説明

ウェーハの輸送容器

【課題】支持フレームのフレームから保持層が剥がれ落ちるのを抑制し、ウェーハの効率的な収納が期待できるウェーハの輸送容器を提供する。
【解決手段】フレーム2の中空4にテストウェーハWを保持層5を介し収容した支持フレーム1用の収納容器本体10と、収納容器本体10に嵌合されて支持フレーム1を被覆する蓋体20とを備え、収納容器本体10を、支持フレーム1のフレーム2と保持層5の周縁部を搭載する搭載板11と、搭載板11に形成されて保持層5に空隙を介して対向する中空のすり鉢部12と、搭載板11に形成されてフレーム2を囲む複数の規制壁13とから形成する。また、蓋体20を、搭載板11に嵌合される嵌合板21と、嵌合板21に形成されてテストウェーハWに空隙を介して対向する中空の山部22と、嵌合板21と山部22の間に介在されて支持フレーム1と収納容器本体10の規制壁13を被覆する被覆カバー23とから形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストウェーハの出荷の際等に使用されるウェーハの輸送容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、システムインパッケージ(SiP)やマルチチップパッケージ(MCP)等、一つのパッケージ中に複数の半導体素子を搭載するデバイスが増加してきているが、この増加に伴い、半導体ウェーハ状態での売買が活発化し、バックグラインドされた半導体ウェーハをダイシングフレームと呼ばれる支持フレームの保持層に搭載して他の工場や海外のユーザに出荷・輸送する機会が増大してきている。
【0003】
このような場合、最初の半導体ウェーハ(以下、テストウェーハという)を複数枚ではなく、一枚で出荷・輸送することが多いが、従来においては、一枚のテストウェーハに適した輸送容器が存在しなかった。この点に鑑み、従来においては、積層効率を優先した容器を使用したり、複数枚(例えば13枚)の支持フレームを積層収納可能なコインスタック型容器を流用して対応している(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特公表2005‐508805号公報
【特許文献2】US6,837,374B2号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、積層効率を優先した容器を使用する場合には、輸送時の衝撃等で支持フレームの保持層に搭載された宙吊りのテストウェーハが上下動を繰り返し、支持フレームのフレームから保持層が剥がれ落ちてしまうという問題がある。また、支持フレーム用のコインスタック型容器を流用する場合には、支持フレームのフレームから保持層が剥がれ落ちるおそれがないものの、複数枚の支持フレームを積層収納可能なコインスタック型容器に一枚の支持フレームのみを単に収納することになるので、無駄が多く、実に非効率的であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、支持フレームのフレームから保持層が剥がれ落ちるのを抑制し、ウェーハの効率的な収納が期待できるウェーハの輸送容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、フレームの中空にウェーハを保持層を介して収容した支持フレーム用の収納容器本体と、この収納容器本体に嵌め合わされて支持フレームを覆う着脱自在の蓋体とを備えたものであって、
収納容器本体は、支持フレームのフレームと保持層の周縁部とを搭載する搭載板と、この搭載板に形成されて支持フレームの保持層に空隙を介して対向する中空の凹部と、搭載板に形成されて支持フレームのフレームを囲む規制壁とを含み、
蓋体は、収納容器本体の搭載板に嵌め合わされる嵌合板と、この嵌合板に形成されて支持フレームに収容されたウェーハに空隙を介して対向する中空の山部と、これら嵌合板と山部との間に介在されて支持フレームと収納容器本体の規制壁とを覆う被覆部とを含んでなることを特徴としている。
【0007】
なお、収納容器本体の凹部と蓋体の山部とをそれぞれ錐台形に形成することができる。
また、収納容器本体の搭載板と凹部との間に、フレームの保持層との間に隙間を形成する取り出し穴を形成することができる。
また、蓋体の山部と被覆部との間に、収納容器本体の搭載板と凹部との間に接触する突き当て部を形成し、この突き当て部と搭載板との間に支持フレームの保持層を挟み持たせることもできる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲におけるウェーハには、少なくともφ200、300、450mmのテストウェーハや通常の半導体ウェーハ等が含まれる。また、収納容器本体と蓋体とは透明、不透明、半透明を特に問うものではないが、蓋体はウェーハ視認の観点から透明あるいは半透明であることが好ましい。規制壁や取り出し穴は、単数複数を特に問うものではない。
【0009】
本発明によれば、一枚のウェーハを輸送する場合には、先ず、一枚のウェーハを収容した単一の支持フレームを収納容器本体の搭載板上に配置し、この搭載板の表面にフレームと保持層の周縁部を接触支持させ、搭載板の規制壁によりフレームを位置決めする。こうして収納容器本体に支持フレームを配置したら、収納容器本体に蓋体を被せて支持フレームを覆い、フレームと規制壁とに蓋体の被覆部を嵌めてガタツキを規制すれば、ウェーハを一枚で輸送することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持フレームのフレームから保持層が剥がれ落ちるのを抑制し、ウェーハの効率的な収納が期待できるという効果がある。
【0011】
また、収納容器本体の凹部と蓋体の山部とをそれぞれ錐台形に形成すれば、収納容器本体や蓋体を上下に重ねて保管することができ、収納容器本体あるいは蓋体の保管スペースの縮小化を図ることができる。
また、収納容器本体の搭載板と凹部との間に、支持フレームのフレームとの間に隙間を形成する取り出し穴を形成すれば、取り出し穴に指等を挿入して支持フレームを引き上げることにより、収納容器本体から支持フレームを簡単に取り外すことが可能になる。
【0012】
さらに、蓋体の山部と被覆部との間に、収納容器本体の搭載板と凹部との間に接触する突き当て部を形成し、この突き当て部と搭載板との間に支持フレームの保持層を挟み持たせれば、輸送時の衝撃等に伴う保持層の変形でウェーハが破損するのを防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係るウェーハの輸送容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態におけるウェーハの輸送容器は、図1ないし図6に示すように、テストウェーハWを保持層5を介して収容した支持フレーム1用の収納容器本体10と、この収納容器本体10に着脱自在に嵌合されて単一の支持フレーム1を被覆する透明の蓋体20とを備えている。
【0014】
支持フレーム1は、図1や図2に示すように、所定の樹脂を含む成形材料や金属材料を使用して平坦な中空リング形に形成されるフレーム2を備え、このフレーム2の外周縁部の前方両側には位置決め用の切り欠き3がそれぞれ形成されるとともに、フレーム2の外周縁部の前後左右がそれぞれ直線的に形成されており、中空4にテストウェーハWを隙間を介して一枚収容するよう機能する。
【0015】
フレーム2の裏面には、中空4を下方から覆う可撓性の保持層5が着脱自在に緊張して貼着され、この保持層5の表面にテストウェーハWが着脱自在に搭載保持される。保持層5としては、特に限定されるものではないが、例えば紫外線の照射により粘着力が低下するポリエチレンやポリオレフィン製の樹脂フィルムがあげられる。
【0016】
収納容器本体10と蓋体20とは、所定の樹脂を含む成形材料を使用して薄く、かつ安価に熱成形、具体的には、真空成形あるいは圧空成形され、共に同じ大きさとされる。所定の樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば耐衝撃性に優れるポリエチレン、耐熱性や耐疲労性に優れるポリプロピレン等があげられる。
【0017】
収納容器本体10は、図1ないし図4に示すように、支持フレーム1、具体的にはフレーム2と保持層5の周縁部を水平に搭載する平面略矩形で平板の搭載板11を備え、この搭載板11の中央を含む大部分には、支持フレーム1の保持層5に空隙を介し対向する中空円錐台形のすり鉢部12が凹み形成される。搭載板11の表面には、フレーム2を外側から包囲して位置決め接触する複数の規制壁13が形成され、この複数の規制壁13がフレーム2の外周縁部に沿うよう所定の間隔をおいて配列されており、各規制壁13が搭載板11の表面から起立した断面略U字形に突出形成される。
【0018】
搭載板11とすり鉢部12の周壁との間には、複数の規制壁13間に位置する複数の取り出し穴14が凹み形成され、各取り出し穴14が平面略舌形に形成されてフレーム2に張架された保持層5との間に指挿入用の隙間を形成し、収納された支持フレーム1の取り外しを容易化するよう機能する。また、搭載板11の前後左右の周縁部には、垂直下方向に伸びる周壁15が一体形成され、この周壁15が剛性確保の観点から断面略L字形に屈曲形成されてその短辺部が幅方向外側に突出する。
【0019】
すり鉢部12は、搭載板11の中心を含む大部分に傾斜して凹み形成される中空円錐台部16と、この中空円錐台部16の周壁下端部に異なる傾斜角度で連設される有底円錐台部17とを備え、中空円錐台部16の周壁に複数の取り出し穴14が配列形成されており、有底円錐台部17の底が支持フレーム1の保持層5裏面に緩衝用の空隙を介し下方から対向する。
【0020】
蓋体20は、図2、図5、図6に示すように、収納容器本体10の搭載板11に上方から着脱自在に積層嵌合される平面略矩形で平板の嵌合板21を備え、この嵌合板21の中心を含む大部分には、支持フレーム1の中空4や収容されたテストウェーハWの露出面に緩衝用の空隙を介し上方から対向する中空円錐台形の山部22が膨出形成されており、これら嵌合板21と山部22との間には、支持フレーム1のフレーム2と収納容器本体10の規制壁13とを被覆する被覆カバー23が介在して形成される。
【0021】
嵌合板21の前後左右の周縁部には、垂直下方向に伸びる周壁24が一体形成され、この周壁24が剛性確保の観点から断面略L字形に屈曲形成されてその短辺部が幅方向外側に突出しており、この周壁24が収納容器本体10の周壁15に上方から重なる。また、被覆カバー23は、平面リング形を呈した低い断面略U字形あるいは略溝形に形成されて山部22を包囲し、接触したフレーム2と規制壁13とに上方から密嵌して保護し、かつフレーム2のガタツキを防止する。
【0022】
なお、蓋体20の山部22と被覆カバー23との間には、収納容器本体10の搭載板11とすり鉢部12との間の平坦部に接触する断面略U字形の突き当て部25が選択的に屈曲形成され、この突き当て部25が搭載板11との間に支持フレーム1の保持層5を挟持・規制して輸送時の衝撃等でテストウェーハWやそのチップが欠けたり、割れたり、破損するのを防止する。突き当て部25の保持層5に接触する接触面には、凹凸の粗面化処理等の非粘着処理が施され、この非粘着処理により、突き当て部25が蓋体20の取り外し時に保持層5から円滑に剥離する。
【0023】
上記構成において、テストウェーハWを一枚で出荷・輸送する場合には、先ず、テストウェーハWを収容した一枚の支持フレーム1を収納容器本体10の搭載板11に搭載し、この搭載板11の表面にフレーム2と保持層5の周縁部を水平に接触支持させ、複数の規制壁13にフレーム2の外周縁部を位置決め接触させ、すり鉢部12の底と保持層5の裏面とを対向させる。
【0024】
こうして収納容器本体10に支持フレーム1をセットしたら、収納容器本体10の表面に蓋体20の嵌合板21を嵌合して支持フレーム1を被覆し、接触したフレーム2と規制壁13とに被覆カバー23を上方から密嵌してガタツキを防止するとともに、収納容器本体10と蓋体20の周壁15・24を相互に重ね合わせれば、テストウェーハWを一枚で安全に出荷・輸送することができる。
【0025】
輸送した後、テストウェーハWを取り出す場合には、収納容器本体10の表面から蓋体20を取り外し、搭載板11の複数の取り出し穴14に指を適宜挿入して支持フレーム1を引き上げれば、収納容器本体10に位置決め収納された支持フレーム1を取り外すことができる。
【0026】
上記構成によれば、単一のテストウェーハWに適した構造にウェーハの輸送容器を構成するので、テストウェーハWの無駄のない効率的な収納が大いに期待できる。また、支持フレーム1のフレーム2と保持層5の周縁部とを収納容器本体10と蓋体20とに挟持させるので、輸送時の衝撃等で支持フレーム1のテストウェーハWが上下動を繰り返すことがなく、支持フレーム1のフレーム2から保持層5が剥離するのを有効に防止することができる。
【0027】
また、収納容器本体10のすり鉢部12と蓋体20の山部22とを支持フレーム1に空隙をおいて対向する中空の円錐台形に形成するので、例えこれら12・22が輸送容器の落下時に変形しても、テストウェーハWの破損を防止することができる。さらに、すり鉢部12と山部22とが傾斜したテーパ構造なので、複数の収納容器本体10や蓋体20を上下に積層して簡単に保管することができ、収納容器本体10や蓋体20の保管スペースの最小化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態を模式的に示す平面説明図である。
【図2】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態における収納容器本体を模式的に示す平面説明図である。
【図4】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態における収納容器本体を模式的に示す断面説明図である。
【図5】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態における蓋体を模式的に示す平面説明図である。
【図6】本発明に係るウェーハの輸送容器の実施形態における蓋体を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 支持フレーム
2 フレーム
4 中空
5 保持層
10 収納容器本体
11 搭載板
12 すり鉢部(凹部)
13 規制壁
14 取り出し穴
20 蓋体
21 嵌合板
22 山部
23 被覆カバー(被覆部)
25 突き当て部
W テストウェーハ(ウェーハ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの中空にウェーハを保持層を介して収容した支持フレーム用の収納容器本体と、この収納容器本体に嵌め合わされて支持フレームを覆う着脱自在の蓋体とを備えたウェーハの輸送容器であって、
収納容器本体は、支持フレームのフレームと保持層の周縁部とを搭載する搭載板と、この搭載板に形成されて支持フレームの保持層に空隙を介して対向する中空の凹部と、搭載板に形成されて支持フレームのフレームを囲む規制壁とを含み、
蓋体は、収納容器本体の搭載板に嵌め合わされる嵌合板と、この嵌合板に形成されて支持フレームに収容されたウェーハに空隙を介して対向する中空の山部と、これら嵌合板と山部との間に介在されて支持フレームと収納容器本体の規制壁とを覆う被覆部とを含んでなることを特徴とするウェーハの輸送容器。
【請求項2】
収納容器本体の凹部と蓋体の山部とをそれぞれ錐台形に形成した請求項1記載のウェーハの輸送容器。
【請求項3】
収納容器本体の搭載板と凹部との間に、フレームの保持層との間に隙間を形成する取り出し穴を形成した請求項1又は2記載のウェーハの輸送容器。
【請求項4】
蓋体の山部と被覆部との間に、収納容器本体の搭載板と凹部との間に接触する突き当て部を形成し、この突き当て部と搭載板との間に支持フレームの保持層を挟み持たせるようにした請求項1、2、又は3記載のウェーハの輸送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−40819(P2010−40819A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202766(P2008−202766)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】