説明

ウエーハの研削方法および保護膜形成装置

【課題】研削精度を確保し、研削後のウエーハを損傷させることがないとともに、研削時に付着した研削屑を確実に除去することができるウエーハの研削方法を提供する。
【解決手段】ウエーハの被研削面を研削するウエーハの研削方法であって、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させ該支持面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成された保護膜の表面を旋削して保護膜の厚みを均一にする保護膜平坦化工程と、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成され厚みが均一な保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの被研削面を研削手段によって研削する研削工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハを所定の厚みに研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、該矩形領域の各々にIC,LSI等のデバイスを形成する。このように多数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って分割することにより、個々のデバイスを形成する。デバイスの小型化および軽量化を図るために、通常、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々のデバイスに分割する前に、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚さに形成している。
【0003】
半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削手段と、該研削手段によって研削された被加工物を洗浄する洗浄手段と、を具備している。このような研削装置によってウエーハの裏面である被研削面を研削する場合には、被研削面と反対側の支持面(通常のウエーハにおいては表面、ウエーハの表面にサブストレート用のウエーハの一方の面が接合された所謂SOIウエーハの場合にはサブストレート用ウエーハの他方の面)に保護テープを貼着し、この保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削する。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
しかるに、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に保護テープを貼着し、この保護テープ側をチャックテーブルに保持して被研削面を研削した後、保護テープを被研削面と反対側の支持面から剥離する際に研削されて薄くなったウエーハが損傷する場合がある。また、研削後のウエーハは洗浄手段によって洗浄されるが、保護テープとチャックテーブルとの接触面に回りこんだ研削屑は保護テープに強固に付着して洗浄手段で洗浄しても除去することができず、研削後のウエーハを収納するカセットを汚染するとともに後工程において汚染源になるという問題がある。
【0005】
上述した問題を解消するために、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して保護膜を形成し、ウエーハの保護膜側をチャックテーブルに保持し、ウエーハの被研削面を研削手段によって研削するウエーハの研削方法が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−319829号公報
【特許文献2】特開2011−3611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆した保護膜には数μmの厚さバラツキがあるとともに気泡が混入されており、研削精度の信頼性が確保できないとともに、ウエーハを損傷する虞がある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、研削精度を確保し、研削後のウエーハを損傷させることがないとともに、研削時に付着した研削屑を確実に除去することができるウエーハの研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハの被研削面を研削するウエーハの研削方法であって、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させ該支持面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成された保護膜の表面を旋削して保護膜の厚みを均一にする保護膜平坦化工程と、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成され厚みが均一な保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの被研削面を研削手段によって研削する研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させ支持面に保護膜を形成する保護膜形成工程を実施し、該保護膜の表面を旋削して保護膜の厚みを均一にする保護膜平坦化工程を実施した後に、厚みが均一な保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの被研削面を研削手段によって研削する研削工程を実施するので、研削装置のチャックテーブルに載置される保護膜は厚みが均一に形成されているため、研削精度の信頼性が確保できるとともに、ウエーハを損傷する虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明によるウエーハの研削方法によって加工されるウエーハの斜視図。
【図2】本発明によるウエーハの研削方法における保護膜形成工程および保護膜平坦化工程を実施するための保護膜形成装置の斜視図。
【図3】図2に示す保護膜形成装置に装備される旋削ユニットの斜視図。
【図4】図2に示す保護膜形成装置に装備されるチャックテーブル機構およびチャックテーブル移動機構を示す斜視図。
【図5】本発明によるウエーハの研削方法における保護膜形成工程の説明図。
【図6】本発明によるウエーハの研削方法における保護膜平坦化工程の説明図。
【図7】図6に示す保護膜平坦化工程が実施されたウエーハの断面図。
【図8】本発明によるウエーハの研削方法における研削工程を実施するための研削装置の斜視図。
【図9】図8に示す研削装置を用いて実施する研削工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウエーハの研削方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明によるウエーハの研削方法によって研削加工されるウエーハが示されている。図1に示すウエーハ10は、例えば厚みが700μmのシリコンウエーハからなり、表面10aに複数のストリート101が格子状に配列されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように形成されたウエーハ10は、裏面10bを研削して所定の厚み(例えば、100μm)に形成される。従って、ウエーハ10は、裏面10bが被研削面となり、該被研削面と反対側の表面10aが支持面となる。
【0014】
上記ウエーハ10の裏面10bを研削して所定の厚みに形成するには、ウエーハ10の被研削面(裏面10b)と反対側の支持面(表面10a)に液状樹脂を被覆して固化させ支持面に保護膜を形成する保護膜形成工程、およびウエーハ10の被研削面(裏面10b)と反対側の支持面(表面10a)に形成された保護膜の表面を旋削して保護膜の厚みを均一にする保護膜平坦化工程を実施する。この保護膜形成工程および保護膜平坦化工程は、図2に示す保護膜形成装置を用いて実施する。
【0015】
図2に示す保護膜形成装置1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図2において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に旋削手段としての旋削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0016】
旋削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には支持部材313が装着され、この支持部材313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0017】
スピンドルユニット32は、支持部材313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状のバイト工具装着部材324が設けられている。なお、バイト工具装着部材324には、バイト工具33が着脱可能に装着される。
【0018】
ここで、バイト工具33のバイト工具装着部材324への着脱構造について、図3を参照して説明する。
バイト工具装着部材324には、回転軸芯から偏芯した外周部の一部に上下方向に貫通するバイト取り付け穴324aが設けられているとともに、このバイト取り付け穴324aと対応する外周面からバイト取り付け穴324aに達する雌ネジ穴324bが設けられている。このように構成されたバイト工具装着部材324のバイト取り付け穴324aにバイト工具33を挿入し、雌ネジ穴324bに締め付けボルト35を螺合して締め付けることにより、バイト工具33はバイト工具装着部材324に着脱可能に装着される。なお、バイト工具33は、図示の実施形態においては超硬合金等の工具鋼によって棒状に形成された断面が矩形のバイト本体331と、該バイト本体331の先端部に設けられたダイヤモンド等で形成された切れ刃332とによって構成したものが用いられている。このように構成されバイト工具装着部材324に装着されているバイト工具33は、上記回転スピンドル322が回転することにより、後述するチャックテーブルの被加工物を保持する保持面と平行な面内で回転せしめられる。
【0019】
図2に戻って説明を続けると、図示の実施形態における保護膜形成装置1は、上記旋削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面と垂直な方向)に移動せしめる旋削ユニット送り機構4を備えている。この旋削ユニット送り機構4は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ネジロッド41を具備している。この雄ネジロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材42および43によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材42には雄ネジロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ネジロッド41に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ネジ穴が形成されており、この雌ネジ穴に上記雄ネジロッド41が螺合せしめられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31および移動基台31に装着された旋削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31および移動基台31に装着された旋削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0020】
図2および図4を参照して説明を続けると、ハウジング2の主部21の後半部上には略矩形状の加工作業部211が形成されており、この加工作業部211にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、図4に示すように支持基台51とこの支持基台51に配設されたチャックテーブル52とを含んでいる。支持基台51は、上記加工作業部211上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に摺動自在に載置されており、後述するチャックテーブル移動機構56によって図2に示す被加工物搬入・搬出領域24(図4において実線で示す位置)と上記スピンドルユニット32を構成するバイト工具33と対向する加工領域25(図4において2点鎖線で示す位置)との間で移動せしめられる。
【0021】
上記チャックテーブル52は、ステンレス鋼等の金属材によって円柱状に形成されたチャックテーブル本体521と、該チャックテーブル本体521の上面に配設された吸着チャック522とからなっている。吸着チャック522は多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料から構成されており、図示しない吸引手段に連通されている。従って、吸着チャック522を図示しない吸引手段に選択的に連通することにより、上面である保持面上に載置された被加工物を吸引保持する。なお、図示のチャックテーブル機構5は、チャックテーブル52を挿通する穴を有し上記支持基台51等を覆い支持基台51とともに移動可能に配設されたカバー部材54を備えている。
【0022】
図4を参照して説明を続けると、図示の実施形態における保護膜形成装置1は、上記チャックテーブル機構5を一対の案内レール23に沿って矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめるチャックテーブル移動機構56を具備している。チャックテーブル移動機構56は、一対の案内レール23、23間に配設され案内レール23、23と平行に延びる雄ネジロッド561と、該雄ネジロッド561を回転駆動するサーボモータ562を具備している。雄ネジロッド561は、上記支持基台51に設けられたネジ穴511と螺合して、その先端部が一対の案内レール23、23を連結して取り付けられた軸受部材563によって回転自在に支持されている。サーボモータ562は、その駆動軸が雄ネジロッド561の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ562が正転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ562が逆転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。このように矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめられるチャックテーブル機構5は、図4において実線で示す被加工物搬入・搬出領域と2点鎖線で示す加工領域に選択的に位置付けられる。また、チャックテーブル移動機構56は、加工領域においては所定範囲に渡って矢印23aおよび23bで示す方向、即ち吸着チャック522の上面である保持面と平行に往復動せしめられる。
【0023】
図2に戻って説明を続けると、上記チャックテーブル機構5を構成するカバー部材54の移動方向両側には、横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ネジロッド561およびサーボモータ562等を覆っている蛇腹手段57および58が付設されている。蛇腹手段57および58はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段57の前端は加工作業部211の前面壁に固定され、後端はチャックテーブル機構5のカバー部材54の前端面に固定されている。蛇腹手段58の前端はチャックテーブル機構5のカバー部材54の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段57が伸張されて蛇腹手段58が収縮され、チャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段57が収縮されて蛇腹手段58が伸張せしめられる。
【0024】
図を参照して説明を続けると、装置ハウジング2の主部21における前半部上には、カセット載置領域11aと、被加工物仮置き領域12aと、洗浄領域13aが設けられている。カセット載置領域11aには加工前の上記図1に示すウエーハ10を収容するカセット11が載置されるようになっている。上記被加工物仮置き領域12aには、カセット載置領域11aに載置されたカセット11から搬出された加工前のウエーハを仮置きする被加工物仮載置き手段12が配設されている。また、洗浄領域13aには、加工後の被加工物を洗浄する洗浄手段13が配設されている。
【0025】
上記カセット載置領域11aと被加工物仮置き領域12aとの間には被加工物搬送手段14が配設されており、この被加工物搬送手段14はカセット載置領域11aに載置されたカセット11内に収納されている加工前のウエーハを被加工物仮置き手段12に搬出するとともに洗浄手段13で洗浄された加工後のウエーハをカセット載置領域11aに載置されたカセット11に搬送する。上記被加工物仮置き領域12aと被加工物を被加工物搬入・搬出域24との間には被加工物搬入手段15が配設されており、この被加工物搬入手段15は被加工物仮置き手段12に載置された加工前のウエーハを被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に搬送する。上記被加工物搬入・搬出域24と洗浄部13aとの間には被加工物搬出手段16が配設されており、この被加工物搬出手段16は被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル52上に載置されている加工後のウエーハを洗浄手段13に搬送する。
【0026】
更に、図示の実施形態における保護膜形成装置1は、装置ハウジング2の主部21に隣接して配設され被加工物であるウエーハの被研削面と反対側の支持面に保護膜を形成する保護膜形成手段6を具備している。この保護膜形成手段6は、被加工物であるウエーハを保持するスピンナーテーブル61と、該スピンナーテーブル61を回転駆動する電動モータ62と、スピンナーテーブル61に保持された被加工物であるウエーハの支持面に液状樹脂を供給する液状樹脂供給ノズル63と、被加工物であるウエーハの支持面に形成された樹脂保護膜を固化させるための保護膜固化器64とからなっている。上記スピンナーテーブル61は、上記チャックテーブル52と同様にチャックテーブル本体と該チャックテーブル本体の上面に配設された多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料からなる吸着チャック522とからなっており、吸着保持チャックの上面(保持面)に載置された被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するようになっている。上記液状樹脂供給ノズル63は、図示しない液状樹脂供給手段に接続されている。また、保護膜固化器64は、液状樹脂供給ノズル63から供給される液状樹脂によって選択されるが、加熱器または紫外線照射器を用いることができる。
【0027】
図示の実施形態における保護膜形成装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述した保護膜形成装置1によって保護膜形成工程および保護膜平坦化工程を実施するには、加工前のウエーハ10が収容されたカセット11をカセット載置領域11aに載置し、加工開始スイッチ(図示せず)が投入されると、被加工物搬送手段14が作動してカセット載置領域11aに載置されたカセット11の所定位置に収容されている加工前のウエーハ10の裏面10bをハンド141によって吸引保持し、カセット11から搬出して保護膜形成手段6のスピンナーテーブル61にウエーハ10の裏面10b側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、スピンナーテーブル61上にウエーハ10を吸引保持する。従って、スピンナーテーブル61上に保持されたウエーハ10は、図5の(a)に示すように表面10aが上側となる。このようにしてスピンナーテーブル61上にウエーハ10を吸引保持したならば、図5の(a)に示すように液状樹脂供給ノズル63の噴出口63aをスピンナーテーブル61上に保持されたウエーハ10の中心部に位置付け、図示しない液状樹脂供給手段を作動して、液状樹脂供給ノズル63の噴出口63aから例えば硫酸と過酸化水素水からなる洗浄液によって溶解するレジスト膜等の液状樹脂60を所定量滴下する。この液状樹脂60は、加熱または紫外線を照射すると固化する樹脂が用いられる。なお、液状樹脂60の滴下量は、ウエーハ10の表面10aに形成される保護膜の厚みが10〜30μmになるように設定されている。このようにして液状樹脂60を滴下したならば、液状樹脂供給ノズル63を図2に示す待機位置に位置付ける。次に、スピンナーテーブル61を図5の(a)において矢印Gで示す方向に300〜1000rpmの回転速度で所定時間(例えば1分間)回転する。この結果、図5の(b)に示すようにウエーハ10の表面10aの中央領域に滴下された液状樹脂60は、遠心力によって外周部まで流動しウエーハ10の表面10aを被覆し、保護膜600を形成する。このようにしてウエーハ10の表面10aに保護膜600を形成したならば、図5の(b)に示すように加熱器または紫外線照射器からなる保護膜固化器64を作動して保護膜600を固化せしめる(保護膜形成工程)。なお、ウエーハ10の裏面を研削する際に支持面となる表面10aに被覆される保護膜600は、厚みが平均で30μm程度であるが均一ではなく図5の(c)に示すように中央部は薄く、外周にいくほど厚くなっている。
【0028】
上述したように保護膜形成工程を実施したならば、スピンナーテーブル61によるウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、被加工物搬送手段14を作動してスピンナーテーブル61上に載置されている保護膜形成工程が実施されたウエーハ10を被加工物仮置き手段12に搬送する。従って、被加工物仮置き手段12に搬送されたウエーハ10は、支持面である表面10aに被覆された保護膜600が上側となる。そして、被加工物仮置き手段12は、搬送された加工前のウエーハ10の中心合わせを行う。次に、被加工物搬入手段15を作動して、被加工物仮置き手段12によって中心合わせされた加工前のウエーハ10を被加工物搬入・搬出領域24に位置付けられているチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に載置される。チャックテーブル52上に載置された半導体ウエーハ10は、図示しない吸引手段によってチャックテーブル52上に吸引保持される。このようにしてチャックテーブル52上に吸引保持されたウエーハ10は、表面10aに被覆された保護膜600が上側となる。
【0029】
チャックテーブル52上にウエーハ10を吸引保持したならば、チャックテーブル移動機構56(図4参照)を作動してチャックテーブル機構5を矢印23aで示す方向に移動し、ウエーハ10を保持したチャックテーブル52を加工領域25に位置付ける。このようにしてウエーハ10を保持したチャックテーブル52が加工領域25に位置付けられたならば、ウエーハ10の表面10aに形成された保護膜600の表面を旋削して保護膜600の厚みを均一にする保護膜平坦化工程を実施する。
【0030】
先ず、回転スピンドル322を回転駆動し、バイト工具33が取り付けられたバイト工具装着部材324を図6において矢印33aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、旋削ユニット3を下降させバイト工具33を所定の切り込み位置に位置付ける。次に、例えばバイト工具33の切れ刃332の旋削幅が20数μmの場合には、ウエーハ10を保持したチャックテーブル52を図6において実線で示す位置から矢印23aで示すように右方に例えば2mm/秒の送り速度で移動する。この結果、回転スピンドル322の回転に伴ってチャックテーブル52の保持面と平行な面内で回転するバイト工具33の切れ刃332によって、ウエーハ10の表面10aに形成された保護膜600の表面(上面)が旋削される(保護膜平坦化工程)。この結果、保護膜600は、図7に示すように均一な厚みに形成される。
【0031】
上述したように保護膜平坦化工程が終了したら、旋削ユニット3を上昇せしめ、チャックテーブル52の回転を停止する。次に、チャックテーブル52を図2において矢印23bで示す方向に移動して被加工物搬入・搬出域24に位置付け、チャックテーブル52上の保護膜平坦化工程が実施されたウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、吸引保持が解除されたウエーハ10は被加工物搬出手段16により搬出されて洗浄手段13に搬送される。洗浄手段13に搬送されたウエーハ10は、ここで洗浄されるとともにスピン乾燥される。洗浄手段13で洗浄およびスピン乾燥されたウエーハ10は、被加工物搬送手段14よってカセット11の所定位置に収納される。
【0032】
上述した保護膜平坦化工程が実施されたウエーハ10は、研削装置に搬送される。そして、ウエーハ10の被研削面(裏面10b)と反対側の支持面(表面10a)に形成され厚みが均一な保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハ10の被研削面(裏面10b)を研削手段によって研削する研削工程を実施する。この研削工程は、図示の実施形態においては図8に示す研削装置8を用いて実施する。図8に示す研削装置8は、被加工物を保持するチャックテーブル81と、該チャックテーブル81に保持された被加工物を研削する研削手段82を具備している。チャックテーブル81は、上面に被加工物を吸引保持し図8において矢印81aで示す方向に回転せしめられる。研削手段82は、スピンドルハウジング821と、該スピンドルハウジング821に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル822と、該回転スピンドル822の下端に装着されたマウンター823と、該マウンター823の下面に取り付けられた研削ホイール824とを具備している。この研削ホイール824は、円環状の基台825と、該基台825の下面に環状に装着された研削砥石826とからなっており、基台825がマウンター823の下面に締結ボルト827によって取り付けられている。
【0033】
上述した研削装置8を用いてウエーハ10の被研削面(裏面10b)を研削する研削工程を実施するには、図8に示すようにチャックテーブル81の上面(保持面)に上記ウエーハ10の支持面(表面10a)に形成された保護膜600側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル81上にウエーハ10を吸引保持する。従って、チャックテーブル81上に吸引保持されたウエーハ10は、被研削面(裏面10b)が上側となる。このようにチャックテーブル81上にウエーハ10を吸引保持したならば、チャックテーブル81を図8において矢印81aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段82の研削ホイール824を図8において矢印824aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめ、図9に示すように研削砥石826の研削面(下面)を被研削面(裏面10b)に接触させて、研削ホイール824を図8および図9において矢印824bで示すように所定の研削送り速度で下方(チャックテーブル81の保持面に対し垂直な方向)に例えば600μm研削送りする。この結果、図示の実施形態においてはウエーハ10は100μmの厚みに形成される。上記研削工程においては、チャックテーブル81の上面(保持面)にウエーハ10の支持面(表面10a)に形成された保護膜600側を載置するが、保護膜600は上述した保護膜平坦化工程を実施することにより厚みが均一に形成されているので、研削精度の信頼性が確保できるとともに、ウエーハを損傷する虞がない。
【0034】
上述した研削工程が実施され所定の厚みに形成されたウエーハ10は、支持面(表面10a)に形成された保護膜600を除去する保護膜除去装置に搬送され、保護膜除去装置において保護膜除去工程が実施され保護膜600が除去される。なお、図示の実施形態において保護膜600は硫酸と過酸化水素水からなる洗浄液によって溶解するレジスト膜用の液状樹脂60を被覆し紫外線を照射して固化しているので、硫酸と過酸化水素水からなる洗浄液によって溶解することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:保護膜形成装置
2:装置ハウジング
3:旋削ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
321:スピンドルハウジング
322:回転スピンドル
323:サーボモータ
324:バイト工具装着部材
33:バイト工具
331:バイト本体
332:切れ刃
4:旋削ユニット送り機構
5:チャックテーブル機構
51:支持基台
52:チャックテーブル
56:チャックテーブル移動機構
6:保護膜形成手段
61:スピンナーテーブル
63:液状樹脂供給ノズル
64:保護膜固化器
8:研削装置
81:チャックテーブル
82:研削手段
824:研削ホイール
10:ウエーハ
600:保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの被研削面を研削するウエーハの研削方法であって、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に液状樹脂を被覆して固化させ該支持面に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成された保護膜の表面を旋削して保護膜の厚みを均一にする保護膜平坦化工程と、
ウエーハの被研削面と反対側の支持面に形成され厚みが均一な保護膜側を研削装置のチャックテーブルに保持し、ウエーハの被研削面を研削手段によって研削する研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69886(P2013−69886A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207677(P2011−207677)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】