エアバッグドアの開放構造
【課題】 基材に一体的に形成されたエアバッグドアが、エアバッグの押圧力が加わった際に該基材から適切に分離して開放し得るようにする。
【解決手段】 インサート部材20に設けたヒンジ部23の所要位置に、エアバッグドア15の外縁に沿って形成した開裂予定線16の近傍に先端を臨ませた当接部30を設ける。エアバッグドア15の裏面に、開裂予定線16に隣接するよう延設されて前記当接部30が当接可能な当接受部31を設ける。エアバッグ装置25のエアバッグ26がヒンジ部23を押圧した際に、当接部30が当接受部31に当接してエアバッグドア15をの裏面端縁部位を押圧することで開裂予定線16が適切に破断するようになる。
【解決手段】 インサート部材20に設けたヒンジ部23の所要位置に、エアバッグドア15の外縁に沿って形成した開裂予定線16の近傍に先端を臨ませた当接部30を設ける。エアバッグドア15の裏面に、開裂予定線16に隣接するよう延設されて前記当接部30が当接可能な当接受部31を設ける。エアバッグ装置25のエアバッグ26がヒンジ部23を押圧した際に、当接部30が当接受部31に当接してエアバッグドア15をの裏面端縁部位を押圧することで開裂予定線16が適切に破断するようになる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エアバッグドアの開放構造に関し、更に詳細には、車両内装部材の基材に一体的に形成されたエアバッグドアと、該基材の裏面において前記エアバッグドアの外縁ラインに沿って延設された開裂予定線と、前記エアバッグドアの裏面に固定したインサート部材に変形可能に設けられたヒンジ部とからなる開放構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年に至り、殆どの自動車では、衝突事故等による衝撃から乗員を保護するために、運転席用のエアバッグ装置および助手席用のエアバッグ装置が標準的に装備されている。このうち助手席用のエアバッグ装置は、図9に示す如く、乗員室前方に組付けた車両内装部材としてのインストルメントパネル10における助手席側の内部に格納されている。このため前記インストルメントパネル10には、エアバッグ装置25に対応した部位に、当該エアバッグ装置25の作動時に膨張するエアバッグ26の押圧力を受けると乗員室側へ開放するエアバッグドア15が設けられている。
【0003】そして前記エアバッグドア15は、前記インストルメントパネル10を構成するパネル基材11の所要位置へ一体的に形成して、常には該基材11の一部を構成して開放前は外方から認識されないようにした所謂「インビジブルタイプ」が主流となりつつある。このようなエアバッグドア15は、パネル基材11の裏面において該ドア15の外縁ラインに沿って延設された開裂予定線16により形成されており、エアバッグ装置25の作動時にエアバッグ26の押圧力が裏面に加わった際に該開裂予定線16が破断することで、前記パネル基材11から分離して開放が許容されるようになっている。
【0004】ここで前記パネル基材11は、例えばPP(ポリプロピレン)やASG等の比較的硬質の合成樹脂材料から形成されており、殊に低温時にエアバッグ26の強大な押圧力が加わった際にその衝撃で破損するおそれがあるため、エアバッグドア15の裏面とエアバッグ装置25とを連結支持するインサート部材20を装着して、該エアバッグドア15およびその周辺部位の破損防止および飛散防止等を図る対策が施されている。このインサート部材20は、例えばスチール等の金属製またはTPO(オレフィン系の熱可塑性エラストマー)等の合成樹脂製のものが実施に供されている。
【0005】図9では、エアバッグドア15が2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式とされているから、このエアバッグドア15に対応するように形成した合成樹脂製のインサート部材20を例示している。このインサート部材20は、前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bを囲繞する矩形枠状の固定ブラケット部21と、この固定ブラケット部21の開口部内側で相互対向するよう形成された可動ブラケット部22,22とから構成され、夫々の可動ブラケット部22,22はヒンジ部23で固定ブラケット部21に連結されている。また前記ヒンジ部23は、常には横断面形状が略U字形とされていて、エアバッグ26の押圧力が可動ブラケット部22に加わると適宜伸張的(直線的)に変形可能となっており、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bでの破断を惹起させ、かつ該外縁開裂予定線16bの破断が完了すると直線状態まで変形してドアパネル15A,15Bを一体的に浮上させ得るようになっている(図10)。そして、夫々のヒンジ部23が完全に伸張状態まで変形すると、開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび両可動ブラケット部22,22の境界ラインに沿って形成された破断予定線24が夫々破断することで、夫々のドアパネル15A,15Bは対応の可動ブラケット部22と一体的に開放するようになり、開放するドアパネル15A,15Bとパネル基材11との干渉を回避するようになっている(図11)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、前述したインサート部材20を装着した従来のエアバッグドアの開放構造では、図12をもとに要約説明すると、エアバッグ装置25が作動してエアバッグ26が膨張を開始すると(図12(a))、先ず開裂予定線16における外縁開裂予定線16bが破断して両ドアパネル15A,15Bがパネル基材11から一体的に分離し(図12(b))、次いで該開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび可動ブラケット部22,22の破断予定線24が夫々破断し、両ドアパネル15A,15Bが相互に分離して開放する(図12(c))ようにした開放態様である。しかしながら図9および図13から明らかなように、前記ヒンジ部23が略U字形に形成されているので夫々の可動ブラケット部22,22が対応のドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位には接触していない。従って、前記可動ブラケット部22,22やヒンジ部23,23にエアバッグ26の押圧力が加わったとしても、ドアパネル15A,15Bの端縁部位にはその押圧力が殆ど作用しない構造となっていた。このため、開裂予定線16における外縁開裂予定線16bの破断が適時になされないことがあり、場合によっては外縁開裂予定線16bの破断より中央開裂予定線16aの破断が先行してしまい、各ドアパネル15A,15Bが適切に開放しなくなる不都合が危惧されていた。
【0007】
【発明の目的】本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、車両内装部材の基材に一体的に形成されて常には該基材の一部を構成するエアバッグドアが、エアバッグの押圧力が加わった際に開裂予定線が適切かつ確実に破断することで、前記基材から分離して適切に開放し得るようにしたエアバッグドアの開放構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決して、所期の目的を達成するため本発明は、車両内装部材の基材に一体的に形成され、常には該基材の一部を構成するエアバッグドアと、該基材の裏面において前記エアバッグドアの外縁ラインに沿って延設され、エアバッグ装置の作動時に破断して該エアバッグドアを前記基材から分離させる開裂予定線と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に固定したインサート部材に変形可能に設けられ、開放する該エアバッグドアを支持するヒンジ部とからなる開放構造において、前記ヒンジ部の所要位置に突設され、前記開裂予定線の近傍に先端を臨ませた当接部と、前記エアバッグドアの裏面に延設されて前記開裂予定線に隣接し、前記エアバッグ装置の作動時に前記当接部が当接可能な当接受部とからなり、前記エアバッグ装置のエアバッグが前記ヒンジ部を押圧した際に、前記当接部が当接受部に当接して前記エアバッグドアの裏面を押圧することで前記開裂予定線が破断し得るよう構成したことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るエアバッグドアの開放構造につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。本実施例の開放構造は、エアバッグドア15の裏面に固定したインサート部材20を利用することが前提とされている。そこで実施例では、車両内装部材であるインストルメントパネル10のパネル基材11に設けた2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15を例示し、従来技術の項(図9〜図13)において既出の部材と同一部材に関しては同一の符号を付して説明する。
【0010】図1は、本発明の好適実施例に係るエアバッグドアの開放構造を、パネル基材11に設けたエアバッグドア15の形成部位で破断して示すインストルメントパネル10の要部断面図である。図示のインストルメントパネル10は、ポリプロピレン(PP)等から所要形状に形成された合成樹脂製のパネル基材11と、このパネル基材11の外面に被着された表皮材12とからなる2層タイプとされている。そして、車両乗員室の前方に設置した際に、リィンフォースバー等の車体構成部材に強固に固定された前記エアバッグ装置25を全体的に被覆する。
【0011】このようなインストルメントパネル10においてエアバッグドア15は、前記パネル基材11の裏面における該エアバッグ装置25に対応した部位に中央開裂予定線16aおよび外縁開裂予定線16bからなる「日」字形の開裂予定線16を延設することで、パネル基材11に一体的に形成されて常には該基材11の一部を構成する2枚のドアパネル15A,15Bから構成されている(図12(a))。そして各ドアパネル15A,15Bは、前記外縁開裂予定線16bが破断することでパネル基材11から一体的に分離し、前記中央開裂予定線16aが破断することで相互に分離するようになる。ここで開裂予定線16は、パネル基材11の裏面にドアパネル15A,15Bの外縁ラインに沿って凹設した凹溝であって、該ドアパネル15A,15Bやパネル基材11の一般部位よりも厚みを小さくすることで破断し易く設定したものである。
【0012】前記エアバッグドア15の裏面に固定されるインサート部材20は、2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15に対応するよう形成された合成樹脂(TPO等)製の一体成形部材であり、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bを囲繞する矩形枠状の固定ブラケット部21と、この固定ブラケット部21の開口部内側に対向的に形成された可動ブラケット部22,22とから構成されている。そして夫々の可動ブラケット部22,22は、常には断面形状が略U字形とされたヒンジ部23で固定ブラケット部21に連結され、境界ラインに沿って形成した破断予定線24が破断することで相互に分離するようになっている。前記各ヒンジ部23は、エアバッグ26の押圧力が加わって開裂予定線16における外縁開裂予定線16bが破断した後に、適宜伸張的(直線的)に変形して可動ブラケット部22の浮上移動を許容すると共に、該開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび破断予定線24が夫々が破断した後に、開放する可動ブラケット部22および該ブラケット部22に固定されたドアパネル15A,15Bを支持するようになっている。
【0013】このようなインサート部材20を裏面に固定したことを前提とする本実施例に係るエアバッグドアの開放構造は、図1および図2に示すように、前記ヒンジ部23の所要位置に突設され、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bの近傍に先端を臨ませた当接部30と、前記エアバッグドア15におけるドアパネル15A,15Bの裏面に延設されて前記外縁開裂予定線16bに隣接し、前記エアバッグ装置25の作動時に前記当接部30が当接可能となっている当接受部31とを追加して構成されている。そして後述する如く、前記エアバッグ装置25の作動により膨張を開始したエアバッグ26が前記ヒンジ部23を押圧した際に、当接部30が当接受部31に当接して前記エアバッグドア15(ドアパネル15A,15B)の裏面端縁部位を押圧することで、前記外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断し得るようにしたものである。
【0014】前記当接部30は、図2〜図4に示すように、常には前記エアバッグ装置25側へ突出して断面形状が略U字形に形成された前記ヒンジ部23において、前記エアバッグドア15側に臨んだ凹部に所要間隔毎に突設されている。具体的には、ヒンジ部23における可動ブラケット部22に連設した斜状部分23aに一体的に形成されており、上面に形成した当接面33および下面に形成した作用面34とを有する当接体32と、該当接体32の側面と前記斜状部分23aとを連結する連結片35とから構成されている。前記当接面33は、前記当接受部31に設けた当接受面37に整合して当接するようになり、また前記作用面34は、前記ヒンジ部23における曲面部分23bに整合して当接するようになる。従って図5に示すように、前記エアバッグ装置25が作動して膨張を開始したエアバッグ26の押圧力がヒンジ部23の曲面部分23bに作用すると、その押圧力が当接部30の当接体32に作用するようになる。
【0015】また前記当接部30の当接体32は、図3および図8に示すように、前記連結片35の屈曲変形または撓曲変形により、前記当接受部31に対する当接方向とは異なる方向への傾倒的な変形(図示矢印A方向および矢印B方向)が可能となっている。従って、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bおよび中央開裂予定線16aが破断した後に、開放するドアパネル15A,15Bがヒンジ部23に対して姿勢変位するに際し、前記当接体32が傾倒的に変形可能となっていることで前記当接受部31との干渉が回避され、該ドアパネル15A,15Bがスムーズに開放するようになっている。
【0016】前記当接受部31は、夫々のドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位において、前記外縁開裂予定線16bに沿って帯状に突設され、対応するヒンジ部23における凹部に整合して臨んでいる。そして、当接受部31の下面において前記当接部30に対応した部位には、該当接部30における当接体32の当接面33に整合する当接受面37が形成されており、これら当接面33および当接受面37が密着的に整合した状態において当接部30の押圧力が当接受部31へ伝達される。なお前記当接面33および当接受面37は、図5に示すように、ドアパネル15A,15Bの端縁側へ向けて下り勾配の傾斜面とされており、当接部30による押圧力は当接受部31に対して前記外縁開裂予定線16bの方向へ作用するようになっている。
【0017】
【実施例の作用】次に、前述のように構成された本実施例に係るエアバッグドアの開放構造の作用につき説明する。
【0018】前記インサート部材20は、例えばインジェクション成形技術に基いて、固定ブラケット部21、可動ブラケット部22、ヒンジ部23および当接部30が一体的に形成される。またエアバッグドア15は、パネル基材11をインジェクション成形するに際して該パネル基材11と同時に形成され、この際に前記当接受部31も同時に形成される。そして前記インサート部材20は、パネル基材11の裏面(エアバッグドア15の裏面)に対して例えば振動溶着技術に基いて装着され、固定ブラケット部21はエアバッグドア15の外周部位に固定されると共に、可動ブラケット部22,22は対応のドアパネル15A,15Bに固定される。
【0019】ここで、インサート部材20をパネル基材11の裏面に装着した状態では、夫々のヒンジ部23,23に突設した各当接部30における当接体32の当接面33が、エアバッグドア15のドアパネル15A,15Bに突設した当接受部31における当接面37に密着的に整合している(図1および図2)。
【0020】そして、エアバッグ装置25が作動を開始したエアバッグ26の膨張初期段階では、図5に示すように、膨張する該エアバッグ26の上面が各可動ブラケット部22および各ヒンジ部23の曲面部分23bを下方から押圧するようになる。この際にドアパネル15A,15Bにおいては、可動ブラケット部22が接触する領域では該可動ブラケット部22を介してエアバッグ26の押圧力を受けるようになり、また外縁開裂予定線16bに隣接した端縁部位においては、ヒンジ部23、当接部30の当接体32、当接受部31を介してエアバッグ26の押圧力を受けるようになる。
【0021】ここで、各可動ブラケット部22および各ヒンジ部23にエアバッグ26の押圧力が加わった時点では、インサート部材20の破断予定線24が未だ破断していないので両可動ブラケット部22,22は1枚の板状に一体的に接合しており、かつ該可動ブラケット部22,22は固定ブラケット部21に対する移動が規制されていないことから(ヒンジ部23,23が最大に伸張していない)、エアバッグ26の押圧により発生する応力は、中央開裂予定線16aよりも外縁開裂予定線16bへ集中して作用するようになる。しかもエアバッグ26の押圧力が、前述した如く、ヒンジ部23、当接部30および当接受部31を介してドアパネル15A,15Bにおける裏面端縁部位へ直接的に作用するようになるから、外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断するようになる(図6)。
【0022】そして、外縁開裂予定線16bでの破断が進行して完了すると、エアバッグドア15はパネル基材11から分離してフリー状態となると共に、ヒンジ部23が未だ最大に伸張変形していないので、エアバッグドア15および可動ブラケット部22は、夫々のヒンジ部23,23が最大に伸張変形するまで一体的に浮上移動する(図7)。なお、各ヒンジ部23,23が最大に伸張変形した時点でも、中央開裂予定線16aでの破断は未だ始まっていない。
【0023】外縁開裂予定線16bでの破断が完了し、各ヒンジ部23,23が最大に伸張変形して可動ブラケット部22の浮上移動が規制されると、エアバッグ26の押圧により中央開裂予定線16aおよび破断予定線24が夫々破断するようになる。そして、中央開裂予定線16aおよび破断予定線24での破断が完了すると、エアバッグドア15の各ドアパネル15A,15Bおよび可動ブラケット部22,22の開放変位が許容されるようになる。これにより両可動ブラケット部22,22は、膨張するエアバッグ26に押圧されながらヒンジ部23,23を中心として回動し、対応のドアパネル15A,15Bと共に乗員室側へ一気に開放するようになる(図8)。
【0024】このとき、エアバッグドア15の各ドアパネル15A,15Bをパネル基材11から浮上させた状態で前記可動ブラケット部22,22が開放するようになるから、該可動ブラケット部22,22と一体的に開放する該ドアパネル15A,15Bの端部がパネル基材11に干渉するのが好適に回避され、両ドアパネル15A,15Bの開放がスムーズになされる。しかも、可動ブラケット部22が対応のヒンジ部23に対して姿勢変位するに際し、前記当接受部31が前記当接部30の当接体32に接触したとしても、該当接体32が適宜傾倒的に変形して当接受部31と当接体32(当接部30)との干渉が好適に回避され、ドアパネル15A,15Bの開放に支障を来すことがない。
【0025】このように本実施例に係るエアバッグドアの開放構造では、前記ヒンジ部23の所要位置に突設した当接部30と、前記エアバッグドア15のドアパネル15A,15Bの裏面に延設されて前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bに隣接した当接受部31とにより、前記エアバッグ装置25のエアバッグ26が前記ヒンジ部23を押圧した際に、該エアバッグ26の押圧力がドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位に好適に作用するようになるので、前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断するようになる。従って、中央開裂予定線16aの破断より外縁開裂予定線16bの破断が好適に先行するようになり、エアバッグドア15が適切に開放するようになる。
【0026】なお前記実施例では、合成樹脂製のインサート部材20を採用することを前提として、該インサート部材20のヒンジ部23に当接部30を一体的に形成する場合を例示したが、本実施例の開放構造は金属製のインサート部材でも実施可能である。すなわち、金属製のインサート部材であっても、ヒンジ部23を略U字形に形成し得ると共に、該ヒンジ部23の所要位置に当接部30を設けることが可能である。
【0027】また実施例では、2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15における開放構造を例示したが、本願の開放構造は、1枚のドアパネルからなる片開き式のエアバッグドア、4枚のドアパネルからなる4方開き式のエアバッグドア等にも実施可能である。
【0028】更に前記実施例では、2層タイプのインストルメントパネル10を例示したが、本願のエアバッグドアの開放構造は、前記パネル基材11のみから構成される単層タイプのインストルメントパネルに設けたエアバッグドア、パネル基材11、表皮材12およびクッション材からなる3層タイプのインストルメントパネルに設けたエアバッグドアにも実施可能である。
【0029】更にまた、本願の開放構造を実施可能なエアバッグドアは、前記インストルメントパネル10に設けたものの他に、ドアパネルやピラーガーニッシュ等に設けたもの等も含まれる。
【0030】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係るエアバッグドアの開放構造によれば、ヒンジ部の所要位置に突設した当接部と、エアバッグドアの裏面に延設されて開裂予定線に隣接した当接受部とにより、前記エアバッグ装置のエアバッグが前記ヒンジ部を押圧した際に該エアバッグの押圧力がエアバッグドアの裏面に好適に作用するようになるので、前記開裂予定線が適切かつ確実に破断するようになる。従って、開裂予定線が適切かつ確実に破断するようになるので、エアバッグドアが適切に開放するようになる有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係るエアバッグドアの開放構造を、パネル基材に設けたエアバッグドアの形成部位で破断して示すインストルメントパネルの要部断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図であって、当接部における当接体が傾倒的に変形可能なことを示している。
【図4】インサート部材のヒンジ部に突設した当接部と、パネル基材に設けたエアバッグドアのドアパネルに突設した当接受部とを示す概略斜視図である。
【図5】エアバッグの膨張初期段階を示す要部断面図であって、該エアバッグの押圧力がヒンジ部、当接部および当接受部を介してドアパネルの裏面端縁部位に加わるようになることを示している。
【図6】図5の状態から更にエアバッグが膨張した状態を示す要部断面図であって、該エアバッグの押圧力がドアパネルの裏面端縁部位に加わることで外縁開裂予定線が破断し、ドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上し始めたことを示している。
【図7】図6の状態から更にエアバッグが膨張した状態を示す要部断面図であって、ヒンジ部が最大に伸張変形するまでドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上したことを示している。
【図8】中央開裂予定線が破断することで、可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放した状態を示す要部断面図である。
【図9】従来のエアバッグドアの開放構造を、パネル基材に設けたエアバッグドアの形成部位で破断して示すインストルメントパネルの要部断面図である。
【図10】エアバッグの押圧により外縁開裂予定線が破断して、ヒンジ部が最大に伸張変形するまでドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上した状態を示す説明断面図である。
【図11】中央開裂予定線が破断することで、可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放する状態を示す説明断面図である。
【図12】エアバッグドアの開放変位を経時的に示す説明図であって、(a)は、エアバッグの押圧力がエアバッグドアの裏面に適宜加わった状態の斜視図、(b)は、外縁開裂予定線が破断することでエアバッグドアと可動ブラケット部とが一体的に浮上移動した状態の斜視図、(c)は、中央開裂予定線が破断することで可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放し始めた状態の斜視図である。
【図13】エアバッグの押圧力がドアパネルの裏面端縁部位に加わらないことにより、外縁開裂予定線が適切に破断しない不都合を示す説明断面図である。
【符号の説明】
11 基材, 15 エアバッグドア
15A,15B ドアパネル, 25 エアバッグ装置
16 開裂予定線, 16b 外縁開裂予定線
20 インサート部材, 23 ヒンジ部
30 当接部, 31 当接受部
32 当接体
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エアバッグドアの開放構造に関し、更に詳細には、車両内装部材の基材に一体的に形成されたエアバッグドアと、該基材の裏面において前記エアバッグドアの外縁ラインに沿って延設された開裂予定線と、前記エアバッグドアの裏面に固定したインサート部材に変形可能に設けられたヒンジ部とからなる開放構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年に至り、殆どの自動車では、衝突事故等による衝撃から乗員を保護するために、運転席用のエアバッグ装置および助手席用のエアバッグ装置が標準的に装備されている。このうち助手席用のエアバッグ装置は、図9に示す如く、乗員室前方に組付けた車両内装部材としてのインストルメントパネル10における助手席側の内部に格納されている。このため前記インストルメントパネル10には、エアバッグ装置25に対応した部位に、当該エアバッグ装置25の作動時に膨張するエアバッグ26の押圧力を受けると乗員室側へ開放するエアバッグドア15が設けられている。
【0003】そして前記エアバッグドア15は、前記インストルメントパネル10を構成するパネル基材11の所要位置へ一体的に形成して、常には該基材11の一部を構成して開放前は外方から認識されないようにした所謂「インビジブルタイプ」が主流となりつつある。このようなエアバッグドア15は、パネル基材11の裏面において該ドア15の外縁ラインに沿って延設された開裂予定線16により形成されており、エアバッグ装置25の作動時にエアバッグ26の押圧力が裏面に加わった際に該開裂予定線16が破断することで、前記パネル基材11から分離して開放が許容されるようになっている。
【0004】ここで前記パネル基材11は、例えばPP(ポリプロピレン)やASG等の比較的硬質の合成樹脂材料から形成されており、殊に低温時にエアバッグ26の強大な押圧力が加わった際にその衝撃で破損するおそれがあるため、エアバッグドア15の裏面とエアバッグ装置25とを連結支持するインサート部材20を装着して、該エアバッグドア15およびその周辺部位の破損防止および飛散防止等を図る対策が施されている。このインサート部材20は、例えばスチール等の金属製またはTPO(オレフィン系の熱可塑性エラストマー)等の合成樹脂製のものが実施に供されている。
【0005】図9では、エアバッグドア15が2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式とされているから、このエアバッグドア15に対応するように形成した合成樹脂製のインサート部材20を例示している。このインサート部材20は、前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bを囲繞する矩形枠状の固定ブラケット部21と、この固定ブラケット部21の開口部内側で相互対向するよう形成された可動ブラケット部22,22とから構成され、夫々の可動ブラケット部22,22はヒンジ部23で固定ブラケット部21に連結されている。また前記ヒンジ部23は、常には横断面形状が略U字形とされていて、エアバッグ26の押圧力が可動ブラケット部22に加わると適宜伸張的(直線的)に変形可能となっており、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bでの破断を惹起させ、かつ該外縁開裂予定線16bの破断が完了すると直線状態まで変形してドアパネル15A,15Bを一体的に浮上させ得るようになっている(図10)。そして、夫々のヒンジ部23が完全に伸張状態まで変形すると、開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび両可動ブラケット部22,22の境界ラインに沿って形成された破断予定線24が夫々破断することで、夫々のドアパネル15A,15Bは対応の可動ブラケット部22と一体的に開放するようになり、開放するドアパネル15A,15Bとパネル基材11との干渉を回避するようになっている(図11)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、前述したインサート部材20を装着した従来のエアバッグドアの開放構造では、図12をもとに要約説明すると、エアバッグ装置25が作動してエアバッグ26が膨張を開始すると(図12(a))、先ず開裂予定線16における外縁開裂予定線16bが破断して両ドアパネル15A,15Bがパネル基材11から一体的に分離し(図12(b))、次いで該開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび可動ブラケット部22,22の破断予定線24が夫々破断し、両ドアパネル15A,15Bが相互に分離して開放する(図12(c))ようにした開放態様である。しかしながら図9および図13から明らかなように、前記ヒンジ部23が略U字形に形成されているので夫々の可動ブラケット部22,22が対応のドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位には接触していない。従って、前記可動ブラケット部22,22やヒンジ部23,23にエアバッグ26の押圧力が加わったとしても、ドアパネル15A,15Bの端縁部位にはその押圧力が殆ど作用しない構造となっていた。このため、開裂予定線16における外縁開裂予定線16bの破断が適時になされないことがあり、場合によっては外縁開裂予定線16bの破断より中央開裂予定線16aの破断が先行してしまい、各ドアパネル15A,15Bが適切に開放しなくなる不都合が危惧されていた。
【0007】
【発明の目的】本発明は、前述した課題を好適に解決するべく提案されたもので、車両内装部材の基材に一体的に形成されて常には該基材の一部を構成するエアバッグドアが、エアバッグの押圧力が加わった際に開裂予定線が適切かつ確実に破断することで、前記基材から分離して適切に開放し得るようにしたエアバッグドアの開放構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決して、所期の目的を達成するため本発明は、車両内装部材の基材に一体的に形成され、常には該基材の一部を構成するエアバッグドアと、該基材の裏面において前記エアバッグドアの外縁ラインに沿って延設され、エアバッグ装置の作動時に破断して該エアバッグドアを前記基材から分離させる開裂予定線と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に固定したインサート部材に変形可能に設けられ、開放する該エアバッグドアを支持するヒンジ部とからなる開放構造において、前記ヒンジ部の所要位置に突設され、前記開裂予定線の近傍に先端を臨ませた当接部と、前記エアバッグドアの裏面に延設されて前記開裂予定線に隣接し、前記エアバッグ装置の作動時に前記当接部が当接可能な当接受部とからなり、前記エアバッグ装置のエアバッグが前記ヒンジ部を押圧した際に、前記当接部が当接受部に当接して前記エアバッグドアの裏面を押圧することで前記開裂予定線が破断し得るよう構成したことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るエアバッグドアの開放構造につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照しながら以下説明する。本実施例の開放構造は、エアバッグドア15の裏面に固定したインサート部材20を利用することが前提とされている。そこで実施例では、車両内装部材であるインストルメントパネル10のパネル基材11に設けた2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15を例示し、従来技術の項(図9〜図13)において既出の部材と同一部材に関しては同一の符号を付して説明する。
【0010】図1は、本発明の好適実施例に係るエアバッグドアの開放構造を、パネル基材11に設けたエアバッグドア15の形成部位で破断して示すインストルメントパネル10の要部断面図である。図示のインストルメントパネル10は、ポリプロピレン(PP)等から所要形状に形成された合成樹脂製のパネル基材11と、このパネル基材11の外面に被着された表皮材12とからなる2層タイプとされている。そして、車両乗員室の前方に設置した際に、リィンフォースバー等の車体構成部材に強固に固定された前記エアバッグ装置25を全体的に被覆する。
【0011】このようなインストルメントパネル10においてエアバッグドア15は、前記パネル基材11の裏面における該エアバッグ装置25に対応した部位に中央開裂予定線16aおよび外縁開裂予定線16bからなる「日」字形の開裂予定線16を延設することで、パネル基材11に一体的に形成されて常には該基材11の一部を構成する2枚のドアパネル15A,15Bから構成されている(図12(a))。そして各ドアパネル15A,15Bは、前記外縁開裂予定線16bが破断することでパネル基材11から一体的に分離し、前記中央開裂予定線16aが破断することで相互に分離するようになる。ここで開裂予定線16は、パネル基材11の裏面にドアパネル15A,15Bの外縁ラインに沿って凹設した凹溝であって、該ドアパネル15A,15Bやパネル基材11の一般部位よりも厚みを小さくすることで破断し易く設定したものである。
【0012】前記エアバッグドア15の裏面に固定されるインサート部材20は、2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15に対応するよう形成された合成樹脂(TPO等)製の一体成形部材であり、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bを囲繞する矩形枠状の固定ブラケット部21と、この固定ブラケット部21の開口部内側に対向的に形成された可動ブラケット部22,22とから構成されている。そして夫々の可動ブラケット部22,22は、常には断面形状が略U字形とされたヒンジ部23で固定ブラケット部21に連結され、境界ラインに沿って形成した破断予定線24が破断することで相互に分離するようになっている。前記各ヒンジ部23は、エアバッグ26の押圧力が加わって開裂予定線16における外縁開裂予定線16bが破断した後に、適宜伸張的(直線的)に変形して可動ブラケット部22の浮上移動を許容すると共に、該開裂予定線16における中央開裂予定線16aおよび破断予定線24が夫々が破断した後に、開放する可動ブラケット部22および該ブラケット部22に固定されたドアパネル15A,15Bを支持するようになっている。
【0013】このようなインサート部材20を裏面に固定したことを前提とする本実施例に係るエアバッグドアの開放構造は、図1および図2に示すように、前記ヒンジ部23の所要位置に突設され、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bの近傍に先端を臨ませた当接部30と、前記エアバッグドア15におけるドアパネル15A,15Bの裏面に延設されて前記外縁開裂予定線16bに隣接し、前記エアバッグ装置25の作動時に前記当接部30が当接可能となっている当接受部31とを追加して構成されている。そして後述する如く、前記エアバッグ装置25の作動により膨張を開始したエアバッグ26が前記ヒンジ部23を押圧した際に、当接部30が当接受部31に当接して前記エアバッグドア15(ドアパネル15A,15B)の裏面端縁部位を押圧することで、前記外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断し得るようにしたものである。
【0014】前記当接部30は、図2〜図4に示すように、常には前記エアバッグ装置25側へ突出して断面形状が略U字形に形成された前記ヒンジ部23において、前記エアバッグドア15側に臨んだ凹部に所要間隔毎に突設されている。具体的には、ヒンジ部23における可動ブラケット部22に連設した斜状部分23aに一体的に形成されており、上面に形成した当接面33および下面に形成した作用面34とを有する当接体32と、該当接体32の側面と前記斜状部分23aとを連結する連結片35とから構成されている。前記当接面33は、前記当接受部31に設けた当接受面37に整合して当接するようになり、また前記作用面34は、前記ヒンジ部23における曲面部分23bに整合して当接するようになる。従って図5に示すように、前記エアバッグ装置25が作動して膨張を開始したエアバッグ26の押圧力がヒンジ部23の曲面部分23bに作用すると、その押圧力が当接部30の当接体32に作用するようになる。
【0015】また前記当接部30の当接体32は、図3および図8に示すように、前記連結片35の屈曲変形または撓曲変形により、前記当接受部31に対する当接方向とは異なる方向への傾倒的な変形(図示矢印A方向および矢印B方向)が可能となっている。従って、前記開裂予定線16における外縁開裂予定線16bおよび中央開裂予定線16aが破断した後に、開放するドアパネル15A,15Bがヒンジ部23に対して姿勢変位するに際し、前記当接体32が傾倒的に変形可能となっていることで前記当接受部31との干渉が回避され、該ドアパネル15A,15Bがスムーズに開放するようになっている。
【0016】前記当接受部31は、夫々のドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位において、前記外縁開裂予定線16bに沿って帯状に突設され、対応するヒンジ部23における凹部に整合して臨んでいる。そして、当接受部31の下面において前記当接部30に対応した部位には、該当接部30における当接体32の当接面33に整合する当接受面37が形成されており、これら当接面33および当接受面37が密着的に整合した状態において当接部30の押圧力が当接受部31へ伝達される。なお前記当接面33および当接受面37は、図5に示すように、ドアパネル15A,15Bの端縁側へ向けて下り勾配の傾斜面とされており、当接部30による押圧力は当接受部31に対して前記外縁開裂予定線16bの方向へ作用するようになっている。
【0017】
【実施例の作用】次に、前述のように構成された本実施例に係るエアバッグドアの開放構造の作用につき説明する。
【0018】前記インサート部材20は、例えばインジェクション成形技術に基いて、固定ブラケット部21、可動ブラケット部22、ヒンジ部23および当接部30が一体的に形成される。またエアバッグドア15は、パネル基材11をインジェクション成形するに際して該パネル基材11と同時に形成され、この際に前記当接受部31も同時に形成される。そして前記インサート部材20は、パネル基材11の裏面(エアバッグドア15の裏面)に対して例えば振動溶着技術に基いて装着され、固定ブラケット部21はエアバッグドア15の外周部位に固定されると共に、可動ブラケット部22,22は対応のドアパネル15A,15Bに固定される。
【0019】ここで、インサート部材20をパネル基材11の裏面に装着した状態では、夫々のヒンジ部23,23に突設した各当接部30における当接体32の当接面33が、エアバッグドア15のドアパネル15A,15Bに突設した当接受部31における当接面37に密着的に整合している(図1および図2)。
【0020】そして、エアバッグ装置25が作動を開始したエアバッグ26の膨張初期段階では、図5に示すように、膨張する該エアバッグ26の上面が各可動ブラケット部22および各ヒンジ部23の曲面部分23bを下方から押圧するようになる。この際にドアパネル15A,15Bにおいては、可動ブラケット部22が接触する領域では該可動ブラケット部22を介してエアバッグ26の押圧力を受けるようになり、また外縁開裂予定線16bに隣接した端縁部位においては、ヒンジ部23、当接部30の当接体32、当接受部31を介してエアバッグ26の押圧力を受けるようになる。
【0021】ここで、各可動ブラケット部22および各ヒンジ部23にエアバッグ26の押圧力が加わった時点では、インサート部材20の破断予定線24が未だ破断していないので両可動ブラケット部22,22は1枚の板状に一体的に接合しており、かつ該可動ブラケット部22,22は固定ブラケット部21に対する移動が規制されていないことから(ヒンジ部23,23が最大に伸張していない)、エアバッグ26の押圧により発生する応力は、中央開裂予定線16aよりも外縁開裂予定線16bへ集中して作用するようになる。しかもエアバッグ26の押圧力が、前述した如く、ヒンジ部23、当接部30および当接受部31を介してドアパネル15A,15Bにおける裏面端縁部位へ直接的に作用するようになるから、外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断するようになる(図6)。
【0022】そして、外縁開裂予定線16bでの破断が進行して完了すると、エアバッグドア15はパネル基材11から分離してフリー状態となると共に、ヒンジ部23が未だ最大に伸張変形していないので、エアバッグドア15および可動ブラケット部22は、夫々のヒンジ部23,23が最大に伸張変形するまで一体的に浮上移動する(図7)。なお、各ヒンジ部23,23が最大に伸張変形した時点でも、中央開裂予定線16aでの破断は未だ始まっていない。
【0023】外縁開裂予定線16bでの破断が完了し、各ヒンジ部23,23が最大に伸張変形して可動ブラケット部22の浮上移動が規制されると、エアバッグ26の押圧により中央開裂予定線16aおよび破断予定線24が夫々破断するようになる。そして、中央開裂予定線16aおよび破断予定線24での破断が完了すると、エアバッグドア15の各ドアパネル15A,15Bおよび可動ブラケット部22,22の開放変位が許容されるようになる。これにより両可動ブラケット部22,22は、膨張するエアバッグ26に押圧されながらヒンジ部23,23を中心として回動し、対応のドアパネル15A,15Bと共に乗員室側へ一気に開放するようになる(図8)。
【0024】このとき、エアバッグドア15の各ドアパネル15A,15Bをパネル基材11から浮上させた状態で前記可動ブラケット部22,22が開放するようになるから、該可動ブラケット部22,22と一体的に開放する該ドアパネル15A,15Bの端部がパネル基材11に干渉するのが好適に回避され、両ドアパネル15A,15Bの開放がスムーズになされる。しかも、可動ブラケット部22が対応のヒンジ部23に対して姿勢変位するに際し、前記当接受部31が前記当接部30の当接体32に接触したとしても、該当接体32が適宜傾倒的に変形して当接受部31と当接体32(当接部30)との干渉が好適に回避され、ドアパネル15A,15Bの開放に支障を来すことがない。
【0025】このように本実施例に係るエアバッグドアの開放構造では、前記ヒンジ部23の所要位置に突設した当接部30と、前記エアバッグドア15のドアパネル15A,15Bの裏面に延設されて前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bに隣接した当接受部31とにより、前記エアバッグ装置25のエアバッグ26が前記ヒンジ部23を押圧した際に、該エアバッグ26の押圧力がドアパネル15A,15Bの裏面端縁部位に好適に作用するようになるので、前記開裂予定線16の外縁開裂予定線16bが適切かつ確実に破断するようになる。従って、中央開裂予定線16aの破断より外縁開裂予定線16bの破断が好適に先行するようになり、エアバッグドア15が適切に開放するようになる。
【0026】なお前記実施例では、合成樹脂製のインサート部材20を採用することを前提として、該インサート部材20のヒンジ部23に当接部30を一体的に形成する場合を例示したが、本実施例の開放構造は金属製のインサート部材でも実施可能である。すなわち、金属製のインサート部材であっても、ヒンジ部23を略U字形に形成し得ると共に、該ヒンジ部23の所要位置に当接部30を設けることが可能である。
【0027】また実施例では、2枚のドアパネル15A,15Bからなる両開き式のエアバッグドア15における開放構造を例示したが、本願の開放構造は、1枚のドアパネルからなる片開き式のエアバッグドア、4枚のドアパネルからなる4方開き式のエアバッグドア等にも実施可能である。
【0028】更に前記実施例では、2層タイプのインストルメントパネル10を例示したが、本願のエアバッグドアの開放構造は、前記パネル基材11のみから構成される単層タイプのインストルメントパネルに設けたエアバッグドア、パネル基材11、表皮材12およびクッション材からなる3層タイプのインストルメントパネルに設けたエアバッグドアにも実施可能である。
【0029】更にまた、本願の開放構造を実施可能なエアバッグドアは、前記インストルメントパネル10に設けたものの他に、ドアパネルやピラーガーニッシュ等に設けたもの等も含まれる。
【0030】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係るエアバッグドアの開放構造によれば、ヒンジ部の所要位置に突設した当接部と、エアバッグドアの裏面に延設されて開裂予定線に隣接した当接受部とにより、前記エアバッグ装置のエアバッグが前記ヒンジ部を押圧した際に該エアバッグの押圧力がエアバッグドアの裏面に好適に作用するようになるので、前記開裂予定線が適切かつ確実に破断するようになる。従って、開裂予定線が適切かつ確実に破断するようになるので、エアバッグドアが適切に開放するようになる有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適実施例に係るエアバッグドアの開放構造を、パネル基材に設けたエアバッグドアの形成部位で破断して示すインストルメントパネルの要部断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図であって、当接部における当接体が傾倒的に変形可能なことを示している。
【図4】インサート部材のヒンジ部に突設した当接部と、パネル基材に設けたエアバッグドアのドアパネルに突設した当接受部とを示す概略斜視図である。
【図5】エアバッグの膨張初期段階を示す要部断面図であって、該エアバッグの押圧力がヒンジ部、当接部および当接受部を介してドアパネルの裏面端縁部位に加わるようになることを示している。
【図6】図5の状態から更にエアバッグが膨張した状態を示す要部断面図であって、該エアバッグの押圧力がドアパネルの裏面端縁部位に加わることで外縁開裂予定線が破断し、ドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上し始めたことを示している。
【図7】図6の状態から更にエアバッグが膨張した状態を示す要部断面図であって、ヒンジ部が最大に伸張変形するまでドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上したことを示している。
【図8】中央開裂予定線が破断することで、可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放した状態を示す要部断面図である。
【図9】従来のエアバッグドアの開放構造を、パネル基材に設けたエアバッグドアの形成部位で破断して示すインストルメントパネルの要部断面図である。
【図10】エアバッグの押圧により外縁開裂予定線が破断して、ヒンジ部が最大に伸張変形するまでドアパネルおよび可動ブラケット部が一体的に浮上した状態を示す説明断面図である。
【図11】中央開裂予定線が破断することで、可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放する状態を示す説明断面図である。
【図12】エアバッグドアの開放変位を経時的に示す説明図であって、(a)は、エアバッグの押圧力がエアバッグドアの裏面に適宜加わった状態の斜視図、(b)は、外縁開裂予定線が破断することでエアバッグドアと可動ブラケット部とが一体的に浮上移動した状態の斜視図、(c)は、中央開裂予定線が破断することで可動ブラケット部とドアパネルとが一体的に開放し始めた状態の斜視図である。
【図13】エアバッグの押圧力がドアパネルの裏面端縁部位に加わらないことにより、外縁開裂予定線が適切に破断しない不都合を示す説明断面図である。
【符号の説明】
11 基材, 15 エアバッグドア
15A,15B ドアパネル, 25 エアバッグ装置
16 開裂予定線, 16b 外縁開裂予定線
20 インサート部材, 23 ヒンジ部
30 当接部, 31 当接受部
32 当接体
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両内装部材の基材(11)に一体的に形成され、常には該基材(11)の一部を構成するエアバッグドア(15/15A,15B)と、該基材(11)の裏面において前記エアバッグドア(15/15A,15B)の外縁ラインに沿って延設され、エアバッグ装置(25)の作動時に破断して該エアバッグドア(15/15A,15B)を前記基材(11)から分離させる開裂予定線(16/16b)と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に固定したインサート部材(20)に変形可能に設けられ、開放する該エアバッグドア(15/15A,15B)を支持するヒンジ部(23)とからなる開放構造において、前記ヒンジ部(23)の所要位置に突設され、前記開裂予定線(16/16b)の近傍に先端を臨ませた当接部(30)と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に延設されて前記開裂予定線(16/16b)に隣接し、前記エアバッグ装置(25)の作動時に前記当接部(30)が当接可能な当接受部(31)とからなり、前記エアバッグ装置(25)のエアバッグ(26)が前記ヒンジ部(23)を押圧した際に、前記当接部(30)が当接受部(31)に当接して前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面を押圧することで前記開裂予定線(16/16b)が破断し得るよう構成したことを特徴とするエアバッグドアの開放構造。
【請求項2】 前記当接部(30)は、常には前記エアバッグ装置(25)側へ突出した略U字形に形成された前記ヒンジ部(23)において、前記エアバッグドア(15/15A,15B)側に臨んだ凹部に突設されている請求項1記載のエアバッグドアの開放構造。
【請求項3】 前記当接部(30)の当接体(32)は、前記当接受部(31)に対する当接方向とは異なる方向への変形が可能であり、前記エアバッグドア(15/15A,15B)が開放する際に該当接受部(31)との干渉を回避し得るようになっている請求項1または2記載のエアバッグドアの開放構造。
【請求項1】 車両内装部材の基材(11)に一体的に形成され、常には該基材(11)の一部を構成するエアバッグドア(15/15A,15B)と、該基材(11)の裏面において前記エアバッグドア(15/15A,15B)の外縁ラインに沿って延設され、エアバッグ装置(25)の作動時に破断して該エアバッグドア(15/15A,15B)を前記基材(11)から分離させる開裂予定線(16/16b)と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に固定したインサート部材(20)に変形可能に設けられ、開放する該エアバッグドア(15/15A,15B)を支持するヒンジ部(23)とからなる開放構造において、前記ヒンジ部(23)の所要位置に突設され、前記開裂予定線(16/16b)の近傍に先端を臨ませた当接部(30)と、前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面に延設されて前記開裂予定線(16/16b)に隣接し、前記エアバッグ装置(25)の作動時に前記当接部(30)が当接可能な当接受部(31)とからなり、前記エアバッグ装置(25)のエアバッグ(26)が前記ヒンジ部(23)を押圧した際に、前記当接部(30)が当接受部(31)に当接して前記エアバッグドア(15/15A,15B)の裏面を押圧することで前記開裂予定線(16/16b)が破断し得るよう構成したことを特徴とするエアバッグドアの開放構造。
【請求項2】 前記当接部(30)は、常には前記エアバッグ装置(25)側へ突出した略U字形に形成された前記ヒンジ部(23)において、前記エアバッグドア(15/15A,15B)側に臨んだ凹部に突設されている請求項1記載のエアバッグドアの開放構造。
【請求項3】 前記当接部(30)の当接体(32)は、前記当接受部(31)に対する当接方向とは異なる方向への変形が可能であり、前記エアバッグドア(15/15A,15B)が開放する際に該当接受部(31)との干渉を回避し得るようになっている請求項1または2記載のエアバッグドアの開放構造。
【図1】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図12】
【図8】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2003−137056(P2003−137056A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−340974(P2001−340974)
【出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年11月6日(2001.11.6)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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