説明

エアバッグ装置

【課題】排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられることを抑制すること。
【解決手段】エアバッグ装置は、左右一対の着座部の間で膨張展開可能なエアバッグ25と、ガスを供給可能なインフレータ24と、を備えている。そして、車両の側突時に、エアバッグ25は、着座部13に着座した乗員Pの間、車両の前後方向において乗員Pよりも後側に膨張展開するように形成されている。そして、ベントホール30は、エアバッグ25が膨張展開した状態において、乗員Pよりも後側に位置し、なおかつ、後側に向けて開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを備え、エアバッグ内部に供給されたガスを排出する排出口が形成されたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両側突時において乗員の側部を保護するようにしたエアバッグ装置が各種提案されている。例えば、特許文献1には、座席シートのシートバックにおいて車両のサイドボディ側の側部に取り付けられるとともに、エアバッグ内に供給されたガスを所定量ずつ排出する排出口が形成されたサイドエアバッグ装置が記載されている。
【0003】
ところで、車両のサイドボディに側方から衝撃を受けた際、車幅方向に並んで配置された座席シートのうちこの衝撃を受けたサイドボディから離間した側の座席シートに着座する乗員、すなわち車両中央部を介して衝撃を受けた部位と反対側(ファーサイド)に着座する乗員が衝撃を受けたサイドボディ側に接近するように車内側方へ移動する場合がある。例えば、運転席側のサイドボディに衝突があった際に、助手席に着座する乗員が運転席側のサイドボディに接近するような場合である。そして、このように乗員が車内側方に移動すると、隣の乗員等と衝突する虞がある。そこで、従来、このような事態が起きたときにファーサイドに着座する乗員を保護するためのエアバッグ装置として、車幅方向に配設された一対の座席シートに着座する乗員の間でエアバッグを膨張展開させるファーサイド用のエアバッグ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表特許WO2002/100690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたファーサイド用のエアバッグ装置においても、先の特許文献1に記載されるサイドエアバッグ装置と同様に、エアバッグ内のガスを外部に排出する排出口を形成する必要がある。ここで、排出口から排出されるガスは高温高圧であるため、これが乗員に直接吹きつけられるような事態は回避することが望ましい。この点、特許文献1に記載されるサイドエアバッグ装置では、その排出口が膨張展開したエアバッグにおいて乗員と反対側に位置する側部、すなわちサイドボディ側の側部に形成されている。したがって、排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられてしまうことはない。しかしながら、ファーサイド用のエアバッグ装置では、そのエアバッグが乗員間で膨張するため、従来文献1に記載されるサイドエアバッグ装置と同様、膨張展開したエアバッグの側部に排出口を形成したとしても、各乗員のどちらかには排出口からガスが吹きつけられてしまうこととなる。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車幅方向に並んで配置される複数の座席シートの間でエアバッグが膨張展開した状態において排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられることを抑制できるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車幅方向に並んで配置される複数の座席シートの間で膨張展開可能なエアバッグと、前記エアバッグ内部にガスを供給するインフレータと、を備え、前記エアバッグに対して前記エアバッグ内部に供給されたガスを排出するための排出口が形成されたエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記座席シートに着座した乗員の間、及び車両の前後方向において乗員よりも後側に膨張展開し、前記エアバッグが膨張展開した状態において、前記排出口は、前記乗員よりも後側に位置するとともに後側に向けて開口することを要旨とする。
【0008】
この発明では、エアバッグが膨張展開した状態において、排出口は、乗員よりも後側に位置するとともに後側に向けて開口している。したがって、排出口は、エアバッグが膨張展開した状態において、乗員側とは反対側に向けてガスを排出するようになり、排出口から排出されたガスは、車両の前後方向において乗員から離れる方向へ向うようになる。その結果、エアバッグが膨張展開した状態において、排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられることを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記エアバッグが膨張展開した状態における前記エアバッグの下部を前記インフレータから供給されたガスが優先的に流入する上流側部位とし、かつ、前記エアバッグが膨張展開した状態における前記エアバッグの上部を下流側部位とし、前記排出口は、前記上部に形成されていることを要旨とする。
【0010】
エアバッグが膨張展開した後であれば、上述したように、排出口は乗員よりも後側に位置するとともに後側に向けて開口するようになるため、排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられることが抑制されるようになる。ただし、エアバッグが膨張展開する途中の段階にあっては、排出口の位置やその開口方向がそのときどきで異なるものとなるため、場合によっては、乗員にガスが吹きつけられる状況が一時的ではあるが生じる懸念がある。
【0011】
この点、上記発明では、インフレータから供給されたガスの多くは、エアバッグの下部側に向うため、エアバッグの膨張展開途中において、排出口から排出されるガスの量は少なくなる。したがって、エアバッグの膨張展開後はもとよりその途中の段階においても、排出口からのガスが乗員に吹きつけられることを抑制することができるようになる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記エアバッグ内には、前記インフレータから供給されたガスが前記下部側に向うように整流する整流布が設けられていることを要旨とする。
【0013】
この発明では、整流布によってガスの流れを整流することによって、エアバッグ内におけるインフレータのガス供給位置に拘わらず、供給されたガスの多くをエアバッグの下部側に向わせることができる。そのため、エアバッグの膨張展開途中に、排出口からガスが排出されることをより抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記エアバッグは、膨張展開した状態において、その上端部が車両のルーフに接触する一方、その下端部が前記座席シートの座部の間に配設された車室内構造体に接触することを要旨とする。
【0015】
この発明では、エアバッグが車室内構造体及び車両のルーフによって上下に挟まれることで、エアバッグの車幅方向への移動が規制される。そのため、エアバッグは側突時に車幅方向内側に倒れ込む乗員に対して確実に反力を作用させることができる。
【0016】
また、エアバッグの膨張展開時に、エアバッグがルーフ及び車室内構造体によって上下に挟まれても、排出口は、乗員よりも後側に位置して後側に向けて開口しているため、排出口がルーフや車室内構造体によって塞がれることはない。したがって、排出口から円滑にガスを排出させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車幅方向に並んで配置される複数の座席シートの間でエアバッグが膨張展開した状態において、排出口から排出されたガスが乗員に吹きつけられることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両を示す横断面図。
【図2】車両を示す部分側断面図。
【図3】展開した状態のエアバッグを示す平面図。
【図4】(a)は図3のA−A線部分断面図、(b)は図3のB−B線部分断面図。
【図5】車室内を上方から膨張展開した状態のエアバッグを俯瞰した俯瞰図。
【図6】エアバッグが膨張展開した状態であって、車両を示す部分側断面図。
【図7】エアバッグが膨張展開した状態であって、整流布の状態を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。なお、以下の記載において、方向を説明する際には、車両の前進方向を前方とし、それを基準に上、下、前、後、左、右を規定する。エアバッグについても同様に、膨張展開した状態を基準として上記各方向の規定に従うものとする。
【0020】
図1に示すように、車両11の床面12には、車幅方向に並んで配置される座席シートとしての左右一対の着座部13が設けられている。右側の着座部13は、乗員Pの臀部から大腿部を支える座部14と、リクライニング可能なシートバック15と、乗員Pの頭部Paを支えるヘッドレスト16とを備えている。そして、左側の着座部13は、右側の着座部13と同様の構成である。
【0021】
また、車両11の左右両側には、同車両11の側部の骨格の一部を構成するサイドボディ17が床面12に対してそれぞれ略鉛直に立設されるとともに、同車両11の上部には、ルーフ18が略水平に設けられている。また、サイドボディ17の上端部にはピラー19が立設されている。ピラー19はルーフ18を支持している。
【0022】
一対の着座部13の間には、車室内構造体としてのセンターコンソール20が設けられている。センターコンソール20の一部である第1構造部21は、座部14の内側面に沿って前後方向に延びている。図2に示すように、第1構造部21は、その上面21aが座部14の座面14aよりも高くなっている。第1構造部21の後端には、シートバック15の内側側面に沿って上下方向に延びる第2構造部22が連結されている。
【0023】
第2構造部22は、その上端部22aがシートバック15の上端15aと略同じ高さに達するまで上方に延びている。第2構造部22の上端部22aには、上方に開口する凹部22bが形成されている。凹部22bにはエアバッグ装置23が収容され組み付けられている。
【0024】
そして、エアバッグ装置23は、ガスを供給可能なインフレータ24と、インフレータ24から供給されるガスにより膨張展開するエアバッグ25とを含んでいる。インフレータ24の内部には図示しないガス発生剤が収容されている。インフレータ24は、図示しない制御装置から作動信号が入力されると、ガス発生剤を着火してガスを発生させる。エアバッグ25は、未膨張展開時において折り畳まれている。
【0025】
図3は、展開された状態のエアバッグ25を示している。図3に示すように、エアバッグ25は、1枚の基布が中央部25aで二つ折りされ、その状態で基布の側縁部同士が結合部26によって結合されている。エアバッグ25の結合部26は基布の周縁に沿って延びている。エアバッグ25の基布としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。エアバッグ25の上部M1には、基布の中央部25aにオーバーラップするようにインフレータ24のガス噴出部24aを挿入するための挿入孔27が形成されている。また、エアバッグ25の上部M1には、エアバッグ25の内部に位置するとともに、挿入孔27と重なるように整流布28が設けられている。整流布28は、二つ折りされたうえで結合部29によって結合されている。結合部29は、整流布28の長手方向略全体に亘って延びている。そのため、整流布28はチューブ状になっている。
【0026】
図4(a)に示すように、整流布28には、挿入孔27と連通する挿入孔28aが形成されている。そして、整流布28は、挿入孔27及び挿入孔28aの周囲を囲むように形成された結合部Lによってエアバッグ25と結合されている。整流布28内には、挿入孔27及び挿入孔28aを通じてインフレータ24(図2参照)のガス噴出部24aが配置されている。また、整流布28の周面には、エアバッグ25内部と整流布28の内部とを連通する一対の通気孔28b(図4(a)では一つのみ図示)が形成されている。図3に示すように、整流布28の第1開口28cは、エアバッグ25の下端部25b側を向いている。整流布28の第2開口28dは、エアバッグ25の上端部25c側を向いている。第1開口28cの開口面積は、第2開口28dの開口面積よりも小さくなるように設定されている。そして、整流布28は、その内部で噴出されたガスがエアバッグ25の下部M2に向うように整流する機能を有している。そのため、エアバッグ25の下部M2は、噴出されたガスが優先的に流入する上流側部位となっている。また、エアバッグ25の上部M1であって、上端部25cに近い部位には、エアバッグ25内部のガスを排出するベントホール30が形成されている。
【0027】
一方、エアバッグ25の下部M2には、エアバッグ25が膨張展開される際にエアバッグ25の下部M2の幅方向(図4(b)で示す矢印Y方向)の膨張量を規制するテザー31が設けられている。図4(b)に示すように、テザー31は織布からなるとともに、二つ折りされたエアバッグ25の基布の内面間を橋架するように設けられている。テザー31は、結合部33によってエアバッグ25の基布の内面に結合されている。結合部33は側面視において縦長の楕円形状に形成されている(図3参照)。
【0028】
図5に示すように、エアバッグ25は、膨張展開した状態において、エアバッグ25の車幅方向中央を基準として対称な形状となる。エアバッグ25は、前後方向において、乗員Pの胸部Pbよりも前側の領域S1から乗員Pよりも後側の領域S2に亘って膨張展開する大きさになっている。図6に示すように、エアバッグ25は、膨張展開した状態において、その上端部25cがルーフ18の下面18aに接触するとともに、その下端部25bが第1構造部21の上面21aに接触し、車幅方向の移動が規制される。
【0029】
以下、エアバッグ25が膨張展開した状態を前提としてベントホール30を説明する。ベントホール30は、前後方向において、乗員Pよりも後側であって、シートバック15と同じ位置に位置している。また、ベントホール30は、上下方向においてヘッドレスト16よりも上方に位置している。すなわち、ベントホール30は、エアバッグ25を車幅方向から見た場合に、乗員Pと重ならない位置に存在している。また、ベントホール30は、後側の斜め上方に向けて開口している。さらに、図5に示すように、ベントホール30は、エアバッグ25の車幅方向中央を基準として、左右対称に一対設けられている。そして、図5のように車室内の上方からエアバッグ25を俯瞰した場合に、左側のベントホール30Aは若干左側を向いて開口している。また、同様に、図5のように車室内の上方からエアバッグ25を俯瞰した場合に、右側のベントホール30Bは若干右側を向いて開口している。すなわち、一対のベントホール30A,30Bはそれぞれ車幅方向と交差する方向に開口するとともに、車両の前後方向において、乗員Pから離間する方向にエアバッグ25内部のガスを排出する。
【0030】
次に、本実施形態におけるエアバッグ装置23の作用を説明する。
車両のサイドボディ17に対する側突によってサイドボディ17に所定値以上の衝撃が加わると、図示しない制御装置は、図示しないセンサからの検出信号を受けて、インフレータ24に対して作動信号を出力する。すると、この作動信号に基づいてインフレータ24内のガス発生剤が着火されて高温高圧のガスが発生するようになる。そして、このガスはインフレータ24のガス噴出部24aによって整流布28内に噴出される。すると、エアバッグ25は、膨張展開するようになる。
【0031】
ここで、インフレータ24から供給されたガスを整流布28が整流する態様を、図7を用いて説明する。なお、理解を容易とするために、図7においては、各部材の当接個所を狭い間隔で離間して描いている。インフレータ24のガス噴出部24aからガスが噴出されると、整流布28は、図7に示すように、ガス圧により膨張した状態に変形する。そして、このように変形すると、第2開口28dの略全部が凹部22bの内壁面等に塞がれ、インフレータ24から供給されたガスの第2開口28dからの流出量は非常に少ない。また、エアバッグ25が折り畳まれた状態では、整流布28の第1開口28cは閉じられた状態となっており、整流布28が膨張するときには、その閉じられた第1開口28cの開口が遅れるので、エアバッグ25の膨張展開初期において、第1開口28cからのガスの流出量は少量である。
【0032】
そして、エアバッグ25の膨張展開途中において、インフレータ24のガス噴出部24aから噴出されたガスは、整流布28によって整流され、その多くが、整流布28の第1開口28cを通じてエアバッグ25の下部M2側に向い、一部のみが、通気孔28bから流出する。ここで、エアバッグ25が膨張展開する途中の段階において、ベントホール30の位置や開口方向はそのときどきで異なるため、場合によっては、一時的に、乗員Pにガスが吹きつけられる状況が生じる懸念がある。しかし、この点について、エアバッグ25の膨張展開途中では、整流布28がインフレータ24のガス噴出部24aから噴出されたガスをエアバッグ25の下部M2に向うように案内するため、エアバッグ25の膨張展開途中において、ベントホール30から排出されるガスの量は少なくなっている。
【0033】
そして、エアバッグ25は乗員P間で膨張展開しつつ、まず、下端部25bが第2構造部22に接触し、その後に上端部25cがルーフ18に接触する。そして、エアバッグ25は、膨張展開が完了した状態では、乗員P間において上下に広く膨張展開する。この状態において、図6に示すように、エアバッグ25は第1構造部21の上面21a及びルーフ18の下面18aによって支持された状態となる。このため、エアバッグ25の車幅方向への移動は規制されているので、車両11の側突時に乗員Pが車幅方向に倒れ込んでも、エアバッグ25は乗員Pに対して反力を与えることができ、乗員Pの保護を行うことができる。
【0034】
また、エアバッグ25が膨張展開した状態において、ベントホール30付近にはルーフ18やセンターコンソール20等の車両構造体が存在しておらず、ベントホール30からのガスの排出が阻害されることはない。そして、エアバッグ25が膨張展開した状態において、一対のベントホール30は、乗員Pよりも後側に位置するとともに、斜め上後方に向けてガスを排出する。そのため、一対のベントホール30A,30Bは、それぞれ、前後方向において乗員P側とは反対側にガスを排出するようになる。その結果、ベントホール30A,30Bから排出されたガスは、図5で示す2点鎖線矢印方向に向うようになり、前後方向において、乗員Pから離れる方向に流れるため乗員に吹きかかり難い。なお、エアバッグ25が膨張展開した状態において、エアバッグ25に対して外部から圧力が加えられてなければ、ベントホール30A,30Bから排出されるガス量は少量である。そして、エアバッグ25が膨張展開した状態において、乗員Pが倒れ込んでエアバッグ25に対して圧力が加えられた場合には、ベントホール30A,30Bから所定量のガスが排出されるようになる。
【0035】
この実施形態によれば、以下の作用効果を得ることができる。
(1)エアバッグ25が膨張展開した状態において、ベントホール30は、車両の前後方向に関して、乗員P側とは反対側へガスを排出する。したがって、ベントホール30から排出されたガスは、車両の前後方向に関して、乗員Pから離れる方向へ流れるようになるため、ベントホール30から排出されたガスが乗員Pに吹きつけられることを抑制できる。
【0036】
(2)エアバッグ25の膨張展開時に、インフレータ24から供給されたガスの多くは、エアバッグ25の下部M2に向うため、エアバッグ25の膨張展開途中において、エアバッグ25の上部M1に形成されたベントホール30から排出されるガスの量は少なくなる。したがって、エアバッグ25の膨張展開の途中段階において、ベントホール30からガスが排出され、乗員Pに吹きつけられることを抑制することができるようになる。
【0037】
(3)エアバッグ25内には、整流布28が設けられ、整流布28はインフレータ24のガス噴出部24aから噴出されたガスをエアバッグ25の下部M2側に案内するようになっている。したがって、インフレータ24のガス噴出部24aがエアバッグ25内の上部M1においてガスを噴出しても、整流布28によって、多くのガスをエアバッグ25の下部M2に向わせることができる。したがって、エアバッグ25の膨張展開途中に、ベントホール30からガスが排出されることをより抑制できる。
【0038】
(4)エアバッグ25は、膨張展開した状態において、第1構造部21及びルーフ18によって上下に挟まれるため、エアバッグ25の車幅方向への移動が抑制される。そのため、エアバッグ25は側突時に車幅方向に倒れ込む乗員Pに対して反力を作用させることができ、ファーサイドに着座した乗員Pを保護することができる。
【0039】
(5)エアバッグ25が、膨張展開した状態において第1構造部21及びルーフ18によって上下に挟まれていても、ベントホール30はエアバッグ25内のガスを排出することができる。これに対して、仮に、膨張展開した状態のエアバッグ25の上端部25c及び下端部25bとなる箇所にベントホール30を形成した場合には、ベントホール30がルーフ18や第1構造部21によって塞がれてしまう。そのため、エアバッグ25が膨張展開した状態において乗員Pよりも後側に位置するとともに後側に向けて開口するベントホール30の方が、円滑にガスを排出させることができる。
【0040】
なお、本実施の形態はこれを適宜変更した以下に示す形態にて実施することもできる。
・ベントホール30が開口する方向を変更してもよい。例えば、エアバッグ25が膨張展開した状態において、ベントホール30が後ろ斜め下方に開口するように変更してもよい。また、エアバッグ25が膨張展開した状態において、ベントホール30が、後方で、なおかつ、水平方向に開口するように変更してもよい。
【0041】
・エアバッグ25が膨張展開した状態におけるベントホール30の位置を変更してもよい。エアバッグ25が膨張展開した状態において、ベントホール30は、前後方向に関して乗員Pよりも後側であって、なおかつベントホール30を覆う箇所に位置していればよく、例えば、上下方向においてヘッドレスト16と同じ位置にベントホール30を配置してもよい。
【0042】
・整流布28の形状を変更してもよい。例えば、整流布28をチューブ状に形成する代わりに、整流布28を平面状に形成してもよい。そして、ガス噴出部24aのガス噴出方向の延長線上に整流布28を設けることで、整流布28がガス噴出部24aから噴出されたガスをエアバッグ25の下部M2に案内する機能を発揮できるようにすればよい。また、これに限らず、整流布28の形状は、ベントホール30の位置や、インフレータ24のガス噴出部24aからの噴出方向に応じて適宜変更してもよい。
【0043】
・エアバッグ25の膨張展開時にエアバッグ25の下端部25bと接触する車室内構造体は、センターコンソール20の一部である第1構造部21でなくともよい。例えば、床面12に突出床部を設け、その突出床部を車室内構造体としてもよい。
【0044】
・膨張展開した状態におけるエアバッグ25の形状については、少なくとも乗員Pの頭部Paを保護可能な形状であればよく、その他の点についてはとくに限定されない。エアバッグ25が膨張展開した形状は、例えば、エアバッグ25の上端部25cがルーフ18の下面18aに接触しないような形状であってもよい。この場合であっても、エアバッグ25が膨張展開すれば、側突時に、乗員Pを保護することができる。また、膨張展開した状態におけるエアバッグ25の形状は、エアバッグ25の下端部25bが第1構造部21の上面21aに接触しないような形状であってもよい。
【0045】
・エアバッグ装置23の配設位置を変更してもよい。例えば、第1構造部21の内部にエアバッグ装置23を収容してもよい。この場合であっても、側突時に、乗員Pの間、及び乗員Pよりも後側の領域S2にまで膨張展開可能なエアバッグ25を備えているのであれば、乗員Pを保護することができる。
【0046】
・本発明は、車両11の一対の着座部13におけるファーサイド用のエアバッグ装置23に代えて、運転席及び助手席に着座した乗員を保護するファーサイド用のエアバッグ装置23として具体化してもよい。
【符号の説明】
【0047】
M1…上部、M2…下部、P…乗員、11…車両、13…座席シートとしての着座部、14…座部、18…ルーフ、20…車室内構造体としてのセンターコンソール、23…エアバッグ装置、24…インフレータ、25…エアバッグ、25b…下端部、25c…上端部、28…整流布、30,30A,30B…排出口としてのベントホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に並んで配置される複数の座席シートの間で膨張展開可能なエアバッグと、前記エアバッグ内部にガスを供給するインフレータと、を備え、前記エアバッグに対して前記エアバッグ内部に供給されたガスを排出するための排出口が形成されたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記座席シートに着座した乗員の間、及び車両の前後方向において乗員よりも後側に膨張展開し、
前記エアバッグが膨張展開した状態において、前記排出口は、前記乗員よりも後側に位置するとともに後側に向けて開口する
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置において、
前記エアバッグが膨張展開した状態における前記エアバッグの下部を前記インフレータから供給されたガスが優先的に流入する上流側部位とし、かつ、前記エアバッグが膨張展開した状態における前記エアバッグの上部を下流側部位とし、
前記排出口は、前記上部に形成されている
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ装置において、
前記エアバッグ内には、前記インフレータから供給されたガスが前記下部側に向うように整流する整流布が設けられている
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、膨張展開した状態において、その上端部が車両のルーフに接触する一方、その下端部が前記座席シートの座部の間に配設された車室内構造体に接触する
ことを特徴とするエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221739(P2010−221739A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68227(P2009−68227)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】