説明

エアコンプレッサおよびエアコンプレッサの使用方法

【課題】 エアコンプレッサの盗難を防止するのに有効な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 電動モータ111を用いて吸気を圧縮し吐出する圧縮部113と、該圧縮部113から吐出される圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵タンク115と、IDコード入力部117と、駆動スイッチ123とを有し、駆動スイッチ123は、前記IDコード入力部を介して作業者が入力したIDコードと、予め設定された設定IDコードとの照合結果に基づいて作動されることを特徴とするエアコンプレッサ101。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサの保安技術に関し、詳しくは作業者不在時においてもエアコンプレッサの盗難を防止するのに有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサは、例えばエア釘打機といったエア駆動式作業工具用の高圧エアの供給手段として作業現場等で広く用いられている。ところでエアコンプレッサは一般に20Kgから30Kg程度の重量を有するので随時携行するのは困難であり、日数を要する作業に供する場合には常駐的に作業現場に置かれることが多い。
【0003】
かかるエアコンプレッサは、中古市場が比較的発達しているとともに、上述のように作業現場に常駐的に置かれることが多いため、作業者不在時の盗難の頻度が比較的高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、エアコンプレッサの盗難ないし不正使用を防止するのに有効な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明では、圧縮部と、圧縮気体貯蔵タンクと、IDコード入力部と、駆動スイッチとをするエアコンプレッサが提供される。圧縮部は、電動モータを用いて吸気を圧縮し吐出する。また圧縮気体貯蔵タンクは、圧縮部から吐出される圧縮気体を貯蔵する。
【0006】
駆動スイッチは、IDコード入力部を介して作業者が入力した入力IDコードと、予め設定された設定IDコードとの照合結果に基づいて作動される。典型的には、作業者が入力した入力IDコードが設定IDコードと合致した場合にのみ駆動スイッチがオンされ、入力IDコードが作業者によって入力されない場合、および入力されたものの設定IDコードと合致しない場合には、駆動スイッチのオフ状態を維持するといった制御を行うのが好ましい。
【0007】
本発明における「駆動スイッチ」としては、典型的にはエアコンプレッサの電源スイッチが該当する(オンされることによりエアコンプレッサを通電するスイッチ)。さらに駆動スイッチを、電動モータの駆動制御回路の通電スイッチ等によって構成しても良く、あるいは電動モータがインバータ駆動方式の場合には、駆動スイッチをインバータ・ドライバ回路の通電制御スイッチによって構成してもよい。
【0008】
本発明におけるIDコード入力部については、暗証番号打ち込みによる入力形式、あるいは磁気カード・ICカード・バーコード等を用いた読み込みによる入力形式などに適宜対応させることが可能である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、作業者による入力IDコードと予め設定された設定IDコードとの照合結果に基づいて駆動スイッチが作動されるため、作業者が正しいIDコードを入力しないとエアコンプレッサを駆動することができないという構成が設定可能である。従って作業者不在時のエアコンプレッサ盗難を防止し、あるいは意図しない不正な使用を防止するのに有効な技術が提供されることになる。
【0010】
(請求項2に記載の発明)
請求項1に記載のエアコンプレッサの入力IDコードにつき、作業者が携行可能なキーレスエントリー手段から無線によって入力する構成とするのが好ましい。このように構成すれば、作業者は入力IDコードを記憶に留めておく必要がなく、また煩瑣な入力作業から開放されることになるので、一層利便性が向上することになる。
【0011】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、電動モータを用いて吸気を圧縮し吐出する圧縮部と、該圧縮部から吐出される圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵タンクと、駆動スイッチとを有するエアコンプレッサの使用方法が提供される。特に、作業者によって入力されたIDコードと、予め設定された設定IDコードとの照合により、両者が合致することにより駆動スイッチが作動されるので、作業者が正しいIDコードを入力しないとエアコンプレッサを駆動することができないという使用方法が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作業者不在時のエアコンプレッサ盗難ないし不正使用を防止するのに有効な技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
本実施の形態に係るエアコンプレッサ101は、例えばエア釘打機といったエア駆動式作業工具用の高圧エアの供給手段として用いられ、図1に示すように、電動モータ111、圧縮部113、圧縮気体貯蔵タンク115を有している。
【0014】
圧縮部113は電動モータ111によって吸気を圧縮して吐出する。圧縮気体貯蔵タンク115は、圧縮部113から吐出される圧縮エアを貯蔵して作業工具に高圧エアを供給する。
【0015】
さらに本実施の形態に係るエアコンプレッサ101は、図2のシステムブロック図に示すように、CPU131、メモリ133、受信機117、スイッチ制御回路121および電源スイッチ123を有する。メモリ133は、ROMないしRAM等の記憶手段によって構成され、設定IDコードを格納するとともにCPU131に接続されている。
【0016】
受信機117は、CPU131に接続されるとともに、作業者が携帯するキーレスエントリ手段119から発せられる無線による入力IDコードを受信する。なお受信機117は、本発明におけるIDコード入力部に対応する要素である。
【0017】
スイッチ制御回路121は、CPU131および電源スイッチ123に接続されるとともに、IDコード照合作業結果に基づいて電源スイッチ123のオンオフ状態の切替えを制御する。電源スイッチ123がオンされた場合には、エアコンプレッサ101への通電が行われ、オフされた場合にはエアコンプレッサ101への通電が遮断される。この電源スイッチ123は、本発明における「駆動スイッチ」の典型例に相当する。
【0018】
次に本実施の形態の作用について説明する。
キーレスエントリ手段119を携行する作業者は、エアコンプレッサ101を使用するに際し、このキーレスエントリ手段119のIDコード発信ボタン(便宜上図示せず)を適宜操作し、エアコンプレッサ101の受信機117に向かってIDコードを無線で送信する。本実施の形態では、キーレスエントリ手段119を小型の無線発信機にて構成しているが、赤外線等を用いた発信機によって構成してもよい。一方、エアコンプレッサ101側では、受信機117が当該キーレスエントリ手段119が発信するIDコード信号を受信する。
【0019】
作業者が、キーレスエントリ手段119を用い、入力IDコードをエアコンプレッサ101側の受信機117に送信した場合の処理手順が図3に示される。
ステップS1において、受信機117が入力IDコードを受信したと判断した場合(S1でYESと判断した場合)、図2に示すCPU131は、ステップS2において、メモリ133から設定IDコードの読み込みを行う。なおステップS1で受信機117が入力IDコードを受信していないと判断される場合には、入力IDコードを受信したと判断されるまでステップS1の処理を繰り返す。
【0020】
設定IDコードの読み込みを行ったCPU131は、ステップS3において、受信機117によって受信された入力IDコードと、メモリ133に格納された(予め設定された)設定IDコードとが一致するか否かを照合判断する。なお入力IDコードないし設定IDコードの具体例として、16ビットのF123(1111000100100011)といった構成とするのが好ましい。
【0021】
ステップS3において、入力IDコードと設定IDコードとが一致すると判断される場合、ステップS4においてCPU131はID一致信号を出力し、このID一致信号をステップS5においてスイッチ制御回路121が受信する。一方、ステップS3において入力IDコードと設定IDコードとが一致しないと判断される場合、ステップS1へ処理が戻される。換言すれば、「鍵」に相当する入力IDコードが、「鍵穴」に相当する設定IDコードに合致しない限り、エアコンプレッサ101を作動させることができない構成とされている。
【0022】
さて、ID一致信号を受信したスイッチ制御回路121は、ステップS6において電源入力信号を出力し、ステップS7において電源スイッチ123が電源入力信号を受信する。電源スイッチ123は、受信した電源入力信号に基づきエアコンプレッサ101の電源スイッチ123をオンにする。これによりエアコンプレッサ101への通電が行われ、エアコンプレッサ101を使用することが可能になる。
【0023】
本実施の形態に係るエアコンプレッサ101では、作業者による入力IDコードと予め設定された設定IDコードとの照合結果に基づいてエアコンプレッサ101の電源スイッチ123が作動されるので、作業者が正しいIDコードを入力しないとエアコンプレッサ101を使用することができない。これにより作業者不在時のエアコンプレッサ盗難を防止し、あるいは意図しない不正な使用を防止するのに有効な技術が提供されることとなった。さらに本実施の形態では、IDコードの入力につき、作業者が携行可能なキーレスエントリー手段119から無線によって入力する構成としたため、作業者は入力IDコードをいちいち記憶に留めておく必要がなく、また煩瑣な入力作業を行う必要がないため利便性において優れる。
【0024】
本実施の形態では、ID一致信号の出力に基づいてエアコンプレッサ101の電源スイッチ123のオン・オフが制御されたが、これを電動モータ111の駆動制御回路のオン・オフ制御に代替してもよい。電動モータ111がインバータによって駆動される場合には、インバータ・ドライバ回路の駆動制御に代替してもよい。なお、単相インダクションと比較して機体重量の軽減が可能であり、低電圧時の起動特性が向上するといった利点により、インバータ駆動形式が採用される場合が多いので、この変更形態はとりわけ実用性が高い。いずれの場合であっても、正しいIDコードを入力しないとエアコンプレッサ101を実質的に運用することができないため、当該エアコンプレッサ101の不正使用を効果的に防止し、優れた防犯効果を奏することになる。
【0025】
また作業者によるIDコードの入力形態につき、上記した実施の形態では、キーレスエントリ手段119と、このキーレスエントリ手段119から無線によって発せられる入力IDコードを受信する受信機117とを用いて構成したが、これを適宜変更することが可能である。例えば、エアコンプレッサ101側にテンキーを設定し、当該テンキーを用いて作業者に暗証番号を入力させる形態(この場合には暗証番号が入力IDコードに対応する)、あるいはエアコンプレッサ101側に磁気カード・ICカードの読み取り機を設定し、これらのカードに記録されたIDコードを読み取らせる形態、あるいはエアコンプレッサ101側にバーコード読取機を設定し、作業者が示すバーコードを読み取ることによって入力IDコードを得る形態など、様々なIDコードの入力形態が採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係るエアコンプレッサの全体構成を示す。
【図2】本実施の形態に係るエアコンプレッサのシステムブロック図を示す。
【図3】本実施の形態における電源スイッチ入力の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
101 エアコンプレッサ
111 電動モータ
113 圧縮部
115 圧縮気体貯蔵タンク
117 受信機(IDコード入力部)
119 キーレスエントリ手段
121 スイッチ制御回路
123 電源スイッチ(駆動スイッチ)
131 CPU
133 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを用いて吸気を圧縮し吐出する圧縮部と、該圧縮部から吐出される圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵タンクと、IDコード入力部と、駆動スイッチとを有し、
前記駆動スイッチは、前記IDコード入力部を介して作業者が入力した入力IDコードと、予め設定された設定IDコードとの照合結果に基づいて作動されることを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアコンプレッサであって、
前記入力IDコードは、作業者が携行可能なキーレスエントリー手段から無線によって入力されることを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項3】
電動モータを用いて吸気を圧縮し吐出する圧縮部と、該圧縮部から吐出される圧縮気体を貯蔵する圧縮気体貯蔵タンクと、駆動スイッチとを有するエアコンプレッサの使用方法であって、
作業者がIDコードを入力するステップと、
入力された前記IDコードと、予め設定された設定IDコードとの照合を行うステップと、
入力された前記IDコードと設定IDコードとが合致することにより前記駆動スイッチを作動するステップとを有することを特徴とするエアコンプレッサの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−157255(P2008−157255A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33401(P2008−33401)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願2002−50501(P2002−50501)の分割
【原出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】