説明

エアバッグ装置

【課題】 エアバッグの展開時に乗員拘束面を正しく車幅方向に沿わせる。
【解決手段】 エアバッグ16が展開する過程で車幅方向に対して傾斜するフロントウインドシールド36に当接すると、エアバッグ16が前後方向に対して傾斜する方向(フロントウインドシールド36に対して直交する方向)に展開して乗員拘束面35が車幅方向に対して傾斜してしまうが、エアバッグ16の第1、第2側部展開面31,32のうち、フロントウインドシールド36の車幅方向内側部分に当接して車体後方に展開する第1側部展開面31を、フロントウインドシールド36の車幅方向外側部分に当接して車体後方に展開する第2側部展開面32bよりも長く形成したので(L1>L2)、乗員拘束面35を車幅方向に沿わせて乗員を確実に拘束することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレータが発生するガスでフロントウインドシールドに沿う位置から車体後方に向かって展開するエアバッグが、前記フロントウインドシールドの車幅方向内側部分に当接して車体後方に展開する第1側部展開面と、前記フロントウインドシールドの車幅方向外側部分に当接して車体後方に展開する第2側部展開面と、前記第1、第2側部展開面の展開方向先端に連なって乗員に対向する乗員拘束面とを備えるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
助手席用のエアバッグの上壁部および下壁部に形成した襞部を破断可能に縫製し、エアバッグが展開する過程で縫製を破断して襞部を解放することで、エアバッグの展開速度を低下させるものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特開平2−20458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、インフレータが発生するガスでエアバッグをフロントウインドシールドに沿う位置から車体後方に向かって展開させるとき、エアバッグが当接するフロントウインドシールドの内面が車幅方向に対して斜めに傾斜しているため、フロントウインドシールドから受ける反力でエアバッグの展開方向が車体前後方向に対して傾斜してしまい、エアバッグの乗員拘束面が車幅方向に対して傾斜して乗員を確実に拘束できなくなる可能性がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エアバッグの展開時に乗員拘束面を正しく車幅方向に沿わせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、インフレータが発生するガスでフロントウインドシールドに沿う位置から車体後方に向かって展開するエアバッグが、前記フロントウインドシールドの車幅方向内側部分に当接して車体後方に展開する第1側部展開面と、前記フロントウインドシールドの車幅方向外側部分に当接して車体後方に展開する第2側部展開面と、前記第1、第2側部展開面の展開方向先端に連なって乗員に対向する乗員拘束面とを備えるエアバッグ装置において、前記第1側部展開面は前記第2側部展開面よりも前後方向長さが長く形成されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0006】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1、第2側部展開面は、それぞれ前後方向に重合して破断可能な接合部により接合される第1、第2襞部を備え、前記第1、第2襞部の重合量は同一であることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0007】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記第1襞部の前記フロントウインドシールドからの距離は、前記第2襞部の前記フロントウインドシールドからの距離よりも大きいことを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0008】
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1、第2側部展開面は、それぞれ前後方向に重合して破断可能な接合部により接合される第1、第2襞部を備え、前記第1襞部の重合量を前記第2襞部の重合量よりも大きく設定したことを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0009】
また請求項5に記載された発明によれば、請求項2〜請求項4の何れか1項の構成に加えて、前記第1、第2襞部の襞の方向を前記エアバッグの展開方向に対して傾斜させたことを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0010】
また請求項6に記載された発明によれば、請求項2〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記第1、第2襞部の襞を前記エアバッグの内部に向けて突出させたことを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
【0011】
尚、実施の形態の第1、第2縫製S1,S2は本発明の接合部に対応する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の構成によれば、エアバッグが展開する過程で車幅方向に対して傾斜するフロントウインドシールドに当接すると、エアバッグが前後方向に対して傾斜する方向(フロントウインドシールドに対して直交する方向)に展開して乗員拘束面が車幅方向に対して傾斜してしまうが、エアバッグの第1、第2側部展開面のうち、フロントウインドシールドの車幅方向内側部分に当接して車体後方に展開する第1側部展開面を、フロントウインドシールドの車幅方向外側部分に当接して車体後方に展開する第2側部展開面よりも長く形成したので、乗員拘束面を車幅方向に沿わせて乗員を確実に拘束することができる。
【0013】
また請求項2の構成によれば、第1、第2側部展開面にそれぞれ重合量が同一の第1、第2襞部を設け、エアバッグが展開する過程で接合部を破断させて第1、第2襞部の重合を解くので、エアバッグの内圧を早期に高めて乗員拘束面の方向を安定させたままエアバッグを完全に展開することができる。
【0014】
また請求項3の構成によれば、第1襞部のフロントウインドシールドからの距離を、第2襞部のフロントウインドシールドからの距離よりも大きくしたので、エアバッグがフロントウインドシールド側の部分から乗員拘束面側に向かって膨張する過程で、第1、第2側部展開面が第1、第2襞部の位置まで展開するタイミングが一致する。仮に、第1、第2側部展開面の一方だけが第1、第2襞部の位置まで展開した状態で乗員拘束面に乗員が当接してエアバッグの内圧が増加した場合、第1、第2襞部のうちの一方の襞部だけが重合を解かれて伸長し、乗員拘束面が傾斜する可能性がある。しかしながら、第1襞部のフロントウインドシールドからの距離を、第2襞部のフロントウインドシールドからの距離よりも大きくしたことで、第1、第2側部展開面の両方が同時に第1、第2襞部の位置まで展開することになり、それ以後に乗員拘束面に乗員が当接したときに、第1、第2襞部の重合を同時に解いて乗員拘束面の傾斜を防止することができる。
【0015】
また請求項4の構成によれば、第1側部展開面に重合量が大きい第1襞部を設けるとともに、第2側部展開面に重合量が小さい第2襞部を設け、エアバッグが展開する過程で接合部を破断させて第1、第2襞部の重合を解くので、エアバッグが途中まで展開して接合部が破断するときに、エアバッグが未だフロントウインドシールドに当接しておらず、エアバッグを傾斜させるモーメントが発生していなくても、その時点でのエアバッグの形状を左右対称にして乗員拘束面が車幅方向に対して傾斜するのを防止することができる。その後にエアバッグがフロントウインドシールドに当接して傾斜したとき、接合部が破断して重合量が異なる第1、第2襞部の重合が解かれることで、フロントウインドシールドとの当接による傾斜を第1、第2側部展開面の長さの差で補償して乗員拘束面の傾きを防止することができる。
【0016】
また請求項5の構成によれば、第1、第2襞部の襞の方向をエアバッグの展開方向に対して傾斜させたので、第1、第2襞部の接合部を前端側から後端側に向けてスムーズに破断させることができる。
【0017】
また請求項6の構成によれば、第1、第2襞部の襞をエアバッグの内部に向けて突出させたので、接合部が破断して第1、第2襞部の重合が解けるときに、第1、第2襞部が形成された第1、第2側部展開面が車幅方向に広がり難くし、乗員拘束面を確実に前後方向にストロークさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。
【0019】
図1〜図6は本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は自動車の車室前部の斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3はエアバッグの展開完了後の状態を示す、前記図2に対応する図、図4はエアバッグの展開途中の形状を示す斜視図、図5はエアバッグの展開過程の説明図(その1)、図6はエアバッグの展開過程の説明図(その2)である。
【0020】
図1に示すように、自動車の助手席11の前方に位置するインストルメントパネル12にエアバッグ装置13が設けられる。エアバッグ装置13はインストルメントパネル12に形成した長方形の開口14(図3参照)を開閉する2枚のリッド15,15を備えており、これらのリッド15,15はインストルメントパネル12と一体成形される。
【0021】
図2および図3に示すように、インストルメントパネル12の下面にはリッド15,15の外縁を区画する薄肉の破断部12aが形成されており、エアバッグ16の展開時に破断部12aが破断してリッド15,15が開放することで前記開口14が形成される。開口14を囲むインストルメントパネル12の下面に長方形の枠状に形成された金属製の補強プレート17が固定される。インストルメントパネル12に固定される補強プレート17の固定部17aの内周には前後一対の帯状の折曲部17b,17bが一体に形成されており、これらの折曲部17b,17bは開口14の前縁および後縁に沿うようにインストルメントパネル12の内側に下向きに延びている。各々の折曲部17bの下端から複数のL字状の延長部17c…が下向きに延びている。
【0022】
前側のリッド15の前縁および後側のリッド15の後縁は、それぞれ金属製のヒンジプレート18,18を介して開口14の前後のインストルメントパネル12に開閉自在に支持される。各々のヒンジプレート18は、補強プレート17の固定部17aの下面に重ね合わされる固定部18aと、リッド15の下面に熱カシメ等で固定される可動部18bと、固定部18aおよび可動部18bを接続する複数のヒンジ部18c…とを備える。各々のヒンジ部18cは断面U字状に形成されており、インストルメントパネル12の内部に向かって延びている。補強プレート17の折曲部17bはヒンジプレート18のヒンジ部18c内に嵌合するとともに、補強プレート17の延長部17c…はヒンジプレート18の隣接するヒンジ部18c…の間を通過して下方に延びている。
【0023】
各々のヒンジプレート18の固定部18aの下面に金属製の取付ブラケット19の固定部19aが重ね合わされて固定される。取付ブラケット19の固定部19aから複数のL字状のモジュール支持部19b…が下向きに延びている。
【0024】
そしてインストルメントパネル12の下面に重ね合わされた補強プレート17の固定部17aと、ヒンジプレート18の固定部18aと、取付ブラケット19の固定部19aとは、ボルト20…およびナット21…によって共締めされる。
【0025】
エアバッグモジュール23は、上面が開放した容器状のリテーナ24と、リテーナ24の底部に支持された円筒状のインフレータ25と、折り畳まれた状態でボルト26…およびナット27…でリテーナ24に固定されたエアバッグ16とを備える。リテーナ24の上端開口部は、補強プレート17の延長部17c…および取付ブラケット19のモジュール支持部19bにクリップ28…で共締めされる。
【0026】
次に、図4〜図6に基づいてエアバッグ16の構造を説明する。
【0027】
図4および図5に示すように、エアバッグ16は、車幅方向内側に位置する第1側部展開面31と、車幅方向外側に位置する第2側部展開面32と、上側に位置する上部展開面33と、下側に位置する下部展開面34と、第1、第2側部展開面31,32、上部展開面33および下部展開面34の先端(後端)に接続されて乗員の頭部に対向する乗員拘束面35とを備える。
【0028】
展開したエアバッグ16の前部が当接するフロントウインドシールド36は、車幅方向内側部分が前方側に偏倚し、車幅方向外側部分が後方側に偏倚するように斜めに傾斜しているため、エアバッグ16はフロントウインドシールド36から受ける反力で、フロントウインドシールド36に対して垂直な方向に展開しようとする。その結果、エアバッグ16の軸線Cは車体前後方向に対して斜めに傾斜し、かつ乗員拘束面35が車幅方向に対して斜めに傾斜するため、乗員を効果的に拘束できない可能性がある。
【0029】
そこで図5(C)に示すように、完全に展開した状態のエアバッグ16は、車幅方向両側にあって相互に対向する第1、第2側部展開面31,32の車体前後方向の長さが、相互に異なるように形成される。即ち、フロントウインドシールド36までの距離が大きい車幅方向内側(図5(C)の上側)の第1側部展開面31は、車体前後方向の長さL1を大きく設定し、フロントウインドシールド36までの距離が小さい車幅方向外側(図5(C)の下側)の第2側部展開面32は、車体前後方向の長さL2を小さく設定する。これにより、展開完了後のエアバッグ16の軸線Cを車体前後方向に一致させ、かつ乗員拘束面35の方向を車幅方向に一致させることができる。
【0030】
エアバッグ16の第1側部展開面31には、それを前後方向に重合して第1縫製S1,S1により固定した2個の第1襞部31a,31aが上下方向に形成される。同様に、エアバッグ16の第2側部展開面32には、それを前後方向に重合して第2縫製S2,S2により固定した2個の第2襞部32a,32aが上下方向に形成される。第1襞部31a,31aおよび第2襞部32a,32aの前後方向位置は車幅方向に整列している。即ち、前側の第1襞部31aとフロントウインドシールド36との距離L3は、前側の第2襞部32aとフロントウインドシールド36との距離L4よりも大きく、よって前側の第1、第2襞部31a,32aよりも前方でエアバッグ16は左右非対称に形成され、後方でエアバッグ16は左右対称に形成される。
【0031】
第1側部展開面31の第1襞部31a,31aの重合量W1は、第2側部展開面32の第2襞部32a,32aの重合量W2に等しく設定される。また前方に位置する第1、第2襞部31a,32aの縫製S1,S2の破断強度は、後方に位置する第1、第2襞部31a,32aの第1縫製S1,S2の破断強度よりも低く設定される。従って、エアバッグ16が展開する過程で、先ず前側の第1、第2襞部31a,32aの第2縫製S1,S2が破断し、それに遅れて後側の第1、第2襞部31a,32aの縫製S1,S2が破断する。
【0032】
次に、上記構成を備えた実施の形態の作用について説明する。
【0033】
車両が衝突して所定値以上の減速度が検出されると、エアバッグモジュール23のインフレータ25が高圧のガスが発生し、そのガスで折り畳み状態のエアバッグ16が膨張する。図3に示すように、リテーナ24の内部でエアバッグ16が膨張すると、その圧力がインストルメントパネル12のリッド15,15の下面に作用し、リッド15,15を囲むインストルメントパネル12の破断部12aが破断してリッド15,15が開放することで、インストルメントパネル12に形成された開口14からエアバッグ16が車室内に展開する。
【0034】
前後一対のリッド15,15が開放するとき、それらの下面に設けたヒンジプレート18,18のヒンジ部18c…を支点にして上方に回動するが、ヒンジ部18c…はU字状に形成されているために容易に折れ曲がってリッド15,15をスムーズに開放することができる。
【0035】
図5(A)に示すように、エアバッグ16が車室内に展開すると、その前部が直ちにフロントウインドシールド36に当接し、フロントウインドシールド36から車体前後方向に対して傾斜した反力Fを受けるが、前側の第1、第2襞部31a,32aより前方でエアバッグ16が左右非対称に形成されているため、つまり第1側部展開面31の第1襞部31aからフロントウインドシールド36までの距離L3が、第2側部展開面32の第2襞部32aからフロントウインドシールド36までの距離L4よりも大きく設定されているため、前記非対称部分が展開した時点で、エアバッグの軸線Cは車体前後方向に一致する。
【0036】
インフレータ25から供給されるガスでエアバッグ16の内圧が更に増加すると、図5(B)に示すように、先ず前側の第1、第2襞部31a,32aの第1、第2縫製S1,S2が破断して乗員拘束面35が車幅方向に整列したまま後方にストロークし、更に図5(C)に示すように、後側の第1、第2襞部31a,32aの第1、第2縫製S1,S2が破断して乗員拘束面35が車幅方向に整列したまま後方にストロークすることで、エアバッグ16が完全に展開する。この最終展開状態において、フロントウインドシールド36までの距離が大きい第1側部展開面31の車体前後方向の長さL1が大きく、フロントウインドシールド36までの距離が小さい第2側部展開面32の長さL2が小さく設定されているため、エアバッグ16の軸線Cを車体前後方向に一致させ、かつ乗員拘束面35の方向を車幅方向に一致させることができる。
【0037】
通常、エアバッグ16が図5(C)に示す完全展開状態になった後に、その乗員拘束面35に乗員が当接するが、車両の衝突の状況によっては、エアバッグ16が完全展開状態になる前に乗員拘束面35に乗員が当接することがある。
【0038】
図6(B)に示すように、仮に第1側部展開面31の第1襞部31aからフロントウインドシールド36までの距離L3′が、第2側部展開面32の第2襞部32aからフロントウインドシールド36までの距離L4′と等しく設定されていると、第1側部展開面31は第1襞部31aの後方まで展開しているのに、第2側部展開面32は第2襞部32aの前方までしか展開していない状態が生じる。この状態で乗員拘束面35に乗員が当接してエアバッグ16の内圧が増加すると、第1側部展開面31の第1襞部31aの縫製S1が破断しても、第2側部展開面32の第2襞部32aの縫製S2が破断しない場合があり、第1側部展開面31が第2側部展開面32よりも余分に伸長して乗員拘束面35が傾斜する虞がある。
【0039】
しかしながら本実施の形態によれば、図6(A)に示すように、第1側部展開面31の第1襞部31aからフロントウインドシールド36までの距離L3が、第2側部展開面32の第2襞部32aからフロントウインドシールド36までの距離L4よりも大きく設定されているため、第1側部展開面31が第1襞部31aの後方まで展開しているのに、第2側部展開面32は第2襞部32aの前方までしか展開していない状態は生じない。よって、図6(A)に示すように、エアバッグ16の展開の途中で乗員拘束面35に乗員が当接して内圧が増加しても、第1側部展開面31の第1襞部31aの第1縫製S1および第2側部展開面32の第2襞部32aの第2縫製S2は同じタイミングで破断し、乗員拘束面35の傾斜を防止することができる。
【0040】
次に、図7に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0041】
第1の実施の形態は、エアバッグ16が展開を開始した直後にフロントウインドシールド36に当接することを前提としているが、第2の実施の形態は、エアバッグモジュール23とフロントウインドシールド36との前後方向の位置関係等の要因により、エアバッグ16の第1、第2襞部31a,31a;32a,32aの第1、第2縫製S1,S1;S2,S2が破断する直前にエアバッグ16がフロントウインドシールド36に当接することを前提としている。
【0042】
この場合、エアバッグ16は展開の前半でフロントウインドシールド36に当接せず、フロントウインドシールド36から反力を受けないため、その展開中にエアバッグ16の軸線Cが車体前後方向に対して傾斜することがない。そしてエアバッグ16が中間状態まで展開して内圧が上昇し、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aの第1、第2縫製S1,S1;S2,S2が破断する直前に、エアバッグ16がフロントウインドシールド36に当接する。その結果、エアバッグ16はフロントウインドシールド36から反力を受けて軸線Cが車体前後方向に対して傾斜する。
【0043】
このように、第2の実施の形態では、展開過程の前半でエアバッグ16が傾斜せず、後半でエアバッグ16が傾斜するため、その後半でエアバッグ16の傾斜防止を行う必要がある。そのために、本実施の形態では、第1側部展開面31の第1襞部31a,31aの重合量W1を、第2側部展開面32の第2襞部32a,32aの重合量W2よりも大きく設定している。
【0044】
従って、エアバッグ16が中間状態まで展開してフロントウインドシールド36に当接し、フロントウインドシールド36から反力を受けてエアバッグ16の軸線Cが車体前後方向に対して傾斜するタイミングに合わせて、第1側部展開面31の第1襞部31a,31aおよび第2側部展開面32の第2襞部32a,32aの重合が解け、第1襞部31a,31aの重合量W1が大きい第1側部展開面31が、第2襞部32a,32aの重合量W2が小さい第2側部展開面32よりも余分に伸長することで、エアバッグ16は乗員拘束面35の傾斜を防止しながら最終形状まで展開することができる。
【0045】
次に、図8に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0046】
第1、第2の実施の形態では、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aの延びる方向が上下方向に沿っているが、第3の実施の形態では、第1側部展開面31の第1襞部31a,31aが前下から後上に傾斜して配置され、第2側部展開面32の第2襞部32a,32aが前上から後下に傾斜して配置される。
【0047】
このように、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aを斜めに配置することで、その前端から後端に向かって第1、第2縫製S1,S1;S2,S2の破断をスムーズに進行させることができる。しかも、第1襞部31a,31aおよび第2襞部32a,32aの傾斜方向が逆になっているので、第1、第2縫製S1,S1;S2,S2の破断に伴って乗員拘束面35が車幅方向に対して傾斜するのを防止することができる。
【0048】
次に、図9に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
【0049】
第1〜第3の実施の形態では、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aがエアバッグ16の外部に向かって突出しているが、第4の実施の形態では、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aがエアバッグ16の内部に向かって突出している。このように、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aをエアバッグ16の内部に向かって突出させると、第1、第2縫製S1,S1;S2,S2が破断したときに、第1、第2襞部31a,31a;32a,32aを車幅方向に広がり難くし、乗員拘束面35を確実に前後方向にストロークさせることができきる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0051】
例えば、実施の形態では接合部を第1、第2縫製S1,S2で構成しているが、それを基布の接着や基布の織りで構成することができる。
【0052】
また実施の形態では第1、第2側部展開面31,32に各2本の襞部31a,31a;32a,32aを形成しているが、襞部の数は任意である。
【0053】
また実施の形態では第1、第2襞部31a,31a;32a,32aの第1、第2縫製S1,S1;S2,S2を前側のものから先に破断しているが、それらを同時に破断しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態に係る自動車の車室前部の斜視図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】エアバッグの展開完了後の状態を示す、前記図2に対応する図
【図4】エアバッグの展開途中の形状を示す斜視図
【図5】エアバッグの展開過程の説明図(その1)
【図6】エアバッグの展開過程の説明図(その2)
【図7】第2の実施の形態に係るエアバッグの展開過程の説明図
【図8】第3の実施の形態に係るエアバッグの側面図
【図9】第4の実施の形態に係るエアバッグの展開過程の説明図
【符号の説明】
【0055】
16 エアバッグ
25 インフレータ
31 第1側部展開面
31a 第1襞部
32 第2側部展開面
32a 第2襞部
35 乗員拘束面
36 フロントウインドシールド
S1 第1縫製(接合部)
S2 第2縫製(接合部)
L1 第1側部展開面の前後方向長さ
L2 第2側部展開面の前後方向長さ
L3 第1襞部のフロントウインドシールドからの距離
L4 第2襞部のフロントウインドシールドからの距離
W1 第1襞部の重合量
W2 第2襞部の重合量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータ(25)が発生するガスでフロントウインドシールド(36)に沿う位置から車体後方に向かって展開するエアバッグ(16)が、前記フロントウインドシールド(36)の車幅方向内側部分に当接して車体後方に展開する第1側部展開面(31)と、前記フロントウインドシールド(36)の車幅方向外側部分に当接して車体後方に展開する第2側部展開面(32)と、前記第1、第2側部展開面(31,32)の展開方向先端に連なって乗員に対向する乗員拘束面(35)とを備えるエアバッグ装置において、
前記第1側部展開面(31)は前記第2側部展開面(32)よりも前後方向長さ(L1,L2)が長く形成されることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1、第2側部展開面(31,32)は、それぞれ前後方向に重合して破断可能な接合部(S1,S2)により接合される第1、第2襞部(31a,32a)を備え、前記第1、第2襞部(31a,32a)の重合量(W1,W2)は同一であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1襞部(31a)の前記フロントウインドシールド(36)からの距離(L3)は、前記第2襞部(32a)の前記フロントウインドシールド(36)からの距離(L4)よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第1、第2側部展開面(31,32)は、それぞれ前後方向に重合して破断可能な接合部(S1,S2)により接合される第1、第2襞部(31a,32a)を備え、前記第1襞部(31a)の重合量(W1)を前記第2襞部(32a)の重合量(W2)よりも大きく設定したことを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記第1、第2襞部(31a,32a)の襞の方向を前記エアバッグ(16)の展開方向に対して傾斜させたことを特徴とする、請求項2〜請求項4の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1、第2襞部(31a,32a)の襞を前記エアバッグ(16)の内部に向けて突出させたことを特徴とする、請求項2〜請求項5の何れか1項に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−162945(P2010−162945A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4847(P2009−4847)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】