説明

エアタンクの排水装置

【課題】エアタンク内に一定以上水が溜まったときには自動的に排水することができるとともに、手動によっても排水可能なエアタンクの排水装置を提供する。
【解決手段】エアタンク4内の凝水が一定レベル以上であることを検知し、自動的に排水を行う電磁バルブ2を備え、電磁バルブ2は、絶縁体で形成され、中央に向かって下向き傾斜するとともに中央に開口部が設けられ、上縁端がエアタンク4の底面よりも上側となるように配設された絶縁部材22と、導体で形成され、開口部を上方から塞ぐ蓋体21と、蓋体21に給電する給電手段と、蓋体21を上方に移動させて、開口部を開放させる駆動手段と、を有し、駆動手段は、エアタンク4の凝水面が絶縁部材22の上縁端以上になり、蓋体21に給電された電気が凝水を通じてエアタンク4に通電されたときに駆動する機構であるとともに、駆動手段は、外部から手動で操作することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エアタンクの底部に排水バルブを設け、該排水バルブを開放することによりエアタンク内の凝水を排水するエアタンクの排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中型・大型のバスやトラックなどにおいては、油圧を用いたブレーキに比べ大きな制動力が期待できるため、圧縮空気を用いたエアブレーキが使用されている。このエアブレーキで用いられる圧縮空気は、圧縮空気を貯留したエアタンクから供給される。
【0003】
前記エアタンクに貯留される圧縮空気は、通常外気を圧縮機で圧縮して形成されたものであるため水分を含んでいる。そのため、エアブレーキやエアタンク内の圧縮空気が使用されるその他の装置(エアサスペンション等)での圧縮空気の過剰消費、エアタンクに供給される圧縮空気を乾燥させるエアドライヤの能力低下、外気温変動などの要因により、エアタンク内に凝水が溜まる。エアタンク内に溜まった凝水が蒸発して圧縮空気とともにエアブレーキに供給されると、水分により空気配管やエアブレーキの圧縮空気応動装置の各部品にさびが発生して前記配管や各部品の寿命を低下させたり、水分が凍結することで空気配管がつまってエアブレーキの作動不良が発生するおそれがある。そのため、エアタンクに溜まった凝水を適宜排出する必要がある。
【0004】
エアタンクに溜まった凝水を排出する技術として、例えば特許文献1にはエアタンク内に水分検出センサを設け、エアタンク内に凝水が溜まったら、エアタンクの底部に設けた自動排水弁により自動的に排水する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、エアタンクではなく排気管に溜まった水を排水する技術であるが、排気熱により、低温時は開弁して排水し、高温時は閉弁する弁を設け、車両運転時においても前記弁を手動操作で開けて排水可能とした技術が開示されている。
【0006】
また、その他の技術として、図4に示したように、エアタンク104の底部に水抜き弁102を設け、水抜き弁102を手動で開けて排水する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59−118898号公報
【特許文献2】実開平6−8725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、前記自動排水弁を手動で開放することができないため、前記水分検出センサに不具合が生じた場合にはエアタンク内の凝水を排水することができなくなる。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術においては、前記弁を手動で開放することはできるものの、低温時即ち車両停止時には常に開弁されるため、特許文献2に開示された技術をエアタンクの排水に適用することは難しい。
【0010】
また、図4に示した技術においては、手動でしか水抜き弁102を開放することができないため、定期的に水抜き弁102を開放する作業が必要となり、作業工数がかかる。また、水抜き弁102を定期的に開放していても、エアタンクへの水の溜まり方が異常に早い事態が生じた場合には、エアタンクに溜まった凝水が蒸発してエアブレーキに圧縮空気とともに供給されてしまう可能性がある。
【0011】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、エアタンク内に一定以上水が溜まったときには自動的に排水することができるとともに、手動によっても排水可能なエアタンクの排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明においては、エアタンクの底部に排水バルブを設け、該排水バルブを開放することによりエアタンク内の凝水を排水するエアタンクの排水装置において、前記エアタンク内の凝水が一定レベル以上であることを検知し、自動的に排水を行う電磁バルブを備え、前記電磁バルブは、絶縁体で形成され、中央に向かって下向き傾斜するとともに中央に開口部が設けられ、上縁端が前記エアタンクの底面よりも上側となるように配設された絶縁部材と、導体で形成され、前記開口部を上方から塞ぐ蓋体と、前記蓋体に給電する給電手段と、前記蓋体を上方に移動させて、前記開口部を開放させる駆動手段と、を有し、前記駆動手段は、エアタンクの凝水面が前記絶縁部材の上縁端以上になり、前記蓋体に給電された電気が前記凝水を通じてエアタンクに通電されたときに駆動する機構であるとともに、前記駆動手段は、外部から手動で操作することが可能であることを特徴とする。
【0013】
これにより、簡単な構成でエアタンク内に一定以上水が溜まったときに自動的に排水ができるとともに、手動でも排水が可能となる。従って、定期的に運転手や整備員等が定期的に水抜きの作業を行う必要がなくなるため、作業工数の抑制が可能であるとともに、前記電磁バルブの自動的に排水する機構に不具合が生じても手動で排水することができる。
【0014】
また、前記電磁バルブによる排水回数をカウントするカウンタを設け、前記カウンタでカウントされた排水回数が規定回数以上であるときに作動する警告装置を設けたことを特徴とする。
ここで、前記規定回数は、エアタンクに供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤの点検の指標を表す数値であって、前記排水回数が規定回数以上となるとエアドライヤの点検時期であることを示すものである。なお、規定回数はエアドライヤの性能や容量などによって個々に決められるものである。
前記カウンタを設けることにより、排水回数を確認することができる。排水回数を確認することで、エアタンクに供給する圧縮空気を乾燥するエアドライヤの適切な交換時期を把握することができ、エアドライヤの整備交換費用を低減することができる。
さらに、前記警告装置を設けることで、前記エアドライヤの適正な交換時期を確実に運転手や作業員に知らせることができる。
【0015】
また、前記エアタンク内の空気を強制排気する強制排気装置を設け、前記電磁バルブは、前記強制排気装置作動時に排気を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、エアタンク内に一定以上水が溜まったときには自動的に排水することができるとともに、手動によっても排水可能であり、さらにエアタンクに溜まった水の排水頻度をカウントするで、エアタンクに供給される圧縮空気を乾燥させるエアドライヤの適切な点検時期を把握できるエアタンクの排水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例におけるエアタンクに設けられた排水バルブ周辺の断面図である。
【図2】排水バルブとその周辺機器の概略図である。
【図3】実施例における制御のフローチャートである。
【図4】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0019】
図1は、実施例におけるエアタンクに設けられた排水バルブ周辺の断面図である。
図1に示したように、エアタンク4の底部には排水バルブ2が設けられている。
【0020】
図1を用いて排水バルブ2の構成について説明する。
図1において、22は絶縁体を用いて作られた絶縁部材である。絶縁部材22は、中央に向かって下向き傾斜したお椀型の形状をしており、その窪んだ中央には開孔部が設けられている。絶縁部材22は、上縁端の高さ位置がエアタンク4の底面よりも上側となるように配設される。
【0021】
21は導体を用いて作られた球体である。球体21は前記絶縁部材22の開口部を上方から塞ぐように絶縁部材22上に配置される。
23は球体21を下方で支持する支持棒であり、支持棒23は導体を用いて作られる。
なお、支持棒23と球体21は一体に構成することもできる。
【0022】
28はコイルであり、コイル28は後述する制御ユニット6に接続されている。
27はバネであり、支持棒23が常に球体21に押しあてられるように作用している。
【0023】
また、コイル28はケーシング20内に収納されており、ケーシング20の蓋部24と支持棒23との間には絶縁体24aが配され、可動鉄心25とバネ27との間には絶縁体26が配されている。絶縁体24a、26を設けることで、可動鉄心25を流れる電流がケーシング20を介してエアタンク4に流れることを防止している。
【0024】
29は手動強制スイッチであり、絶縁体26の下部に直接取り付けられている。
【0025】
以上の構成における排水バルブ2の動作について説明する。
エアタンク4内に凝水が溜まり、水面42が絶縁部材22の上縁端の高さ以上になると、制御ユニット6からの電流は、コイル28、可動鉄心25、支持棒23、球体21、エアタンク4内に溜まった凝水、エアタンク4の順に流れ、エアタンク4に設けられたアース線62より地面に流れる。なお、当該電流の流れを図1に点線で示している。
このとき、可動鉄心25が作動し、支持棒23及び支持棒23に支持される球体21を押し上げる。球体21が押し上げられることにより、絶縁部材22の開口部を塞ぐものがなくなり、エアタンク4内に溜まった水は、絶縁部材22の開口部から排水され、エアタンク4の底部外側とケーシング20との間に形成された排水通路30から外部に排水される。
【0026】
前記排水により、エアタンク4内の水面42が絶縁部材22の上縁端よりも下側になると、電流が球体21からエアタンク4に溜まった水を介してエアタンク4に流れることが不可能になるため、図1に点線で示した電流の流れは不可能となり、コイルの作動が停止する。これにより、押し上げられていた支持棒23及び球体21が下がり、再び球体21が絶縁部材22の開口部を塞ぎ排水が停止する。
なお、コイルの作動の開始及び停止をする水面位置は、絶縁部材22の大きさ、形状等を変更し、絶縁部材22の上縁端の高さ位置を変えることで可能である。
【0027】
排水バルブ2は、以上のように、エアタンク4内の水面42が絶縁部材22の上縁端よりも上側であるときは排水を行い、下側であるときは排水を停止する。つまり、エアタンク内に溜まった水量により自動的に排水が行われる。
【0028】
さらに、手動強制スイッチ29を手動で押し上げることで、可動鉄心25、支持棒23及び球体21を押し上げることができるため、手動で排水することも可能である。
【0029】
また、制御ユニット6からの電流を球体21を介さずに地上に流す制御ができるアース線60を設けるとともに、電流を制御することができる制御ユニット6を設けている。
制御ユニット6は、エアタンク4内の水面42が絶縁部材22の上縁端を越えて、前述のように排水が始まると、制御ユニット6からの電流がアース線60に流れるように回路を切り替える指示を出す。制御ユニット6からの電流がアース線60に流れると、コイル28は作動し、この間も排水は継続する。そして、一定時間経過後、元の回路に戻す。
これにより、エアタンク4からの排水が開始されてから一定時間の排水時間が確保され、水面42が絶縁部材22の上縁端近辺の位置で、排水と排水の停止を短時間で繰り返すことを防止することができる。
【0030】
図2は、排水バルブ2とその周辺機器の概略図である。
前記制御ユニット6は、排水バルブ2の他、キースイッチ10、エアタンク強制排気スイッチ12、エアドライヤ点検リセットスイッチ14、水位センサ18、エアドライヤ点検ウォーニングランプ16に接続されている。ここで、水位センサ18は、排水バルブ2とは関係なくエアタンク4内に溜まった水の水位を検知するものである。
【0031】
図3は、本実施例における制御のフローチャートである。
図1及び図2を参照しながら、図3を用いて本実施例における制御について説明する。
ステップS1でキースイッチ10がONになると、キースイッチONの信号が制御ユニット6に取り込まれる。
【0032】
キースイッチONの信号が制御ユニット6に取り込まれると、ステップS2で制御ユニット6は排水カウンタが規定回数X以上であるか否かを確認する。ここで、排水カウンタとは、制御ユニット6内部に組み込まれたものであって、排水バルブ2により排水を行った回数をカウントするものである。また、規定回数Xとは、エアタンク4に供給する圧縮空気を乾燥させるエアドライヤー(不図示)の点検の指標を表す数値であって、排水カウンタX以上となるとエアドライヤの点検時期であることを示すものである。なお、Xはエアドライヤの性能や容量などによって個々に決められるものである。
【0033】
ステップS2で排水カウンタがX以上であると、ステップS3に進む。
ステップS3で、制御ユニット6からの命令によりエアドライヤ点検ウォーニングランプ16が点灯する。エアドライヤ点検ウォーニングランプ16は、車両の運転席などに設けられ、エアドライヤの点検時期であることを運転手や整備員などに知らせるものである。ステップS3により、運転員や整備員などは適切なエアドライヤ点検時期を確認することができる。
【0034】
ステップS2で排水カウンタがX未満であるか、ステップS3でエアドライヤ点検ウォーニングランプ16が点灯すると、ステップS4に進む。
【0035】
ステップS4では、エアタンク内に凝水が溜まっているか否かによりステップS5又はステップS7に進む。ここで凝水が溜まっているか否かとは、図1に示した水面42が絶縁部材22の外縁端よりも上であるか否かを意味する。
ステップS4でYesであれば、ステップS5で図1を用いて説明したように排水バルブ2がONとなって排水される。ここで、該排水は、排水開始後に前述のようにアース線60を用いて一定時間行うようにする(タイマ制御)ことが好ましい。ステップS5で排水が行われると、ステップS6で制御ユニット6内の排水カウンタの排水回数が1回加算される。
【0036】
ステップS4でNo、又はステップS6が終了するとステップS7に進む。
ステップS7では、エアドライヤ点検リセットスイッチ14かONとなっているか否か判断する。エアドライヤ点検リセットスイッチ14は、エアドライヤの点検した場合に該点検をした作業員が押すものである。
【0037】
ステップS7でONとなっていれば、エアドライヤの点検が行われたことを示しているので、次のエアドライヤの点検までの排水をカウントするために、ステップS8で前記排水カウンタを0回にセットしてステップS9に進む。ステップS7でOFFとなっていれば、そのままステップS9に進む。
【0038】
ステップS9では、エアタンク強制排気スイッチ12がONとなっているか否か判断する。エアタンク強制排気スイッチ12は、エアタンク4に設けられエアタンク4内の圧縮空気を強制的に排気する排気装置(不図示)のスイッチであり、ONであれば強制排気が行われるものである。
ステップS9でONであれば、ステップS10でアース線60に電流を流してコイル28を作動させて排水バルブより排気させる。
【0039】
ステップS9でOFFであれば、ステップS11に進み、排水バルブ2をOFFにしてステップS2に戻る。
以降、キースイッチ10がONである間、ステップS2からステップS11を繰り返す。
【0040】
以上により、簡単な構成でエアタンク内に一定以上水が溜まったときに自動的に排水ができるとともに、手動でも排水が可能となる。従って、定期的に運転手や整備員等が定期的に水抜きの作業を行う必要がなくなるため、作業工数の抑制が可能であるとともに、前記電磁バルブの自動的に排水する機構に不具合が生じても手動で排水することができる。
また、前記排水バルブによる排水回数をカウントするカウンタを設けることにより、排水回数を確認することができる。排水回数を確認することで、エアタンクに供給する圧縮空気を乾燥するエアドライヤの使用頻度も把握することができる。これにより、エアドライヤの適切な交換時期を把握することができ、エアドライヤの整備交換費用を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
エアタンク内に一定以上水が溜まったときには自動的に排水することができるとともに、手動によっても排水可能であるエアタンクの排水装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 排水バルブ(電磁バルブ)
4 エアタンク
6 制御ユニット
12 エアタンク強制排気スイッチ
21 球体(蓋体)
22 絶縁部材
23 支持棒
25 可動鉄心
28 コイル
29 手動強制スイッチ
30 排水通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアタンクの底部に排水バルブを設け、該排水バルブを開放することによりエアタンク内の凝水を排水するエアタンクの排水装置において、
前記エアタンク内の凝水が一定レベル以上であることを検知し、自動的に排水を行う電磁バルブを備え、
前記電磁バルブは、
絶縁体で形成され、中央に向かって下向き傾斜するとともに中央に開口部が設けられ、上縁端が前記エアタンクの底面よりも上側となるように配設された絶縁部材と、
導体で形成され、前記開口部を上方から塞ぐ蓋体と、
前記蓋体に給電する給電手段と、
前記蓋体を上方に移動させて、前記開口部を開放させる駆動手段と、を有し、
前記駆動手段は、エアタンクの凝水面が前記絶縁部材の上縁端以上になり、前記蓋体に給電された電気が前記凝水を通じてエアタンクに通電されたときに駆動する機構であるとともに、
前記駆動手段は、外部から手動で操作することが可能であることを特徴とするエアタンクの排水装置。
【請求項2】
前記電磁バルブによる排水回数をカウントするカウンタを設け、
前記カウンタでカウントされた排水回数が規定回数以上であるときに作動する警告装置を設けたことを特徴とする請求項1記載のエアタンクの排水装置。
【請求項3】
前記エアタンク内の空気を強制排気する強制排気装置を設け、
前記電磁バルブは、前記強制排気装置作動時に排気を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のエアタンクの排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−122696(P2011−122696A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282429(P2009−282429)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】