ウエーハの加工方法
【課題】裏面に第2の半導体デバイスを接合したウエーハを、ストリートに沿って切削ブレードによって切削してもチッピングが生じないウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】表面2aに複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2の裏面に第2の半導体デバイス220を接合した積層ウエーハ222を、第1の半導体デバイス22を区画するストリート21に沿って分割するウエーハの加工方法であって、第1のデバイス22が形成されたウエーハ2の裏面に紫外線を照射すると固化し温水によって除去可能な液状樹脂を被覆して第2の半導体デバイス220を埋没させる樹脂被覆工程と、液状樹脂に紫外線を照射して固化する樹脂固化工程と、積層ウエーハ222の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2をストリート21に沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、温水に浸漬して樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程とを含む。
【解決手段】表面2aに複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2の裏面に第2の半導体デバイス220を接合した積層ウエーハ222を、第1の半導体デバイス22を区画するストリート21に沿って分割するウエーハの加工方法であって、第1のデバイス22が形成されたウエーハ2の裏面に紫外線を照射すると固化し温水によって除去可能な液状樹脂を被覆して第2の半導体デバイス220を埋没させる樹脂被覆工程と、液状樹脂に紫外線を照射して固化する樹脂固化工程と、積層ウエーハ222の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2をストリート21に沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、温水に浸漬して樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成されたウエーハはストリートに沿って個々のデバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。ウエーハをストリートに沿って分割する方法としては、切削装置を用いて切削ブレードによりストリートに沿って切断する方法が一般に用いられている。また、ウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハのストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成する方法も実用化されている。
【0003】
一方近年、電気機器の小型化を図るため、第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合して構成する半導体装置が提案されている。この半導体装置は、フリップチップボンディング技術を用いて、第1の半導体デバイスに設けられ裏面に露出するスタッド電極と第2の半導体デバイスの表面に形成されたボンディングパッドを接合して構成する。
【0004】
上述した第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合して構成する半導体装置は、半導体装置を1個づつ組み立てて製造するため、その都度半導体デバイスを搬送・配置する工程と、各半導体デバイスの位置を検出する工程とを実施しなければならず、生産性の面で問題がある。
【0005】
上記問題を解消するために、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハを個々の半導体デバイスに分割する前のウエーハの状態において、各第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合した後に、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハを個々の半導体デバイスに分割することにより、第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合した半導体装置を製造する方法が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−250599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、裏面に第2の半導体デバイスを接合したウエーハを、表面に形成されたストリートに沿って表面側から切削ブレードによって切削すると、ウエーハの裏面にはストリートに対応する領域に隙間を形成して第2の半導体デバイスが接合されているので、この隙間の近傍において微細な振動が発生し、切削溝に沿ってチッピングが生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、裏面に第2の半導体デバイスを接合したウエーハを、表面に形成されたストリートに沿って表面側から切削ブレードによって切削してもチッピングが生じることなく切断することがでるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における該第1の半導体デバイスと対応する所定位置に該第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、該第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法において、
該積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程と、
該樹脂被覆工程によって該基板の裏面を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させた該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を固化する樹脂固化工程と、
該樹脂固化工程が実施された積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、
該切断工程が実施された積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
上記第1のデバイスが形成されたウエーハは、基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数の第1のデバイスが形成されており、
上記切断工程を実施する前に、第1のデバイスが形成されたウエーハの複数のデバイスを区画するストリートに沿ってレーザー光線を照射しストリートに沿って積層体を除去する積層体除去工程を実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層ウエーハにおける複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して複数の第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程を実施し、この液状樹脂に紫外線を照射して液状樹脂を固化する樹脂固化工程を実施した後に、積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程を実施するので、第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に接合された複数の第2の半導体デバイス間には固化された樹脂が充填されているため、切削ブレードによって切断する際に切削溝の両側に微細な振動が発生するのを抑制することできるので、切削溝に沿ってチッピングが生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるウエーハの加工方法によって加工される積層ウエーハを構成する第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
【図2】本発明によるウエーハの加工方法によって加工される積層ウエーハを構成する第2の半導体デバイスが複数形成されたウエーハおよび要部拡大断面図と第2の半導体デバイスの斜視図。
【図3】図1に示すウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程の説明図。
【図4】図1に示すウエーハの裏面を研削する裏面研削工程の説明図。
【図5】図1に示すウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合するデバイス接合工程の説明図。
【図6】図5に示すデバイス接合工程が実施された積層ウエーハの斜視図。
【図7】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂被覆工程の説明図。
【図8】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂固化工程の説明図。
【図9】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の説明図。
【図10】本発明によるウエーハの加工方法における積層体除去工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図11】本発明によるウエーハの加工方法における積層体除去工程の説明図。
【図12】本発明によるウエーハの加工方法における切断工程を実施するための切削装置の要部斜視図。
【図13】本発明によるウエーハの加工方法における切断工程の説明図。
【図14】図11に示す切断における切削ブレードの切り込み送り位置および切断肯定が実施されたウエーハを拡大して示す断面図。
【図15】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂除去工程の説明図。
【図16】本発明によるウエーハの加工方法によって加工され分割された半導体装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
ここで、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハの製造方法について説明する。
図1の(a)および(b)には、積層ウエーハを構成する第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図1の(a)および(b)に示すウエーハ2は、例えば厚みが700μmのシリコン等の基板20の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体21によって複数のIC、LSI等の第1の半導体デバイス22がマトリックス状に形成されている。そして、各第1の半導体デバイス22は、格子状に形成されたストリート23によって区画されている。積層体21は厚みが2〜10μmに形成されており、積層体21を形成する絶縁膜は、SiO2,SiO,SiN等ガラス質材料からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。また、ウエーハ2は、図1の (b)に示すようにデバイス22の表面に配設された複数のボンディングパッド24を備えているとともに、このボンディングパッド24に接続しシリコン基板20に埋設された銅等の金属材からなるスタッド電極25を備えている。
【0015】
また、図2の(a)および(b)には積層ウエーハを構成する第2の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図2の(a)および(b)に示すウエーハ200は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面200aに複数のIC、LSI等の複数の第2の半導体デバイス220がマトリックス状に形成されている。そして、各第1の半導体デバイス220は、格子状に形成されたストリート230によって区画されている。第2の半導体デバイス220の表面には、上記第1の半導体デバイス22に設けられたスタッド電極25と対応する位置にボンディングパッド240が形成されている。このように構成されたウエーハ200は、裏面200bが研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置等のダイシング装置によってストリート230に沿って切断され、図2の(c)に示すように個々の第2の半導体デバイス220に分割される。
【0016】
以下、上記第1の半導体デバイス22が複数形成されたウエーハ2および第2の半導体デバイス220を用いて第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220を接合して構成する積層ウエーハの製造方法について説明する。
積層ウエーハの製造方法においては、図3の(a)および(b)に示すようにウエーハ2の表面2aに第1の半導体デバイス22を保護するための保護部材3を貼着する(保護部材貼着工程)。
【0017】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、ウエーハ2の基板20の裏面20bを研削して所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図4に示す研削装置によって実施する。図4に示す研削装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41に保持された被加工物を研削する研削手段42を具備している。チャックテーブル41は、上面に被加工物を吸引保持し図4において矢印41aで示す方向に回転せしめられる。研削手段42は、スピンドルハウジング421と、該スピンドルハウジング421に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル422と、該回転スピンドル422の下端に装着されたマウンター423と、該マウンター423の下面に取り付けられた研削ホイール424とを具備している。この研削ホイール424は、円板状の基台425と、該基台425の下面に環状に装着された研削砥石426とからなっており、基台425がマウンター423の下面に締結ボルト427によって取り付けられている。
【0018】
上述した研削装置4を用いて裏面研削工程を実施するには、チャックテーブル41の上面(保持面)に上述した保護部材貼着工程が実施されたウエーハ2の保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、チャックテーブル41上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル41上に保護部材3を介し吸引保持されたウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにチャックテーブル41上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル41を矢印41aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段42の研削ホイール424を矢印424aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめてウエーハ2の基板20の裏面20bに接触せしめ、研削ホイール424を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りすることによりウエーハ2の基板20の裏面20bを研削してウエーハ2を所定の厚み(例えば、100μm)に形成する。
【0019】
上述した裏面研削工程を実施したならば、裏面研削工程が実施されたウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置に第2の半導体デバイス220を接合し積層ウエーハを形成するデバイス接合工程を実施する。このデバイス接合工程について、図5および図6を参照して説明する。即ち、図5の(a)および(b)に示すようにボンディング装置5の保持テーブル51上に上述したように裏面研削工程が実施されたウエーハ2の表面2aに貼着された保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保持テーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、保持テーブル51上に保護部材3を介して保持されたウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにして保持テーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を保持したならば、吸着ハンド52によって上記図2の(b)に示す第2の半導体デバイス220を吸引保持し、保持テーブル51上に保持されたウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置の上方に搬送する。そして、ウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置と第2の半導体デバイス220との位置合わせを行い、図5の(b)に示すように吸着ハンド52を下降させて、第2の半導体デバイス220を第1の半導体デバイス22の基板20の裏面20bにおける所定位置に接合する。そして、このデバイス接合工程をウエーハ2の基板20の裏面20bにおける全ての第1の半導体デバイス22と対応する所定位置に実施することにより、図6に示すように積層ウエーハ222が形成される。なお、上述したデバイス接合工程においては、フリップチップボンディング技術を用いて、第1の半導体デバイス22に設けられたスタッド電極25(図1の(b)参照)と第2の半導体デバイス220の表面に形成されたボンディングパッド240(図2の(b)および(c))を対面させて接合する。
【0020】
次に、上述したようにして構成された積層ウエーハ222を、複数の第1の半導体デバイス22を区画するストリート23に沿って分割するウエーハの加工方法について説明する。
先ず、積層ウエーハ222における複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2を構成する基板20の裏面20bに紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して複数の第2の半導体デバイス220を埋没させる樹脂被覆工程を実施する。この樹脂被覆工程は、図7の(a)および(b)に示す樹脂被覆装置6を用いて実施する。図7の(a)および(b)に示す樹脂被覆装置6は、上記積層ウエーハ222を保持するスピンナーテーブル61と、該スピンナーテーブル61に保持された積層ウエーハ222に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズル62とを具備している。スピンナーテーブル61は、円盤状の基台611と該基台611の上面に配設されたポーラスセラミック材からなる吸着保持チャック612とからなっており、吸着保持チャック612の上面(保持面)に載置された積層ウエーハ222を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するようになっている。このように構成されたスピンナーテーブル61は、図示しない回転駆動機構によって回転せしめられるようになっている。上記液状樹脂供給ノズル62は、紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を供給する図示しない液状樹脂供給手段に接続されている。なお、紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂としては、株式会社 スリーボンド製の30Y―632D―3を用いることができる。
【0021】
上述した樹脂被覆装置6を用いて樹脂被覆工程を実施するには、図7の(a)に示すようにスピンナーテーブル61の吸着保持チャック612上に積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の表面2aに貼着されている保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、スピンナーテーブル61上に積層ウエーハ222を吸引保持する。従って、スピンナーテーブル61上に保持された積層ウエーハ222は、ウエーハ2の基板20の裏面20bおよび該基板20の裏面20bに接合された複数の第2の半導体デバイス220が上側となる。このようにしてスピンナーテーブル61上に積層ウエーハ222を吸引保持したならば、図7の(a)に示すように図示しない液状樹脂供給手段を作動して、液状樹脂供給ノズル62から紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂250をスピンナーテーブル61上に保持された積層ウエーハ222の中心部に所定量滴下する。なお、液状樹脂250の滴下量は、ウエーハ2の基板20の裏面20bに接合された複数の第2の半導体デバイス220の上面を10μm程度の厚みで被覆するように設定されている。このようにして液状樹脂250を滴下したならば、スピンナーテーブル61を図7の(a)において矢印61aで示す方向に300〜1000rpmの回転速度で所定時間(例えば1分間)回転する。この結果、図7の(b)に示すように積層ウエーハ222の中心部に滴下された液状樹脂250は、遠心力によって外周部まで流動してウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆する。
【0022】
上述した樹脂被覆工程を実施したならば、ウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆するとともに複数の第2の半導体デバイス220を埋没させた液状樹脂250に紫外線を照射して液状樹脂250を固化する樹脂固化工程を実施する。この樹脂固化工程は、例えば上記樹脂被覆工程を実施した状態で実施することができる。即ち、図8に示すように上記樹脂被覆工程を実施されスピンナーテーブル61上に保持されている積層ウエーハ222の上方に紫外線照射器600を位置付けて、紫外線を照射する。この結果、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆している液状樹脂250が固化され、固化樹脂251となる。
【0023】
上述したように樹脂固化工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2を上側にして複数の第2の半導体デバイス220側を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図9の(a)および(b)に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に積層ウエーハ222を構成する複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2を上側にして複数の第2の半導体デバイス220側を貼着する。そして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の表面2aに貼着されている保護部材3を剥離する。従って、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222は、ウエーハ2の表面2aが露出されて上側となる。なお、ウエーハ支持工程を実施する前に、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆している固化樹脂251の表面を、研削装置によって数μm研削して、表面を平滑に形成することが望ましい。
【0024】
以上のようにして、ウエーハ支持工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2のストリート23に沿ってレーザー光線を照射し、ストリート23に沿って積層体21を除去する積層体除去工程を実施する。この積層体除去工程は、図10に示すレーザー加工装置7を用いて実施する。図10に示すレーザー加工装置7は、被加工物を保持するチャックテーブル71と、該チャックテーブル71上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72と、チャックテーブル71上に保持された被加工物を撮像する撮像手段73を具備している。チャックテーブル71は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない移動機構によって図10において矢印Xで示す加工送り方向および矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。上記レーザー光線照射手段72は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング721を含んでいる。ケーシング721内には図示しないYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング721の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器722が装着されている。上記レーザー光線照射手段72を構成するケーシング721の先端部に装着された撮像手段73は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0025】
上述したレーザー加工装置7を用いて実施する積層体除去工程について、図10および図11を参照して説明する。
積層体除去工程は、図10に示すようにレーザー加工装置7のチャックテーブル71上に上述したウエーハ支持工程が実施され図9に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル71上にダイシングテープTを介して積層ウエーハ222が吸引保持される。なお、図10においては、ダイシングテープTが装着された環状のフレームFを省いて示しているが、環状のフレームFはチャックテーブル71に配設された適宜のフレーム保持手段に保持されている。このようにしてチャックテーブル71上に保持された積層ウエーハ222は、複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2の表面2aが上側となる。
【0026】
上述したように積層ウエーハ222を吸引保持したチャックテーブル71は、図示しない加工送り手段によって撮像手段73の直下に移動される。チャックテーブル71が撮像手段73の直下に位置付けられると、撮像手段73および図示しない制御手段によって積層ウエーハ222を構成するウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段73および図示しない制御手段は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23と、ストリート23に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72の集光器722との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリート23に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0027】
以上のようにしてチャックテーブル71上に保持された積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されているストリート23を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図11の(a)で示すようにチャックテーブル71をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72の集光器722が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート23を集光器722の直下に位置付ける。このとき、図11の(a)で示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2は、ストリート23の一端(図11の(a)において左端)が集光器722の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段72の集光器722から積層体21に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル71を図11の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図11の(b)で示すようにストリート23の他端(図11において右端)が集光器722の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル71の移動を停止する。この積層体除去工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pをストリート23の表面付近に合わせる。この結果、図11の(c)に示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21には、ストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去される。
【0028】
なお、上記積層体除去工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
出力 :4W
繰り返し周波数 :100kHz
集光スポット径 :φ50μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0029】
上述した積層体除去工程を積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成された所定方向に延在する全てのストリート23に実施する。
以上のようにして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に延在する全てのストリート23に沿って積層体除去工程を実施したならば、チャックテーブル71を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート23に沿って積層体除去工程を実施する。この結果、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21には、全てのストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去される。
【0030】
以上のようにして積層体除去工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する第1のデバイス22が形成されたウエーハ2をストリート23に沿って切削ブレードによって切断する切断工程を実施する。この切断工程は、図12に示す切削装置を用いて実施する。図12に示す切削装置8は、吸引保持手段を備えたチャックテーブル81と、切削ブレード821を備えた切削手段82と、チャックテーブル81上に保持された被加工物を撮像する撮像手段83を具備している。チャックテーブル81は、図示しない切削送り機構によって図12において矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。また、チャックテーブル81は、図示しない回転機構によって回転せしめられるようになっている。上記撮像手段83は、切削ブレード821と矢印Xで示す切削送り方向において同一線上に配設されている。この撮像手段83は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0031】
上述した切削装置8を用いて実施する切断工程について、図12乃至図15を参照して説明する。
即ち、図12に示すように切削装置8のチャックテーブル81上に上述した切断工程が実施され環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル81上にダイシングテープTを介して積層ウエーハ222が吸引保持される。なお、図12においては、ダイシングテープTが装着された環状のフレームFを省いて示しているが、環状のフレームFはチャックテーブル81に配設された適宜のフレーム保持手段に保持されている。このようにしてチャックテーブル81上に保持された積層ウエーハ222は、第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2の表面2aが上側となる。
【0032】
上述したように積層ウエーハ222を吸引保持したチャックテーブル81は、図示しない切削送り機構によって撮像手段83の直下に位置付けられる。チャックテーブル81が撮像手段83の直下に位置付けられると、撮像手段83および図示しない制御手段によって積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の切削すべき領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段83および図示しない制御手段は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230と、切削ブレード821との位置合わせを行うためのアライメントを遂行する。即ち、撮像手段83は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230を撮像し、その画像信号を図示しない制御手段に送る。そして、図示しない制御手段は、撮像手段83から送られたレーザー加工溝230の画像信号に基づいて、レーザー加工溝230の幅方向中心に切削ブレード821を位置付けるアライメント工程を実行する。また、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の上記所定方向に対して直交して延びるストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230に対しても、同様にアライメントが遂行される(アライメント工程)。
【0033】
以上のようにしてチャックテーブル81上に保持されている積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230を検出し、切削領域のアライメントが行われたならば、積層ウエーハ222を保持したチャックテーブル81を切削領域の切削開始位置に移動する。このとき、図13の(a)に示すように積層ウエーハ222は切削すべきストリート23(レーザー加工溝230が形成されている)の一端(図13の(a)において左端)が切削ブレード821の直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。
【0034】
このようにしてチャックテーブル81即ち積層ウエーハ222が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード821を図13の(a)において2点鎖線で示す待機位置から下方に切り込み送りし、図13の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、図14の(a)に示すように切削ブレード821の下端が積層ウエーハ222が貼着されているダイシングテープTに達する位置に設定されている。
【0035】
次に、切削ブレード821を図13の(a)において矢印821aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222を図13の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222が図13の(b)で示すようにストリート23の他端(図13の(b)において右端)が切削ブレード821の直下より所定量左側に位置するまで達したら、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222の移動を停止する。このようにチャックテーブル81即ち積層ウエーハ222を切削送りすることにより、図14の(b)で示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2がストリート23に形成されたレーザー加工溝230に沿って切削溝231が形成され切断されるとともに、第2の半導体デバイス220間に充填されている固化樹脂251も切断される(切断工程)。この切断工程においては、ダイシングテープTに貼着されている積層ウエーハ222を構成する複数の第2の半導体デバイス220間には固化樹脂251が充填されてダイシングテープTとの間に隙間がないので、切削ブレード821による切削で振動が発生するのが抑制されるため、切削溝231に沿ってチッピングが生じることはない。また、ウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21にはストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去されているので、切削ブレード821によってウエーハ2をストリート23に沿って切削しても積層体21が剥離することはない。
【0036】
なお、上記切断工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
切削ブレード :外径52mm、厚さ30μm
切削ブレードの回転速度:40000rpm
切削送り速度 :50mm/秒
【0037】
上述した切断工程を積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成された所定方向に延在する全てのストリート23に実施する。
以上のようにして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に延在する全てのストリート23に沿って切断工程を実施したならば、チャックテーブル81を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート23に沿って切断工程を実施する。この結果、積層ウエーハ222は第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々の半導体装置に分割される。
【0038】
上述した切断工程を実施したならば、積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程を実施する。即ち、図15の(a)に示すように水槽9に配設された支持台91上に切断工程が実施され環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着されて積層ウエーハ222(第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々の半導体装置2Aに分割されている)を載置し、水槽9に温度が例えば90℃の温水90を注入して積層ウエーハ222を温水に浸漬する。この結果、積層ウエーハ222を構成する第2の半導体デバイス220の側面に被覆されている固化樹脂251が含水し膨潤して、図15の(b)に示すように除去される。
【0039】
以上のようにして樹脂除去工程を実施したならば、ピックアップ工程において環状のフレームFに装着されたダイシングテープTから第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々に分割された半導体装置2Aを剥離してピックアップすることにより、図16に示すように第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合された半導体装置2Aが得られる。
【0040】
なお、上述した実施形態においては、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハとして、基板20の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体21によって第1の半導体デバイス22を形成したウエーハ2を用いた例を示したが、基板20の表面に積層体を形成しないで第1の半導体デバイスを形成するウエーハを用いる場合には、上記積層体除去工程を実施する必要はない。
【符号の説明】
【0041】
2:ウエーハ
21:ストリート
22:第1の半導体デバイス
23:デバイス領域
24:外周余剰領域
200:ウエーハ
220:第2の半導体デバイス
222:積層ウエーハ
3:保護部材
4:研削装置
41:研削装置のチャックテーブル
42:研削手段
424:研削ホイール
5:ボンディング装置
51:保持テーブル
52:吸着ハンド
6:樹脂被覆装置
61:スピンナーテーブル
62:液状樹脂供給ノズル
600:紫外線照射器
7:レーザー加工装置
71:レーザー加工装置のチャックテーブル
72:レーザー光線照射手段
722:集光器
8:切削装置
81:切削装置のチャックテーブル
82:切削手段
821:切削ブレード
9:水槽
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように形成されたウエーハはストリートに沿って個々のデバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。ウエーハをストリートに沿って分割する方法としては、切削装置を用いて切削ブレードによりストリートに沿って切断する方法が一般に用いられている。また、ウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハのストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成する方法も実用化されている。
【0003】
一方近年、電気機器の小型化を図るため、第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合して構成する半導体装置が提案されている。この半導体装置は、フリップチップボンディング技術を用いて、第1の半導体デバイスに設けられ裏面に露出するスタッド電極と第2の半導体デバイスの表面に形成されたボンディングパッドを接合して構成する。
【0004】
上述した第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合して構成する半導体装置は、半導体装置を1個づつ組み立てて製造するため、その都度半導体デバイスを搬送・配置する工程と、各半導体デバイスの位置を検出する工程とを実施しなければならず、生産性の面で問題がある。
【0005】
上記問題を解消するために、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハを個々の半導体デバイスに分割する前のウエーハの状態において、各第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合した後に、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハを個々の半導体デバイスに分割することにより、第1の半導体デバイスの裏面に第2の半導体デバイスを接合した半導体装置を製造する方法が、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−250599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、裏面に第2の半導体デバイスを接合したウエーハを、表面に形成されたストリートに沿って表面側から切削ブレードによって切削すると、ウエーハの裏面にはストリートに対応する領域に隙間を形成して第2の半導体デバイスが接合されているので、この隙間の近傍において微細な振動が発生し、切削溝に沿ってチッピングが生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、裏面に第2の半導体デバイスを接合したウエーハを、表面に形成されたストリートに沿って表面側から切削ブレードによって切削してもチッピングが生じることなく切断することがでるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における該第1の半導体デバイスと対応する所定位置に該第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、該第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法において、
該積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程と、
該樹脂被覆工程によって該基板の裏面を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させた該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を固化する樹脂固化工程と、
該樹脂固化工程が実施された積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、
該切断工程が実施された積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
上記第1のデバイスが形成されたウエーハは、基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって複数の第1のデバイスが形成されており、
上記切断工程を実施する前に、第1のデバイスが形成されたウエーハの複数のデバイスを区画するストリートに沿ってレーザー光線を照射しストリートに沿って積層体を除去する積層体除去工程を実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層ウエーハにおける複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して複数の第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程を実施し、この液状樹脂に紫外線を照射して液状樹脂を固化する樹脂固化工程を実施した後に、積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程を実施するので、第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に接合された複数の第2の半導体デバイス間には固化された樹脂が充填されているため、切削ブレードによって切断する際に切削溝の両側に微細な振動が発生するのを抑制することできるので、切削溝に沿ってチッピングが生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるウエーハの加工方法によって加工される積層ウエーハを構成する第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図。
【図2】本発明によるウエーハの加工方法によって加工される積層ウエーハを構成する第2の半導体デバイスが複数形成されたウエーハおよび要部拡大断面図と第2の半導体デバイスの斜視図。
【図3】図1に示すウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程の説明図。
【図4】図1に示すウエーハの裏面を研削する裏面研削工程の説明図。
【図5】図1に示すウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合するデバイス接合工程の説明図。
【図6】図5に示すデバイス接合工程が実施された積層ウエーハの斜視図。
【図7】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂被覆工程の説明図。
【図8】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂固化工程の説明図。
【図9】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の説明図。
【図10】本発明によるウエーハの加工方法における積層体除去工程を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図11】本発明によるウエーハの加工方法における積層体除去工程の説明図。
【図12】本発明によるウエーハの加工方法における切断工程を実施するための切削装置の要部斜視図。
【図13】本発明によるウエーハの加工方法における切断工程の説明図。
【図14】図11に示す切断における切削ブレードの切り込み送り位置および切断肯定が実施されたウエーハを拡大して示す断面図。
【図15】本発明によるウエーハの加工方法における樹脂除去工程の説明図。
【図16】本発明によるウエーハの加工方法によって加工され分割された半導体装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
ここで、表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における第1の半導体デバイスと対応する所定位置に第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハの製造方法について説明する。
図1の(a)および(b)には、積層ウエーハを構成する第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図1の(a)および(b)に示すウエーハ2は、例えば厚みが700μmのシリコン等の基板20の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体21によって複数のIC、LSI等の第1の半導体デバイス22がマトリックス状に形成されている。そして、各第1の半導体デバイス22は、格子状に形成されたストリート23によって区画されている。積層体21は厚みが2〜10μmに形成されており、積層体21を形成する絶縁膜は、SiO2,SiO,SiN等ガラス質材料からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)からなっている。また、ウエーハ2は、図1の (b)に示すようにデバイス22の表面に配設された複数のボンディングパッド24を備えているとともに、このボンディングパッド24に接続しシリコン基板20に埋設された銅等の金属材からなるスタッド電極25を備えている。
【0015】
また、図2の(a)および(b)には積層ウエーハを構成する第2の半導体デバイスが複数形成されたウエーハの斜視図および要部拡大断面図が示されている。図2の(a)および(b)に示すウエーハ200は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面200aに複数のIC、LSI等の複数の第2の半導体デバイス220がマトリックス状に形成されている。そして、各第1の半導体デバイス220は、格子状に形成されたストリート230によって区画されている。第2の半導体デバイス220の表面には、上記第1の半導体デバイス22に設けられたスタッド電極25と対応する位置にボンディングパッド240が形成されている。このように構成されたウエーハ200は、裏面200bが研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置等のダイシング装置によってストリート230に沿って切断され、図2の(c)に示すように個々の第2の半導体デバイス220に分割される。
【0016】
以下、上記第1の半導体デバイス22が複数形成されたウエーハ2および第2の半導体デバイス220を用いて第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220を接合して構成する積層ウエーハの製造方法について説明する。
積層ウエーハの製造方法においては、図3の(a)および(b)に示すようにウエーハ2の表面2aに第1の半導体デバイス22を保護するための保護部材3を貼着する(保護部材貼着工程)。
【0017】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、ウエーハ2の基板20の裏面20bを研削して所定の厚みに形成する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図4に示す研削装置によって実施する。図4に示す研削装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41に保持された被加工物を研削する研削手段42を具備している。チャックテーブル41は、上面に被加工物を吸引保持し図4において矢印41aで示す方向に回転せしめられる。研削手段42は、スピンドルハウジング421と、該スピンドルハウジング421に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル422と、該回転スピンドル422の下端に装着されたマウンター423と、該マウンター423の下面に取り付けられた研削ホイール424とを具備している。この研削ホイール424は、円板状の基台425と、該基台425の下面に環状に装着された研削砥石426とからなっており、基台425がマウンター423の下面に締結ボルト427によって取り付けられている。
【0018】
上述した研削装置4を用いて裏面研削工程を実施するには、チャックテーブル41の上面(保持面)に上述した保護部材貼着工程が実施されたウエーハ2の保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、チャックテーブル41上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル41上に保護部材3を介し吸引保持されたウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにチャックテーブル41上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル41を矢印41aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段42の研削ホイール424を矢印424aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめてウエーハ2の基板20の裏面20bに接触せしめ、研削ホイール424を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りすることによりウエーハ2の基板20の裏面20bを研削してウエーハ2を所定の厚み(例えば、100μm)に形成する。
【0019】
上述した裏面研削工程を実施したならば、裏面研削工程が実施されたウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置に第2の半導体デバイス220を接合し積層ウエーハを形成するデバイス接合工程を実施する。このデバイス接合工程について、図5および図6を参照して説明する。即ち、図5の(a)および(b)に示すようにボンディング装置5の保持テーブル51上に上述したように裏面研削工程が実施されたウエーハ2の表面2aに貼着された保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保持テーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、保持テーブル51上に保護部材3を介して保持されたウエーハ2は、基板20の裏面20bが上側となる。このようにして保持テーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を保持したならば、吸着ハンド52によって上記図2の(b)に示す第2の半導体デバイス220を吸引保持し、保持テーブル51上に保持されたウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置の上方に搬送する。そして、ウエーハ2の基板20の裏面20bにおける第1の半導体デバイス22と対応する所定位置と第2の半導体デバイス220との位置合わせを行い、図5の(b)に示すように吸着ハンド52を下降させて、第2の半導体デバイス220を第1の半導体デバイス22の基板20の裏面20bにおける所定位置に接合する。そして、このデバイス接合工程をウエーハ2の基板20の裏面20bにおける全ての第1の半導体デバイス22と対応する所定位置に実施することにより、図6に示すように積層ウエーハ222が形成される。なお、上述したデバイス接合工程においては、フリップチップボンディング技術を用いて、第1の半導体デバイス22に設けられたスタッド電極25(図1の(b)参照)と第2の半導体デバイス220の表面に形成されたボンディングパッド240(図2の(b)および(c))を対面させて接合する。
【0020】
次に、上述したようにして構成された積層ウエーハ222を、複数の第1の半導体デバイス22を区画するストリート23に沿って分割するウエーハの加工方法について説明する。
先ず、積層ウエーハ222における複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2を構成する基板20の裏面20bに紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して複数の第2の半導体デバイス220を埋没させる樹脂被覆工程を実施する。この樹脂被覆工程は、図7の(a)および(b)に示す樹脂被覆装置6を用いて実施する。図7の(a)および(b)に示す樹脂被覆装置6は、上記積層ウエーハ222を保持するスピンナーテーブル61と、該スピンナーテーブル61に保持された積層ウエーハ222に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズル62とを具備している。スピンナーテーブル61は、円盤状の基台611と該基台611の上面に配設されたポーラスセラミック材からなる吸着保持チャック612とからなっており、吸着保持チャック612の上面(保持面)に載置された積層ウエーハ222を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するようになっている。このように構成されたスピンナーテーブル61は、図示しない回転駆動機構によって回転せしめられるようになっている。上記液状樹脂供給ノズル62は、紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を供給する図示しない液状樹脂供給手段に接続されている。なお、紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂としては、株式会社 スリーボンド製の30Y―632D―3を用いることができる。
【0021】
上述した樹脂被覆装置6を用いて樹脂被覆工程を実施するには、図7の(a)に示すようにスピンナーテーブル61の吸着保持チャック612上に積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の表面2aに貼着されている保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、スピンナーテーブル61上に積層ウエーハ222を吸引保持する。従って、スピンナーテーブル61上に保持された積層ウエーハ222は、ウエーハ2の基板20の裏面20bおよび該基板20の裏面20bに接合された複数の第2の半導体デバイス220が上側となる。このようにしてスピンナーテーブル61上に積層ウエーハ222を吸引保持したならば、図7の(a)に示すように図示しない液状樹脂供給手段を作動して、液状樹脂供給ノズル62から紫外線を照射すると固化するとともに80℃〜100℃の温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂250をスピンナーテーブル61上に保持された積層ウエーハ222の中心部に所定量滴下する。なお、液状樹脂250の滴下量は、ウエーハ2の基板20の裏面20bに接合された複数の第2の半導体デバイス220の上面を10μm程度の厚みで被覆するように設定されている。このようにして液状樹脂250を滴下したならば、スピンナーテーブル61を図7の(a)において矢印61aで示す方向に300〜1000rpmの回転速度で所定時間(例えば1分間)回転する。この結果、図7の(b)に示すように積層ウエーハ222の中心部に滴下された液状樹脂250は、遠心力によって外周部まで流動してウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆する。
【0022】
上述した樹脂被覆工程を実施したならば、ウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆するとともに複数の第2の半導体デバイス220を埋没させた液状樹脂250に紫外線を照射して液状樹脂250を固化する樹脂固化工程を実施する。この樹脂固化工程は、例えば上記樹脂被覆工程を実施した状態で実施することができる。即ち、図8に示すように上記樹脂被覆工程を実施されスピンナーテーブル61上に保持されている積層ウエーハ222の上方に紫外線照射器600を位置付けて、紫外線を照射する。この結果、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆している液状樹脂250が固化され、固化樹脂251となる。
【0023】
上述したように樹脂固化工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2を上側にして複数の第2の半導体デバイス220側を環状のフレームに装着されたダイシングテープに貼着するウエーハ支持工程を実施する。即ち、図9の(a)および(b)に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に積層ウエーハ222を構成する複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2を上側にして複数の第2の半導体デバイス220側を貼着する。そして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の表面2aに貼着されている保護部材3を剥離する。従って、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222は、ウエーハ2の表面2aが露出されて上側となる。なお、ウエーハ支持工程を実施する前に、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の裏面20bを被覆し、第2の半導体デバイス220を埋没させるとともに、第2の半導体デバイス220の上面も被覆している固化樹脂251の表面を、研削装置によって数μm研削して、表面を平滑に形成することが望ましい。
【0024】
以上のようにして、ウエーハ支持工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する複数の第1のデバイス22が形成されたウエーハ2のストリート23に沿ってレーザー光線を照射し、ストリート23に沿って積層体21を除去する積層体除去工程を実施する。この積層体除去工程は、図10に示すレーザー加工装置7を用いて実施する。図10に示すレーザー加工装置7は、被加工物を保持するチャックテーブル71と、該チャックテーブル71上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72と、チャックテーブル71上に保持された被加工物を撮像する撮像手段73を具備している。チャックテーブル71は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない移動機構によって図10において矢印Xで示す加工送り方向および矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。上記レーザー光線照射手段72は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング721を含んでいる。ケーシング721内には図示しないYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器や繰り返し周波数設定手段を備えたパルスレーザー光線発振手段が配設されている。上記ケーシング721の先端部には、パルスレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光するための集光器722が装着されている。上記レーザー光線照射手段72を構成するケーシング721の先端部に装着された撮像手段73は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0025】
上述したレーザー加工装置7を用いて実施する積層体除去工程について、図10および図11を参照して説明する。
積層体除去工程は、図10に示すようにレーザー加工装置7のチャックテーブル71上に上述したウエーハ支持工程が実施され図9に示すように環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル71上にダイシングテープTを介して積層ウエーハ222が吸引保持される。なお、図10においては、ダイシングテープTが装着された環状のフレームFを省いて示しているが、環状のフレームFはチャックテーブル71に配設された適宜のフレーム保持手段に保持されている。このようにしてチャックテーブル71上に保持された積層ウエーハ222は、複数の第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2の表面2aが上側となる。
【0026】
上述したように積層ウエーハ222を吸引保持したチャックテーブル71は、図示しない加工送り手段によって撮像手段73の直下に移動される。チャックテーブル71が撮像手段73の直下に位置付けられると、撮像手段73および図示しない制御手段によって積層ウエーハ222を構成するウエーハ2のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段73および図示しない制御手段は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23と、ストリート23に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72の集光器722との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。また、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びるストリート23に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。
【0027】
以上のようにしてチャックテーブル71上に保持された積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されているストリート23を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、図11の(a)で示すようにチャックテーブル71をレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段72の集光器722が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定のストリート23を集光器722の直下に位置付ける。このとき、図11の(a)で示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2は、ストリート23の一端(図11の(a)において左端)が集光器722の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段72の集光器722から積層体21に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル71を図11の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図11の(b)で示すようにストリート23の他端(図11において右端)が集光器722の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル71の移動を停止する。この積層体除去工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pをストリート23の表面付近に合わせる。この結果、図11の(c)に示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21には、ストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去される。
【0028】
なお、上記積層体除去工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
出力 :4W
繰り返し周波数 :100kHz
集光スポット径 :φ50μm
加工送り速度 :100mm/秒
【0029】
上述した積層体除去工程を積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成された所定方向に延在する全てのストリート23に実施する。
以上のようにして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に延在する全てのストリート23に沿って積層体除去工程を実施したならば、チャックテーブル71を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート23に沿って積層体除去工程を実施する。この結果、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21には、全てのストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去される。
【0030】
以上のようにして積層体除去工程を実施したならば、積層ウエーハ222を構成する第1のデバイス22が形成されたウエーハ2をストリート23に沿って切削ブレードによって切断する切断工程を実施する。この切断工程は、図12に示す切削装置を用いて実施する。図12に示す切削装置8は、吸引保持手段を備えたチャックテーブル81と、切削ブレード821を備えた切削手段82と、チャックテーブル81上に保持された被加工物を撮像する撮像手段83を具備している。チャックテーブル81は、図示しない切削送り機構によって図12において矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。また、チャックテーブル81は、図示しない回転機構によって回転せしめられるようになっている。上記撮像手段83は、切削ブレード821と矢印Xで示す切削送り方向において同一線上に配設されている。この撮像手段83は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0031】
上述した切削装置8を用いて実施する切断工程について、図12乃至図15を参照して説明する。
即ち、図12に示すように切削装置8のチャックテーブル81上に上述した切断工程が実施され環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの表面に貼着された積層ウエーハ222を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル81上にダイシングテープTを介して積層ウエーハ222が吸引保持される。なお、図12においては、ダイシングテープTが装着された環状のフレームFを省いて示しているが、環状のフレームFはチャックテーブル81に配設された適宜のフレーム保持手段に保持されている。このようにしてチャックテーブル81上に保持された積層ウエーハ222は、第1の半導体デバイス22が形成されたウエーハ2の表面2aが上側となる。
【0032】
上述したように積層ウエーハ222を吸引保持したチャックテーブル81は、図示しない切削送り機構によって撮像手段83の直下に位置付けられる。チャックテーブル81が撮像手段83の直下に位置付けられると、撮像手段83および図示しない制御手段によって積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の切削すべき領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段83および図示しない制御手段は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230と、切削ブレード821との位置合わせを行うためのアライメントを遂行する。即ち、撮像手段83は、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230を撮像し、その画像信号を図示しない制御手段に送る。そして、図示しない制御手段は、撮像手段83から送られたレーザー加工溝230の画像信号に基づいて、レーザー加工溝230の幅方向中心に切削ブレード821を位置付けるアライメント工程を実行する。また、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の上記所定方向に対して直交して延びるストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230に対しても、同様にアライメントが遂行される(アライメント工程)。
【0033】
以上のようにしてチャックテーブル81上に保持されている積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成されているストリート23に沿って形成されたレーザー加工溝230を検出し、切削領域のアライメントが行われたならば、積層ウエーハ222を保持したチャックテーブル81を切削領域の切削開始位置に移動する。このとき、図13の(a)に示すように積層ウエーハ222は切削すべきストリート23(レーザー加工溝230が形成されている)の一端(図13の(a)において左端)が切削ブレード821の直下より所定量右側に位置するように位置付けられる。
【0034】
このようにしてチャックテーブル81即ち積層ウエーハ222が切削加工領域の切削開始位置に位置付けられたならば、切削ブレード821を図13の(a)において2点鎖線で示す待機位置から下方に切り込み送りし、図13の(a)において実線で示すように所定の切り込み送り位置に位置付ける。この切り込み送り位置は、図14の(a)に示すように切削ブレード821の下端が積層ウエーハ222が貼着されているダイシングテープTに達する位置に設定されている。
【0035】
次に、切削ブレード821を図13の(a)において矢印821aで示す方向に所定の回転速度で回転せしめ、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222を図13の(a)において矢印X1で示す方向に所定の切削送り速度で移動せしめる。そして、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222が図13の(b)で示すようにストリート23の他端(図13の(b)において右端)が切削ブレード821の直下より所定量左側に位置するまで達したら、チャックテーブル81即ち積層ウエーハ222の移動を停止する。このようにチャックテーブル81即ち積層ウエーハ222を切削送りすることにより、図14の(b)で示すように積層ウエーハ222を構成するウエーハ2がストリート23に形成されたレーザー加工溝230に沿って切削溝231が形成され切断されるとともに、第2の半導体デバイス220間に充填されている固化樹脂251も切断される(切断工程)。この切断工程においては、ダイシングテープTに貼着されている積層ウエーハ222を構成する複数の第2の半導体デバイス220間には固化樹脂251が充填されてダイシングテープTとの間に隙間がないので、切削ブレード821による切削で振動が発生するのが抑制されるため、切削溝231に沿ってチッピングが生じることはない。また、ウエーハ2の基板20の表面に積層された積層体21にはストリート23に沿ってレーザー加工溝230が形成されストリート23に沿って積層体21が除去されているので、切削ブレード821によってウエーハ2をストリート23に沿って切削しても積層体21が剥離することはない。
【0036】
なお、上記切断工程は、例えば以下の加工条件で行われる。
切削ブレード :外径52mm、厚さ30μm
切削ブレードの回転速度:40000rpm
切削送り速度 :50mm/秒
【0037】
上述した切断工程を積層ウエーハ222を構成するウエーハ2に形成された所定方向に延在する全てのストリート23に実施する。
以上のようにして、積層ウエーハ222を構成するウエーハ2の所定方向に延在する全てのストリート23に沿って切断工程を実施したならば、チャックテーブル81を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に延びる各ストリート23に沿って切断工程を実施する。この結果、積層ウエーハ222は第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々の半導体装置に分割される。
【0038】
上述した切断工程を実施したならば、積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程を実施する。即ち、図15の(a)に示すように水槽9に配設された支持台91上に切断工程が実施され環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着されて積層ウエーハ222(第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々の半導体装置2Aに分割されている)を載置し、水槽9に温度が例えば90℃の温水90を注入して積層ウエーハ222を温水に浸漬する。この結果、積層ウエーハ222を構成する第2の半導体デバイス220の側面に被覆されている固化樹脂251が含水し膨潤して、図15の(b)に示すように除去される。
【0039】
以上のようにして樹脂除去工程を実施したならば、ピックアップ工程において環状のフレームFに装着されたダイシングテープTから第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合して構成された個々に分割された半導体装置2Aを剥離してピックアップすることにより、図16に示すように第1の半導体デバイス22の裏面に第2の半導体デバイス220が接合された半導体装置2Aが得られる。
【0040】
なお、上述した実施形態においては、第1の半導体デバイスが複数形成されたウエーハとして、基板20の表面に絶縁膜と回路を形成する機能膜が積層された積層体21によって第1の半導体デバイス22を形成したウエーハ2を用いた例を示したが、基板20の表面に積層体を形成しないで第1の半導体デバイスを形成するウエーハを用いる場合には、上記積層体除去工程を実施する必要はない。
【符号の説明】
【0041】
2:ウエーハ
21:ストリート
22:第1の半導体デバイス
23:デバイス領域
24:外周余剰領域
200:ウエーハ
220:第2の半導体デバイス
222:積層ウエーハ
3:保護部材
4:研削装置
41:研削装置のチャックテーブル
42:研削手段
424:研削ホイール
5:ボンディング装置
51:保持テーブル
52:吸着ハンド
6:樹脂被覆装置
61:スピンナーテーブル
62:液状樹脂供給ノズル
600:紫外線照射器
7:レーザー加工装置
71:レーザー加工装置のチャックテーブル
72:レーザー光線照射手段
722:集光器
8:切削装置
81:切削装置のチャックテーブル
82:切削手段
821:切削ブレード
9:水槽
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における該第1の半導体デバイスと対応する所定位置に該第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、該第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法において、
該積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程と、
該樹脂被覆工程によって該基板の裏面を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させた該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を固化する樹脂固化工程と、
該樹脂固化工程が実施された積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、
該切断工程が実施された積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該第1のデバイスが形成されたウエーハは、該基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって該複数の第1のデバイスが形成されており、
該切断工程を実施する前に、該第1のデバイスが形成されたウエーハの複数のデバイスを区画するストリートに沿ってレーザー光線を照射しストリートに沿って積層体を除去する積層体除去工程を実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【請求項1】
表面に複数の第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面における該第1の半導体デバイスと対応する所定位置に該第2の半導体デバイスを接合した積層ウエーハを、該第1の半導体デバイスを区画するストリートに沿って分割するウエーハの加工方法において、
該積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハを構成する基板の裏面に紫外線を照射すると固化するとともに温水によって膨潤して除去可能な液状樹脂を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させる樹脂被覆工程と、
該樹脂被覆工程によって該基板の裏面を被覆して該第2の半導体デバイスを埋没させた該液状樹脂に紫外線を照射して該液状樹脂を固化する樹脂固化工程と、
該樹脂固化工程が実施された積層ウエーハにおける第1のデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切削ブレードによって切断する切断工程と、
該切断工程が実施された積層ウエーハを温水に浸漬して固化した樹脂を膨潤させて除去する樹脂除去工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
該第1のデバイスが形成されたウエーハは、該基板の表面に絶縁膜と機能膜が積層された積層体によって該複数の第1のデバイスが形成されており、
該切断工程を実施する前に、該第1のデバイスが形成されたウエーハの複数のデバイスを区画するストリートに沿ってレーザー光線を照射しストリートに沿って積層体を除去する積層体除去工程を実施する、請求項1記載のウエーハの加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−54848(P2011−54848A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204013(P2009−204013)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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