説明

ウェハレベルレンズ用成形型、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニット

【課題】成形されたウェハレベルレンズに損傷を与えることなく、成形型から剥すことができるウェハレベルレンズ用成形型、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供する。
【解決手段】基板部1と、該基板部1に配列された複数のレンズ部10とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、ウェハレベルレンズアレイを型102,104から離型する際に、型102,104の内部に設けられた開閉部材E1,E2を移動させることで型102,104と基板部1との間に開口102c,104cを開放し、開口102c,104cから流体を導入することによって型102,104と基板部1との間の少なくとも一部で剥離を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器の携帯端末には、小型で薄型な撮像ユニットが搭載されている。このような撮像ユニットは、一般に、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子と、固体撮像素子上に被写体像を形成するためのレンズと、を備えている。
【0003】
携帯端末の小型化・薄型化に伴って撮像ユニットの小型化・薄型化が要請されている。また、携帯端末のコストの低下を図るため、製造工程の効率化が望まれている。このような小型かつ多数のレンズを製造する方法としては、基板部に複数のレンズを形成した構成であるウェハレベルレンズアレイを製造し、該基板部を切断して複数のレンズをそれぞれ分離させることでレンズモジュールを量産する方法が知られている。
【0004】
また、複数のレンズ部が形成された基板部と複数の固体撮像素子が形成された半導体ウェハとを一体に組み合わせ、各レンズ部と固体撮像素子をセットとして含むように基板部とともに半導体ウェハを切断することで撮像ユニットを量産する方法が知られている。
【0005】
従来、ウェハレベルレンズの製造方法としては、例えば次の工程によりウェハレベルレンズアレイを製造する例がある。このような製造方法としては下記特許文献1に示すものがある。
(1)ウェハ上に樹脂を塗布した状態で、1つの転写体(型)の形状を樹脂に転写する。
(2)型の形状を転写する工程を1500〜2400回程度繰り返し、1つのウェハ上に1500〜2400個のレンズ形状を持つマスタレンズアレイを形成する。
(3)マスタレンズアレイのレンズ面に、電鋳によってNi等の金属イオンを堆積させてスタンパ(Ni電鋳型)を製造する。
(4)スタンパを一対のレンズアレイ用成形型として使用し、これら一対のレンズアレイ用成形型のうち下型に光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を供給する。
(5)供給された樹脂を上型のレンズアレイ用成形型で押圧することによって上型及び下型の成形面に倣って樹脂を変形させる。
(6)樹脂に光又は熱を照射して硬化させることでレンズアレイを成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第08/153102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、基板部とレンズとが一体のウェハレベルレンズアレイを成形物として成形する場合には、レンズのみを成形型によって形成する場合に比べて、成形終了後に成形型に対して基板部及びレンズが強く付着し、離型を行うことがより困難になる。この理由としては、成形された基板部が、成形型に対して広い面積で接触するためである。また、基板部が薄くて十分な剛性を確保することができないため、成形型に付着したウェハレベルレンズアレイを剥す際に負荷を加えると、基板部やレンズ自体に変形や割れ等の損傷が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、成形されたウェハレベルレンズに損傷を与えることなく、成形型から剥すことができるウェハレベルレンズ用成形型、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイを成形するためのウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
成形物の一方の面の形状を転写する転写面を有する第1の型と、前記成形物の他方の面の形状を転写する転写面を有する第2の型とからなり、
前記第1の型及び前記第2の型のうち少なくとも一方の前記転写面に開口を有する流路と該開口を開閉する開閉部材とを備え、
前記開閉部材が、対向配置された転写面の間に配置された成形材料を押圧,硬化させて成形する間、前記開口を閉鎖する位置に保持され、成形後の型開きに際して、前記開口を開放する位置に移動することで、該開口から流体を導入する流路を形成するウェハレベルレンズアレイ用成形型である。
【0010】
また、本発明は、基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
供給された成形材料を型で押圧し、前記基板部及び前記複数のレンズ部の形状を転写し、前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型と、成形された成形物とを離型する工程とを有し、
前記型から離型する際に、前記型の転写面に設けられた開口を開閉する開閉部材を移動させて前記開口を開放し、開放された前記開口から流体を導入して、前記転写面と前記成形物との間に前記流体を侵入させるウェハレベルレンズアレイの製造方法である。
【0011】
上記の成形型及び製造方法は、成形されたウェハレベルレンズアレイを型から離型する前に、開閉部材を移動させることで形成される開口から型と基板部との間に流体を導入する。導入された流体の圧力によって型と基板部との間の少なくとも一部で剥離が生じる。型と基板部との一部に剥離が生じると、近傍の型と基板部との間でも同様に剥離が伝搬する。このとき、導入する流体の量は、型と基板部との間のうち少なくとも一部で剥離が生じることができれば、少量であってもかまわない。こうすることで、成形されたウェハレベルレンズアレイに大きな負荷を加えることなく、流体の供給によって、型からウェハレベルレンズアレイを離型させることができる。こうすることで、離型の際に、ウェハレベルレンズアレイの基板部やレンズ部に変形や割れ等の損傷が生じることを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形されたウェハレベルレンズに損傷を与えることなく、成形型から剥すことができるウェハレベルレンズ用成形型、ウェハレベルレンズアレイの製造方法、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュール及び撮像ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ウェハレベルレンズアレイの構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示すウェハレベルレンズアレイの構成のA−A線断面図である。
【図3】レンズモジュールの構成の一例を示す断面図である。
【図4】撮像ユニットの構成の一例を示す断面図である。
【図5】5A〜5Dは、基板部にレンズ部を成形するための型の製作する手順を示す図である。
【図6】型に成形材料である樹脂を供給している状態を示す図である。
【図7】7A及び7Bは、基板部とレンズ部を一体成形する手順を説明する図である。
【図8】型の一方からウェハレベルレンズアレイを離型させる際の動作を説明する図である。
【図9】上型とウェハレベルレンズアレイとの間に流体を導入した状態を説明する図である。
【図10】上型から離型させた状態を示す図である。
【図11】下型とウェハレベルレンズアレイとの間に流体を導入した状態を説明する図である。
【図12】下型である型102からウェハレベルレンズアレイを離型させた状態を示している。
【図13】成形されるウェハレベルレンズアレイに対するピン状体の位置の例を説明する図である。
【図14】ピン状体の他の構成例を示す断面図である。
【図15】15A及び15Bは、ウェハレベルレンズアレイをダイシングする工程を説明する図である。
【図16】16A及び16Bは、レンズモジュールの製造方法の手順を示す図である。
【図17】レンズモジュールを製造する手順の別の例を示す図である。
【図18】18A及び18Bは、撮像ユニットを製造する手順を示す図である。
【図19】19A及び19Bは、撮像ユニットを製造する手順の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、ウェハレベルレンズアレイ、レンズモジュールと撮像ユニットの構成について説明する。
【0015】
図1は、ウェハレベルレンズアレイの構成の一例を示す平面図である。図2は、図1に示すウェハレベルレンズアレイの構成のA−A線断面図である。
ウェハレベルレンズアレイは、基板部1と、該基板部1に配列された複数のレンズ部10とを備えている。複数のレンズ部10は、基板部1に対して1次元又は2次元に配列されている。この構成例では、図1のように、複数のレンズ部10が、基板部1に対して2次元に配列されている構成を例に説明する。レンズ部10は、基板部1と同じ材料から構成され、該基板部1に一体成形されたものである。レンズ部10の形状は、特に限定されず、用途などによって適宜変形される。
【0016】
基板部1の一方の面には、他の部材と重ね合わせるときの間隔を確保するためのスペーサ12が一体に成形されている。スペーサ12は、例えば、基板部1の面から突出する壁状の部材で、レンズ部10の周囲の一部又は全部を囲うように設けられている。
【0017】
図3は、レンズモジュールの構成の一例を示す断面図である。
レンズモジュールは、基板部1と、及び該基板部1に一体成形されたレンズ部10とを含んだ構成であり、例えば図1及び図2に示すウェハレベルレンズアレイの基板部1をダイシングし、レンズ部10ごとに分離させたものを用いる。スペーサ12は、ダイシングする境界に位置し、ダイシングによって同時に分離され、各レンズモジュールの基板部1に付属する。
【0018】
図4は、撮像ユニットの構成の一例を示す断面図である。
撮像ユニットは、上述のレンズモジュールと、センサモジュールとを備える。レンズモジュールのレンズ部10は、センサモジュール側に設けられた固体撮像素子Dに被写体像を結像させる。レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとが、互いに略同一となるように平面視略矩形状に成形されている。
【0019】
センサモジュールは、半導体基板Wと、半導体基板Wに設けられた固体撮像素子Dを含んでいる。半導体基板Wは、例えばシリコンなどの半導体材料で形成されたウェハを平面視略矩形状に切り出して成形されている。固体撮像素子Dは、半導体基板Wの略中央部に設けられている。固体撮像素子Dは、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。センサモジュールは、チップ化された固体撮像素子Dを配線等が形成された半導体基板上にボンディングした構成とすることができる。又は、固体撮像素子Dは、半導体基板Wに対して周知の成膜工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程、不純物添加工程等を繰り返し、該半導体基板に電極、絶縁膜、配線等を形成して構成されてもよい。
【0020】
レンズモジュールは、その基板部1がスペーサ12を介してセンサモジュールの半導体基板Wの上に重ね合わされている。レンズモジュールのスペーサ12とセンサモジュールの半導体基板Wとは、例えば接着剤などを用いて接合される。スペーサ12は、レンズモジュールのレンズ部10がセンサモジュールの固体撮像素子D上で被写体像を結像させるように設計され、レンズ部10がセンサモジュールに接触しないように、該レンズ部10と固体撮像素子Dとの間に所定の距離を隔てる厚みで形成されている。
【0021】
スペーサ12は、レンズモジュールの基板部1とセンサモジュールの半導体基板Wとを所定の距離を隔てた位置関係を保持することができる範囲で、その形状は特に限定されず適宜変形することができる。例えば、スペーサ12は、基板の4隅にそれぞれ設けられる柱状の部材であってもよい。また、スペーサ12は、センサモジュールの固体撮像素子Dの周囲を取り囲むような枠状の部材であってもよい。固体撮像素子Dを枠状のスペーサ12によって取り囲むことで外部から隔絶すれば、固体撮像素子Dにレンズを透過する光以外の光が入射しないように遮光することができる。また、固体撮像素子Dを外部から密封することで、固体撮像素子Dに塵埃が付着することを防止できる。
【0022】
なお、図3に示すレンズモジュールは、レンズ部10が形成された基板部1を1つ備えた構成であるが、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えた構成としてもよい。このとき、互いに重ね合わされる基板部1同士がスペーサ12を介して組み付けられる。
【0023】
また、レンズ部10が形成された基板部1を複数備えたレンズモジュールの最下位置の基板部1にスペーサ12を介してセンサモジュールを接合して撮像ユニットを構成してもよい。レンズ部10が形成された基板部1を複数備えたレンズモジュール及び該レンズモジュールを備えた撮像ユニットの製造方法については後述する。
【0024】
以上のように構成された撮像ユニットは、携帯端末等に内蔵される図示しない回路基板にリフロー実装される。回路基板には、撮像ユニットが実装される位置に予めペースト状の半田が適宜印刷されており、そこに撮像ユニットが載せられ、この撮像ユニットを含む回路基板に赤外線の照射や熱風の吹付けといった加熱処理が施され、撮像ユニットが回路基板に溶着される。
【0025】
基板部1及びレンズ部10は同一の成形材料(以下、単に材料ともいう。)によって構成される。
【0026】
本発明のウエハレベルレンズアレイに用いられるエネルギー硬化性の樹脂組成物は、熱により硬化する樹脂組成物、あるいは活性エネルギー線の照射(例えば紫外線、電子線照射)により硬化する樹脂組成物のいずれであってもよい。
【0027】
モールド形状の転写適性等、成形性の観点から硬化前には適度な流動性を有していることが好ましい。具体的には常温で液体であり、粘度が1000〜50000mPa・s程度のものが好ましい。
【0028】
一方、硬化後にはリフロー工程を通しても熱変形しない程度の耐熱性を有していることが好ましい。該観点から、硬化物のガラス転移温度は200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。樹脂組成物にこのような高い耐熱性を付与するためには、分子レベルで運動性を束縛することが必要であり、有効な手段としては、(1)単位体積あたりの架橋密度を上げる手段、(2)剛直な環構造を有する樹脂を利用する手段(例えばシクロヘキサン、ノルボルナン、テトラシクロドデカン等の脂環構造、ベンゼン、ナフタレン等の芳香環構造、9,9’−ビフェニルフルオレン等のカルド構造、スピロビインダン等のスピロ構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平9−137043号公報、同10−67970号公報、特開2003−55316号公報、同2007−334018号公報、同2007−238883号公報等に記載の樹脂)、(3)無機微粒子など高Tgの物質を均一に分散させる手段(例えば特開平5−209027号公報、同10−298265号公報等に記載)等が挙げられる。これらの手段は複数併用してもよく、流動性、収縮率、屈折率特性など他の特性を損なわない範囲で調整することが好ましい。
【0029】
形状転写精度の観点からは硬化反応による体積収縮率が小さい樹脂組成物が好ましい。本発明に用いられる樹脂組成物の硬化収縮率としては10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0030】
硬化収縮率の低い樹脂組成物としては、例えば、(1)高分子量の硬化剤(プレポリマ−など)を含む樹脂組成物(例えば特開2001−19740号公報、同2004−302293号公報、同2007−211247号公報等に記載、高分子量硬化剤の数平均分子量は200〜100,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜50,000の範囲であり、特に好ましくは1,000〜20,000の場合である。また該硬化剤の数平均分子量/硬化反応性基の数で計算される値が、50〜10,000の範囲にあることが好ましく、100〜5,000の範囲にあることがより好ましく、200〜3,000の範囲にあることが特に好ましい。)、(2)非反応性物質(有機/無機微粒子,非反応性樹脂等)を含む樹脂組成物(例えば特開平6−298883号公報、同2001−247793号公報、同2006−225434号公報等に記載)、(3)低収縮架橋反応性基を含む樹脂組成物(例えば、開環重合性基(例えばエポキシ基(例えば、特開2004−210932号公報等に記載)、オキセタニル基(例えば、特開平8−134405号公報等に記載)、エピスルフィド基(例えば、特開2002−105110号公報等に記載)、環状カーボネート基(例えば、特開平7−62065号公報等に記載)、エン/チオール硬化基(例えば、特開2003−20334号公報等に記載)、ヒドロシリル化硬化基(例えば、特開2005−15666号公報等に記載)、(4)剛直骨格樹脂(フルオレン、アダマンタン、イソホロン等)を含む樹脂組成物(例えば、特開平9−137043号公報等に記載)、(5)重合性基の異なる2種類のモノマーを含み相互貫入網目構造(いわゆるIPN構造)が形成される樹脂組成物(例えば、特開2006−131868号公報等に記載)、(6)膨張性物質を含む樹脂組成物(例えば、特開2004−2719号公報、特開2008−238417号公報等に記載)等を挙げることができ、本発明において好適に利用することができる。また上記した複数の硬化収縮低減手段を併用すること(例えば、開環重合性基を含有するプレポリマーと微粒子を含む樹脂組成物など)が物性最適化の観点からは好ましい。
【0031】
本発明のウエハレベルレンズアレイには、高−低2種類以上のアッベ数の異なる樹脂組成物が望まれる。
高アッべ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が50以上であることが好ましく、より好ましくは55以上であり特に好ましくは60以上である。屈折率(nd)は1.52以上であることが好ましく、より好ましくは1.55以上であり、特に好ましくは1.57以上である。
このような樹脂としては、脂肪族の樹脂が好ましく、特に脂環構造を有する樹脂(例えば、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等の環構造を有する樹脂、具体的には例えば、特開平10−152551号公報、特開2002−212500号公報、同2003−20334号公報、同2004−210932号公報、同2006−199790号公報、同2007−2144号公報、同2007−284650号公報、同2008−105999号公報等に記載の樹脂)が好ましい。
【0032】
低アッべ数側の樹脂は、アッベ数(νd)が30以下であることが好ましく、より好ましくは25以下であり特に好ましくは20以下である。屈折率(nd)は1.60以上であることが好ましく、より好ましくは1.63以上であり、特に好ましくは1.65以上である。
このような樹脂としては芳香族構造を有する樹脂が好ましく、例えば9,9’−ジアリールフルオレン、ナフタレン、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等の構造を含む樹脂(具体的には例えば、特開昭60−38411号公報、特開平10−67977号公報、特開2002−47335号公報、同2003−238884号公報、同2004−83855号公報、同2005−325331号公報、同2007−238883号公報、国際公開2006/095610号公報、特許第2537540号公報等に記載の樹脂等)が好ましい。
【0033】
本発明の樹脂には屈折率を高める目的やアッベ数を調整する目的のために、無機微粒子をマトリックス中に分散させることが好ましい。無機微粒子としては、例えば、酸化物微粒子、硫化物微粒子、セレン化物微粒子、テルル化物微粒子が挙げられる。より具体的には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、硫化亜鉛等の微粒子を挙げることができる。
特に上記高アッべ数の樹脂に対しては、酸化ランタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましく、低アッベ数の樹脂に対しては、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム等の微粒子を分散させることが好ましい。無機微粒子は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、複数の成分による複合物であってもよい。また、無機微粒子には光触媒活性低減、吸水率低減などの種々の目的から、異種金属をドープしたり、表面層をシリカ、アルミナ等異種金属酸化物で被覆したり、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、有機酸(カルボン酸類、スルホン酸類、リン酸類、ホスホン酸類等)又は有機酸基を持つ分散剤などで表面修飾してもよい。無機微粒子の数平均粒子サイズは通常1nm〜1000nm程度とすればよいが、小さすぎると物質の特性が変化する場合があり、大きすぎるとレイリー散乱の影響が顕著となるため、1nm〜15nmが好ましく、2nm〜10nmが更に好ましく、3nm〜7nmが特に好ましい。また、無機微粒子の粒子サイズ分布は狭いほど望ましい。このような単分散粒子の定義の仕方はさまざまであるが、例えば、特開2006−160992号に記載されるような数値規定範囲が好ましい粒径分布範囲に当てはまる。ここで上述の数平均1次粒子サイズとは、例えばX線回折(XRD)装置あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)などで測定することができる。無機微粒子の屈折率としては、22℃、589nmの波長において、1.90〜3.00であることが好ましく、1.90〜2.70であることが更に好ましく、2.00〜2.70であることが特に好ましい。無機微粒子の樹脂に対する含有量は、透明性と高屈折率化の観点から、5質量%以上であることが好ましく、10〜70質量%が更に好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
【0034】
樹脂組成物に微粒子を均一に分散させるためには、例えばマトリックスを形成する樹脂モノマーとの反応性を有する官能基を含む分散剤(例えば特開2007−238884号公報実施例等に記載)、疎水性セグメント及び親水性セグメントで構成されるブロック共重合体(例えば特開2007−211164号公報に記載)、あるいは高分子末端又は側鎖に無機微粒子と任意の化学結合を形成しうる官能基を有する樹脂(例えば特開2007−238929号公報、特開2007−238930号公報等に記載)等を適宜用いて微粒子を分散させることが望ましい。
【0035】
また、本発明に用いられるには樹脂組成物には、シリコン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有化合物等の公知の離型剤やヒンダードフェノール等の酸化防止剤等の添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて硬化触媒又は開始剤を配合することができる。具体的には、例えば特開2005−92099号公報(段落番号〔0063〕〜〔0070〕)等に記載の熱又は活性エネルギー線の作用により硬化反応(ラジカル重合あるいはイオン重合)を促進する化合物を挙げることができる。これらの硬化反応促進剤の添加量は、触媒や開始剤の種類、あるいは硬化反応性部位の違いなどによって異なり一概に規定することはできないが、一般的には硬化反応性樹脂組成物の全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜5質量%程度がより好ましい。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物は上記成分を適宜配合して製造することができる。この際、液状の低分子モノマー(反応性希釈剤)等に他の成分を溶解することができる場合には別途溶剤を添加する必要はないが、このケースに当てはまらない場合には溶剤を用いて各構成成分を溶解することにより硬化性樹脂組成物を製造することができる。該硬化性樹脂組成物に使用できる溶剤としては、組成物が沈殿することなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく適宜選択することができ、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、水等を挙げることができる。硬化性組成物が溶剤を含む場合には該組成物を基板及び/又は型の上にキャストし溶剤を乾燥させた後にモールド形状転写操作を行うことが好ましい。
【0038】
次に、ウェハレベルレンズアレイの製造方法について詳細に説明する。
図5A〜5Dは、基板部にレンズ部を成形するための型を製作する手順を示す図である。
図5Aに示すように、ガラス基板21上に、コア23の転写面を紫外線硬化性樹脂(アクリル又はエポキシ)に転写し、紫外線を照射することでレプリカレンズ22を成形する。こうして、図5Bに示すように、ガラス基板21上に複数のレプリカレンズ22が配列されてなる所望のレンズアレイの形状を模ったマスタレンズアレイを作成する。
【0039】
次に、図5Cに見られるように、このマスタレンズアレイのレンズ面に電鋳によってニッケル(Ni)等の金属イオンを堆積させてスタンパ(Ni電鋳型)102を製造する。
【0040】
図5Dに見られるように、マスタレンズアレイから剥離したスタンパ102にはレンズ転写部102aが設けられる。この例では、レンズ転写部102aは凹部、つまり、凸状のレンズ部の形状に対応する形状としたが、凹状や非球面のレンズ部の形状に対応する形状としてもよい。なお、以下で説明する製造工程で用いる型は、このスタンパ102に特に限定されない。
【0041】
以下の説明では、スタンパ102をウェハレベルレンズアレイ用成形型として用いる。単に型ともいう。
図6は、型に成形材料である樹脂を供給している状態を示す図である。図6に示すように、型102のレンズ転写部102aにディペンサのノズル31から樹脂10Rを滴下する。各レンズ転写部102aに対して、1つのレンズ部に相当する所定量の樹脂10Rが供給される。なお、各レンズ転写部102aに滴下される樹脂10Rの量は均一であり、後の工程で成形する所望のレンズ部の容積によって予め決められる。型102に供給する樹脂10Rは、別工程で製造される基板部1を構成する樹脂と同一である。
【0042】
図7A及び7Bは、基板部とレンズ部を一体成形する手順を説明する図である。なお、以下の説明では、型102を下型(第1の型)とし、型104を上型(第2の型)としている。また、ここでは基板部の両面に凸形状の複数のレンズを形成する例を説明する。しかし、レンズ形状は、凸形状に限定されず、凹形状や非球面であってもよい。型102には、スペーサ12の形状を転写するためのスペーサ転写部112aが形成されており、基板部1にレンズ部10とともにスペーサ12を一体成形する。スペーサ12は、基板部1の両方の面に一体成形されてもよく、又は、いずれの面にも一体成形しないで、別の部材として後工程で基板部1に貼り合わせてもよい。
【0043】
図7Aに示すように、型102の転写面には複数のレンズ転写部102aが設けられ、型104の転写面には複数のレンズ転写部104aが設けられている。型102に予め樹脂10Rを供給する。型102の複数のレンズ転写部102aのそれぞれには、レンズ部10の一つに対応する量の樹脂10Rが供給される。
【0044】
型104は、そのレンズ転写部104aを型102側に向けた状態で、型102の上方に保持されている。
【0045】
型102及び型104には開閉部材であるピン状体E1,E2が設けられている。ピン状体E1,E2は、型102及び型104のレンズ転写部102a,104aが設けられている面に対して垂直な方向(図中上下方向)を軸とし、この軸に長尺な形状を有する。
【0046】
ピン状体E1は、成形時に型104と該型104によって成形される基板部との間に一方の端部が露呈する位置に保持される。ピン状体E1は、離型する際に軸方向に開口とは反対の方向に移動させることができる開閉部材として機能する。また、ピン状体E2は、成形時に型102と該型102によって成形される基板部との間に一方の端部が露呈する位置に保持される。ピン状体E2は、離型する際に軸方向に対して開口とは反対側に移動させることができる開閉部材として機能する。ピン状体E1,E2は、その先端が開口に露呈し、その径が流路のテーパ状部分に対応する先端側から徐々に拡径するテーパ部を有するピン状体である。
【0047】
ピン状体E1,E2の構成は特に限定されない。離型をするとき以外に、型102,104の開口を閉鎖し、離型する際に、開口から離れる方向へ移動して流体を導入するための開口を開放できれば適宜変更可能である。
【0048】
ピン状体E1,E2の動作の例や、型におけるピン状体E1,E2の位置については後述する。
【0049】
図7Bに示すように、成形時には、型104を型102の上方へ降下させることで、型102と型104とで樹脂10Rを挟み込んで、樹脂10Rをレンズ転写部102a,104aの形状に倣って変形させ、ウェハレベルレンズアレイを成形する。
【0050】
型102と型104との位置決めのため、両方の型102,104が接触する部位(例えば、型の周縁近傍で樹脂10Rに接触しない部位)に位置決めピンを設け、成形時には該位置決めピンによって型102と型104との位置を合わせてもよい。型102と型104の位置決めは、両方の型102,104が接触する部位がテーパや段差によって嵌め合う構成としてもよい。
【0051】
樹脂10Rを型102及び型104で変形させた後、基板部1の上方から紫外線又は熱を照射する。こうして、樹脂10Rを硬化させ、基板部1の両面に複数のレンズ部10が一体となったウェハレベルレンズアレイを成形することができる。
【0052】
次に、型102,104から成形されたウェハレベルレンズアレイを離型する手順を説明する。以下の例では、先ず型104からウェハレベルレンズアレイを離型し、その後、型102からウェハレベルレンズアレイを離型する。なお、離型させる型102,104の順番は特に限定されない。
【0053】
図8は、型の一方からウェハレベルレンズアレイを離型させる際の動作を説明する図である。
図8では、型104に設けられたピン状体E1を、軸方向に開口104cとは反対の方向に移動させた状態を示している。ピン状体E1を移動させることで、開口104cが開放される。そして、型104の外部から開口104cに流体を導入する。開口104cから連通する流路には、ピン状体E1,E2の開口104cに連通する端部と当接する部位に、テーパ部が形成されている。開口104cから連通する流路のテーパ部は、開口104cからその反対側に向かって徐々に拡径するように傾斜している。開口104cから連通する流路のテーパ部にピン状体E1,E2のテーパ部を当接させることで開口104cを閉鎖状態にする。ピン状体E1,E2を開口104cの反対方向に移動させて、開口104cから連通する流路のテーパ部とピン状体E1,E2のテーパ部を離間させることで、開口104cを閉鎖状態にする。
【0054】
導入する流体としては、空気や不活性ガスなどの気体を用いることが好ましい。又は、成形されたウェハレベルレンズアレイの基板部1やレンズ部10に影響を与えない液体を用いてもよい。
【0055】
図9は、上型とウェハレベルレンズアレイとの間に流体を導入した状態を説明する図である。導入された流体の圧力によって、型104と基板部1との間の少なくとも一部で剥離が生じ、ギャップGが形成される。導入する流体の量が少量であっても、一部に剥離が生じれば、周囲の領域でも剥離が促進される。こうして、ギャップGが周囲にも拡大する。こうして、型104からウェハレベルレンズアレイを、大きな負荷をかけることなく容易に離型することができる。
【0056】
図10は、上型から離型させた状態を示す図である。図10に示すように上型からウェハレベルレンズアレイを離型させた後、下型である型102の離型を行う。
【0057】
図11は、下型とウェハレベルレンズアレイとの間に流体を導入した状態を説明する図である。図11では、型102に設けられたピン状体E2を、軸方向に開口とは反対の方向に移動させた状態を示している。ピン状体E2を移動させることで、開口102cが開放される。そして、型102の外部から開口102cに流体を導入する。導入された流体の圧力によって、型102と基板部1との間の少なくとも一部で剥離が生じ、ギャップGが形成される。導入する流体の量が少量であっても、一部に剥離が生じれば、周囲の領域でも剥離が促進される。こうして、ギャップGが周囲にも拡大する。
【0058】
図12は、下型である型102からウェハレベルレンズアレイを離型させた状態を示している。図12に示すように、型102からウェハレベルレンズアレイを離型する際には、吸着部41によって基板部1の表面を吸着することで保持し、ウェハレベルレンズアレイを取り出すことができる。吸着部41は、レンズ部10などの光学性能に影響を与える部位には直接接触しないようにすることが好ましい。
【0059】
図13は、成形されるウェハレベルレンズアレイに対するピン状体の位置の例を説明する図である。図13では、基板部1におけるレンズ部10の位置を点線で示している。なお、ここでは、図7に示すように一対の型で成形するものであって、上型及び下型それぞれの内部に設けられたピン状体の位置が基板部の平面視における位置が同一であるものとする。図13の例では、成形される基板部1のほぼ中央に1つのピン状体が位置する。また、中央のピン状体の周囲に複数(4つ)のピン状体が位置する。このように、ピン状体は、型に対して複数設けられていてもよく、又は、1つだけ設けてもよい。型に対してピン状体を1つのみ設けるときは型の中央とすることが好ましいが、この限りではない。
【0060】
型に複数のピン状体を設ける構成では、各ピン状体の流体を導入するタイミングを適宜調整してもよい。例えば、図13に示す構成では、型の中央部に位置するピン状体を移動させることで開放したその開口から先に流体を導入し、その後で、周囲のピン状体を開放させて、それぞれの開口から流体を導入するように制御してもよい。
【0061】
上記例では、ピン状体の構成は上記例のものに限定されず、型の内部で移動させることができ、移動させることで型と基板部との間に開口を形成し、開口から流体を導入することができれば、適宜変更できる。
【0062】
図14は、ピン状体の他の構成例を示す断面図である。開口104cから連通する流路は、その径が開口104c側から縮径部と、該縮径部に連なって設けられ、該縮径部より径が大きい拡径部とが連なって設けられ、縮径部と拡径部との間に形成された段差部とを有している。ピン状体E11,E12は、開口104cに露呈する先端部と、該先端部に連なる縮径部と、該縮径部より径が大きい拡径部と、縮径部と拡径部の間に形成された段差部とを有する。
流路とピン状体E11,E12の縮径部同士と段差部同士のいずれかが当接することで開口104cを閉鎖状態にすることができる。また、ピン状体E11,E12が軸方向に開口104cとは反対の方向に移動され、当接していた部分が離間することで開口104cを開放状態にすることができる。こうして、開放状態のとき、開口102c,104cから流体を導入することでウェハレベルレンズアレイを型102,104から離型することができる。
【0063】
上記の製造方法は、型102,104からウェハレベルレンズアレイを離型する前に、開閉部材であるピン状体E1,E2を移動させることで、型102,104と基板部1との間の開口102c,104cを開放状態にする。そして、開口102c,104cから流体を導入する。導入された流体の圧力によって型102,104と基板部1との間の少なくとも一部で剥離が生じる。型102,104と基板部1との一部に剥離が生じると、その近傍でも同様に剥離が伝搬する。このとき、導入する流体の量は、型102,104と基板部1との間の少なくとも一部で剥離が生じることができれば、少量であってもかまわない。こうすることで、成形されたウェハレベルレンズアレイに大きな負荷を加えることなく、流体の供給によって、型からウェハレベルレンズアレイを離型させることができる。こうすることで、離型の際に、ウェハレベルレンズアレイの基板部1やレンズ部10に変形や割れ等の損傷が生じることを防止できる。
【0064】
次に、ウェハレベルレンズアレイを用いて、更に、レンズモジュール及び撮像ユニットを製造する手順を説明する。
【0065】
図15A及び15Bは、ウェハレベルレンズアレイをダイシングする工程を説明する図である。ウェハレベルレンズアレイの基板部1の一方の表面(同図では下方の面)には、スペーサ12が一体に設けられている。
図15Bに示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と、該基板部1と同様にウェハ状に形成された半導体基板Wとの位置合わせが行われる。半導体基板Wの一方の面(同図では上側の面)には、基板部1に設けられた複数のレンズ部10の配列と同じ配列で固体撮像素子Dが設けられている。そして、ウェハレベルレンズアレイの基板部1がスペーサ12(図2参照)を介して、該基板部1と同様にウェハ状に形成された半導体基板Wに重ね合わされ、一体に接合される。その後、一体とされたウェハレベルレンズアレイ及び半導体基板Wは、レンズ部10及び固体撮像素子Dそれぞれの配列の列間に規定される切断ラインに沿って、ブレードC等の切断手段を用いて切断され、複数の撮像ユニットに分離される。切断ラインは、例えば基板部1の平面視において格子状である。
【0066】
なお、本例では、撮像ユニットを製造する際のダイジングを例に説明している。一方で、レンズモジュールを製造する際のダイジングは、半導体基板Wに接合させないで、レンズ部10の配列に応じて切断して複数のレンズモジュールに分離する。
【0067】
図16A及び16Bは、レンズモジュールの製造方法の手順を示す図である。この手順では、1つの基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイをダイジングして複数のレンズモジュールに分離する例を説明する。
【0068】
先ず、図16Aに示すように、ウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。
【0069】
次に、図16Bに示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数のレンズモジュールに分離する。このとき、各切断ライン上に位置するスペーサ12も同時に切断される。スペーサ12は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接するレンズモジュールにそれぞれ付属する。こうして、レンズモジュールが完成する。
【0070】
なお、分離されたレンズモジュールは、スペーサ12を介して図示しないセンサモジュールやその他の光学素子を備えた基板に組み付けられてもよい。
【0071】
このように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1に予めスペーサ12を一体成形しておき、その後に、スペーサ12ごとウェハレベルレンズアレイの基板部1をダイシング工程で切断すれば、分離されたレンズモジュールにそれぞれスペーサ12を接合する場合に比べて効率良くレンズモジュールを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0072】
図17は、レンズモジュールを製造する手順の別の例を示す図である。この手順では、2つの基板部1と、各基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイをダイジングし、複数のレンズモジュールに分離する例を説明する。
【0073】
先ず、図17に示すように、複数のウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。複数のウェハレベルレンズアレイの各基板部1の一方の面にスペーサ12が成形されている。そして、重ね合わせるウェハレベルレンズアレイの基板部1同士の位置合わせを行い、下方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の上面に、重ね合わせるウェハレベルレンズアレイの基板部1の下面を、スペーサ12を介して接合する。ウェハレベルレンズアレイ同士を重ね合わせた状態で、各基板部1に対してスペーサ12の位置が、各基板部1で同じになるようにする。
【0074】
そして、ウェハレベルレンズアレイの基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数のレンズモジュールに分離する。このとき、各切断ライン上に重なり合う位置のスペーサ12も同時に切断され、各切断ラインを境界として分割されたスペーサ12が、各切断ラインに隣接するレンズモジュールにそれぞれ付属する。こうして、複数のレンズ部10を備えたレンズモジュールが完成する。この手順では、重ね合わされるそれぞれの基板部1に対するレンズ部10及びスペーサ12の位置が同じであるため、分離された複数のレンズモジュールの構成はいずれも同じになる。また、重ね合わされるそれぞれの基板部1のうち、最上部の基板部1を基準に切断ラインの位置を決定し、切断すればよい。
【0075】
なお、分離されたレンズモジュールは、スペーサ12を介して図示しないセンサモジュールやその他の光学素子を備えた基板に組み付けられてもよい。
【0076】
このように、複数のウェハレベルレンズアレイ同士を重ね合わせ、その後に、ウェハレベルレンズアレイの基板部1をスペーサ2ごとダイシング工程で切断すれば、分離されたレンズモジュールを個別に重ね合わせる場合に比べて、効率よくレンズモジュールを量産することができ、生産性が向上する。
【0077】
図18A及び18Bは、撮像ユニットを製造する手順を示す図である。この手順では、1つの基板部1と該基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたレンズモジュールをセンサモジュールに接合してダイジングし、複数の撮像ユニットに分離する例を説明する。
【0078】
先ず、図18Aに示すように、ウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。基板部1の下側の面にはスペーサ12が一体成形されている。
【0079】
次に、複数の固体撮像素子Dが配列された半導体基板Wを準備する。ウェハレベルレンズアレイの基板部1と、半導体基板Wとの位置合わせを行った後、該基板部1をスペーサ12を介して半導体基板Wの上側の面に接合する。このとき、基板部1に設けられた各レンズ部10の光軸の延長が固体撮像素子Dの中央部とそれぞれ交わるようにする。
【0080】
そして、図18Bに示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と半導体基板Wとを接合した後、基板部1を、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数の撮像ユニットに分離する。このとき、各切断ライン上に位置するスペーサ12も同時に切断される。スペーサ12は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接する撮像ユニットにそれぞれ付属する。こうして、撮像ユニットが完成する。
【0081】
このように、ウェハレベルレンズアレイに予めスペーサ12を成形しておき、その後に、ウェハレベルレンズアレイの基板と固体撮像素子Dを備えた半導体基板Wを重ね合わせて、基板部1及び半導体基板Wをダイシング工程で一緒に切断すれば、分離されたレンズモジュールにそれぞれスペーサ12を介してセンサモジュールを接合して撮像ユニットを製造する場合に比べて、効率良く撮像ユニットを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0082】
図19A及び19Bは、撮像ユニットを製造する手順の別の例を示す図である。この手順では、2つの基板部1と各基板部1に複数のレンズ部10が一体成形されたウェハレベルレンズアレイを、固体撮像素子が設けられた半導体基板に接合してダイジングし、それぞれが2つのレンズ部10を備えた複数の撮像ユニットに分離する例を説明する。
【0083】
先ず、図19Aに示すように、2つのウェハレベルレンズアレイを準備する。ウェハレベルレンズアレイは、既に上述した手順で製造することができ、以下の説明では、その手順については説明することなく省略する。重ね合わせる2つの基板部1それぞれの下側の面には、スペーサ12が予め成形されている。そして、重ね合わせるウェハレベルレンズアレイの基板部1同士の位置合わせを行い、下方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の上面に、上方に配置するウェハレベルレンズアレイの基板部1の下面を、スペーサ12を介して接合する。ウェハレベルレンズアレイ同士を重ね合わせた状態で、各基板部1に対するスペーサ12の位置が、各基板部1で同じになるようにする。
【0084】
次に、複数の固体撮像素子Dが配列された半導体基板Wを準備する。重ね合わされた状態の複数のウェハレベルレンズアレイの基板部1と、半導体基板Wとの位置合わせを行う。その後、最下部に位置する該基板部1を、スペーサ2を介して半導体基板Wの上側の面に接合する。このとき、基板部1に設けられた各レンズ部10の光軸の延長が固体撮像素子Dの中央部とそれぞれ交わるようにする。
【0085】
そして、図19Bに示すように、ウェハレベルレンズアレイの基板部1と半導体基板Wとを接合した後、基板部1及び半導体基板Wを、図中点線で示される切断ラインに沿って切断し、複数の撮像ユニットに分離する。このとき、各切断ライン上に位置するスペーサ12も同時に切断される。スペーサ12は、各切断ラインを境界として分割され、各切断ラインに隣接する撮像ユニットにそれぞれ付属する。こうして、複数のレンズ部10を備えた撮像ユニットが完成する。
【0086】
このように、複数のウェハレベルレンズアレイ同士をスペーサ12を介して接合しておき、その後に、最下部のウェハレベルレンズアレイの基板部1と固体撮像素子Dを備えた半導体基板Wを重ね合わせて、基板部1及び半導体基板Wをダイシング工程で一緒に切断している。このような手順によれば、分離されたレンズモジュール同士を重ね合わせ、更に、各レンズモジュールとセンサモジュールとを接合していくことで各撮像ユニットを製造する場合に比べて、効率良く撮像ユニットを量産することができ、生産性を向上することができる。
【0087】
本明細書は以下の内容を開示する。
(1)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイを成形するためのウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
成形物の一方の面の形状を転写する転写面を有する第1の型と、前記成形物の他方の面の形状を転写する転写面を有する第2の型とからなり、
前記第1の型及び前記第2の型のうち少なくとも一方の前記転写面に開口を有する流路と該開口を開閉する開閉部材とを備え、
前記開閉部材が、対向配置された転写面の間に配置された成形材料を押圧,硬化させて成形する間、前記開口を閉鎖する位置に保持され、成形後の型開きに際して、前記開口を開放する位置に移動することで、該開口から流体を導入する流路を形成するウェハレベルレンズアレイ用成形型。
(2)上記(1)に記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口から連通する流路は、その径が前記開口側から徐々に拡径するテーパ部を有し、前記開閉部材は、その先端が前記開口に露呈し、その径が前記流路の前記テーパ部に対応する先端側から徐々に拡径するテーパ部を有するピン状体であり、
前記流路のテーパ部と前記開閉部材のテーパ部が当接して開口を閉鎖状態にするとともに、前記開閉部材が前記開口の反対方向に移動されて前記開口を開放状態にするウェハレベルレンズアレイ用成形型。
(3)上記(1)に記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口から連通する流路は、その径が開口側から縮径部と、該縮径部に連なって設けられ、該縮径部より径が大きい拡径部と、前記縮径部と前記拡径部との間に形成された段差部とを有し、前記開閉部材は、前記開口に露呈する先端部と、該先端部に連なる縮径部と、該縮径部より径が大きい拡径部と、前記縮径部と前記拡径部の間に形成された段差部とを有するピン状体であり、前記流路と前記開閉部材の前記縮径部同士と前記段差部同士のいずれかが当接することで前記開口を閉鎖状態にし、前記開閉部材が前記開口の反対方向に移動されて前記当接していた部分が離間することで前記開口を開放状態にするウェハレベルレンズアレイ用成形型。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口が、前記複数のレンズ部以外の前記基板部に対応する転写面に設けられたウェハレベルレンズアレイ用成形型。
(5)基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
供給された成形材料を型で押圧し、前記基板部及び前記複数のレンズ部の形状を転写し、前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型と、成形された成形物とを離型する工程とを有し、
前記型から離型する際に、前記型の転写面に設けられた開口を開閉する開閉部材を移動させて前記開口を開放し、開放された前記開口から流体を導入して、前記転写面と前記成形物との間に前記流体を侵入させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(6)上記(5)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記型が一対で構成され、該型には前記基板部の両面に前記複数のレンズ部を形成するためのレンズ転写部が設けられているウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(7)上記(5)又は(6)に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記開閉部材が前記型の一部に挿入されたピン状体であり、前記ピン状体の軸方向の一方の端部が前記開口を閉鎖し、前記流体を導入する際には、前記ピン状体を前記開口とは反対の方向に移動させることで前記開口を開放するウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(8)上記(5)から(7)のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記流体が気体であるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
(9)上記(5)から(8)のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法によって得られたウェハレベルレンズアレイ。
(10)上記(9)に記載の前記ウェハレベルレンズアレイの前記基板部をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
(11)上記(9)に記載のウェハレベルレンズアレイの前記基板部をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュールであって、
前記レンズ部が形成された前記基板部を複数備え、複数の前記基板部同士がそれら間にスペーサを挟んで重ね合わされるレンズモジュール。
(12)上記(10)又は(11)に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、
撮像素子と、
前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、
前記基板部と前記半導体基板とが、前記スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。
【産業上の利用可能性】
【0088】
上記ウェハレベルレンズアレイの製造方法は、デジタルカメラ、内視鏡装置、携帯型電子機器等の撮像部に設けられる撮像レンズを製造する際に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 基板部
10 レンズ
102,104 型
102c,104c 開口
E1,E2 ピン状体(開閉部材)
E11,E12 ピン状体(開閉部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイを成形するためのウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
成形物の一方の面の形状を転写する転写面を有する第1の型と、前記成形物の他方の面の形状を転写する転写面を有する第2の型とからなり、
前記第1の型及び前記第2の型のうち少なくとも一方の前記転写面に開口を有する流路と該開口を開閉する開閉部材とを備え、
前記開閉部材が、対向配置された転写面の間に配置された成形材料を押圧,硬化させて成形する間、前記開口を閉鎖する位置に保持され、成形後の型開きに際して、前記開口を開放する位置に移動することで、該開口から流体を導入する流路を形成するウェハレベルレンズアレイ用成形型。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口から連通する流路は、その径が前記開口側から徐々に拡径するテーパ部を有し、前記開閉部材は、その先端が前記開口に露呈し、その径が前記流路の前記テーパ部に対応する先端側から徐々に拡径するテーパ部を有するピン状体であり、
前記流路のテーパ部と前記開閉部材のテーパ部が当接して開口を閉鎖状態にするとともに、前記開閉部材が前記開口の反対方向に移動されて前記開口を開放状態にするウェハレベルレンズアレイ用成形型。
【請求項3】
請求項1に記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口から連通する流路は、その径が開口側から縮径部と、該縮径部に連なって設けられ、該縮径部より径が大きい拡径部と、前記縮径部と前記拡径部との間に形成された段差部とを有し、前記開閉部材は、前記開口に露呈する先端部と、該先端部に連なる縮径部と、該縮径部より径が大きい拡径部と、前記縮径部と前記拡径部の間に形成された段差部とを有するピン状体であり、前記流路と前記開閉部材の前記縮径部同士と前記段差部同士のいずれかが当接することで前記開口を閉鎖状態にし、前記開閉部材が前記開口の反対方向に移動されて前記当接していた部分が離間することで前記開口を開放状態にするウェハレベルレンズアレイ用成形型。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイ用成形型であって、
前記開口が、前記複数のレンズ部以外の前記基板部に対応する転写面に設けられたウェハレベルレンズアレイ用成形型。
【請求項5】
基板部と、該基板部に配列された複数のレンズ部とが形成されたウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
供給された成形材料を型で押圧し、前記基板部及び前記複数のレンズ部の形状を転写し、前記成形材料を硬化させる工程と、
前記型と、成形された成形物とを離型する工程とを有し、
前記型から離型する際に、前記型の転写面に設けられた開口を開閉する開閉部材を移動させて前記開口を開放し、開放された前記開口から流体を導入して、前記転写面と前記成形物との間に前記流体を侵入させるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記型が一対で構成され、該型には前記基板部の両面に前記複数のレンズ部を形成するためのレンズ転写部が設けられているウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記開閉部材が前記型の一部に挿入されたピン状体であり、前記ピン状体の軸方向の一方の端部が前記開口を閉鎖し、前記流体を導入する際には、前記ピン状体を前記開口とは反対の方向に移動させることで前記開口を開放するウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法であって、
前記流体が気体であるウェハレベルレンズアレイの製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1つに記載のウェハレベルレンズアレイの製造方法によって得られたウェハレベルレンズアレイ。
【請求項10】
請求項9に記載の前記ウェハレベルレンズアレイの前記基板部をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュール。
【請求項11】
請求項9に記載のウェハレベルレンズアレイの前記基板部をダイシングして、前記レンズ部ごとに分断してなるレンズモジュールであって、
前記レンズ部が形成された前記基板部を複数備え、複数の前記基板部同士がそれら間にスペーサを挟んで重ね合わされるレンズモジュール。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のレンズモジュールを備えた撮像ユニットであって、
撮像素子と、
前記撮像素子が設けられた半導体基板とを備え、
前記基板部と前記半導体基板とが、前記スペーサを介して一体に接合された撮像ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−62878(P2011−62878A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214368(P2009−214368)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】