説明

エアバッグ

【課題】乗員に向けてより安定的でかつ迅速に展開するエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ本体部22のガス導入口31を有する下面部25の両側と両側面部26とが連続する下側角部36に、ガス導入口31に対向するディフューザ23の両側部23aを接合する。エアバッグ本体部22の展開に追従してディフューザ23を開くことができる。ディフューザ23によりガス導入口31の開口方向に対して交差する方向である乗員側及び反乗員側へと膨張ガスGを導くことで、乗員に向けてより安定的でかつ迅速に展開するエアバッグ13を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張ガスの導入により膨張展開するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のインストルメントパネル部に備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、膨張ガスを供給するインフレータと、所定の形状に折り畳まれた袋状のエアバッグとを備えている。そして、自動車の衝突などの際には、インフレータから膨張ガスを供給して、助手席に位置する被保護物である乗員の前方にエアバッグを膨張展開させ、乗員を拘束して衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
このようなエアバッグ装置の場合、インフレータからガス導入口を介してエアバッグへと導入された膨張ガスは、インストルメントパネル部に対して法線方向に沿って流れた後、エアバッグを膨張させながら拡散する。そのため、エアバッグがインストルメントパネル部の法線方向、すなわち上方へと飛び出すように膨張してウインドシールドであるフロントガラスに当接してから乗員側へと展開するため、乗員側へ迅速に展開する所望の展開特性の調製が容易でない。
【0004】
この点、エアバッグを構成する袋状のエアバッグ本体部の内部に整流部材である帯状のディフューザを配置した構成が知られている。この構成では、インフレータをインストルメントパネル部に取り付けるためのマウントとディフューザの両側とを一体的に縫製し、ディフューザによって前後方向、すなわち乗員側及び反乗員側へと膨張ガスを導いている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0005】
しかしながら、この構成では、ディフューザがエアバッグ本体部とは別個にこのエアバッグ本体部の内部で一旦膨張展開するため、この展開状態でのディフューザの形状を安定させることが容易でなく、ガス導入口からエアバッグ本体部内に導入された膨張ガスを効果的に導いてエアバッグを乗員側へと円滑に展開させることが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−170955号公報 (第7−9頁、図2)
【特許文献2】特開2009−61867号公報 (第5−10頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、例えば助手席乗員用のエアバッグ装置において、乗員に向けてより安定的でかつ迅速にエアバッグを展開させることが望まれている。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、被保護物に向けてより安定的でかつ迅速に展開するエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のエアバッグは、折り畳まれて収納され、膨張ガスの導入により膨張展開するエアバッグであって、膨張ガスが導入されるガス導入口を有する主面部、及び少なくともこの主面部の両側に角部を介して連続し展開状態でこの主面部に対して交差する方向に沿う側面部を備えた袋状のエアバッグ本体部と、前記角部に両側部が接合されて前記ガス導入口に対向し、このガス導入口の開口方向に対して交差する方向である被保護物側及び反被保護物側へと膨張ガスを導く整流部材とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、整流部材は、両側方向に線対称に設けられているものである。
【0011】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1または2記載のエアバッグにおいて、整流部材は、複数の整流部材基布が両側方向に接合されて設けられているものである。
【0012】
請求項4記載のエアバッグは、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、主面部と両側面部とが互いに異なる基布からなり、角部がこれら基布の縫製により設けられ、整流部材の両側部は、前記角部とともに縫製されてこれら角部に一体的に接合されているものである。
【0013】
請求項5記載のエアバッグは、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、両側面部に位置しガス導入口から導入した膨張ガスの排気を許容するベントホールを備え、整流部材は、展開状態で前記各ベントホールに対向する開口部を両側に備えているものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のエアバッグによれば、エアバッグ本体部のガス導入口を有する主面部の両側と両側面部とが連続する角部に、ガス導入口に対向する整流部材の両側部を接合することで、エアバッグ本体部の展開に追従して整流部材を開くことができるので、この整流部材によりガス導入口の開口方向に対して交差する方向である被保護物側及び反被保護物側へと膨張ガスを導くことで、被保護物に向けてより安定的でかつ迅速に展開するエアバッグを提供できる。
【0015】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、整流部材を両側方向に線対称とすることで、折り畳み状態での整流部材の折り癖を抑制し、展開時に整流部材をより安定的に機能させることができる。
【0016】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1または2記載のエアバッグの効果に加え、複数の整流部材基布を両側方向に接合して整流部材を設けることで、整流部材の両側方向への伸び変形を抑制し、展開時に整流部材をより安定的に機能させることができる。
【0017】
請求項4記載のエアバッグによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、エアバッグ本体部の主面部と両側面部とを構成する互いに異なる基布の縫製により設けられる角部とともに整流部材の両側部を縫製してこれら角部に一体的に接合することで、エアバッグ本体部の角部に対して整流部材の両側部を別個に接合する場合よりも製造性が向上する。
【0018】
請求項5記載のエアバッグによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、エアバッグ本体部の両側面部に設けたベントホールに展開状態で対向する開口部を整流部材に設けることで、開口部及びベントホールを介して、ガス導入口から導入した膨張ガスの余剰分を確実に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエアバッグの第1の実施の形態の展開状態を示す説明側面図である。
【図2】同上エアバッグの展開状態を示す説明正面図である。
【図3】同上エアバッグの展開状態を示す斜視図である。
【図4】本発明のエアバッグの第2の実施の形態の整流部材を模式的に示す平面図である。
【図5】同上エアバッグの展開状態を示す説明正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1ないし図3において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、車両としての自動車の助手席、すなわち被保護物としての助手席の乗員の前方に位置する被設置部としてのインストルメントパネル部11の内側に配置され、助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における自動車の直進方向を基準として説明する。
【0022】
インストルメントパネル部11は、後側すなわち助手席側に向かって若干下降する曲面状などに形成され、このインストルメントパネル部11の内側に配置された被取付部材としての図示しないステアリングメンバに、エアバッグ装置10が正面側を上方から若干後側すなわち乗員側に向けて傾斜した状態でねじ止めなどして固定されている。また、インストルメントパネル部11の上方には、前側下方から上側後方に向かって例えば30°程度傾斜したウインドシールド(W/S)であるフロントガラス12が配置されている。
【0023】
そして、エアバッグ装置10は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、エアバッグ13、このエアバッグ13に膨張ガスGを供給するインフレータ14、これらエアバッグ13とインフレータ14となどが取り付けられるケース体15、図示しないリテーナ、展開前のエアバッグ13を覆う図示しないカバー体、及びインフレータ14の動作を制御する図示しない制御手段などを備えている。さらに、このエアバッグ装置10は、自動車のインストルメントパネル部11に取り付けられ、センサなどを備えた制御装置に電気的に接続して構成される。
【0024】
ケース体15は、略箱状に形成され、正面側あるいはフロントガラス12に向かう上側を開口である矩形状の突出口17とし、内側が、折り畳んだエアバッグ13を収納するエアバッグ収納部18とされている。また、このケース体15の底部には、インフレータ14の取り付け用の図示しない取付孔が形成されている。そして、この突出口17は、通常時は、カバー体により覆われている。
【0025】
また、インフレータ14は、円盤状をなす本体部14aを備え、この本体部14aの高さ方向の下側寄りの位置から、四角板状のフランジ部14bが突設され、このフランジ部14bの四隅には通孔が形成されている。そして、この本体部14aの上側部、すなわちフランジ部14bの上方に位置して、本体部14aの外周面に、複数の図示しないガス噴射口が形成されている。そして、本体部14aの内側には、点火器及び薬剤が収納され、底部に接続されたコネクタを介して伝えられる制御手段からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口から膨張ガスGを急速に供給するようになっている。そして、このインフレータ14は、ガス噴射口を設けた本体部14aをエアバッグ13の内側に挿入した状態で、ケース体15の底部に取り付けられている。なお、インフレータ14は、種々の形状があり、例えば、円柱状の本体部をエアバッグ13の内側に配置する構成を採ることもできる。
【0026】
また、リテーナは、枠状に形成されており、エアバッグ13とともにインフレータ14を取り付けるための図示しない取付ボルトが突設されている。
【0027】
また、カバー体は、樹脂にてインストルメントパネル部11と一体あるいは別体をなして形成され、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインが平面略H字状などに形成されている。
【0028】
そして、エアバッグ13は、単数あるいは複数の基布21を組み合わせて袋状に形成されたエアバッグ本体部22と、このエアバッグ本体部22の内部に配置された整流部材であるディフューザ23とを備えている。なお、このエアバッグ13は、エアバッグ収納部18に収納する際、任意の折り畳み方とすることができるが、例えばディフューザ23とエアバッグ本体部22とが層状をなすように折り畳むことで、より円滑に展開させることができる。
【0029】
エアバッグ本体部22は、メインパネル、あるいはメインバッグなどとも呼ばれるものであり、展開状態でインストルメントパネル部11の上面に沿って前後方向、左右方向及び上下方向に延びる主面部としての一方の主面部である下面部25と、この下面部25の両側に連続しインストルメントパネル部11から離間される方向、すなわち乗員側へと立ち上がる側面部26,26と、これら側面部26,26の間に連続し前後方向、左右方向及び上下方向に延びる反主面部としての他方の主面部である上面部27とを一体的に備え、展開状態で前側上方から後側下方へと湾曲する。そして、上面部27の乗員に対向する後部側が、乗員に対向する被保護物対向面としての乗員拘束面28となっている。
【0030】
下面部25は、例えば1枚の基布である第1基布21aにより前後方向に長手状に形成されており、インストルメントパネル部11上に位置する前側寄りの位置に、膨張ガスGが導入されるガス導入口31を有している。また、この下面部25は、ガス導入口31の周縁部がインフレータ14とともにケース体15のエアバッグ収納部18に一体的に固定されている。
【0031】
また、両側面部26は、例えばそれぞれ下面部25の第1基布21aと異なる1枚の基布である第2基布21bにより下面部25の両側に沿って長手状に形成されており、ガス導入口31(インフレータ14)の上方に対向する位置よりも後方寄りの上部に、膨張ガスGの排出を許容する円形状のベントホール34を有している。これらベントホール34は、エアバッグ13(エアバッグ本体部22)の展開状態での余剰の膨張ガスGを排出することでエアバッグ本体部22の内圧を適切に設定するものである。
【0032】
また、上面部27は、例えば下面部25および両側面部26の第1及び第2基布21a,21bと異なる1枚の基布である第3基布21cにより前後方向に長手状に形成されており、両側面部26間の上部を前部から後部に亘って覆うように連続している。
【0033】
さらに、下面部25を構成する第1基布21aと両側面部26を構成する第2基布21bと上面部27を構成する第3基布21cとは、例えば互いに縫製によって接合されて一体的となっている。そして、第1基布21aと各第2基布21bとの縫製部(接合部)は、下面部25と両側面部26とが連続する一方の角部としての角部である下側角部36となっている。また、各第2基布21bと第3基布21cとの縫製部(接合部)は、両側面部26と上面部27とが連続する他方の角部としての上側角部37となっている。
【0034】
各下側角部36及び各上側角部37は、それぞれコーナー部、あるいはエッジ部などとも呼ばれるものである。そして、各下側角部36は、エアバッグ13(エアバッグ本体部22)の展開状態で、インストルメントパネル部11よりも上方、あるいはインストルメントパネル部11上に位置し、各上側角部37は、ほぼその直上に位置している。
【0035】
また、ディフューザ23は、膨張ガスGをガス導入口31の開口方向である上下方向に対して交差する方向である前後方向、すなわち乗員側及び反乗員側へと導くものであり、例えば1枚の整流部材基布であるディフューザ基布41により左右方向に長手状の帯状に形成されて前後両端が開口している。このディフューザ23は、例えば後側から前側へと両側方向に徐々に狭くなるように形成されているとともに、両側方向に線対称、換言すれば両側方向の中心線に対して対称すなわち左右対称となっている。さらに、このディフューザ23の両側の後端寄りの位置には、エアバッグ本体部22の各ベントホール34に対向(ラップ)して、例えばこれらベントホール34よりも若干小さい円形状の開口部42がそれぞれ形成されており、これら開口部42はベントホール34にそれぞれ連通している。そして、このディフューザ23は、両側部23a全体がエアバッグ本体部22の下側角部36とともに縫製されてこれら下側角部36と一体的に接合、すなわち共縫いされている。このディフューザ23の両側部23aとエアバッグ本体部22の下側角部36との共縫いにより、この共縫い箇所とディフューザ基布41及び第1及び第2基布21a,21bのそれぞれの端辺との間には図示しない帯状の余剰部分が形成される。この余剰部分は、エアバッグ本体部22の外部に突出していてもよいが、例えば予め第1及び第2基布21a,21bを裏返した状態でディフューザ基布41と共縫いした後、第1及び第2基布21a,21bを裏返すことによって、エアバッグ本体部22の内部に位置させることもできる。そして、この状態で、ディフューザ23は、ガス導入口31(インフレータ14)の上方に対向し、ガス導入口31(インフレータ14)に対して覆い被せられている。したがって、このディフューザ23は、展開状態において、側面視で前端側がガス導入口31(インフレータ14)よりも前方に位置し、後端側がガス導入口31(インフレータ14)よりも後方に位置している。なお、このディフューザ23は、展開状態においてエアバッグ本体部22の上面部27に対して接触していても離間されていてもよいが、本実施の形態では、下方に離間されている。そして、ディフューザ23は、上面部27から離間されている距離が大きいほど、換言すればガス導入口31(インフレータ14)に接近しているほど、膨張ガスGをより効果的に前後方向に導くことができる。
【0036】
次に、エアバッグ装置10の展開動作を説明する。
【0037】
このエアバッグ装置10の動作の概略としては、自動車の衝突などの際に、制御装置がインフレータ14を作動させ、このインフレータ14から膨張ガスGを噴射させると、折り畳み状態でエアバッグ収納部18に収納されたエアバッグ本体部22が、ガス導入口31からの膨張ガスGの流入に伴い膨張展開してカバー体のテアラインを破断して突出口17から突出する。
【0038】
このとき、エアバッグ本体部22の各下側角部36に両側部23aが一体的に接合されているディフューザ23もエアバッグ本体部22の展開に追従して展開することで、ガス導入口31からこのガス導入口31の開口方向である上方に向けて噴射する膨張ガスGは、このガス導入口31の上方に対向するディフューザ23の下面に当接してこのディフューザ23をアーチ状に湾曲させるように立ち上がらせる。すなわち、ディフューザ23は、乗員側である後方だけでなく非乗員側である前方も開口させていることで、膨張ガスGによって、より確実かつ迅速に立ち上がらせることができる。
【0039】
したがって、エアバッグ本体部22は、立ち上がったディフューザ23により内部で膨張ガスGが前後方向へと導かれることにより、乗員正面側へと直接的に膨張展開して、助手席に着いた乗員の上半身の前方に乗員拘束面28を対向させて展開し、乗員を拘束して衝突の衝撃から保護する。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、エアバッグ本体部22のガス導入口31を有する下面部25の両側と両側面部26とが連続する下側角部36に、ガス導入口31に対向するディフューザ23の両側部23aを接合することで、エアバッグ本体部22の展開に追従してディフューザ23を開くことができる。したがって、ディフューザ23がエアバッグ本体部22の展開とは別個に展開したり、その展開方向がばらついたりすることがないので、エアバッグ本体部22の展開を妨げることがなく、このディフューザ23によりガス導入口31の開口方向に対して交差する方向である乗員側及び反乗員側へと膨張ガスGを導くことで、乗員に向けてより安定的でかつ迅速に展開し、乗員拘束面28の形成を早期化できるエアバッグ13を提供できる。すなわち、このような構成により、ガス導入口31からエアバッグ本体部22内に導入された膨張ガスGがそのまま上方に向けて直接的に流れ込んでエアバッグ本体部22を乗員に向かわない上方に突出させ、エアバッグ本体部22が一旦フロントガラス12に衝突した後乗員側へと展開するようなことがなく、直接的に乗員側へと膨張展開するので、エアバッグ本体部22(エアバッグ13)の膨張展開が安定的でかつ迅速となり、乗員拘束面28を確実かつ迅速に乗員に対向させることができ、所望の乗員拘束性能を確保できる。そのため、比較的容量が大きいエアバッグ13(エアバッグ本体部22)であっても、乗員側へと迅速に展開させることができ、乗員拘束面28の形成を早期化できる。
【0041】
また、エアバッグ本体部22の下面部25と両側面部26とを構成する互いに異なる第1基布21aと第2基布21bとの縫製により設けられる下側角部36とともにディフューザ23の両側部23aを縫製してこれら下側角部36に一体的に接合することで、エアバッグ本体部22の下側角部36に対してディフューザ23の両側部23aを別個に接合する場合よりも製造性が向上する。
【0042】
さらに、ディフューザ23を両側方向に線対称とすることで、折り畳み状態でのディフューザ23の折り癖を抑制し、展開時にディフューザ23をより安定的に機能させることができる。
【0043】
そして、エアバッグ本体部22の両側面部26に設けたベントホール34に展開状態で対向する開口部42をディフューザ23に設けることで、開口部42及びベントホール34を介して、ガス導入口31から導入した膨張ガスGの余剰分を確実に排出できる。
【0044】
また、エアバッグ13は、その展開特性がフロントガラス12の位置や形状に影響されず、汎用性を向上できる。
【0045】
次に、第2の実施の形態を図4及び図5を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図4及び図5に示す第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態のディフューザ23が、複数、例えば2枚の整流部材基布であるディフューザ基布45によって構成されているものである。
【0047】
各ディフューザ基布45は、平面視で例えば互いに平行な辺部である平行辺部45a,45bと、これら平行辺部45a,45bに対して垂直な辺部である垂直辺部45cと、平行辺部45a,45bに対して傾斜状の辺部である傾斜辺部45dとを有する台形状(直角台形状)となっている。また、これらディフューザ基布45には、それぞれ開口部42が形成されている。さらに、これらディフューザ基布45は、互いに合同な形状に形成されており、これらディフューザ基布45の垂直辺部45c同士を互いに縫製により一体的に接合して接合部46を形成することにより、ディフューザ23が両側方向に線対称、換言すれば両側方向の中心線に対して線対称すなわち左右対称に形成されている。そして、このディフューザ23は、後側に位置する平行辺部45bから前側に位置する平行辺部45aへと、両側方向に徐々に狭くなるように形成されており、傾斜辺部45d全体がそれぞれエアバッグ本体部22の下側角部36とともに縫製されてこれら下側角部36と一体的に接合、すなわち共縫いされている。この状態で、ディフューザ23は、ガス導入口31(インフレータ14)の上方に対向し、ガス導入口31(インフレータ14)に対して覆い被せられている。
【0048】
そして、エアバッグ装置10は、自動車の衝突などの際に、制御装置がインフレータ14を作動させ、このインフレータ14から膨張ガスGを噴射させると、折り畳み状態でエアバッグ収納部18に収納されたエアバッグ本体部22が、ガス導入口31からの膨張ガスGの流入に伴い膨張展開してカバー体のテアラインを破断して突出口17から突出する。
【0049】
このとき、エアバッグ本体部22の各下側角部36に両側部(各傾斜辺部45d)が一体的に接合されているディフューザ23もエアバッグ本体部22の展開に追従して展開することで、ガス導入口31からこのガス導入口31の開口方向である上方に向けて噴射する膨張ガスGは、このガス導入口31の上方に対向するディフューザ23の下面に当接してこのディフューザ23をアーチ状に湾曲させ、このディフューザ23に沿って前後方向へと導かれる。このようにディフューザ23がアーチ状に湾曲する際、接合部46によってディフューザ23の両側方向への伸び変形が抑制される。
【0050】
したがって、エアバッグ本体部22は、内部で前後方向に沿って膨張ガスGが流れることにより、乗員正面側へと直接的に膨張展開して、助手席に着いた乗員の上半身の前方に乗員拘束面28を対向させて展開し、乗員を拘束して衝突の衝撃から保護する。
【0051】
このように、本実施の形態では、ディフューザ基布45,45を両側方向に接合してディフューザ23を設けることで、ディフューザ23の両側方向への伸び変形を接合部46によって抑制し、展開時にディフューザ23をより安定的に機能させることができる。
【0052】
なお、上記第2の実施の形態において、ディフューザ23は、3枚以上のディフューザ基布45を両側方向に順次接合して形成してもよい。
【0053】
また、上記の各実施の形態において、エアバッグ本体部22は、下面部25、両側面部26及び上面部27は、それぞれ任意の複数枚の基布を接合して構成してもよい。さらに、それら基布の接合は、縫製以外でも、例えば接着剤などを用いて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、車両の助手席乗員用のエアバッグに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
13 エアバッグ
21a 基布である第1基布
21b 基布である第2基布
22 エアバッグ本体部
23 整流部材であるディフューザ
25 主面部としての下面部
26 側面部
31 ガス導入口
34 ベントホール
36 角部である下側角部
42 開口部
45 整流部材基布であるディフューザ基布
G 膨張ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれて収納され、膨張ガスの導入により膨張展開するエアバッグであって、
膨張ガスが導入されるガス導入口を有する主面部、及び少なくともこの主面部の両側に角部を介して連続し展開状態でこの主面部に対して交差する方向に沿う側面部を備えた袋状のエアバッグ本体部と、
前記角部に両側部が接合されて前記ガス導入口に対向し、このガス導入口の開口方向に対して交差する方向である被保護物側及び反被保護物側へと膨張ガスを導く整流部材と
を具備したことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
整流部材は、両側方向に線対称に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
整流部材は、複数の整流部材基布が両側方向に接合されて設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
【請求項4】
エアバッグ本体部は、主面部と両側面部とが互いに異なる基布からなり、角部がこれら基布の縫製により設けられ、
整流部材の両側部は、前記角部とともに縫製されてこれら角部に一体的に接合されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ。
【請求項5】
エアバッグ本体部は、両側面部に位置しガス導入口から導入した膨張ガスの排気を許容するベントホールを備え、
整流部材は、展開状態で前記各ベントホールに対向する開口部を両側に備えている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−10415(P2013−10415A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144180(P2011−144180)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】