説明

エジェクタ装置

【課題】エジェクタを用いた冷凍サイクルにおける配管系の部品コスト、組立コストを低減できるとともに、省スペース化、簡素化等も図ることのできるエジェクタ装置を提供する。
【解決手段】弁体24、該弁体24により開閉されるオリフィス23が形成された弁シート22aを有する弁本体20、及びオリフィス23に対する弁体24のリフト量を調整するためのロータ30、ステータ50等からなる昇降駆動機構を備えた流量調整用の電動弁部10と、口径が固定のノズル71、混合部72、及びディフューザ73を備えたエジェクタ部60とからなり、弁本体20は、下側に延長拡大されて、エジェクタ部60における上側固定部67を兼ねるようになっている。弁本体20における弁シート22aより下流側の部位にノズル71の上端入口部が連結固定されて、電動弁部10とエジェクタ部60とが一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁に代えてエジェクタを用いた冷凍サイクルに好適なエジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機、冷凍装置等の一般的な冷凍サイクルは、通常、圧縮機、気液分離器、凝縮器(室外熱交換器)、蒸発器(室内熱交換器)、流路切換弁、及び膨張弁を備えて構成されているが、この膨張弁を用いた冷凍サイクルでは、膨張弁で高圧の冷媒を低温低圧のしめり蒸気にするとき、冷媒が持つ熱エネルギーが無駄に捨てられることになり、熱効率がよいとは言えなかった。そこで、近年、前記膨張弁に代えてエジェクタと流量調整弁(電動弁)を用いた冷凍サイクルが提案ないし実用に供されている(例えば、下記特許文献1等を参照)。
【0003】
従来の冷凍サイクルの一例を図3に示す。図示の冷凍サイクル100は、圧縮機101、凝縮器(室外熱交換器)102、蒸発器104、気液分離器105、流路切換弁(図示省略)に加えて、膨張弁の代わりとなる、流量調整弁(電動弁)110とノズル口径が固定のエジェクタ160が用いられている。
【0004】
前記流量調整弁110は、例えば、図2に示される如くに、弁体24が一体に設けられた弁軸25と、前記弁体24が接離するオリフィス(弁口)23が形成された弁シート22が一体に設けられるとともに、導管(例えば銅製の継手)41、42が接続された弁室21を有する弁本体20と、この弁本体20にその下端部が密封接合されたキャン40と、このキャン40の内周に所定の間隙をあけて配在されたロータ30と、このロータ30を回転駆動すべく前記キャン40に外嵌されたステータ50と、前記ロータ30と前記弁体24との間に配在され、前記ロータ30の回転を利用して前記弁体24を前記オリフィス23に接離させるねじ送り機構とを備えている。該ねじ送り機構は、弁本体20にその下端部が圧入固定されるとともに、弁軸25(の下部大径部)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)28と、弁軸ホルダ32の内周に形成されて前記固定ねじ部28に螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)38とから構成されている。前記ロータ30、ステータ50等からなるステッピングモータやねじ送り機構等で前記オリフィス23に対する前記弁体24のリフト量を調整するための昇降駆動機構が構成され、該昇降駆動機構により前記オリフィス23に対する弁体24のリフト量を変化させることにより冷媒の通過流量を制御するようになっている(詳細は、下記特許文献2等を参照)。
【0005】
一方、前記エジェクタ160は、外筒66、該外筒66の上部に内嵌固定された筒状の上側固定部67、及び前記外筒66の下部に内嵌固定された筒状の下側固定部68からなる筒状基体65を備え、前記上側固定部67の上部には、前記流量調整弁110に接続するための導管(継手)61が連結され、前記外筒66における上側固定部67と下側固定部68との間には、前記蒸発器104に接続するための導管(継手)62、62が連結されている。
【0006】
また、前記筒状の上側固定部67における下端部内周には、液相冷媒を膨張させて蒸発圧力以下に減圧、加速するための、口径が一定(固定)のノズル71の上端入口部が内嵌されてかしめ固定(67a)されている。
【0007】
前記筒状の下側固定部68の内周面は漏斗状に形成されていて、この漏斗状内周部に前記ノズル71の下端出口部が臨むようになっており、この漏斗状内周部が混合部72となり、この混合部72の下端部にはラッパ状のディフューザ部73が連結されている。
【0008】
上記流量調整弁110及びエジェクタ160を備えた冷凍サイクル100では、気液分離器105で分離された気相(ガス)冷媒が圧縮機101に吸入され、ここで加圧されて凝縮器102に送られ、外部空気と熱交換して凝縮し、凝縮器102から液相冷媒が流量調整弁110を介してエジェクタ160に送られる。このエジェクタ160のノズル71により液相冷媒は膨張して蒸発圧力以下に減圧、加速され、高速ミスト流となって気液分離器105に送られる(以上、一次流れ)。
【0009】
一方、エジェクタ160内で高圧冷媒が膨脹加速(減圧)されることにより生じる吸引作用(ポンプ作用)により、気液分離器105内の主として液相冷媒が蒸発器104に導かれ、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、蒸発器104から低温低圧の気相冷媒がエジェクタ160に吸引される(以上、二次流れ)。エジェクタ160内の混合部72では、前記二次流れである蒸発器104からの低温低圧の気相冷媒が前記一次流れである高速ミスト流と混合して昇圧され、さらにディフューザ73により減速されて圧力回復され、この圧力が上昇した冷媒が気液分離器105により気相冷媒と液相冷媒とに分離され、気相冷媒は圧縮機101に吸入され、液相冷媒は蒸発器104に送られて前記のように循環する。
【0010】
この冷凍サイクルにおいては、冷媒の膨張エネルギーが圧力エネルギーに変換されて、圧縮機吸入側の冷媒の圧力が上昇し、冷媒の体積効率が高められるので、冷媒の循環量が増加し、圧縮機の消費動力の低減化や熱効率の向上等を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007-255764号公報
【特許文献2】特開2009−14056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記した如くの、流量調整弁(電動弁)110とエジェクタ160が用いられている従来の冷凍サイクル110では、流量調整弁(電動弁)110とエジェクタ160とを導管や継手を用いて接続する必要があるため、配管系の部品コスト、組立コストが高くなる嫌いがあるとともに、大きな設置スペースが必要となる等の問題があった。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、冷凍サイクルにおける配管系の部品コスト、組立コストを低減できるとともに、省スペース化、簡素化等も図ることのできるエジェクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明に係るエジェクタ装置は、基本的には、弁体、該弁体により開閉されるオリフィスが形成された弁シートを有する弁本体、及び前記オリフィスに対する前記弁体のリフト量を調整するためのロータ、ステータ等からなる昇降駆動機構を備えた流量調整用の電動弁部と、口径が固定のノズル、混合部、及びディフューザを備えたエジェクタ部とからなり、前記弁本体における前記弁シートより下流側の部位に前記ノズルの上端入口部が連結固定されて、前記電動弁部とエジェクタ部とが一体化されていることを特徴としている。
【0015】
好ましい態様では、前記弁シートと弁本体とが別体とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエジェクタ装置では、流量調整用の電動弁部とエジェクタ部とが一体化されているので、該制御弁が用いられた冷凍サイクルでは、従来のもののように流量調整弁(電動弁)とエジェクタとを導管や継手を用いて接続することが不要となり、そのため、エジェクタを用いた冷凍サイクルにおける配管系の部品コスト、組立コストを低減できるとともに、省スペース化、簡素化等も図ることができる。
【0017】
また、弁本体における弁シートより下流側の部位にノズルの上端入口部が連結固定されるので、従来の、ノズルの口径を電動弁で可変としたものに比して、電動弁の弁軸の長さを短くできる等、電動弁及びエジェクタの構成部品の加工性や組立性を向上させることができる。
【0018】
さらに、弁シートと弁本体とを別体とすることにより、オリフィスの口径が異なる複数種の弁シート(口径以外は同寸法)を用意すれば、弁シートを交換するだけで容量を異ならしめることができ、これにより、弁シート以外の部品の共通化を図ることができるので、容量の異なる複数種のエジェクタ装置を低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエジェクタ装置の一実施形態を示す縦断面図で、(a)は、全体構成図で、(b)は、(a)のA部分の拡大図。
【図2】従来の冷凍サイクルに用いられている流量調整弁(電動弁)とエジェクタの一例を示す断面図。
【図3】従来の冷凍サイクルの一例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のエジェクタ装置の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るエジェクタ装置の一実施形態を示す縦断面図である。
図示実施形態のエジェクタ装置1は、前述した図3に示される如くの冷凍サイクル100において流量調整弁110及びエジェクタ160に代えて用いられるものである。本実施形態のエジェクタ装置1において、前述した図2に示される従来の流量調整弁110及びエジェクタ160の各部に対応する部分には同一の符号を付してそれらの重複説明を省略する。
【0022】
本実施形態のエジェクタ装置1は、弁体24、該弁体24により開閉されるオリフィス23が形成された弁シート22aを有する弁本体20、及びオリフィス23に対する弁体24のリフト量を調整するためのロータ30、ステータ50等からなる昇降駆動機構を備えた流量調整用の電動弁部10と、口径が固定のノズル71、混合部72、及びディフューザ部73を備えたエジェクタ部60とからなっている。
【0023】
前記弁本体20は、図2に示される従来のものより下側に延長拡大されて、エジェクタ部60における上側固定部67を兼ねるようになっている。
【0024】
そして、前記弁本体20における弁シート22aより下流側の部位に前記ノズル71の上端入口部が連結固定されて、前記電動弁部10とエジェクタ部60とが一体化されている。
【0025】
また、前記弁シート22aと弁本体20とが別体とされて、弁シート22aは弁本体20の下部を構成する筒状の上側固定部67の下端部に圧入等により内嵌固定されている。
【0026】
この例では、前記弁体24の先端は、弁軸から連続して形成された第1テーパ部24aと、該第1テーパ部24aに連続して形成された第2テーパ部24bとよりなる。弁シート22aに形成されたオリフィス23には、弁体24の下降により、その先端の第2テーパ部24bが挿入され、弁シート22aには第1テーパ部24aが着座する。
【0027】
このような構成とされた本実施形態のエジェクタ装置1では、流量調整用の電動弁部10とエジェクタ部60とが一体化されているので、該エジェクタ装置1が用いられた冷凍サイクルでは、従来のもののように流量調整弁(電動弁)とエジェクタとを導管や継手を用いて接続することが不要となり、そのため、当該冷凍サイクルにおける配管系の部品コスト、組立コストを低減できるとともに、省スペース化、簡素化等も図ることができる。
【0028】
また、弁本体20における弁シート22aより下流側の部位にノズル71の上端入口部が連結固定されるので、従来の、ノズル(の中間や下端出口部)の口径を電動弁で可変としたものに比して、電動弁の弁軸の長さを短くできる等、電動弁及びエジェクタの構成部品の加工性や組立性を向上させることができる。
【0029】
さらに、弁シート22aと弁本体20とが別体とされていることにより、オリフィス23の口径が異なる複数種の弁シート(口径以外は同寸法)を用意すれば、当該エジェクタ装置の製造時において弁シート22aを交換するだけで容量を異ならしめることができ、これにより、弁シート22a以外の部品の共通化を図ることができるので、容量の異なる複数種のエジェクタ装置を低コストで提供することが可能となる。
【0030】
弁体24の先端が、図1に示される様に第1テーパ部24aと第2テーパ部24bとを備えているときは、オリフィス23の口径は、第1テーパ部24aが弁シート22aに着座する様に選定することができる。
【0031】
更に、図1の構成では、ノズル71として予め異なる複数種のものを用意すれば、当該エジェクタ装置の製造時においてノズル71を交換するだけで、容量が異なる特性のエジェクタ装置を提供することができる。
【0032】
なお、図1では、弁シート22は、その外周をノズル71との間に間隙を有する様に、上側固定部67に固定されているが、この間隙はなくても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 エジェクタ装置
10 流量調整用電動弁部
20 弁本体
22 弁シート
23 オリフィス
24 弁体
30 ロータ
50 ステータ
60 エジェクタ部
65 筒状基体
67 上側固定部
68 下側固定部
71 ノズル
72 混合部
73 ディフューザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体、該弁体により開閉されるオリフィスが形成された弁シートを有する弁本体、及び前記オリフィスに対する前記弁体のリフト量を調整するためのロータ、ステータ等からなる昇降駆動機構を備えた流量調整用の電動弁部と、口径が固定のノズル、混合部、及びディフューザ部を備えたエジェクタ部とからなり、前記弁本体における前記弁シートより下流側の部位に前記ノズルの上端入口部が連結固定されて、前記電動弁部とエジェクタ部とが一体化されていることを特徴とするエジェクタ装置。
【請求項2】
前記弁シートと弁本体とが別体とされていることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−80536(P2011−80536A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233424(P2009−233424)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】