説明

エアゾール組成物

【課題】特定量の油溶性有効成分を特定量の親油性液化ガスを含有する油相中に溶解し、水相とエマルジョンを形成することにより、人体に塗布すると有効成分が均一に付着して、有効成分の効果を最大限に発揮することができるエアゾール組成物を提供すること。
【解決手段】親油性液化ガスと有効成分とを含有する油相と、水相とがエマルジョンを形成してなる人体用エアゾール組成物であって、該有効成分が、エアゾール組成物中1〜10重量%含有され、前記親油性液化ガスが、エアゾール組成物中35〜85重量%含有されてなる人体用エアゾール組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。さらに詳しくは、特定量の油溶性有効成分を特定量の親油性液化ガスを含有する油相中に溶解し、水相とエマルジョンを形成することにより、人体に塗布すると飛び散りが少なく有効成分を均一に付着することができ、有効成分の効果を最大限に発揮することができるエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人体、特に皮膚に使用するエアゾール組成物としては、液化石油ガスなどの液化ガスや窒素ガスなどの圧縮ガスを使用したスプレー、フォーム、ゲル、クリームなどがある。これらエアゾール組成物には目的に応じて有効成分を配合しているが、有効成分を多く配合しても、有効成分の効果が配合量に比例しないことが多い。
【0003】
たとえば、特許文献1および2には、紫外線を吸収して日焼けを防止する噴霧式の日焼け止め化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2627750号公報
【特許文献2】特開2004−224706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に記載のエアゾール組成物の場合、日焼け止め効果の指標としてSPF値が用いられているが、SPF値を高くするために紫外線吸収剤を多く配合してもSPF値は配合量に比例して高くならないという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明は、特定量の油溶性有効成分を特定量の親油性液化ガスを含有する油相中に溶解し、水相とエマルジョンを形成することにより、人体に塗布すると飛び散りが少なく有効成分を均一に付着させることができ、有効成分の効果を最大限に発揮することができるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエアゾール組成物は、親油性液化ガスと有効成分とを含有する油相と、水相とがエマルジョンを形成してなる人体用エアゾール組成物であって、
該有効成分が、エアゾール組成物中1〜10重量%含有され、
前記親油性液化ガスが、エアゾール組成物中35〜85重量%含有されてなる人体用エアゾール組成物である。
【0008】
前記有効成分と、前記親油性液化ガスとの割合が、有効成分/親油性液化ガス(重量比)=1/5〜1/30であることが好ましい。
【0009】
油性溶剤を、エアゾール組成物中0.1〜10重量%含有することが好ましい。
【0010】
前記有効成分が紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0011】
前記エアゾール組成物が油中水型エマルジョンであることが好ましい。
【0012】
前記油相の配合量がエアゾール組成物中40〜90重量%であり、前記水相の配合量がエアゾール組成物中10〜60重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエアゾール組成物によれば、人体に塗布すると飛び散りが少なく有効成分を均一に付着させることができ、有効成分の効果を最大限に発揮することができるエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のエアゾール組成物は、親油性液化ガスと有効成分とを含有する油相と、水相とがエマルジョンを形成してなる人体用エアゾール組成物であって、該有効成分が、エアゾール組成物中1〜10重量%含有され、前記親油性液化ガスが、エアゾール組成物中35〜85重量%含有されてなる人体用エアゾール組成物である。
【0015】
前記親油性液化ガスはエアゾール容器内では、油相中に溶解する有効成分(以下、油溶性有効成分)を溶解し、油相の主成分となり水相とエマルジョンを形成する。エアゾール組成物をエアゾール容器から外部に吐出すると親油性液化ガスは気化し始めるが、油相中に油溶性有効成分とともに溶解しており、さらに水相とエマルジョンを形成しているため吐出と同時に全量が気化せず、皮膚上に塗布した直後でも液化ガスの一部が吐出物中に残っており、その液化ガスの推進力で油相中に溶解していた油溶性有効成分が皮膚上で拡げられて均一に付着する。
【0016】
前記親油性液化ガスとしては、たとえば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガスなど、水の溶解度が1重量%以下である液化ガスがあげられる。
【0017】
前記親油性液化ガスの配合量は、エアゾール組成物中35〜85重量%であり、好ましくは40〜80重量%である。前記親油性液化ガスの配合量が35重量%よりも少ない場合は油溶性有効成分が均一に付着しにくく効果が不充分になりやすく、85重量%よりも多い場合は飛び散りが多くなって付着率が低下しやすく、有効成分の効果が不充分になりやすい。
【0018】
前記油溶性有効成分は、人体、特に皮膚に付着して効果を発揮するものであり、たとえば、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t一ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸などの紫外線吸収剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド(ディート)などの害虫忌避剤、α−トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、レチノール、dl−α−トコフェロールなどのビタミン類、グリチルレチン酸などの抗炎症剤、硝酸ミコナゾール、硝酸スルコナゾール、クロトリマゾールなどの抗真菌剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、l−メントール、カンフルなどの清涼化剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸メチルなどの消臭成分、香料など、油性溶剤または親油性液化ガスに溶解するものがあげられる。
【0019】
前記油溶性有効成分の配合量は、エアゾール組成物中1〜10重量%であることが好ましく、さらには2〜8重量%であることが好ましい。前記油溶性有効成分の配合量が1重量%よりも少ない場合は皮膚に付着する量が少なく、有効成分の効果が不充分になりやすく、10重量%よりも多い場合は均一に塗布しにくくなり、配合量に対する効果が不充分になる。
【0020】
前記油性溶剤は前記油溶性有効成分の溶媒、温度上昇に伴う親油性液化ガスの圧力上昇を抑制して安全性を高くする、使用感を向上させるなどの目的で用いられ、たとえば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロシキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルキシル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどのエステルオイル、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロペキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの炭化水素、ツバキ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、オレイン酸などの高級脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコールなどがあげられる。
【0021】
本発明のエアゾール組成物のように、エアゾール組成物が液化ガスを含むエマルジョンを形成する場合、温度上昇に伴う液化ガスの圧力上昇の影響を受けやすいためエアゾール組成物の圧力が高くなりやすいが、親油性液化ガスとの溶解性に優れ、温度が高くなってもエアゾール組成物の圧力上昇を抑制できる点から、シリコーンオイル、炭化水素、特に粘度が20cs以下であるメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサンなどの揮発性シリコーンや、ノルマルペンタン、イソペンタンなどの揮発性炭化水素を用いることが好ましい。
【0022】
また、油溶性有効成分として、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどのエステル構造を有する紫外線吸収剤を用いる場合は、紫外線吸収剤の溶解性および皮膚への付着性に優れ効果が得やすい点から、油性溶剤としてエステルオイルを用いる、あるいはエステルオイルを含有することが好ましく、特にジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ−2−エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコールなどの脂肪酸と2価アルコールのジエステルを用いることが好ましい。
【0023】
前記油性溶剤を配合する場合、配合量はエアゾール組成物中0.1〜10重量%であることが好ましく、さらには0.5〜8重量%であることが好ましい。前記油性溶剤の配合量が0.1重量%よりも少ない場合は油性溶剤の効果が不充分になりやすく、10重量%よりも多い場合は人体に付着したときの有効成分の濃度が薄くなり、有効成分の効果が不充分になる。
【0024】
なお、前記油溶性有効成分と親油性液化ガスの配合比は0.02〜0.2であることが好ましく、さらには0.025〜0.18であることが好ましい。配合比が0.2よりも大きい場合は有効成分が多い、または液化ガスが少なくなり、有効成分が均一に付着しにくく、有効成分の効果が充分に得られない。配合比が0.02よりも小さい場合は有効成分が少ない、または液化ガスが多くなり、有効成分の付着率が小さく、有効成分の効果が充分に得られない。
【0025】
前記油相には水相とエマルジョンを形成するために、親油性の界面活性剤を配合することができる。前記親油性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ(ジ・トリ・テトラ・ヘキサ・ペンタ・デカなど)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの脂肪酸エステル系非イオン性界面活性剤など、HLBが1〜10、好ましくは2〜9である非イオン性界面活性剤があげられる。特に、前記親油性界面活性剤の効果が高い点で、PEG−10ジメチコン、PEG−12ジメチコン、PEG/PPG−19/19ジメチコン、PEG/PPG−20/20ジメチコン、PEG/PPG−30/10ジメチコン、アルキルPEG/PPG−18/18メチコンなどのシリコーン系界面活性剤、モノオレイン酸ジグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノイソステアリン酸ジグリセリルなどのジグリセリン脂肪酸エステル、セスキオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0026】
親油性界面活性剤の配合量は、エアゾール組成物中0.05〜10重量%、さらには0.1〜8重量%であることが好ましい。親油性界面活性剤の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は、エマルジョンを形成しにくくなる傾向があり、10重量%よりも多い場合は皮膚上で残りやすく、有効成分の効果を阻害しやすくなる。
【0027】
前記油相は、油溶性有効成分を単独あるいは油溶性有効成分を油性溶媒および/または親油性界面活性剤と混合して油性原液を調製し、エアゾール容器内で親油性液化ガスに溶解することにより調製される。
【0028】
前記油相の配合量は、エアゾール組成物中40〜90重量%であることが好ましく、さらには45〜85重量%であることが好ましい。油相の配合量が40重量%よりも少ない場合は水相により油溶性有効成分の付着が阻害されやすく、90重量%よりも多い場合はエマルジョンの安定性が低下しやすく、油溶性有効成分が均一に付着しにくくなる。
【0029】
前記水相は、エアゾール容器内では前述の油相とエマルジョンを形成しているため、エアゾール組成物をエアゾール容器から外部に吐出したときに親油性液化ガスの全量が同時に気化することはなく、さらに、気化熱により吐出物そのものを冷却する。それにより残りの親油性液化ガスの気化を遅らせ、気化時間を調整する。その結果、親油性液化ガスの蒸気圧と気化時の容積膨張により、残りの油相を皮膚上で拡がりやすくする。さらに、水相は残りの油相と分離し、油相を親油性の皮膚表面に拡げて油溶性有効成分を均一に付着させる。また噴霧した粒子(以下、噴霧粒子径)の平均粒子径を10〜70μmにすることができ、腕や背中などの噴霧対象物上での飛び散りを抑えて付着率を高くすることができる。さらにエアゾール組成物の燃焼性を抑えて、安全性を高くする効果を有する。
【0030】
前記水相は、水に、親水性界面活性剤、水溶性高分子、水溶性有効成分、アルコール類などを配合することができる。
【0031】
前記水は水単独で用いてもよく、親水性界面活性剤などの水相の主溶媒として用いられ、たとえば、精製水、イオン交換水などがあげられる。前記水の配合量は、エアゾール組成物中8〜60重量%であることが好ましく、さらには10〜55重量%であることが好ましい。水の配合量が8重量%よりも少ない場合は安定なエマルジョンが得られにくく油溶性有効成分が均一に付着しにくくなる。60重量%よりも多い場合は油相が皮膚表面に均一に付着するのを阻害し、油溶性有効成分の効果が低下しやすくなる。
【0032】
前記親水性界面活性剤は油相とエマルジョンを形成する目的で用いられる。前記親水性界面活性剤としては、たとえば、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POEラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール、POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;などのHLBが10〜18、好ましくは11〜17であるものがあげられる。HLBが10よりも小さい場合はエマルジョンを形成しにくくなる傾向があり、HLBが18よりも大きい場合は泡立ちやすく有効成分が均一に付着しにくくなる。
【0033】
前記親水性界面活性剤の配合量は、エアゾール組成物中0.01〜5重量%、さらには0.05〜3重量%であることが好ましい。親水性界面活性剤の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は、エマルジョンを形成しにくくなる傾向があり、5重量%よりも多い場合は皮膚上で残りやすく、有効成分の効果を阻害しやすくなる。
【0034】
前記水溶性高分子は、水相の粘度を高くして油相とゲル乳化させるなどの目的で用いられる。
【0035】
前記水溶性高分子としては、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース類、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、グアガムなどのガム類、デキストリン、ペクチン、デンプン、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス−20)コポリマーなどのアクリル酸エステルなどがあげられる。
【0036】
前記水溶性高分子の配合量は、エアゾール組成物中0.01〜3重量%、さらには0.05〜2重量%であることが好ましい。水溶性高分子の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は前述の効果が得られにくく、3重量%よりも多い場合は水相の粘度が高くなりすぎ、液化ガスと混ざりにくくエマルジョンの形成が困難になる。
【0037】
なお、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸セテス−20)コポリマーなどの会合型高分子を用いる場合は水相のpHを調整するpH調整剤を用いることが好ましい。前記pH調整剤としては、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1、3−プロパンジオールなどの有機アルカリ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの無機アルカリなどがあげられ、これらpH調整剤を用いて水相のpHを6〜9に調整することにより、前記会合型高分子の疎水基の会合を促し、粘度を高くすることができる。
【0038】
前記水溶性有効成分は、油溶性有効成分の効果を補助する、あるいは油溶性有効成分とは異なる効果を得る、などの目的で用いることができる。
【0039】
前記水溶性有効成分としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl−ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素などの保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾールなどの殺菌消毒剤;ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのビタミン類、香料などがあげられる。
【0040】
前記水溶性有効成分の配合量は、エアゾール組成物中0.005〜5重量%、さらには0.01〜3重量%であることが好ましい。配合量が0.005重量%よりも少ない場合は水溶性有効成分の効果が得られにくく、5重量%よりも多い場合は油溶性有効成分の効果を阻害する可能性がある。
【0041】
前記アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分や界面活性剤などの溶媒として、水相の乾燥を調整して油溶性有効成分の効果を得られやすくするなどの目的で用いられ、たとえば、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素数が2〜3個の1価アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの炭素数が3〜5個の2〜3価のアルコール、などがあげられる。
【0042】
前記アルコール類の配合量は、エアゾール組成物中0.1〜12重量%、さらには0.5〜10重量%であることが好ましい。配合量が0.1重量%よりも少ない場合はアルコール類の効果が得られにくく、12重量%よりも多い場合はエマルジョンの安定性が低下しやすく、油溶性有効成分の効果が充分に得られにくくなる。
【0043】
前記水相は、界面活性剤、水溶性高分子、水溶性有効成分などをアルコール類や水に配合することにより調製することができる。前記水相の配合量は、エアゾール組成物中10〜60重量%であることが好ましく、さらには15〜55重量%であることが好ましい。水相の配合量が10重量%よりも少ない場合は安定なエマルジョンが得られにくく油溶性有効成分が均一に付着しにくくなる。60重量%よりも多い場合は油相が皮膚表面に均一に付着するのを阻害し、油溶性有効成分の効果が低下しやすくなる。
【0044】
さらに、本発明のエアゾール組成物は、前記油相と水相以外にも、パウダーを配合することができる。前記パウダーはエアゾール組成物中では分散しており、エマルジョンの安定性を良くする、皮膚に塗布されると紫外線を散乱させる紫外線散乱剤として作用したり、水や汗をはじき皮膚に長く付着して日焼けを長時間防止する、またべたつきを抑え使用感を良くするなどの効果を有する。
【0045】
前記パウダーとしては、たとえば、酸化亜鉛、酸化チタン、タルク、セリサイト、シリカ、(ポリエチレンテレフタレート/ポリメタクリル酸メチル)ラミネートなどの板状ポリマー、体質顔料(マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムなど)、着色顔料(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、カーボンブラックなど)、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンパウダーなどの高分子粉体などがあげられる。なお、本発明のエアゾール製品を日焼け止め用として用いる場合は、紫外線散乱効果が高い点から酸化亜鉛、酸化チタン、板状ポリマーを配合することが好ましい。特に層状構造になっている板状ポリマーはその形状から均一に塗布するのが難しいが、液化ガスの推進力により皮膚上で拡げられて均一に塗布しやすく、散乱効果が極めて高くなる。
【0046】
前記パウダーの配合量は、エアゾール組成物中0.1〜10重量%、さらには0.5〜8重量%であることが好ましい。配合量が0.1重量%よりも少ない場合は紫外線を散乱させる効果が弱く、日焼け防止効果が不充分になる。一方、10重量%よりも多い場合はパウダー濃度が高くなりすぎてバルブで詰まりやすくなり、また使用時にスパウトなどの吐出通路に付着したパウダーが乾燥して次回使用するときに塊となって吐出され、使用感が悪くなりやすい。
【0047】
本発明のエアゾール組成物は、水相と油溶性有効成分または油性原液を容器に充填し、容器にエアゾールバルブを取り付け、さらに液化ガスを充填して油相を形成するとともに水相とエマルジョンを形成することにより調整することができる。なお、予め水相と油溶性有効成分または油性原液をエマルジョン化してから液化ガスを充填してもよい。またパウダーを配合する場合は、予め容器に充填してもよく、パウダーが親水性である場合は水相中に、親油性である場合は油溶性有効成分または油性原液中に分散させてから充填することもできる。
【0048】
このようにして得られたエアゾール組成物は、エアゾール容器から吐出すると親油性液化ガスが気化して水相と油溶性有効成分または油性原液になり、油溶性有効成分または油性原液は液化ガスの推進力と水相との分離により皮膚の表面に拡散しやすく、油溶性有効成分の効果が得られやすくなる。
【0049】
実施例1
アルミニウム製耐圧容器に、表1に示す組成のパウダー、水相、油性原液を充填した。前記容器にエアゾールバルブを取り付け、バルブから液化石油ガスを充填し、水相と油相(油性原液および液化石油ガス)を乳化させて、日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2
表2に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例3
表3に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0054】
【表3】

【0055】
比較例1
表4に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0056】
【表4】

【0057】
比較例2
表5に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例4
表6に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0060】
【表6】

【0061】
実施例5
表7に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用エアゾール製品を製造した。
【0062】
【表7】

【0063】
比較例3
表8に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用の水中油型フォーム式エアゾール製品を製造した。
【0064】
【表8】

【0065】
比較例4
表9に示す組成のエアゾール組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用の1液型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0066】
【表9】

【0067】
実施例6
表10に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用の油中水型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0068】
【表10】

【0069】
実施例7
表11に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用の油中水型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0070】
【表11】

【0071】
実施例8
表12に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして日焼け止め用の油中水型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0072】
【表12】

【0073】
試験評価
1.エアゾール製品の日焼け止め効果
液化ガス以外の成分が0.5gになるよう腕に吐出し、吐出物を塗り拡げた。塗布した部分と何も塗布していない部分に紫外線を照射した。何も塗布していない部分への照射を停止し、このときの日焼け具合と照射時間を基準にして、塗布した部分が塗布していない部分と同程度の日焼け具合になる時間を比較した。なお試験は5人で行い、結果はその平均値を示す。
【0074】
2.原液の日焼け止め効果
原液を0.5g腕に塗り拡げたこと以外はエアゾールの日焼け止め効果と同様にして測定を行った。
【0075】
【表13】

【0076】
親油性液化ガスがエアゾール組成物中35〜85重量%含まれる実施例1〜3は、原液を等量塗布したときと比較して日焼けに要する時間が長くなっており、日焼け防止効果が高く、有効成分を皮膚に均一に塗布できていることがわかる。一方、親油性液化ガスが30重量%と少ない比較例1および親油性液化ガスが90重量%と多い比較例2は、いずれも原液を等量塗布したときと比較して日焼けに要する時間が変わらないもしくは短くなっており、有効成分を皮膚に均一に塗布できていないことがわかる。
【0077】
層状構造の板状ポリマーを含む実施例4は、板状ポリマーを含まない実施例1よりも日焼けに要する時間が長くなっており、板状ポリマーが均等に付着して日焼け防止効果が高くなっていることがわかる。油性溶剤として脂肪酸と2価アルコールのジエステルを用いた実施例5は日焼けに要する時間が長くなっており、有効成分を皮膚に均一に塗布できていることがわかる。
【0078】
油中水型エマルジョンを形成する実施例6〜8は、原液を等量塗布したときと比較して日焼けに要する時間が約2倍に長くなっており、日焼け防止効果が特に高く、有効成分を皮膚に均一に塗布できていることがわかる。なお、実施例6〜8の原液は分離しやすく、特に均一に塗ることができなかった。
【0079】
親油性液化ガスが10重量%と少なく水中油型エマルジョンを形成する比較例3および水を配合せずエアゾール組成物が均一相を形成する比較例4は、原液を等量塗布したときと比較して日焼けに要する時間が変わらないもしくは短くなっており、有効成分を皮膚に均一に塗布できていないことがわかる。特に比較例4は噴霧粒子径が小さいため飛び散りが多く、エアゾールにすることで日焼け防止効果が低下した。
【0080】
なお、いずれの実施例および比較例も、親油性有効成分としてメトキシケイ皮酸エチルへキシルを原液中に10重量%配合している。
【0081】
実施例9
表14に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして害虫忌避用の油中水型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0082】
【表14】

【0083】
実施例10
表15に示す組成のエアゾール組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてスキンケア用の油中水型スプレー式エアゾール製品を製造した。
【0084】
【表15】

【0085】
以上、本発明のエアゾール組成物によれば、人体に塗布すると有効成分が均一に付着して、有効成分の効果を最大限に発揮することができるエアゾール組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性液化ガスと有効成分とを含有する油相と、水相とがエマルジョンを形成してなる人体用エアゾール組成物であって、
該有効成分が、エアゾール組成物中1〜10重量%含有され、
前記親油性液化ガスが、エアゾール組成物中35〜85重量%含有されてなる人体用エアゾール組成物。
【請求項2】
前記有効成分と、前記親油性液化ガスとの割合が、有効成分/親油性液化ガス(重量比)=0.02〜0.2である請求項1記載の人体用エアゾール組成物。
【請求項3】
油性溶剤を、エアゾール組成物中0.1〜10重量%含有する請求項1または2記載の人体用エアゾール組成物。
【請求項4】
前記有効成分が紫外線吸収剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体用エアゾール組成物。
【請求項5】
前記エアゾール組成物が油中水型エマルジョンである請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
前記油相の配合量がエアゾール組成物中40〜90重量%であり、前記水相の配合量がエアゾール組成物中10〜60重量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。

【公開番号】特開2010−270060(P2010−270060A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122963(P2009−122963)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】