説明

エチレンオキシド繰り返し単位セグメントを有するペルフルオロポリエーテル材料を含む重合性組成物

本明細書に記載されているのは、表面層を有する光学基材及びこのような光学基材を含む光学ディスプレイである。この表面層は、少なくとも2つのフリーラジカル重合性基と、6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を有する少なくとも1つのセグメントとを含む少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル材料、及び少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の非フルオロ化バインダー前駆体、を含む重合性混合物の反応生成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ハードコートは光学ディスプレイの表面を保護するために使用されてきている。ハードコートは典型的には、バインダー前駆体樹脂マトリックスの中に分散しているナノメートル寸法の無機オキシド粒子(例えば、シリカ)を含有しており、「セラマー」と呼ばれる場合もある。
【0002】
米国特許第6,132,861号(カン(Kang)ら、‘861号特許)、同第6,238,798 B1号(カン(Kang)ら、‘798号特許)、同第6,245,833B1号(カン(Kang)ら、‘833号特許)、同第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)及びPCT国際公開出願第99/57185号(ハン(Huang)ら)には、コロイド状無機オキシド粒子、硬化性バインダー前駆体及び特定のフルオロケミカル化合物のブレンドを含有するセラマー組成物が記載されている。
【0003】
米国特許第6,660,388号、同第6,660,389号、同第6,841,190号(リュウ(Liu)ら)並びに米国特許第7,101,618号には、ディスプレイ装置用保護フィルムとしての使用に好適な防汚ハードコーティングされたフィルムが記載されている。
【0004】
PCT国際公開特許第2005/111157号(要約書)には、光学ディスプレイ上の防汚染性単層として使用するためのハードコートコーティング組成物が記載されている。ハードコートコーティング組成物は、少なくとも1種の一価ヘキサフルオロポリプロピレンオキシド誘導体を有するモノ又はマルチ(メチル)アクリレート、及びフリーラジカル反応性フルオロアルキル基又はフルオロアルキレン基を含有するアクリレート相溶剤を含む。
【0005】
PCT国際公開特許第2006/102383号及び同第03/002628号には、様々な重合性ペルフルオロポリエーテルウレタン添加物及びハードコートでのこれらの使用が記載されている。
【0006】
PCT国際公開特許第03/002628号(要約書)には、非フルオロ化基材に対して親和性を有し、これらの表面上で、表面にしっかりと接着されているフィルムを形成することができるペルフルオロポリエーテル含有組成物が記載されている。これは、(A)ジイソシアネートを三量化することにより得られるトリイソシアネートと、(B)活性水素を有する少なくとも2つの化合物の組み合わせとを含む、炭素−炭素二重結合を含有する組成物であり、この構成成分(B)は、(B−1)少なくとも1つの活性水素原子を有するペルフルオロポリエーテル及び(B2)活性水素原子と炭素−炭素二重結合とを有するモノマーを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載されているのは、少なくとも2つのフリーラジカル重合性基と6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を有する少なくとも1つのセグメントとを含む少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル(例えば、ウレタン)材料、及び少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の非フルオロ化バインダー前駆体を含む重合性混合物の反応生成物を含む表面層を有する(例えば、光透過性光学)基材を含む光学ディスプレイなどの物品である。
【0008】
別の実施形態では、フリーラジカル重合性組成物が記載され、i)少なくとも1種のポリイソシアネート、ii)少なくとも1種のイソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル化合物、iii)6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を含む少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、及びiv)少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のイソシアネート反応性非フルオロ化架橋剤の反応生成物の混合物を含む。本組成物は、ポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテート、及びセルローストリアセテートなどのコーティング光学基材に特に有用であるアルコール含有溶媒の中に分散されているコーティングであってよい。
【0009】
これらの実施形態のそれぞれでは、ペルフルオロポリエーテル(例えば、ウレタン)材料は、好ましくは、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する末端基などの少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む。ペルフルオロポリエーテルウレタンは、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−(式中、「a」は4〜15の範囲である)などの一価のペルフルオロポリエーテル部分を含んでよい。少なくとも3つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の(例えば、非フルオロ化)炭化水素架橋剤を好ましくは含むバインダー前駆体が、典型的には使用される。いくつかの態様では、表面層又は重合性組成物は、無機オキシド粒子を更に含む。別の態様では、無機オキシド粒子を含むハードコート層が、基材と(例えば無機粒子を有さない)表面層との間に配置される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載されているのは、光透過性光学基材を包含する光学ディスプレイなどの物品である。光学基材の表面層は、エチレンオキシド繰り返し単位を含む少なくとも1つのセグメントを有する少なくとも1種のフリーラジカル重合性ペルフルオロポリエーテル(例えば、ウレタン)材料、及び少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の非フルオロ化バインダー前駆体を含む重合性混合物の反応生成物を含む。
【0011】
1つの代表的なフリーラジカル重合性ペルフルオロポリエーテル材料はペルフルオロポリエーテルウレタン材料であり、
i)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
ii)少なくとも1種のイソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル化合物と、
iii)6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を含有する少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物と、及び
iv)2つ以上のフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のイソシアネート反応性(例えば、非フルオロ化)炭化水素架橋剤の反応生成物との混合物を含む。
【0012】
ペルフルオロポリエーテル化合物(すなわち、ii)及びエチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物(すなわち、iii)は好ましくは、少なくとも1つの(例えば末端)アルコール、チオール、又はアミン基を含む。典型的には、ペルフルオロポリエーテル化合物とエチレンオキシド化合物の両方が(例えば、末端)反応性アルコール基を含有する。
【0013】
1つの実施形態では、一官能性ペルフルオロポリエーテル化合物及び一官能性エチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物が、ポリイソシアネートとの反応物質として使用される。別の実施形態では、多官能性ペルフルオロポリエーテル化合物と、一官能性エチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物とが、使用される。更に別の実施形態では、多官能性ペルフルオロポリエーテル化合物と、多官能性エチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物とが、使用される。少なくとも2つの多官能性イソシアネート反応性化合物が合成に使用されるとき、反応生成物は、典型的にはペルフルオロポリエーテルポリマー材料の大部分を含有する。
【0014】
炭化水素架橋剤(すなわち、iv)は典型的には、(メタ)アクリレート基などの(メタ)アクリル基を含む。ペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料並びに反応混合物の他の反応生成物が、例えば、放射線(例えば、UV)硬化によって続けて硬化することができる未反応のフリーラジカル重合性基を含むように、実質的に過剰な炭化水素架橋剤(すなわちiv)が典型的に使用される。
【0015】
典型的には、ペルフルオロポリエーテルウレタン組成物は、まずアルコール、チオール、又はアミン基を含有するペルフルオロポリエーテル化合物とポリイソシアネートとを反応させ、続けてアルコール、チオール、又はアミン基を含有する1つ以上のエチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物と反応させることにより作製される。次に、ペルフルオロポリエーテルウレタン添加物が、(例えば、非フルオロ化)イソシアネート反応性の多官能性フリーラジカル重合性(例えば、(メタ)アクリレート)架橋剤と組み合わされる。あるいは、これらのペルフルオロポリエーテルウレタン添加物は、まずポリイソシアネートを架橋剤と反応させ、続いてエチレンオキシド繰り返し単位を含有する化合物を添加するといった、他の反応順序により形成することができる。更に、ペルフルオロポリエーテルウレタン添加物は4つの構成成分全てを同時に反応させることにより作製することができる。
【0016】
これらの反応順序は一般的には、有機スズ化合物などの触媒の存在下でヒドロキシル基を含有しない溶媒(例えば、MEK)の中で実施されるが、それゆえに、形成される組成物は、一般にアルコールとして知られるヒドロキシル基含有溶媒と改善された相溶性を有する。アルコール系コーティング組成物は、ケトン(例えば、MEK)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、及びエステル(例えば、アセテート溶媒)などの有機溶媒によって膨潤、亀裂、又はひび割れを生じやすいポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテート、及びセルローストリアセテートなどのコーティング光透過性基材に特に有用である。
【0017】
1種以上のポリイソシアネート材料がペルフルオロポリエーテルウレタンの調製に使用される。様々なポリイソシアネートがペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料の調製に構成成分i)として利用されてもよい。
【0018】
「ポリイソシアネート」とは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネートなどのような単一分子内に2つ以上の反応性イソシアネート(−−NCO)基を有するあらゆる有機化合物及びこれらの混合物を意味する。環式及び/又は直鎖ポリイソシアネート分子は有用に使用されてもよい。風化を改善し、黄変を低減するため、イソシアネート構成成分のポリイソシアネート(1種又は複数種)は典型的には脂肪族である。
【0019】
ペルフルオロポリエーテル化合物、エチレンオキシド繰り返し単位含有化合物、及び炭化水素架橋剤が一官能性イソシアネート反応性を有する実施形態に関して、使用されるイソシアネートは典型的には少なくとも三官能性である。しかしながら、1種以上のイソシアネート反応性化合物が少なくとも二官能性イソシアネート反応性を有するとき、二官能性イソシアネートを使用することができる。
【0020】
有用な脂肪族ポリイソシアネートには、例えば、バイエル社(Bayer Corp.)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から「デスモデュア(Desmodur)W」という商品名で入手可能であるようなビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、ヒュルス・アメリカ社(Huels America)(ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway))から市販されているようなイソホロンジイソシアネート(IPDI)、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から市販されているようなヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、デグッサ社(Degussa, Corp.)(ドイツ、デュッセルドルフ(Dusseldorf))から「ベスタナート(Vestanate)TMDI」という商品名で市販されているようなトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及びアルドリッチ・ケミカル社(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から市販されているようなm−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。典型的にはあまり好ましくないが、バイエル社(Bayer Corp.)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から「モンデュール(Mondur)M」という商品名で市販されているようなジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの芳香族イソシアネート、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から市販されているようなトルエン2,4−ジイソシアネート(TDI)、及び1,4−フェニレンジイソシアネートもまた有用である。
【0021】
好ましいポリイソシアネートには、上記のモノマーポリイソシアネートの誘導体も挙げられる。これらの誘導体には、バイエル社(Bayer Corp.)から「デスモデュア(Desmodur)N−100」という商品名で入手可能なヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物などのビウレット基を含有するポリイソシアネート、バイエル社から「デスモデュア(Desmodur)N−3300」という商品名で入手可能であるようなイソシアネート基を含有するHDIに基づくポリイソシアネート、並びにウレタン基、ウレトジオン基、カルボジイミド基、アロフォネート(allophonate)基及びこれらに類するものを含有するポリイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらがポリマーであるとき、これらの誘導体は好ましく、非常に低い蒸気圧を呈し、イソシアネートモノマーを実質的に含まない。
【0022】
使用されてもよい他のポリイソシアネートがバイエルポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から「デスモデュア(Desmodur)TPLS2294」及び「デスモデュア(Desmodur)N3600」という商品名で入手可能である。
【0023】
1種以上のイソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル材料がペルフルオロポリエーテルウレタンの調製に使用される。様々なイソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル材料を、構成成分ii)として使用することができる。OH、SH又はNHR(式中、RはHであるか又は1〜4個の炭素原子のアルキル基である)などの(例えば、末端)イソシアネート反応性基を有する様々なペルフルオロポリエーテル材料の合成が知られている。例えば、アルコールの調製のためのメチルエステル材料(例えば、平均分子量1,211g/モル)が米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することができ、分別蒸留により精製される。ペルフルオロポリエーテルアルコール材料は、米国公開第2004−0077775号明細書(2002年5月24日出願)に記載されているものと同様な手順により作製することができる。SH基を有するペルフルオロポリエーテルアルコール材料は、アミノエタノールよりもむしろアミノエタンチオールの使用により、この同一のプロセスを使用して作製することができる。ペルフルオロポリエーテルアミン材料は、米国特許第2005/025921号に記載されているように合成することができる。
【0024】
イソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル材料は次式を有するものの1種以上の化合物を包含する。
【0025】
Rf1−[Q(XH)y]z、
式中、
Rf1は一価(この場合zは1である)又は二価(この場合zは2である)のペルフルオロポリエーテルであり、
Qは少なくとも2の価数を有する連結基であり、
XはO、S、又はNRであり(式中、RはHで又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)、
yは1又は2であり、及び
zは1又は2である。
【0026】
Qは、直鎖、分枝鎖、又は環を含有する連結基を含むことができる。Qは、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンを包含することができる。Qは所望により、O、N、及びSなどのヘテロ原子並びにこれらの組み合わせを包含することができる。Qは所望により、カルボニル又はスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基、並びにこれらの組み合わせを包含することもできる。
【0027】
ペルフルオロポリエーテルウレタン材料は好ましくはイソシアネート反応性HFPO−材料から調製される。特に注記がない限り、「HFPO−」とは、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、式中、「a」の平均値は2〜15である。いくつかの実施形態では、「a」の平均値は3〜10であるか又は「a」の平均値は5〜8である。このような種は、一般的に「a」の値の範囲を有するオリゴマーの分散物又は混合物として存在し、その結果aの平均値は非整数となることがある。例えば、1つの実施形態では、「a」の平均値は6.2である。HFPO−ペルフルオロポリエーテル材料の分子量は、繰り返し単位の数「a」に依存して、約940g/モル〜約1600g/モルで変化し、典型的には1100g/モル〜1400g/モルが好ましい。
【0028】
1つ以上のイソシアネート反応性エチレンオキシド繰り返し単位を含有する材料がペルフルオロポリエーテルウレタンの調製に使用される。エチレンオキシドを含有するイソシアネート反応性化合物は一般的に6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を含む。エチレンオキシド繰り返し単位の数は、少なくとも7、8、又は9の繰り返し単位であってよい。いくつかの実施形態では、イソシアネート反応性エチレンオキシド含有化合物は少なくとも10のエチレンオキシド繰り返し単位を有する。例えば、繰り返し単位の数は、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であってよい。一般的には、エチレンオキシド繰り返し単位の数は、約50を超えず、例えば、25、30、又は35までの繰り返し単位であってよい。
【0029】
エチレンオキシド含有化合物は次式により表されてよい。
【0030】
(HX)(CO)EO
式中、
XはO、S又はNRであり(式中、RはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)、
EOはH、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキルから選択される基であって、所望によりヘテロ原子、ヘテロ原子官能基(−OH、−SH、及び−NHなど)で置換することができ、又は所望により(メタ)アクリル官能基で置換することができる基であるか、又は−C(O)C(R)=CH(式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキル、H又はFである)であり、
bは1〜4の範囲であり、典型的には1又は2であり、及び
jは7〜50の範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態では、REOはH又はCHなどの1〜4個の炭素原子の低級アルキルである。このような実施形態が結果的に低い埃吸引力を有する表面層を生じることが分かっている。
【0032】
エチレンオキシド含有化合物はまた、プロピレンオキシドなどの他のアルキレンオキシド化合物を含んでもよい。このような実施形態では、アルキレンオキシド繰り返し単位の大部分は典型的にはエチレンオキシド繰り返し単位である。
【0033】
様々なイソシアネート反応性非フルオロ化炭化水素架橋剤がペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料の合成に使用することができる。このような架橋剤は少なくとも2つの、好ましくは3つのフリーラジカル重合性基を含む。フリーラジカル重合性基は好ましくは(メタ)アクリル基、より好ましくは(メタ)アクリレート基である。
【0034】
好適なイソシアネート反応性非フルオロ化炭化水素架橋剤は次式により記載されてよい。
【0035】
(HO)Q(A)
式中、
Qは少なくとも2の価数を有する連結基であり、
Aは−XC(O)C(R2)=CH2などの(メタ)アクリル官能基であり(式中、
XはO、S又はNRであり(式中、RはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)、及び
は1〜4個の炭素原子の低級アルキル、H又はFであり、
bは1〜4の範囲であり、好ましくは1又は2であり、及び
pは2〜6の範囲である。
【0036】
Qは前述したような、直鎖、分枝鎖、又は環を含有する連結基を含むことができる。
【0037】
代表的なイソシアネート反応性架橋剤には、例えば、エコー・レジン社(Echo Resin Inc.)(ミズーリ州ヴァーセイルズ(Versailles))から入手可能な1,3−グリセロールジメタクリレート、及びサートマー社(Sartomer)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から「SR444C」という商品名で入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。更なる有用なイソシアネート反応性(メタ)アクリレート架橋剤には、例えば、米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されるようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
イソシアネート基のモル分率が1.0の値で適宜与えられるならば、ペルフルオロポリエーテルウレタン材料を作製するのに使用されるイソシアネート反応性基の総モル分率は1.0以上である。本明細書に記載されている重合性組成物は少なくとも0.2モル分率の架橋剤(1種又は複数種)を含むが、イソシアネート反応性炭化水素架橋剤の濃度を最大化して耐久性及びハードコートのバインダーとの相溶性を改善することが典型的には好ましい。したがって、架橋剤(1種又は複数種)の総量は、イソシアネート反応物質の合計の少なくとも0.5モル分率を構成し、少なくとも0.6モル分率、少なくとも0.7モル分率、少なくとも0.8モル分率、又は少なくとも0.9モル分率を構成してよい。ペルフルオロポリエーテル反応物質のモル分率は典型的には少なくとも0.05であり、0.5以下である。エチレンオキシド繰り返し単位含有反応物質のモル分率はまた典型的には少なくとも0.05、又は少なくとも0.10であり、0.7以下、0.6以下、又は0.5以下である。
【0039】
反応生成物は一般的には、様々な反応生成物の分布を包含する。3つの反応物質(ii、iii、及びiv)全てを有するポリイソシアネートの反応生成物に加えて、3つのうちの2つを有するポリイソシアネートの反応生成物、並びに個別の反応物質を有するポリイソシアネートの反応生成物もまた存在する。
【0040】
例えば、HDIのビウレットと1等量のHFPOオリゴマーアミドールHFPO−C(O)NHCHCHOH(式中、「a」の平均値は2〜15である)と、更に2等量のペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物により形成される1つの例示的な構造が以下のように示される。
【0041】
【化1】

【0042】
1つの好ましい実施形態では、ペルフルオロポリエーテルウレタン組成物は次式を有する。
【0043】
Ri−(NHC(O)XQRf)、−(NHC(O)OQ(A)p)、−(NHC(O)X(CO)EO
式中、Riはマルチイソシアネートの残基であり、
Xはそれぞれ独立してO、S又はNRであり(式中、RはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルである)、
Qは独立して少なくとも2の価数の連結基であり、
Rfは、式F(RfcO)xCdF2d−を含む基からなる一価のペルフルオロポリエーテル部分であり(式中、各Rfcは1〜6個の炭素原子を有するフルオロ化アルキレン基を独立して表し、各xは2以上の整数を独立して表し、dは1〜6の整数である)、
Aは、−XC(O)C(R2)=CH2などの(メタ)アクリル官能基であり(式中、R2は1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル、H又はFである)、
pは2〜6であり、
jは7〜40の範囲であり、及び
EOはH、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキルから選択される基であって、所望によりヘテロ原子、ヘテロ原子官能基(−OH、−SH、及び−NHなど)で置換することができ、又は所望により(メタ)アクリル官能基で置換することができる基であり、又は−C(O)C(R)=CH(式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキル、H又はFである)である。
【0044】
使用されるそれぞれの材料の数並びに反応物質の官能性に応じて、様々なペルフルオロポリエーテルウレタン材料を、この式の各単位のうちの少なくとも1つを有するよう調製することができる。
【0045】
Rf基に結合しているQは前述したような、直鎖、分枝鎖、又は環を含有する連結基である。
【0046】
いくつかの実施形態では、XがOであるとき、Qは典型的にはメチレンではなく、したがって2つ以上の炭素原子を含有する。他の実施形態では、XはS又はNRである。いくつかの実施形態では、Qは少なくとも2つの炭素原子を有するアルキレンである。他の実施形態では、Qはアリーレン、アラルキレン、及びアルカリーレンから選択される直鎖、分枝鎖、又は環を含有する連結基である。更に他の実施形態では、QはO、N、及びSなどのヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基を含有する。他の実施形態では、Qは、O、N、Sから選択されるヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基を所望により含有する分枝鎖又は環を含有するアルキレン基である。いくつかの実施形態では、Qは、−C(O)NHCHCH−、−C(O)NH(CH−、及び−C(O)NH(CHCHO)CHCH−などのアミド基のような窒素含有基を含有する。
【0047】
様々な他の反応物質を、PCT国際公開特許第2006/102383号に記載されているようなペルフルオロポリエーテルウレタンの調製に包含することができる。
【0048】
本明細書に記載されるペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料は、単独で又は少なくとも1つのフリーラジカル反応性基に連結されているフルオロポリエーテル、フルオロアルキル、及びフルオロアルキレンから選択される少なくとも1つの部分を有する様々な他のフルオロ化化合物と組み合わせて、使用されてよい。第2のフルオロ化化合物が使用されるとき、このような第2のフルオロ化化合物もHFPO−部分を含むことが典型的には好ましい。記載されているペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料と組み合わせて使用することができる様々なフルオロ化材料はまた、PCT国際公開特許第2006/102383号にも記載されている。
【0049】
重合性ペルフルオロポリエーテルウレタン組成物は典型的には、(例えばアルコール系)溶媒と組み合わせてハードコート組成物の中に分散され、光学基材に適用されて光硬化されて、洗浄の容易な、防汚染性及び防インク性の光透過性表面層を形成する。ハードコートは、光学基材及び下に位置するディスプレイスクリーンを引っ掻き傷、磨耗及び溶媒などの要因からの損傷から保護する強靭な耐磨耗性層である。典型的には、ハードコートは、基材上に硬化性液体セラマー組成物をコーティングし、その場でこの組成物を硬化させて硬化したフィルムを形成することにより形成される。
【0050】
表面エネルギーは、「実施例」に記載される試験方法により画定される接触角、防インク性などの様々な方法によって特徴付けることができる。本願では、「防汚染性」とは、水との静的接触角が少なくとも70度を呈する表面処理を指す。接触角は、より好ましくは少なくとも80度であり、最も好ましくは少なくとも90度である。これに代えて、又はこれらに加えて、ヘキサデカンとの前進接触角は、少なくとも50度、より好ましくは少なくとも60度である。低い表面エネルギーは、結果的に防汚染特性を生じ、並びに露出面を洗浄しやすくする。
【0051】
低い表面エネルギーの別の指標は、露出面に適用されたときに、ペン又はマーカーからのインクが玉状化する程度に関する。表面層及び物品は、ペン及びマーカーからのインクが玉状化して分離性の液滴になり、キンバリー・クラーク社(Kimberly Clark Corporation)(ジョージア州ロズウェル(Roswell))から「サーパス・フェイシャル・ティッシュ(SURPASS FACIAL TISSUE)」という商品名で入手可能なティッシュなどの、ティッシュ又は紙タオルで露出面を拭くことにより容易に除去することができるとき、「防インク性」を呈する。耐久性は、本願の「試験方法」に記載されるように、250rpmで5分間にわたって実行される改変オシレーティング・サンド試験(方法ASTM F735−94)からの結果によって画定することができる。耐久性コーティングは本試験において、好ましくは65mm(75%の損失)以下の防インク性損失値、より好ましくは40mm以下(45%の損失)以下、最も好ましくは0mm(無損失)の防インク性(IR)を呈する。
【0052】
本明細書に記載されているペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料は、1層ハードコート組成物の単独のフルオロ化構成成分として使用することができる。高い耐久性が望まれる実施形態に関して、ハードコート組成物は典型的には更に(例えば、表面改質されている)無機粒子を含む。ハードコート表面層の厚さは典型的には少なくとも0.5ミクロン、好ましくは少なくとも1ミクロン、より好ましくは少なくとも2ミクロンである。ハードコート層の厚さは一般的に25ミクロン以下である。好ましくは、厚さは3ミクロン〜5ミクロンの範囲である。
【0053】
あるいは、無機粒子を有さないペルフルオロポリエーテルウレタンポリマーを含有する表面層が、耐久性が必要とされない用途に単独で使用されてよい。更に他の実施形態では、無機粒子を有さないペルフルオロポリエーテルウレタンポリマーを含有する表面層が、基材と表面層の間に配置される無機粒子含有ハードコート層と組み合わせて提供されてよい。これは2層ハードコートと呼ばれる。これらの実施形態では、表面層は好ましくは約10〜200ナノメートルの範囲の厚さを有する。
【0054】
1層ハードコート実施形態に関して、全ての(ペル)フルオロ化化合物の合計は(例えば、ペルフルオロポリエーテルウレタン(1種又は複数種)のみ又は他のフルオロ化化合物と組み合わせて)、ハードコート組成物の全固形分の0.01%〜10%、より好ましくは0.1%〜5%の範囲である。2層ハードコート実施形態に関して、コーティング組成物中のペルフルオロポリエーテルウレタン(1種又は複数種)の量は、0.01〜50重量%の固形分、より好ましくは1〜25重量%の固形分の範囲である。
【0055】
架橋されたポリマーマトリックスを硬化時に形成する様々なバインダー前駆体をハードコートに使用することができる。前述されたイソシアネート反応性非フルオロ化架橋材料は、好適なバインダー前駆体である。
【0056】
ジ(メタ)アクリルバインダー前駆体には、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド修飾トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0057】
トリ(メタ)アクリルバインダー前駆体には、例えばグリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば3〜20個のエトキシレート繰り返し)、プロポキシル化グリセラルトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートが挙げられる。高官能性(メタ)アクリル含有化合物には、例えばジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン修飾ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
【0058】
ペンタエリスリトールトリアクリレート(「PET3A」)の1つの市販の形態はSR444Cであり、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(「PET4A」)の1つの市販の形態はSR295であり、それぞれサートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から入手可能である。
【0059】
ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレートなどのオリゴマーの(メタ)アクリル及びこれらのポリアクリルアミド類縁体もバインダーとして使用することができる。
【0060】
1つの実施形態では、バインダーは、ビルカディ(Bilkadi)らに記載されているように、1つ以上のN,N−二置換アクリルアミド及び/又はN−置換−N−ビニル−アミドモノマーを含んでよい。ハードコートは、セラマー組成物中の固形分の総重量に基づいて、約20〜約80%のエチレン性不飽和モノマー及び約5〜約40%のN,N−二置換アクリルアミドモノマー又はN−置換−N−ビニル−アミドモノマーを含有するセラマー組成物に由来してよい。
【0061】
硬化を促進するために、本明細書に記載されている重合性組成物は少なくとも1つのフリーラジカル熱開始剤及び/又は光開始剤を更に含んでよい。このような開始剤及び/又は光開始剤が存在する場合、これは、重合性組成物の総重量に基づいて、典型的には、重合性組成物の約10重量%未満、より典型的には、約5重量%未満を含む。フリーラジカル硬化技術は当該分野で周知であり、例えば熱による硬化法並びに電子ビーム又は紫外放射線などの放射線による硬化法が挙げられる。フリーラジカル熱及び光重合技術に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,654,233号(グラント(Grant)ら)、同第4,855,184号(クルン(Klun)ら)、及び同第6,224,949号(ライト(Wright)ら)に見出すことができる。
【0062】
有用なフリーラジカル熱開始剤には、例えば、アゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート、及びレドックス開始剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
有用なフリーラジカル光開始剤には、例えば、PCT国際公開特許第2006/102383号に記載されているようなアクリレートポリマーのUV硬化において有用であると知られるものが挙げられる。
【0064】
表面層又は下に位置するハードコート層として使用するための重合可能な組成物は、好ましくは、得られるコーティングに機械的な強度及び耐久性を加える、表面改質されている無機粒子を含有する。
【0065】
様々な無機オキシド粒子を、ハードコートに使用することができる。無機オキシド粒子は、例えばシリカのような単一の酸化物から本質的になるか、又はなっていてもよく、あるいは例えばシリカと酸化アルミニウムのような酸化物の組み合わせを含んでよく、あるいは1つのタイプのオキシドのコア(又は金属オキシド以外の材料のコア)と、その上に他のタイプのオキシドを析出させたものであることができる。シリカが、一般的な無機粒子である。無機オキシド粒子は、液状媒体の中に無機オキシド粒子のコロイド状分散物を含むゾルの形態で供給されることも多い。例えば、米国特許第5,648,407号(ゴエッツ(Goetz)ら)、同第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)及び同第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)に記載されているように、ゾルは、様々な技術を使用し、水性ゾル(水が液体媒体として作用する)、有機ゾル(有機液体がそのように作用する)、及び混合ゾル(液体媒体が水と有機液体の両方を含有する)を包含する様々な形態に調製できる。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することも可能である。ゾルには一般に、ゾルの全重量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機オキシド粒子を含む。コロイド状の無機オキシド粒子の量は典型的には50重量%以下である(例えば、45重量%)。無機粒子の表面は、ビルカディ(Bilkadi)らに記載されるように「アクリレート官能化」することができる。ゾルは、バインダーのpHに適合させることもでき、対イオン又は水溶性化合物(例えば、アルミン酸ナトリウム)を含有することができ、これらは全てカン(Kang)らによる‘798号特許に記載されている。
【0066】
例えばジルコニア(「ZrO」)、チタニア(「TiO」)、アンチモンオキシド、アルミナ、酸化スズなどの様々な高屈折率無機オキシド粒子を、単独で又は組み合わせて使用することができる。混合金属酸化物が使用されてもよい。高屈折率層内で用いられるジルコニアは、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)から「ナルコ(Nalco)OOSSOO8」という商品名で、及びスイスのウッツビル(Uzwil)のビューラー社(Buhler AG)から「ビューラー(Buhler)ジルコニアZ−WOゾル」という商品名で入手可能である。ジルコニアナノ粒子は、米国特許第7,241,437号及び同第6,376,590号に記載されているように調製することもできる。
【0067】
無機ナノ粒子は、好ましくは表面処理剤で処理される。ナノサイズ粒子を表面処理することによって、ポリマー樹脂中に安定分散をもたらすことができる。好ましくは、粒子が重合性樹脂中に良好に分散されて実質的に均一な組成物を生じるように、ナノ粒子を表面処理により安定化させる。更に、安定化された粒子が硬化中に重合性樹脂と共重合又は反応できるように、ナノ粒子の表面の少なくとも一部分を表面処理剤により改質することができる。表面改質無機粒子を組み込むことは、粒子をフリーラジカル重合可能な有機成分に共有結合させやすくなり、それによって、より頑丈かつより均質なポリマー/粒子網をもたらす。
【0068】
広くは、表面処理剤は、(共有結合、イオン結合、又は強い物理吸着を介して)粒子表面に結合するであろう第1の末端と、粒子と樹脂との相溶性を付与し及び/又は硬化中に樹脂と反応する第2の末端とを有する。表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタネートが挙げられる。好ましいタイプの処理剤は、部分的には、金属酸化物表面の化学的性質により決定される。シリカに対してはシランが好ましく、ケイ酸質充填剤に対しては他のものが好ましい。ジルコニアのような金属オキシドに対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。表面改質は、モノマーとの混合に続いて又は混合後のいずれかで行うことができる。シランの場合、樹脂へ組み込む前にシランを粒子又はナノ粒子の表面と反応させるのが好ましい。表面変性剤の必要量は、粒子サイズ、粒子タイプ、変性剤の分子量、及び変性剤のタイプのようないくつかの要素に依存する。一般的には、おおむね単層の改質剤を粒子の表面に結合させることが好ましい。必要とされる結合手順又は反応条件もまた、使用する表面改質剤によって左右される。シランの場合、酸性又は塩基性の条件の下、高温で約1〜24時間表面処理することが好ましい。カルボン酸のような表面処理剤では、高温や長時間を必要としないこともある。
【0069】
本組成物に好適な表面処理剤の代表的な実施形態には、例えば、イソオクチルトリメトキシ−シラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、ステアリン酸、ドデカン酸、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEAA)、β−カルボキシエチルアクリレート(BCEA)、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、メトキシフェニル酢酸、及びこれらの混合物のような化合物が挙げられる。
【0070】
コロイド状分散物における粒子の表面改質は米国特許第7,241,437号及び同第6,376,590号に記載されているものなどの様々な既知の方法で達成することができる。
【0071】
表面改質剤の混合物が有用である可能性があり、その場合、表面改質剤の少なくとも1つには、硬化性樹脂と共重合可能な官能基が含まれている。表面改質剤の混合物によって、より低い粘度を得ることができる。例えば、重合化基は、エチレン不飽和であるか、又は開環重合を起こす環式官能基にすることができる。エチレン不飽和重合化基は、例えば、アクリレート基若しくはメタクリレート基、又はビニル基にすることができる。開環重合を起こす環式官能基には一般的に、酸素、硫黄、又は窒素のようなヘテロ原子が含まれており、好ましくは、エポキシドのように酸素が含まれている3員環である。
【0072】
表面改質剤の好ましい組み合わせは、重合可能な樹脂の有機成分と共重合可能である官能基を有する少なくとも1つの表面改質剤と、分散剤として作用する場合がある、ポリエーテルシランのような、第2の両親媒性改質剤とを含む。第2の改質剤は、任意に応じて重合可能な組成物の有機成分と共重合可能であるポリアルキレンオキシド含有改質剤であるのが好ましい。
【0073】
表面改質コロイドナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。非シリカ含有完全凝縮ナノ粒子の結晶化度(独立金属酸化物粒子として測定した場合)は、典型的には55%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超である。例えば、結晶化度は、約86%までの範囲内又はそれ以上にすることができる。結晶化度は、X線回折法によって割り出すことができる。凝縮結晶性のナノ粒子(例えばジルコニアナノ粒子)は屈折率が高いが、非晶質ナノ粒子は典型的には屈折率がより低い。
【0074】
無機粒子には、実質的に単分散の粒径分布、又は実質的に単分散の分布の2つ以上を混ぜ合わせることによって得られる多分散分布を持たせるのが好ましい。あるいは、無機粒子は、粒子を所望の粒径範囲に粉砕することによって得られるさまざまな粒径を持たせるように組み込むことができる。無機酸化物粒子は典型的に、非凝集体(実質的に分離体)であり、凝集によって、光学散乱(ヘイズ)若しくは無機酸化物粒子の沈殿又はゲル化が生じる可能性がある。無機酸化物粒子は典型的に、粒径の点でコロイド状であり、平均粒径は5ナノメートル〜100ナノメートルである。高屈折率無機粒子の粒度は、十分に透明な高屈折率コーティングを提供するために好ましくは約50nm未満である。無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて、所定の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。
【0075】
本明細書に記載されているような表面層を含有するペルフルオロポリエーテルウレタンを有する光学フィルムは、光沢表面又はつや消し表面を有してよい。つや消しフィルムは典型的には、典型的な光沢フィルムよりも透過率が低く、ヘイズ値が高い。例えば、ヘイズ値は、ASTM D1003に従って測定した場合、概して少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。光沢表面が、60°においてASTM D 2457−04に従って測定した場合に典型的には少なくとも130の光沢を有するのに対して、つや消し表面は120未満の光沢を有する。
【0076】
粒子状つや消し剤は、惑光防止特性を表面層に付与するために、重合性組成物の中に組み込むことができる。粒子状つや消し剤は、結合しているハードコート層による干渉によって引き起こされる不均一な着色を防止することができる。
【0077】
つや消し剤をハードコーティング層の中に組み込むが、異なるハードコーティング組成物を有する代表的なシステムは、例えば、米国特許第6,693,746号に記載されている。更に、代表的なつや消しフィルムは、米国キモトテック(U.S.A. Kimoto Tech)(ジョージア州シーダータウン(Cedartown))から「N4D2A」という商品名で市販されている。
【0078】
つや消し剤が添加されている粒子の量は組成物の全固形分の約0.5〜10%であり、層の厚さに依存しており、好ましい量は約2%である。
【0079】
粒子状つや消し剤の平均粒子直径は、層の厚さに部分的に依存する、予め画定されている最小値及び最大値を有する。しかしながら、概して、1.0ミクロンよりも小さな平均粒子直径は包含の正当な理由になるのに十分な程度の惑光防止を提供しない一方で、10.0ミクロンを超える平均粒子直径は透過画像の鮮やかさを劣化させる。平均粒子サイズはしたがって、コールター(Coulter)法により測定される数平均値において、好ましくは約1.0〜10.0ミクロンであり、より好ましくは1.7〜3.5ミクロンである。
【0080】
粒子状つや消し剤として無機粒子又は樹脂粒子が使用され、例えば、非晶質シリカ粒子、TiO粒子、Al粒子、架橋ポリ(メチルメタクリレート)、架橋ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、及び架橋ポリシロキサン粒子からなるものなどの架橋アクリルポリマー粒子が挙げられる。製造プロセスの間の、惑光防止層及び/又はハードコート層のためのコーティング混合物中の粒子の分散安定性及び沈殿安定性を考慮すると、樹脂粒子はバインダー材料に対して高い親和性及び小さな比重を有するため、樹脂粒子がより好ましく、特に好ましくは架橋されたポリスチレン粒子が使用される。
【0081】
粒子状つや消し剤の形状に関しては、球形及び非晶質粒子を使用することができる。しかしながら、一貫した惑光防止特性を得るためには、球形粒子が望ましい。2種以上の粒子材料が、組み合わせて使用されてもよい。
【0082】
3.5ミクロンの平均粒子サイズを有する1つの市販のシリカ粒子状つや消し剤は、W.R.グレース社(W.R. Grace and Co.)(メリーランド州コロンビア(Columbia))から「シロイド(Syloid)C803」という商品名で市販されている。
【0083】
ペルフルオロポリウレタン含有ハードコート表面による埃の吸引力は、帯電防止剤を包含することにより更に減少させることができる。例えば、帯電防止コーティングが、ハードコートをコーティングするのに先立って(例えば所望によりプライミングされた)基材に適用することができる。
【0084】
帯電防止層の厚さは、典型的には少なくとも20nmであり、一般的には400nm以下で、300nm、又は200nmである。
【0085】
帯電防止コーティングは帯電防止剤として少なくとも1つの導電性ポリマーを含んでもよい。様々な導電性ポリマーが既知である。有用な導電性ポリマーの例には、ポリアニリン及びこれらの誘導体、ポリピロール、並びにポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。1つの特に好適なポリマーは、H.C.スタルク社(H.C. Starck)(マサチューセッツ州ニュートン(Newton))から「ベイトロン(BAYTRON)P」という商品名で市販されているポリ(スチレンスルホン酸)でドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)などのポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。この導電性ポリマーはスルホポリエステル分散物に低濃度で加えられ、特にポリエステル及びセルロースアセテート基材に対する良好な接着性を有すると共に良好な帯電防止性を提供する帯電防止組成物を提供することができる。
【0086】
別の実施形態では、帯電防止コーティング又はハードコート組成物は、金属又は半導体金属オキシドなどの導電性金属含有粒子を含んでよい。このような粒子はまた、1nm超過及び200nm未満の粒子サイズ又は会合粒子サイズを有するナノ粒子として記載されてもよい。様々な顆粒状の、名目上球形の、結晶性半導体金属オキシドの微粒子が既知である。このような導電性粒子は一般的に、適切なドナーへテロ原子でドープされているか又は酸素欠損である二元金属オキシドである。好ましいドープされている導電性金属オキシド顆粒状粒子には、Sbドープ酸化スズ、Alドープ酸化亜鉛、Inドープ酸化亜鉛、及びSbドープ酸化亜鉛が挙げられる。
【0087】
様々な帯電防止粒子が水系及び溶媒系分散物として市販されている。使用することができる酸化アンチモンスズ(ATO)ナノ粒子分散物には、エアー・プロダクツ社(Air Products)から「ナノATO(Nano ATO)S44A」という商品名で入手可能な分散物(25重量%固形分、水)、アドバンスド・ナノ・プロダクツ社(Advanced Nano Products Co. Ltd.)(ANP)から入手可能な30nm及び100nm分散物(20重量%固形分、水)、同じくANPから入手可能な30nm及び100nm ATO IPAゾル(30重量%)、キーリング&ウォーカー社(Keeling & Walker Ltd)から「CPM10C」という商品名で入手可能な分散物(19.1重量%固形分)、及び石原産業(Ishihara Sangyo Kaisha, Ltd)から「SN−100D」という商品名で市販されている分散物(20重量%)が挙げられる。更に、酸化アンチモン亜鉛(AZO)IPAゾル(20nm、20.8重量%固形分)は、ニッサン・ケミカル・アメリカ(Nissan Chemical America)(テキサス州ヒューストン(Houston))から「CELNAX CX−Z210IP」、「CELNAX CX−Z300H」(水中)、「CELNAX CX−Z401M」(メタノール中)、及び「CELNAX CX−Z653M−F」(メタノール中)という商品名で入手可能である。
【0088】
ナノ粒子帯電防止剤に関しては、静電気防止剤が、少なくとも20重量%の量で存在する。導電性無機オキシドナノ粒子に関しては、濃度は、屈折率改質のために80重量%までの固形分であることができる。導電性ポリマー帯電防止剤が使用されるとき、可視的な領域の中での帯電防止剤の強力な吸収のために、導電性ポリマー帯電防止剤は、できる限り少ない量を使用することが一般的に好ましい。したがって、濃度は一般的に20重量%固形分以下であり、好ましくは15重量%未満である。いくつかの実施形態では、導電性ポリマーの量は、乾燥している帯電防止層の2重量%〜5重量%固形分の範囲である。
【0089】
ペルフルオロポリエーテルウレタンポリマー材料は単独で又はハードコート組成物と組み合わせて、溶媒中に分散して希釈コーティング組成物を形成することができる。コーティング組成物中の固形分の量は典型的には少なくとも20重量%であり、通常約50重量%以下である。ポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテート、及びセルローストリアセテートなどのいくつかの光学基材に関しては、例えば、メタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロパノールなどのようなアルコール系溶媒、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテルを使用することが好ましい。このような光学基材に関して、コーティング組成物は、アルコール溶媒(1種又は複数種)を主に含有してよい。しかしながら、他の使用に関して、アルコール系溶媒(1種又は複数種)は、他の(すなわち非アルコール)溶媒と組み合わせてよい。
【0090】
薄いコーティング層は、ディップコーティング、フォワード及びリバースロールコーティング、巻線ロッドコーティング、並びにダイコーティングなどの様々な技術を使用して光学基材に適用することができる。ダイコーティング機としては、ナイフコーティング機、スロットコーティング機、スライドコーティング機、フルードベアリングコーティング機、スライドカーテンコーティング機、ドロップダイカーテンコーティング機、及び押出コーティング機が挙げられる。エドワード・コーエン(Edward Cohen)及びエドガー・グトフ(Edgar Gutoff)の「現代のコーティング及び乾燥技術(Modern Coating and Drying Technology)」(VCHパブリッシャーズ(VCH Publishers)、ニューヨーク、1992年、ISBN 3−527−28246−7)、並びにグトフ(Gutoff)及びコーエン(Cohen)の「コーティング及び乾燥の欠陥:トラブルシューティング操作上の問題(Coating and Drying Defects: Troubleshooting Operating Problems)」(ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク、ISBN 0−471−59810−0)などの文献に、多くのタイプのダイコーティング機が記載されている。
【0091】
ダイコーティング機とは一般的に、第1のダイブロック及び第2のダイブロックを利用してマニホールドキャビティ及びダイスロットを形成する装置を指す。コーティング流体は圧力下でマニホールドキャビティを通過してコーティングスロットから流出して、コーティング材料のリボンを形成する。コーティングは単層として又は2つ以上の積層として適用することができる。通常、基材は連続ウェブの形状であるのが好都合だが、基材はまた不連続シートの連続であってもよい。
【0092】
用語「光学ディスプレイ」、又は「ディスプレイパネル」は、任意の従来の光学ディスプレイを指すことができ、液晶ディスプレイ(「LCDs」)、プラズマディスプレイ、前後投写型ディスプレイ、ブラウン管(「CRTs」)、及びビジュアルサイン伝達などの多重特性多回線ディスプレイ、並びに発光ダイオード(「LEDs」)、信号灯、及びスイッチなどの単一特性又はバイナリディスプレイが挙げられるが、これらに限定されない。ディスプレイパネルの露出面は、「レンズ」と呼ばれてもよい。本発明は、特にインクペン、マーカー及びその他のマーキング道具、ワイピング・クロス、紙用品並びにその類により触れられ又は接触されやすい表示表面を有するディスプレイに有用である。
【0093】
本発明の保護コーティングは、様々な携帯型及び非携帯型情報ディスプレイ物品において使用可能である。これらの物品としては、PDAs、携帯電話(PDA/携帯電話を含む)、LCDテレビジョン(直接照明及び端部照明)、接触感応スクリーン、腕時計、自動車用位置情報システム、全地球測位システム、深さ計、計算器、電子ブック、CD及びDVDプレーヤー、投写型テレビジョンスクリーン、コンピュータモニター、ノートパソコン表示装置、計器ゲージ、計器パネルカバー、図形表示などのビジュアルサイン伝達並びにその類が挙げられる。表示面はいずれかの従来の大きさ及び形状を有することができ、平面又は非平面であることができるが、フラットパネルディスプレイが好ましい。コーティング組成物又はコーティングフィルムは、例えばカメラのレンズ、眼鏡のレンズ、双眼鏡のレンズ、鏡、再帰反射性シーティング、自動車の窓、建物の窓、電車の窓、汽船の窓、飛行機の窓、車両のヘッドランプ及び尾灯、ショーケース、道路舗装マーカー(例えば隆起した)及び舗道マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー、並びに光及び光磁気記録ディスク及びその類などの様々な他の物品にも使用することができる。
【0094】
様々な基材が、本発明の物品に利用できる。好適な基材材料には、ガラス、並びにポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート又は「PMMA」)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン又は「PP」)、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート又は「PET」)、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、及びエポキシなどのような熱硬化性又は熱可塑性ポリマーが挙げられる。典型的に、基材は部分的に、意図された使用に望ましい光学特性及び機械特性に基づいて選択される。かかる機械特性としては典型的に、屈曲性、寸法安定性及び衝撃耐性が挙げられる。基材の厚さも典型的に、意図された用途次第である。大部分の用途に関しては、約0.5mm未満の基材の厚さが好ましく、より好ましくは約0.02〜約0.2mmである。自己支持性ポリマーフィルムが好ましい。PETなどのポリエステルから又はPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)及びPVC(ポリ塩化ビニル)などのポリオレフィンから作製されるフィルムが特に好ましい。押出及び押出フィルムの任意の1軸又は2軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を使用して、ポリマー材料をフィルムへと形成することができる。基材とハードコート層との間での接着を改善するために、例えば化学処置、コロナ処置、例えば空気又は窒素コロナ、プラスマ、火炎又は化学放射線によって基材を処理することができる。所望であれば、層間接着を増大させるため、任意の連結層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。
【0095】
種々の光透過性光学フィルムが既知であり、多層光学フィルム、再帰反射性シーティング及び輝度増強フィルムなどのミクロ構造化フィルム、(例えば、反射又は吸収)偏光フィルム、拡散フィルム並びに米国特許出願公開第2004/0184150号に記載されているような(例えば、2軸)位相差板フィルム及び補償器フィルムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0096】
米国特許出願公開第2003/0217806号に記載されているように多層光学フィルムは、異なる屈折率のミクロ層の配列により少なくとも部分的に所望の透過及び/又は反射特性をもたらす。ミクロ層は、異なる屈折率特性を有する、そのため一部の光は、隣接したミクロ層間の境界面で反射される。フィルム体に所望の反射又は透過特性を付与するために、複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けるように、ミクロ層は十分に薄い。紫外線、可視線、又は、近赤外線波長で光を反射するように設計されている光学フィルムの場合、各ミクロ層は一般に、光学的厚さ(すなわち、物理的厚さに屈折率を乗じたもの)が約1μm未満である。しかしながら、フィルム外面の表面薄層、又はミクロ層のパケットを分離させるフィルム内に配置されている保護境界層などのより厚い層を含めることもできる。またラミネート中で多層光学フィルムの2枚以上のシートに結合するように、多層光学フィルム体に1つ以上の厚い接着剤層を含めることもできる。
【0097】
適切な多層光学フィルム及び関連構造の更なる詳細については、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)、及びPCT国際公開特許第95/17303号明細書(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)及び同第99/39224号明細書(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)で見ることが可能である。ポリマー多層光学フィルム及びフィルム体には、それらの光学的特性、機械的特性、及び/又は化学的特性に関して選択した追加的な層及びコーティングを含めることができる。米国特許第6,368,699号(ギルバート(Gilbert)ら)を参照されたい。ポリマーフィルム及びフィルム体もまた、金属若しくは金属オキシドコーティング又は層などの無機層を含むことができる。
【0098】
様々な永久的な及び取り外し可能なグレードの接着剤組成物が基材の反対側(すなわち、ハードコート)にコーティングされてよく、物品をディスプレイ表面に容易に実装することができる。好適な接着剤組成物としては、テキサス州ウェストホロウ(Westhollow)のクラトンポリマーズ(Kraton Polymers)から商品表記「クラトン(Kraton)G−1657」として市販のもののような(例えば、水素添加)ブロックコポリマー、並びに他の(例えば、類似の)熱可塑性ゴムが挙げられる。その他の代表的な接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、及びエポキシ系接着剤が挙げられる。光学ディスプレイの表示品質を低下するように時間と共に、又は天候暴露時に接着剤が黄色化しないように、好ましい接着剤は十分な光学的品質及び光安定性を有するものである。トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティングなどの様々な既知のコーティング技術を使用して接着剤を適用することができる。代表的な接着剤が、米国特許出願公開第2003/0012936号に記載されている。前記接着剤のいくつかが、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から商品表記8141、8142、及び8161として市販されている。
【0099】
用語解説
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0100】
「フリーラジカル重合性」とは、好適なフリーラジカル源への暴露時に架橋反応におけるモノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらに類するものの能力を指す。
【0101】
「(メタ)アクリル」とは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、α−フルオロアクリレート、チオアクリレート及びチオ−メタクリレートを含む官能基を指す。好ましい(メタ)アクリル基はアクリレートである。
【0102】
「一価のペルフルオロポリエーテル部分」とは、ペルフルオロアルキル基により終端する1つの末端を有するペルフルオロポリエーテル鎖を指す。
【0103】
特に注記がない限り、「HFPO−」とは、メチルエステルF(CF(CF)CFO)aCF(CF)C(O)OCH3の末端基F(CF(CF)CFO)aCF(CF)−(式中、「a」の平均値は2〜15である)を指す。いくつかの実施形態において、aの平均値は3〜10であるか、又はaの平均値は5〜8である。このような種は、一般にaについての値の範囲を有するオリゴマーの分散物又は混合物として存在し、その結果aの平均値は非整数となることがある。1つの実施形態では、aの平均値は6.2である。このメチルエステルは1,211g/モルの平均分子量を有し、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することができ、分別蒸留により精製される。
【0104】
端点によって表される数値の範囲は、その範囲内に含まれるすべての数値を含む(例えば1〜10の範囲には、1、1.5、3.33、及び10が含まれる)。
【0105】
本発明の目的及び利点は、以下の「実施例」によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0106】
試験方法
1.スポット:スポットの数は、黒い背景にかざされたコーティングを使用してスポットの数を計数することにより、25cm領域の中に視覚的に画定された。組成物がシリカなどの粒子状つや消し剤を包含するとき、スポットは外見上白く、より容易に検出することができる。
【0107】
2.PGX接触角:実施例4〜12の水との静的接触角は、フィブロシステム社(Fibro System AB)(スウェーデン)からのPGX角度計を使用して測定された。4マイクロリットルの脱イオン水滴が使用され、PGX計器は静的接触角を自動的に記録した。
【0108】
3.防インク性の耐久性が、修正されたオシレーティング・サンド方法(ASTM F735−94)を使用して評価された。オービタルシェーカーが使用された(VWR DS−500E、VWR社(コネチカット州ブリストル(Bristol))製)。直径89mmのディスクが試料から切り出され、453.6g(16オンス)の瓶のふた(ウィートン社(Wheaton)(ニュージャージー州ミルヴィル(Millville))からの瓶W216922)に載せられ、40グラムの20〜30メッシュオタワサンド(mesh Ottawa sand)(VWR(コネチカット州ブリストル(Bristol)))で覆われた。瓶はふたをされ、250rpmに設定されたシェーカーに5分間にわたって定置された。振盪後、シャーピー(Sharpie)永久マーカーが使用されてディスク表面の直径を横切る線が描かれた。玉状化しなかったインク線の部分が測定された。89mmの測定値は防インク性の100%喪失に等しく、0mmの測定値は完全な耐久性すなわち防インク性(IR)の0%喪失である。
【0109】
4.セルロース表面吸引力試験−コーティングされたPETフィルムは調製された後、周囲温度及び50%±10%の相対湿度の条件で24時間おかれ、帯電させられた。調整後、それぞれのコーティングされたPET試料は、シムコ(Simco)「バイパー(Viper)」静電気中和ガン(static neutralizing gun)で洗浄されて、あらゆる塵埃を除去した。次に、シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Company)(ミズーリ州セントルイス(St. Louis))からの0.35グラムのα−セルロース(C−8002)が、7cm直径領域の中のコーティングの上に適用された。コーティングされたフィルムは前後に複数回傾斜され、セルロースが7cm直径試験領域を均一にコーティングするようにされた。次に、余分なセルロースは振り落とされ、コーティング・プラス・セルロースのヘイズ値が、ASTM D1003に従って測定された。
【0110】
ペルフルオロポリエーテルアルコール出発材料の合成
異なる分子量(938.5、1314、1344、及び1547.2)のHFPO−C(O)N(H)CHCHOHが、HFPO−オリゴマーアルコールの合成のために、HFPOメチルエステルF(CF(CF)CFO)aCF(CF)C(O)CH(式中、a=6.2)がF(CF(CF3)CF20)aCF(CF3)C(O)OCH3(式中、それぞれa=4.41、6.67、6.85、及び8.07)に置き換えられることを除き、米国公開第2004−0077775号明細書(整理番号57823、表題「フルオロ化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及びこれによる繊維性基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」、2002年5月24日出願)に記載されているものと同様な手順で作製された。
【0111】
アルコールの調製のためのメチルエステル材料は、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することができ、分別蒸留により精製される。
【0112】
1.HFPO−C(O)N(H)(CHCHO)H(分子量1329)が、HFPO−C(O)N(H)CHCHOHのための手順に従って、F(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)CH(式中、a=6.2)(分子量1211)を使用して、またHN(CHCHO)HをHNCHCHOHの代わりに使用して、調製された。
【0113】
2.HFPO−C(O)N(H)(CHOH(分子量1297)が、HFPO−C(O)N(H)CHCHOHのための手順に従って、F(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)CH(式中、a=6.2)(分子量1211)を使用して、またHN(CHOHをHNCHCHOHの代わりに使用して、調製された。
【0114】
ポリイソシアネートは、バイエル・ポリマー社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から「デスモデュア(Desmodur)N100」(「Des N100」)という商品名で得られた。
【0115】
ポリイソシアネートは、バイエル・ポリマー社(Bayer Polymers LLC)(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から「デスモデュア(Desmodur)N3300」(「Des N3300」)という商品名で得られた。
【0116】
ペンタエリスリトールトリアクリレート(「PET3A」)は、サートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から「SR444C」という商品名で得られた。
【0117】
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)はそれぞれ、シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能である。
【0118】
ペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレートの合成
実施例1−Des N100/0.85 PET3A/0.10 HFPO−C(O)NHCHCHOH/0.10 C1837(OCHCH10OH
電磁攪拌棒を備える500ml丸底フラスコが25.0g(0.131当量、191当量重量、1.0モル分率)のDesN 100、106.75のメチルエチルケトン(MEK)、及び0.05gのBHTで充填された。反応物は全ての反応物が溶解するようにかき混ぜられ、フラスコは55℃の油浴にかけられ、乾燥空気下で凝縮器に取り付けられた。MEK中10%ジブチル錫ジラウレート溶液65マイクロリットルが反応物に加えられた。20分間にわたって、17.59g(0.0131当量、1344当量重量、0.10モル分率)の
F(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOHが滴下漏斗により加えられた。添加の2時間後に、9.07g(0.0131当量、692.6当量重量、0.10モル分率)のC1837(OCHCH10OH(ブリッジ(Brij)76)が20分間にわたって加えられた。一晩反応後、翌日の午後、54.99g(0.1115当量、494.3当量重量、0.85モル分率)のサートマー(Sartomer)SR444Cが反応物の一部に加えられ、一晩処理された。(SR444Cの実際のOH当量重量は421.8であるが、494.3がSR444Cの全ロットに関する計算において使用され、その結果、作製されるあらゆる所与の材料に関してSR444Cの重量百分率は一定に維持される)。反応はFTIRにより監視され、初めに2273cm−1でイソシアネート吸収を呈した。この吸収は一晩反応させた後にはなくなり、7.40gのMEKが加えられ、反応の間に失われたMEKを補填して、最終固形分を50%固形分に調整した。
【0119】
調製物2〜14、C1及びC2のペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレートは、1.0モル分率(Des N100)イソシアネート、0.1モル分率でのHFPO−アルコールを使用してほぼ同一の手順で作製され、改質アルコールのそれぞれが、モル分率で以下の表1の縦列5に示されている。分子量1344のHFPO−C(O)NHCHCHOHアミドールが実施例番号C1、C3、2、3、4、5に対して使用された一方で、分子量1314のHFPO−C(O)NHCHCHOHアミドールはC2に対して使用された。
【0120】
【表1】

【0121】
実施例6及びC4−1.0DES N3300/PET3A/0.1 HFPOC(O)NHCHCHOH/C1837(OCHCH20OH
MEK中50%固形分でのブリッジ78。どちらも、SR444C(421.8当量重量)、HFPOC(O)NHCHCHOH(分子量1314)で作製され、DES N3300は当量重量193を有する。
【0122】
【表2】

【0123】
実施例7及びC5−1.0DES N100/PET3A/0.1 HFPOC(O)NHCHCHOH C1837(OCHCH20OH
MEK中50%固形分でのブリッジ78。どちらもSR444C(当量重量421.8)、HFPOC(O)NHCHCHOH(分子量938.5)で作製された。
【0124】
【表3】

【0125】
実施例8及びC6−1.0DES N100/PET3A/0.1 HFPOC(O)NH(CHCHO)H/C1837(OCHCH20OH
MEK中50%固形分でのブリッジ78。
【0126】
どちらもSR444C(428.1当量重量)、HFPOC(O)NH(CHCHO)H(分子量1329)で作製された。
【0127】
【表4】

【0128】
実施例9及び10−1.0DES N100/0.1PET3A/0.1 HFPOC(O)NHCHCHOH/改質アルコール
MEK中50%固形分で。どちらもSR444C(当量重量421.8)、HFPOC(O)NHCHCHOH(分子量1314)で作製された。
【0129】
【表5】

【0130】
実施例11〜12並びにC7及びC8のペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレートは、1.0モル分率(Des N100)イソシアネート及び縦列2に教示されているHFPO−アルコール(分子量=1314)量及び以下の表3の縦列4に教示されている当量重量の量で縦列3に教示されている改質アルコールを使用して、ほぼ同一の手順で作製された。
【0131】
【表6】

【0132】
実施例13及びC8−1.0DES N100/PET3A/0.1 HFPOC(O)NHCHCHOH/C1837(OCHCH20OH
MEK中50%固形分でのブリッジ78。どちらもSR444C(当量重量421.8)、HFPOC(O)NHCHCHOH(分子量1547)で作製された。
【0133】
【表7】

【0134】
ペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレートを含むセラマーハードコート
実施例に使用されているセラマーハードコートベース組成物(「HCB−1」、「HCB−2」及び「HCB−3」)は、以下の(重量%固形分)添加物を使用して、縦列10横列25〜39及びビルカディ(Bilkadi)らによる米国特許第5,677,050号の実施例1に記載されているように作製された。
【0135】
【表8】

【0136】
シロイド(Syloid)C 803は、W.R.グレース社(W.R. Grace and Co.)(メリーランド州コロンビア(Columbia))からの微粒子シリカである。
【0137】
ディスパーバイク(Disperbyk)163は、バイク・ケミー(Byk-Chemie)USA(コネチカット州ウォーリングフォード(Wallingford)からの分散剤である。
【0138】
イルガキュア(Irgacure)819及び184は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown))からの光開始剤である。
【0139】
サートマー(Sartomer)SR295、SR238、SR399は全て、サートマー・コーポレーション(ペンシルバニア州ウエストチェスター(West Chester))からの多官能性アクリレートモノマーである。
【0140】
ZrOゾル(水中固形分40.8%)が、米国特許出願第11/078468号(2005年3月11日出願)に対して優先権を主張する米国特許公開第2006/0204745号に記載されている手順に従って調製された。その結果として得られたZrOゾルは、米国特許公開第2006/0204745号及び米国特許出願第11/078468号に記載されているような相関分光法(Photo Correlation Spectroscopy)(PCS)、X線回折及び熱重力計解析(Thermal Gravimetric Analysis)で評価された。実施例で用いたZrOゾルには、以下に示した範囲内の特性が備わっていた。
【0141】
【表9】

【0142】
【表10】

【0143】
表面改質ジルコニアナノ粒子(SMジルコニア)
9.3kg(20.4ポンド)の10nmのジルコニアナノ粒子の水性分散物(固形分40.8%で水に分散)が37.9L(10ガロン)の反応槽に加えられた。5.9kg(12.9ポンド)の追加の水及び15.1kg(33.3ポンド)の1−メトキシ−2−プロパノールが攪拌しながら反応炉に加えられた。3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン1.1kg(2.5ポンド)が攪拌しながらこの反応槽にゆっくり加えられた。プロスタブ(Prostab)5198の5%水溶液0.01kg(0.021ポンド)が攪拌しながらこの反応槽に加えられた。この混合物は80℃で18時間攪拌された。
【0144】
反応混合物は真空下(3.2kPa(24トール)〜5.3kPa(40トール))で加熱され、追加の1−メトキシ−2−プロパノール32.0kg(70.5ポンド)をゆっくり加えながら1−メトキシ−2−プロパノール/水共沸混合物を留去して、ほぼ全ての水を除去した。30%の水酸化アンモニウム0.2kg(0.4ポンド)を反応混合物に加えてから、1−メトキシ−2−プロパノールを留去することによってこの反応物を固形分59.2%に濃縮した。この表面改質反応によって、1−メトキシ−2−プロパノール中に表面改質ジルコニア(ZrO−SM)が重量比で5.92%含まれている混合物を得た。最終混合物を1ミクロンのフィルターで濾過した。
【0145】
光学フィルム上でのハードコート組成物のコーティング及び硬化
溶液はイソプロパノール:プロピレングリコールメチルエーテルの1:1の溶媒ブレンド中に固形分30%で調製され、No.12巻線ロッドを0.13mm(5−mil)メリネックス(Melinex)618フィルム上に使用してコーティングされて約4ミクロンの乾燥厚さを生じた。コーティングは100℃のオーブンで2分間にわたって乾燥され、次に紫外線(「UV」)光硬化装置に連結されているコンベヤーベルト上に定置され、窒素の下でフュージョン(Fusion)500ワットHバルブを9.1m/分(30フィート/分)で使用してUV硬化された。表に報告されている値は、乾燥コーティングの各構成成分の固形分百分率を指す。次にコーティングは表面の平滑度(濡れ不良)について目視検査された。コーティングはまた防インク性の耐久性についても試験された。結果は表4及び5に示されている。
【0146】
【表11】

【0147】
実施例16〜18は、防インク性の耐久性について試験された。
【0148】
結果は次の通りである。
【0149】
【表12】

【0150】
実施例29〜32のペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレートは、1.0モル分率(Des N100)イソシアネート、並びに縦列6に教示されている当量比で縦列2に示されているHFPO−アルコール(分子量=1344)モル分率及び縦列3に示されている改質アルコールを使用して、実施例1とほぼ同一の手順で作製された。
【0151】
【表13】

【0152】
コーティング組成物の調製−62.5グラムのセラマーハードコート組成物(縦列10横列25〜39及びビルカディ(Bilkadi)らによる米国特許第5,677,050号の実施例1に記載されているようなもの)に、18.75gのエチルアセテート及び18.75gのメトキシプロパノールが加えられた。様々なHFPOウレタンアクリレートが、表7に記載されているように、この希釈されたセラマーハードコート組成物と組み合わされた。
【0153】
【表14】

【0154】
(試料36に関しては、37.5gのメトキシプロパノール及び0gのエチルアセテートが希釈に使用された。)
ハードコートは、以下のように、PET上に形成された帯電防止層上にコーティングされた。コーティング溶液は、970.8gの脱イオン水、19.23gのPEDOT/PSS(H.C.スタルク社(H.C. Starck)からのベイトロン(Baytron)(登録商標)P、固形分1.3重量%)、7.5gの界面活性剤(トーマ・プロダクツ社(Tomah Products)からのトマドール(Tomadol)25−9、脱イオン水中に10重量%)、及び2.5gのN−メチルピロリピロリジノンを組み合わせることにより調製された。この濃青色溶液(0.025重量%PEDOT/PSS)は、プライミングされた0.13mm(5mil)PETフィルム(米国特許第6,893,731 B2号の実施例29に従って調製された)上に4−イン・ダイコーティング機(4-in die coater)を使用してコーティングされた。ウェブ速度は10.7m/分(35フィート/分)であり、溶液流量は12.4g/分であった。高温領域の温度は、ギャップドライヤー(gap dryer)中で60℃(140°F)、オーブン中で、60℃(140°F)、71.1℃(160°F)、及び82.2℃(180°F)であった。ハードコート溶液はこの帯電防止剤コーティングポリエステル上にNo.12巻線ロッドを使用してコーティングされ、70℃で2分間にわたって乾燥された。約4ミクロンの厚さを有する乾燥したコーティングは次に、フュージョン(Fusion)Hバルブ(フュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems, Inc.)(メリーランド州ゲーサーズバーグ(Gaithersburg)))を100%出力にて窒素の下、9.1m/分(30フィート/分)で使用してライトハンマー6UV源により硬化された。
【0155】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性混合物の反応生成物を含む表面層を有する光学基材を含む光学ディスプレイであって、重合性混合物が、
少なくとも2つのフリーラジカル重合性基と、6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を有する少なくとも1つのセグメントとを含む少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル材料、及び
少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の非フルオロ化バインダー前駆体を含む、光学ディスプレイ。
【請求項2】
前記ペルフルオロポリエーテル材料が、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項3】
前記ペルフルオロポリエーテル材料が、ペルフルオロポリエーテルウレタン材料である、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項4】
前記ペルフルオロポリエーテルウレタンが、少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を有する末端基を含む、請求項3に記載の光学ディスプレイ。
【請求項5】
前記ペルフルオロポリエーテルウレタンが、一価のペルフルオロポリエーテル部分を含む、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項6】
前記ペルフルオロポリエーテル部分が、F(CF(CF)CFO)aCF(CF)−であり、式中、aが4〜15の範囲にある、請求項4に記載の光学ディスプレイ。
【請求項7】
前記非フルオロ化バインダー前駆体が、少なくとも3つのフリーラジカル重合性基を含む、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項8】
前記基材が、ポリカーボネート、アクリル、セルロースアセテート、及びセルローストリアセテートから選択される、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項9】
前記表面層が、無機オキシド粒子を更に含む、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項10】
無機オキシド粒子を含むハードコート層が前記基材と前記表面層との間に配置される、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項11】
前記エチレンオキシド単位が、一般式:
HX(CO)EO
式中、
XはO、S又はNRであり、このRはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
EOはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
bは1〜2の範囲であり、及び
jは7〜50の範囲である、を有する、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項12】
前記表面層が、10%以下のセルロース表面吸引力を示す、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項13】
前記ディスプレイが、前記光学基材と前記表面層との間に帯電防止層を更に含む、請求項1に記載の光学ディスプレイ。
【請求項14】
重合性混合物の前記反応生成物を含む表面層を有する基材であって、前記重合性混合物が、
少なくとも2つのフリーラジカル重合性基と、6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を有する少なくとも1つのセグメントとを含む少なくとも1種のペルフルオロポリエーテル材料、及び
少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種の非フルオロ化バインダー前駆体を含む、基材。
【請求項15】
一般式:
Ri−(NHC(O)XQRf)、−(NHC(O)OQ(A)p)、−(NHC(O)X(CO)EO
式中、Riはマルチイソシアネートの残基であり、
Xはそれぞれ独立してO、S又はNRであり、このRはH又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
Qは独立して少なくとも2の価数を有する、直鎖、分枝鎖、又は環を含有する連結基であり、
Rfは、式F(RfcO)xCdF2d−を含む基からなる一価のペルフルオロポリエーテル部分であり、式中、各Rfcは独立して1〜6個の炭素原子を有するフルオロ化アルキレン基を示し、各xは独立して2以上の整数を示し、dは1〜6の整数であり、
Aは、メタ(アクリル)官能基−XC(O)C(R2)=CH2であり、式中、R2は1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル若しくはH又はFであり、
pは2〜6であり、
jは7〜50の範囲であり、及び、
EOはH、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキルから選択される基であって、それらは所望によりヘテロ原子、ヘテロ原子官能基、又は(メタ)アクリル官能基で置換することができ、あるいは、−C(O)C(R)=CH、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキル若しくはH又はFである、を有する多官能性ペルフルオロポリエーテルウレタン組成物。
【請求項16】
Qが、窒素含有基を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
Qが、アミド基を含有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
Qが、−C(O)NHCHCH−、−C(O)NH(CH−、及び−C(O)NH(CHCHO)CHCH−から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
フリーラジカル重合性組成物であって、
i)少なくとも1種のポリイソシアネート、
ii)少なくとも1種のイソシアネート反応性ペルフルオロポリエーテル化合物、
iii)6超過のエチレンオキシド繰り返し単位を含む少なくとも1種のイソシアネート反応性化合物、及び、
iv)少なくとも2つのフリーラジカル重合性基を含む少なくとも1種のイソシアネート反応性非フルオロ化架橋剤、の反応生成物の混合物を含む、フリーラジカル重合性組成物。
【請求項20】
アルコール含有溶媒に分散された、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ii)及びiii)がアルコールイソシアネート反応性基を含む、請求項19に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−511206(P2010−511206A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539429(P2009−539429)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/085551
【国際公開番号】WO2008/067262
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】