形装置内に配置することが可能である。しかしながら、IMDフィルムは、例えば連続模様及び/または木目及び/または単色彩色のようなエンドレスな加飾を有していてもよく、この場合、このようなエンドレスな加飾に対しては、IMDフィルムの位置正確な位置決めは必要ない。
【0010】
IML成形部品は、方法ステップb)の前に、縁側がトリミングされてもよく、及び/または、トリミング後に熱成形されてもよい。
【0011】
方法ステップb)において、IMLインサート部品が、コア側金型半部分の成形キャビティ部内に配置される位置決めピンによって固定されるようにしてよい。位置決めピンは、IML成形部品の背面に、特にバッキングフィルムに配置されるキャビティ部に係合して、IML成形部品を側方へずれないように固定するように形成されていてよい。液状の熱可塑性射出成形材が射出されると、特にIML成形部品の下方に射出されると、IML成形部品は位置決めピンによって持ち上げられて、射出成形材の圧力によって加飾側金型半部分の成形キャビティ内にあるIMDフィルムに対し押しつけられる。IML成形部品のずれは位置決めピンによるガイドなしに、流入する射出成形材によって非常に迅速に行われるので、実際に、その際に生じるIML成形部品の側方への移動はほとんど問題にならないことが明らかになっている。
【0012】
方法ステップb)において、IMLインサート部品が、静電力及び/または真空力によって、コア側金型半部分の前記成形キャビティ内に固定されるようにしてもよい。
【0013】
さらに、射出成形材は、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、または、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体とポリカーボネートとの混合物、または、ポリカーボネートとアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体との混合物であり、バッキングフィルムがアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体であるようにしてよい。
【0014】
他の実施形態では、射出成形材がポリカーボネートであり、バッキングフィルムがポリカーボネートであってもよい。
【0015】
さらに、射出成形材がポリプロピレン(PP)であり、バッキングフィルムがポリプロピレンであってもよい。
【0016】
また、射出成形材がポリメタクリル酸メチル(PMMA)であり、バッキングフィルムがポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることも可能である。
【0017】
上述の射出成形材とバッキングフィルムとの材料組み合わせ以外にも、他の組み合わせが可能である。ただし、バッキングフィルムが射出成形工程の際に少なくとも表面領域で液状化され、これによって液状の射出成形材との、冷えた後も安定であるような融着を保証することができることが条件である。
【0018】
さらに、IML成形部品のインサート部品加飾層が放射線で硬化される、特に紫外線で硬化されるように構成してもよい。硬化により、インサート部品加飾層がIMDフィルムの加飾層と融着しないこと、特にIMDフィルムの加飾層の接着層と融着しないことが達成される。このようなインサート部品加飾層は、例えばイソシアネート架橋性アクリレート保護ラッカー塗装部から成っていてよい。
【0019】
さらに、IML成形部品は、インサート部品加飾層の外側層としての保護ラッカー塗装膜を有し、該保護ラッカー塗装膜は、方法ステップd)において、IMDフィルムの加飾層に、特にIMDフィルムの加飾層の接着層に付着しないように形成されていてもよい。このような保護ラッカー塗装膜は、例えばポリウレタン(PU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド、またはポリエステルから成っていてよく、或いは、構成成分としてそれらを有していてもよい。
【0020】
特に、前述した射出成形装置内でのIMDフィルムの位置正確な位置決めと併せて、IMDフィルムが部分的にのみ設けられる接着層を有し、該接着層が、特にIMDフィルムがIML成形部品と重なる面領域で、切除されているように構成してもよい。これにより、IMDフィルムと、特にIMDフィルムの接着層と、IML成形部品の表面との、望ましくない付着結合の可能性を低減させることができる。
【0021】
特に、前述した射出成形装置内でのIMDフィルムの位置正確な位置決めと併せて、IMDフィルムが全面に形成された接着層を有し、該接着層は、IMDフィルムがIML成形部品と重なる面領域において部分的にコーティングすることによって、非活性化するように構成してよい。非活性化のため、例えば部分的なコーティングは、方法ステップd)の間にIML成形部品の表面に付着しないように、または、わずかしか付着しないように形成されていてもよい。コーティングは、例えば放射線で硬化されるラッカー塗装、顔料成分の多いラッカー塗装、または粉末コーティングであってもよい。コーティングは、液状で、または固形でも熱間エンボス加工により、被着させることができる。コーティングは、例えばインクジェットプリント部によっても被着させることができ、インクジェットプリント部は、射出成形装置へのフィルム供給部の領域に配置され、前述した射出成形装置に対するIMDフィルムの位置正確な位置決めとともに、コーティングをIMDフィルム上に適宜位置正確に被着させる。このコーティングは、自己接着ラベルまたはステッカーであってもよい。これによって、IMDフィルムと、特にIMDフィルムの接着層とIML成形部品の表面との間の望ましくない付着結合の可能性を減少させることができる。
【0022】
前述した、IMDフィルムの、特にIMDフィルムの接着層の、IML成形部品の表面への、特に射出成形工程の間の付着を防止するまたはかなり減少させる可能性に加えて、IMDフィルムとIML成形部品の他の組み合わせも可能である。ただし、IMDフィルム及びIML成形部品の互いに向き合っている層の付着(付着=分子間相互作用による2つの物質間の付着力)と、IMDフィルム及びIML成形部品の互いに向き合っている層内部の結合(結合=物質内部の原子または分子間の内部結合力)とが、IMDフィルムの構成成分がIML成形部品の表面に付着または接着せずに、射出成形工程後に、IMDフィルムをIML成形部品から除去することができる程度に、IMDフィルムがIML成形部品の表面に付着するように、互いに整合しあっているのが条件である。同時に、IMDフィルムとIML成形部品の互いに向き合っている層の用途上の機能、すなわち接着層または保護層としての機能を果たすことができるようにするには、当該互いに向き合っている層が十分安定で、耐久性がなければならない。
【0023】
材料の厚みまたはIML成形部品の壁の厚みは、射出成形工程の間に射出成形装置内へ流入する射出成形材とIMDフィルムの熱活性接着層との間に断熱空間を有利に形成することができる。これにより、IMDフィルムの熱活性接着層が接着性になり、すなわち活性化され、射出成形工程の間に、IMDフィルムの接着層が、IML成形部品の表面に当接する領域において、IML成形部品の表面に対して付着する可能性を防ぐことを可能とする。特に、射出成形装置が閉じられ、射出成形圧が射出成形装置内部に印加されてIMDフィルムの接着層に作用し、特に数秒だけ(部品の形状及び部品のサイズにより、約1秒から20秒)継続する、射出成形工程の短時間の間は、射出成形材の熱がIMDフィルムの断熱空間を十分な速度及び適した量で克服することができず、その結果、IMDフィルムの接着層に十分作用して活性化させることができない。方法ステップd)では、射出成形工程の間に、IML成形部品は、IMDフィルムが中に配置された加飾側金型半部分に対し押圧される。その際に、IML成形部品は、約2mmから2.5mm移動することがある。この「移動」は、最終的に望ましい成形部品の壁の厚みから、IML成形部品の壁の厚みを差し引いて算出される。射出成形材の射出は、IML成形部品の下で、IMDフィルムを備えた加飾側金型半部分の方向で行われ、その結果実際にはIML成形部品はこの方向でのみ移動し、IML成形部品に対する側方へのずれ力が回避され、加飾側金型半部分に対する垂直な押圧が保証されることが好ましい。
【0024】
本発明の他の構成は、射出成形装置から取り出される加飾された成形部品のクリーニングに向けられている。加飾された成形部品に、IMDフィルムの加飾層残余、いわゆるフィルムフレークが残ることは避けがたく、成形部品から除去されなければならない。このフィルムフレークは、キャリアフィルムから解離したものであり、両金型半部分の間の継目個所に形成されるプラスティック材のバリと混同されることはない。
【0025】
他の方法ステップg)として、加飾された成形部品のクリーニングが設けられている。
【0026】
方法ステップg)においては、接触式クリーニング及び/または非接触式クリーニングが設けられ、例えばイオン化と併せて、ブラシクリーニングが行われる。イオン化によってフィルムフレークが除電され、その結果、フィルムフレークが、ブラシクリーニングを困難にするブラシ摩擦による静電荷電が生じる加飾された成形部品の表面に付着することがない。
【0027】
方法ステップg)において、回転ブラシを用いたクリーニングと、イオン化及び吸引によるクリーニングとの組み合わせが設けられていてもよい。
【0028】
さらに、方法ステップg)において、イオン化と、部品に対する乱流圧縮空気による吹き付けと、オプションの吸引とによる、クリーニングの組み合わせが設けられていてもよい。
【0029】
射出成形装置内には、位置決めピンによる固定装置が設けられていてよく、或いは、静電気力供給装置及び/または真空力を存在させるための真空供給装置による固定装置も設けられていてよい。これにより、射出成形装置内の所定位置でのIML成形部品の特に優れた保持を保証することができ、この保持は射出成形材を注入することによってはじめて解消される。
【0030】
射出成形装置は1つ以上の射出路を有していてもよい。この構造は、IML成形部材を加飾側金型半部分のIMDフィルムに対し均等に押圧させるうえで、例えば加飾される成形部品のサイズに比べて広い面積のIML成形部品の場合に好ましい。
【0031】
さらに、加飾側成形面は、IML成形部品を取り囲むデザイン溝を形成するための成形要素を有しているように構成してよい。デザイン溝は、IMDフィルムの加飾層に対するIML成形部品の位置精度の低さ及び/または成形精度の低さを、視覚的に隠すことができる。射出成形装置及びIML成形部品に対する、約0mmから1mmの間、好ましくは0.25mmから0.75mmの間の、IMDフィルムの位置精度の公差に従い、且つ、約0mmから1mmの間、好ましくは0.25mmから0.75mmの間の、射出成形装置内でのIML成形部品の位置精度の公差に従い、デザイン溝の幅が、0mmと2mmの間、好ましくは0.5mmと1.5mmの間であることが有利である。
【0032】
次に、本発明を実施形態を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品を製造するための射出成形装置の一実施形態の概略断面図を示す。
【図2】図1の射出成形装置を閉じた状態で示す。
【図3】図1の射出成形装置を閉じた状態で、射出されたプラスティック材とともに示す。
【図4】図1の射出成形装置を開いた状態で、加飾される射出成形部品とともに示す。
【図5a】図4の射出成形部品の、図5bの切断線Va−Vaに沿った概略断面図を示す。
【図5b】図4の射出成形部品の概略平面図を示す。
【図6】加飾される射出成形部品の第二の実施形態の斜視図を示す。
【図7】図6の射出成形部品の概略部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、コア側金型半部分11と加飾側金型半部分12とを有する射出成形装置1の概略断面図を示す。加飾側金型半部分12は、台架に固定されたコア側金型半部分11に対し、可動に形成されている。両金型半部分は、射出成形型を形成する成形面11f及び12fを有している。
【0035】
図1から図4に図示した実施形態では、コア側成形面11fは、部分的に正の曲率を有し、すなわち凸状に形成されている。加飾側成形面12fは、部分的に負の曲率を有し、すなわち凹状に形成されている。射出成形型を閉じると、両成形面11fと12fとの間に、射出路13を通じて供給可能な液化熱可塑性射出成形材17のための受容空間が形成され、その際成形面11fと12fとは、このようにして製造可能な加飾成形部品14(図4、図5a、図5bを参照)の外側形状を規定する。
【0036】
コア側金型半部分12内には、インモールド加飾フィルム16(IMD=In−Mold−Decoration)が挿入されている。以下では、インモールド加飾フィルム16をIMDフィルム16と記すことにする。コア側金型半部分11内には、インモールドラべリング(IML=In−Mold−Labeling)を用いて加飾された成形部品15が挿入されている。以下では、インモールドラベリングをIML成形部品15と記すことにする。
【0037】
IMDフィルム16は、1つ以上の層として形成される加飾層16dを有し、該加飾層は解離可能にキャリアフィルム上に装着されている。加飾層16dは、特に複層の保護ラッカー塗装層と、特に複層の加飾層(例えば全面及び/または部分的な他のラッカー塗装層或いは金属層を有することができる)と、特に複層の接着層とを有していることが好ましい。これらの層の間には、特に他の接着性中間層が設けられていてよい。IMDフィルム16は、フィルム搬送装置(図1には図示せず)を用いて射出成形装置1を貫通するようにガイドされる。フィルム搬送装置は、IMDフィルム用供給ローラと、残余フィルムのための巻取りローラと、すなわちキャリアフィルムと該キャリアフィルム上に残っている加飾層の残余フィルム用の巻取りローラと、IMDフィルムを歩進的に搬送するための搬送装置と、供給されたIMDフィルムを加飾側金型半部分12に固定するための固定装置とを含んでいてもよい。加飾層16dは、射出成形工程の間に、キャリアフィルムからはがされ、加温作用及び/または加圧作用によって成形部品14の表面に転写される。IMDフィルム16は、熱転写フィルムの原理に従って改良されたものであり、特殊なIMD射出成形金型内での3次元加工に適している。IMD方法は、射出成形工程に組み込まれる加飾工程である。この場合、標準的なエンボス加工パラメータである圧力と温度と時間とは、射出成形工程によって生じる。以下で説明する加飾方法の要件は、IMDフィルムで全面を加飾可能な製品の形状である。
【0038】
IML成形部品15は、インサート部品であり、いわゆるバッキングフィルム15b上に、インサート部品加飾層15dを、ヒートラミネーティング加工、熱間エンボス加工、冷間エンボス加工、或いは印刷したものである。熱間エンボス加工したインサート部品加飾層15dの場合には、キャリアフィルムとその上に解離可能に配置される加飾層とを有する熱間エンボスフィルム(解離層と、保護層と、加飾層と、接着層とから成る)を、圧力及び熱によってIML成形部品の表面上に被着させ、次にキャリアフィルムを加飾層から引きはがし、保護層が加飾層の最上位層を形成するようにする。冷間エンボス加工したインサート部品加飾層15dの場合には、まず接着層をIML部品上に被着させ、例えば印刷し、次にキャリアフィルムとその上に解離可能に配置される加飾層とから成る転写フィルム(解離層と、保護層と、加飾層とから成る)が、接着層上で圧延される。圧延前及び/または圧延中及び/または圧延動後に、高エネルギーの放射線、例えば紫外線を用いて接着層が硬化され、よって活性化され、次にキャリアフィルムが、IMD成形部品上に固着されているインサート部品加飾層15dから引きはがされる。IML成形部品15は、補助加飾要素であり、完成した成形部品14においては全面を加飾層16dによって取り囲まれている。
【0039】
IML成形部品15は、熱成形プロセス及び押し抜きにより、予め成形される。予め熱成形することは必ずしも必要でない。エッジ裁断は、例えば押し抜き、フライス加工、レーザー裁断、またはウォータージェット切断によって行うことができる。この技術的に要求の多いプロセスは、特に3D成形で無端加飾することに適している。標準的な加飾に加えて、補助的な仕上げステップにより、特殊な光沢度、より高い深度効果及び耐摩耗性が可能である。
【0040】
IML成形部品15は、複合材から成っていてもよく、この複合材は、射出成形工程中に、射出成形材17と材料層との間に融着結合を発生させるために、機能的にバッキングフィルム15bに相当している熱可塑性材層を背面に備えている。複合材は、前部側の表面に、機能的にインサート部品加飾層15dに相当している保護層を備えていてもよい。複合材層は、例えば金属層(例えばアルミニウム、鋼、銅、チタン、真鍮、またはこれらの合金から成る)、天然繊維層または合成繊維層(例えば綿、ジュート、亜麻、サイザル、麻、ガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル、ポリアミド)、天然物質層(例えば木材、革)、或いは、複合材(例えば有機層、繊維強化プラスティック、GFK(=glasfaser−verstaerkter Kunstsoff ガラス繊維補強プラスティック)、CFK(CFK=carbonfaserstaerkter Kunststoff 炭素繊維補強プラスティック)、或いは、これらの組み合わせを有していてよい。これらは、前述のように、後面及び前面に他の層を備えている。
【0041】
IML成形部品15は、位置決めピン及び/または静電気力作用及び/または真空力によって、コア側成形面11fに固定可能である。射出路13の射出口は、IML成形部品15の下に配置されており、その結果、IML成形部品15は、熱可塑性プラスティックが射出された際に、IMDフィルム16の加飾層16dに対し押圧されて、背面から射出を受ける。図2が示すように、IML成形部品15は、射出成形型が閉じられた際に、すでに、まだ加飾側金型半部分12内にゆるく配置されているIMDフィルム16にほぼ当接している。IMDフィルムは、この方法ステップにおいては、まだ加飾側成形面12fに対し押圧されていない。
【0042】
図3は、射出成形装置1を、噴射された射出成形材17とともに示したものである。この時点で、IML成形部品15は、IMDフィルム16の加飾層に対し押圧されており、射出された射出成形材17と融着されている。射出成形材17は、熱可塑性プラスティックまたは熱可塑性プラスティック混合物であり、例えばアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、或いは、ポリカーボネートとアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体との混合物(PC/ABS)である。
【0043】
IML成形部品15のバッキングフィルム15bの材料としては、前述のプラスティックを同様に使用してもよい。この場合、すべての材料組み合わせが適しているわけではない。互いに融着結合し、好ましくは熱成形プラスチックフィルムとして製造可能な材料の組み合わせでなければならない。
【0044】
表1は、射出成形材17とIML成形部品15のバッキングフィルム15bとの適切な組み合わせをまとめたものである。
【0045】
【表1】

【0046】
他の要件は、IML成形部品15のインサート部品加飾層15dの、IMDフィルム16の加飾層16dに対する、特にIMDフィルム16の、インサート部品加飾層15dに対向する接着層に対する、非付着性である。IML成形部品15のインサート部品加飾層15dに関しては、熱成形及びトリミングされたIML成形部品15の紫外線硬化が優れている。インサート部品加飾層15dのラッカー塗装系の架橋結合が大きいと、表面が著しく硬くなるとともに、表面張力が小さくなり、その結果インサート部品加飾層15dは、必要な金型温度及び射出成形材温度において、IMDフィルム16の、インサート部品加飾層15dに対向する接着層に結合しなくなる。
【0047】
表2は、実験で確認された、射出成形金型及び射出成形材に対する最大温度を示している。
【0048】
【表2】

【0049】
図4は、開いた射出成形装置1を、硬化されて加飾された成形部品14とともに示したものである。成形部品14は射出成形装置1から取り出すことができる。
【0050】
IMDフィルム16の加飾層16dは、IML成形部品15が配置されている領域を除いて、全面が成形部品14の加飾側に転写される。加飾側成形面12fには、IMDフィルム16のキャリアフィルム(図4には図示せず)と加飾層16dの非転写領域とが残っているが、これらはこの時点で除去することができる。
【0051】
成形部品14上には、加飾層残余部、いわゆるフィルムフレークが残っていてもよいが、成形部品14から除去しなければならない。このフィルムフレークは、プラスティックのバリとは混同されず、システム内在のものとみなされる。種々のIMDフィルム16及びIML成形部品15を用いた多くの実験が示すところによると、フィルムフレークは、回転ブラシとイオン化と吸引との組み合わせにより、非常に良好に除去することができる。エンボス加工した3D構造の成形部品14に対しては、イオン化と乱流圧縮空気とオプションの吸引との組み合わせも、非常に優れた結果をもたらすことが明らかになった。
【0052】
図5aと図5bは、わかりやすくするために、図4の完成した成形部品14を2つの方向から見た図である。図4の図示と異なるのは、成形部品14の背面に残っていた射出支持部が除去されている点である。
【0053】
図6と図7は第2実施形態を示すもので、この実施形態では、デザインを輪郭付けるために、IML成形部品15のまわりを周回するように延在するデザイン溝14nが設けられている。成形部品14は、ドーナツ状の形状を有し、この場合IML成形部品15はリング状に形成されており、その形状は成形部品の形状に対応している。
【0054】
デザイン溝14nは、場合によっては生じるIML成形部品15の位置公差を視覚的に隠している。この実施形態では、射出成形材17として、ABSまたはABS/PCが設けられていてよい。図6と図7に示したドーナツ状成形部品14の場合、以下のパラメータを用いて本発明による方法を実施する。噴射時間約1秒、加圧保持時間約9秒、冷却時間約20秒(方法ステップd))である。圧力と熱を特にIMDフィルム16の接着層に作用させ、これを活性化させて粘着性になる時間は、約10秒(射出射時間+加圧保持時間)である。射出時間の間に、熱い射出成形材が射出成形装置1内へ流入し、射出成形材の射出圧と温度とにより、射出成形装置1内部に適宜条件が生じる。加圧保持時間の間、射出成形装置1は閉じたままであり、加熱され、加圧状態で放置され、すなわちこの加圧保持時間の間は、圧力と温度は十分一定に保たれる。冷却時間の間、射出成形装置1は閉じたままであるが、無圧であり、射出成形装置1を開いて成形部品14を取り出すことができるまで、温度レベルが連続的に減少される。
【符号の説明】
【0055】
1 射出成形装置
11 コア側金型半部分
11f コア側成形面
12 加飾側金型半部分
12f 加飾側成形面
13 射出路
14 成形部品
14n デザイン溝
15 IML成形部品
15b バッキングフィルム
15d インサート部品加飾層
16 IMDフィルム
16d 加飾層
17 射出成形材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを有する射出成形装置(1)を用いて製造する方法であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、以下の方法ステップを含んでおり、すなわち
a)IMDフィルム(16)を、前記加飾側金型半部分(12)の、加飾側成形面(12f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IMDフィルム(16)を固定する方法ステップと、
b)IML成形部品(15)を、前記コア側金型半部分(11)の、コア側成形面(11f)によって形成される成形キャビティに挿入し、前記IML成形部品(15)を固定し、その際前記IML成形部品(15)がインサート部品加飾層(15d)とバッキングフィルム(15b)とを含んでいる方法ステップと、
c)前記加飾側金型半部分(12)を前記コア側金型半部分(11)上に降下させることによって前記射出成形装置(1)を閉じる方法ステップと、
d)液状の熱可塑性射出成形材(17)を前記コア側金型半部分の前記成形キャビティ内へ射出し、その際前記液状の射出成形材(17)が前記IML成形部品(15)を前記コア側金型半部分(11)から解離させて、前記加飾側金型半部分(12)の前記成形キャビティ内にある前記IMDフィルム(16)に対して押圧させる方法ステップと、
e)前記成形部品(14)の冷却時間が満了した後に前記射出成形装置(1)を開く方法ステップと、
f)加飾された前記成形部品(14)を取り出す方法ステップと、
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記方法ステップa)において、前記IMDフィルムの全面が、前記加飾側金型半部分の前記成形キャビティ部上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法ステップb)において、IMLインサート部品が、前記コア側金型半部分の前記成形キャビティ内に配置される位置決めピンによって固定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法ステップb)において、前記IMLインサート部品が、静電力及び/または真空力によって、前記コア側金型半部分の前記成形キャビティ内に固定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記射出成形材(17)が、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体、または、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体とポリカーボネートとの混合物、または、ポリカーボネートとアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体との混合物であり、前記バッキングフィルムがアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記射出成形材(17)がポリカーボネートであり、前記バッキングフィルムがポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記射出成形材(17)がポリプロピレンであり、前記バッキングフィルムがポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記射出成形材(17)がポリメタクリル酸メチルであり、前記バッキングフィルムがポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記IML成形部品(15)の前記インサート部品加飾層(15d)が紫外線で硬化されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記IML成形部品(15)が保護ラッカー塗装膜を有し、該保護ラッカー塗装膜は、前記方法ステップd)において前記IMDフィルム(16)の加飾層(16d)に付着しないように形成されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記IMDフィルムが全面に形成された接着層を有し、該接着層は、前記IMDフィルムが前記IML成形部品と重なる面領域において部分的にコーティングされることによって非活性化されており、部分的な該コーティングは、前記方法ステップd)の間に前記IML成形部品の表面に付着しないように、または、わずかしか付着しないように形成されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
他の方法ステップg)として、加飾された前記成形部品(14)のクリーニングが設けられていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記方法ステップg)において、接触式クリーニング及び/または非接触式クリーニングが設けられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法ステップg)において、イオン化と、部品に対する乱流圧縮空気による吹き付けと、オプションの吸引とによる、クリーニングの組み合わせが設けられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
インモールド加飾(IMD)とインモールドラべリング(IML)とにより加飾される成形部品(14)を、加飾側金型半部分(12)とコア側金型半部分(11)とを用いて製造するための射出成形装置(1)であって、前記加飾側金型半部分(12)が可動に構成され、前記コア側金型半部分(11)が台架に固定されて構成され、少なくとも1つの射出路(13)を有し、
前記コア側金型半部分(11)の成形キャビティが前記IML成形部品(15)のための固定手段を有し、
前記少なくとも1つの射出路(13)の射出口が、前記コア側金型半部分(11)に挿入される前記IML成形部品(15)の下方に配置されること、
を特徴とする射出成形装置。
【請求項16】
1つ以上の射出路が設けられていることを特徴とする、請求項15に記載の射出成形装置。
【請求項17】
前記加飾側成形面(12f)が、前記IML成形部品(15)を取り囲むデザイン溝(14n)を形成するための成形要素を有することを特徴とする、請求項15または16に記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240421(P2012−240421A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114572(P2012−114572)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(507370644)レオンハード クルツ シュティフトゥング ウント コー. カーゲー (21)
【Fターム(参考)】