説明

エストロゲン受容体に対して活性を有する縮合化合物

【化1】


式(I)の化合物、エストロゲン受容体の活性を調節する方法、およびエストロゲン受容体に関連する障害を治療する方法が、本明細書に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第60/983,078号(Olssonら、出願日:2007年10月26日、発明の名称:COMPOUNDS WITH ACTIVITY AT ESTROGEN RECEPTORS)の優先権を主張するものであるが、その開示のすべてを参照により本明細書に援用するものとする。
【0002】
本発明は、有機化学、製薬化学、生化学、分子生物学、および医学の分野に関する。さらに詳しくは、本発明は、エストロゲン受容体の活性を調節する化合物、およびエストロゲンベータ受容体に関連した疾病および障害の治療および予防のためのそれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
エストロゲン受容体(ER)は、核内ホルモン受容体のファミリーに属する。核内ホルモン受容体が、リガンド活性化転写因子のスーパーファミリーを規定する(Evans,1988、Science 240:889)。このファミリーのメンバーは、典型的には、保存されたモジュラードメインの存在を特徴としているが、そのようなドメインとしては以下のものが挙げられる:受容体とDNAサイトでの特異的応答エレメントとの相互作用の引き金となるジンクフィンガーDNA結合ドメイン(DBD)、DBDに隣接するリガンド結合ドメイン(LBD)、ならびに2つの転写活性化ドメイン、リガンド依存性性のAF−1およびリガンド非依存性のAF−2(Nilsson,2002、SERMs:Research and clinical applications,Eds:Humana Press Inc,3)。リガンドが受容体に結合すると、LBDの中で立体配座の変化が起こり、AF−2ドメインをより近くに寄せて、コアクティベーターのリクルートメントが可能となる。コアクティベーターは、核内ホルモン受容体と転写装置(transcriptional machinery)の成分との間の物理的相互作用を作り出し、標的遺伝子の転写モジュレーションを確立する。
【0004】
エストロゲン受容体の2種のサブタイプが同定されている:ERアルファ(ERα、NR3A1)(Green,1986,Nature 320:134;Greene,1986,Science 231:1150)およびERベータ(ERβ、NR3A2)(Kuiper,1996,PNAS 93:5925)。いずれの受容体も、内因性天然リガンドの17βエストラジオールとかなり高い親和性をもって結合し、古典的なエストロゲン応答エレメントを介して標的遺伝子の転写活性を調節する(Nilsson,2005,Bas Clin Pharm Tox,96:15に概説されている)。より最近になって、エストロゲン受容体が、次のような非古典的作用に介在することができることが見出された(Osborne,2005,J Clin Oncol 8:1616に概説されている):(1)その中でERが交代調節(alternate regulatory)DNA配列に対してコアクティベーターとして機能する、非古典的転写調節、(2)その中でERが迅速な細胞質シグナル伝達を引き起こす、非遺伝子性または膜誘起性のステロイドシグナル伝達、および(3)受容体チロシンキナーゼ(RTK)とのクロストーク。興味深いことには、それらのリガンド結合ドメイン(LBD)は、わずか56%のアミノ酸同一性しか共有しておらず、このことは、それらが別のリガンドに適応して、それにより別な効果、さらには逆の効果を媒介する可能性もあることを示唆している(Kuiper,1997,FEBS Lett,410:87)。さらに、それらの2種の受容体の分布パターンも完全に異なっている(Mathews,2003,Mol Interv 3:281に概説されている)。いずれのERも、脳の周辺および内部に広く分散しているが、各種の組織の中で、異なった、場合によっては重複したパターンを示す。ERαは主として、子宮、肝臓、腎臓および心臓に発現される。その一方で、ERβは、卵巣、前立腺、肺、消化管、膀胱、造血系、および中枢神経系(CNS)の中に主として存在する。CNS中におけるERβの特異的な局在には、海馬および視床が含まれる(Osterlund,2001,Prog Neurobiol 64:251;Ostlund,2003,Ann NY Acad Sci 1007:54)。ERαとERβは、乳腺、精巣上体、甲状腺、副腎、骨、および脊髄の後根神経節、ならびに脳の大脳皮質の中では共発現する。
【0005】
ERα欠損性またはERβ欠損性のマウスの特性分析によって、エストロゲン受容体の生理学に知見が与えられた(Hewitt,2000,Breast Cancer Res 2:345;Couse,1999,Endoc Rev 20:358に概説されている)。ERα欠損のマウスのオスおよびメスはいずれも、それぞれ精子形成および排卵における機能不全のために不妊性である。さらに、ERα欠損のメスは、性的挙動に欠け、攻撃性が増し、仔殺しをする。ERα欠損のオスは、正常なマウンティング挙動は示すが、挿入および射精がまったくできない。それらでは、攻撃性の低下も見られる。それとは対照的に、ERβ欠損のメスのマウスでは、受胎性が低く、同腹仔の数も少ない。それに相当するオスの生殖器には、明らかな欠陥は認められない。ERα欠損マウスにおいては、神経内分泌系に顕著な変化が起きるが、それに対して、ERβ欠損マウスでは、何の障害も認められない。さらに、マウスにおいてERαをノックアウトさせると、乳房組織の発達がなく、骨密度が低下し、耐糖能が損なわれる。ERβのノックアウトの研究では、議論の余地のある結果が得られていて、いくつかの研究では骨密度への影響は認められないが(Lindberg,2002,J Bone Min Res 17:555)、それに対して他の報告では、メスだけにおいては骨吸収の低下のためだけによる海綿質容積の増加が示唆されている(Windahl,2002、Trends Endoc Metab,13:195に概説されている)。興味深いことには、ERβ欠損のマウスでは、明らかに脳の形態的な変化が認められ(Wang,2001,PNAS 98:2792)、ニューロンの生存率が低下することが伴う(Wang,2003,PNAS 100:703)。このことから、たとえばアルツハイマー病およびパーキンソン病のような神経変性障害からの保護、および恐らくは、外傷および心血管性の発作からおきることからの保護において、ERβが重要な役割を果たしている可能性があるということが推測される。この仮説はさらに、エストロゲンの神経栄養および神経保護における役割を示す実験結果によって裏付けられる(Wise,2002,Trends Endocrinol Metab 13:229;Behl,2003,J Steroid Biochem Mol Biol 83:195に概説されている)。
【0006】
より最近になって、比較的に選択的なERβアゴニストを使用することによって、このサブタイプの炎症における顕著な役割が明らかになった(Harris,2003,Endoc 144:4241)。炎症性腸疾患およびアジュバント誘発関節炎の動物モデルにおいて、有益な効果が認められた。事実、ERβは、腸内および免疫細胞内のいずれにも発現している。さらに、ERβ欠損の研究から、胸腺機能における役割(Erlandsson,2001,Immunol 103:17)、さらには肺炎症における役割(Patrone,2003,Mol Cell Biol 25:8542)も示唆されている。しかしながら、興味深いことには、このERβアゴニストを使用した場合、古典的なエストロゲン機能に伴う効果はまったく認められなかった(Harris,2003,Endoc 144:4241)。そのリガンドは特に、インビボアッセイにおいては、乳腺刺激ホルモン産生細胞(mammotrophy)、骨密度、および排卵には不活性であった。このデータは、骨および排卵ホメオスタシスにおけるERβの役割について論争されている、ヒトの多形性、ノックアウト動物、および組織分布も含めた各種の研究とは、ある程度対立するものである。選択的なERβアゴニストの、その他に提案されている治療的役割としては、前立腺癌および乳癌、自己免疫疾患、結腸癌、免疫系の悪性病変、神経変性、心血管機能、および骨機能などが挙げられる(Koehler,2005,Endocr Reviews,DOI 10.1210に概説されている)。国際公開第2005/108337号パンフレットおよび国際公開第2007/0565500号パンフレットには、いくつかのERβアゴニストが論じられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/108337号
【特許文献2】国際公開第2007/0565500号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Evans,1988、Science 240:889
【非特許文献2】Nilsson,2002、SERMs:Research and clinical applications,Eds:Humana Press Inc,3
【非特許文献3】Green,1986,Nature 320:134
【非特許文献4】Greene,1986,Science 231:1150
【非特許文献5】Kuiper,1996,PNAS 93:5925
【非特許文献6】Nilsson,2005,Bas Clin Pharm Tox,96:15
【非特許文献7】Osborne,2005,J Clin Oncol 8:1616
【非特許文献8】Kuiper,1997,FEBS Lett,410:87
【非特許文献9】Mathews,2003,Mol Interv 3:281
【非特許文献10】Osterlund,2001,Prog Neurobiol 64:251
【非特許文献11】Ostlund,2003,Ann NY Acad Sci 1007:54
【非特許文献12】Hewitt,2000,Breast Cancer Res 2:345;Couse,1999,Endoc Rev 20:358
【非特許文献13】Lindberg,2002,J Bone Min Res 17:555
【非特許文献14】Windahl,2002、Trends Endoc Metab,13:195
【非特許文献15】Wang,2001,PNAS 98:2792
【非特許文献16】Wang,2003,PNAS 100:703
【非特許文献17】Wise,2002,Trends Endocrinol Metab 13:229;Behl,2003,J Steroid Biochem Mol Biol 83:195
【非特許文献18】Harris,2003,Endoc 144:4241
【非特許文献19】Erlandsson,2001,Immunol 103:17
【非特許文献20】Patrone,2003,Mol Cell Biol 25:8542
【非特許文献21】Harris,2003,Endoc 144:4241
【非特許文献22】Koehler,2005,Endocr Reviews,DOI 10.1210
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示されているのは、式I:
【化1】

の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩もしくは代謝産物であるが、
式中:
Xは、酸素、硫黄、S=O、SO、NR30、CR3132からなる群から選択され;
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
20は、水素、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたアルケニル、場合によっては置換されたアルキニル、場合によっては置換されたシクロアルキル、場合によっては置換されたシクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたヘテロアリシクリル、ハロアルキル、ペルハロアルキル、スルホニル、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−P(=O)(OR30)、および−CHO(C=O)R30からなる群から選択され;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、カルボニル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C2〜6アルキリデン基を形成するか;
または、隣接する炭素の上のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、二重結合を形成するか;
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の隣接しているR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、R10〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の非隣接のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが間にあるすべての炭素原子と共に一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、R10〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
または、R、R、R、およびRの内の1個と、それが結合している炭素原子と、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによるか、または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、R、R、R、およびRの内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによって、C5〜7シクロアルケニル基またはC4〜7ヘテロシクロアルキル基を形成し(但し、R〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
Zは、酸素または硫黄であり;そして
30、R31、およびR32はそれぞれ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC2〜6アルケニル、場合によっては置換されたC2〜6アルキニル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたC2〜6ヘテロアリシクリル、からなる群から選択されるか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している窒素原子と共に、ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0010】
本明細書にさらに開示されているのは、式Iの1種または複数の化合物と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、またはキャリア(担体)とを含む医薬組成物である。
【0011】
本明細書にはさらに次のような方法が開示されている:1種または複数のエストロゲン受容体を調節する、具体的にはアゴナイズする方法、炎症を抑制する方法、神経因性疼痛を治療する方法、アレルギー性結膜炎を治療する方法、IL−4のレベルを抑制する方法、IFN−γのレベルを低下させる方法、ドライアイを治療する方法、IL−12のレベルを上げる方法、ホルモン代償療法、コレステロール、トリグリセリド、またはLDLレベルを低下させる方法、認知障害を治療するかもしくは神経保護を与える方法、避妊方法、対象における次のものからなる群から選択される障害を治療または予防するための方法:炎症性腸症候群;クローン病;潰瘍性直腸炎もしくは大腸炎;前立腺肥大症;子宮平滑筋肉腫;乳癌;子宮内膜癌腫;多嚢胞性卵巣症候群;子宮内膜ポリープ;良性乳房疾患;腺筋症;卵巣癌腫;悪性黒色腫;前立腺癌腫;結腸癌;脳腫瘍(グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーム、または髄膜腫を含む);前立腺炎;間質性膀胱炎;骨密度低下(骨粗鬆症または骨減少症を含む);異コレステロール血症;異脂肪血症;心血管疾患;アテローム性動脈硬化症;高血圧症;末梢血管疾患;再狭窄;血管攣縮;神経変性障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、またはその他の痴呆症を含む);認知低下;卒中;不安;膣萎縮症;外陰部萎縮症;萎縮性膣炎;膣乾燥症;掻痒症;性交疼痛症;頻尿;尿失禁;尿路感染症;血管運動神経性症状(顔面紅潮またはほてりを含む);関節炎(慢性関節リウマチ、骨関節炎、または関節症子宮内膜症を含む);乾癬;皮膚炎;喘息;胸膜炎;多発性硬化症;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜炎;敗血症;出血性ショック;II型糖尿病;急性または慢性の炎症;急性または慢性の疼痛;肺障害(喘息または慢性閉塞性肺疾患を含む);眼科的障害(緑内障、ドライアイ、または黄斑変性症を含む);フリーラジカルにより誘発される疾病状態;ならびに直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮癌からなる群から選択される癌;そして、その方法には、それを必要としている対象を識別すること、およびその対象に式Iの1種または複数の化合物の有効量を投与することが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一態様において、本明細書に開示されているのは、式Iの化合物:
【化2】

または薬学的に許容されるそれらの塩もしくは代謝産物であるが、
式中:
Xは、酸素、硫黄、S=O、SO、NR30、CR3132からなる群から選択され;
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
20は、水素、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたアルケニル、場合によっては置換されたアルキニル、場合によっては置換されたシクロアルキル、場合によっては置換されたシクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたヘテロアリシクリル、ハロアルキル、ペルハロアルキル、スルホニル、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−P(=O)(OR30)、および−CHO(C=O)R30からなる群から選択され;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、カルボニル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C2〜6アルキリデン基を形成するか;
または、隣接する炭素の上のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の2個が一緒になって、それらの間にあるそれらが結合している2個の炭素と共に、二重結合を形成するか;
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の隣接しているR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、R10〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の非隣接のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが間にあるすべての炭素原子と共に一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、R10〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
または、R、R、R、およびRの内の1個と、それが結合している炭素原子と、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによるか、または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、R、R、R、およびRの内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによって、C5〜7シクロアルケニル基またはC4〜7ヘテロシクロアルキル基を形成し(但し、R〜R16の1個または複数が欠けるため、すべての炭素原子のオクテットが完成されることはない);
Zは、酸素または硫黄であり;そして
30、R31、およびR32はそれぞれ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC2〜6アルケニル、場合によっては置換されたC2〜6アルキニル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたC2〜6ヘテロアリシクリル、からなる群から選択されるか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している窒素原子と共に、ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成する。
【0013】
特に断らない限り、「R」基、限定される訳ではないがたとえばR、R(R)およびR(R)は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環の炭素原子のところで指定された基に結合されている)、およびヘテロアリシクリル(同様にして、環の炭素原子のところで指定された基に結合されている)からなる群から選択されるが、それらの基については、本明細書において定義する。2個の「R」基が同一の原子に共有結合的に結合されている場合には、それらが互いに結合されて、シクロアルキル基またはヘテロアリシクリル基を形成してもよい。
【0014】
特に断らない限り、置換基が、「場合によっては置換されている」とみなされている場合には、それは、その置換基が、以下のもの(これらに限定される訳ではない)から個別にかつ独立して選択される1個または複数の基を用いて置換されていてもよい基であるということを意味している:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、およびアミノ(一置換および二置換アミノ基を含む)、ならびに保護されたそれらの誘導体。上述の置換基の保護誘導体を形成させることが可能な保護基は、当業者には公知であり、たとえば、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999、のような参考文献に見出すことができる(この文献のすべてを本明細書に援用するものとする)。
【0015】
本明細書で使用するとき、「Cm〜n」(ここで、「m」および「n」は整数である)は、アルキル、アルケニルもしくはアルキニル基の中の炭素原子の数、またはシクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアリール基の環の中の炭素原子の数、またはヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、もしくはヘテロシクロアルケニル基の環の中の炭素原子の数を指している。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、シクロアルケニルの環、またはアリールの環が、両端を含めて「m」個から「n」個までの炭素原子を含むことができる。したがって、たとえば「C〜Cアルキル」基は、1〜4個の炭素を有するすべてのアルキル基、すなわちCH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCH(CH)−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−、および(CHCH−を指している。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはシクロアルケニル基に関連して、「m」および「n」が全く明示されていない場合には、その定義において記載された最も広い範囲を想定するべきである。
【0016】
本明細書で使用するとき、「アリール」という用語は、完全に非局在化されたπ電子系を有する(すべてが炭素の)炭素環を指している。「アリール」基は、2個またはそれ以上の縮合環(2個の隣接炭素原子を共有する環)から構成することもできる。そのアリールが縮合環構造を有している場合には、分子の残りの部分に結合された環は、完全に非局在化されたπ電子系を有する。その縮合環構造の中の他の環は、完全に非局在化されたπ電子系を有していても、有していなくてもよい。アリール基の例としては、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0017】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアリール」という用語は、完全に非局在化されたπ電子系を有し、かつ、その環の中に、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1個または複数のヘテロ原子を含む環を指している。「ヘテロアリール」基は、2個またはそれ以上の縮合環(2個の隣接炭素原子を共有する環)から構成することもできる。そのヘテロアリールが縮合環構造を有している場合には、分子の残りの部分に結合された環は、完全に非局在化されたπ電子系を有する。その縮合環構造の中の他の環は、完全に非局在化されたπ電子系を有していても、有していなくてもよい。ヘテロアリール環の例としては、フラン、チオフェン、フタラジノン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、およびトリアジンが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0018】
「ヘテロ」という用語を使用した場合にはいずれも、その目的は、少なくとも1個の炭素原子が、窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、たとえばアルキル基またはアリール基として特定された基を意味している。
【0019】
本明細書で使用するとき、「アルキル」という用語は、完全に飽和された(二重結合または三重結合を含まない)直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を指している。本発明のアルキル基には、1〜20個の炭素原子を含んでいてもよく、これはすなわち、m=1でn=20である。本明細書におけるアルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズであってもよい。本明細書におけるアルキル基はさらに、1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、tert−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、およびドデシルが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0020】
本発明のアルキル基は、置換されていても、あるいは非置換であってもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、以下のものから独立して選択される1個または複数の基とすることができる:シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、−NR、および保護されたアミノ。
【0021】
本明細書で使用するとき、「アルケニル」という用語は、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖の中に、1個または複数の二重結合を含むアルキル基を指す。本発明のアルケニル基は、非置換であっても、あるいは置換されていてもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、先にアルキル基の置換に関連して、または「場合によっては」の置換に関連して挙げたものと同一の基から選択すればよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、「アルキニル」という用語は、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖の中に、1個または複数の三重結合を含むアルキル基を指す。本発明のアルキニル基は、非置換であっても、あるいは置換されていてもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、先にアルキル基の置換に関連して、または「場合によっては」の置換に関連して挙げたものと同一の基から選択すればよい。
【0023】
本明細書で使用するとき、「アシル」という用語は、「RC(=O)−」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0024】
本明細書で使用するとき、「シクロアルキル」という用語は、完全に飽和されている(二重結合を含まない)炭化水素環を指している。本発明のシクロアルキル基は、C〜Cの範囲であってよい。シクロアルキル基は、非置換であっても、あるいは置換されていてもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、先にアルキル基の置換に関連して示したものから選択することができる。「シクロアルキル」基は、2個またはそれ以上の縮合環(2個の隣接炭素原子を共有する環)から構成することもできる。シクロアルキルが縮合環構造である場合には、分子の残りに結合されている環が、先に定義されたシクロアルキルである。その縮合環構造の中の他の環(1個または複数)は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリサイクリックであってよい。
【0025】
本明細書で使用するとき、「シクロアルケニル」という用語は、その環の中に1個または複数の二重結合を含むシクロアルキル基を指しているが、ただし、2個以上の環が存在する場合には、それらは環の中で完全に非局在化されたπ電子系を形成することはできない(そうでないと、その基は、本明細書において定義される「アリール」となってしまうであろう)。本発明のシクロアルケニル基は、非置換であっても、あるいは置換されていてもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、先にアルキル基の置換に関連して挙げたものと同一の基から選択すればよい。「シクロアルケニル」基は、2個またはそれ以上の縮合環(2個の隣接炭素原子を共有する環)から構成することもできる。シクロアルケニルが縮合環構造である場合には、分子の残りに結合されている環が、先に定義されたシクロアルケニルである。その縮合環構造の中の他の環(1個または複数)は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリサイクリックであってよい。
【0026】
「アルキレン」という用語は、2価のラジカルであって、2個の他の残基に結合されている、本明細書に定義されたようなアルキル基である。したがって、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン(−CHCHCH−)、イソプロピレン(−CH−CH(CH)−)、およびイソブチレン(−CH−CH(CH)−CH−)がアルキレン基の例であるが、これらに限定される訳ではない。同様にして、「シクロアルキレン」という用語は、本明細書に定義されたようなシクロアルキル基であって、同様な方法で他の2個の残基に結合しているものを指している。それらのアルキル基およびシクロアルキル基が不飽和炭素を含んでいる場合には、「アルケニレン」および「シクロアルケニレン」の用語が使用される。
【0027】
本明細書で使用するとき、「ヘテロシクロアルキル」、「ヘテロアリサイクリック」、または「ヘテロアリシクリル」という用語は、その環構造の中に、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される、1個または複数のヘテロ原子を有する環を指している。その環の中には1個または複数の二重結合を含んでいてもよいが、ただし、それらが環の中で完全に非局在化されたπ電子系を形成していてはならない。本明細書において定義された環は、炭素原子と、窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる、安定な3員〜18員の環であることができる。本発明のヘテロアリシクリル基は、非置換であっても、あるいは置換されていてもよい。置換されている場合には、その置換基(1個または複数)は、次のものからなる群から独立して選択される1個または複数の基であってよい:ハロゲン、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アルキル、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ、保護されたカルボキシ、アミノ、保護されたアミノ、カルボキサミド、保護されたカルボキサミド、アルキルスルホンアミド、およびトリフルオロメタンスルホンアミド。「ヘテロシクロアルキル」基は、2個またはそれ以上の縮合環(2個の隣接炭素原子を共有する環)から構成することもできる。ヘテロシクロアルキルが縮合環構造である場合には、分子の残りに結合されている環が、先に定義されたヘテロシクロアルキルである。その縮合環構造の中の他の環(1個または複数)は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリサイクリックであってよい。
【0028】
「O−カルボキシ」基は、「RC(=O)O−」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0029】
「C−カルボキシ」基は、「−C(=O)R」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0030】
「アセチル」基は、CHC(=O)−基を指している。
【0031】
「トリハロメタンスルホニル」基は、「XCSO−」基(ここで、Xはハロゲンである)を指している。
【0032】
「シアノ」基は、「−CN」基を指している。
【0033】
「イソシアナト」基は、「−NCO」基を指している。
【0034】
「チオシアナト」基は、「−CNS」基を指している。
【0035】
「イソチオシアナト」基は、「−NCS」基を指している。
【0036】
「スルフィニル」基は、「−S(=O)R」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0037】
「スルホニル」基は、「SOR」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0038】
「S−スルホンアミド」基は、「−SONR」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0039】
「N−スルホンアミド」基は、「RSON(R)−」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0040】
「トリハロメタンスルホンアミド」基は、「XCSON(R)−」基(Xはハロゲンであり、Rは先に定義されたものである)を指している。
【0041】
「O−カルバミル」基は、「−OC(=O)NR」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0042】
「N−カルバミル」基は、「ROC(=O)NR−」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0043】
「O−チオカルバミル」基は、「−OC(=S)−NR」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0044】
「N−チオカルバミル」基は、「ROC(=S)NR−」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0045】
「C−アミド」基は、「−C(=O)NR」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0046】
「N−アミド」基は、「RC(=O)NR−」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0047】
「ペルハロアルキル」という用語は、その中ですべての水素原子がハロゲン原子によって置換されているアルキル基を指している。
【0048】
本明細書で使用するとき、「エステル」という用語は、「−C(=O)OR」基(Rは先に定義されたものである)を指している。
【0049】
本明細書で使用するとき、「アミド」という用語は、「−C(=O)NR」基(RおよびRは先に定義されたものである)を指している。
【0050】
本明細書においては、当業者に周知の方法を用いて、化合物上の非置換もしくはモノ置換されたアミン基はすべてアミドに転換させることが可能であり、ヒドロキシル基はすべてエステルに転換させることが可能であり、カルボキシル基はすべて、アミドまたはエステルのいずれかに転換させることが可能である(たとえば次の文献を参照されたい:Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999)。
【0051】
本明細書で使用するとき、2個の置換基を、それらが結合している窒素原子と共に一緒にさせて、ヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を形成させる場合には、それは、それらの基が合わさってヘテロアリール基またはヘテロアリシクリル基を形成させることができることを意味している。たとえば、(これらに限定される訳ではないが)、NR基のRとRとが、それらが結合している窒素原子と共に一緒になってヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を形成するという場合には、それは、それらが、それらの末端の原子を相互に共有結合的に結合して、環を形成するということを意味していて、たとえば、
−NR
から、次式の化合物が形成される。
【化3】

【0052】
本明細書で使用するとき、2個のジェミナルな置換基が、それらが結合している炭素原子と共に一緒になって、カルボニル基を形成するという場合には、それが意味しているのは、たとえば、
【化4】

から、次式の化合物が形成されるということである。
【化5】

【0053】
本明細書で使用するとき、2個のジェミナルな置換基が、それらが結合している炭素原子と共に一緒になって、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成するという場合には、それが意味しているのは、たとえば、
【化6】

から、次式の化合物が形成されるということである。
【化7】

【0054】
本明細書で使用するとき、隣接する炭素の上の2個の置換基が、間にあるそれらが結合している2個の炭素原子と共に一緒になって、二重結合を形成するという場合には、それが意味しているのは、たとえば、
【化8】

から、次式の化合物が形成されるということであり、
【化9】

それらは、cis、trans、E、またはZ二重結合のいずれを形成してもよい。
【0055】
本明細書で使用するとき、隣接する炭素の上の2個の置換基が、間にあるそれらが結合している2個の炭素原子と共に一緒になって、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成するか、または、1個の置換基と、それが結合している炭素原子と、1個の隣接置換基が結合している炭素原子とが、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成するという場合には、それが意味しているのは、たとえば、
【化10】

から、次式の化合物が形成されるということである。
【化11】

【0056】
本明細書で使用するとき、2個の置換基が、それらが結合している炭素原子および間にある少なくとも2個の炭素原子と共に一緒になって、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成する場合か、または、1個の置換基と、それが結合している炭素原子と、隣接していない1個の置換基が結合している炭素原子とが、間にあるすべての炭素原子と共に一緒になって、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成するという場合には、それが意味しているのは、たとえば、
【化12】

から、次式の化合物が形成されるということである。
【化13】

【0057】
1つまたは複数のキラル中心を有する本発明の化合物すべてにおいて、絶対的な立体化学が明瞭に現れないような場合には、それぞれの中心が独立して、RまたはSまたはその混合物であってよいということは理解されよう。さらに、EまたはZと定義することが可能な幾何異性体を生じるような1つまたは複数の二重結合を有する本発明の化合物すべてにおいて、それぞれの二重結合が独立してEまたはZまたはその混合物であってよいということも、理解されるであろう。
【0058】
本発明の開示全体を通して、特定の化合物がキラル中心を有しているような場合には、本発明の開示の範囲には、2つの鏡像異性体のラセミ混合物を含む組成物、さらには、独立して実質的に他の鏡像異性体を含まない、それぞれの鏡像異性体を含む組成物もまた含まれる。したがって、たとえば本明細書で考慮の対象となっているのは、実質的にR鏡像異性体を含まないS鏡像異性体を含む組成物、または実質的にS鏡像異性体を含まないR鏡像異性体を含む組成物である。「実質的に含まない(substantially free)」という用語は、その組成物が、微量成分側の鏡像異性体を10%未満、または8%未満、または5%未満、または3%未満、または1%未満しか含んでいないということを意味している。その特定な化合物が2つ以上のキラル中心を有しているような場合には、本発明の開示の範囲には、各種のジアステレオマーの混合物を含む組成物、さらには実質的に他のジアステレオマーを含まないそれぞれのジアステレオマーを含む組成物もまた含まれる。その独自のジアステレオマーに触れることなく化合物に言及した場合には、それには、4種のジアステレオマー全部を含む組成物、R,RおよびS,S異性体のラセミ混合物を含む組成物、R,SおよびS,R異性体のラセミ混合物を含む組成物、実質的に他のジアステレオマーを含まないR,R鏡像異性体を含む組成物、実質的に他のジアステレオマーを含まないS,S鏡像異性体を含む組成物、実質的に他のジアステレオマーを含まないR,S鏡像異性体を含む組成物、実質的に他のジアステレオマーを含まないS,R鏡像異性体を含む組成物、が含まれる。
【0059】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される塩」という用語は、それを投与された患者に対して有為な刺激反応を起こさせることがなく、またその化合物の生物活性および特性を抑制することがない、化合物の塩を指している。医薬品の塩は、本明細書に開示された化合物を、酸または塩基と反応させることによって得ることができる。塩基により形成される塩としては、アンモニウム塩(NH);アルカリ金属たとえば(これらに限定される訳ではないが)、ナトリウムまたはカリウムの塩;アルカリ土類たとえば(これらに限定される訳ではないが)、カルシウムまたはマグネシウムの塩などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない;有機塩基の塩としてはたとえば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン;ならびにアミノ酸たとえば(これらに限定される訳ではないが)アルギニンおよびリシンのアミノ基との塩などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。酸をベースとする有用な塩としては、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびサリチル酸塩などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
【0060】
「プロドラッグ」という用語は、インビボで親医薬品(parent drug)に転換される薬剤を指している。プロドラッグが有用な場合も多いが、その理由は、場合によっては、親医薬品よりも容易に投与することが可能となりうるからである。それらは、たとえば、経口投与したときに、親医薬品ではバイオアベイラビリティーがないが、それらはバイオアベイラビリティーを有する可能性もある。たとえば、プロドラッグは、たとえばO−グルクロン酸抱合および/またはO−硫酸化を抑制することによって、代謝性分解速度を低下させることもできる。プロドラッグはさらに、医薬組成物における溶解度が、親医薬品よりも改良されている可能性もある。プロドラッグの一例(これらに限定される訳ではない)として、本明細書に開示された化合物を挙げれば、それは、それをエステル(これが「プロドラッグ」である)として投与すると、水への溶解性が移動度に悪影響を与える細胞膜での吸収が促進されるが、一旦水への溶解性が有利に働く細胞の内側に入れば、次いで代謝的に加水分解されて有効成分のカルボン酸となる。プロドラッグのさらなる例としては、酸基に結合された短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)が挙げられるが、そのペプチドが代謝されて、有効成分残基が現れる。
【0061】
〜Rが場合によっては置換されている、式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、それぞれのR〜Rは、独立して、かつ場合によっては、次のものからなる群から選択される置換基で置換される:−CN、ハロゲン、ハロアルキル、−O(C1〜6アルキル)、−NR3132、−S(C1〜6アルキル)、−O(C1〜6ハロアルキル)。
【0062】
〜Rが場合によっては置換されている、式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、それぞれのR〜Rは、独立して、かつ場合によっては、次のものからなる群から選択される置換基で置換される:−CN、ハロゲン、ハロアルキル、−O(C1〜6アルキル)、−NR3132、−S(C1〜6アルキル)、−O(C1〜6ハロアルキル)。
【0063】
10〜R16が場合によっては置換されている、式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、それぞれのR10〜R16は、独立して、かつ場合によっては、次のものからなる群から選択される置換基で置換される:−CN、ハロゲン、ハロアルキル、−O(C1〜6アルキル)、−NR3132、−S(C1〜6アルキル)、−O(C1〜6ハロアルキル)。
【0064】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、Xは、酸素である。
【0065】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132
【0066】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、および−NR3132
【0067】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、およびハロゲン。
【0068】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、そのハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選択される。
【0069】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、Rは、水素またはフルオロである。
【0070】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、Rは、水素である。
【0071】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、Rは、水素である。
【0072】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、Rは、水素またはフルオロである。
【0073】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132
【0074】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、および−NR3132
【0075】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rは、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、およびハロゲン。
【0076】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R〜Rはそれぞれ、水素である。
【0077】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R10〜R16は、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132
【0078】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R10〜R16は、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、および−NR3132
【0079】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R10〜R16は、それぞれ別個にかつ独立して次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、およびハロゲン。
【0080】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、隣接する炭素の上のR10〜R16の2個が、間にあるそれらが結合した2個の炭素原子と共に一緒になって、二重結合を形成する。
【0081】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R10とR11とが、間にあるそれらが結合した2個の炭素原子と共に一緒になって、二重結合を形成する。
【0082】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R20は、次のものからなる群から選択される:水素、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたシクロアルキル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたヘテロアリシクリル、およびハロアルキル。
【0083】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、そのアルキルは、次のものからなる群から選択される:メチル、エチル、イソプロピル、sec−プロピル、ブチル、イソブチル、およびtert−ブチル。
【0084】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R20は、次のものからなる群から選択される:水素、および場合によっては置換されたアルキル。
【0085】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、R20は、水素である。
【0086】
式Iの化合物のいくつかの実施態様においては、nが2であるが、式Iの化合物の他の実施態様においては、nが3である。
【0087】
いくつかの実施態様においては、化合物中の少なくとも1個の原子が放射性同位元素である。その放射性同位元素は、水素、炭素、酸素、窒素、またはハロゲンの同位元素であってよい。当業者ならば、水素の同位元素すなわちトリチウム(H)、炭素のある種の同位元素たとえば11C、ヨウ素のある種の同位元素たとえば123I、フッ素のある種の同位元素たとえば18F、窒素のある種の同位元素たとえば13N、および酸素のある種の同位元素たとえば15Oが放射性であり、化合物の中に一旦組み入れれば、当業者公知の方法たとえば、陽電子放出断層撮影法(PET)または光子放出コンピューター断層撮影法(SPECT)を使用して検出することが可能であるということは知っている。
【0088】
本発明の開示にはさらに、同位元素でラベルされた本明細書に開示された化合物も含まれ、それらは式Iまたは式IIの化合物と同一であるが、ただし、その1個または複数の原子が、天然に最も豊富に見出される同位元素の原子質量または質量数とは異なった原子質量または質量数を有する原子によって置換されている。式Iまたは式IIの化合物の中に組み入れることが可能な同位元素の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、および塩素の同位元素、たとえばそれぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I、および36Clが挙げられる。
【0089】
本発明のある種の同位元素でラベルされた化合物(たとえば、Hおよび14Cでラベルされたもの)は、化合物のアッセイおよび/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化同位元素(すなわち、H)および炭素−14(すなわち、14C)同位元素は、その調製が容易で、検出性があるので特に好ましい。さらに、より重い同位元素たとえばジュウテリウム(すなわち、H)と置換することによって、代謝安定性の向上からのある種の治療的なメリット(たとえば、インビボでの半減期の延長または必要用量の低下)が得られ、そのために、いくつかの環境においては好ましいものとなりうる。陽電子放射性の同位元素、たとえば15O、13N、11C、および18Fは、基質受容体占有率を検討する陽電子放出断層撮影法(PET)の研究においては有用である。本発明の同位元素でラベルされた化合物は、一般的には、本明細書で以下に記載するスキーム中および/または実施例中に開示されている手順と同様の手順に従って、同位元素でラベルされていない反応剤を、同位元素でラベルされた反応剤に置き換えることによって、調製することができる。
【0090】
また別な態様においては、本明細書に開示されているのは、次のものからなる群から選択される化合物である。
【化14】

【0091】
また別な態様においては、本明細書に開示されているのは、次のものからなる群から選択される化合物である。
【化15】

【0092】
また別な態様においては、本明細書に開示されているのは、次のものからなる群から選択される化合物である。
【化16】

【0093】
本発明の化合物への一般的な合成経路を、スキーム1、1a〜1f、2、2a〜2b、および3に示す。ここに示した経路は説明のためだけのものであって、決して本発明の範囲を限定するものではなく、そのように受け取るべきではない。当業者であるならば、開示された合成法を修正したり、本明細書における開示をベースとして代わりの経路を考案したりすることは可能であろうが、そのような修正や代替え経路も本発明の範囲に包含される。たとえば、本発明の化合物は、スキーム1に示した方法に従って得ることができる。これらのスキームにおいて、Rは、式Iの化合物のR〜Rのいずれであってもよく;Rは、式Iの化合物のR〜Rのいずれであってもよく;Rは、式Iの化合物のR10〜R16のいずれであってもよく;そしてRは、式Iの化合物のR20である。
【化17】

【0094】
本発明の化合物は、ベンゾフェノン誘導体(スキーム1、化合物a)から、多段ステップを介して合成することができる。ベンゾフェノンは、たとえば文献記載、従って各種の安息香酸誘導体から合成することが可能であり、このことは、当業者には周知である。しかしながら、スキーム1a〜1bに示したように、塩化ベンゾイルからベンゾフェノンを合成することもまた可能である。
【化18】

【化19】

【0095】
本発明の化合物の合成における次のステップは、得られたベンゾフェノンをアルケン(スキーム1、化合物b)に転換させることである。これはたとえば、スキーム1cに示したようにして、環状ケトン、TiClおよびZnを使用したマクマリー型の反応により実施することができる。
【化20】

【0096】
あるいは、アルケン中間体(スキーム1、化合物b)は、スキーム1dに示したようにして、セリウムグリニャール反応から得ることができる。
【化21】

【0097】
本発明の化合物の合成における次のステップは、得られたアルケンを環状ケトン(スキーム1、化合物c)に転換させることである。これは、たとえば、スキーム1eに示したようにして、mCPBAおよびTFAを使用することによって2ステップの手順で実施することができる。
【化22】

【0098】
本発明の化合物の合成における次のステップは、得られた環状ケトンの閉環手順を実施して、本発明の化合物(スキーム1、化合物d)を得ることである。これは、スキーム1fに示したようにして、塩基たとえばカリウム−ヘキサメチルジシラザン(KHMDS)を用いてそのケトンを処理することによって実施することができる。
【化23】

【0099】
あるいは、本発明の化合物は、スキーム2に示した方法に従って得ることも可能であるが、それらの化合物a〜cは、スキーム1a〜1eに記載の手順によって得られる。
【化24】

【0100】
本発明の化合物の合成における次のステップは、環状ケトン(スキーム2、化合物c)を対応するアルコール(スキーム2、化合物e)に転換させることである。その還元は、文献記載の方法を用いて実施することができる。たとえば、スキーム2aに示したように、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)を還元剤として使用することが可能である。
【化25】

【0101】
本発明の化合物の合成における次のステップは、置換ステップによってアルコール(スキーム2、化合物e)を閉環させて、本発明の化合物(スキーム2、化合物f)を得ることである。その閉環は、たとえば、スキーム2bに示したようにして、カリウムtert−ブトキシド(tBuOK)を塩基として使用して、実施することができる。
【化26】

【0102】
本明細書に開示された他の化合物のいくつかは、スキーム3に示した手順によって合成される。
【化27】

【0103】
また別な態様においては、本明細書に開示されているのは、先に記載された式Iの1種または複数の化合物、および生理学的に許容されるキャリア、希釈剤、もしくは賦形剤、またはそれらの組合せを含む医薬組成物である。
【0104】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に開示された1種または複数の化合物と、他の化学的成分たとえば、希釈剤またはキャリアとの混合物を指している。その医薬組成物は、生物にその化合物を容易に投与できるようにする。当業界には、化合物を投与するための各種の方法が存在しており、例としては、経口剤、注射剤、エアゾル剤、非経口剤、および局所投与剤などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。医薬組成物はさらに、無機もしくは有機の酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などと化合物を反応させることによって得ることも可能である。
【0105】
「キャリア」という用語は、化合物を細胞または組織の中に組み入れる際に役立つ化学的な化合物と定義される。たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が一般的に使用されるキャリアであるが、その理由は、それが、各種の有機化合物を生物の細胞または組織の中に容易に取り込めるようにするからである。
【0106】
「希釈剤」という用語は、対象となっている化合物を溶解させ、さらには、その化合物の生物学的に活性な形態を安定化させる、水中に希釈される化学的化合物と定義される。当業界においては、緩衝化溶液の中に溶解させた塩が希釈剤として使用される。一般的に使用される1つの緩衝化溶液は、リン酸緩衝生理食塩液であるが、その理由は、それがヒトの血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は、低濃度でも溶液のpHを調節することができ、緩衝化希釈剤が化合物の生物活性に影響することはめったにない。
【0107】
「生理学的に許容される」という用語は、化合物の生物活性および物性を抑制することがない、キャリアまたは希釈剤と定義される。
【0108】
本明細書に記載された医薬組成物は、それ自体か、またはたとえば併用療法におけるように他の有効成分または適切な(1種または複数の)キャリアもしくは賦形剤と共に混合した医薬組成物中で、ヒトの患者に投与することが可能である。本出願の化合物の製剤および投与のための方法は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition,1990)に見出すことができる(そのすべてを参照により本明細書に援用するものとする)。
【0109】
投与に好適な経路としては、たとえば、経口、経直腸、経粘膜、または経腸投与;非経口送達、たとえば、筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、さらにはクモ膜下、直接脳室内、腹腔内、鼻孔内、眼内注射、またはエアゾル吸入などを挙げることができる。
【0110】
あるいは、その化合物を、全身的というよりは局所的に投与してもよく、たとえば、多くの場合デポ製剤または徐放性製剤の形で、その化合物を疼痛または炎症の領域の中に直接注入する。さらに、標的薬物送達系(targeted−drug−delivery system)中、たとえば組織特異性の抗体を用いてコーティングしたリポソーム中で、その薬物を投与してもよい。そのリポソームは、器官を標的として、その器官によって選択的に取り込まれるであろう。
【0111】
本明細書に開示された医薬組成物は、自体公知の方法で生産することができるが、そのような手段としては、たとえば、通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠化、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、打錠プロセスなどが挙げられる。
【0112】
本発明の開示に従って使用するための医薬組成物は、有効成分化合物の製剤の中への加工を容易にし、薬剤的に使用することが可能な、賦形剤および助剤を含めた、1種または複数の生理学的に許容されるキャリアを使用する通常の方法で製剤することができる。適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。当業者が理解し、適切と考える各種の公知の方法、キャリア、および賦形剤を使用すればよいが、それはたとえば前述のRemington’s Pharmaceutical Sciencesなどに開示されている。
【0113】
注射剤のためには、本明細書に開示された薬剤を、水性溶液中、好ましくは、生理的に配合適性のある緩衝剤たとえばハンクス液、リンゲル液、または生理食塩緩衝液などの中で配合してもよい。経粘膜投与のためには、浸透させる障壁に適した浸透剤を、配合物中で使用する。そのような浸透剤は当業者には公知である。
【0114】
経口投与のためには、有効成分化合物を当業者周知の薬学的に許容されるキャリアと組み合わせることによって、化合物を容易に配合することができる。そのようなキャリアを使用することで、本明細書に開示された化合物を、治療される患者によって経口摂取されるための、錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして配合することが可能となる。経口使用のための医薬品製剤は、1種または複数の固形賦形剤を本明細書に開示された医薬品配合物と混合し、場合によってはそうして得られた混合物を摩砕し、所望により適切な助剤を加えてから顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠の核を得ることにより、得ることができる。適切な賦形剤を特に挙げれば、以下のような充填剤である:たとえばラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールなどの糖類;たとえば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)。所望により、崩壊剤を添加してもよいが、そのようなものとしては、たとえば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩たとえばアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0115】
糖衣錠の核には、適切なコーティングをかける。この目的のためには、濃縮糖溶液を使用できるが、場合によってはその中には、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールジェル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物などが含まれていてもよい。識別のため、または有効化合物の用量の組合せが異なっていることを特徴づけるために、錠剤または糖衣コーティングに染料または顔料を加えてもよい。
【0116】
経口的に使用可能な医薬品製剤には、ゼラチンからできたプッシュフィットカプセル剤、さらにはゼラチンと可塑剤たとえばグリセロールまたはソルビトールとからできた軟質密封カプセル剤が含まれる。プッシュフィットカプセル剤は、充填剤たとえばラクトース、結合剤たとえばデンプン、および/または滑沢剤たとえばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、ならびに場合によっては安定剤との混合物の形で、有効成分を含むことができる。軟質カプセル剤の中では、有効成分化合物を、適切な液体、たとえば脂肪油、流動パラフィン、または液状ポリエチレングリコールなどの中に溶解または懸濁させてもよい。それに加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与のための配合物はすべて、そのような投与に適した用量とするべきである。
【0117】
口腔内投与のためには、その組成物を、通常の方法で配合した錠剤またはトローチ錠の形態としてもよい。
【0118】
吸入による投与をするためには、本発明の開示に従って使用するための化合物を、加圧包装またはネブライザーからエアゾルスプレー剤形の形態で利便性良く投与するが、その際には適切な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他適切なガスを使用する。加圧エアゾル剤の場合には、一定量を投与できるようなバルブを備えることによって、投与単位を定量してもよい。吸入器または注入器の中で使用するためのカプセル剤およびたとえばゼラチンのカートリッジは、本発明化合物と、たとえばラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように配合してもよい。
【0119】
本発明化合物は、注射、たとえばボーラス注入または連続注入による非経口投与のための配合をすることもできる。注射のための配合物は、たとえば、添加した保存剤と共にアンプル中かまたは複数用量容器中にあるような単位剤形で存在させてもよい。その組成物は、油性または水性のビヒクル中での懸濁液、溶液、またはエマルションとしての形態をとっていてもよく、また懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような配合剤を含んでいてもよい。
【0120】
非経口投与のための医薬品製剤には、水可溶性の形態にある有効成分化合物の水性溶液が含まれる。さらに、有効成分化合物の懸濁液を、適切な油性注射用懸濁液として調製してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油たとえばゴマ油、または合成脂肪酸エステルたとえば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームを挙げることができる。水性の注射用懸濁液には、その懸濁液の粘度を上昇させる、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような物質を含んでいてもよい。場合によっては、その懸濁液にはさらに、適切な安定剤、または化合物の溶解度を上げて高度に濃厚な溶液の製剤を可能とする薬剤も含まれていてよい。
【0121】
あるいは、有効成分が粉末の形態をとっていて、使用前に適切なビヒクル、たとえば、無菌のパイロジェンフリーな水を用いるような構成になっていてもよい。
【0122】
本発明化合物が、たとえば坐剤または停留浣腸のような直腸用の組成物の形で配合されてもよく、それには、通常の坐剤の基剤たとえばカカオ脂またはその他のグリセリド類が含まれる。
【0123】
ここまで記述してきた製剤に加えて、本発明化合物は、デポ製剤として配合することもできる。そのような長期にわたって作用する製剤は、埋植(たとえば皮下または筋肉内)によるか、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、たとえば、本発明化合物は、適切なポリマー物質または疎水性物質(たとえば許容される油中のエマルションとして)もしくはイオン交換樹脂と共に配合するか、または難溶性誘導体、たとえば難溶性の塩として配合してもよい。
【0124】
本明細書に開示された疎水性化合物のための医薬品キャリアは、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相からなる共溶媒系である。使用される一般的な共溶媒系は、VPD共溶媒系であって、このものは、3(w/v)%のベンジルアルコール、8(w/v)%の非極性界面活性剤のPolysorbate80(商標)、および65(w/v)%のポリエチレングリコール300を無水エタノールで定容した溶液である。当然のことながら、共溶媒系の比率は、その溶解性および毒性に破綻がこない限りにおいて、かなり変化させることができる。さらに、その共溶媒成分の独自性を変化させることも可能であって、たとえば、Polysorbate80(商標)に代えて他の低毒性非極性界面活性剤を使用してもよいし、ポリエチレングリコールの分画サイズを代えてもよいし、他の生体適性のあるポリマーたとえば、ポリビニルピロリドンでポリエチレングリコールを置き換えてもよい。あるいは、疎水性の医薬品化合物のための他の送達系を採用してもよい。リポソームおよびエマルションは、疎水性薬品のための送達ビヒクルまたはキャリアの周知な例である。ある種の有機溶媒、たとえばジメチルスルホキシドもまた採用することができるが、通常は、毒性が強くなるという犠牲を伴う。さらに、本発明化合物は、たとえばその治療剤を含む固形の疎水性ポリマーの半透性マトリックスとして、徐放性の系を使用して送達させてもよい。各種の徐放性材料が確立されており、当業者には周知である。徐放性カプセル剤は、それらの化学的特性に依存するが、数週間から100日を超えるまでの期間にわたって、化合物を放出する。その治療剤の化学的特性および生物学的安定性に依存するが、タンパク質を安定化させるためのさらなる戦略を採用してもよい。
【0125】
本明細書に開示された医薬品用の組合せにおいて使用される化合物の多くは、医薬品的に配合適性のある対イオンとの塩として提供されてもよい。医薬品的に配合適性のある塩は、各種の酸と組み合わせて形成することができるが、そのような塩を非限定的に挙げれば、たとえば塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられる。塩類は、水性またはその他のプロトン性溶媒の中に、対応する遊離の酸または塩基の形よりも溶けやすい傾向がある。
【0126】
本明細書に開示された方法において使用するのに適した医薬組成物としては、有効成分が、その意図された目的を達成するのに有効な量で含まれている組成物が挙げられる。より詳しくは、「治療有効量」とは、疾病の症状を防止するか、緩和するか、もしくは改善する、または治療される対象の生存を延長させる、のに有効な化合物の量を意味している。治療有効量の決定は、とりわけ、本明細書に与えられる詳細な開示を考慮すれば、当業者の技量の範囲内である。
【0127】
本明細書に開示された医薬組成物についての正確な剤形、投与経路、および用量は、患者の症状を観察している個々の医師によって選択することができる。(たとえば、Finglら,1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Chapter 1を参照されたい。そのすべてを参照により本明細書に援用するものとする)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.5〜1000mg、または患者の体重1kg当たり1〜500mg、または患者の体重1kg当たり10〜500mg、または患者の体重1kg当たり50〜100mgとすることができる。用量は、患者の必要に応じて、単回投与であっても、あるいは1日〜数日の間に2回以上のシリーズ投与であってもよい。ヒト用の用量が確立されていない場合には、動物における毒性試験および有効性試験による認定のような、インビトロ試験またはインビボ試験からのED50値もしくはID50値またはその他の適切な数値から、ヒトのための適切な用量を推測することができる。
【0128】
正確な用量はそれぞれの薬剤に応じて決められるものであるが、ほとんどの場合において、用量についてのいくらかの一般化は可能である。ヒトの成人患者に対する1日量投与計画は、本明細書に開示された医薬組成物またはそれらの薬学的に許容される塩(遊離塩基として計算する)のそれぞれの成分を、たとえば経口投与量では、それぞれの成分を0.1mg〜500mgの間、好ましくは1mg〜250mgの間、たとえば、5〜200mg、静脈内、皮下、もしくは筋肉内投与量では、それぞれの成分を0.01mg〜100mgの間、好ましくは0.1mg〜60mgの間、たとえば1〜40mgとしてもよく、その組成物を1日に1〜4回投与する。あるいは、本明細書に開示された組成物を、好ましくはそれぞれの成分の投与量を400mg/日までとして、連続的な静脈内注入によって実施してもよい。したがって、それぞれの成分の経口投与による1日あたりの全用量は、典型的には1〜2000mgの範囲であり、非経口投与による1日あたりの全用量は、典型的には0.1〜400mgの範囲である。いくつかの実施態様においては、本発明化合物を、たとえば1週間またはそれ以上、あるいは数ヶ月または数年にわたる、連続療法の期間の間投与することもあるであろう。
【0129】
投与量および投与間隔を個別に調節して、調節効果または最少有効濃度(MEC)を維持するのに十分な、有効成分残基の血漿レベルを与えるようにしてもよい。MECは、それぞれの化合物によって変化するであろうが、インビトロのデータから推定することは可能である。MECを達成するのに必要な用量は、個々の特性および投与経路に依存するであろう。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることはできる。
【0130】
投与間隔もまた、MEC値を使用して求めることができる。全時間の10〜90%、好ましくは30〜90%の間、最もこの好ましくは50〜90%の間、MECより高い血漿レベルを維持するような投与計画を使用して、組成物を投与するべきである。
【0131】
局所投与または選択的取り込みの場合には、その薬剤の有効局所濃度は、血漿中濃度には関連しなくてよい。
【0132】
投与される組成物の量は、言うまでもないことであるが、治療を受ける対象、その対象の体重、疾患の重症度、投与方法、および処方医師の判断によって決まる。
【0133】
その組成物は、所望により、パックまたはディスペンサー用具の中に入れて提供されてもよく、それには、有効成分を含む1種または複数の単位剤形が含まれているのがよい。そのパックには、たとえば、ブリスターパックのように、金属またはプラスチックのフォイルが使われていてもよい。そのパックまたはディスペンサー用具には、投与のための説明書を添付してもよい。そのパックまたはディスペンサーにはさらに、医薬品の生産、使用、または販売に関連する政府当局によって決められた形式の容器に関連する注意書きが添付されていてもよいが、その注意書きは、ヒトまたは家畜へ投与するための薬剤の形態についての当局による承認を反映したものである。そのような注意書きは、たとえば、要指示薬、または認可された製剤挿入物についての米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)によって認可された標識であってもよい。配合適性のある医薬品キャリアの中に配合された、本明細書に開示された1種または複数の化合物を含む組成物を、調製し、適切な容器の中に入れ、指示された条件で取扱うためのラベルを貼付けてもよい。
【0134】
本明細書に開示されているのはさらに、エストロゲン受容体機能の活性をモジュレートすることが有効であるような臨床症状を治療する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0135】
本明細書に開示されているのはさらに、炎症性腸症候群、クローン病、潰瘍性直腸炎、または大腸炎を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0136】
本明細書に開示されているのはさらに、前立腺肥大症、子宮平滑筋肉腫、乳癌、子宮内膜癌腫、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、良性乳房疾患、腺筋症、卵巣癌腫、悪性黒色腫、前立腺癌腫、結腸癌、または脳腫瘍(グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーム、または髄膜腫を含む)を治療または予防する方法であて、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0137】
本明細書に開示されているのはさらに、前立腺炎または間質性膀胱炎を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0138】
本明細書に開示されているのはさらに、ホルモン代償療法の方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0139】
本明細書に開示されているのはさらに、骨粗鬆症および骨減少症も含めた骨密度低下を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0140】
本明細書に開示されているのはさらに、コレステロール、トリグリセリド、またはLDLのレベルを低下させる方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの化合物の治療有効量を対象に投与するか、または対象に接触させることであり、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0141】
本明細書に開示されているのはさらに、異コレステロール血症または異脂肪血症を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0142】
本明細書に開示されているのはさらに、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧症、末梢血管疾患、再狭窄、または血管攣縮を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0143】
本明細書に開示されているのはさらに、認知障害を治療するかまたは神経保護を与える方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0144】
本明細書に開示されているのはさらに、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、またはその他の痴呆症を含む神経変性障害を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0145】
本明細書に開示されているのはさらに、脊髄損傷を治療する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0146】
本明細書に開示されているのはさらに、認知低下、卒中、または不安を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、または対象にその接触させることである。
【0147】
本明細書に開示されているのはさらに、フリーラジカルにより誘発される疾病状態を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0148】
本明細書に開示されているのはさらに、膣萎縮症、外陰部萎縮症、萎縮性膣炎、膣乾燥症、掻痒症、性交疼痛症、頻尿、尿失禁、または尿路感染症を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0149】
本明細書に開示されているのはさらに、顔面紅潮またはほてりを含む血管運動神経性症状を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0150】
本明細書に開示されているのはさらに、避妊の方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0151】
本明細書に開示されているのはさらに、子宮内膜症を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0152】
本明細書に開示されているのはさらに、関節炎、非限定的に挙げれば、たとえば慢性関節リウマチ、骨関節炎、関節症、または関節症子宮内膜症を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0153】
本明細書に開示されているのはさらに、乾癬または皮膚炎を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0154】
本明細書に開示されているのはさらに、喘息または胸膜炎を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0155】
本明細書に開示されているのはさらに、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、敗血症、または出血性ショックを治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0156】
本明細書に開示されているのはさらに、II型糖尿病を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0157】
本明細書に開示されているのはさらに、各種のタイプの急性または慢性の疼痛を治療するための方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0158】
本明細書に開示されているのはさらに、喘息、慢性閉塞性肺疾患のような肺障害を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0159】
本明細書に開示されているのはさらに、神経因性疼痛も含めた急性または慢性の疼痛を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0160】
本明細書に開示されているのはさらに、緑内障、ドライアイ、または黄斑変性症(これらに限定される訳ではない)を含めた眼科的障害を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の治療有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0161】
本明細書に開示されているのはさらに、1種または複数のエストロゲン受容体を調節する、具体的にはアゴナイズする方法であるが、その方法に含まれるのは、対象が治療または予防を必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0162】
本明細書に開示されているのはさらに、対象における、炎症を抑制する方法、神経因性疼痛を治療する方法、アレルギー性結膜炎を治療する方法、IL−4レベルを抑制する方法、IFN−γレベルを低下させる方法、ドライアイを治療する方法、またはIL−12レベルを向上させる方法であるが、それに含まれるのは、対象が、炎症を抑制すること、神経因性疼痛を治療すること、アレルギー性結膜炎を治療すること、IL−4レベルを抑制すること、IFN−γレベルを低下させること、ドライアイを治療すること、またはIL−12レベルを向上させることを必要とするかどうかを確認すること、ならびに、エストロゲン受容体β(ERβ)アゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることであるが、ここでそのERβアゴニストは、式Iの1種または複数の化合物である。
【0163】
いくつかの実施態様においては、その炎症が眼の中に存在する。これらの実施態様のいくつかにおいては、その炎症は、眼瞼浮腫、充血、結膜浮腫、または流涙を起こす。他の実施態様においては、その炎症は、ブドウ膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺炎、緑内障、ドライアイ、もしくは黄斑変性症からなる群から選択される眼科的障害に由来するものであるか、または、シェーグレン症候群、眼球瘢痕性類天疱瘡およびエリテマトーデスから選択される全身性炎症性疾患の眼球における発現である。
【0164】
他の実施態様においては、その炎症が消化管の中に存在する。
【0165】
いくつかの実施態様においては、その炎症が急性または慢性の炎症である。
【0166】
ある種の実施態様においては、その炎症が関節炎に由来する。
【0167】
ある種の実施態様においては、そのERβアゴニストが選択的ERβアゴニストである。
【0168】
いくつかの実施態様においては、ERβアゴニストを局所的に投与するし、他の実施態様においては、ERβアゴニストを腹腔内に投与するし、さらに別な実施態様においては、ERβアゴニストを経口的に投与する。さらなる実施態様においては、ERβアゴニストを全身的に投与する。
【0169】
いくつかの実施態様においては、その神経因性疼痛が痛覚過敏であって、それは触覚過敏でありうる。他の実施態様においては、その神経因性疼痛が異痛症である。さらなる実施態様においては、その神経因性疼痛が、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群II、有痛性HIV関連神経障害、および糖尿病性神経障害の群から選択される。さらなる実施態様においては、その神経因性疼痛が、外傷性神経損傷、多発性硬化症、卒中、脊髄空洞症、てんかん、脊髄損傷、および癌の群から選択される病状に伴うものである。
【0170】
また別な実施態様は、対象における炎症を緩和させる化合物を確認する方法であって、それに含まれるのは、対象が炎症を罹患しているかどうかを確認すること、本明細書に定義される少なくとも1種の式Iの化合物をその対象に投与するか、またはその対象に接触させること、ならびにその少なくとも1種の化合物が対象における炎症を抑制するかどうかを判定することである。
【0171】
本明細書に開示されているのはさらに、対象における炎症を抑制する方法であって、それに含まれるのは、対象が炎症の抑制を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0172】
いくつかの実施態様においては、その治療するべき炎症が眼の中に存在する。これらの実施態様のいくつかにおいては、その炎症は、眼瞼浮腫、充血、結膜浮腫、または流涙を起こす。他の実施態様においては、炎症は、ブドウ膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺炎、緑内障、ドライアイ、もしくは黄斑変性症からなる群から選択される眼科的障害に由来するものであるか、または、シェーグレン症候群、眼球瘢痕性類天疱瘡およびエリテマトーデスのような全身性炎症性疾患の眼球における発現である。
【0173】
いくつかの実施態様においては、その炎症が消化管の中に存在する。これらの実施態様のいくつかにおいては、その炎症が大腸炎であるか、または大腸炎に由来するものである。
【0174】
他の実施態様においては、その炎症が関節炎に由来する。
【0175】
いくつかの実施態様においては、その炎症が急性であり、それに対して他の実施態様においては、その炎症が慢性である。
【0176】
本明細書に開示されているのはさらに、対象におけるアレルギー性結膜炎を治療する方法であって、それに含まれるのは、対象がそのような治療を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0177】
本明細書に開示されているのはさらに、対象におけるIL−4レベルを抑制する方法であって、それに含まれるのは、対象がIL−4レベルの抑制を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0178】
本明細書に開示されているのはさらに、対象におけるIFN−γレベルを抑制する方法であって、それに含まれるのは、対象がIFN−γレベルの抑制を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0179】
本明細書に開示されているのはさらに、対象における神経因性疼痛を治療する方法であって、それに含まれるのは、対象が神経因性疼痛の治療を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0180】
神経因性疼痛は、神経、脊髄、または脳における異常性によって起こり、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群II、有痛性HIV関連神経障害、糖尿病性神経障害などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。神経因性疼痛にはさらに、多くの病状が伴うが、そのようなものとしては、外傷性神経損傷、多発性硬化症、卒中、脊髄空洞症、てんかん、脊髄損傷、および癌が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。本明細書に開示された方法は、上述のような神経因性疼痛の発現のすべての治療において有用である。
【0181】
いくつかの実施態様においては、その神経因性疼痛が物理的痛覚過敏である。他の実施態様においては、その神経因性疼痛が異痛症である。
【0182】
本明細書に開示されているのはさらに、対象における癌を治療または予防する方法であって、それに含まれるのは、対象がそれを必要とするかどうかを確認すること、および式Iの1種または複数の化合物の薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることであるが、ここでその癌は、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮癌からなる群から選択される。
【0183】
いくつかの実施態様においては、上述の方法において、その式Iの化合物は、次のものからなる群から選択される:
【化28】

【化29】

【0184】
本明細書に開示されているのはさらに、対象におけるIL−12レベルを向上さる方法であって、それに含まれるのは、対象がIL−12レベルの向上を必要とするかどうかを確認すること、およびERβアゴニストの薬剤的有効量をその対象に投与するか、またはその対象に接触させることである。
【0185】
いくつかの実施態様においては、そのERβアゴニストが、本明細書に記載されたような式Iの化合物である。これらの実施態様のいくつかにおいては、その式Iの化合物は、次のものからなる群から選択される:
【化30】

【化31】

【0186】
いくつかの実施態様においては、治療される対象はヒトである。
【0187】
いくつかの実施態様においては、ERβアゴニストが局所的に投与され、それに対して他の実施態様においては、ERβアゴニストが腹腔内に投与される。他の実施態様においては、ERβアゴニストが経口的に投与される。
【0188】
「対象(subject)」という用語は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを指しているが、そのヒトは、治療、観察、または実験の対象である。哺乳類は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、霊長類たとえばサル、チンパンジー、類人猿、およびヒトからなる群から選択される。
【0189】
「治療有効量」という用語は、所定の生物学的または医薬的レスポンスを引き起こす有効化合物または医薬品の量を示すために使用される。このレスポンスは、研究者、獣医、医者またはその他の臨床家によって検討されている組織、系、動物、またはヒトにおいて起きるものであって、治療すべき疾病の症状を緩和させることが含まれる。
【0190】
また別な実施態様は、エストロゲン受容体の活性を調節する化合物を確認する方法であって、それに含まれるのは、そのエストロゲン受容体を発現する細胞を培養すること、本明細書に定義される少なくとも1種の式Iの化合物を用いてその細胞をインキュベートすること、およびエストロゲン受容体の活性における変化を観察することにより、エストロゲン受容体の活性を調節する式Iの化合物を確認することである。
【実施例】
【0191】
以下の実施例によって本発明の実施態様をさらに詳しく開示するが、それらの実施例は、決して本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0192】
本明細書において採用する場合、以下の用語は、化学文献において受け入れられている意味を有する。
AcOH:酢酸
anhyd:無水
CDI:1,1’−カルボニルジイミダゾール
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
DMPU:1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−1(1H)−ピリミジノン
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDCl:1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
EtO:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
EtOH:エタノール
KHMDS:カリウムヘキサメチルジシラジド
mCPA:3−クロロ過安息香酸
MeOH:メタノール
MeCN:アセトニトリル
NHOAc:酢酸アンモニウム
NMM:N−メチルモルホリン
HOBt:1−ヒドロキシベンズトリアゾール
Pd/C:パラジウム/活性炭
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
uW,MW:マイクロ波反応器化学(Microwave reactor chemistry)
【0193】
実施例1:分析法
分析は、エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えたZMDシングル四重極質量分析計からなる、分取/分析組合せのWaters/Micromass系で実施した。HPLC系は、Waters600グラジエントポンプ(オンライン脱気)、2700サンプルマネージャー、および996PDA検出器からなっていた。
【0194】
分離は、X−Terra MS C18,5μm,4.6×50mmカラム上で実施した。緩衝液A:水中10mMの酢酸アンモニウム、緩衝液B:アセトニトリル/水(95/5)中10mMの酢酸アンモニウム。グラジエントは、10%Bから100%Bまでを10分間、100%Bで1分間保持、6分かけて再平衡とした。その系は1mL/分で操作した。
【0195】
いくつかの分析では、分離を、X−Terra MS C18,5μm,4.6×50mmカラム上で実施した。緩衝液A:水中10mMの酢酸アンモニウム、緩衝液B:アセトニトリル/水(95/5)中10mMの酢酸アンモニウム。グラジエントは、30%Bから100%Bまでを7分間、100%Bで1分間保持、5.5分かけて再平衡とした。その系は1mL/分で操作した。
【0196】
実施例2:(4−ベンジルオキシ−フェニル)−フェニル−メタノン(1)
【化32】

フェノールをベンジル化させるための標準的な手順を、(4−ベンジルオキシ−フェニル)−フェニル−メタノン(1)の合成で例示する。
【0197】
NaH(鉱油中60%、1.2g、30mmol)を、DMF(25mL)中(4−ヒドロキシ−フェニル)−フェニル−メタノン(5g、25.2mmol)の氷冷溶液に添加した。得られた混合物を室温(r.t.)で20分間撹拌した。0℃で臭化ベンジル(6.1mL、50mmol)を添加した。1時間後に反応温度を室温にまで上昇させ、次いでさらに2時間撹拌した。水(20mL)を加え、ジクロロメタン(2×30mL)を用いてその水相を抽出した。有機相を合わせ、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:100%ジクロロメタン)により精製した。収量:7.0g(1の96%)。H NMR(400MHz,CDCl):δ7.83(d,J=8.4Hz,2H)、7.77(d,J=7.2Hz,2H)、7.58〜7.52(m,1H)、7.50〜7.32(m,7H)、7.03(d,J=8.4Hz,2H)、5.17(s,2H)。
【0198】
実施例3:(4−ベンジルオキシ−フェニル)−2−フルオロフェニル−メタノン(2)
【化33】

化合物1の合成において記載された手順を用いて、(2−フルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタノン(2.0g)から表題化合物2を合成した。収量:2.4g(96%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.86〜7.72(m,2H)、7.50〜7.42(m,2H)、7.41〜7.28(m,5H)、7.25〜7.17(m,1H)、7.15〜7.07(m,1H)、7.02〜6.94(m,2H)、5.10(s,2H)。
【0199】
実施例4:(4−(ベンジルオキシ)フェニル)(2,3−ジフルオロフェニル)メタノン(3)
【化34】

t−ブチルリチウムの溶液(3.0mL、ペンタン中1.2M)を、THF(20mL)中ベンジルオキシ−4−ブロモベンゼン(500mg、1.9mmol)の冷却した(−78℃)溶液に添加した。1時間かけて温度を−15℃にまで上げ、さらに2時間−15℃で撹拌した。THF(13mL)中MnCl・2LiCl(1.9mmol)のスラリーを添加し、その混合物を30分間撹拌して、温度が0℃に達するようにした。塩化2,3−ジフルオロベンゾイルを添加し、室温で1時間撹拌した。水(20mL)を加え、10分間撹拌した。ジクロロメタン(2×20mL)を用いてその水相を抽出し、有機相を合わせ、塩水(20mL)を用いて洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:100%ヘプタン→ヘプタン中10%酢酸エチル)により精製すると、表題化合物3が得られた(320mg、収率52%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ d7.88(d,J=7.5Hz,2H)、7.48〜7.15(m,8H)、7.08(d,J=7.5Hz,2H)、5.18(s,2H)。
【0200】
実施例5:(4−(ベンジルオキシ)フェニル)(2,5−ジフルオロフェニル)メタノン(4)
【化35】

3の合成において記載された手順に従って、表題化合物を調製した。収量:510mg、(83%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.88(d,J=7.5Hz,2H)、7.49〜7.34(m,5H)、7.28〜7.10(m,3H)、7.05(d,J=7.5Hz,2H)、5.18(s,2H)。
【0201】
実施例6:(2,6−ジフルオロフェニル)(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)フェニル)−メタノン(5)
【化36】

THF中ZnBrの溶液(1.5M、2mL、3.0mmol)を、THF(0.2M、15mL、3mmol)中の(4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)フェニル)マグネシウムブロミドの溶液に、アルゴン雰囲気下、室温で添加した。その反応混合物を、10分間撹拌し、ドライアイス−アセトン浴で冷却した。パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(50mg)と、THF(2mL)中の塩化2,6−ジフルオロベンゾイル(0.37mL、3mmol)の溶液とを添加した。その混合物を室温で一夜撹拌した。塩水(2×20mL)を用いてその有機相を洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮すると、固形物が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン→ヘプタン中20%酢酸エチル)により精製した。収量:318mg、33%(H−NMRによれば純度約85%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.83〜7.78(m,2H)、7.49〜7.38(m,1H)、7.14〜7.07(m,2H)、7.03〜6.95(m,2H)、5.52(t,J=3.1Hz,1H)、3.83〜3.80(m,1H)、3.63〜3.58(m,1H)、2.10〜1.90(m,1H)、1.89〜1.85(m,2H)、1.72〜1.58(m,3H)。
【0202】
実施例7:1−((4−(ベンジルオキシ)フェニル)(シクロヘキシリデン)メチル)−2−フルオロベンゼン(6)
【化37】

手順A
亜鉛粉末(1.2g、18mmol)を入れた3口丸底フラスコ(100mL)に還流コンデンサーを取付け、10分間真空に引いてから、アルゴンを導入した。THF(15mL)を加え、その反応混合物を冷却し(−10℃)、塩化チタン(IV)(1.64g、8.62mmol)を滴下により添加した(黄色の発煙があった)。その混合物は黄緑色に変わった。その反応混合物を100℃で1時間加熱してから、冷却して室温とした。THF(15mL)中4−ベンジルオキシ−2’−フルオロベンゾフェノン(600mg、2.0mmol)およびシクロヘキサノン(500mg、3.4mmol)の溶液を添加し、その混合物を100℃で50分間加熱してから、冷却して室温とした。TLCからは、ベンゾフェノンが完全に転換されていることが判った。その冷却した混合物をNaHCOの飽和水溶液(200mL)の中に注いだ。酢酸エチル(20mL)を加えた。その有機相をデカントで分離し、水(2×50mL)を用いて洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮すると、黄色のシロップ状物が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン中5%酢酸エチル)により精製すると、表題化合物が0.75g、定量的に得られた。H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.49〜7.20(m,5H)、7.10〜6.99(m,4H)、6.98〜6.86(m,2H)、6.83〜6.77(m,2H)、4.96(s,2H)、2.20(broad s,2H)、2.01(broad s,2H)、1.52(broad s,6H)。
【0203】
手順B
CeCl(310mg、0.83mmol)を、シクロヘキシルマグネシウムブロミド(1mmol)とTHF(10mL)との冷却した溶液(0℃)に添加し、得られた混合物を0℃で10分間撹拌した。その氷冷した混合物に、THF(10mL)中4−O−ベンジル−2’−フルオロベンゾフェノン(250mg、0.81mmol)の溶液を添加した。その混合物を20分間撹拌した。HCl水溶液(1M、10mL)を加え、その混合物を1/2時間撹拌してから、ジクロロメタン(2×20mL)を用いて抽出した。有機相を合わせ、乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮すると、シロップ状物が得られた。H−NMRからは、複数の化合物の混合物であることが認められた。その混合物を、ジクロロメタン(20mL)およびTFA(2mL)の中に溶解させ、室温で1時間撹拌し、濃縮すると、シロップ状物が得られた。コンビフラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン中5→15%酢酸エチル)によって精製すると、表題反応生成物が240mg(77%)の収量で得られた。
【0204】
実施例8:4−(シクロヘキシリデン(2,6−ジフルオロフェニル)メチル)フェノール(7)
【化38】

化合物6の合成で記載した手順Bを使用して、ベンゾフェノン5(289mg)から表題化合物7を合成した。精製工程で使用した酸性条件下で、THP保護基を脱離させた。収量:78mg(29%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.30〜7.14(m,3H)、6.88〜6.81(m,2H)、6.77〜6.71(m,2H)、4.85(s,1H)、2.27(d,J=5.38Hz,2H)、2.05(d,J=5.85Hz,2H)、1.71〜1.52(m,6H)。
【0205】
実施例9:2−((4−(ベンジルオキシ)フェニル)(シクロヘキシリデン)メチル)−1,4−ジフルオロ−ベンゼン(8)
【化39】

化合物6の合成で記載した手順Aを使用して、ケトン4(500mg)から表題化合物8を合成した。収量:410mg(68%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.37〜7.18(m,5H)、7.02〜6.95(m,2H)、6.93〜6.83(m,2H)、6.83〜6.72(m,3H)、4.92(s,2H)、2.18(broad s,2H)、2.03〜1.95(m,2H)、1.55〜1.38(m,6H)。
【0206】
実施例10:1−((4−(ベンジルオキシ)フェニル)(シクロヘキシリデン)メチル)−2,3−ジフルオロ−ベンゼン(9)
【化40】

6の合成で記載した手順Aを使用して、ケトン3(320mg)から化合物9を合成した。収量:210mg(55%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.34〜7.17(m,5H)、7.01〜6.94(m,2H)、6.90〜6.77(m,3H)、6.77〜6.67(m,2H)、4.91(s,2H)、2.21〜2.11(m,2H)、2.01〜1.97(m,2H)、1.56〜1.39(m,6H)。
【0207】
実施例11:4−(シクロペンチリデン(2,6−ジフルオロフェニル)メチル)フェノール(12)
【化41】

化合物6の合成で記載した手順Bを使用して、ケトン5(1mmol)およびシクロペンチルマグネシウムブロミド(2mmol)から化合物12を合成した。使用した酸性条件下で、THP保護基を脱離させた。収量:18mg(16%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.26〜7.14(m,1H)、7.13〜7.12(m,2H)、6.89〜6.85(m,2H)、6.76〜6.73(m,2H)、4.75(s,1H)、2.50(broad t,J=6.4Hz,2H)、2.13(broad t,J=6.4Hz,2H)、1.75〜1.58(m,4H)。
【0208】
実施例12:1−((4−(ベンジルオキシ)フェニル)(シクロペンチリデン)メチル−2−フルオロベンゼン(13)
【化42】

化合物6の合成で記載した手順Bを使用して、ケトン2(1g、3.3mmol)およびシクロペンチルマグネシウムブロミド(6.6mmol)から化合物13を合成した。収量:180mg(17%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.49〜7.29(m,5H)、7.25〜7.13(m,3H)、7.11〜7.02(m,2H)、6.94〜6.87(m,3H)、5.04(s,2H)、2.53〜2.47(m,2H)、2.22〜2.17(m,2H)、1.80〜1.58(m,4H)。
【0209】
実施例13:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2−フルオロフェニル)シクロヘプタノン(14)
【化43】

手順C
化合物6(240mg、0.64mmol)をジクロロメタン(50mL)の中に溶解させ、m−クロロ過安息香酸(220mg、128mmol、2当量)を加えた。その混合物を室温で3時間撹拌した(TLCから、出発物質が完全に転換したことが認められた)。TFA(0.5mL)を添加した。その混合物を10分間撹拌した。飽和NaHCO(20mL)および10%Na水溶液(10mL)を添加し、その混合物を10分間撹拌した。その水相を分離除去し、有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮するとシロップ状物が得られた。コンビフラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン中5→15%酢酸エチル)によって精製すると、表題反応生成物が248mg(定量的)の収量で得られた。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.39〜7.22(m,5H)、7.19〜7.05(m,1H)、7.05〜7.02(m,2H)、6.98〜6.85(m,3H)、6.84〜6.80(m,2H)、4.96(s,2H)、2.74〜2.40(m,4H)、1.78〜1.58(m,6H)。
【0210】
実施例14:2−(2,6−ジフルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタノン(15)
【化44】

化合物14の合成で記載した手順Cを使用して、化合物7(78mg)から表題化合物15を合成した。収量:45mg(60%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.21(tt,J=8.46、8.46、6.07、6.07Hz,1H)、6.91〜6.78(m,2H)、7.06〜6.98(m,2H)、6.73〜6.62(m,2H)、3.15(tdd,J=14.83、10.18、2.24、2.24Hz,1H)、2.79〜2.65(m,2H)、2.29(dd,J=15.19、9.22Hz,1H)、1.93〜1.44(m,6H)。
【0211】
実施例15:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)シクロヘプタノン(16)
【化45】

化合物14の合成で記載した手順Cを使用して、8(410mg)から表題化合物16を合成した。収量:230mg(54%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.48〜7.29(m,5H)、7.21〜7.14(m,2H)、7.14〜7.03(m,1H)、7.01〜6.83(m,3H)、6.70〜6.60(m,1H)、5.05(s,2H)、2.77(ddd,J=12.30、9.59、2.75Hz,1H)、2.69〜2.56(m,1H)、2.56〜2.48(m,1H)、2.47〜2.40(m,1H)、1.99〜1.36(m,6H)。
【0212】
実施例16:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘプタノン(17)
【化46】

化合物14の合成で記載した手順Cを使用して、9(210mg)から表題化合物17を合成した。収量:110mg(50%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.49〜7.29(m,5H)、7.22〜7.14(m,2H)、7.13〜7.01(m,1H)、6.99〜6.91(m,3H)、6.71(tdd,J=8.06、6.42、1.66、1.66Hz,1H)、5.05(s,2H)、2.78(ddd,J=12.34、9.85、2.57Hz,1H)、2.73〜2.59(m,2H)、2.53(dd,J=15.19、8.89Hz,1H)、1.90〜1.17(m,6H)。
【0213】
実施例17:2−(2,6−ジフルオロフェニル)−2−(−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン(18)
【化47】

化合物14の合成で記載した手順Cを使用して、フェノール12(18mg)から表題化合物18を合成した。収量:14mg(74%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.29〜7.20(m,1H)、7.18〜7.10(m,2H)、6.86(dd,JJ=8Hz,J=9Hz,2H)、6.78〜6.72(m,2H)、4.93(broad s,1H)、3.08〜2.98(m,1H)、2.68〜2.61(m,1H)、2.51〜2.43(m,1H)、2.42〜2.34(m,1H)、2.05〜1.57(m,4H)。
【0214】
実施例18:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2−フルオロフェニル)シクロヘキサノン(19)
【化48】

化合物14の合成で記載した手順Cを使用して、13(180mg)から表題化合物19を合成した。収量:165mg(79%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.52〜7.30(m,5H)、7.30〜7.15(m,3H)、7.07〜7.01(m,3H)、6.94〜6.89(m,1H)、6.38(dt,J=7.85、7.85、1.73Hz,1H)、5.09(s,2H)、2.71〜2.47(m,3H)、2.40(ddd,J=14.76、10.58、7.22Hz,1H)、2.00〜1.91(m,2H)、1.86〜1.79(m,2H)。
【0215】
実施例19:2−(2−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタノン(20)
【化49】

化合物14(10mg)を、メタノール(10mL)および酢酸エチル(5mL)の中に溶解させた。5%パラジウム/炭素(10mg)を加えた。その溶液に窒素をバブリングさせた。水素を充填した風船をその系に取付けた。その混合物を一夜撹拌してから、セライトのプラグを通して濾過し、濃縮すると固形物が得られた。H−NMRからは、表題化合物20に完全に転換されていることが判った。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.25〜7.18(m,1H)、7.15〜7.08(m,2H)、7.05〜6.95(m,3H)、6.78〜6.72(m,2H)、2.74〜2.43(m,4H)、1.80〜1.58(m,6H)。
【0216】
実施例20:2−(2−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン(21)
【化50】

化合物20の合成で記載した手順を使用して、化合物19(5mg)から表題化合物21を合成した。収量:3mg。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.16〜7.06(m,3H)、6.97(ddd,J=11.76、8.14、1.28Hz,1H)、6.90〜6.73(m,3H)、6.31(dt,J=7.87、7.86、1.74Hz,1H)、4.92(s,1H)、2.69〜2.40(m,2H)、2.41〜2.23(m,2H)、1.95〜1.82(m,2H)、1.83〜1.69(m,2H)。
【0217】
実施例21:(E)−10a−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−1−フルオロ−8,9,10,10a−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]−シクロヘプタ[d]フラン(22)
【化51】

KHMDS(0.2mL、トルエン中0.5M)を、トルエン(3mL)中2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2,6−ジフルオロフェニル)シクロヘプタノン(50mg)およびDMPU(1mL)の溶液に添加した。その反応混合物を90℃で2時間加熱した(TLCからは、出発物質のいくぶんかの転換が認められた)。さらに1時間の加熱をしたが、TLCでは、出発物質のさらなる転換は起きなかった。水(10mL)、塩水を用いてその有機相を洗浄し、乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン−ジクロロメタン(1:1))により精製すると、表題化合物22が20mgの収量で得られた。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.49〜7.46(m,2H)、7.50〜7.34(m,5H)、7.10〜7.00(m,1H)、6.96〜6.91(m,2H)、6.61〜6.59(m,1H)、6.53〜6.48(m,1H)、5.73(dd,J=5、9Hz,1H)、5.02(s,2H)、3.07〜3.02(m,1H)、2.00〜1.20(m,8H)。
【0218】
実施例22:(E)−4−(1−フルオロ−8,9,10,10a−テトラヒドロ−7H−ベンゾ[b]シクロヘプタ−[d]フラン−10a−イル)フェノール(349)
【化52】

酢酸エチル(2mL)およびエタノール(2mL)中の22(15mg)の溶液に、10%パラジウム/活性炭(数mg)を添加した。Hを充填した風船を取付け、その溶液の中に15秒間Hをバブリングさせた。15分後にその混合物を濾過すると、TLCからは、22が50%の転換をしていることが認められた。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン→ジクロロメタン中5%酢酸エチル)により精製すると、表題の反応生成物が8mg得られた。出発物質は回収した(5mg)。LC−MSでは、m/z=295(M−1)であることが確認された。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.49〜7.46(m,2H)、7.05〜7.00(m,1H)、6.81〜6.79(m,2H)、6.61〜6.59(m,1H)、6.53〜6.48(m,1H)、5.73(dd,J=4.8、9.2Hz,1H)、3.07〜3.02(m,1H)、2.00〜1.20(m,8H)。
【0219】
実施例23:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2−フルオロフェニル)シクロヘプタノール(23)および2−(2−フルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタノール(24)
【化53】

手順D
LiAlH(1M、0.15mL)の溶液を、THF(5mL)中の化合物14(60mg、0.15mmol)に加えた。その混合物を2時間撹拌した。水(4mL)を用いて反応を停止させ、酢酸ジエチル(20mL)を用いてその反応混合物を抽出した。その有機相を乾燥させ(NaSO)、濃縮すると固形物が得られた。フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン:酢酸エチル、1:0→4:1)により、アルコール23が得られた。収量:25mg。脱ベンジル化された化合物24もまた、10mgの収量で単離された。23:H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)8.03〜7.98(m,1H)、7.48〜7.22(m,6H)、7.18〜7.12(m,1H)、7.06〜7.02(m,2H)、6.99〜6.93(m,1H)、6.90〜6.86(m,2H)、5.02(s,2H)、4.12(dd,J=3.4、10.3Hz,1H)、2.54〜2.14(m,4H)、1.84〜1.48(m,6H)。24:H−NMR(400MHz,CDCl):δ8.02〜7.95(m,1H)、7.29〜7.22(m,1H)、7.18〜7.11(m,1H)、7.01〜6.92(m,3H)、6.76〜6.70(m,2H)、5.68(s,2H)、4.10(dd,J=4、10Hz,1H)、2.54〜2.14(m,4H)、1.82〜1.48(m,6H)。
【0220】
実施例24:2−(2,6−ジフルオロフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタノール(25)
【化54】

23/24の合成で記載した手順Dを使用して、ケトン15(45mg)から表題化合物25を合成した。収量:20mg(44%)。その反応生成物は、対になった2種の鏡像異性体の混合物であったので、それを、フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ジクロロメタン中5%酢酸エチル、R0.20および0.22)により分離した。鏡像異性体混合物25A(R=0.22)。収量:10mg。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.29〜7.12(m,1H)、7.08〜6.97(m,2H)、6.89〜6.78(m,2H)、6.72〜6.64(m,2H)、4.74(s,1H)、4.41(t,J=6.95Hz,1H)、2.65〜2.55(m,1H)、2.35〜2.26(m,1H)、2.23〜2.03(m,2H)、1.88〜1.80(m,2H)、1.62〜1.50(m,4H)。鏡像異性体混合物25B(R=0.20)。収量:4mg。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.24〜7.11(m,3H)、6.81(dd,J=11.17、8.26Hz,1H)、6.78〜6.69(m,2H)、4.85〜4.70(m,1H)、2.73〜2.59(m,1H)、2.58〜2.43(m,1H)、2.15〜2.01(m,1H)、2.01〜1.90(m,1H)、1.90〜1.67(m,2H)、1.68〜1.41(m,4H)。
【0221】
実施例25:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2,5−ジフルオロフェニル)シクロヘプタノール(26)
【化55】

23/24の合成で記載した手順Dを使用して、ケトン16(230mg)から表題化合物26を合成した。収量:180mg(77%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.85〜7.73(m,1H)、7.47〜7.28(m,5H)、7.08〜6.99(m,2H)、6.99〜6.82(m,4H)、5.02(s,2H)、4.10〜4.02(m,1H)、2.54〜2.40(m,1H)、2.40〜2.27(m,1H)、2.25〜2.08(m,2H)、1.90〜1.17(m,6H)。
【0222】
実施例26:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2,3−ジフルオロフェニル)シクロヘプタノール(27)
【化56】

23/24の合成で記載した手順Dを使用して、ケトン17(110mg)から表題化合物27を合成した。その反応生成物は、2対の鏡像異性体からなっていた(比率、4:1、H−NMRによる)。主異性体:H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.83〜7.73(m,1H)、7.50〜7.29(m,5H)、7.11〜7.00(m,4H)、6.94〜6.86(m,2H)、5.03(s,2H)、4.08(dd,J=8.68、4.41Hz,1H)、2.55〜2.44(m,1H)、2.41〜2.31(m,1H)、2.24〜2.13(m,2H)、1.78〜1.09(m,6H)。
【0223】
実施例27:4−(1−(2,6−ジフルオロフェニル)−2−ヒドロキシシクロヘキシル)フェノール
【化57】

23/24の合成で記載した手順Dを使用して、ケトン18(12mg)から表題化合物28を合成した。収量:10mg(82%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.30〜7.21(m,2H)、7.18〜7.08(m,1H)、6.82〜6.72(m,4H)、4.96(broad s,1H)、4.78(s,1H)、2.72〜2.64(m,2H)、2.04〜1.30(m,6H)。
【0224】
実施例28:2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−(2−フルオロフェニル)シクロヘキサノール(29)および4−(1−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシシクロヘキシル)フェノール(30)
【化58】

23/24の合成で記載した手順Dを使用して、ケトン19(155mg)からベンジル保護された表題化合物29を合成した。収量:130mg(80%)。7mgの脱ベンジル化された化合物30が単離され、フラッシュクロマトグラフィーにより2対の鏡像異性体30が分離された。鏡像異性体混合物A(4mg)はR値が最も高く、LC−MSm/z=285(M−1)であった。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.84(dt,J=8.04、7.98、1.91Hz,1H)、7.23〜7.17(m,1H)、7.17〜7.10(m,3H)、6.90(ddd,J=12.91、7.97、1.56Hz,1H)、6.76〜6.71(m,2H)、4.71(s,1H)、4.64〜4.53(m,1H)、2.62〜2.54(m,1H)、2.26〜2.19(m,1H)、2.09〜2.03(m,1H)、1.82〜1.68(m,1H)、1.51〜1.33(m,4H)。鏡像異性体混合物B(3mg)はR値が最も低く、LC−MS/UVm/z=285(M−1)であった。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.39(dt,J=8.21、8.07、1.71Hz,1H)、7.29〜7.22(m,2H)、7.21〜7.14(m,1H)、7.12〜7.06(m,1H)、6.91(ddd,J=13.08、8.01、1.49Hz,1H)、6.78〜6.73(m,2H)、4.75〜4.69(m,1H)、2.61〜2.36(m,2H)、2.08〜1.97(m,1H)、1.96〜1.87(m,1H)、1.82〜1.11(m,4H)。
【0225】
実施例29:10a−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ−[b]シクロヘプタ[d]フラン(31)
【化59】

手順E
DMPU(100μL)およびtBuOK(60mg)を、トルエン(5mL)中のアルコール23(60mg、0.15mmol)の溶液に添加した。その混合物を80℃で1/2時間撹拌し(TLCは、出発物資が完全に転換してことを示した)、真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:ヘプタン中10%ジクロロメタン)によって精製すると、それにより、表題化合物が収量45mg、77%で得られた。H−NMR(400MHz,CDCl):δ7.46〜7.31(m,5H)、7.25〜7.17(m,3H)、7.01〜6.98(m,1H)、6.94〜6.86(m,4H)、5.04(s,2H)、4.94(dd,J=3、11Hz,1H)、2.45〜2.37(m,1H)、2.26〜2.10(m,2H)、1.94〜1.85(m,1H)、1.80〜1.28(m,6H)。
【0226】
実施例30:4−(1−フルオロ−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ[d]−フラン−10a−イル)フェノール(231(982および983)ならびに232)
【化60】

化合物31の合成で記載した手順Eを使用して、単離された鏡像異性体混合物25Aおよび25B(それぞれ10mgおよび4mg)から、化合物の混合物231(982および983)ならびに232を合成した。収量:231(2.3mg)および232(0.8mg)。
【0227】
鏡像異性体混合物231。収量:2.3mg。LC MS/UV、m/z=299(M+1)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.20〜7.08(m,3H)、6.80〜6.71(m,2H)、6.64(dd,J=8.06、0.80Hz,1H)、6.55(ddd,J=9.34、8.28、0.79Hz,1H)、4.90(dd,J=6.60、1.77Hz,1H)、4.71(s,1H)、2.39〜2.31(m,2H)、2.16(s,1H)、1.91〜1.80(m,1H)、1.76〜1.25(m,6H)。
【0228】
キラル−HPLCによって231の鏡像異性体を分離すると、982(1.0mg)および983(1.0mg)が分離されたが、その分析条件は以下のとおりである。分析保持時間;982(13.2分)および983(16.2分)。
分析条件
カラム:ChiralPak AD(4.6×250mm)
移動相:ヘプタン−IPA(95:5)
流量:1mL/分
検出:230nm
分取条件
カラム:ChiralPak AD(10×250mm)
移動相:ヘプタン−IPA(95:5)
流量:5mL/分
検出:230nm
注入量:100mg/mL
濃度:1.5mg/mL
担持量:0.15mg
【0229】
鏡像異性体混合物232。収量:0.8mg。LC MS/UV:m/z=299(M+1)であることを確認した。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)6.81〜6.74(m,2H)、6.51(dt,J=6.62、6.57、4.62Hz,1H)、6.29〜6.26(m,2H)、6.20(dd,J=6.43、0.57Hz,1H)、6.07〜5.99(m,1H)、4.88〜4.81(m,1H)、4.61(s,1H)、3.58〜3.46(m,1H)、2.72〜2.57(m,2H)、2.49〜1.68(m,7H)。
【0230】
実施例31:10a−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−2−フルオロ−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ[d]フラン(32)
【化61】

化合物31の合成で記載した手順Eを使用して、26(180mg)から表題化合物32を合成した。収量:141mg(82%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.45〜7.28(m,5H)、7.23〜7.17(m,2H)、6.93〜6.89(m,2H)、6.85(dt,J=8.84、8.78、2.74Hz,1H)、6.75(dd,J=8.70、4.21Hz,1H)、6.66(dd,J=8.20、2.75Hz,1H)、5.04(s,2H)、4.95(dd,J=7.29、1.60Hz,1H)、2.37(dd,J=14.43、10.44Hz,1H)、2.17(td,J=14.82、7.50、7.50Hz,1H)、2.08(dd,J=14.61、8.46Hz,1H)、1.85(tdd,J=14.54、11.13、1.54、1.54Hz,1H)、1.79〜1.08(m,6H)。
【0231】
実施例32:10a−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−4−フルオロ−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ[d]フラン(33)
【化62】

31の合成で記載した手順Eを使用して、アルコール27(75mg)から表題化合物33を合成した。収量:51mg(68%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.46〜7.30(m,5H)、7.24〜7.15(m,2H)、6.96(ddd,J=10.69、8.09、1.23Hz,1H)、6.93〜6.88(m,2H)、6.82(dt,J=8.05、7.96、4.31Hz,1H)、6.74(dd,J=7.51、1.22Hz,1H)、5.05(d,J=1.60Hz,1H)、5.03(s,2H)、2.39(dd,J=14.35、10.48Hz,1H)、2.26(td,J=14.74、7.38、7.38Hz,1H)、2.12(dd,J=14.62、8.42Hz,1H)、1.94〜1.84(m,1H)、1.82〜1.04(m,6H)。
【0232】
実施例33:4−(6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ[d]フラン−10a−イル)フェノール(807)
【化63】

手順F
酢酸エチル(5mL)中の化合物31の溶液に、Pd/活性炭(10%、25mg)を添加した。Hを充填した風船を取付けた。室温で3時間撹拌し、セライトのプラグを通して濾過し、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(溶出液:100%ジクロロメタン)によって精製した。収量:34mg(定量的)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.20〜7.13(m,3H)、6.99〜6.95(m,1H)、6.92〜6.84(m,2H)、6.77〜6.72(m,2H)、4.93(dd,J=2、9Hz,1H)、4.84(broad s,1H)、2.42〜2.34(m,1H)、2.24〜2.06(m,2H)、1.92〜1.84(m,1H)、1.78〜1.28(m,6H)。
【0233】
実施例34:4−(2−フルオロ−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ[d]−フラン−10a−イル)フェノール(448)
【化64】

フェノール807の合成で記載した手順Fを使用して、化合物32から出発して表題化合物448を合成した。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.18〜7.07(m,2H)、6.82(dt,J=8.79、8.79、2.75Hz,1H)、6.78〜6.69(m,3H)、6.62(dd,J=8.20、2.73Hz,1H)、5.08(broad s,1H)、4.91(dd,J=7.30、1.61Hz,1H)、2.45〜2.26(m,1H)、2.23〜1.95(m,2H)、1.82(tdd,J=14.57、12.67、1.56、1.56Hz,1H)、1.77〜1.48(m,4H)、1.44〜1.03(m,2H)。
【0234】
実施例35:4−(4−フルオロ−6,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−5aH−ベンゾ[b]シクロヘプタ−[d]−フラン−10a−イル)フェノール(447)
【化65】

フェノール807の合成で記載した手順Fを使用して、化合物33(51mg)から出発して表題化合物447を合成した。収量:31mg(77%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.14〜7.07(m,2H)、6.93(ddd,J=10.68、8.09、1.20Hz,1H)、6.78(dt,J=8.02、7.80、4.33Hz,1H)、6.74〜6.68(m,3H)、5.00(dd,J=7.26、1.60Hz,1H)、4.95(s,1H)、2.40〜2.28(m,1H)、2.22(td,J=14.78、7.49、7.49Hz,1H)、2.14〜2.04(m,1H)、1.86(tdd,J=14.64、12.73、1.56、1.56Hz,1H)、1.78〜1.49(m,4H)、1.16〜0.96(m,1H)、1.43〜1.29(m,1H)。
【0235】
実施例36:4−(1−フルオロ−5a,6,7,8,9,9a−ヘキサヒドロジベンゾ[b.d]フラン−9a−イル)フェノール(130)
【化66】

化合物31の合成で記載した手順Eを使用して、アルコール28(10mg)から表題化合物130を合成した。LC MS/UV、m/z=285(ESP+)であることを確認した。収量:8mg(79%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.29〜7.20(m,2H)、7.16〜7.08(m,1H)、6.81〜6.75(m,2H)、6.63(d,J=8Hz,1H)、6.54(t,J=8Hz,1H)、4.83(t,J=4Hz,1H)、4.70(s,1H)、2.38〜2.28(m,1H)、2.17〜2.08(m,1H)、1.98〜1.89(m,1H)、1.87〜1.73(m,1H)、1.72〜1.60(m,2H)、1.55〜1.46(m,2H)。
【0236】
実施例37:9b−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−1,2,3,4,4a,9b−ヘキサヒドロジベンゾ−[b.d]フラン(34)
【化67】

化合物31の合成で記載した手順Eを使用して、アルコール29(60mg)から表題化合物34を合成した。収量:50mg(88%)。
【0237】
実施例38:4−(5a,6,7,8,9,9a−ヘキサヒドロジベンゾ[b,d]フラン−9a−イル)フェノール(961)
【化68】

化合物20の合成で記載した手順を使用して、化合物34(10mg)から表題化合物961を合成した。純度を、LC MS/UV:m/z=265(M−1)を確認した。収量:7mg(93%)。H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.26〜7.20(m,2H)、7.17〜7.11(m,1H)、6.87〜6.84(m,3H)、6.80〜6.77(m,2H)、4.83(t,J=4.29、4.29Hz,1H)、4.67(s,1H)、2.35〜2.22(m,1H)、2.05〜1.96(m,1H)、1.86〜1.50(m,6H)。
【0238】
実施例39:バイオケミカルアッセイの実験の説明
R−SAT(登録商標)アッセイ
R−SAT(登録商標)(Receptor Selection and Amplification Technology)は、細胞ベースの機能アッセイであって、それにより受容体依存性の増殖性レスポンスをモニターすることが可能となるが、これについては、すでに別のところで説明した。この方法は、各種の受容体に関して検証されており、そのような受容体としては、次のものが挙げられる:GPCR(Brauner−Osborne and Brann,1996)、RTK(Bursteinら,1998)、サイトカイン受容体(Piuら,2002)、および核内受容体(Piuら,2005;Piuら,2006)。このプロセスは、接触阻害および増殖因子依存性の損失を介しての部分的細胞形質転換によって達成される。モニタリングは、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子ベクターを用いて細胞をトランスフェクトすることにより達成され、その発現は、常時活性型のプロモーターの下にある。簡単に言えば、NIH−3T3線維芽細胞を、96ウェルのプレート中、DMEM10%子牛血清(Hyclone)中で一夜プレート培養し、60〜70%集密度にまで増殖させてから、トランスフェクションを行った。Polyfect(Qiagen)をメーカーの説明書に従って使用して、トランジエントトランスフェクションを実施した。典型的には、トランスフェクション混合物は、受容体と、β−ガラクトシダーゼ発現ベクターとからなる。トランスフェクションの後16時間、30%のUltraculture(Hyclone)と0.4%の子牛血清(Hyclone)とを含むDMEMの中で、各種の量のリガンドを用いて細胞のインキュベートをして、用量反応曲線を得た。5日後に、文献(Piuら,2002)の記載に従って、洗浄された細胞の上に、β−ガラクトシダーゼ基質のo−ニトロフェニル−D−ガラクトピラノシド、ONPG(リン酸緩衝生理食塩液中、5%Nonidet P−40洗浄剤)を含む溶液を添加することによって、プレートを現像させた。マイクロプレートリーダーを用い、420nmで、プレートの読取りを行った。R−SAT(登録商標)アッセイからのデータを、式r=A+B(x/(x+c))に当てはめたが、ここで、A=最小反応、B=最大反応マイナス最小反応、c=EC50、r=反応、およびx=リガンドの濃度である。曲線は、曲線あてはめソフトウェアのExcel FitおよびGraphPad Prism(San Diego,CA)を使用して発生させた。
【0239】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
10%の子牛血清(Hyclone)を含むDMEM中で、HEK293細胞を70%の集密度になるまで増殖させてから、トランスフェクトさせた。トランスフェクションの日(第1日)に、ERaおよびERbの発現ベクターを、Polyfect(Qiagen)を使用し、メーカーの推奨に従って、ルシフェラーゼ遺伝子(Panomics)の上流に合成3ERE(エストロゲン応答エレメント)を含むコンストラクトと共トランスフェクトした。トランスフェクション後の16時間、血清を含まないDMEMの中で細胞をインキュベートした。第3日に、血清を含まないDMEMの中で細胞を、試験化合物と共に48時間インキュベートした。次いで、溶解させることによって細胞抽出物を得て、そのルシフェラーゼ活性を測定した。これらのステップはすべて、市販のキット(Promega)を用いて実施した。
【0240】
結合性アッセイ
HEK293T細胞を、ERαまたはERβをエンコードする発現ベクターと共に48時間かけてトランジエントトランスフェクトしてから、4〜6時間血清不足とした。次いで、氷冷のPBS中で掻き取ることにより細胞を収集し、次いで10mMのTris pH7.4、1mMのEDTA、1mMのDTTを含む氷冷緩衝剤を用いて溶解させてから、ポリトロンに2回、10秒間かけた。4℃で、15000g、30分間の遠心分離にかけることによって、細胞質ゾル抽出物を単離した。20μLの抽出物について、1nMのH−エストラジオール(Perkin Elmer,Boston,MA)を含む全容積100μLの中で4℃で一夜インキュベートすることによって、試験化合物またはエストラジオール対照の競合的結合を実施した。100μLのデキストランコーティングした活性炭を添加することによって、結合画分を非結合画分から分離し、10分間インキュベートし、次いで1000rpmで10分間、遠心分離にかけた。次いで、液体シンチレーションにより試料(1試料あたり100μL)を分析した。次いで、曲線あてはめソフトウェアのGraphPad Prismを使用して、データの解析を行った。
【0241】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、または薬学的に許容されるそれらの塩もしくは代謝産物。
【化1】

[式中:
Xは、酸素、硫黄、S=O、SO、NR30、CR3132からなる群から選択され;
nは、1、2、3、および4からなる群から選択される整数であり;
20は、水素、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたアルケニル、場合によっては置換されたアルキニル、場合によっては置換されたシクロアルキル、場合によっては置換されたシクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたヘテロアリシクリル、ハロアルキル、ペルハロアルキル、スルホニル、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−P(=O)(OR30)、および−CHO(C=O)R30からなる群から選択され;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
、R、R、およびRは、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、隣接する炭素の上のR、R、R、およびRの内の2個が一緒になって、それらが結合している2個の炭素と共に、C3〜6シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはC3〜6ヘテロシクロアルケニル基を形成し;
10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16は、それぞれ別途に独立して、水素、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ペルハロアルキル、C1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、−N=CR3132、−N(R30)−C(=Z)R30、−N(R30)−C(=Z)NR3132、−S(O)NR3132、−S(O)NR3132、−N(R30)−S(=O)R30、−N(R30)−S(=O)30、−OR30、−SR30、および−OC(=Z)R30(ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびアルコキシは場合によっては置換されている)からなる群から選択されるか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、カルボニル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、2個のジェミナルなR11、R12、R13、R14、R15、およびR16が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C2〜6アルキリデン基を形成するか;
または、隣接する炭素の上のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の2個が一緒になって、それらが結合している2個の炭素と共に、二重結合を形成するか;
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の隣接しているR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、すべての炭素原子のオクテットが完成されるべく、R10〜R16の1個または複数が欠ける);
または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、1個の非隣接のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が結合している炭素原子とが、間にあるすべての炭素原子と共に一緒になって、C3〜6シクロアルキル基またはC2〜6ヘテロシクロアルキル基を形成するか(但し、すべての炭素原子のオクテットが完成されるべく、R10〜R16の1個または複数が欠ける);
または、R、R、R、およびRの内の1個と、それが結合している炭素原子と、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによるか、または、R10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の1個と、それが結合している炭素原子と、R、R、R、およびRの内の1個が結合している炭素原子と、間にある少なくとも2個の炭素原子とによって、C5〜7シクロアルケニル基またはC4〜7ヘテロシクロアルキル基を形成し(但し、すべての炭素原子のオクテットが完成されるべく、R〜R16の1個または複数が欠ける);
Zは、酸素または硫黄であり;そして
30、R31、およびR32はそれぞれ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC2〜6アルケニル、場合によっては置換されたC2〜6アルキニル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルケニル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたC2〜6ヘテロアリシクリル、からなる群から選択されるか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している窒素原子と共に、ヘテロシクロアルキル基を形成するか;
または、R31とR32が一緒になって、それらが結合している炭素原子と共に、C3〜6シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を形成する]
【請求項2】
〜R16において場合によっては置換された前記置換基が、それぞれ独立して、−CN、ハロゲン、ハロアルキル、−O(C1〜6アルキル)、−NR3132、−S(C1〜6アルキル)、−O(C1〜6ハロアルキル)からなる群から選択される置換基で置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、酸素または硫黄である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、R、R、およびRが、それぞれ別個にかつ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、R、R、およびRが、それぞれ、水素、フルオロ、およびクロロからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
、R、R、およびRが、それぞれ別個にかつ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
、R、R、およびRが、それぞれ、水素およびフルオロからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
10、R11、R12、R13,R14、R15、およびR16が、それぞれ別個にかつ独立して、水素、場合によっては置換されたC1〜6アルキル、場合によっては置換されたC3〜6シクロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6アルキル(C3〜6シクロアルキル)、ハロゲン、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルキル、場合によっては置換されたC1〜6ハロアルコキシ、−CN、−C(=Z)R30、−C(=Z)OR30、−C(=Z)NR3132、−C(R30)=NR31、−NR3132、および−N=CR3132からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16が、それぞれ、水素およびフルオロからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
隣接する炭素の上のR10、R11、R12、R13、R14、R15、およびR16の内の2個が一緒になって、それらが結合している2個の炭素と共に、二重結合を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
20が、水素、場合によっては置換されたアルキル、場合によっては置換されたシクロアルキル、場合によっては置換されたアリール、場合によっては置換されたヘテロアリール、場合によっては置換されたヘテロアリシクリル、およびハロアルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
20が、水素およびメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
nが、2または3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
以下のものからなる群から選択される化合物。
【化2】

【化3】

【請求項15】
請求項1に記載の1種または複数の化合物、および薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
対象の炎症を抑制すること、神経因性疼痛を治療すること、アレルギー性結膜炎を治療すること、IL−4レベルを抑制すること、IFN−γレベルを低下させること、ドライアイを治療すること、またはIL−12レベルを向上させることに使用するための医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項17】
前記化合物がERβアゴニストである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記炎症が、眼の中に存在するか、消化管の中に存在するか、
眼瞼浮腫、充血、結膜浮腫、流涙をもたらすか、
または関節炎に起因するか、
もしくは、ブドウ膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺炎、緑内障、ドライアイ、もしくは黄斑変性症からなる群から選択される眼科的障害に起因するか、
または、シェーグレン症候群、眼球瘢痕性類天疱瘡およびエリテマトーデスから選択される全身性炎症性疾患の眼球における発現である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記炎症が急性または慢性の炎症であり、前記神経因性疼痛が、外傷性神経損傷、多発性硬化症、卒中、脊髄空洞症、てんかん、脊髄損傷、および癌の群から選択される病状に伴うものである、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記医薬品が、局所的、腹腔内的、経口的、または全身的に投与されるように調製される、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記神経因性疼痛が、痛覚過敏、異痛症、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群II、有痛性HIV関連神経障害、および糖尿病性神経障害の群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項22】
前記痛覚過敏が、触覚過敏である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
炎症性腸症候群;クローン病;潰瘍性直腸炎もしくは大腸炎;前立腺肥大症;子宮平滑筋肉腫;乳癌;子宮内膜癌腫;多嚢胞性卵巣症候群;子宮内膜ポリープ;良性乳房疾患;腺筋症;卵巣癌腫;悪性黒色腫;前立腺癌腫;結腸癌;脳腫瘍(グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーム、または髄膜腫を含む);前立腺炎;間質性膀胱炎;骨密度低下(骨粗鬆症または骨減少症を含む);異コレステロール血症;異脂肪血症;心血管疾患;アテローム性動脈硬化症;高血圧症;末梢血管疾患;再狭窄;血管攣縮;神経変性障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、またはその他の痴呆症を含む);認知低下;卒中;不安;膣萎縮症;外陰部萎縮症;萎縮性膣炎;膣乾燥症;掻痒症;性交疼痛症;頻尿;尿失禁;尿路感染症;血管運動神経性症状(顔面紅潮またはほてりを含む);関節炎(慢性関節リウマチ、骨関節炎、または関節症子宮内膜症を含む);乾癬;皮膚炎;喘息;胸膜炎;多発性硬化症;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜炎;敗血症;出血性ショック;II型糖尿病;急性または慢性の炎症;急性または慢性の疼痛;肺障害(喘息または慢性閉塞性肺疾患を含む);眼科的障害(緑内障、ドライアイ、または黄斑変性症を含む);ならびにフリーラジカルにより誘発される疾病状態、
からなる群から選択される障害を治療または予防するために使用される医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項24】
対象における、ホルモン代償療法、コレステロール、トリグリセリド、もしくはLDLのレベルの抑制、認知障害の治療、または神経保護、避妊、癌の治療または予防に使用するための医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項25】
前記癌が、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮癌からなる群から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項26】
生体内で、1種または複数のエストロゲン受容体を調節する、あるいは特異的にアゴナイズすることに使用するための医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項27】
対象の炎症を抑制し、神経因性疼痛を治療し、アレルギー性結膜炎を治療し、IL−4レベルを抑制し、IFN−γレベルを低下させ、ドライアイを治療し、またはIL−12レベルを向上させる方法であって、
対象が、炎症を抑制すること、神経因性疼痛を治療すること、アレルギー性結膜炎を治療すること、IL−4レベルを抑制すること、IFN−γレベルを低下させること、ドライアイを治療すること、またはIL−12レベルを向上させることを必要とするかどうかを確認すること、ならびに、
1種または複数のエストロゲン受容体β(ERβ)アゴニストの薬剤的有効量を前記対象に投与すること、を含み、
ここで前記ERβアゴニストは、請求項1の化合物であることを特徴とする方法。
【請求項28】
前記炎症が、眼の中に存在するか、消化管の中に存在するか、
眼瞼浮腫、充血、結膜浮腫、流涙をもたらすか、
または関節炎に起因するか、
もしくは、ブドウ膜炎、眼瞼炎、マイボーム腺炎、緑内障、ドライアイ、もしくは黄斑変性症からなる群から選択される眼科的障害に起因するか、
または、シェーグレン症候群、眼球瘢痕性類天疱瘡およびエリテマトーデスから選択される全身性炎症性疾患の眼球における発現である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記炎症が急性または慢性の炎症であり、前記神経因性疼痛が、外傷性神経損傷、多発性硬化症、卒中、脊髄空洞症、てんかん、脊髄損傷、および癌の群から選択される病状に伴うものである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ERβアゴニストが、局所的、腹腔内的、経口的、または全身的に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記神経因性疼痛が、痛覚過敏、異痛症、幻肢痛、帯状疱疹後神経痛、反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギー、複合性局所性疼痛症候群II、有痛性HIV関連神経障害、および糖尿病性神経障害の群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記痛覚過敏が、触覚過敏である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
炎症性腸症候群;クローン病;潰瘍性直腸炎もしくは大腸炎;前立腺肥大症;子宮平滑筋肉腫;乳癌;子宮内膜癌腫;多嚢胞性卵巣症候群;子宮内膜ポリープ;良性乳房疾患;腺筋症;卵巣癌腫;悪性黒色腫;前立腺癌腫;結腸癌;脳腫瘍(グリア芽腫、星状細胞腫、グリオーム、または髄膜腫を含む);前立腺炎;間質性膀胱炎;骨密度低下(骨粗鬆症または骨減少症を含む);異コレステロール血症;異脂肪血症;心血管疾患;アテローム性動脈硬化症;高血圧症;末梢血管疾患;再狭窄;血管攣縮;神経変性障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、またはその他の痴呆症を含む);認知低下;卒中;不安;膣萎縮症;外陰部萎縮症;萎縮性膣炎;膣乾燥症;掻痒症;性交疼痛症;頻尿;尿失禁;尿路感染症;血管運動神経性症状(顔面紅潮またはほてりを含む);関節炎(慢性関節リウマチ、骨関節炎、または関節症子宮内膜症を含む);乾癬;皮膚炎;喘息;胸膜炎;多発性硬化症;全身性エリテマトーデス;ブドウ膜炎;敗血症;出血性ショック;II型糖尿病;急性または慢性の炎症;急性または慢性の疼痛;肺障害(喘息または慢性閉塞性肺疾患を含む);眼科的障害(緑内障、ドライアイ、または黄斑変性症を含む);ならびにフリーラジカルにより誘発される疾病状態、
からなる群から選択される障害を治療または予防する方法であって、
対象が前記治療または予防を必要としているかどうかを確認すること;および
前記対象に、請求項1に記載の1種または複数の化合物を薬剤的有効量投与することを含む、方法。
【請求項34】
対象における、ホルモン代償療法、コレステロール、トリグリセリド、もしくはLDLのレベルの抑制、認知障害の治療、または神経保護、避妊、癌の治療または予防のための方法であって、
対象がそれらを必要としているかどうかを確認すること;および
前記対象に、請求項1に記載の1種または複数の化合物を薬剤的有効量投与することを含む、方法。
【請求項35】
前記癌が、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、および子宮癌からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
1種または複数のエストロゲン受容体を調節する、あるいは特異的にアゴナイズする方法であって、
対象が前記調節またはアゴナイズを必要としているかどうかを確認すること;および
前記対象に、請求項1に記載の1種または複数の化合物を有効量投与することを含む、方法。

【公表番号】特表2011−500849(P2011−500849A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531296(P2010−531296)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/081211
【国際公開番号】WO2009/055734
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(502295674)アカディア ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】