説明

ウエザストリップ及びその製造方法

【課題】不織布層と接着層との接着性能の低下抑制を図ることにより、外観品質の低下を抑制することのできるウエザストリップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】自動車用ドアのドア開口周縁にはウエザストリップが装着されている。ウエザストリップは、断面略U字形のトリム部及び中空状のシール部を備えるとともに、トリム部には意匠リップ18が延出形成されている。意匠リップ18の外表面など、ウエザストリップの意匠面には、樹脂接着層25を介在させ、不織布で構成される不織布層26が形成されている。不織布層26は、着色された加飾層26aと、樹脂接着層25に接着する無着色の被接着層26bとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のドア開口周縁やドアの周縁部に用いられるウエザストリップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両のドアの周縁部又はドア開口周縁にはウエザストリップが設けられる。ウエザストリップは、ドアの周縁部又はドア開口周縁のフランジに嵌め込まれる断面略U字状のトリム部と、該トリム部から突出して設けられた中空状のシール部とを備えている。そして、ドア閉時には、ドア開口周縁又はドアの周縁部に当該シール部が圧接されることによって、ドアとボディ(車両のドア開口周縁)との間がシールされる。
【0003】
近年、ウエザストリップの中には、意匠面に不織布を貼る(接着する)ことにより、外観品質の向上を図っているものも見受けられる(例えば、特許文献1参照。)。従来では、例えばウエザストリップに接着剤を塗布し、接着層を形成した後、不織布を接着するといった手法や、加飾層となる不織布本体に接着層となるPEシート(ポリエチレン樹脂(PE)製の接着樹脂シート)が予め熱溶着により裏打ちされたラミネート不織布を用い、当該ラミネート不織布を加硫後のウエザストリップの意匠面に圧着させて熱接着させるといった手法等により、不織布の接着が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−131096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外観品質向上のため、加飾層となる不織布に着色を施した場合、当該不織布と接着層との接着力が低下することが懸念される。
【0006】
不織布と接着層との接着力が低下すると、例えば製造装置のロール部材やガイド部材等との摩擦、検査時や箱入れ時等における摩擦などにより、意匠面に力が加わった場合に、不織布が接着層から剥れるおそれがある。このような不具合は、製造過程に限らず、ウエザストリップの車両装着後においても、使用状況等により発生するおそれがある。
【0007】
結果として、不織布の剥離による外観品質の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、不織布層と接着層との接着性能の低下抑制を図ることにより、外観品質の低下を抑制することのできるウエザストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記問題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.車両のドアの周縁部又はドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドア開口周縁又はドアの周縁に圧接される中空状のシール部とを備えたウエザストリップにおいて、
前記トリム部の外表面に、樹脂接着層を介在させ、不織布からなる不織布層を形成するとともに、
前記不織布層は、着色された加飾層と、前記樹脂接着層に接着する無着色の被接着層とを有していることを特徴とするウエザストリップ。
【0011】
ここで「無着色」とは、顔料や染料などの着色剤により着色の施されていないことを意味する。従って、無着色の不織布とは、いわゆる白色(無色透明の繊維が光の反射で白色に見えるものを含む)の不織布を指す。
【0012】
上記手段1によれば、トリム部の外表面に接着される不織布層が、着色された加飾層と、樹脂接着層に接着する無着色の被接着層とから構成されている。これにより、表面側では、加飾層により美しい外観が得られると共に、裏面側では、無着色の被接着層により、樹脂接着層とのより強固な接着力を得ることができる。結果として、不織布層と樹脂接着層との接着性能の低下、ひいては不織布層の剥離を抑制することにより、外観品質の低下抑制を図ることができる。
【0013】
さらに、無着色(白色)の層を設けることにより、ウエザストリップ本体の素材色であるEPDMゴム等の黒色を隠すことができ、外から視認される加飾層の色合いを意図したものとしやすくなる。また、被接着層を間に設けているので、樹脂接着層の接着剤が加飾層にまで浸透して意図しない模様が加飾層表面に現れ、外観品質が低下するといった不具合の発生も低減できる。結果として、素地色の隠蔽性が高まり、色合いという面からも、美しい外観や優れた風合いを得ることができる。
【0014】
加えて、加飾層の着色に用いられる着色剤の違いに起因した接着力の違いなどを考慮して、品種毎に接着剤の成分等を変更する必要もなく、汎用性を高めることができる。
【0015】
なお、接着性能の低下は、着色剤に起因しているものだけではなく、例えば着色剤を安定させる薬剤の残留や、余剰の着色剤を洗い流した時の残留成分に起因している場合もあり、着色加工によって繊維の表面に余分な物が付いている場合にも低下するため、「無着色の繊維」とは「着色加工を施していない繊維」と読みかえても良い。
【0016】
手段2.前記トリム部は、当該トリム部の外表面から延出形成されたリップ部を備え、
少なくとも当該リップ部の外表面に、樹脂接着層を介在させ、不織布からなる不織布層を形成するとともに、
前記不織布層は、着色された加飾層と、前記樹脂接着層に接着する無着色の被接着層とを有していることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0017】
上記手段2によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0018】
手段3.前記不織布層を構成する不織布は、前記加飾層を構成する不織布と、前記被接着層を構成する不織布とを積層し一体としたものであることを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0019】
上記手段3によれば、例えば一枚の不織布の表面側から着色剤を塗布する等して2層形成されたものに比べ、着色剤が被接着層まで浸透し、樹脂接着層との接着性能が低下するといった不具合の発生するおそれも少なく、上記手段1,2の作用効果をより確実なものとすることができる。
【0020】
手段4.前記被接着層の厚みを50μm以上としたことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1つに記載のウエザストリップ。
【0021】
上記手段4によれば、上記手段1乃至3の作用効果をより確実なものとすることができる。なお、被接着層の厚みを50μmより小さく(薄く)すると被接着層が形成し難くなる。また、厚みの上限は特にないが、あまり厚くすると不織布層内で剥離し易くなるため、1mmくらいまでの厚みが経済的にも、可撓性の面でも好ましい。
【0022】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法であって、
前記加飾層を構成する着色された不織布と、前記被接着層を構成する無着色の不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士を絡み合わせて一体化することにより、前記不織布層を構成する不織布を形成する不織布形成工程と、
前記ウエザストリップのトリム部及び/又はリップ部を未加硫EPDMソリッドゴムで、シール部を未加硫EPDMスポンジゴムで押出成形する押出成形工程と、
前記押出成形された未加硫EPDMソリッドゴム及び未加硫EPDMスポンジゴムを加硫する加硫工程と、
前記加硫されたEPDMソリッドゴムのトリム部及び/又はリップ部の外表面に、前記不織布形成工程により形成された不織布を樹脂接着層を介して接着して、前記不織布層を形成する不織布層形成工程とを備えたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【0023】
上記手段5によれば、上記手段1,2と同様の作用効果が奏される。これに加え、手段5では、加飾層を構成する着色された不織布と、前記被接着層を構成する無着色の不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士をニードルパンチ加工等により絡み合わせて一体化することにより、不織布層を構成する不織布を形成しているため、上記手段3と同様の作用効果も奏される。さらに、本手段によれば、加飾層を形成するにあたり、所定厚の被接着層を確保しつつ表面側から一定の厚み範囲内で着色を行う等といった複雑な制御を行う必要もない。その結果、着色層と無着色層からなる2層構造の不織布の形成作業が比較的容易となり、生産性の向上、ひいてはコスト低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】自動車を示す斜視図である。
【図2】一実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【図3】ウエザストリップの中間成形体を示す断面図である。
【図4】樹脂接着層及び不織布層を説明するための部分拡大断面図である。
【図5】ウエザストリップの製造ラインの一部を示す模式図である。
【図6】本発明の別の実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1の側方にはドア2が開閉可能に設けられ、ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁にはウエザストリップ4が装着されている。本実施形態のウエザストリップ4は、主として押出成形法によって成形され、全体として環状をなしている。しかしながら、必ずしも環状をなしている必要はなく、例えばドア開口3の下辺部位において、ウエザストリップ4(押出成形体)の端部が離れて配置され、その端部間をスカッフプレート等で覆う仕様のものにも適用することができる。
【0026】
図2に示すように、ウエザストリップ4はトリム部5及びシール部6を備えている。トリム部5は、車内側側壁部11、車外側側壁部12及び両側壁11,12を連結する連結部13を備えており、全体として断面略U字状をなしている。トリム部5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)ソリッドゴムの被覆材によって内部に金属製のインサート14が埋設されて構成されている。
【0027】
車外側側壁部12の内面(車内側面)にはトリム部5の内側(車内側)に向かって延びる複数の保持リップ部15が一体形成され、車内側側壁部11の内面(車外側面)にはトリム部5の内側(車外側)に向かって延びる保持リップ部16が一体形成されている。連結部13には図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆う意匠リップ18が延出形成されている。意匠リップ18が本実施形態におけるリップ部に相当する。尚、トリム部5の内部にはインサートが埋設されていないものを使用してもよい。また、保持リップを省略し、両面接着テープによってフランジに貼着される構成としてもよい。さらに、トリム部5の被覆材の材料としては、EPDMソリッドゴムに限らず、比重0.8〜1.0程度の微発泡材や比重が0.4〜0.79のスポンジ材料を用いることができる。さらにまた、ゴムに限らず、熱可塑性エラストマーも使用することができる。
【0028】
また、ドア開口3周縁には、前記ボディのインナパネル21及びアウタパネル22が接合されることによりフランジ23が形成されており、このフランジ23にトリム部5が嵌め込まれることにより、ウエザストリップ4がドア開口3周縁に保持される。
【0029】
なお、シール部6は、車外側側壁部12の車外側において突出して一体に設けられ、EPDMスポンジゴムによって中空状に構成されている。そして、ドア2閉時には、シール部6がドア2の周縁に圧接されることで、ドア2と自動車1のボディとの間がシールされる。
【0030】
ウエザストリップ4の取付状態では、意匠リップ18の略先端部から基端部、さらにはトリム部5の連結部13、車外側側壁部12におけるシール部6との連接部に至る範囲の外表面は、外観に現れる意匠面Dとなる。図4の部分拡大断面図に示すように、この意匠面Dには、シート状(フィルム状を含む)の樹脂接着層25を介在させて、不織布で構成される不織布層26が形成されている。なお、意匠面Dは、図2,3に示すように、意匠リップ18の先端にまで不織布が貼着されてなり、折返し部を含んでいる。
【0031】
樹脂接着層25は、オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレン(PE)を原材料とした無着色材料により構成されている。これに限らず、樹脂接着層25に着色を施した構成としてもよい。なお、PEの中でも融点が低い直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0032】
不織布層26は、例えばポリエチレンフタレート(PET)等のポリエステル繊維を主成分とする不織布で構成されている。勿論、不織布層26は、PET等のポリエステル以外にもPE、ポリプロピレン(PP)など他の熱可塑性樹脂材料等により構成されていてもよい。
【0033】
また、不織布層26は、外表面に表れる加飾層26aと、内側で樹脂接着層25と接着する被接着層26bとからなる2層構造となっている。加飾層26aは、着色された不織布で構成され、被接着層26bは、無着色の不織布で構成されている。加飾層26aには、例えば室内の内装品等の色にマッチした着色が施されている。なお、着色を施した場合、薄い色で着色したものの方が濃い色で着色したものに比べて接着性が良好となる事から、被接着層26bは無着色の不織布が一番好ましいが、必ずしも完全に無着色のものだけではなく、加飾層26aが濃い色での着色の場合に、被接着層26bを薄い色で着色したものを使用しても良い。
【0034】
本実施形態では、不織布層26全体の厚みW1が500〜2000μmに設定され、そのうち被接着層26bの厚みW2が50μm以上1000μm未満に設定されている。なお、本実施の形態では、被接着層26bの厚みW2は100μmである。
【0035】
次に上記ウエザストリップ4の製造方法について説明する。図5はウエザストリップ4の製造ラインの一部を示す模式図であり、同図中においてウエザストリップ4は左側から右方向に進みながら製造される。
【0036】
まず、押出成形工程においては、ゴム押出機31に対し、EPDM未加硫ゴムとともにインサート14が連続的に供給される。そして、EPDM未加硫ゴムによってインサート14が被覆された状態で、ゴム押出機31のダイスからウエザストリップ4の本体部となる中間成形体32(図3参照)が押出成形される。この段階では、トリム部5に対応するインサート14を埋設した部位が図3に示すように開いた状態で略平板状に押出される。
【0037】
続く、加硫工程では、押出された中間成形体32が高周波加硫槽(UHF)33に案内され、一次加硫が施される。その後、熱風加硫槽(HAV)34に案内され、二次加硫が施され、加硫が完了する。
【0038】
その後、不織布層形成工程において、中間成形体32に不織布層26を形成する。より詳しくは、事前に不織布形成工程を経て製造されたラミネート不織布35を繰り出し、加硫の直後で比較的高温となっている中間成形体32の意匠面Dに対応する部位に圧着させる。
【0039】
ここで、ラミネート不織布35の製造方法(不織布形成工程)について説明する。まず、加飾層26aを構成する不織布と、被接着層26bを構成する不織布をそれぞれ製造する。製造方法としては、湿式法、乾式法、ウォータージェット法など任意の製造方法を採用することができる。そして、加飾層26aを構成する不織布に対しては、着色を施す。
【0040】
その後、加飾層26aを構成する不織布と、被接着層26bを構成する不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士をニードルパンチ加工など任意の手法により絡み合わせて、1枚の不織布として一体化する。これにより、不織布層26を構成する不織布(不織布積層体)が得られる。
【0041】
そして、当該不織布積層体の被接着層26b側に対し、樹脂接着層25となるPEシートを熱溶着により裏打ちする。これにより、ラミネート不織布35が完成する。
【0042】
上述したように、ラミネート不織布35を中間成形体32に圧着させることで、PEシートが溶融し、前記ラミネート不織布35が中間成形体32に熱溶着される。つまり、これら不織布積層体、ラミネート不織布35、及びこのラミネート不織布35の熱溶着を得る工程が本実施形態における不織布形成工程に相当する。
【0043】
不織布層形成工程を経た中間成形体32は曲げ加工機37により曲げ加工され、断面略U字状のトリム部5が形成される。その後、カッター38で所定の寸法に裁断され、ウエザストリップ4が得られる。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態では、意匠リップ18の外表面など、ウエザストリップ4の意匠面Dに形成される不織布層26がポリエステル系繊維製の不織布で構成されているため、織布を用いた場合と同様のファブリック調の外観とすることができ、美しい外観が得られ、風合いも優れたものとなる。一方で、生産性の高い不織布を用いるため、低コストで生産が可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、不織布層26が、着色された加飾層26aと、樹脂接着層25に接着する無着色の被接着層26bとから構成されている。これにより、表面側では、加飾層26aにより美しい外観が得られると共に、裏面側では、無着色の被接着層26bにより、樹脂接着層25とのより強固な接着力を得ることができる。結果として、不織布層26と樹脂接着層25との接着性能の低下、ひいては不織布層26の剥離を防止することにより、外観品質の低下を抑制することができる。加えて、加飾層26aの着色に用いられる着色剤の違い及び/又は着色加工に伴う残留薬品等に起因した接着力の違いなどを考慮して、品種毎にPEシートの接着剤の成分等を変更する必要もなく、汎用性を高めることができる。
【0046】
さらに、無着色(白色)の層を設けることにより、素地であるEPDMゴムの黒色を隠すことができ、外から視認される加飾層26aの色合いを意図したものとしやすくなる。結果として、素地色の隠蔽性が高まり、色合いという面からも、美しい外観や優れた風合いを得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、加飾層26aを構成する不織布と、被接着層26bを構成する不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士をニードルパンチ加工など任意の手法により絡み合わせて、1枚の不織布として一体化することにより、不織布層26を構成する不織布(不織布積層体)を形成している。しかしながら、例えば一枚の不織布の表面側から着色剤を塗布する等して2層に形成するようにしてもよい。ただし、その場合、着色剤が被接着層26bまで浸透し、樹脂接着層25との接着性能が低下するといった不具合の発生するおそれがある。また、その場合には、加飾層26aを形成するにあたり、所定厚の被接着層26bを確保しつつ表面側から一定の厚み範囲内で着色を行う等といった複雑な制御を行う必要があり、本実施形態のように、着色層と無着色層を積層させて2層構造の不織布を形成した方が、その作業が比較的容易となり、生産性の向上、ひいてはコスト低減に寄与することができる。
【0048】
また、本実施形態では、PEシートが裏打ちされたラミネート不織布35を中間成形体32に圧着して熱溶着させることで、不織布層26が形成される構成となっている。このため、不織布層26の形成に際し、接着剤の塗布工程が不要となる。また、加硫直後の比較的高温となっている中間成形体32に圧着させるため、熱溶着のための加熱工程が別途必要となることもない。その結果、不織布層26の形成、すなわち不織布の貼着が比較的容易となり、この点においても、生産性の向上が図られ、低コストを実現できる。
【0049】
さらに、シート状の樹脂接着層25を介在させる構成とすることで、接着剤を用いて不織布を貼着する構成と異なり、接着剤の浸透によって意図しない模様が加飾層26a表面に現れ、外観品質が低下するといった不具合の発生も低減できる。
【0050】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0051】
(a)上記実施形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザストリップ4について具体化しているが、ドア2の周縁部、又は、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドアの周縁部又はそれらのドアに対向するドアの開口周縁に設けられるウエザストリップについて適用することも可能である。
【0052】
(b)図6に示すように、意匠リップ18を省略し、トリム部5の外表面が意匠面となるウエザストリップにおいては、トリム部5の外表面に樹脂接着層25及び不織布層26を形成する構成としてもよい。
【0053】
(c)上記実施形態では、ウエザストリップ4を構成する素材としてEPDMを例示しているが、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)等の他のゴム材料を用いてもよい。
【0054】
(d)上記実施形態では、樹脂接着層25を構成する素材として、PEを例示しているが、PP等の他の樹脂材料を用いてもよい。
【0055】
(e)上記実施形態では、不織布層26を形成するにあたり、当該不織布層26となる不織布に対し樹脂接着層25となるPEシートが予め裏打ちされたラミネート不織布35を用い、当該ラミネート不織布35を中間成形体32に圧着して熱溶着する構成となっている。不織布の貼着方法は、これに限らず、例えば加硫工程の直後で不織布の圧着直前に、樹脂接着層25となるPEシートを中間成形体32と不織布の間に介在させるように供給する構成としてもよい。また、中間成形体32に接着剤を塗布して、不織布を貼着する構成としてもよい。
【0056】
(f)上記実施形態では、着色された加飾層26aと、無着色の被接着層26bとを有する不織布を製造するにあたり、加飾層26aを構成する不織布と、被接着層26bを構成する不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士をニードルパンチ加工など任意の手法により絡み合わせて、1枚の不織布として一体化する構成となっている。しかし、着色層と無着色層からなる2層構造の不織布を形成する方法は、これに限定されるものではない。例えば、一枚の不織布の表面側から着色剤を塗布する等して2層構造とする構成としてもよい。
【0057】
(g)上記実施形態では、不織布層26全体の厚みW1が500〜2000μmに設定され、そのうち被接着層26bの厚みW2が50μm以上1000μm未満に設定されている。勿論、不織布層26全体の厚みW1、及び、被接着層26bの厚みW2は、これに限定されるものではない。但し、上述した各種作用効果を得る上では、少なくとも被接着層26bの厚みW2が50μm以上に設定されていることが好ましい。
【0058】
(h)上記実施形態では、加飾層26aを構成する不織布、及び、被接着層26bを構成する不織布が共に、ポリエチレンフタレート(PET)等のポリエステル繊維を主成分とする同材質の不織布で構成されている。これに限らず、加飾層26aを構成する不織布と、被接着層26bを構成する不織布とを、それぞれ異なる材料で形成してもよい。例えば、加飾層26aを構成する不織布を発色性のよい材料で形成し、被接着層26bを構成する不織布を樹脂接着層25と接着性のよい材料で形成してもよい。
【0059】
(i)上記実施形態では、ウエザストリップ4がドア開口3周縁の全周にわたって取付けられているが、必ずしも全周でなくてもよく、例えば部分的に取付けられるウエザストリップであってもよい。また、部分的に型成形部を備えていても良い。
【符号の説明】
【0060】
1…自動車、2…ドア、3…ドア開口、4…ウエザストリップ、5…トリム部、6…シール部、18…意匠リップ、25…樹脂接着層、26…不織布層、26a…加飾層、26b…被接着層、32…中間成形体、35…ラミネート不織布、D…意匠面、W1…不織布層全体の厚み、W2…被接着層の厚み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの周縁部又はドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドア開口周縁又はドアの周縁に圧接される中空状のシール部とを備えたウエザストリップにおいて、
前記トリム部の外表面に、樹脂接着層を介在させ、不織布からなる不織布層を形成するとともに、
前記不織布層は、着色された加飾層と、前記樹脂接着層に接着する無着色の被接着層とを有していることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
前記トリム部は、当該トリム部の外表面から延出形成されたリップ部を備え、
少なくとも当該リップ部の外表面に、樹脂接着層を介在させ、不織布からなる不織布層を形成するとともに、
前記不織布層は、着色された加飾層と、前記樹脂接着層に接着する無着色の被接着層とを有していることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
前記不織布層を構成する不織布は、前記加飾層を構成する不織布と、前記被接着層を構成する不織布とを積層し一体としたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記被接着層の厚みを50μm以上1000μm未満としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のウエザストリップ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のウエザストリップの製造方法であって、
前記加飾層を構成する着色された不織布と、前記被接着層を構成する無着色の不織布とを積層し、当該不織布の繊維同士を絡み合わせて一体化することにより、前記不織布層を構成する不織布を形成する不織布形成工程と、
前記ウエザストリップのトリム部及び/又はリップ部を未加硫EPDMソリッドゴムで、シール部を未加硫EPDMスポンジゴムで押出成形する押出成形工程と、
前記押出成形された未加硫EPDMソリッドゴム及び未加硫EPDMスポンジゴムを加硫する加硫工程と、
前記加硫されたEPDMソリッドゴムのトリム部及び/又はリップ部の外表面に、前記不織布形成工程により形成された不織布を樹脂接着層を介して接着して、前記不織布層を形成する不織布層形成工程とを備えたことを特徴とするウエザストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−173498(P2011−173498A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38715(P2010−38715)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】