説明

エチレン酸コポリマーおよび官能性エチレンコポリマーを含む組成物

エチレン酸コポリマーおよび官能性エチレンコポリマーを含む組成物を提供する。エチレン酸コポリマーは、エチレン、および少なくとも1種類のエチレン性不飽和モノカルボン酸またはそれらの誘導体から誘導される鎖内重合単位を含む。官能性エチレンコポリマーは、エチレン、および少なくとも1種類のエチレン性不飽和ジカルボン酸またはそれらの誘導体から誘導される鎖内重合単位を含む。このエチレン酸コポリマーまたは官能性エチレンコポリマーは、1種類または複数種類の共重合した(メタ)アクリル酸エステルをさらに含んでいてもよい。エチレン酸コポリマーおよび官能性エチレンコポリマーのカルボン酸官能基を、少なくとも部分的に中和して、カルボン酸陰イオンを形成することができる。好ましい対イオンには、1種類または複数種類のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属の陽イオンが挙げられる。これら組成物は、フィルム、シート、および包装用容器などの他の造形品を製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン酸コポリマーおよび官能性エチレンコポリマーと、任意選択のそれらのイオノマーとの組合せから得られる組成物に関する。これら組成物は、フィルム、シート、および成形品の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
本発明が属する技術の状態をより完全に述べるために幾つかの特許、特許出願、および刊行物がこの説明中で引用される。これらの特許、特許出願、および刊行物のそれぞれの全開示内容が参照により本明細書中で援用される。
【0003】
さらに本明細書中では商標および商品名は大文字で表される。
【0004】
市販されているエチレン酸コポリマーおよびイオノマーには、NUCREL酸コポリマーおよびSURLYNイオノマー樹脂が挙げられ、両方ともE.I.du Pont de Nemours and Company of Wilmington,DE(以後「DuPont」)から入手できる。これらの酸コポリマーおよびイオノマーは、極性基材との接着力がポリエチレンよりも大きく、その上それらはすぐれた剛性と溶剤および水分に対する抵抗性とを保持している。エチレン酸コポリマーは、例えば米国特許第4,351,931号明細書に記載されている。
【0005】
イオノマーは、有機鎖分子に加えて金属イオンを含有する熱可塑性樹脂である。本明細書中で使用される用語「イオノマー」は、中和または部分的に中和されたエチレン酸コポリマーの共役塩基を指す。イオノマーは、架橋ポリマーの特徴を示す幾つかの固体特性と、非架橋熱可塑性ポリマーの特徴を示す幾つかの熱加工適性の特性とを有する。例えば、米国特許第3,262,272号明細書を参照されたい。
【0006】
それらの独特の特徴のためにイオノマーは、食品包装用途および他の産業用途の両方において幅広い用途に使用される。イオノマーは、例えばすぐれた熱間粘着性のために食品包装用途においてシーラント層として使用される。高い靭性、耐摩耗および引掻性のためにイオノマーは、ゴルフボール、改質剤、およびフロアタイルの用途に使用される。イオノマーの用途が広がるにつれて、幾つかの物理的性質、またそれに付随してそのイオノマーの性能特性を目的に合わせて作ることが、意図する用途の条件に合わすために必要であることに気付かされることが多い。酸含量、中和、および溶融粘度などの典型的な変数に加えて、一般にその望ましい属性の幾つかを犠牲にすることなしにイオノマーの性能を改変することは容易でない。例えば他のポリマーとイオノマーのブレンドは、靭性および抵抗性の望ましい特性を達成することができるが、それらブレンドは恐らく非透明性であろう。
【0007】
また、イオノマーは極性基材との接着力がポリエチレンよりも大きいが、その接着レベルは多くの用途ではまだ十分でない。追加の接着剤層の使用が、多層構造物では必要な場合もある。この戦略は、結果としてより高い材料および加工のコストをもたらす恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
手短に言えば新規な用途でより多くの利用を可能にするためにイオノマーの性能を目的に合わせて調整する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中では、(1)(a)エチレン、(b)炭素原子3から8個を含む1種類または複数種類のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、および任意選択の(c)1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルの各モノマーから誘導される共重合された単位(copolymerized unit)を含む1種類または複数種類のエチレン酸コポリマーと、(2)(d)エチレン、(e)炭素原子4から8個を含み、さらに少なくとも2個のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和カルボン酸、あるいは酸無水物、モノエステル、およびジエステルからなる群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸の誘導体、および任意選択の(f)酢酸ビニルまたは1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルの各モノマーから誘導される共重合された単位を含む1種類または複数種類の官能性エチレン酸コポリマーとから実質上なる組成物について述べる。このアルキル基は、1から8個の炭素原子を含み、かつ分岐または非分岐、飽和または不飽和である。さらに、そのエチレン酸コポリマーおよび官能性エチレンコポリマー中に存在するカルボン酸部分の少なくとも一部は中和されていてもよい。
【0010】
この組成物は、例えば、シートを押出成形または注型することによって、あるいはフィルムをブロー成形することによって、あるいは成形品を射出成形することによって加工することができる。したがって本明細書中ではまた、上記組成物を含む造形品が提供される。この物品は、単層または多層フィルムまたはシート、パウチまたはバッグ、チューブまたは成形品の形態であることができる。本明細書中ではさらに、製品を入れるための包装用容器が提供される。この包装用容器は上記組成物を含む。
【0011】
好ましくはこの物品は、第一層と、その第一層に直接に接着させた追加の層とを含む多層フィルムまたはシートである。追加の層は金属、EVOH、またはポリアミドを含むか、あるいはそれから調製され、また第一層はこの組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定の例における別段の限定がない限り、下記の定義が本明細書の初めから終りまで使用される用語に適用される。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する業界の普通の熟練者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書中で述べる定義を含む本明細書が優先されることになる。
【0014】
本明細書中で述べるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することもできるが、好適な方法および材料は本明細書中に記述される。本明細書中で述べる材料、方法、および実施例は、単に例示的なものであり、具体的に指定される場合を除いては限定するものではない。
【0015】
別段の指定がない限り、すべての割合、部数、比率などは重量単位である。
【0016】
量、濃度、または他の値またはパラメーターが範囲として、好ましい範囲として、または上側の好ましい値と下側の好ましい値の一覧表として与えられる場合、それはそのような範囲が個々に開示されているかどうかに関係なく、任意の上側の範囲限界または好ましい値と、任意の下側の範囲限界または好ましい値との任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示するものと理解されたい。数値の範囲が本明細書中に述べられる場合、別段の指定がない限りその範囲は、それらの端点と、その範囲内のすべての整数、端数、無理数とを含むものである。さらに成分が、ゼロの下限値を有する範囲で存在するものとして示される場合、そのような成分は任意選択の成分である。存在する場合、このような任意選択の成分は、その組成物の総重量の少なくとも約0.1重量%の好ましくは測定可能な量で含まれる。用語「測定可能な量」とは、ゼロを超える量を指す。さらにこれに関して用語「約」が値か、または範囲の端点を記述する際に使用される場合、その開示内容はその言及された特定の値または端点を含むものと理解されたい。要約すれば本発明の範囲は、範囲を定める場合に列挙されるそれら特定の値には限定されない。
【0017】
本明細書中で使用される用語「(本質的に全部として)含む(“comprise”、“comprising”)」、「(一部として)含む(“include”、“including”)」、「含有する(“containing”)」、「特徴とする」、「有する(“has”、“having”)」、またはこれらの任意の他の語尾変化は、非排他的に包含されるものを対象として含む。例えば、構成要素の一覧表を含む工程、方法、物品、または装置には、必ずしもこれらの構成要素のみには限られず、はっきりとは列挙されていないか、あるいはこのような工程、方法、物品、または装置に固有な他の構成要素が含まれる場合がある。
【0018】
さらに、それと反対のものと明記されない限り、「または」は、包含的またはを意味し、排他的またはを意味しない。例えば、条件AまたはBは、Aが真であり(あるいは存在し)かつBが偽である(あるいは存在しない)、Aが偽であり(あるいは存在せず)かつBが真である(あるいは存在する)、およびAとBの両方が真である(あるいは存在する)のうちのいずれか一つによって満たされる。
【0019】
移行句「からなる」は、その請求項の中で明示されないあらゆる構成要素、ステップ、または成分を排除し、その材料に普通に付随する不純物を除いて列挙されたもの以外の材料を含めることに対してその請求項を閉ざす。この句「からなる」が、前文の直後でなく請求項の本文の節の中に現れる場合、それはその節の中で述べられる構成要素のみを限定し、他の構成要素をその請求項から全体としては排除しない。
【0020】
移行句「実質上からなる」は、指定された材料またはステップに、また特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに請求項の範囲を限定する。「実質上からなる」の請求項は、「からなる」の形式で書かれるクローズドクレームおよび「(本質的に全部として)含む」の形式で書かれる完全オープンクレームの間の中間的立場を占める。しかしながら本明細書中で定義される任意選択の添加剤(そのような添加剤にとって適切なレベルでの)および軽微な不純物は、この用語「実質上からなる」によって組成物から排除されない。
【0021】
或る発明またはそのサブコンビネーションが「(本質的に全部として)含む」などの非限定的移行句を用いて記述される場合、特定の例による別段の指定がない限り、その用語は移行句「実質上からなる」および「からなる」を用いたその発明またはサブコンビネーションの記述を含むものと解釈されるべきである。同様に別段の指定がない限り、移行句「実質上からなる」を用いて記述される発明またはそのサブコンビネーションにはまた、移行句「からなる」を用いたその発明またはサブコンビネーションの記述が含まれる。
【0022】
不定冠詞「或る(“a”および“an”)」は、本発明の構成要素および成分を記述するために使用される。これらの冠詞の使用は、これらの構成要素または成分の一つまたは少なくとも一つが存在することを意味する。これらの冠詞は修飾される名詞が単数形の名詞であることを表すために便利に使用されるが、本明細書中で使用されるように冠詞「或る(“a”および“an”)」はまた、特定の例による別段の指定がない限り複数形も含む。同様に定冠詞「その(“the”)」はまた、本明細書中で使用されるように、この場合もまた特定の例による別段の指定がない限り、その修飾される名詞が単数または複数であってもよいことを意味する。
【0023】
最後に、用語「シート」および「フィルム」は同義であり、単層または多層のいずれかの実質上平坦な形態を有する物品を記述するために本明細書中では区別なく使用される。その物品を形づくる加工方法が、用語「シート」を使用するか、または「フィルム」を使用するかに影響を与える場合もある。しかしながら一般にはシートは約10ミル(0.25mm)以上の厚さを有する。より詳細には、シートおよびフィルムはそれらの厚さによって区別されるが、一般には平坦な物品または平坦な物品中の層の機能は、その厚さではなくその組成によって決まる。したがって特定の組成のシートが果たすことができる機能はまた、同一または類似の組成のフィルムによっても果たすことができ、また逆も同様である。当業者は、層厚の変化に由来する特定の機能の遂行効率にはばらつきがあることに気付いている。
【0024】
本明細書中で使用される用語「コポリマー」は、2種類以上のコモノマーの共重合によって生ずる共重合された単位を含むポリマーを指す。これに関してはコポリマーは、本明細書中ではその成分であるコモノマーを基準にして、またはその成分であるコモノマーの量、例えば「エチレンおよび15重量%のアクリル酸を含むコポリマー」または同様の記述を基準にして記述することができる。このような記述は、それが共重合された単位としてのコモノマーを意味しない点で、またはそれがそのコポリマーに対する通常の名称、例えば国際純正応用化学連合(IUPAC)の名称を含まない点で、またはプロダクト・バイ・プロセスの用語法を使用していない点で、または他の理由で非公式であるとみなすことができる。しかしながらその成分であるコモノマーを基準にした、またはその成分であるコモノマーの量を基準にしたコポリマーの本明細書中で使用する記述は、そのコポリマーが指定コモノマーの共重合された単位を含有する(指定される場合は指定された量で)ことを意味する。コポリマーは、限られた状況下でそのようなものであると明記されない限り、所与のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の製品ではないことが推論として続く。用語「ジポリマー」は、実質上2種類のモノマーからなるポリマーを指し、また用語「ターポリマー」は、実質上3種類のモノマーからなるポリマーを指す。
【0025】
本明細書中で使用される用語「非変性」とは、ブレンドされていない、または反応していないイオノマーの特性に顕著な影響を与える任意の材料とブレンドされていない、または反応していないイオノマーを指す。
【0026】
最後に、本明細書において単独で、または「(メタ)アクリル酸エステル」など組み合わせた形で使用される用語「(メタ)アクリルの」は、「アクリルの、またはメタクリルの」、例えば「アクリル酸またはメタクリル酸」あるいは「アクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキル」を指す。
【0027】
本明細書中では、広範な性能特性を有する、また酸コポリマーまたはイオノマーの明確な属性の多くもまた保持するエチレン酸コポリマーまたはそのイオノマーを含有する組成物について述べる。
【0028】
例えば、ポリ(エチレン−co−マレイン酸水素エチル)(E/EHM)などの官能性エチレンコポリマーは、光学的透明度および他の一般的属性を犠牲にすることなく全組成範囲においてエチレン酸コポリマーまたはそのイオノマーと容易にブレンドすることができる。E/EHMで変性したエチレン酸コポリマーは、金属および他の基材に対する高い接着力を示す。エチレン酸コポリマー中にE/EHMを取り込むことにより、ポリエチレン−co−ビニルアルコール(EVOH)、およびナイロンまたは他のポリアミドなどの極性ポリマーに対する高い接着力を提供する官能基が実現される。したがって多層ラミネート構造物においてこのブレンドは、他の極性ポリマーと接着させるための結合層を必要としない。
【0029】
好ましくは組成物は、約20から約95重量%の成分(1)、すなわちエチレン酸コポリマーまたはそのイオノマーと、約5から約80重量%の成分(2)、すなわち官能性エチレンコポリマーとを含む。例えば組成物は、成分(2)を約5から約45重量%含むことができる。より好ましくは組成物は、約60から約80重量%の成分(1)、すなわちエチレン酸コポリマーまたはそのイオノマーと、約20から約40重量%の成分(2)、すなわち官能性エチレンコポリマーとを含む。
【0030】
E/EHM含有イオノマーは、E/EHMとエチレン酸コポリマーの混合物の中和によって得ることができる。さらにこの方法は、エチレン酸コポリマー対E/EHMの全組成比に対して役立つ。別法では前もって調製したエチレン酸コポリマーのイオノマーをE/EHMとブレンドして変性イオノマー組成物を形成することもできる。
【0031】
金属と、EVOHおよびナイロンなどの他のポリマーとを含めた基材に対するこの変性イオノマー組成物の高い接着力は、例えばオーバーモールド成形の用途に有用である。イオノマーのE/EHMとのブレンディングはまた、イオノマーのメルトレオロジーを変えるための融通のきく方法を提供する。例えば、高溶融粘度のイオノマーは、ブロー成形などの幾つかの方法では特に有用である。さらにE/EHMとのプレブレンディングは、他のポリマー中へのイオノマーの分散を改良する。この特性は、ポリマー変性における有用な中間段階を可能にさせる。
【0032】
エチレン酸コポリマー
組成物の第一成分は、(a)エチレン、(b)1種類または複数種類のC3〜C8α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、および任意選択の(c)アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルの群から選択される1種類または複数種類のコモノマーの各モノマーから誘導される共重合された単位を有する1種類または複数種類のコポリマーを含む。このアルキル基は、炭素原子1から8個、好ましくは炭素原子1から4個を含み、分岐していても分岐していなくてもよく、また独立にそれらアルキル基は飽和または不飽和であることができる。本明細書中で使用される用語「エチレン酸コポリマー」および「酸コポリマー」は、それらのコポリマーを指す。
【0033】
好ましくはこのエチレン酸コポリマーは、その酸コモノマーがエチレンと直接共重合し、かつその共重合された単位がポリマー鎖の一部をなすコポリマーである。しかしながら、その酸コモノマーが、重合後「グラフト」反応により既存のポリマー鎖に加えられる「グラフト」酸コポリマーもまた適している。好ましくはこのC3~8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を含み、またより好ましくはこのC3~8α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、実質上アクリル酸またはメタクリル酸からなる。
【0034】
より詳細にはエチレン酸コポリマーは、E/X/Yコポリマーとして記述することができる。式中、Eはエチレンから誘導される共重合された単位を表し、Xはアクリル酸またはメタクリル酸などのC3〜C8α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸から誘導される共重合された単位を表し、XはE/X/Yコポリマーの約2から約30重量%存在し、またYはアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導される共重合された単位を表し、YはE/X/Yコポリマーの0から約40重量%存在する。
【0035】
任意選択のコモノマー、すなわちアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルを含有しない(すなわちYの量がE/X/Yコポリマーの正確に0%である)エチレン酸コポリマーは、エチレン酸ジポリマーまたはE/Xジポリマーとして記述することができる。
【0036】
好ましくはエチレン酸コポリマーは、E/Xジポリマーであり、より好ましくはエチレンと(メタ)アクリル酸のコポリマーである。より好ましいジポリマーおよびそのジポリマーを含む組成物は、C3からC8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合されたコモノマーが、ジポリマー中に約4重量%、または約5重量%、または約8重量%から約30重量%、または約10重量%から約25重量%の量で存在するものである。より好ましいジポリマーおよびそのジポリマーを含む組成物は、C3からC8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合されたコモノマーが、アクリル酸またはメタクリル酸を含むものである。好適なエチレン酸コポリマーの特定の例には、エチレン/アクリル酸ジポリマーおよびエチレン/メタクリル酸ジポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
しかしながら上記のようにエチレン酸コポリマーはまた、第三の軟化用モノマーYを含有することができる。「軟化用」とは結晶性を妨げる、すなわちそのポリマーをより低結晶にすることを意味する。したがって第三の軟化用モノマーYを含むエチレン酸コポリマーは、E/X/Yターポリマーとして記述することができる。好ましいE/X/Yターポリマーは、エチレン、C3からC8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルの共重合されたコモノマーから実質上なる。
【0038】
また好ましくはE/X/Yターポリマーにおいて、Xの量は約2から約25重量%、または約5から約15重量%であり、Yの量は約0.1から約40重量%、約1から約35重量%、または約5から約35重量%である。C3からC8のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合されたコモノマーがアクリル酸またはメタクリル酸を含むターポリマーおよびそれらターポリマーを含む組成物もまた好ましい。
【0039】
好適なターポリマーの特定の例には、これらには限定されないが、エチレン/アクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/アクリル酸/アクリル酸メチル、およびエチレン/アクリル酸/アクリル酸エチルターポリマーと、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸イソ−ブチル、エチレン/アクリル酸/メタクリル酸メチル、およびエチレン/アクリル酸/メタクリル酸エチルターポリマーと、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸イソ−ブチル、エチレン/メタクリル酸/アクリル酸メチル、およびエチレン/メタクリル酸/アクリル酸エチルターポリマーと、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸n−ブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸イソ−ブチル、エチレン/メタクリル酸/メタクリル酸メチル、およびエチレン/メタクリル酸/メタクリル酸エチルターポリマーとが挙げられる。
【0040】
エチレン酸コポリマーは、任意の適切な方法で製造することができる。高レベルの酸を有するエチレン酸コポリマーは、連続重合装置中で、米国特許第5,028,674号明細書に記載の「助溶媒技術」の使用によって、または低級の酸を有するコポリマーを調製することができる圧力よりも若干高い圧力を使用することによって調製することができる。
【0041】
官能性エチレンコポリマー
このブレンドの第二成分は、(d)エチレン、(e)少なくとも2個のカルボキシル(−C(O)OH)基および4から8個の炭素原子を含むエチレン性不飽和カルボン酸、あるいはその誘導体、例えば酸無水物、モノエステルまたはジエステル(好ましくはアルキルエステルである)からなる群から選択される1種類または複数種類の官能性コモノマー、および任意選択の(f)酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、およびメタクリル酸アルキルから選択される1種類または複数種類のモノマーの各モノマーから誘導される共重合された単位を有する少なくとも1種類の官能性エチレンコポリマーを含む。ただしこれらアルキル基は、エチレン酸コポリマーに関して上記で定義したものと同様である。
【0042】
繰り返して言えば官能性エチレンコポリマーは、ジポリマーまたはより高次のコポリマー、例えばターポリマーまたはテトラポリマーであることができる。好ましくは官能性エチレンコポリマーは、(d)エチレン、(e)エチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である少なくとも1種類の官能性コモノマー(ただし、その官能性モノマーは官能性エチレンコポリマーの約5から約20重量%または約4から約15重量%の量で存在する)、および(f)酢酸ビニルおよび(メタ)アクリル酸アルキルから選択され、官能性エチレンコポリマーの0から約10重量%の量で存在する1種類または複数種類のモノマーから誘導される共重合された単位を含む。
【0043】
有利には成分(e)は、コポリマーの約6から約15、または約6から約10重量%の範囲で存在する。好ましくは成分(e)は、ジカルボン酸から、またより好ましくはマレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルから誘導される。また好ましくは成分(e)は、官能性エチレンコポリマーの総重量の約8から約12重量%または約6から約8重量%の量で存在する。
【0044】
成分(f)が官能性エチレンコポリマー中に存在する場合、それは官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして好ましくは約1から約35重量%、より好ましくは約5から約35重量%、さらに一層好ましくは約0.1から約10重量%または約0.1から約5重量%の量で存在する。
【0045】
好適な官能性コモノマーの特定の例には、これらには限定されないが、無水マレイン酸および無水イタコン酸などの不飽和酸無水物と、マレイン酸水素メチル、マレイン酸水素エチル、フマル酸水素プロピル、およびフマル酸水素2−エチルヘキシルを含めたブテン二酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびシトラコン酸)のアルキルモノエステルと、ジメチルマレイン酸エステル、ジエチルマレイン酸エステル、ジブチルシトラコン酸エステル、ジオクチルマレイン酸エステル、およびジ−2−エチルヘキシルフマル酸エステルなどのブテン二酸のアルキルジエステルとが挙げられる。これらのなかでは無水マレイン酸、マレイン酸水素エチル、およびマレイン酸水素メチルが好ましい。無水マレイン酸およびマレイン酸水素エチルがより好ましく、マレイン酸水素エチルがさらに一層好ましい。
【0046】
官能性コポリマーの例である、より高次のコポリマーには、エチレン/アクリル酸メチル/マレイン酸水素エチル、エチレン/アクリル酸ブチル/マレイン酸水素エチル、およびエチレン/アクリル酸オクチル/マレイン酸水素エチルなどのターポリマーが挙げられる。
【0047】
官能性エチレンコポリマーは、コモノマー単位が互いに反応してポリマー鎖を形成するようにすべてのモノマーを同時に加える高圧遊離基重合の方法によって得ることができる。このようなコポリマーの調製に適した高圧法は、例えば米国特許第4,351,931号明細書に記載されている。この方法は、酸コモノマーがエチレンと直接共重合し、その共重合された単位がポリマー鎖の一部をなすコポリマーを提供する。したがってこの共重合された単位は、そのポリマーの骨格または鎖中に取り込まれ、前もって形成されたポリマー骨格上へのペンダント基としては取り込まれない。したがって直接共重合法によって製造されるコポリマーは、モノマーが多くの場合、後続の遊離基反応によって既存のポリマー上にグラフトされるグラフトコポリマーとまったく異なる。本明細書中で述べる組成物においては官能性エチレンコポリマーは、直接共重合体(direct copolymer)である。しかしながら、この直接共重合官能性コポリマーと同じでも異なってもよい1種類または複数種類の追加の官能性コモノマーをそれにさらにグラフトされていてもよい。
【0048】
イオノマー
成分(1)および(2)の一方または両方が、イオノマーとして組成物中に存在することができる。イオノマーは、酸コポリマーの中和によって得られるイオン性コポリマーである。その酸コポリマーは、さきに述べたようなE/XまたはE/X/Yコポリマーであることができる。
【0049】
本明細書中でのイオノマーのいずれの考察においても用語「酸コポリマー」には、カルボキシル基を含む、または脱エステル化してカルボキシル基を形成することができるエステルを含む官能性エチレンコポリマーが含まれる。
【0050】
少なくとも1個の陽イオンを有する塩基性化合物または中和剤、例えばアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属陽イオンを用いて酸コポリマー中の酸性基の少なくとも一部を中和し、熱可塑性イオノマー樹脂を生じさせる。注目すべき塩基性化合物には、アルカリ金属のイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物、またはアルコキシドと、アルカリ土類金属および遷移金属のイオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物、またはアルコキシドとが挙げられる。好ましい陽イオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、または亜鉛、あるいはこれら陽イオンの2種類以上の組合せが挙げられる。ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、または亜鉛陽イオン、またはこれら陽イオンの2種類以上の組合せがより好ましい。
【0051】
イオノマーは、扱いにくいポリマー、例えば溶融加工に適さない材料、または有用な物理的性質を有さない材料を生じさせない任意のレベルまで中和することができる。例えば酸コポリマーの酸部分の約10から約90%、約10から約70%、または約50から約75%を中和して、それらの共役塩基形態にすることができる。
【0052】
好適なイオノマーは、当業界で知られている方法、とりわけ米国特許第3,262,272号明細書に記載のものなどによって上記の酸コポリマーから調製することができる。例えば純粋な塩基性化合物を酸コポリマーに加えることができる。塩基性化合物はまた、中和すべき酸ポリマーに加えることができる「マスターバッチ」を形成するために、より高いメルトインデックスを有する別の酸コポリマーなどのポリマー材料と前もって混ぜ合わせることもできる。一般に中和は押出成形工程の一部として行われる。
【0053】
大量の酸コポリマーの中和は、溶解法のように数分、数秒、またはさらに一層短い時間内で安定平衡を達成することができないことは明らかである。この現象を考慮に入れると、その酸ポリマー中の酸性基の望ましい量を中和するのに必要な塩基性化合物の量(基本的な化学量論原理の使用によって計算することができる)を酸ポリマーに加える場合、そのイオノマーは実際の中和レベルが異なることもあり、また時間とともに変化することもあるという理解の下で、望ましい「公称中和%」を有するといわれ、または望ましいレベルまで「名目上中和されている」ともいわれる。
【0054】
実際の中和レベルは、赤外分光法を用いて1530〜1630cm-1におけるカルボン酸陰イオンの伸縮振動に起因する吸収ピークと、1690〜1710-1におけるカルボニル陰イオンの伸縮振動に起因する吸収ピークの強度を比較することによって求めることができる。
【0055】
イオノマーの非限定的例示的な例には、E/15MAA/Na、E/19MAA/Na、E/15AA/Na、E/19AA/Na、E/15MAA/Mg、およびE/19MAA/Li(ただし、Eはエチレンを表し、MAAはメタクリル酸を表し、AAはアクリル酸を表し、数はコポリマー中に存在するモノカルボン酸の重量%を表し、元素記号は中和陽イオンを表す)が挙げられる。
【0056】
エチレン酸コポリマーから誘導される幾つかの好適なイオノマーが、商標SURLYN(登録商標)でDuPontから市販されている。
【0057】
組成物の作製方法
成分(1)および成分(2)は、標準的な混合技術を用いて任意の比率で混ぜ合わせることができる。例えば成分(1)の酸コポリマーを、成分(2)の官能性コポリマーと混合してブレンドを調製することができる。特定用途の要求条件に応じて成分(1)および(2)の比率を操作して透明度、靭性、および低温衝撃強さなどの特性の適切なバランスを得ることができる。一般にこれらブレンドは、成分(1)の純粋な酸コポリマーまたは成分(2)の純粋な官能性エチレンコポリマーと比較して、アルミ箔などの基材に対して改良された接着力を示す。また一般にこれらブレンドは、EVOH、およびナイロンまたは他のポリアミドなどの極性ポリマーに対して改良された接着力を示す。
【0058】
任意選択で、イオノマーを調製するための上記の方法と類似の方法を用いて成分(1)および(2)を含む組成物を塩基性化合物で中和して、アルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属などの1種類または複数種類の陽イオンにより少なくとも部分的に中和された組成物を得ることもできる。成分(1)および(2)を含む組成物を中和する場合、結果として変性イオノマー組成物になる。別法では変性されていないイオノマーを官能性エチレンコポリマーと混合して同様の変性イオノマーブレンドを得ることもできる。この変性イオノマー組成物の特性は、例えば中和の度合いまたは陽イオンの種類を変えることによって操作することができる。
【0059】
より具体的には、本明細書中で述べる溶融加工可能な変性イオノマー組成物は、酸コポリマーまたはイオノマーと、官能性エチレンコポリマーと、酸コポリマーおよび官能性コポリマーの酸部分を中和することができる少なくとも1種類の塩基性化合物との混合物を加熱することによって生成することができる。例えばその組成物の成分は、
(a)エチレンα,β−エチレン性不飽和カルボン酸コポリマーまたはその溶融加工可能なイオノマーを、1種類または複数種類の官能性エチレンコポリマーと溶融ブレンドすることによって混合し、同時にまたはその後に、
(b)その酸コポリマー中の酸部分および官能性コポリマー中の酸部分を中和することができる塩基性化合物を、所望の中和レベルを達成するのに十分な量で加える
ことができる。
【0060】
酸コポリマーと官能性コポリマーを溶融ブレンドし、中和(同時またはその後のいずれかで)することにより、その意図する中和範囲での溶融加工性を維持しながら、不活性希釈剤の使用なしに中和された組成物の調製が可能になる。
【0061】
任意選択の成分
組成物は、成分(1)および成分(2)とブレンドされた追加の熱可塑性材料を含んでいてもよい。追加成分をブレンドすることは、例えば組成物中に存在する追加成分の量および種類を操作することにより、組成物の特性を改変するための代替手段を提供することができる。さらに、追加の熱可塑性材料をブレンドすることは、所望の特性を得るために後で変性することができる原樹脂の種類をより少なくすることを可能にすることによって、ポリマー組成物をより簡単により低コストで製造することを可能にすることができる。
【0062】
成分(1)および(2)への添加に使用することができる他の熱可塑性材料の例には、非イオノマー熱可塑性コポリマーが挙げられる。この追加の非イオン性の熱可塑性ポリマー成分は、ポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム状弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、無水マレイン酸グラフトポリマーなどの中から選択することができ、これらポリマーの種類は当業界でよく知られている。
【0063】
ポリオレフィンもまた、他の熱可塑性材料として適している。ポリオレフィンには、これらに限定されないがオレフィンのホモポリマーおよび2種類以上のオレフィンのコポリマーが挙げられる。好適なポリオレフィンの例には、これらに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、およびポリオクテンが挙げられる。ポリエチレンは好ましいポリオレフィンである。好適なポリエチレンの例には、これらに限定されないが、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。
【0064】
特に注目すべきなのは、無水マレイン酸グラフトポリマー(マレイン化ポリマー)をさらに含むブレンドである。無水マレイン酸グラフトポリマーには、マレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリプロピレン、マレイン化ポリエチレン/ポリプロピレンゴム、マレイン化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロックコポリマー、およびマレイン化ポリブタジエンが挙げられる。マレイン化ポリエチレンの調製および使用に関する更なる詳細については、米国特許第6,545,091号明細書に記載されている。無水マレイン酸変性線状高密度ポリエチレンの例は、Crompton Corporationから入手できる商品名POLYBOND 3009で販売されている製品である。類似のマレイン化ポリオレフィンが、商標FUSABOND(登録商標)でDuPontから市販されている。好ましいマレイン化ポリオレフィンには、0.90g/cm3未満の密度を有するものが挙げられる。これらのより低密度のマレイン化ポリオレフィンは、「より軟質」の改質剤であると考えられる。
【0065】
これら組成物は、他の任意選択の材料、例えば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびガラスフレークなどの補強剤、加工助剤、粘着防止剤、剥離剤、および/またはこれらの混合物を含めてポリマー材料に使用される通常の添加剤をさらに含むことができる。使用する場合、これら任意選択の添加剤の量は、広い範囲にわたって変えることができる。一般にはそれらはポリマー組成物の約20重量%までの量で存在するはずである。その量は重要でなく、日常的な実験により、または標準的なテキストを参照することにより決めることができる。適切な量は、そのポリマー組成物の基本的かつ新規な特徴を損なわない量である。
【0066】
造形品およびそれらの二次加工方法
本明細書中で述べる組成物は、種々様々な造形品に有用である。好ましい物品および注目すべき物品は、好ましい組成物および上記の注目すべき組成物を含む。これらの物品は、高い透明度、すぐれたバリヤー性、またはすぐれた衝撃強さを必要とする最終用途に適している。
【0067】
造形品には、これらに限定されないが、ボトル、燃料タンク、および他の類似の容器が挙げられる。ボトル、燃料タンク、および他の類似の容器は、標準的なブロー成形設備、例えばBekum,Sigなどによって生産されているものを使用することによって(同時)押出ブロー成形により製造することができる。それは滅菌環境下でWeilerまたはRommelagのブロー成形充填(BFF)機上でボトルを生産されるのに特に適している。ボトルは、本明細書中で述べる変性エチレン酸コポリマー組成物または変性イオノマー組成物の少なくとも1層を備えた単層または多層構造物であることができる。
【0068】
造形品の別の例は異形材である。異形材は、特定の形状を有することによって、また異形押出成形として知られるそれらの製造方法によって定義される。異形材は、フィルムでもシートでもなく、したがって異形材の製造方法は、カレンダー加工または冷却ロールの使用を含まない。異形材はまた、射出成形法によって調製されることもない。異形材は、所望の形状を維持することができる押出物を形成する金型のオリフィスを通して熱可塑性溶融物を押出成形することにより開始する溶融押出法によって作製される。押出物は、一般には、所望の形状を維持したまま絞ってその最終寸法にし、次いで空気浴または水浴中で急冷してその形状を固定し、それによって異形材を生産する。単純な異形材の形成では押出物は、好ましくは構造的な支えなしに形状を維持する。幾つかの形状の場合、繊維または金属強化材などの支持手段を用いて形状の保持を助けることができる。
【0069】
異形材の一般的な形状はチューブである。液体および蒸気を輸送するためのチューブアッセンブリーは当業界でよく知られている。チューブは、医療用途における流体の輸送のために、または飲料などの流体の輸送において使用される。これらの用途は、すぐれた湿気遮断性、耐化学薬品性、靭性、および可撓性を必要とする。チューブの透明度は、輸送される流体の目視観察のために重要な場合がある。さらに、チューブの用途によっては極低温および/または極高温に曝される場合がある。本明細書中で述べる組成物は、靭性、可撓性、および透明度のすぐれた組合せを可能にし、それらをチューブなどの異形材の調製に適したものにする。
【0070】
組成物はまた、前もって形成した基材に合わせてオーバーモールド成形することもできる。オーバーモールド成形は、基材を金型キャビティ内に配置するステップと、その基材の少なくとも一部に接着するように溶融組成物を成形するステップとを伴う。オーバーモールド成形は、射出成形法または圧縮成形法を用いて行うことができる。
【0071】
別法では組成物は、当業者に知られている様々な手段によって造形品にすることができる。例えば、これら組成物の押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、オーバーモールド成形、積層成形、切断、ロール練りなどにより、所望の形状およびサイズの物品を得ることができる。任意選択でこの組成物を含む物品をさらに加工することもできる。例えば、組成物の一部(例えば、これらには限定されないがペレット、スラグ、ロッド、ロープ、シート、および成形または押出品)を熱成形操作にかけることができる。熱成形では組成物に熱、圧力、および/または他の機械力を施して造形品を作り出す。
【0072】
フィルム、シート、および包装
好ましい造形品にはフィルムおよびシートが挙げられる。フィルムおよびシートは、包装に使用することができる。フィルムまたはシートは単層構造または多層構造を有することができる。好ましくはフィルムまたはシートは、第一層と、その第一層に直接接着した追加の層とを備える。追加の層は、金属、EVOH、またはポリアミドを含むか、またはそれから調製され、かつ第一層は本明細書中で述べる組成物を含む。
【0073】
包装に使用される場合、この多層ポリマーフィルムは、これには限定されないが最も外側の構造層または酷使層、中間バリヤー層、および最内層と、任意選択でそれらの間に配置される1層または複数層の接着剤層または結合層とを含めて、分類上少なくとも3種類の層を伴うことが多いはずである。また、パウチの意図される内容物と接触し、かつそれとの適合性のある最内層は、その包装用容器の内容物を封じ込めるために閉鎖外周シール(すなわち一般に1,500g/インチを超えるシール強度)を形成する能力があることが好ましい。最内層はまた、ヒートシール可能であることが最も好ましい。
【0074】
最も外側の構造層または酷使層は、金属、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、またはポリプロピレンを含むことができ、また配向されていてもよい。この層は、裏面印刷可能であってもよく、また包装用容器はその多層構造物の厚さ全体にわたってシールされるので、有利には包装用容器を作るために使用されるシール温度による影響を受けない。この層の厚さは、一般にその包装用容器の剛性を制御するように選択され、約10から約60μm、または約10から約50μmの範囲にあることができる。
【0075】
中間層は、パウチ内部の製品に潜在的に影響を及ぼす恐れのある大気条件(酸素、湿度、光など)に応じて1層または複数層のバリヤー層を含むことができる。バリヤー層の組成は、金属被覆したポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、アルミ箔、これらのブレンドまたは複合体、およびこれらの関連コポリマーであることができる。バリヤー層の厚さは、製品の感受性および所望の貯蔵寿命によって決まるはずである。
【0076】
一般にEVOHポリマーは、約15モル%から約60モル%の間、より好ましくは約20モル%から約50モル%の間のエチレン含量を有する。市販のEVOHの密度は、一般に約1.12g/cm3から約1.20g/cm3の間の範囲にあり、これらのポリマーは約142℃から191℃の間の範囲の融解温度を有する。EVOHポリマーは、よく知られている手法によって調製することも、また商業的供給源から得ることもできる。EVOHコポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマーを鹸化または加水分解することによって調製することができる。したがってEVOHはまた、加水分解エチレン酢酸ビニル(HEVA)コポリマーとしても知られる。加水分解の度合いは、好ましくは約50から100モル%、より好ましくは約85から100モル%である。好適なEVOHコポリマーは、米国のEval Companyまたは日本の株式会社クラレから商品名EVALで得ることができる。EVOHはまた、Noltex L.L.C.から商品名SOARNOLで入手できる。EVOH樹脂の例には、EVAL F101、EVAL E105、EVAL J102、およびSOARNOL DT2903、SOARNOL DC3203、およびSOARNOL ET3803が挙げられる。米国のEval Companyまたは日本の株式会社クラレから得られる商品名EVAL SPで販売されているEVOH樹脂は注目すべきである。EVAL SPは、高い塑性を示し、かつ収縮フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)型バリヤーボトル、ならびに深絞りカップおよびトレイを含めた包装用途に使用するのに適したEVOHの一種である。そのようなEVOH樹脂の例には、EVAL SP521、EVAL SP292、およびEVAL SP482が挙げられる。
【0077】
この包装用容器の最内層はシーラントである。シーラントは、内容物の風味、色、または安定性に与える影響が最少であるように、またその製品によって影響を受けないように、またシール条件(例えば、液滴、グリース、粉塵など)に耐えるように選択される。一般にこのシーラントは、最外層の外観がそのシーリング工程によって影響を受けず、かつシールバーのかみ合い部に粘着しないように、最外層の融解温度より実質的に低い温度でそれ自体に接合する(シールする)ことができる樹脂である。多層パウチに使用される典型的なシーラントには、エチレンコポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン(mPE)か、あるいはイオノマー化(すなわち、Na、Zn、Mg、またはLiなどの金属イオンで部分的に中和)されていてもよいエチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸メチルのコポリマーもしくはエチレンとアクリル酸またはメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。シーラントは様々なポリマーであることができるが、好ましくはポリエチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、またはイオノマーである。これらは、種々様々な食品および他の品目、例えば医療および健康管理製品、医療機器を包装するのに適している。典型的なシーラントにはまた、ポリプロプレンコポリマーを挙げることができる。シーラント層は、一般には厚さ25から100μmである。
【0078】
多層構造物、特にフィルムの形態のものの代表的な例には下記のものが挙げられる。これら多層構造物において記号「/」は、層間の境界を表す。「EACブレンド」は、エチレン酸コポリマーと官能性エチレンコポリマーを含む組成物を表し、また「イオノマーブレンド」は、イオノマーと官能性エチレンコポリマーを含む組成物を表す。これらの構造物では包装用容器に使用することを意図する多層構造物の外側から内側までの層を、左から右へ順に列挙する。下記構造物の一覧表は、本発明の構造物の網羅的一覧表ではなく、むしろ好ましい構造物の幾つかの例を示すにすぎない。それぞれの構造物は、具体的な包装最終用途において特定の利点を有するはずである。
イオノマーブレンド/EVOH/エチレン酢酸ビニル、
イオノマーブレンド/EVOH/エチレンメタクリル酸アルキル、
EACブレンド/EVOH/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/EVOH/EACブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
EACブレンド/EVOH/エチレンメタクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/EVOH/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
イオノマー/イオノマーブレンド/EVOH/エチレンアクリル酸アルキル、
エチレンアクリル酸/イオノマーブレンド/EVOH/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
エチレンメタクリル酸/EACブレンド/EVOH/EACブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/EVOH/イオノマーブレンド/ポリエチレン、
EACブレンド/EVOH/EACブレンド/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/EVOH/EACブレンド/ポリエチレン、
イオノマーブレンド/ポリアミド/イオノマーブレンド/ポリエチレン、
イオノマーブレンド/ポリアミド/エチレン酢酸ビニル、
イオノマーブレンド/ポリアミド/イオノマーブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/ポリアミド/エチレンメタクリル酸アルキル、
EACブレンド/ポリアミド/ポリエチレン、
EACブレンド/ポリアミド/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/ポリアミド/エチレンアクリル酸アルキル、
EACブレンド/ポリアミド/エチレンメタクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/ポリアミド/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
イオノマー/イオノマーブレンド/ポリアミド/エチレンアクリル酸アルキル、
エチレンアクリル酸/イオノマーブレンド/ポリアミド/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
エチレンメタクリル酸/EACブレンド/ポリアミド/EACブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
EACブレンド/ポリアミド/EACブレンド/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/ポリアミド/EACブレンド/ポリエチレン、
イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/ポリエチレン、
イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
EACブレンド/Al箔/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/Al箔/EACブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
EACブレンド/Al箔/EACブレンド/エチレンメタクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
イオノマー/イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
エチレンアクリル酸/イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
エチレンメタクリル酸/EACブレンド/Al箔/EACブレンド/エチレンアクリル酸アルキル、
イオノマーブレンド/Al箔/イオノマーブレンド/エチレン酢酸ビニル、
EACブレンド/Al箔/EACブレンド/エチレン酢酸ビニル、および
EACブレンド/Al箔/EACブレンド/ポリエチレン。
【0079】
本明細書中で述べる組成物を含む包装用容器は、食肉および他の食料品、例えば低温で貯蔵されるものを包装するためのフィルムおよびパウチ、健康管理用液剤または他の流体を封入また小分けするために使用されるパウチおよびボトル、ならびに医療用液剤または他の流体を輸送するためのチューブとして有用である。現在、非経口投与(例えば静脈内(「IV」)投与)用の医療用流体または液剤を使い捨ての可撓性パウチの形態で供給することは一般的なやり方である。これらのパウチの一つの部類は、一般に「IVバッグ」と呼ばれる。パウチに詰めることができる他の流体には飲料が挙げられる。飲料は、飲用の任意の液体、例えば、食用に適した栄養素、電解質、ビタミン、繊維、着香料、着色剤、保存料、酸化防止剤などの追加の成分を含んでいてもよい水、果実または野菜のジュースまたはジュース飲料、大豆製品、乳製品、他のフレーバー飲料などであることができる。
【0080】
フィルム、シートの二次加工法および包装方法
本明細書中で述べる組成物を(同時)押出し、様々なフィルム形成手段によってフィルムにすることができる。好適なフィルムおよび二次加工法には、例えばインフレートフィルム、キャストフィルム、貼合せフィルム、および押出被覆フィルムが挙げられるがこれらに限定されない。溶融押出したポリマーを任意の適切な変換技術を用いてフィルムに変換することができる。例えば多層フィルムは、次のように同時押出成形によって調製することができる。すなわち、様々な層に使用される組成物の粒質物を押出機中で溶融する。この融解ポリマーに金型または一連の金型を通過させて、層流として加工される融解ポリマーの層を形成する。この融解ポリマーを冷却して多層構造物を形成する。フィルムはまた、同時押出成形し、続いて1層または複数層の他の層上に貼り合せることによって作製することもできる。他の適切な変換技術は、例えばインフレション、キャストフィルム押出、キャストシート押出、および押出コーティングである。
【0081】
幾つかの好ましいシートおよびフィルムでは組成物を、多層ポリマー構造物の1層または複数層の層として組み込むことができ、この場合、熱可塑性樹脂の追加の層を組み込んで、その物品に追加の機能を与える機能層を設けることができる。注目すべきは少なくとも1層の追加の層中にイオノマー材料を含むこのような多層構造物である。この酸コポリマー組成物の層および他のポリマー層は、独立に形成し、次いで互いに接着させて貼り付け、物品を形成することができる。この物品はまた、それら層の一部または全部を基材上へ押出コーティングするか、または貼り合せることによって作製することもできる。物品の構成要素の一部は、特にそれら構成要素が相対的に同一平面内にある場合、同時押出によって一体成形することができる。したがって物品は、多層同時押出成形フィルムまたはシート中に変性酸コポリマー組成物の層と、別の熱可塑性材料の1層または複数層の追加の層とを含むフィルムまたはシートであることができる。
【0082】
フィルムは、急冷または注型の後に配向することができる。フィルムは、一軸配向することもでき、またはそのフィルムの平面内で2つの互いに直角をなす方向に延伸することによって二軸配向して、機械的および物理的性質の満足のいく組合せを達成することもできる。このフィルムは配向の後にアニールされていてもよい。
【0083】
配向および延伸装置は当業界で知られており、本明細書中で述べるフィルムを生産するために当業者が適合させることができる。フィルム配向装置および方法の例には、例えば米国特許第3,278,663号明細書、同第3,337,665号明細書、同第3,456,044号明細書、同第4,590,106号明細書、同第4,760,116号明細書、同第4,769,421号明細書、同第4,797,235号明細書、および同第4,886,634号明細書中に開示されているものが挙げられる。
【0084】
別法ではフィルムを、二段バブル押出成形法を用いて配向させることができる。この成形法では、一次チューブを押出成形、続いて急冷、再加熱し、次に内部ガス圧により膨張させて横配向を引き起こし、かつ差速ニップまたは差速搬送ローラーにより縱配向を引き起こすような速度で延伸することによって二軸配向を行うことができる。二段バブル成形技術は、例えば米国特許第3,456,044号明細書に記載のように行うことができる。
【0085】
包装材料として使用されるフィルムはまた、消費者に情報、例えばその中の製品に関する情報を与える包装材料を実現するために、または包装用容器に魅力的な外観を与えるために、例えば印刷、エンボス、および/または着色によってさらに加工することもできる。
【0086】
別法では、またはこれに加えて、フィルムおよびシートをさらに加工して、包装のうちに含めることができる造形品(例えば、ブリスターパック、トレイ、およびカップなどの多層容器)にすることもできる。この更なる加工は、一軸または二軸延伸、軸方向ヒートシール、熱成形、真空成形、シート折りたたみおよびヒートシーリング(製袋−充填−密封)、圧縮成形、あるいは同様の成形または二次成形方法をその部類に入れることができる。
【0087】
熱成形法ではフィルムまたはシートを、その軟化温度を超えて加熱し、所望の形状にする。通常、この二次成形シートを二次成形用ウェブと呼ぶ。様々なシステムおよび装置が熱成形法において使用され、それらは二次成形用ウェブの所定の形状への適切な成形を行うために真空圧を利用した、またプラグを利用した構成部品を伴うことが多い。熱成形法およびシステムは、当業界でよく知られている。酸コポリマーブレンドを含むフィルムは、約100℃から約180℃の範囲内の温度で熱成形することができる。熱成形された物品は、その包装用容器の中に入れられる製品の形状に一致するように形づくられることが多い。熱成形包装用容器は加工肉、例えばホットドッグ、ソーセージなどを入れるために使用することができる。
【0088】
フィルムはまた、パウチに成形されるウェブストックとして使用することもできる。パウチは、ウェブストックの別々の断片を切断し、接着(例えば、接着剤で、またはヒートシールによって)することによって、あるいは折曲げおよび接着を切断と組み合わせることによってウェブストックから作られる。パウチは、フィルムをUまたはV字形の樋の形に配置した包装用フィルムの連続ウェブを準備することによって調製することができる。直立したパウチは、W字形の樋を形成するようにフィルムがまち、すなわちひだを備えた包装用フィルムの連続ウェブを準備することによって調製することができる。
【0089】
可撓性パウチを調製するために使用される包装用フィルムの連続ウェブは、上記のように樋の形に配置されたフィルムのただ1枚のシートを含むことができる。別法ではウェブは、例えば樋の底部で継ぎ目をヒートシールすることによって結合された包装用フィルムの2枚または3枚のシートを含むことができる。この代替案ではそれらシートは同一でもまた異なっていてもよい。直立したパウチの特定の形態は、包装用フィルムの3枚のシートを含み、それらの1枚がパウチの底部を形成し、ひだを付けられ、かつ2枚がパウチの側部を形成する。それらシートは、樋の底部で2つの継ぎ目によって接合される。継ぎ目は、パウチが真直ぐに立つことを可能にするようにパウチに十分な剛性を与える。
【0090】
樋の形をしたウェブは、容器に、すなわち一般にはヒートシールの手段により調製される横断するシールによって個々のパウチのサイズに分割される。パウチは、充填後にその内容物へのアクセスを可能にするための付属部品を備えていてもよい。その付属部品は、フィルムウェブの余白部間に挿入され、またそのパウチのトップシールは、ウェブの余白部に付属部品を密封し、それら余白部を互いにシールすることによって行われる。個々のパウチを、横断するカッターによってウェブから切断される。パウチを成形し、充填し、シールする作業は、上記ステップを同時にかつ/または順次に行うことによって準備することができる。
【0091】
特定の実施形態ではパウチは、付属部品を挿入し、続いてパウチを充填することによって調製される。この実施形態の「実施された」パウチは、一般には上記のように調製される。この場合、可撓性包装用フィルムをパウチの形状に成形し、付属部品をフィルムの端部間に挿入し、それを、例えばヒートシールによってフィルムに接合する。この実施形態では、フィルム余白の部分はシールされず、後続のパウチに詰めるための開口部を提供する。例えば付属部品は、横向きのシールとパウチの開口端の境目でパウチに挿入、接合され、残りの開口端は未シールのままである。パウチはまた、付属部品がパウチの開口端の対角部に挿入、シールされるように形づくることもできる。この実施形態において調製されるパウチを収集し、内容物で満たす別の充填作業へ輸送することもできる。充填作業ではパウチの所望の量の内容物を、一般には絞り弁によって開口部を通じてパウチの中に入れる。開口部は、開口部を形成するフィルムの余白部を接合することによって(例えばヒートシールによって)シールされてトップシールを形成する。
【0092】
トタニ技研工業株式会社(日本、京都)またはKlockner Barlelt Co.,Gordonsville,Va.により製造されたものなどのパウチ製造設備を有利には使用することができる。
【0093】
容器および包装材料は、真空または圧空成形によってシートから調製されるトレイ、カップ、キャップ、または蓋と、未延伸シートの深絞り(すなわち熱成形)によって調製される形物と、圧縮成形または他の成形方法によって調製される形物と、シートの折曲げおよびその縁部のヒートシールによって調製される屋根形カートンなどの形物とを含めた様々な他の形状のものであることができる。
【0094】
造形品の他の成分
本明細書中で述べる組成物を含む物品は、さらに他の成分を含むことができる。多成分または多層構造物(例えば、フィルムまたはシート)において酸コポリマー組成物から形成される成分に加えて、物品の成分を形成するために使用することができる他の熱可塑性材料の例は、非イオノマー熱可塑性コポリマー類および/または通常のイオノマー熱可塑性コポリマー類から選択することができる。
【0095】
非イオノマー熱可塑性樹脂には、非限定的な実例として、熱可塑性エラストマー類、例えばポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−尿素、PEBAX(Atochemによって市販されている、ポリエーテル−ブロック−アミドから作られる一群のブロックコポリマー)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマーなどと、ポリアミド(オリゴマーおよびポリマー)と、ポリアミド類と、ポリエステル類と、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマーなどを含めたポリオレフィン類と、エチレンの様々なコモノマーとの、例えば酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、エポキシ−官能基化モノマー、COなどとのコポリマー類と、共重合またはグラフトのいずれかにより無水マレイン酸、エポキシ化などで官能基化したポリマー類と、EPDMなどのエラストマー類と、メタロセン触媒PEおよびコポリマー類とが挙げられる。
【0096】
好適なポリアミド(ナイロン)は当業者によく知られている。ポリアミドは、一般にはラクタムまたはアミノ酸から調製される(例えば、ナイロン6またはナイロン11)か、あるいはコハク酸、アジピン酸、またはセバシン酸などの二塩基酸によりヘキサメチレンジアミンなどのジアミンを縮合することによって調製される。これらのポリアミドのコポリマーおよびターポリマーもまた含まれる。好ましいポリアミドには、ポリε−カプロラクタム(ナイロン6)と、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)と、ナイロン11と、ナイロン12と、ナイロン12,12と、ナイロン6/6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,6/12、ナイロン6/6,10、およびナイロン6/6Tなどのコポリマーおよびターポリマーとが挙げられる。より好ましいポリアミドは、ポリε−カプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)であり、ナイロン6が最も好ましい。上記のこれらポリアミドは、好ましいポリアミドであるが、アモルファスポリアミドなどの他のポリアミドを使用することもできる。
【0097】
ゴム状弾性ポリオレフィンは、エチレンと、より高級な第一級オレフィン、例えばプロピレン、ヘキセン、オクテンと、任意選択の1,4−ヘキサジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンもしくはノルボルナジエンとからなるポリマーである。ゴム状弾性ポリオレフィンは、無水マレイン酸で官能基化することができる。
【0098】
下記の実施例は、本発明をさらに詳細に記述するために提供される。本発明を実施するために現在検討されている好ましい方法を述べるこれらの実施例は、本発明を例示するためのものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0099】
メルトインデックス(MI)は、制御された温度および圧力の条件下において規定の毛管を通るポリマーの質量流量である。一般にはこれらは、2160gの重りを用いて190℃で測定するASTM 1238に準拠して測定される。
【0100】
使用した材料
EAC−1:9重量%の共重合メタクリル酸を含むMI 2.5のエチレンメタクリル酸コポリマー。
【0101】
F−1:9.5重量%の共重合マレイン酸水素エチルを含むMI 40のエチレンマレイン酸水素エチルコポリマー。
【0102】
イオノマー−1:10重量%の共重合メタクリル酸を含み、1.47重量%のナトリウム陽イオンで中和したMI 1.3のエチレンメタクリル酸コポリマー。
【0103】
イオノマー−2:10.5重量%の共重合メタクリル酸を含み、2.7重量%の亜鉛陽イオンで中和したMI 1.1のエチレンメタクリル酸コポリマー。
【0104】
表1に列挙した実施例の組成物は、ミキシングスクリューを備えた直径30mmの二軸スクリュー押出機を使用して、180℃から230℃の溶融温度を用いて溶融ブレンドすることによって調製された。
【0105】
実施例1
60重量%のEAC−1および40重量%のF−1のブレンドを、ミキシングスクリューを備えた直径30mmの二軸スクリュー押出機を使用して、190℃から210℃の溶融温度を用いて溶融ブレンドすることによって調製した。厚さ0.025cmを有するプレス成形フィルムを190℃で調製した。比較フィルムを、純粋なEAC−1および純粋なF−1から同一条件下で調製した。
【0106】
各フィルムのアルミ箔との接着強さを下記の手順により測定した。アルミ箔/プレス成形フィルム/アルミ箔の順に積み重ねることによって三層複合体を組み立てた。このアルミ箔は厚さ5ミル(127μm)であった。この積層を、125℃に設定した積層プレス中で5分間予熱し、次いで圧力44psi(3.1kg/cm2)で30秒間プレスして積層複合構造物を形成した。この構造物を室温まで冷却した後、三層複合体から幅1インチ(2.54cm)のストリップを切り取った。この剥離強度用ストリップを、INSTRONで接着特性に関して試験(90度剥離試験、速度50mm/分で)した。実施例1は、1.16kg/cmの剥離接着強さを示した。純粋なEAC−1または純粋なF−1から調製したフィルムは、これらの条件下でアルミ箔に対してずっと低い接着力を示した。
【0107】
【表1】

【0108】
実施例2
80重量%のイオノマー−1および20重量%のF−1のブレンドを、直径30mmのWerner and Pflederer二軸スクリュー押出機中で、230℃の溶融温度でのミキシングスクリューを用いた溶融ブレンドによって調製した。
【0109】
この組成物のMIは、非変性イオノマー−1の場合の1.3およびF−1の場合の40と比較して0.09であった。ここで低いMIによって間接的に特徴づけられる溶融粘度の高い組成物ほどブロー成形法では有用である。
【0110】
実施例3
30重量%のイオノマー−1、40重量%のイオノマー−2、および30重量%のF−1のブレンドを、直径30mmのWerner and Pflederer二軸スクリュー押出機中で、230℃の溶融温度でのミキシングスクリューを用いた溶融ブレンドによって調製した。この組成物は0.7のMIを示した。MIによって特徴づけられるこの溶融粘度は、フィルム形成、異形押出成形、または射出成形などの押出成形技術にとって有用である。
【0111】
実施例2および実施例3は、E/EHMを加えることによってイオノマーのメルトレオロジーを調整できることを実証する。また実施例1は、E/EHMを練り込むことにより、他の基材との高い接着を得るための反応性官能基が導入されることを実証する。
【0112】
本発明の好ましい実施形態の幾つかを上記で記述し、また具体的に示したが、本発明をそのような実施形態に限定することを意図するものではない。別添の特許請求の範囲において示される本発明の範囲および精神から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一層と、前記第一層に直接接着した追加の層とを備える多層フィルムまたはシートである物品であって、前記追加の層が、金属、EVOH、またはポリアミドを含むか、または金属、EVOH、またはポリアミドから調製され、前記第一層が、
(1)1種類または複数種類のエチレン酸コポリマーであって、(a)エチレンおよび(b)炭素原子3から8個を含む1種類または複数種類のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の各モノマーから誘導される共重合された単位(copolymerized unit)を含み、(c)1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルのモノマーから誘導される共重合された単位を含んでもよい、エチレン酸コポリマーと、
(2)1種類または複数種類の官能性エチレンコポリマーであって、(d)エチレンおよび(e)炭素原子4から8個を含み、かつ2個のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルモノエステルの各モノマーから誘導される共重合された単位を含み、(f)前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5重量%までの酢酸ビニルあるいは1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルのモノマーから誘導される共重合された単位を含んでもよい、官能性エチレンコポリマーと
から実質上なる組成物を含み、
前記アルキル基が、1から8個の炭素原子を含み、かつ分岐または非分岐、飽和または不飽和であり、かつ
前記エチレン酸コポリマーおよび前記官能性エチレンコポリマー中に存在する前記カルボン酸の部分の少なくとも一部が中和されていてもよい、
物品。
【請求項2】
パウチ、ボトル、チューブ、バッグ、または製品を入れるための包装用容器である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記エチレン酸コポリマーが、E/XジポリマーまたはE/X/Yターポリマーであり、式中、Eがエチレンから誘導される共重合された単位を表し、Xが前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸から誘導される共重合された単位を表し、Yがアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導される共重合された単位を表し、さらにXが前記E/X/Yコポリマーの約2から約30重量%の量で存在し、またYが前記E/X/Yコポリマーの0から約40重量%の量で存在する、請求項1または請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記エチレン酸コポリマーが、エチレンの共重合された単位と、約4重量%から約30重量%の前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合された単位とから実質上なるE/Xジポリマーであるか、あるいは前記エチレン酸コポリマーが、エチレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルの共重合されたコモノマーから実質上なるE/X/Yターポリマーであり、前記E/X/Yターポリマーの総重量を基準にしてXが約2から約25重量%の量で存在し、Yが約0.1から約40重量%の量で存在する、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
エチレン性不飽和ジカルボン酸の前記アルキルモノエステル(e)から誘導される前記共重合された単位が、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5から約20重量%の量で存在し、かつ酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、およびメタクリル酸アルキルからなる群から選択される前記1種類または複数種類のモノマー(f)から誘導される前記共重合された単位が、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5重量%までの量で存在する、請求項1から4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記ジカルボン酸が、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5から約15重量%の量で存在するか、あるいは前記ジカルボン酸が、マレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルから誘導される共重合された単位であり、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約8から約12重量%の量で存在するか、あるいは前記ジカルボン酸が、マレイン酸水素エチルまたはマレイン酸水素メチルから誘導される共重合された単位であるか、あるいは酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、またはメタクリル酸アルキルのうちの1種類または複数種類が、前記官能性コポリマー中に、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約0.1から約10重量%の量で存在する、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記エチレン酸コポリマーおよび前記官能性エチレンコポリマー中に存在する合計したカルボン酸部分の少なくとも一部が中和され、かつそれらの対イオンが1種類または複数種類のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属陽イオンを含む、請求項1から6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
ポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、および無水マレイン酸グラフトポリマーからなる群から選択される非イオノマー熱可塑性材料をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の物品。
【請求項9】
前記無水マレイン酸グラフトポリマーが、マレイン化ポリエチレン、マレイン化ポリプロピレン、マレイン化ポリエチレン/ポリプロピレンゴム、マレイン化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロックコポリマー、またはマレイン化ポリブタジエンである、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
(1)1種類または複数種類のエチレン酸コポリマーであって、(a)エチレンおよび(b)炭素原子3から8個を含む1種類または複数種類のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の各モノマーから誘導される共重合された単位を含み、(c)1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルのモノマーから誘導される共重合された単位を含んでもよい、エチレン酸コポリマーと、
(2)1種類または複数種類の官能性エチレンコポリマーであって、(d)エチレンおよび(e)炭素原子4から8個を含み、かつ少なくとも2個のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルモノエステルから誘導される共重合された単位を含み、(f)酢酸ビニルあるいは1種類または複数種類の(メタ)アクリル酸アルキルから誘導される共重合された単位を含んでもよい、官能性エチレンコポリマーと
から実質上なる組成物であって、
前記アルキル基が、1から8個の炭素原子を含み、かつ分岐または非分岐、飽和または不飽和であり、かつ
前記エチレン酸コポリマーおよび前記官能性エチレンコポリマー中に存在する前記カルボン酸の部分の少なくとも一部が中和されていてもよい、
組成物。
【請求項11】
前記エチレン酸コポリマーが、E/XジポリマーまたはE/X/Yターポリマーであり、式中、Eがエチレンから誘導される共重合された単位を表し、Xが前記α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸から誘導される共重合された単位を表し、Yがアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルから誘導される共重合された単位を表し、さらにXが前記E/X/Yコポリマーの約2から約30重量%の量で存在し、かつYが前記E/X/Yコポリマーの0から約40重量%の量で存在するか、あるいは前記エチレン酸コポリマーが、エチレンの共重合された単位と、約4重量%から約30重量%の前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の共重合された単位とから実質上なるE/Xジポリマーであり、また任意選択でさらに前記エチレン酸コポリマーが、エチレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルの共重合されたコモノマーから実質上なるE/X/Yターポリマーであって、前記E/X/Yターポリマーの総重量を基準にしてXが約2から約25重量%の量で存在し、Yが約0.1から約40重量%の量で存在する、ターポリマーであるか、あるいは前記官能性エチレンコポリマーが、(d)エチレン、(e)前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5から約20重量%の量で存在する前記アルキルモノエステル、および(f)酢酸ビニル、アクリル酸アルキル、およびメタクリル酸アルキルからなる群から選択され、前記官能性エチレンコポリマーの総重量を基準にして約5重量%までの量で存在する前記1種類または複数種類のモノマーから誘導される共重合された単位を含むか、あるいは前記エチレン酸コポリマーおよび前記官能性エチレンコポリマー中に存在する合計したカルボン酸部分の少なくとも一部が、1種類または複数種類のアルカリ金属、遷移金属、またはアルカリ土類金属陽イオンによって中和されるか、あるいは前記組成物が、ポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、および無水マレイン酸グラフトポリマーからなる群から選択される非イオノマー熱可塑性材料をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の組成物を含む造形品。
【請求項13】
溶融押出成形、押出ブロー成形、同時押出ブロー成形、オーバーモールド成形、熱成形、異形押出成形、射出成形、圧縮成形、積層成形、切断、およびロール練りからなる群から選択される1つまたは複数の方法によって形成される、請求項12に記載の造形品。
【請求項14】
ボトル、燃料タンク、コンテナ、異形材、チューブ、ペレット、スラグ、ロッド、およびロープからなる群から選択される請求項12または請求項13に記載の造形品。

【公表番号】特表2011−521802(P2011−521802A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507671(P2011−507671)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/042465
【国際公開番号】WO2009/135098
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】