説明

ウオームギア・ドライブを高エネルギー効率で運転する方法

本発明の目的は、オイル・リザーバに低トラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を含有するウオームギア用潤滑剤を充たし、ウオームギアを同リザーバ内温度が20〜225°Cの範囲内の平衡オイル温度下で運転することによる高エネルギー効率のウオームギア・ドライブ運転方法を提供することである。本発明の他の目的は、より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数を、より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分とブレンドすることにより低下するプロセスを提供することである。本発明の更に他の目的は、異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分と2〜50重量%の増粘剤を含有するウオームギア用潤滑剤を提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油を使用して高エネルギー効率でウオームギア・ドライブを運転する方法、より高いトラクション係数を有する潤滑油ベースオイルのトラクション係数を低下するプロセス、およびウオームギア用潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウオームギアは高いギア減速比が要求される場合に使用される。ウオームギアは20:1のギア減速比で運転されることは普通であり、また300:1までですら、あるいはそれ以上の減速比で運転されることもある。ウオームは速度を低下してトルクを増加するために使用される。ウオームのシャフトが1回転するたびにギアのシャフトはギア歯をひとつだけ前進させる。通常のギアとは異なり、ウオームギアの動きは不可逆であり、ウオームは速度を低下するためにギアを駆動することができるが、一般的にはギアは速度を増加するためにウオームを駆動することはできない。速度が低下すれば、それに応じてドライブへのトルクは増加する。ウオームギアは、実質的に速度を低下しトルクを増加するための小型で効果的な手段である。ウオームギアは高滑り速度、中程度の負荷の下で働く。滑り運動により摩擦が発生し、その部分は他のギア・ドライブに比べて高運転温度に達する。ウオームギア用の潤滑剤は、温度上昇の結果としての潤滑膜の薄層化への抵抗性を高め、同時に摩擦エネルギー損失を減少させるために、しばしば高粘度指数で低トラクション係数のベースオイルを用いて処方される。
【0003】
L.A.BronshteynおよびJ.H.Kreinerは、ウオームギアのエネルギー効率に最も深く関連する物性は同ウオームギアに使用される最終潤滑剤製品のトラクション係数であると述べている(Energy Efficiency of Industrial Oils、STLE論文集99−AM−2、1999)。どのようなウオームギア・ドライブ(すなわち、そこでウオームは車輪を駆動する)でのエネルギー効率(%表示)は、下式で規定されるように、同システムでの摩擦係数とウオームの形状の関数であることが示されている(Dudley‘sGear Handbook、D.P.Townsend、第二版、ed.、McGraw Hill, Inc.、1992、p.12.11):

【0004】
W.R.Murphy他による以前の研究によれば、多くの商業規模のウオームギアのシステムでの全体的な摩擦関連特性は、これらのシステムで使用されるトラクション係数と実質的に同等である(The Effect of Lubricant Traction on Wormgear Efficiency、AGMA、P254.33、1981)。従って、異なったフォームレーションの潤滑剤の潜在的なエネルギー効率は上式での摩擦係数にトラクション係数を代入することによって推定可能である。これにより、エネルギー効率に関する良好な目安が得られる。なぜならば、粘度、粘度指数、粘度調整剤の種類と濃度、摩擦調整剤の濃度といった潤滑剤の物性は、商業規模のウオームギア・ドライブのエネルギー効率に対して比較的小さな影響しか持っていないことが認められているからである。
【0005】
ウオームギアはその本来的な性質により本質的には純粋な滑り条件下で対応するウオームホイールに動力を伝達する。この動きによって発生する摩擦熱はそれ自身が動力伝達効率の損失(馬力損失)であり、リザーバー(油溜め)内の潤滑剤あるいは潤滑剤全体の温度を上昇させる。温度が自動的に制御されていない装置では、潤滑剤の効率伝達特性が高くなれば平衡温度が低下することが観察されている。その結果、ウオームギア・ドライブに使用されるどのような潤滑剤であっても、それの潜在的なエネルギー節減はリザーバ内の平衡温度での動力効率に直接的に関連すると考えられる。
【0006】
これまで、最終潤滑剤製品の組成を決定する場合には、ベースオイルと複数の添加剤を選んでそれらからなる最終潤滑剤製品のトラクション係数を改善してきた。最終留分のトラクション係数を改善するための摩擦調整剤と呼ばれる添加剤の例としてEP0973854,米国特許4,634,543およびWO9524458に開示されているものが挙げられる。ポリアルファオレフィン類(PAOs)は摩擦が低く、従ってウオームギアからトラクション・ドライブまでの機械的負荷の全範囲にわたって機械的効率の改善と摩擦熱による損失の低下を示し、鉱物油潤滑剤に比べてより広い運転条件範囲にわたって同様な効果をもたらす。低摩擦係数を有する好ましいある種のポリアルファオレフィン類は米国特許4,827,064に開示されている。摩擦の低減のために、しばしば3〜10%の脂肪油あるいは合成脂肪油がウオームギア・オイルに添加される。
【0007】
C.L.Bullockによれば(Innovations in Synthetic Basestocks、ICIS−LOR World Base Oil Conference、2004)、グループIおよびIIのフォミュレーションを含有する低トラクション係数のPAOs(SpectraSyn UltraTM)は、高馬力エンジンでの磨耗を20〜30%低減する。しかし、同様な利点が、PAOsの代わりに低トラクション係数のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分の使用により得られる可能性があることは同論文には言及されておらず、また予測もされていない。ExxonMobil Chemicalが提出したSpectraSyn UltraTM−The Ultra Performance PAOと題する論文(著作権2003)によれば、100°Cでの動粘度が約150〜1,000cStの低トラクション係数のPAOsの使用によりウオームギア効率は向上する。更に、同SpectraSyn UltraTMベースオイルは厚い潤滑剤膜を形成する。
【0008】
米国特許出願番号10/301391は、100°Cでの動粘度が約2cStでありまた3cSt未満の低トラクション係数のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分と石油系潤滑油のブレンドによる望ましい低揮発性で粘度が約3以上のベースオイルの製造を開示している。しかし、そこにはトラクション係数の低下に関連する利点の言及はない。また、ISO68〜680の動粘度を有するウオームギア用潤滑剤が同発明のブレンドされたベースオイルにブレンド可能であることの言及もない。
【0009】
米国特許出願番号10/301391は、異性化フィッシャー・トロプッシュ残渣留分と通常の石油系ベースオイルあるいはフィッシャー・トロプッシュ・ベースオイルのいずれかとブレンドして同ブレンドの流動点を低下させるブレンディングを開示している。しかし、同出願は摩擦の低下に関する利点に何等言及していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが見出したのは、これまで石油系潤滑油ベースオイルおよび/あるいはポリアルファオレフィン類により製造される最終潤滑剤製品を使用した場合に比べてより高いエネルギー効率でウオームギア・ドライブを運転する方法である。更に本発明者らが見出したのは、非常な低トラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分をより高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルにブレンドしてウオームギア・ドライブへの使用により適するように同ベースオイルのトラクション係数を低下させるプロセスである。更に、本発明者らが見出したのは、優れたエネルギー効率を実現する新規のウオームギア用潤滑剤組成物である。
【0011】
(発明の要約)
本発明の目的は、オイル・リザーバに低トラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を含有するウオームギア用潤滑剤を充たし、同リザーバ装備のウオームギアを同リザーバ内温度が20〜225°Cの範囲内の平衡オイル温度下で運転することによる高エネルギー効率のウオームギア・ドライブ運転方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数を低下するプロセスを提供することであり、同プロセスでは0.023未満というより低いトラクション係数(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を回収し、それをより高いトラクション係数を有する上記潤滑剤ベースオイルと適切な割合でブレンドして同ベースオイルよりも低いトラクション係数(動粘度15cStの条件下で測定)を有するベースオイル・ブレンドを製造する。
【0013】
本発明の更に他の目的は、a)0.023未満のトラクション係数(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分と
b)2〜50重量%の増粘剤を含有するウオームギア用潤滑剤を提供することである。
【0014】
(図面の簡単な説明)
図1は4種類の比較用ベースオイルに関して動粘度(cSt)に対してトラクション係数をプロットした図である。これらのベースオイルは、グループIIの石油系ベースオイル、グループIの石油系ベースオイル、グループIIIの石油系ベースオイルおよびポリアルファオレフィン系ベースオイルである。各々のベースオイルの40、70、100および120°Cの試験温度でのトラクション係数データを動粘度に対してプロットした。同図に示される線はデータをフィティングした結果である。
【0015】
図2は、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分でのトラクション係数の関連線分であり、同係数はこの下側にある。同線分は、トラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001の関連式で規定される。ここで、トラクション係数測定中の動粘度は2〜50cStであり、Lnは“e”を底とする自然対数である。
【0016】
図3は3種類の比較用ベースオイルに関して動粘度(cSt)に対して弾性流体(Elastohydrodynamic、EHD)膜厚(ナノメートル)をプロットした図である。これらのベースオイルは、グループIIの石油系ベースオイル、グループIの石油系ベースオイル、およびポリアルファオレフィン系ベースオイルである。各々のベースオイルの40、70、100および120°Cの試験温度でのEHD膜厚を動粘度に対してプロットした。同図に示される線はデータをフィティングした結果である。
【0017】
図4は、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分でのEHD膜厚の関連線分であり、同膜厚はこの上側にあることが好ましい。同線分は、EHD膜厚(ナノメートル)=10.5×動粘度(cSt)+20の関連式で規定される。ここで、EHD膜厚測定中の動粘度は2〜50cStであった。
【0018】
図5は、好ましい実施態様での、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の流動点(°C)と100°Cでの動粘度(cSt)との関係を示しており、流動点はこの線分の上側にある。同線分は、ベースオイルの流動点因子と呼ばれており、ベースオイル流動点因子=7.35×Ln(100°Cでの動粘度)−18の関連式で計算される。ここで、Lnは“e”を底とする自然対数である。
【0019】
(発明の詳細な説明)
トラクション係数は基準力Nに対する摩擦力Fの比で与えられる無次元数である。ここで、摩擦は滑り面あるいは回転面の間の運動に抵抗するあるいは妨害する機械的な力である。トラクション係数は潤滑剤の本来的な性状を表す。潤滑剤ベースオイルおよび最終製品留分のトラクション係数は低いことが望ましい。なぜならば、低トラクション係数はエネルギー節減、装置の磨耗の減少、潤滑剤の長寿命(特にウオームギアにおいて)をもたらすからである。
【0020】
トラクション係数
オイルは、弾性流体(EHD)潤滑領域において固化したりあるいは粘度が上昇する。
EHD領域での接触による摩擦に起因するエネルギー損失は、粘度が上昇したオイルのせん断力によって決まる。固化圧力およびせん断力は潤滑剤ベースオイルの種類によって大きく異なり、従ってそれらのトラクション性状も異なる。
【0021】
パラフィン濃度が比較的低い通常型のグループIのベースオイルは、高いトラクション力を発生する比較的堅固かつコンパクトな分子を含有し、それに対して、パラフィン濃度がより高いベースオイルおよびポリアルファオレフィン系ベースオイルは開放的、弾性的な分子を含有し、トラクション係数が低い。トラクションは、潤滑された接触面での界面条件の敏感な目安である。トラクション係数は接触面での潤滑剤ベースオイルのせん断応力および表面膜のせん断応力の関数である(ただし、表面での凹凸同士の相互作用が殆どあるいは全くないとの前提下で)。潤滑膜が全面的にEHD条件下での低トラクション係数は、ギア歯のミクロピッティングの防止、熱蓄積の最少化、酸化による損傷に対する抵抗性の提供、そして燃費の向上をもたらすので望ましい。
【0022】
トラクション係数の試験方法
トラクション関連のデータはMTM Traction Measurement System(PCS Instruments,Ltd.)により測定された。
同装置は、46mm直径の研磨された平坦なディスク(SAE AISI 52100鋼)に対して22°の角度をなす19mm直径の研磨されたボール(SAE AISI 52100鋼)を装備している。測定は、40、70、100および120°Cの温度下で実施した。同鋼製のボールおよびディスクは、平均回転速度3M/秒、滑り率40%(ボールとディスクの速度差のこれらの平均速度に対する比で定義される)条件下で2基のモータにより独立して駆動された。すなわち、滑り率SRRは(速度1−速度2)/[(速度1+速度2)/2]で定義される。ボール/ディスクに対する負荷は20ニュートンであり、これにより平均的な接触応力0.546GPa、最大接触応力0.819GPaが発生したと推定される。
【0023】
各オイルのトラクション係数データを各温度(40、70、100および120°C)での動粘度に対してプロットした。すなわち、例えば40°Cでのオイルの動粘度(x座標)に対して40°Cでのトラクション・データ(y座標)をプロットした、等々。動粘度情報は一般的には40および100°Cでの値しか得られないので、これらの温度でのデータを用いてよく知られたWalther式[Log10(Log10(vis+0.6))=a−c*Log10(温度、K)]により70および120°Cでの値を推定した。Walther式は40および100°C以外の温度での粘度を推定するために最も広く使用されている式であり、ASTM D341の粘度−温度チャートはこれに基づいている。各オイルでの結果を、動粘度(cSt)に対するトラクション係数の対数のプロットで線形フィッティングした線図で示している。15cStの動粘度、および他の動粘度での各オイルのトラクション係数を線図から読み、表に示した。
【0024】
4cStの動粘度での異なった種類のベースオイルのトラクション関連特性に関してはQeereshi他が議論している(Developing Next Generation Axle Fluids:Rheological Considerations、Lubrication Engineering Journal of the Society of Tribologists and Lubrication Engineers、2003年5月)。上述の方法で測定した場合、石油系のグループIIのベースオイルは石油系のグループIのベースオイルよりはトラクション係数が高く、石油系のグループIのベースオイルは石油系のグループIIIのベースオイルよりはトラクション係数が高く、また石油系のグループIIIのベースオイルはポリアルファオレフィン(PAO)系のベースオイルよりはトラクション係数が高い。本発明以前では、最も低いトラクション係数を有する公知のベースオイルはPAO系のものであった。
【0025】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は通常型のPAO類よりは低いトラクション係数を有する。本明細書内で使用される「通常型のPAO類」とは100°Cでの動粘度が約150cSt未満のものを指す。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数は15cStの動粘度で測定した場合0.023未満である。同留分のトラクション係数は通常型PAO類のトラクション係数に関する式トラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001で求まる値よりも低いことが好ましい。ここで、動粘度(cSt)はトラクション係数測定中の動粘度であり、Lnは“e”を底とする自然対数である。動粘度(cSt)は試験温度および測定されているオイルの粘度指数によって変化する。上式に用いられるベースオイルの動粘度は2〜50cStの範囲内にある。同式のプロット図を図2に示している。
【0026】
平衡オイル温度
運転中のギアボックス内のオイル・リザーバ内のオイル温度は、内部に発生する熱プラス外部から供給された熱と放散された熱の間の熱バランスが平衡に達するまで上昇し続ける。内部で発生する熱の熱源は、各部品間の相対運動によるギアボックス内での動力損失である。ギアメッシュでの滑り摩擦は高いので、ウオームギアボックス内でのギアの摩擦は熱発生の主要な熱源となる。ウオームギアボックスは他の種類のギアに比べて効率が低いので、しばしば「熱的に限定される動力定格」が与えられる。
【0027】
外部からの熱としては、例えば直接的に日光にさらされた結果としての輻射熱、高温の周囲熱あるいは他の手段からの熱の吸収が考えられる。熱は通常はギアボックスのハウジング表面からの輻射、あるいは周囲の大気、周囲の構造物および部品への対流により逸散する。周囲の状態が適切な冷却(熱放散による)を与えない場合、ファン、特別なオイル冷却器といった追加的な外部手段を必要とする。ウオームギア・ボックスのオイル・リザーバ内での平衡オイル温度は一般的には20〜225°Cの範囲内にあり、好ましくは20〜150°Cの範囲内にある。フィッシャー・トロプッシュ油からなる潤滑剤ベースオイルは高い酸化抵抗性を有しているので、高い平衡オイル温度下でも長期間にわたってウオームギア内で作動できる。
【0028】
異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分
低トラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、フィッシャー・トロプッシュ合成生成物の水素化異性化および任意に採用されるハイドロフィニッシングの過程で生成する炭化水素から分離される。
【0029】
フィッシャー・トロプッシュ合成
フィッシャー・トロプッシュ合成では、シンガスは反応条件下でフィッシャー・トロプッシュ触媒と接触して液体炭化水素に転化される。典型的には、合成ガス(シンガス)を生成するために、メタンおよび任意に選択される炭化水素(エタンおよびそれよりも重い化合物)を通常型のシンガス生成装置に送ることができる。一般的には、合成ガスは水素および一酸化炭素を含有し、更に少量の二酸化炭素および/あるいは水を含有する可能性がある。シンガス中の硫黄、窒素、ハロゲン、セレニウムおよび砒素といった汚染物の存在は望ましくない。この理由により、またシンガス品質によっては、フィッシャー・トロプッシュ合成を実施する前の段階で原料から硫黄その他の汚染物を除去することが好ましい。これらの汚染物除去の手段は当業界の熟練者にはよく知られている。例えば、ZnOを充填したガード層の使用は硫黄系不純物除去のために好ましい。その他の汚染物除去の手段は当業界の熟練者にはよく知られている。更に、フィッシャー・トロプッシュ反応器に導入する前の段階で、シンガス反応中に生成した二酸化炭素および既に除去されてはいない追加的な量の硫黄化合物を除去するためにシンガスを精製することも好ましいかもしれない。このことは、例えば、シンガスを充填層内で中程度にアルカリ性の溶液(例えば炭酸カリ水溶液)に接触させることにより達成できる。
【0030】
フィッシャー・トロプッシュ・プロセスでは、HとCOを含有する混合物を適切な温度および圧力反応条件下でフィッシャー・トロプッシュ触媒に接触させて液体および気体の炭化水素を生成する。フィッシャー・トロプッシュ反応は、典型的には約300〜700°F(149〜371°C)、好ましくは約400〜550°F(204〜228°C)の温度;約10〜600psia(0.7〜41バール)、好ましくは約30〜300psia(2〜21バール)の圧力;および約100〜10,000cc/g/hr、好ましくは約300〜3,000cc/g/hrの触媒空間速度の条件下で実施される。フィッシャー・トロプッシュ型反応を実施するための条件例は当業界の熟練者にはよく知られている。
【0031】
フィッシャー・トロプッシュ合成プロセスから生成する留分は、C1〜C200+の範囲、大半がC5〜C100+の範囲にわたる可能性がある。同反応は様々な形式の反応器によって実施できる。このような反応器の例として、1基あるいは複数基の触媒が充填された固定層型反応器、スラリー反応器、流動層反応器あるいは異なった形式の反応器の組み合わせが挙げられる。このような反応のプロセスおよび反応器はよく知られており、また文献に記載されている。
【0032】
スラリー型フィッシャー・トロプッシュ・プロセスは本発明の実施のために好ましいプロセスであり、非常な発熱型合成反応によってもたらされる優れた熱(および物質)移動特性を利用し、またコバルト系触媒を使用するならば比較的高分子量のパラフィン系炭化水素を生成できる。同スラリー・プロセスでは、水素と一酸化炭素を含有する混合物からなるシンガスは、粒状のフィッシャー・トロプッシュ型炭化水素合成触媒を含むスラリー中に第三相として泡立つように上方に移動する。同触媒は、反応条件下では液状である合成反応用の炭化水素留分を含有するスラリー液内に分散され懸濁されている。水素/一酸化炭素モル比は約0.5〜4といった広い範囲にわたる可能性があるが、より典型的には約0.7〜2.75、好ましくは約0.7〜2.5の範囲内にある。特に好ましいフィッシャー・トロプッシュ・プロセスはEP0609079に開示されており、その内容は全ての目的のために本明細書内に全面的に引用されている。
【0033】
一般的には、フィッシャー・トロプッシュ合成触媒は金属酸化物に担持された周期律表8族の遷移金属を含有している。更に、同触媒は貴金属系の助触媒および/あるいは結晶質モレキュラーシーブを含有してもよい。適切なフィッシャー・トロプッシュ触媒は、Fe、Ni、Co、RuおよびReの1種あるいは複数種を含有し、この内コバルトが好ましい。好ましいフィッシャー・トロプッシュ触媒は、適切な無機物質(好ましくは1種あるいは複数種の耐熱性金属酸化物)に担持された有効量のコバルトおよびRe、Ru、Pt、Fe、Ni、Th,Zr、Hf、U、MgおよびLaの1種あるいは複数種を含有する。一般的に、触媒中のコバルト量は全触媒組成物に対して約1〜50重量%である。更に、同触媒はThO2、La2O3、MgOおよびTiO2のような塩基性酸化物系助触媒;ZrO2のような助触媒;貴金属(Pt、Pd,Ru、Rh、Os、Ir);貨幣鋳造用金属(Cu、Ag、Au);ならびにFe、Mn、Ni、およびReのような他の遷移金属をも含有し得る。適切な担体物質の例として、アルミナ、シリカ、マグネシアおよびチタニア、あるいはこれらの混合物が挙げられる。コバルト含有触媒のための好ましい担体はチタニアを含有する。有用な触媒およびそれらの製法は公知であり、また米国特許4,568,663に開示されている(同特許文献は触媒の説明を意図しており、触媒選択に関して制限を設けようとしているのではない)。
【0034】
ある種の触媒は比較的低度から中程度の連鎖成長可能性を与えることが知られており、同反応留分は比較的高割合の低分子量(C2〜C8)のオレフィン類と比較的低割合の高分子量(C30+)のワックスを含有する。ある種の他の触媒は比較的高い連鎖成長可能性を与えることが知られており、同反応留分は比較的低割合の低分子量(C2〜C8)のオレフィン類と比較的高割合の高分子量(C30+)のワックスを含有する。このような触媒は当業界の熟練者にはよく知られており、容易に入手あるいは製造できる。EP0609079は特に好ましいフィッシャー・トロプッシュ・プロセスを開示しており、またWO199934917A1はより高い炭素数分布を有するワックスの製造プロセス例を開示している。
【0035】
フィッシャー・トロプッシュ・プロセスからの生成物留分は主としてパラフィン類からなる。一般的には、フィッシャー・トロプッシュ反応からの生成物留分は軽質反応留分とワックス状の反応留分を含有する。同軽質反応留分(すなわちコンデンセート留分)は約700°F未満の温度で沸騰する炭化水素(例えばテールガス〜中間留分燃料)を含有し、これらは主としてC5〜C20の範囲内にあり、また分子量が高くなるに従い割合的には少なくなるが約C30までの留分を含有する。ワックス状の反応留分(すなわちワックス留分)は約600°F超の温度で沸騰する炭化水素(例えば、減圧ガスオイル〜重質パラフィン)を含有し、これらは主としてC20+の範囲内にあり、また分子量が低くなるに従い割合的には少なくなるが約C10までの留分を含有する。
【0036】
同軽質反応留分およびワックス状留分は、両方とも実質的にパラフィン類からなる。同ワックス状留分は一般的には70重量%超の、しばしば80重量%超のノルマル・パラフィン類を含有する。同軽質反応留分はパラフィン留分を含有し、また相当な割合のアルコール類およびオレフィン類も含有する。いくつかの場合では、同軽質反応留分は50重量%もの(あるいはそれよりも高割合の)アルコール類およびオレフィン類を含有する。本発明のブレンドされた潤滑剤およびブレンドされた潤滑剤最終製品に使用されるフィッシャー・トロプッシュ反応からの潤滑剤ベースオイルを生成するプロセスのための原料として使用されるのはこのワックス状反応留分(すなわちワックス留分)である。
【0037】
低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、フィッシャー・トロプッシュ合成原油(シンクルード)のワックス状留分から水素化異性化を包含するプロセスによって生成する。好ましくは、同フィッシャー・トロプッシュ潤滑剤ベースオイルはU.S.S.N.10/744389(2003年12月23日出願)およびU.S.S.N.10/744870(2003年12月23日出願)に開示されるプロセスによって生成する。同プロセスは全面的に本明細書内に引用されている。本発明のブレンドされた潤滑剤およびブレンドされた潤滑剤最終製品に使用される同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、同ブレンドされた潤滑剤の構成成分が受け入れられブレンドされる場所とは異なる場所で製造してよい。
【0038】
水素化異性化
水素化異性化は潤滑剤ベースオイルの分子構造に選択的に分岐を導入することによりそれの低温流動性の向上を意図している。水素化異性化は、理想的には分解による転化を最小限に抑制しつつフィッシャー・トロプッシュ・ワックスをワックス状ではないイソパラフィン類に高率で転化する。好ましくは、本発明での水素化異性化条件は、ワックス原料中の約700°F超の温度で沸騰する化合物を約700°F未満の温度で沸騰する化合物に転化して同留分を約10〜50重量%、好ましくは約15〜45重量%維持するように制御する。
【0039】
本発明によれば、水素化異性化は形状選択的で中程度の細孔径を有するモレキュラーシーブの存在下で実施される。本発明に有用な水素化異性化触媒は、耐熱性の酸化物担体に担持された形状選択的で中程度の細孔径を有するモレキュラーシーブと任意に選択される触媒活性を有する水素化成分を含有する。ここで使用される「中程度の細孔径」という用語は、多孔質無機酸化物が焼成された状態である場合には約3.9〜7.1Åの範囲内の有効細孔径という意味である。本発明の実施に使用される形状選択的で中程度の細孔径を有するモレキュラーシーブは、一般的には1−D、10−、11−あるいは12−環のモレキュラーシーブである。本発明のための好ましいモレキュラーシーブは1−D、10−環の種であり、10−(あるいは11−あるいは12−)環のモレキュラーシーブは10(あるいは11あるいは12)個の四面体配位の原子(T−原子)構造を有し、その中に酸素を含んでいる。1−Dのモレキュラーシーブでは、10−環(あるいはそれを超える)細孔は互いに平行しており連結されていない。ただし、中程度の細孔径を有するモレキュラーシーブに関するより広義の定義を満たすモレキュラーシーブであるが互いに連結された8員環を有するものも本発明のモレキュラーシーブの定義に包含され得ることに注意されたい。1−、2−および3−Dとしてのゼオライト内チャンネルの分類は、R.B.Barrer(Zeolites,Science and Technology、F.R.Rodrigues、 L.D.RollmanおよびC.Naccache編集、NATO ASI Series、1984年)により提案されており、同分類は全面的に本明細書に引用されている(特に、同文献の75ページを参照されたい)。
【0040】
水素化異性化に使用される好ましい形状選択的、中程度の細孔径のモレキュラーシーブはSAPO−11、SAPO−31およびSAPO−41といったリン酸アルミニウム系のものであり、より好ましくはSAPO−11およびSAPO−31であり、最も好ましくはSAPO−11である。SM−31は特に好ましい形状選択的、中程度の細孔径のSAPOであり、これはSAPO−11モレキュラーシーブ構造に分類される結晶構造を有している。SM−3の製造法およびそれの特徴的な特性は米国特許4,943、424および5,158,665に開示されている。水素化異性化に使用される他の好ましい形状選択的、中程度の細孔径のモレキュラーシーブはゼオライト(例えば、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、SSZ−32、オフレタイトおよびフェッリエライト)であり、これらの中でSSZ−32およびZSM−23がより好ましい。
【0041】
好ましい中程度の細孔径のモレキュラーシーブは、チャンネルの選択された結晶学的自由径、選択された結晶子サイス(選択されたチャンネル長に対応する)および選択された酸性度によって特徴付けられる。モレキュラーシーブのチャンネルの望ましい結晶学的自由径は約3.9〜7.1オングストロームであり、最大径は7.1オングストローム以下、最小径は3.9オングストローム以上であり、最大径は7.1オングストローム以下、最小径は4.0オングストローム以上である。好ましくは、最大径は7.1オングストローム以下、最小径は4.0オングストローム以上である。最も好ましくは、最大径は6.5オングストローム以下、最小径は4.0オングストローム以上である。モレキュラーシーブのチャンネルの結晶学的自由径は、Ch.Baerlocher、W.M.MeierおよびD.H.Olson,Elsevierが論じており、(Atlas of Zeolite Framework Types、第5版改訂版、10〜15ページ、2001年)、これらは本明細書内に引用されている。
【0042】
本発明のプロセスに有用な特に好ましい中程度の細孔径のモレキュラーシーブは米国特許5,135,638および5,282,958に開示されており、その内容は全面的に本明細書内に引用されている。米国特許5,282,958によれば、このような中程度の細孔径のモレキュラーシーブは約0.5ミクロン以下の結晶子径を有しており、同細孔の最小径は少なくとも約4.8Å、最大径は約7.1Åである。同触媒は、それの0.5gが管型反応器内に充填された場合、温度370°C、圧力1200psig、水素流量160mL/分および原料流量1mL/時間の条件下で少なくとも50%のヘキサデカンを転化するに十分な酸性度を有している。更に、同触媒は、ノルマルヘキサデカン(n−C16)を他の種に96%転化する条件下で40%以上の異性化選択性も示す(異性化選択性は、100×(留分中の分岐C16の重量%)/(留分中の分岐C16およびC13の重量%)で定義される)。
【0043】
モレキュラーシーブのチャンネルの結晶学的自由径が未知の場合、同モレキュラーシーブの有効細孔径は標準的な吸着技術および既知の最小動径を有する炭化水素化合物を用いて測定できる。Breck、Zeolite Molecular Sieves、1974年(特に第8章);Anderson他、J.Catalysis、58、114、1979年;および米国特許4,440,871を参照されたい。これら文献の関連箇所は本明細書内に引用されている。細孔径決定のための吸着測定を実施する場合には、標準的な技術が採用される。この場合、10分未満の時間内に以内に少なくとも95%がモレキュラーシーブへの平衡吸着(25°Cでのp/po=0.5)に達しない特定のモレキュラーシーブを除外することが便利である。中程度の細孔径のモレキュラーシーブは、典型的には、5.3〜6.5オングストロームの動径を有する分子を殆んど支障なく収容する。
【0044】
本発明に有用な水素化異性化触媒は、水素化触媒活性を有する金属を含有する。水素化触媒活性を有する金属の含有はわずかばかりの改善(特に粘度指数および安定性)につながる。典型的な水素化触媒活性を有する金属の例としてクロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金およびパラジウムが挙げられる。金属状の白金およびパラジウムが特に好ましく、白金が最も好ましい。白金および/あるいはパラジウムが使用される場合、水素化触媒活性を有する金属の全濃度は典型的には全触媒基準で0.1〜5重量%の範囲内にあり、通常は0.1〜2重量%であり10重量%を超えない。
【0045】
耐熱性の酸化物担体は触媒担体として通常用いられているものから選ばれる。これらの例として、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、チタニアおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
水素化異性化条件は、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油を生成するために調整される。水素化異性化条件は、使用原料の性状、使用触媒、同触媒が硫化処理されているか否か、望ましい収率および潤滑剤ベースオイルの望ましい性状によって変化する。本発明の水素化異性化プロセスが実施できる条件は、温度が約550〜750°F(287〜約399°C)、好ましくは約600〜700°F(315〜約371°C);圧力が約15〜3000psig、好ましくは100〜2500psigである。この点からは、水素化異性化脱ロウ圧力は水素化異性化反応器内の水素分圧である(ただし、水素分圧は実質的には全圧と同一、あるいはほぼ同一である)。接触過程での時間当たりの液空間速度は一般的には約0.1〜20hr−1、好ましくは約0.1〜5hr−1である。水素/炭化水素モル比率は約1.0〜50、より好ましくは約10〜20の範囲内にある。水素化異性化の実施に適切な条件は米国特許5,282,958および5,135,638に開示されており、その内容は全面的に本明細書内に引用されている。
【0047】
水素化異性化プロセスでは水素が反応領域内に存在する。水素/原料比率は典型的には約0.5〜30MSCF/bbl(バレル当り標準状態で1000立方フィート)、好ましくは約1〜10MSCF/bblである。水素は同留分から分離されて反応領域に再循環されてよい。
【0048】
水素化処理
水素化異性化プロセスへのワックス状原料は、水素化異性化による脱ロウ処理の前に水素化処理されてよい。水素化は触媒プロセスであり、通常は遊離水素の存在下で実施される。同プロセスは、原料中に存在する各種の金属汚染物(例えばヒ素、アルミニウムおよびコバルト;ヘテロ原子、例えば硫黄および窒素;含酸素化合物;および原料からの芳香族類)の除去を主目的としている。一般的には、水素化運転中には炭化水素分子の分解(すなわちより高分子量の分子のより低分子量の分子への分解)は最小限に抑えられ、また不飽和炭化水素は全面的あるいは部分的に水素化される。
【0049】
水素化処理運転に使用される触媒は当業界ではよく知られている。例えば、米国特許4,347,121および4,810,357は水素化、水素化分解およびこれら各プロセスに使用される典型的な触媒を概略しており、その内容は全面的に本明細書内に引用されている。適切な触媒の例として、VIIIA族(International Union of Pure and Applied Chemistryの1975年ルールによる分類)の貴金属(例えば、アルミナあるいはケイ素系の担体に担持された白金あるいはパラジウム);およびVIII族およびVIB族元素(例えばアルミナあるいはケイ素系の担体に担持されたニッケル−モリブデンあるいはニッケル−錫)が挙げられる。米国特許3,852,207は、適切な貴金属系触媒と温和な条件を開示している。他の適切な触媒は、例えば米国特許4,157,294および3,904,513が開示している。非貴金属系の水素化触媒金属(例えばニッケル−モリブデン)は通常は酸化物の形で最終触媒組成中に存在するが、特定の関連金属から硫化物が容易に生成する場合には通常は還元状態あるいは硫化物の形で存在する。
【0050】
好ましい非貴金属系触媒組成物は約5重量%を超える、好ましくは約5〜40重量%のモリブデンおよび/あるいはタングステンを含有し、また少なくとも約0.5重量%、一般的には約1〜15重量%のニッケルおよび/あるいはコバルトを含有する(濃度は対応する酸化物として決められる)。貴金属(例えば白金)を含有する触媒は、0.01重量%を超える、好ましくは0.1〜1.0重量%の金属を含有する。2種類以上の貴金属(例えば白金とパラジウムの混合物)も使用できる。
【0051】
典型的な水素化条件は広い範囲内に変化する。一般的には、全体としてのLHSVは約0.25〜2.0hr−1、好ましくは約0.5〜1.5hr−1の範囲内にある。水素分圧は約200psiaを超え、好ましくは約500〜2000psiaの範囲内にある。水素再循環流量は典型的には50SCF/Bblを超え、好ましくは1000〜5000SCF/Bblの範囲内にある。反応器内の温度は約300〜750°F(約149〜399°C)の範囲内にあり、好ましくは450〜725°F(230〜385°C)の範囲内にある。
【0052】
ハイドロフィニッシング処理
ハイドロフィニッシングは、フィッシャー・トロプッシュ潤滑剤ベースオイル生成のために水素化異性化処理に続いて採用してもよい水素化プロセスである。ハイドロフィニッシングは、フィッシャー・トロプッシュ潤滑剤ベースオイル留分から微量の芳香族、オレフィン、発色体および溶媒を除去することにより、同留分の酸化安定性、紫外線安定性および外観の向上を意図している。本明細書においては、紫外線安定性との用語は紫外線および酸素に暴露された場合の同潤滑剤ベースオイルあるいは最終潤滑剤製品の安定性を意味する。紫外線安定性は、紫外線および空気に暴露された場合の通常は綿状沈殿物あるいは曇りとして現れる目視可能な沈殿物の形、あるいはより暗い色の発現により示唆される。米国特許3,852,207および4,673,487ハイドロフィニッシングを概略している。
【0053】
ハイドロフィニッシング条件は、芳香族濃度が0.30重量%未満(好ましくは0.10重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満)、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分を生成するために調整される。このような結果を得るためには複数のハイドロフィニッシング工程が必要とされる可能性がある。
【0054】
ハイドロフィニッシング工程では、全体としての時間当たりの液空間速度(LHSV)は約0.25〜2.0hr−1、好ましくは約0.5〜1.0hr−1の範囲内にある。水素分圧は約200psiaを超え、好ましくは約500〜2000psiaの範囲内にある。水素再循環流量は典型的には50SCF/Bblを超え、好ましくは1000〜5000SCF/Bblの範囲内にある。温度は約300〜750°F(約149〜399°C)の範囲内にあり、好ましくは450〜600°F(232〜316°C)の範囲内にある。
【0055】
適切なハイドロフィニッシング触媒の例として、VIIIA族(International Union of Pure and Applied Chemistryの1975年ルールによる分類)の貴金属(例えば、アルミナあるいはケイ素系の担体に担持された白金あるいはパラジウム);硫化処理されていないVIIIA族およびVIB族元素(例えばアルミナあるいはケイ素系の担体に担持されたニッケル−モリブデンあるいはニッケル−錫)が挙げられる。米国特許3,852,207は、適切な貴金属系触媒と温和な条件を開示している。他の適切な触媒は、例えば米国特許4,157,294および3,904,513が開示している。非貴金属系触媒は約5重量%を超える、好ましくは約5〜40重量%のモリブデンおよび/あるいはタングステンを含有し、また少なくとも約0.5重量%、一般的には約1〜15重量%のニッケルおよび/あるいはコバルトを含有する(濃度は対応する酸化物として決められる)。貴金属(例えば白金)系触媒は0.01重量%を超える、好ましくは0.1〜1.0重量%の金属を含有する。2種類以上の貴金属(例えば白金とパラジウムの混合物)も使用できる。
【0056】
不純物除去のためのクレイ処理は、低トラクション係数のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分を生成するための最終プロセスの代案である。
【0057】
分別蒸留
フィッシャー・トロプッシュ留分および石油留分の特徴的な沸点範囲を有する各留分への分離は通常は常圧あるいは減圧での蒸留、あるいはこれらの組み合わせによってなされる。本明細書で使用される「留出油留分」あるいは「留出油」という用語は常圧蒸留塔あるいは減圧蒸留塔から回収されるサイドストリーム留分を意味し、これは常圧蒸留塔あるいは減圧蒸留塔底部から回収されるより高沸点の留分である「残渣」に対する用語である。常圧蒸留は典型的には約600〜750°F(約315〜399°C)の初留点を有する残渣からより軽質の留出油(例えばナフサおよび中間留出油)を分離するために用いられる。より高温下では炭化水素の熱分解が起こり、装置の汚染や重質留分の収率の低下を招く可能性がある。減圧蒸留は典型的にはより重質の留分(例えば潤滑剤ベースオイル留分)を異なった沸点範囲を有する留分に分離するために用いられる。潤滑剤ベースオイル留分を異なった沸点範囲を有する留分に分別蒸留することにより複数種のグレード(あるいは粘度)の潤滑剤ベースオイル留分の製造が可能になる。
【0058】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は優れた潤滑剤ベースオイルとなる。本発明を実施する際に用いられる同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は低トラクション係数、芳香族濃度が0.30重量%未満、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超、100°Cでの動粘度が2cStを超え30cSt未満であることを特徴とする。
【0059】
溶剤脱ロウ
低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を製造するプロセスは、水素化異性化プロセスの下流に溶剤脱ロウ工程も包含し得る。水素化異性化による脱ロウにより生成した潤滑剤ベースオイルに残留する少量のワックス分子を除去するために溶剤脱ロウを採用してよい。溶剤脱ロウは、潤滑剤ベースオイルを溶剤中(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンあるいはトルエン)に溶解し、次いでワックス分子を沈殿することにより実施される。このプロセスは、William GruseおよびDonald Stevens、Chemical Technology of Petroleum、第三版、McGraw−Hill、ニューヨーク、1960年、566〜570ページに記載されている。更に、溶剤脱ロウは米国特許4,477,333および3,775,288に開示されている。非常な高粘度指数および低流動点の潤滑剤ベースオイルを製造する溶剤脱ロウはU.S.S.N.10/684554(2003年10月14日出願)に開示されている。
【0060】
異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油の炭化水素組成
本発明に有用な異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の望ましい留分は、望ましい性状の組み合わせを得るために選択される。このような性状の例として、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超、およびトラクション係数が以下の式で求まる値未満:トラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001が挙げられる。ここで、トラクション係数測定中の動粘度は2〜50cStであり、Lnは“e”を底とする自然対数である。
【0061】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の不飽和化合物の濃度は極めて低い。オレフィン濃度はC13核磁気共鳴分光分析(NMR)による長時間測定でも検出可能レベルよりは低い。芳香族濃度は0.30重量%未満である(HPLC−UV)による分析)。好ましい実施態様では、芳香族濃度は0.10重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満である。
【0062】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の飽和化合物濃度は99重量%を超える。伝統的には、鉱油に存在する異なった飽和炭化水素の中でパラフィン類はシクロパラフィン類よりも酸化に対して安定していると考えられており、それ故より望ましい。ベースオイル中の芳香族濃度が1%未満の場合、酸化安定性を更に高める最も効果的な方法は粘度指数を高めることである。実質的にパラフィンワックス原料から生成する本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度は極めて低いので(典型的には0.30重量%未満)、オイル中のマルチシクロパラフィン類濃度が低下するに従いそれの粘度指数および酸化安定性も高くなることが観察されている。
【0063】
しかしながら、潤滑剤ベースオイル中の全シクロパラフィン濃度が非常に低い場合には、添加剤の溶解度は低く、また弾性体に対する親和性も低くなる。このような性状を有するベースオイルの例として、ポリアルファオレフィン類およびシクロパラフィン濃度が5%未満のフィッシャー・トロプッシュ留出油のベースオイルが挙げられる。最終潤滑剤製品でのこれらの性状を改善するために、しばしば例えばエステルのような高価な共溶媒を添加しなければならない。高濃度のモノシクロパラフィン類と低濃度のマルチシクロパラフィン類のバランスを有する本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は良好な添加剤溶解度と弾性体に対する親和性を示すと共に高い酸化安定性も示す。
【0064】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分での飽和化合物の組成(n−パラッフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィン)はフィールドイオン化質量分光分析(FIMS)によって決定する。FIMSスペクトラはVG70VSE質量分光分析器により得た。試料は固体プローブによって導入した。同プローブを50°C/分の昇温速度で約40°Cから500°Cまで加熱した。同質量分光分析器をm/z40からm/z1000まで5秒/ディケードの割合で走査した。得られた質量スペクトルを合計して一個の「平均的な」スペクトルを作成した。各スペクトルをPC−MassSpecのソフトウエアを使用してC13で補正した。ほぼ純粋な分岐状パラフィンと高度にナフテン系で芳香族を含有していない原料のブレンドを用いてFIMSイオン化効率を求めた。これらベースオイル中の各種飽和化合物のイオン化効率は大きくは異なっていないことを確認した。それに対して、N−パラフィンは分岐状パラフィンやシクロパラフィンに比べて相当低い(50%程度低い)イオン化効率を示した。幸いなことに、分岐状パラフィンやシクロパラフィンは、本発明のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分中の飽和化合物の99.9%超の割合を占めている。本発明のプロセスを使用しないで製造されたオイルはN−パラフィンを上よりは相当高い割合で含有する可能性があり、それ故FIMS分析結果を解釈する場合にはN−パラフィンのより低いイオン化効率を考慮に入れなければならないかもしれない。
【0065】
低濃度の芳香族化合物の測定のために用いられるHPLC−UV法および飽和化合物の特徴付けのために用いられるFIMS法はD.C.Kramer他が述べており(Influence Group II&III Base Oil Composition on VI and Oxidation Stability、AIChE Spring National Meeting、ヒューストン、3月16日、1999年)、その内容は全面的に本明細書に引用されている。
【0066】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、個々のパラフィン類および異なった数の環を有するシクロパラフィン類を分析するFIMSによって特徴付けられる。モノシクロパラフィンは1個の環を有し、ジシクロパラフィンは2個の環を有し、トリシクロパラフィンは3個の環を有し、テトラシクロパラフィンは4個の環を有し、ペンタシクロパラフィンは5個の環を有し、ヘキサシクロパラフィンは6個の環を有している。本明細書では、2個以上のシクロパラフィン環を有する分子をマルチシクロパラフィンと称する。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、好ましくは5重量%超、より好ましくは10重量%超である。これらは、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超、好ましくは50超である。最も好ましい本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分はマルチシクロパラフィンを含有しない。
【0067】
本明細書で使用される「シクロパラフィン官能基、モノシクロパラフィン官能基あるいはマルチシクロパラフィン官能基含有分子の濃度」とは、少なくとも1個のシクロパラフィン官能基、少なくとも1個のモノシクロパラフィン官能基あるいは少なくとも1個のマルチシクロパラフィン官能基を含有する分子の濃度のことであり、これらは本明細書に開示されるFIMSによって測定される。
【0068】
本発明に使用されるワックス原料は実質的にオレフィン類を含有していないが、ベースオイル処理のプロセス技術を実施する過程でオレフィン類が「分解」反応により生成する可能性がある(特に高温度下で)。熱あるいは紫外線の存在下でオレフィン類はベースオイルの着色あるいは沈殿物の生成を起因するより高分子量留分に重合する可能性がある。一般的には、オレフィン類は本発明においてハイドロフィニッシングあるいはクレイ処理によって除去できる。オレフィン類はモノシクロパラフィンに関するFIMS分析結果に入り込む可能性があるので、これらを分析した。その結果、これらは本発明のオイル中に3重量%未満の濃度で存在し、これらを差し引いてもシクロパラフィン類は依然として望ましい範囲内の濃度で存在することを確認した。オレフィン濃度はASTM D2710に基づいてブロミン数を測定し、同ブロミン数からオレフィン濃度を計算することにより推定した。ブロミン数は実質的には1000で割ったブロミン指数である。ブロミン数は100gの試料オイルと反応するブロミンのグラム数であり、オイル中のオレフィン類およびジオレフィン類の相対量を示す。本発明者らが使用した重量%で表されるオレフィン濃度の計算は、オレフィンは分子当り1個の二重結合を有しており、Br1分子がオレフィン含有の1分子と反応するとの推定に基づいている。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のブロミン数は低く、一般的には0.50未満、好ましくは0.30未満である。更に、本発明者らはいくつかの本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分についてプロトン核磁気共鳴(H−NMR)分光分析を実施してオレフィン濃度を測定した。沸点範囲が1000°Fを超える試料については、本明細書ではD6352−03に基づく標準的な分析法あるいは同等の分析法により沸点範囲分布を測定した(本明細書に記載される実施例では、同方法をSIMDISと称している)。沸点範囲が1000°F未満の試料については、本明細書ではD2887−03に基づく標準的な分析法あるいは同等の分析法により沸点範囲分布を測定した。
【0069】
分岐性状
好ましくは、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は低トラクション係数と潤滑膜厚に貢献する分岐性状を有する。すなわち、これら同留分は好ましくは2〜12、より好ましくは3〜10の遊離炭素指数(FCI)を有し、また追加的に100炭素原子当り12個未満、好ましくは10個未満のアルキル基分岐を有する。
【0070】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の分岐性状は、以下の8ステップのプロセスからなるC13−NMR法により試料を分析することにより決定した。同プロセスの説明に引用された参照文献は同プロセス工程を詳述している。ステップ1および2は新規プロセスからの初期物質のみに関して実施される。
【0071】
1)DEPT パルス・シーケンス(Doddrell D.T.;D.T. Pegg;およびM.R.Bendall、Journal of Magnetic Resonance、1982年、48、323ff)を用いてCH分岐中心とCH3分岐末端点を同定する。
2)APTパルス・シーケンス(Patt、S.L.およびJ.N.Shooley、Journal of Magnetic Resonance、1982年、46、535ff)を用いてそこから複数の分岐(第四炭素)が開始する炭素の不存在を検証する。
3)異なった分岐の炭素の共鳴を、表示されまた計算された値を用いて特定の分岐位置および長さに割り当てる(Lindeman、L.P.、Journal of Qualitative Analytical Chemistry,43、1971年、1245ff;およびNetzel,D.A.他、
Fuel,60、1981年、307ff)。
例 NMR化学シフト(ppm)
分岐
2−メチル基 22.5
3−メチル基 19.1あるいは11.4
4−メチル基 14.0
4+−メチル基 19.6
内部エチル基 10.8
プロピル基 14.4
隣接メチル基 16.7
4)末端メチル基の炭素の積算強度を単独の炭素のそれと比較する(混合物中の分子当りの全積算値/炭素数)ことにより異なった炭素位置での分岐発生の相対的な頻度を定量する。ただし、末端メチル基と分岐メチル基が同一の共鳴位置に現れる2−メチル基は例外で、この場合は強度を半分にしてから分岐発生頻度計算を実施した。もし4−メチル基分岐部分を計算し表示するのであれば、重複計数を避けるためにそれの4+−メチル基への寄与を差し引かなければならない。
5)平均炭素数を計算する。試料の分子量を14(CHの分子量)で割ることにより潤滑剤物質での平均炭素数を十分な精度で決定できよう。
6)分子当りの分岐数はステップ4で求めた分岐数の合計値である。
7)100炭素原子当りのアルキル分岐数を、分子当りの分岐数(ステップ6で求めた)に100を掛けて平均炭素数で割ることにより計算する。
8)遊離炭素指数(FCI)を計算する。FCIは炭素単位で表される。末端メチル基あるいは分岐中の炭素を「1個」の炭素として計数するならば、FCI中の炭素種は直鎖末端メチル基あるいは分岐メチン炭素からの五級以上の炭素である。これらの炭素種は炭素−13スペクトルでの29.9〜29.6ppmの間に現れる。これらの炭素種は以下の手順で測定される:
a.ステップ5で求めたように、試料中の分子の平均炭素数を計算する。
b.全炭素13の積分面積(チャートの分割あるいは面積の計数により求める)をステップa.求めた平均炭素数で割ることにより試料中の積分面積を求める。
c.試料中の29.9〜29.6ppmの間の炭素の面積を測定する。
d.上記の面積をステップb.で求めた炭素当りの積分面積で割ることによりFCIを求める(EP1062306A1)。
【0072】
分岐測定はどのようなフーリエ変換NMR分光分析器によってでも実施できる。好ましくは、同測定は7.01テスラ以上の磁石を装備した分光分析器によって実施される。全ての場合において、芳香族炭素の不存在を質量分光分析、紫外線あるいはNMR分析によって検証した後、スペクトル幅を飽和炭素領域に限定した(約0〜800ppm(テトラメチルシラン、TMSの化学シフト基準)。クロロフォルム−d1中の15〜25重量%の溶液を45°のパルスで励起し、次いで0.8秒間の間データを収集した。不均一な強度データを最少化するために、パルス励起前の10秒間の遅延期間中およびデータ収集中にプロトン・デカップリング装置を停止した。全試験時間は11〜80分間であった。VarianあるいはBrukerの運転手順に記載される文献に基づいて(多少変更したが)DEPTおよびAPTシーケンスを実施した。
【0073】
DEPTはDistortionless Enhancement by Polarization Transfer(ゆがみがない分極化による強化移動)の略である。DEPTは四級炭素を測定できない。DEPT45のシーケンスはプロトンに結合している全ての炭素種のシグナルを与える。DEPT90のシーケンスはCH炭素種のみのシグナルを与える。DEPT135のシーケンスはCHおよびCHシグナルを上側に与え、CHシグナルは180°は位相がずれる(下側に現れる)。APTはAttached Proton Test(結合プロトン試験)の略である。これは全ての炭素種を測定できる(ただCHおよびCHシグナルは上側、次いで四級炭素種およびCHシグナルが下側に現れるのであれば)。これらのシーケンスは、全ての分岐メチル基は対応するCHを有しているという点で有用である。そして、メチル基は化学シフトと位相により明確に同定できる。これら両分析法は引用文献に記載されている。各試料の分岐性状は、同試料はイソパラフィンのみによって構成されていたとの前提下でC−13NMRにより測定された。N−パラフィンおよびシクロパラフィン(各々はオイル試料中に異なった濃度で存在していた可能性がある)に対する補正はなされなかった。シクロパラフィン濃度はフィールドイオン化質量分光分析(FIMS)により測定した。
【0074】
弾性流体(EHD)膜厚
ウオームギアは弾性流体潤滑領域で運転される。弾性流体潤滑は最も過酷な形式の潤滑であり、潤滑油は非常な高圧、極めて高いせん断歪速度あるいは非常に薄い潤滑膜で運転される機械装置内で2表面に分離すると予測される。このような特徴的な条件下では、これら両表面自身および潤滑剤に対して高度な特性が要求される。弾性流体潤滑をシミュレートするために、ボールとディスクからなる装置が使用できる。ウオームギアおよびその他の機械的装置では、金属−金属間の表面の接触を避けるために弾性流体(EHD)膜の厚は十分な最小厚を有することが望ましい。
【0075】
弾性流体(EHD)膜厚試験法
膜厚データはEHL Ultra Thin Film Measurement System(PCS Instruments,LTD)を使用して収集した。測定は40、70、100および120°Cの温度下で実施した。同測定装置は、磨かれた19mm直径のボール(SAE AISI52100鋼)と平坦なガラス製ディスクを装備しており、同ボールは同ディスク上を自由に回転でき、また同ディスクは透明なシリカ製のスペーサー層(約500nm厚)と半反射性のクロム層によりコーティングされている。ボール/ディスクにかかる負荷は20Nであり、これにより平均接触応力0.333GPaと最大接触応力0.500GPaが発生すると推定される。同ガラス製ディスクは0.1〜3m/秒の速度、同鋼ボールに対する滑り率0%で回転させた。膜厚測定は超薄膜干渉計を用いて白色下で実施した。同光学的膜厚値は、通常型のアッベ屈折計を用いて各温度で測定した屈折率を用いて実際の膜厚に換算した。その結果は、膜厚の対数値と動粘度(cSt)の関係の線形フィッティングによりエントレインメント速度3m/秒での値で報告した。
【0076】
各オイル試料のEHD膜厚データを各温度(40、70、100および120°C)での対応する動粘度に対してプロットした。例えば、40°Cでのオイルの動粘度(x軸)を同一温度でのEHD膜厚(ナノメートル、y軸)に対してプロットした、等々。動粘度情報は一般的には40および100°Cでの値しか得られないので、これらの温度でのデータを用いてよく知られたWalther式[Log10(Log10(vis+0.6))=a−c*Log10(温度、K)]によりその他の温度での値を推定した。Walther式は40および100°C以外の温度での粘度を推定するために最も広く使用されている式であり、ASTM D341の粘度−温度チャートはこれに基づいている。
【0077】
EHD膜厚は潤滑剤ベースオイルの化学性状によって変化する。石油系グループIIのベースオイルは一般的には石油系グループIのベースオイルに比べて厚いEHD膜を示す。また、石油系グループIのベースオイルはPAO系ベースオイルに比べて厚いEHD膜を示す。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分はPAOとほぼ同じ膜厚を示す。このことは、それの低いトラクション係数から見て驚くべきことである。
【0078】
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のEHD膜厚は動粘度15cStで測定した場合175ナノメートルよりは厚い。同EHD膜厚は以下の式:EHD膜厚(ナノメートル)=10.5×動粘度(cSt)+20で求まる値よりは厚い。ここで、本明細書内に記載される測定システムにより測定したEHD膜厚測定中の動粘度は2〜50cStである。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の最小EHD膜厚を与える同式のチャートを図4に示している。
【0079】
異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油の他の性状
動粘度
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の動粘度は広範囲に変化する。すなわち、100°Cでのそれは2cStを超え30cSt未満である。好ましくは、100°Cでの動粘度は3cStを超え10cSt未満である。動粘度はASTM D445−03により測定され、センチストークス(cSt)の単位で報告される。同留分の100°Cでの動粘度はトラクション係数が低いPAOの動粘度(約150〜1,000cSt)に比べて遥かに低いことは注目される。同留分の望ましい粘度範囲から見て、広範囲にわたる適用分野においてそれらはそのままあるいは他のベースオイルとブレンドされて使用される。
【0080】
粘度指数
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の粘度指数は非常に高く130を超える。同留分の粘度指数は以下の式:粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95で求まる値よりも高いことが好ましい。粘度指数はASTM D2270−93(1998年)により測定される。
【0081】
ノアック揮発度
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のノアック揮発度は低い。同留分のノアック揮発度は以下の式:ノアック揮発度=1000×(100°Cでの動粘度)−2.7で求まる値よりも低いことが好ましい。ここで、同式は指数関数である。ノアック揮発度はTGA Noack、ASTM D6375−99aにより測定される。
【0082】
ベースオイル流動因子
本発明の好ましい実施態様の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、流動点(°C)の100°Cでの動粘度(cSt)に対する比が同オイルのベースオイル流動因子(Base Oil Pour Factor,BOPF)よりも高い。ベースオイル流動因子(BOPF)はオイルの動粘度の関数であり、下式で計算される:BOPF=7.35×Ln(100°Cでの動粘度)−18。ここで、Ln(動粘度)は“e”を底とする100°Cでの動粘度(cSt)の自然対数である。流動点の測定法はASTM D5950−02に規定されている。流動点は1°刻みで測定される。上式を図5にプロットしている。
【0083】
ウオームギア・ドライブを高エネルギー効率で運転する方法
ウオームギアは、ギア潤滑剤を保持するように設計されたリザーバに適切にフォーミュレートされたウオームギア用潤滑剤を満たすことによって運転される。ウオームギアは一般的にギア・ハウジング内に密封されている。ウオームギアの潤滑のためにオイル飛沫の注油が最も普通の方法であるが、ポンプによりあるいは加圧下での注油システムを採用してよい。オイル・リザーバに潤滑剤を適切なレベルにまで満たし、この状態を維持しておくことが肝要である。ウオームギアが新品の場合には、長期運転に入る前に典型的な負荷の半分の負荷で運転を開始すべきである。使用済み潤滑剤を交換する場合には、それを抜き出してから新たな潤滑剤を入れる。好ましくは、ウオームギアをフラッシング処理し同流体を排液して磨耗性の汚染物を除去し、また新品のオイル・フィルタを設置すべきである。本発明による低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を含有するウオームギア潤滑剤をオイル・リザーバに満たすことによりエネルギー節減効果は向上しよう(交換される使用済み潤滑剤が通常型のPAO系のものであった場合でも)。交換される使用済み潤滑剤が通常型の石油系ベースオイルで構成される場合には更に大きなエネルギー節減効果が得られよう。
【0084】
オイル・リザーバがウオームギア潤滑剤で満たされた後、オイル・リザーバ内の潤滑剤が20〜225°Cの範囲内の平衡温度に達するまでウオームギア・ドライブを運転する。リザーバ内の平衡温度は定期的にモニターされ、安全運転範囲内に維持されていなければならない。必要であれば、潤滑剤リザーバを冷却するために熱交換器を設置してよい。好ましくは、同平衡温度は20〜150°Cの範囲内に維持される。
【0085】
より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数を低下するプロセス
本発明者らは、より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルをより低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分とブレンドすることにより前者のトラクション係数を低下するプロセスを見出した。より低いトラクション係数を有する同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は0.023未満のトラクション係数を有する(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)。同ブレンド製品はより高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルよりも低いトラクション係数を有する。同プロセスにより、石油系グループIのベースオイルよりも低いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのブレンドが生成しよう(石油系グループIIのベースオイルとブレンドされた場合ですら)。低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のより高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルに対する適切な比率は95/5〜5/95の範囲内にあり、好ましくは1/9〜9/1の範囲内にある。
【0086】
本明細書では、「より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイル」とは0・024を超えるトラクション係数(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)を有するベースオイルのことである。より具体的には、同トラクション係数はトラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)の式で求まるトラクション係数よりも高いトラクション係数を有する。ここで動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される。
【0087】
本明細書では、「より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分」とは0・023未満のトラクション係数(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)を有するベースオイルのことである。より具体的には、同トラクション係数はトラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001の式で求まるトラクション係数よりも低いトラクション係数を有する。ここで動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される。
【0088】
同ベースオイル・ブレンドは、トラクション係数=0.013×Ln(潤滑剤ベースオイル・ブレンドの動粘度、cSt)+0.001の式で求まる値よりは低いトラクション係数を有することになろう。ここで動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される。
【0089】
同より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルは石油系ベースオイルかもしれないし合成ベースオイルかもしれない。これらの例として、石油系グループI、IIおよびIIIのベースオイル、ポリオレフィン、ポリ内部オレフィンおよびこれらの混合物が挙げられる。本発明が開発される以前では、既知のベースオイルで最も低いトラクション係数を有するオイルは超高粘度のポリオレフィン系のものであった。トラクション係数の改善のために、通常型あるいは超高粘度のポリオレフィン系のベースオイルの代わりに異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分をブレンドすることにより潤滑剤ベースオイル・ブレンドは将来相当低下したコストで製造可能となろう。異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を石油系グループIIのベースオイル(最も高いトラクション係数を有する)とブレンドすることにより、最も高い経済効果が達成される。
【0090】
ブレンドに用いられる好ましい低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、芳香族濃度が0.30重量%未満、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、そしてモノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超を有する。低トラクション係数の同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は好ましくは2〜12、より好ましくは3〜10の遊離炭素指数(FCI)を有し、また追加的に100炭素原子当り12個未満、好ましくは10個未満のアルキル基分岐を有する。好ましい実施態様での低トラクション係数の同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、2cStを超え30cSt未満、好ましくは3cStを超え10cSt未満の動粘度を有し、また130を超える粘度指数、好ましくは粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95の式で求まる値よりも高い粘度指数を有する。
【0091】
ウオームギア潤滑剤組成物
本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は多くの種類の装置用の最終潤滑剤製品の製造のために有用である。これらの装置の例としてエンジン、工業用ギアボックス、車両用ギア、水力装置、圧縮機、ポンプ、タービンおよびショック・アブゾーバーが挙げられるが、これらに限定されない。このような潤滑剤の使用により、トラクションに起因するエネルギー損失を大幅に低減でき、これが装置の改善された運転、高エネルギー効率、部品の磨耗の低下、潤滑剤の寿命の延長につながる。更に、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は平衡温度を低下し鋼製ギアのマイクロピッティングを減少する。低トラクション係数で望ましいEHD膜厚を与える本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分はウオームギア潤滑剤にブレンドする場合に特に有用である。ウオームギアは低〜中程度の負荷で運転され、そこには境界潤滑が全くあるいはほとんど存在しない。
【0092】
本発明のウオームギア潤滑剤は一般的にはa)低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分とb)2〜50重量%の増粘剤を含有する。好ましくは、同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数は0.023未満である(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)。また、同ウオームギア潤滑剤の粘度はISO68〜680の範囲内であろう。このような比較的高ISO粘度範囲を達成するために、増粘剤を全留分当り2〜50重量%、好ましくは5〜30重量%添加する。増粘剤の例として、ポリイソブチレン、高分子量の複合エステル、ブチルゴム、オレフィン共重合体、スチレン/ジエン重合体、ポリメタクリレート、スチレンエステルおよび超高粘度のPAOが挙げられる。好ましくは、同増粘剤は100°Cでの動粘度が1,000〜10,000cSt、より好ましくは2,000〜8,000cStを有するポリイソブチレンあるいは高分子量の複合エステルである。本発明の組成物に有用な高分子量の複合エステルの例としてPriolube(R)3986が挙げられる。増粘と同時にトラクション係数の低下を達成するために超高粘度のPAOもフォーミュレーションに使用可能である。本明細書では、「超高粘度のPAO」は100°Cで約150〜1,000cStあるいはそれを超える動粘度を有する。
【0093】
同ウオームギア潤滑剤は異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分以外のベースオイルを含有してもよい。この結果のウオームギア潤滑剤は依然として優れたトラクション係数を有することになろう。このような追加的なベースオイルは以下に示すものの一つであってよい:通常型のPAO、アルキル化ナフタレン、ポリ内部オレフィン(PIO)、石油系グループI、IIおよびIIIのベースオイル、ならびにこれらの混合物。好ましいアルキル化ナフタレンの例としてSynessticTM ANのブレンドストックが挙げられる。ポリ内部オレフィン系ベースオイルは内部オレフィンから製造される合成潤滑剤ベースオイルである。ATIEL Code of Practice、発行番号9(2003年6月)はポリ内部オレフィン系ベースオイルをグループVIのベースオイルに分類している。好ましい実施態様のウオームギア潤滑剤は、ポリイソブチレン、高分子量の複合エステル、超高粘度のPAOおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる増粘剤と前述した追加的なベースオイルを含有する。
【0094】
SynessticTMはExxonMobil Chemicalの商標であり、Priolube(R)はUniqemaTMの登録商標であり、UniqemaTMはICIグループの商標である。
【0095】
同ウオームギア潤滑剤製造のために異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分にブレンド可能な他の添加剤として同組成物のある種の性状の向上を意図したものが挙げられる。典型的な添加剤の例として、磨耗防止剤、EP(極圧)剤、酸化防止剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、乳化破壊剤、消泡剤、腐食防止剤、防錆剤、シール膨潤剤、乳化剤、湿潤剤、潤滑向上剤、金属不活性化剤、ゲル化剤、粘着剤、殺菌剤、流体損失軽減剤、着色剤などが挙げられる。EP剤が使用される場合には、これらがウオームギア内の青銅金属に悪影響を及ぼさないように注意深く選択されなければならない。典型的には、これらはベースオイルおよび増粘剤を除くウオームギア潤滑剤に対して合計で10重量%未満、好ましくは5重量%未満の濃度で添加される。好ましくは、同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は全組成物当り10〜93重量%を占める。
【0096】
好ましい実施態様では、同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度は0.30重量%未満、より好ましくは0.10重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満である。また、同留分は、シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超、より好ましくは10重量%超;モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超、より好ましくは50超である。更に、同留分は、高い粘度指数、一般的には130を超え、好ましくは以下の式:粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95で求まる値よりも高い粘度指数を有する。
【0097】
好ましい実施態様では、本発明のウオームギア潤滑剤のASTM D1500により測定される色度が2.0未満、好ましくは1.0未満である。更に、同潤滑剤は蒸留水を使用するASTM D665の錆試験を合格し;ASTM D892のシーケンスI発泡試験により測定される低発泡傾向と安定性を有し;ASTM D1401により測定される82°Cでの30分後のエマルジョンが5mL未満である。
【0098】
潤滑剤添加剤の供給者は、ウオームギア潤滑剤製造のための潤滑剤ベースオイルにブレンドされる個々の添加剤あるいは添加剤パッケージの有効濃度に関する情報を提供しよう。しかしながら、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は優れた性状を有しているので、最終製品に要求される仕様値を満足させるための添加剤量は他のプロセスにより与えられるベースオイルに比べて低減できよう。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の酸化安定性は高いので、最終潤滑剤製品はこれを含有することにより酸化防止剤の濃度を低下できよう。最終潤滑剤製品のフォーミュレーションにおける添加剤の使用は文献に詳しく説明されており、当業界の熟練者の能力範囲内にある。それ故、本明細書で上記以上の説明は必要ではないであろう。
【0099】
本発明のブレンドされた潤滑剤およびブレンドされた潤滑剤最終製品に使用される異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は、同ブレンドされた潤滑剤の構成成分が受け入れられブレンドされる場所とは異なる場所で製造してよい。更に、本発明のブレンドされた潤滑剤最終製品は、同ブレンドされた潤滑剤の構成成分が受け入れられブレンドされる場所とは異なる場所で製造してよい。好ましくは、同ブレンドされた潤滑剤およびブレンドされた潤滑剤最終製品は同一場所で製造する。同場所は同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分が元々製造された場所とは異なる。従って、同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は第一の場所で製造され、次いで離れた第二の場所まで輸送される。同第二の場所は、同異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分、その他の全ての潤滑剤ベースオイルおよび添加剤を受け取り、そこでブレンドされた潤滑剤最終製品が製造される。
【実施例】
【0100】
以下の実施例により本発明を更に明確に説明するが、これらは本発明の範囲を制限すると考えるべきではない。
【0101】
フィッシャー・トロプッシュ・ワックス
Fe系のフィッシャー・トロプッシュ合成触媒(WAXA)の存在下で合成した1種類の水素化フィッシャー・トロプッシュ・ワックス試料とCo系のフィッシャー・トロプッシュ・ワックス合成触媒(WAXBおよびWAXC)の存在下で合成した2種類の水素化フィッシャー・トロプッシュ・ワックス試料を分析した。これらの性状を表Iに示している。
【0102】
【表1】

【0103】
上記フィッシャー・トロプッシュ・ワックス原料は、アルミナ担体に保持されたPt/SAPO−11触媒の存在下で水素化異性化処理された。同処理条件は温度:652〜695°F(344〜368°C)、LHSV:0.6〜1.0、反応器内圧力:1000psig、および一回通過水素流量:6〜7MSCF/bblであった。反応器流出物は第二反応器に直接的に送られた。同反応器も1000psigの圧力下で運転され、ハイドロフィニッシング用のシリカ−アルミナ担体に保持されたPt/Pd触媒が充填されていた。同処理条件は温度:450°FおよびLHSV:0.5〜2.0であった。
【0104】
600°Fを超える温度で沸騰する留分は常圧あるいは減圧蒸留により分別して、異なった粘度グレードの留出油留分を製造した。本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分に有用な特定の留出油留分のデータを以下の実施例で記載する。
【0105】
異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分
5種類の異なった異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を表IIに示す動粘度範囲にわたって生成した。
【0106】
【表2−1】


【表2−2】

【0107】
FT−2.6、FT−4.1、FT−4.5、FT−6.3およびFT−8は非常に低いトラクション係数、低芳香族濃度および望ましいシクロパラフィン組成を有する本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の例である。更に、これらの留分例は良好なEHD膜厚と望ましい分岐性状も有する。これら留分例のEHD膜厚は、EHD膜厚(ナノメートル)=10.5×動粘度(cSt)+20の式で求まる値よりも大きい。ここで、EHD膜厚測定中の動粘度は2〜50cStであった。
【0108】
100°Cで測定された動粘度が約4.3cStの異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を4種類調製した。Co系触媒の存在下で水素化されたフィッシャー・トロプッシュ・ワックスを異性化脱ロウ処理により調製した。同異性化脱ロウ処理はPt/SAPO−11触媒の存在下で以下の条件下で実施された;全圧:290psig、LHSV:0.5〜2.0、温度:660〜700°F、および再循環H2流量:5.3MSCF/bbl。その後、同ワックスはPt−Pd/SiO2−Al2O3触媒の存在下で450°F、LHSV0.5〜2.0、および上記と同じ圧力およびH2流量の条件下でハイドロフィニッシング処理を受けた。FT−4.3Dは同一の触媒の存在下、以下の条件下でもう一度ハイドロフィニッシング処理を受けた;LHSV:0.5〜2.0、温度:450°F、圧力:1000psig、および一回通過H2流量:5MSCF/bbl。FT−4.3Cは、圧力が500psigであったことを除いて上記と同じ条件下で2度目の処理を受けた。これら4種類の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の性状を表IIIに示している。
【0109】
【表3】

【0110】
FT−4.3CおよびFT−4.3Dは両方とも例外的に低いトラクション係数を有し、また高い粘度指数を有していたと観察された。これらの粘度指数は、粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95の式で求まる値よりも20ポイント以上高かった。更に、これらの分岐性状は遊離炭素指数3〜10と好ましい範囲内にあり、また100炭素数当りのアルキル分岐数は10未満である。
【0111】
比較用ベースオイルのトラクション係数
4種類の異なった比較用ベースオイルのトラクション係数を異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分と同じ方法により試験した。これらの4種類の異なった比較用ベースオイルは、石油系グループIのベースオイル、石油系グループIIのベースオイル、石油系グループIIIのベースオイルおよび通常型のポリアルファオレフィン(PAO)系ベースオイルであった。石油系グループIのベースオイルとして、EXXON 100SN、EXXON 330SNおよびEXXON 500SNが使用された。石油系グループIIのベースオイルとしてChevronTexaco 100R、ChevronTexaco 220R、ChevronTexaco 240R、ChevronTexaco 500RおよびChevronTexaco 600Rが使用された。石油系グループIIIのベースオイルとしてPetroCanada VHV14、PetroCanada VHV16、NEXBASETM3034、NEXBASETM3060、ChevronTexaco 4R、ChevronTexaco 6R、BP HC−4、BP HC−6、YUBASETM−4およびYUBASETM−6が使用された。通常型のPAO系ベースオイルの100°Cでの動粘度は150cSt未満であった。試験された通常型のPAO系ベースオイルはCP Chem Synfluid(R)PAO 2CST、CP Chem Synfluid(R)4CST、CP Chem Synfluid(R)6CST、CP Chem Synfluid(R)7CST、およびCP Chem Synfluid(R)8CSTであった。
【0112】
NEXBASETMはFortum Base Oilsの登録商標、YABASETMはSK Corporationの登録商標、そしてSynfluid(R)はChevronPhillips Chemical Companyの登録商標である。
【0113】
石油系グループIIのベースオイルのトラクション係数を近似する式はトラクション係数=0.012×Ln(VIS)+0.0084であり、ここでVISは測定中の動粘度(cSt)である。 石油系グループIのベースオイルのトラクション係数を近似する式はトラクション係数=0.013×Ln(VIS)+0.001であり、ここでVISは動粘度(cSt)である。 石油系グループIIIのベースオイルのトラクション係数を近似する式はトラクション係数=0.0107×Ln(VIS)−0.0027である。100°Cでの動粘度が約150cSt未満の通常型PAO系ベースオイルのトラクション係数を近似する式はトラクション係数=0.009×Ln(VIS)−0.001である。各式でのVIS値は試験温度および試験オイルの粘度指数によって変化する。これらトラクション係数式でのVIS範囲は2〜50cStである。試験された比較用ベースオイルに関するこれらの異なった式のプロット図を図1に示している。
【0114】
比較用ベースオイルのEHD膜厚
異なった3種類の比較用ベースオイルのEHD膜厚を求めるための試験を実施した。試験された比較用ベースオイルは、石油系グループIIのベースオイル、石油系グループIのベースオイルおよびPAO系ベースオイルの3種類であった。石油系グループIIIのベースオイルが使用されなかった点を除いて、トラクション係数を求めるための試験と同じ比較用ベースオイルを使用した。これら3種類の異なった比較用ベースオイルのEHD膜厚に関するチャートを図3に示している。
【0115】
フィッシャー・トロプッシュ留出油留分と石油系ベースオイルのブレンド
表IIに示すより低いトラクション係数を有するフィッシャー・トロプッシュ留出油留分例FT−2をより高いトラクション係数を有する石油系潤滑剤ベースオイルとブレンドして4種類のブレンドを調製した。2種類のブレンドにはEXXON Europe Heavy Neutral Group IのベースオイルであるEXXON 500SNを用いた。1種類のブレンドにはChevronTexaco 220R Medium Neutral Group IIのベースオイルを用い、残りの1種類のブレンドにはChevronTexaco 600R Heavy Neutral Group IIのベースオイルを用いた。これらブレンドでのより低いトラクション係数を有するフィッシャー・トロプッシュ留出油留分FT−2.6の濃度は全ブレンド当り45〜70重量%の範囲内に変化させた。これらブレンドのトラクション係数は元のより高いトラクション係数を有する石油系潤滑剤ベースオイルに比べて低く、ブレンドによりトラクション係数を低下させる経済的効果をもたらした。大半のケースでは、ブレンドのトラクション係数はグループIのベースオイルの典型的な値よりも低かった。このことは、石油系グループIIのベースオイルが特に高いトラクション係数を有する点から見て驚くべき結果である。グループIのベースオイルのトラクション係数を表す式はトラクション係数=0.013×Ln(VIS)+0.0006であり、ここでVISは2〜50cStの動粘度である。FT−2.6のベースオイルを石油系潤滑剤ベースオイルに添加することによりトラクション係数を低下する経済的効果が達成された。2cStを超え30cSt未満の動粘度を有する本発明のより低いトラクション係数のフィッシャー・トロプッシュ留出油留分を含有するブレンドおよび最終潤滑剤製品の燃費、摩擦起因の熱損失およびエネルギー効率は、石油系ベースオイルのみからなるブレンドおよび最終潤滑剤製品に比べて遥かに改善することが期待される。
【0116】
本明細書内に引用されている、出版物、特許文献および特許出願文献は、これらの個々の出版物、特許文献および特許出願文献の各々での開示が全面的に参照されたのと同程度に全面的に本明細書内に示されている。
【0117】
当業界の熟練者は本明細書内に開示される説明のための実施例を容易に変更することができよう。従って、本発明はここに記載される特許請求の範囲の範囲内に入る全ての構造および方法を包含すると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】4種類の比較用ベースオイルに関して動粘度(cSt)に対してトラクション係数をプロットした図である。
【図2】本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分でのトラクション係数の関連線分である。
【図3】3種類の比較用ベースオイルに関して動粘度(cSt)に対して弾性流体(Elastohydrodynamic、EHD)膜厚(ナノメートル)をプロットした図である。
【図4】本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分でのEHD膜厚の関連線分である。
【図5】好ましい実施態様での、本発明の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の流動点(°C)と100°Cでの動粘度(cSt)との関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを包含する高エネルギー効率でウオームギア・ドライブを運転する方法:
a.オイル・リザーバに低トラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を含有するウオームギア用潤滑剤を充たす、そして
b.潤滑剤で充たされた同オイル・リザーバを有するウオームギアを同オイル・リザーバ内温度が20〜225°Cの範囲内の平衡オイル温度下で運転する。
【請求項2】
該平衡オイル温度が20〜150°Cの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
使用済みの潤滑剤を該オイル・リザーバから抜き出した後に新たな潤滑剤を充たすことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
該トラクション係数が0.023未満(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
該トラクション係数はトラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001の式で求まるトラクション係数よりも低いことを特徴とする請求項4記載の方法(ここで動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される)。
【請求項6】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度が0.30重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度が0.10重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のシクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超であり、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のシクロパラフィン官能基含有分子の濃度が5重量%超であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のシクロパラフィン官能基含有分子の濃度が10重量%超であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
該比率が50超であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の100°Cでの動粘度が2cStを超え30cSt未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の100°Cでの動粘度が3cStを超え10cSt未満であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の流動点(°C)/100°Cでの動粘度(cSt)の比率が下式で求まるベースオイル流動点因子よりも高いことを特徴とする請求項1記載の方法:
ベースオイル流動点因子=7.35×Ln(100°Cでの動粘度)−18。
【請求項15】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の遊離炭素指数が2〜12であり、また追加的に100炭素原子当りのアルキル基分岐数が12個未満であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の遊離炭素指数が3〜10であり、また追加的に100炭素原子当りのアルキル基分岐数が10個未満であることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の弾性流体(EHD)膜厚が動粘度15cStで測定した場合175ナノメートルよりは厚いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項18】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の弾性流体(EHD)膜厚がEHD膜厚(ナノメートル)=10.5×動粘度(cSt)+20の式で求まる値よりは厚いことを特徴とする請求項17記載の方法(ここで、EHD膜厚測定中の動粘度は2〜50cStであり、これはエントレイン速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定する)。
【請求項19】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のノアック揮発度はノアック揮発度=1000×(100°Cでの動粘度)−2.7の式で求まる値よりも低いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項20】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の粘度指数は粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95の式で求まる値よりも高いことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
以下のステップを包含するより高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数を低下するプロセス:
a.より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を回収する、そして
b.同より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分を同より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルと適切な割合でブレンドして、同より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数よりも低いトラクション係数を有するブレンドを生成する。
【請求項22】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数が0.023未満(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)であることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数はトラクション係数=0.009×Ln(該より低いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルの動粘度、cSt)−0.001の式で求まるトラクション係数よりも低いことを特徴とする請求項22記載のプロセス(ここでトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される)。
【請求項24】
該潤滑剤ベースオイルのブレンドのトラクション係数はトラクション係数=0.013×Ln(該潤滑剤ベースオイルのブレンドの動粘度、cSt)+0.001の式で求まるトラクション係数よりも低いことを特徴とする請求項21記載のプロセス(ここで該潤滑剤ベースオイルのブレンドの動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、また同トラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される)。
【請求項25】
該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルはポリアルファオレフィン、ポリ内部オレフィン、石油系グループI、IIおよびIIIのベースオイル、ならびにこれらの混合物のからなる群から選ばれることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項26】
該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルは石油系グループIIのベースオイルであることを特徴とする請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルの動粘度15cStで測定されたトラクション係数は0.024を超えることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項28】
該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数はトラクション係数=0.009×Ln(該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルの動粘度、cSt)の式で求まるトラクション係数よりも高いことを特徴とする請求項27記載のプロセス(ここで該より高いトラクション係数を有する潤滑剤ベースオイルのトラクション係数測定中の動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される)。
【請求項29】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度が0.30重量%未満であることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項30】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のシクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超であり、モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超であることを特徴とする請求項29記載のプロセス。
【請求項31】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の遊離炭素指数が3〜10であり、また追加的に100炭素原子当りのアルキル基分岐数が10個未満であることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項32】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の100°Cでの動粘度が2cStを超え30cSt未満であることを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項33】
該より低いトラクション係数を有する異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の粘度指数は粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95の式で求まる値よりも高いことを特徴とする請求項21記載のプロセス。
【請求項34】
以下の成分からなるウオームギア用潤滑剤:
a)低トラクション係数の異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分、および
b)2〜50重量%の増粘剤。
【請求項35】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数が0.023未満(動粘度15cStおよび滑り率40%の条件下で測定)であることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項36】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分のトラクション係数がトラクション係数=0.009×Ln(動粘度、cSt)−0.001の式で求まる値よりも低いことを特徴とする請求項35記載のウオームギア用潤滑剤(ここでトラクション係数測定中の動粘度は2〜50cStの範囲内にあり、またトラクション係数は平均回転速度3メートル/秒、滑り率40%および負荷20ニュートンの条件下で測定される)。
【請求項37】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分は全組成物当り10〜93重量%を占めることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項38】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の芳香族濃度が0.30重量%未満であることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項39】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の
a)シクロパラフィン官能基含有分子の濃度が3重量%超であり、および
b)モノシクロパラフィン官能基含有分子の重量%/マルチシクロパラフィンの官能基含有分子の重量%の比率が15超であることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項40】
該異性化フィッシャー・トロプッシュ留出油留分の粘度指数は粘度指数=28×Ln(100°Cでの動粘度)+95の式で求まる値よりも高いことを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項41】
通常型のPAO、アルキル化ナフタレン、ポリ内部オレフィン、石油系グループI、IIおよびIIIのベースオイル、ならびにこれらの混合物の群から選ばれるベースオイルを更に添加していることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項42】
該増粘剤がポリイソブチレン、高分子量の複合エステル、超高粘度のPAOおよびこれらの混合物の群から選ばれることを特徴とする請求項34記載のウオームギア用潤滑剤。
【請求項43】
通常型のPAO、アルキル化ナフタレン、ポリ内部オレフィン、石油系グループI、IIおよびIIIのベースオイル、ならびにこれらの混合物の群から選ばれるベースオイルを更に添加していることを特徴とする請求項42記載のウオームギア用潤滑剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534826(P2007−534826A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510731(P2007−510731)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/008842
【国際公開番号】WO2005/111178
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】