説明

エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用するための、自立性、耐熱性微多孔質フィルム

エネルギー貯蔵デバイス(70、100)において使用するために作製された自立性、耐熱性微多孔質ポリマーフィルム(10)の好ましい実施形態では、優れた高温機械及び寸法安定性を示すための以下のアプローチ:孔隙率(18)を維持させ且つ低熱収縮を達成するための多孔質ポリオレフィンフィルムへの十分に高い充填量の無機又はセラミックフィラー材(16)の組み込み;高無機材充填ポリオレフィンフィルムのポリマーマトリックス(14)の架橋に寄与させるための架橋性ポリエチレンの使用;及び高い孔隙率を維持しながら残留応力を低下させるためのポリマーマトリックスの融点温度以上での二軸延伸、高無機材充填ポリオレフィンフィルムの熱処理又はアニール;のうちの1つ又はそれ以上が実施されている。この自立性、耐熱性微多孔質ポリマーフィルム実施形態は、4.5未満のMacMullin数によって証明されるように、極めて低い抵抗を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマーマトリックスを含有し、そのポリマーマトリックスの融点以上の温度で低収縮を呈し且つ高孔隙率を維持する自立性、無機材充填、ポリオレフィンフィルムの形成に関する。開示されるポリマーフィルムは、リチウムイオンバッテリー等の、エネルギー貯蔵デバイスの性能及び安全性を改善するのに用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
セパレーターは、リチウムイオンバッテリーの性能、安全性、及びコストに材料面から寄与している。正常動作の間、セパレーターの主な機能は、アノードとカソード間の電子伝導(すなわち、短絡又は直接接触)を防ぐ一方、その電解質を介してのイオン伝導を許容することである。外部短絡や過充電等の、誤用状態下にある小型商業電池に対しては、セパレーターは、熱暴走が起こり得る温度より十分低い温度でシャットダウン(閉鎖)することが求められている。シャットダウンは、そのセパレーターを形成しているポリマー材の溶融及び粘性流動の結果としての、セパレーターの孔の崩壊から生じる。孔崩壊は、電極間のイオン流動を減速又は停止させる。ほぼすべてのリチウムイオンバッテリーセパレーターには、単一又は多層構造体の一部としてのポリエチレンが含有されており、その結果シャットダウンは、ポリエチレンの融点である、約130℃で始まる。
【0003】
リチウムイオンエネルギー貯蔵デバイス市場向けセパレーターは、現在「ドライ」又は「ウェット」プロセスにより生産されている。Celgard LLC他は、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)を薄いシートに押し出して急速ドローダウンに付すドライプロセスを記載している。このシートは、この後そのポリマー融点の10〜25℃下の温度でアニールされ、その結果、結晶子サイズ及び配向がコントロールされる。シートは、この後、スリット様孔又は空隙をもたらすためにマシン方向(MD)に急速延伸される。このドライプロセスにより製造される三層PP/PE/PPセパレーターは、一般的には、リチウムイオン再充電可能バッテリーに用いられる。
【0004】
高分子量ポリエチレンからなるウェットプロセスセパレーターは、可塑剤/ポリマー混合物を高温で押し出し、その後相分離させ、二軸延伸し、そして孔形成材(すなわち、可塑剤)を抽出することによって製造される。得られるセパレーターは楕円形又は球形の孔を有し、マシン方向(MD)及び横方向(TD)に良好な機械物性を有する。Tonen、Asahi、SK、及びENTEK Membranes LLCによるウェットプロセス技術に従って生産されるPE系セパレーターは、リチウムイオンバッテリーに広く用いられている。
【0005】
より最近のこととして、商業使用で起こっているバッテリー故障は、シャットダウンが安全性を保証するものではないことを実証した。主な理由は、バッテリーセパレーターがシャットダウンした後、そのポリマー融点以上での残留応力と低下した機械物性が、セパレーターの収縮、引き裂き、又はピンホール形成を引き起こし得るということである。露出した電極はこの後接触して、さらなる加熱、熱暴走、及び爆発に至る内部短絡を引き起こし得る。
【0006】
ハイブリッド電気車両(HEV)又はプラグインハイブリッド電気車両(PHEV)用途用に設計される大型仕様リチウムイオン電池の場合には、セパレーターシャットダウンの効果は公然と問題視されている。その理由は、電池全体に亘ってのシャットダウンの十分な速さと均一性を保証することが難しいからである。そういうことで、バッテリー設計者は、セパレーターシャットダウンが含まれ得ると考えられる故障モードを装置レベルで取り扱うことが期待されている。例えば、外部短絡は、その車両内での機械的な設計及び配置によって防止し得る。過充電、過放電、及び高速放電は、バッテリーマネージメントシステム(BMS)によってコントロールされる。熱保護も、組み込み式能動冷却装置・受動冷却装置の一方又は双方を用いて、装置レベルで取り扱われ得る。もう一つの考慮すべき事柄は、これらのバッテリーは高電圧スタックとしてアセンブルされていることであり、この場合、1つの電池のシャットダウンは、例えば、そのシャットダウンした電池がその電気直列ストリング中の他の電池によって電圧反転になるよう駆動される場合はそれ自体が問題を引き起こし得る。
【0007】
多くの企業は、それゆえ、(1)耐熱性セパレーター、又は、(2)電極か又は従来型ポリオレフィンセパレーターにコートされた耐熱層を含むようにリチウムイオンバッテリーの作製を改変することに焦点を合わせている。高温度ポリマー(例えば、ポリフェニレンスルファイド)からなる耐熱性セパレーターが、溶液キャスト、エレクトロスピニング、又は他のプロセス技術により限定された規模で製造されたことがある。このケースでは、その高いポリマー融点は、200℃より下の温度でのセパレーターシャットダウンを防止する。
【0008】
(特許文献1)には、負電極に無機フィラーとポリマーバインダーとからなる多孔質耐熱層をコートすることが記載されている。無機フィラーとしては、マグネシア、チタンチア、ジルコニア、アルミナ、又はシリカが挙げられていた。ポリマーバインダーとしては、ポリビニリデンフロライド、及び、アクリロニトリル単位含有変性ゴム混合物が挙げられていた。その耐熱層には毎100重量部の無機フィラーに対して1〜5重量部のバインダーが含まれていた。より高いバインダー含有量は、そのバッテリーの高速放電特性に悪影響を与えた。さらには、この多孔質耐熱層の厚みは、高放電速度をもたらすためには、1〜10μmに限られなければならなかった。
【0009】
(特許文献2)及び(特許文献3)には、有機/無機コンポジットセパレーターが記載されており、この場合は、多孔質基体が、その多孔質基体の少なくとも一方の面に活性層が形成されるよう無機粒子と種々のポリマーバインダーのうちの1つとの混合物でコートされている。この多孔質基体は、不織布、膜、又はポリオレフィン系セパレーターであり得る。無機粒子は、以下:5より大きい誘電率;圧電性;及びリチウムイオン伝導性;のうちの1つ又はそれ以上を呈するものからなる群から選択される。このコンポジットセパレーターは、リチウムイオンバッテリーに用いられる非コートポリオレフィン系セパレーターに比較して、優れた熱安全性、寸法安定性、電気化学安全性とリチウムイオン伝導性、及び電解質による高膨潤度を呈するとされている。
【0010】
Evonik(Dresden,Germany)は、ポリエステル不織膜のそれぞれの面に無機バインダーゾル多孔質セラミック層をコートすることにより耐熱性セパレーターを製造したことがある。この膜は、優れた熱安定性を有していたが、極めて低い機械的完全性を有し(例えば、引っ張り歪<10%)、これは、バッテリーアセンブリの際に問題を引き起こした。その無機粒子も、そのセパレーター表面から簡単に脱落することが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,638,230号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0292968号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0111025号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記アプローチのそれぞれでは、耐熱性を賦与して、高温、誤用状態下にあるバッテリー中の内部短絡を防止するために、無機材充填層が、電極又は多孔質基体上に二次コート工程で適用される。この無機充填層は、その記載されている各組成物が、自立性多孔質シート又はフィルムを形成させるための十分な機械的完全性を賦与しないので、コートとして適用される。「自立性」とは、エネルギー貯蔵デバイスアセンブリに用いられるためのフィルム形態での巻き取りや巻き戻しのような操作を可能にする十分な機械物性を有しているフィルムのことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記限界が、ポリマーマトリックスの融点以上の温度(>135℃)での低収縮を賦与する一方、高孔隙率は維持するための十分な無機フィラー粒子を含有している自立性、微多孔質、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)系フィルムを発明する動機であった。そのような自立性、耐熱性フィルムは、リチウムイオンバッテリー等のエネルギー貯蔵デバイス中の内部短絡を防止するために、単独で又は従来型ポリオレフィンセパレーターとの組み合わせで用いられ得る。
【0014】
(発明の要旨)
自立性、耐熱性微多孔質ポリマーフィルムの好ましい実施形態は、エネルギー貯蔵デバイス用途用に構成されている。このポリマーフィルムは、薄く、第1及び第2の反対側の面を有し、そして無機フィラー材を結着しているポリマーマトリックスを含んでいる。そのポリマーマトリックスは、三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を有している微多孔質フィルムを形成するための十分な分子鎖絡み合いをもたらす分子量である超高分子量ポリエチレンを含有している。その結着された無機フィラー材は、ポリマーフィルムの第1の面から第2の面までの孔・ポリマー網目構造全体に亘って大体均一に分散されている。この微多孔質フィルムは、自立特性を呈し、約60%より大きい体積分率を包容している孔を有する。その無機フィラー材は、微多孔質フィルムの孔隙率を維持させ且つそのポリマーマトリックスの融点温度を超える温度での低熱収縮を達成させるのに十分に高い充填量で存在している。
【0015】
この自立性、耐熱性微多孔質ポリマーフィルムの好ましい実施形態の製造では、優れた高温機械・寸法安定性を示すように、以下のアプローチ:(1)孔隙率を維持し且つ低熱収縮を達成させるための多孔質ポリオレフィンフィルムへの十分に高い充填量の無機又はセラミックフィラー材の組み込み;(2)高度無機材充填ポリオレフィンフィルム中のポリマーマトリックスの架橋に寄与させるための架橋性ポリエチレンの使用;及び(3)残留応力を低下させる一方で高い孔隙率は維持するためのポリマーマトリックスの融点温度以上での二軸配向、高度無機材充填ポリオレフィンフィルムの熱処理又はアニール(熱処理及びアニールはこの文書全体を通して置き換え可能な用語として使われている);のうちの1つ又はそれ以上が実施された。
【0016】
この開示された自立性、耐熱性微多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を少なくとも一部利用している。ポリエチレンの繰り返し単位は、(−CHCH−)(ここで、xは、個々のポリマー鎖中の繰り返し単位の平均数を表す)である。多くのフィルム及び成型部品用途に用いられるポリエチレンの場合には、xは、約10,000であるが、UHMWPEでは、xは、約110,000(3.1×10gm/mol)である。繰り返し単位の数におけるその広大な差が、より高度の鎖絡み合い並びにUHMWPEに伴うその独特の物性をもたらしている。
【0017】
UHMWPEの1つのそのような物性が、その融点温度以上に加熱された時のそれ自体の重量下での物質流動に抵抗するその能力である。この現象は、UHMWPEの超高分子量、及び、それに伴う、高温でさえ示すような長い緩和時間の結果である。それゆえ、UHMWPEは一般的に入手可能ではあるが、繊維、シート、又は膜の形態に加工するのは難しい。この高溶融粘度は、典型的には、その得られるゲルが有用な形態に加工され得るようにそのポリマー鎖の絡み合いを解除するための相溶性のある可塑剤及び二軸押出機の使用を決定づける。このアプローチは、「ゲルプロセス法」と一般的に呼ばれ、その可塑剤を抽出すると多孔質フィルム又はシートが得られる。用語「フィルム」及び「シート」は、この開示された実施形態に従って作られる製造物を記述するのにこの特許出願全体を通して置き換え可能に使われており、そして用語「ウェブ」は、フィルム及びシートを包含するように使われている。
【0018】
UHMWPEのもう1つの物性は、大量の無機フィラー材を多孔質フィルム中に結着させるその能力である。例としては、鉛−酸バッテリーセパレーター中のシリカ、及び、通気膜中の炭酸カルシウムが挙げられる。後者のケースでは、その多孔質フィルムは、そのポリマー融点温度以上での耐熱抵抗を賦与するのには不十分なフィラー材を含有しており、そして前者のケースでは、その多孔質フィルムは、リチウムイオンバッテリーに用いるのには厚すぎる(約150μmより厚い)。
【0019】
この自立性微多孔質フィルムのいくつかの好ましい実施形態は、そのポリマーマトリックスの機械強度を増大させ、それによって収縮する傾向を低下させるための架橋性ポリエチレンを含有している。架橋ポリエチレン(XLPE)は、ケーブル及びワイヤー産業における絶縁材や家庭給湯システムのパイプ用断熱材のような重要な用途を有している。XLPEをバッテリーセパレーター用途に用いるための2〜3の試みもなされており、典型的には反応性ポリマー又はそのポリマーを架橋するための電子線技術を用いている。
【0020】
オルガノシラングラフトポリエチレンは、通常のポリエチレンが加工されるのと同じようにして加工され得るし、あるいはUHMWPEの「ゲルプロセス法」との組み合わせでも加工され得る。このグラフト材の架橋は、高温で微量の水に曝すことによって誘発され、これによってそのアルコキシ基の加水分解と縮合が引き起こされて、シロキサン架橋が形成される。この架橋反応は、通常は、触媒を組み込むことによって加速される。共有結合によるポリエチレン鎖の架橋は、そのポリマーマトリックスが高温で流動するのを防止し、これによって微多孔質フィルムの収縮挙動が低下する。この方法は、より高い穿孔抵抗等のより良い機械物性の向上を促進する。
【0021】
熱処理又はアニールは、高度無機材充填、微多孔質フィルムの高温収縮を効果的に低下させる。ポリマーアニールは、典型的には、そのポリマー部材をその融点近くの温度まで加熱し、その後そのポリマー部材を元の周囲条件までゆっくり冷却させることを伴う。アニールは、その非晶質相配向を緩和し、その結晶構造を完全なものにするので、これによってポリマーはより硬質になる。さらには、ポリマー部材をその融点温度以上でアニールすることは、その部材がより高い熱条件を耐え抜いたこと、したがって高温に再度曝された時に変形に持ちこたえるであろうことを確実なものにする。この方法は、その無機フィラー材が有意なポリマー流動を制限するので、したがって高アニール温度でのフィルム孔隙率を保持するので、高度充填、UHMWPE系フィルムには有望である。
【0022】
第1の好ましい実施形態では、自立性、耐熱性微多孔質フィルムは、UHMWPE、無機フィラー粒子(例えば、フュームドアルミナ)、及び可塑剤(例えば、ミネラルオイル)を組み合わせることによって生産される。UHMWPEと無機フィラー粒子との混合物が十分な量の可塑剤とブレンドされ、可塑剤とブレンドされたこの混合物が押出されて、均質、粘稠塊体が形成される。この塊体が、ブローフィルム、キャストフィルム、又はカレンダー法を用いて加工されて、適切な厚み(約250μm未満)のオイル充填フィルムが得られる。このオイル充填フィルムは、その厚みを減らし、その機械物性に影響を与えるためにさらに二軸延伸され得る。抽出工程で、このオイルが溶媒で除去され、その溶媒がこの後蒸発されて、自立性、耐熱性微多孔質フィルムが製造される。
【0023】
第2の好ましい実施形態では、自立性、耐熱性微多孔質フィルムを形成させるための必要な分子鎖絡み合いをもたらすのに十分な分子量のUHMWPEをそのような量で含有している、ポリマーマトリックスが、所与の電解質と適合性がある無機フィラー材を結着している。この得られる自立性、耐熱性微多孔質フィルムが、パッケージ中に巻かれ又はスタックされ、そしてその孔が電解質で満たされる。このフィルムは、エネルギー貯蔵デバイス、例えば、バッテリー、リチウムバッテリー、キャパシタ、スーパーキャパシタ、又は燃料電池中の各電極を隔てるのに用いられる。用語「リチウムバッテリー」には、再充電可能化学及び再充電不可化学のいずれもが含まれる。再充電可能バッテリーの例はリチウムイオンバッテリーであり、そして再充電不可バッテリーの例はリチウム金属バッテリーである。このポリマーマトリックスの効果の1つは、アノードとカソードの隣接層間に、緊密な接触又は接合を形成させるためにそれが用いられ得ることであり、そしてそれを潜在的にもたらし得ることである。
【0024】
第3の好ましい実施形態では、XLPEを含有している、ポリマーマトリックスが、自立性、耐熱性微多孔質フィルムを形成させるのに用いられる。このポリマーマトリックスの効果の1つは、それが少なくとも部分的に架橋されていて、ポリマー流動により容易に抵抗することができ、それによって高温でのフィルム孔隙率を維持することができることである。
【0025】
第4の好ましい実施形態では、無機フィラー材が、優れた濡れ特性と少なくとも60%の体積分率を包容している孔隙率とを有する自立性、耐熱性微多孔質フィルムをもたらさすためにその構造及び電気化学適合性に基づいて選択される。迅速な濡れ及び充填時間短縮は、エネルギー貯蔵デバイスの生産にとって有益であり、他方、高い孔隙率とコントロールされた孔サイズ分布は、その微多孔質フィルムに低インピーダンスを賦与する。
【0026】
第5の好ましい実施形態では、無機フィラー材を含有しているこの自立性微多孔質ポリマーフィルムは、シャットダウン特性を呈する従来型、非充填ポリオレフィンフィルム(すなわち、セパレーター)に隣接して配置される。この2つのフィルムは、場合により、互いに接合されていて良いしまた接合されていなくても良い。この配置は、リチウムイオンバッテリーに用いられるためのこの2つのフィルムの最善の特徴−その無機フィラー充填微多孔質フィルムのその高温寸法安定性、及び、その非充填ポリオレフィンフィルムのそのシャットダウン特性−を組み合わせるものである。
【0027】
さらなる態様及び利点は、同伴の図面を参照しながら進められる、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】自立性、無機材充填微多孔質フィルムの拡大図を断面で示している模式図である。
【図2】図1の微多孔質フィルムのバルク部分を倍率を上げて示している模式図である。
【図3A】図1に図示されているタイプのフュームドアルミナ充填微多孔質フィルムの表面走査電子顕微撮像(SEM)の2つの並んだ図を、異なる倍率で示している。
【図3B】図1に図示されているタイプのフュームドアルミナ充填微多孔質フィルムの凍結割断断面SEMの2つの並んだ図を、異なる倍率で示している。
【図4A】図1に図示されているタイプの沈降シリカ充填微多孔質フィルムの2つの並んだ図を、異なる倍率で示している。
【図4B】図1に図示されているタイプの沈降シリカ充填微多孔質フィルムの凍結割断断面SEMの2つの並んだ図を、異なる倍率で示している。
【図5A】沈降シリカ充填微多孔質フィルムの、165℃でのアニール前の、そのモーフォロジーの比較を示している表面SEMである。
【図5B】沈降シリカ充填微多孔質フィルムの、165℃でのアニール後の、そのモーフォロジーの比較を示している表面SEMである。
【図6】サンプルセパレーターの電気抵抗測定を行うための付属部品に動作可能に接続されたグローブボックスのブロック線図である。
【図7】電気抵抗測定に用いられるシリカ充填、二軸延伸微多孔質フィルムサンプルセパレーターのEISプロットである。
【図8】セパレーターの複数層に対して100KHzで測定されたインピーダンスの実成分のプロットである。
【図9】従来型、非充填ポリオレフィンフィルムと図1の自立性、無機材充填微多孔質フィルムとの多層セパレーターアセンブリを示している。
【図10】図1の微多孔質フィルムが一構成要素となっている円筒形非水性二次バッテリーの半分部分の内部の部分展開図である。
【図11】図1の微多孔質フィルムが一構成要素となっている角形非水性二次バッテリーの一部分の内部の部分展開図である。
【図12】図10及び11のバッテリーの作製と大体同じようにして作製された直列接続非水性二次電池を含んでなるバッテリーパックのブロック線図である。
【図13A】原動力を伝達してモーター車両の車輪を回転させるための、図12のバッテリーパックで少なくとも一部が実施されたモーター伝動機構のさまざまな構成のうちの1つのブロック線図である。
【図13B】原動力を伝達してモーター車両の車輪を回転させるための、図12のバッテリーパックで少なくとも一部が実施されたモーター伝動機構のさまざまな構成のうちの1つのブロック線図である。
【図13C】原動力を伝達してモーター車両の車輪を回転させるための、図12のバッテリーパックで少なくとも一部が実施されたモーター伝動機構のさまざまな構成のうちの1つのブロック線図である。
【図13D】原動力を伝達してモーター車両の車輪を回転させるための、図12のバッテリーパックで少なくとも一部が実施されたモーター伝動機構のさまざまな構成のうちの1つのブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
記載された微多孔質フィルム実施形態の製造に用いられる好ましい高分子材は、超高分子量ポリオレフィンである。最も好ましく用いられるポリオレフィンは、少なくとも10デシリットル/グラムの固有粘度、そして好ましくは約14〜18デシリットル/グラムより大きい固有粘度を有している超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。開示されたフィルム実施形態に有用なUHMWPEの固有粘度には上限があるとは考えていない。現在入手可能な市販UHMWPEの固有粘度の上限は、約29デシリットル/グラムである。
【0030】
可塑剤は、そのポリマーの非蒸発性溶媒であって、好ましくは室温で液体状態である。可塑剤は、そのポリマーに対して室温ではほとんど又はまったく溶媒和効果を持っていなく、そして可塑剤は、そのポリマーの軟化温度の温度又はそれ以上の温度で溶媒和作用を発揮する。UHMWPEでは、溶媒和温度は、約160℃以上であると考えられ、そして好ましくは約160℃〜約220℃の範囲内にある。好ましい可塑剤は、プロセッシングオイル、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、又はこれらオイルの2つ又はそれ以上の混合物である。適するプロセッシングオイルの例としては、Shell Oil Companyから販売されているオイル(例えばGravex(商標)942);Calumet Lubricantsから販売されているオイル(例えばHydrocal(商標)800);及びNynas Inc.から販売されているオイル(例えばHR Tufflo(登録商標)750);が挙げられる。
【0031】
プロセッシングオイルをフィルムから抽出するための溶媒は、その溶媒が、ポリマーマトリックス中に含有されている無機フィラー材に対して有害でなく且つその溶媒を蒸留によって可塑剤から分離することを実施可能にする沸点温度を有している限り、いかなる溶媒も用いられ得る。そのような溶媒としては、1,1,2−トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、l,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、メチレンクロリド、クロロホルム、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、ジエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、及びトルエンが挙げられる。場合によっては、抽出後にそのポリマーシート中に残留しているオイルが、電気化学的に不活性であるように、プロセッシングオイルを選択することが望ましい。
【0032】
無機フィラー材は、ポリマー系(例えば、シリコーンゴム)の補強剤として一般的に用いられているが三次元無機材網目構造構造体に比肩される充填量ではない。自立性、耐熱性微多孔質フィルムの生産では、ポリマーマトリックスとプロセッシングオイルの熱誘導相分離が、抽出されたフィルムが三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を有していることを確実なものにする。この構造が、イオン流動つまりフィルムの一方の面から反対側の面への輸送を確実なものにする。同じような原理で、相互接続ポリマー網目構造が、バルク構造全体を通しての負荷の伝達を確実なものにする。無機フィラー材は、ポリマー材とプロセッシングオイルの混合物に加えられるので、抽出されたセパレーター中では無機フィラー材は臨界濃度に到達するまでは孤立した凝集体として残る。単分散球体のケースでは、フィラー材18%の浸透限界体積分率が、一方のフィルム面から反対側の面までの相互接続された無機網目構造を確実なものにすると考えられる。無機フィラー材網目構造は、より低い体積分率で形成され得るが、但しこれは、そのフィラー材が、固体球の寸法次元よりも大きい寸法次元を有しているとしてのことである。
【0033】
処方によって無機フィラー材の体積分率をコントロールすることに加えて、最終のフィルム構造及び物性を仕立てるのには、インライン又はオフラインプロセス工程が用いられ得る。例えば、この自立性微多孔質フィルム中のフィラー材の体積分率を大きくするのには、抽出器−乾燥器プロセス態様及び熱アニールが用いられ得る。
【0034】
図1は、上述のモデルに基づいた自立性、無機材充填微多孔質ポリマーフィルム10を断面で示している模式図である。ポリマーフィルム10は、ポリマーマトリックス14を形成するポリマーフィブリル12(図2)を含有しており、そのポリマーマトリックスは、孔18を有している微多孔質ウェブ中で無機フィラー粒子16を結着している。ポリマーフィブリル12は、好ましくは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を、単独でか又は高密度ポリエチレン(HDPE)とのブレンドで含有している超高分子量ポリオレフィン材からできているフィブリルである。ポリマーフィルム10は、第1の主面24と第2の、反対側の主面26を有しており、この両者の間に、無機フィラー粒子16が大体均一に分散されている。主面24と26との間の距離はフィルム厚み28を表し、これは、好ましくは約5μm〜100μmである。
【0035】
図2は、ポリマーフィルム10のバルク部分の模式図であり、ポリマーマトリックス14、無機フィラー粒子16(図1)、及び孔18の相互関係を示している。超高分子量ポリオレフィンは十分な分子鎖絡み合いをもたらすものであり、その結果、ポリマーフィルム10は、三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を有しており、その網目構造は、孔18とポリマーフィブリル12、それぞれによって規定されている。無機フィラー粒子16は、一次粒子42の凝集構造40に組織化されており、これが、マトリックス14内にトラップされて、相互接続・相互貫入三次元無機フィラー網目構造を形成している。無機凝集体40と孔18の大体均一な分布が、ポリマーフィルム10のバルク構造全体に亘って存在している。この三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、エネルギー貯蔵デバイス用途におけるイオン流動つまり一方の面24から他方の面26への輸送を確実なものにし、そしてその相互接続ポリマー網目構造が、加えられた負荷の、ポリマーフィルム10のバルク構造全体を通しての伝達を確実なものにする。
【0036】
三次元無機網目構造の結果として、微多孔質ポリマーフィルム10は、ポリマー融点温度以上の温度での低収縮を呈し、これによって、誤用状態下にあるエネルギー貯蔵デバイス中の内部短絡を防止するのに必要な耐熱性がもたらされる。
【0037】
自立性、耐熱性微多孔質フィルム10には、あらゆる種類の無機フィラー粒子16が潜在的には用いられ得るが、但しこれは、フィラー粒子16が、微多孔質フィルム10が構成部材となっているエネルギー貯蔵デバイスの電解質と適合性があるとしてのことである。一部のケースでは、無機フィラー粒子16は、電解質との適合性を補助するために、あるいは他の物性(例えば、疎水性)を賦与するために表面処理を有し得る(例えば、ジメチルシラザン処理沈降シリカ)。他のケースでは、無機フィラー材は、適合性を確実なものにするためのコア−シェル構造(例えば、アルミナコートシリカ)を有する一次粒子42を含有し得る。さらに、微多孔質フィルム10は、電解質又はその構成成分との反応を防止するために適切に乾燥されていなければならないことがあり得る。
【0038】
図3Aは、自立性、67wt%フュームドアルミナ充填微多孔質フィルムの表面SEMを示しており、図3Bは、その凍結割断断面SEMを示しており;図4Aは、自立性、69wt%沈降シリカ充填微多孔質フィルムの表面SEMを示しており、図4Bは、その凍結割断断面SEMを示している。図3A、3B、4A、及び4Bのそれぞれは、10μm尺度マーカーを有する左側画像、及び、1μm尺度マーカーを有する右側画像を呈示している。図3A及び3Bを参照して、各場合、孔隙率と無機フィラー材凝集体の均一な分布が表面に観察され、図4Aのシリカ充填微多孔質フィルムは、図3Aのアルミナ充填微多孔質フィルムに比較してより高度に配向・伸張されたポリマーフィブリルを有している。凍結割断断面SEMも、図4Bのシリカ充填微多孔質フィルムのポリマー配向が、図3Bのアルミナ充填微多孔質フィルムの配向よりもより高度であることを示している。
【0039】
多孔質セラミックコートを有するセパレーターとは違って、図3A及び3Bに示されているフィルム及び図4A及び4Bに示されているフィルムには、そのUHMWPEマトリックス内に、脱落せず、また剥離もしない無機フィラー粒子がトラップされている。多くの無機フィラー粒子は10μm〜50μmの出発粒子サイズを有しているが、その押出工程は、無機フィラー材をサブミクロン粒子サイズの凝集体に細分するように設計されている。この無機フィラー粒子の均一分散と三次元網目構造の形成は、約135℃〜約200℃での低熱収縮を持つ微多孔質フィルムを確立させるのに材質的に寄与している。
【0040】
アニールは、一般的には、ポリマー鎖再配置によりポリマーフィルム中の残留応力を低下させるために行われる。高温での無機材充填微多孔質フィルムの寸法安定性をアニールは向上させ得るが、アニールはまた微多孔質フィルムのモーフォロジーに影響を与え得る。図5A及び5Bは、それぞれ、165℃でのアニール前及び後の表面モーフォロジーを比較するためにシリカ充填微多孔質フィルムの表面SEMを、1μm尺度マーカーを付して示している。図5Aと5Bの比較は、示されている微多孔質フィルムでは、ポリマーフィブリルは癒合し、そのポリマーマトリックスの表面積は、アニールの後では低下していることを明らかにしている。
【実施例】
【0041】
以下の実施例1〜12は、開示された組成物としての自立性、耐熱性微多孔質フィルムの実施形態の物性及び特性に関している。この組成物の実施形態のそれぞれでは、UHMWPE及び無機フィラー材を十分な可塑剤と適切な温度で合わせて、均質、粘稠塊体を形成させ、これを二軸配向させ、その後抽出して、自立性、耐熱性微多孔質フィルムを形成している。これらのフィルムを形成するのに用いた無機フィラー及びポリマーマトリックスは、さまざまである。
【0042】
実施例1〜3は、自立性、耐熱性沈降シリカ充填微多孔質フィルムの7つの処方の製造及び分析についての基本情報を提供している。実施例1は、プロセスオイル充填シートの7つの処方の製造を詳述しており;実施例2は、ポリマーシートのロールの二軸延伸、及びその後の、ポリマーシートのロールからのプロセスオイルの除去を説明しており;及び実施例3は、実施例1に開示されている各処方のうちの1つについてのアニールの、厚み、空気浸透性、及び穿孔強度に対して及ぼす影響を示している。
【0043】
(実施例1)
表1に列挙されている7つの処方(文字A〜Gで標識されている)からプロセスオイル充填シートを製造した。それぞれの処方に対しては、水平ミキサーにすべての乾燥成分を入れ、それを低速撹拌でブレンドすることによってそのミキサー中で各成分を合わせて、均質なミックスを形成させた。このブレンドされた乾燥各成分に熱プロセスオイルをスプレーし、そしてこの混合物を、この後約215℃の溶融温度で運転されている96mm異方向回転二軸押出機(ENTEK Manufacturing,Inc.)にフィードした。この押出機の口部のところでさらなるプロセスオイルをインラインで加え、およそ65wt%〜68wt%の最終プロセスオイル含有量を得た。得られた溶融物をシートダイに通してカレンダーにしたが、この方法では、その押出物厚みを150μm〜200μmの範囲内にコントロールするのにギャップを用いた。
【0044】
(表1)
【表1】

【0045】
オイル充填シート(450mm〜500mm幅)をボール紙コアに巻き、このプロセスオイル充填シートロールを後の二軸配向のために取っておいた。
【0046】
(実施例2)
表1に列挙されている7つの処方から製造されたプロセスオイル充填シートを、Parkinson Technologies Inc.(Woonsocket,Rhode Island)から販売されているMachine Direction Orientation and Tenter Frame装置を用いてマシン方向(MD)及び横方向(TD)に、順次、延伸した。プロセスオイル充填シートを高温(115℃〜121℃)で延伸して、約10μm〜40μm厚のプロセスオイル充填フィルムを形成させた。この薄いプロセスオイル充填シートを、この後、運搬式抽出器−乾燥器ユニットで抽出したが、この方法では、プロセスオイルを除去するのにはトリクロロエチレンを用い、その溶媒を留去させるのには熱風を用いて、自立性、寸法安定な微多孔質フィルムを形成させた。
【0047】
この微多孔質フィルムを、厚み、空気浸透性(Gurley Model No.4340)、及び穿孔強度について試験した。
【0048】
Gurley Model No.4340 Automatic Densometerは、標準圧での空気浸透性を秒の単位で測定するものである。具体的には、Gurley値とは、100mlの空気が304Paの圧力差で6.45cmの面積を有するフィルムを通過するのに必要とされる時間を秒で測定したものである。
【0049】
微多孔質フィルムの%孔隙率は、以下:
フィルムのバルク体積:フィルムのサンプル固定面積(15.518cm)と測定された厚みから計算される;
フィルムの骨格密度:フィルムのシリカ対ポリマー比及びシリカの密度(2.2gm/cm)並びにUHMWPEの観測された密度(0.93gm/cm)から計算される;
固定面積サンプルの骨格体積:サンプルの骨格密度及びサンプルの測定された質量から計算される;及び
フィルムの孔隙率%=100×(バルク体積−骨格体積)/バルク体積;
から計算される。
【0050】
熱収縮評価では、フィルムを100mm×100mmサンプルに切り出し、これをこの後オーブンに200℃で1時間入れておいた。ポリマーマトリックスの酸化を防止するために、オーブンにはアルゴンガスを逆充填した。200℃曝露後、MD及びTD収縮をこの後室温までサンプルを冷却させた後それぞれのサンプルに対して計算した。
【0051】
表2は、さまざまな延伸比で製造された微多孔質フィルムの各対応データを示している。
【0052】
(表2)
【表2】

【0053】
(実施例3)
処方D及びEの各フィルムを、まず高温でアニール(すなわち、熱処理)し、その後続いて200℃でのMD及びTD収縮について試験した。表3に示すように、このアプローチは、二軸配向及びプロセスオイル工程と溶媒抽出工程からの残留応力を緩和させて、寸法安定性をさらに向上させるために用いられる。オンラインか又はオフラインプロセスによりアニールは行われ得る。
【0054】
(表3)
【表3】

【0055】
以下の実施例4及び実施例5は、それぞれ、UHMWPE単独、及び、XLPEとブレンドされたUHMWPEを含有しているポリマーマトリックスを含有する熱処理された、フュームド酸化アルミニウム充填微多孔質フィルムに対応している。
【0056】
(実施例4)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C,Evonikから入手可能)、267.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4120、Ticonaから入手可能)、4gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、及び750gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、1.86のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この混合粉末を27mm、同方向回転二軸押出機(Entek Manufacturing Inc.)にフィードする一方、さらなるプロセスオイルを注入口から押出機ゾーン#1に導入した(2.04kg/hで)。50mmダイスを有するブローフィルム装置、及び1.9mmギャップを用いて薄膜を押し出した。安定なバブルを4.2のブローアップ比及び1.98m/minのテイクアップ速度で確立して、330mm平置き幅(layflat)のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、67μm厚微多孔質フィルムを得た。このフィルムのGurley値は250秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、9.5%及び8.6%であった。
【0057】
(実施例5)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C、Evonikから入手可能)、180.8gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60gの架橋性ポリエチレン(Isoplas(登録商標)P 471、Micropolから入手可能)、3.7gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、1.5gの酸化防止剤(Irganox(登録商標)B215、Cibaから入手可能)、及び700gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.36のブローアップ比及び2.28m/minのテイクアップ速度で確立して、343mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、38μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は243秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、2.5%及び2.0%であった。
【0058】
以下の実施例6及び実施例7は、それぞれ、実施例6が沈降シリカフィラー材、実施例7が疎水沈降シリカフィラー材、及びUHMWPEとHDPEのブレンドを含有しているポリマーマトリックスを含有する熱処理された微多孔質フィルムに対応している。
【0059】
(実施例6)
以下の各成分:600gの沈降シリカ(Hi−Sil(登録商標)SBG、PPG Industriesから入手可能)、304gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4150、Ticonaから入手可能)、33gの高密度ポリエチレン(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、及び1gの滑剤(Petrac(登録商標)、Ferroから入手可能)で乾燥混合物を調製した。これらの材料を手で混合し、94℃に維持されている5050gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)にゆっくり加えて、スラリーを調製した。この処方は、1.78のフィラー対ポリマー重量比を有していた。このスラリーを27mm、同方向回転二軸押出機(ENTEK Manufacturing Inc.)に3.6kg/hで直接フィードした。50mmダイス及び1.9mmギャップを有するブローフィルム装置を用いて薄膜を押し出した。安定なバブルを3.15のブローアップ比及び2.7m/minのテイクアップ速度で確立して、248mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、45μm厚微多孔質フィルムを得た。このフィルムのGurley値は27秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、21.6%及び13.4%であった。
【0060】
(実施例7)
以下の各成分:疎水特性を賦与するために表面処理が施されている沈降シリカである、1200gの疎水沈降シリカ(Sipernat(登録商標)D10、Evonikから入手可能)、608gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4120、Ticonaから入手可能)、66gの高密度ポリエチレン(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、及び2gの滑剤(Petrac(登録商標)、Ferroから入手可能)で乾燥混合物を調製した。これらの材料を手動で混合し、94℃に維持されている10,100gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)にゆっくり加えて、スラリーを調製した。この処方は、1.78のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料を実施例6で述べたのと同じようにして加工した。安定なバブルを3.6のブローアップ比及び4.6m/minのテイクアップ速度で確立して、285mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、24μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は75秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、30.5%及び25.3%であった。
【0061】
以下の実施例8及び実施例9は、UHMWPEとHDPEのブレンドを含有しているポリマーマトリックスを含有する、それぞれ、31μm厚及び14μm厚、フュームド酸化アルミニウム充填微多孔質フィルムに対応している。実施例8及び9のフュームド酸化アルミニウムフィラー材は、異なる会社によって生産されたものである。
【0062】
(実施例8)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C、Evonikから入手可能)、182.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60.8gの高密度ポリマー(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、3.6gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、及び700gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.5のブローアップ比及び2.1m/minのテイクアップ速度で確立して、350mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、31μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は263秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、3.6%及び2.9%であった。
【0063】
(実施例9)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(SpectrAl(登録商標)100、Cabotから入手可能)、182.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60.8gの高密度ポリマー(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、3.7gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)及び600gのナフテン系ベースオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.5のブローアップ比及び3.0m/minのテイクアップ速度で確立して、350mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、14μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は137秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、2.8%及び3.3%であった。
【0064】
以下の実施例10は、原初のバッテリーセパレーターとフュームドアルミナコートバッテリーセパレーターについての200℃収縮試験の比較に対応している。フュームドアルミナは無機材である。この比較は、非コートバッテリーセパレーターはこの試験に生き残れなかったが、フュームドアルミナコートバッテリーセパレーターは収縮を呈することはほとんどなかったこと、シャットダウンの結果として光学透明になったことを明らかにしている。
【0065】
(実施例10・比較例)
市販バッテリーセパレーターである、Teklon Gold LP(ENTEK Membranes LLC(Oregon))を、バインダーとしてポリビニルアルコールを用いてフュームドアルミナで両面コートした。コート用溶液を以下の各成分:1153gのアルミナ/水懸濁液(CAB−O−SPERSE(登録商標)PG 008、Cabotから入手可能)、21gのポリビニルアルコール(MW=124,000〜186,000g/mol、Aldrichから入手可能)、192gのイソプロピルアルコール、及び664gの脱イオン水で調製した。このTeklon Gold LPセパレーターに対してはディップコート法を用いたが、この方法では、3.3m/minでコート用溶液の中にセパレーターを通し、その後120℃に加熱された乾燥トンネルの中に通した。この乾燥トンネルをセパレーターが出たとき、その乾燥、コートされたセパレーターを75mmIDボール紙コアに巻き取った。コートした後、その平均セパレーター厚みは、約12.1μmから約14.4μmに増え、そしてそのGurley値は、234秒から348秒に増えていた。200℃で1時間曝露後のこのコートされたセパレーターについてのMD及びTD収縮は、それぞれ、2.7%及び3.3%であった。非コート、Teklon GOLD LPセパレーターは、200℃で1時間曝露後では、小さな、透明塊体に縮んでいた。
【0066】
(実施例11)
電気抵抗(ER)又はインピーダンスは、エネルギー貯蔵デバイス用途に用いられる微多孔質フィルムの重要な測定物性である。図6は、Manostat Model 41−905−00グローブボックスの内部に配置されたサンプルセパレーター52に対して電気抵抗測定を行うのに用いられるステンレススチール製付属部品50の線図である(図6ではグローブボックスの隔壁54のみが示されている)。図6を参照して、付属部品50には、ステンレススチール製電極56及び58、サンプルセパレーター52中に含有されているリチウムヘキサフルオロホスファート電解質(1M LiPF/1:1エチレンカルボナート:エチルメチルカルボナート(EMC))60、及び100KHz〜1KHzの周波数範囲で動作するインピーダンスアナライザー(Gamry PC4 750)(図示されていない)が含有されている。図7は、処方Fのシリカ充填、微多孔質フィルムサンプルセパレーター52の電気抵抗測定に用いられる100KHz〜1KHzの電気化学インピーダンス分光分析(EIS)プロットである。図8は、100kHzで測定されるインピーダンスの実成分がセパレーター52の1層、2層、及び3層に対してプロットされているプロットである。測定された抵抗対セパレーター層数の線形近似の勾配は、サンプルセパレーター52の電気抵抗として採用される。
【0067】
4.5未満のMacMullin数によって証明されるように、自立性、無機質充填微多孔質フィルムに対して行われた電気抵抗測定は、極めて低い抵抗(インピーダンス)を示している。このMacMullin数(NMac)は、特定の電解質や動作条件(例えば、測定が行われる温度)に関係なく微多孔質フィルム又はセパレーター部材の抵抗を表すのに有用である無次元の比である。MacMullin数は、電解質飽和多孔質媒体の電気抵抗(r)対等体積(及び形状)電解質の抵抗(r)の比、すなわち、
Mac=r/r
としてCaldwell et al.の米国特許第4,464,238号明細書に定義されている。
【0068】
実験データからNMacを計算する際、Caldwell et al.は、Palico Instrument Laboratories(Circle Pines、Minnesota)から販売されている、Model 9100−2試験装置にコンセプトが似ている装置を図説している彼らの特許にある図1を言及し、そして以下の計算:
Mac=(r+r)/r+1
[ここで、
=セパレーターなしで測定された抵抗、
=セパレーターが配置されて測定された抵抗、
=セパレーターと同じ寸法を有する電解質体積の抵抗、及び
=ρ×t/A(ここで、
ρ=電解質の固有抵抗、
t=セパレーターの厚み、及び
A=イオン伝導が起こっている断面積)]
を採用している。
【0069】
混乱の源は、NMacの計算で付け足された「+1]である。この「+1]の議論は、Caldwell et al.の図1にあるデバイスを用いた、セパレーターの抵抗(r)の測定から来ている。特には、セパレーターなしでの測定(r)には、r中のセパレーターによって占有されている電解質体積の抵抗が包含されている。つまり、セパレーター抵抗の真の値(r)を得るためには、
r=r−(r−ρ×t/A)
つまり、その占有されている体積の抵抗をrから差し引かなければならない。
【0070】
この式をrでもう一度除し、そして再整理することにより、以下の結果:
Mac=(r+r)/r+1
が得られる。
【0071】
開示された微多孔質フィルムの各実施形態の抵抗の測定は、いくぶんか異なった装置及びアプローチ(図6)を用いて行われた。このケースでは、微多孔質フィルムの抵抗(r)の測定は、バス抵抗を差し引くことをなんら必要とすることなしに、直接行われる。したがって、以下:
Mac=r/r=r/(ρ×t/A)
のとおり、その計算はずっと簡単で、付け足される「+1」もない。
【0072】
表4は、実施例2の4つの選択された処方、実施例8及び9で製造された微多孔質フィルム、及び商業市販されている非充填のTeklon(商標)HPIPセパレーターについての厚み、面積抵抗、固有抵抗、及びMacMullin数をまとめたものである。
【0073】
(表4)
【表4】

【0074】
表4に示されている無機フィラー充填微多孔質フィルムの電気抵抗は、ENTEK Membranes LLCによって生産されているあらゆる非充填、リチウムイオンバッテリーセパレーターの中でも最も低いMacMullin数を有しているTeklon HPIPの電気抵抗よりも相当低い。表4に示されている微多孔質フィルムは室温(25℃)で測定される低抵抗値を有しており、そしてより低い動作温度ではそのような低抵抗値は維持されることが期待されるであろう。
【0075】
表5は、実施例10で述べた無機、アルミナ層コートバッテリーセパレーターの電気抵抗(インピーダンス)を示している。表4と表5との比較は、自立性、無機材充填微多孔質フィルムが、従来型、非コートポリオレフィンバッテリーセパレーター及び無機又はセラミックフィラー材コートポリオレフィンバッテリーセパレーターに比較して、相当低い抵抗(インピーダンス)を有していることを示している。
【0076】
(表5)
【表5】

【0077】
図9及び以下の実施例12は、無機フィラー粒子16含有自立性微多孔質ポリマーフィルム10と面対面で配置された従来型、非充填微多孔質ポリオレフィンフィルム66の多層セパレーターアセンブリ64を示している。セパレーターアセンブリ64は、自立性微多孔質ポリマーフィルム10の高温寸法安定性と非充填微多孔質ポリオレフィンフィルム66のサーマルシャットダウン特性を組み合わせるものである。
【0078】
(実施例12)
シリカ充填、オイル含有シートを表1の処方Eに従って生産した。このシートを実施例2に略述されている手順を用いてこの後二軸延伸(2.5MD×4.5TD)し、抽出し、そして乾燥させた。得られた自立性、シリカ充填微多孔質フィルムは、約21μmの厚み及び89秒のGurley値を有していた。12μm厚Teklon GOLD LPセパレーター(これはENTEK Membranes LLCから入手可能の微多孔質ポリマーフィルムである)をこのシリカ充填微多孔質フィルム上に配置した(しかし接合はしなかった)。この組み合わせ層構造体からディスクを打ち抜いてセパレーターアセンブリを形成させ、そしてその孔を電解質(1Mリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド/1:1プロピレンカルボナート:トリエチレングリコールジメチルエーテル)で濡れさせた。この電解質は、200℃までは一定のインピーダンスと低蒸気圧を呈するものである。この濡れたセパレーターアセンブリを2枚の非多孔質カーボンディスクの間にサンドイッチし、その後2枚の金属プラテンの間に配置した。次に、そのシャットダウン温度を測定するためにプラテンを25℃から180℃まで50℃/minで加熱しながら3.1MPa圧力を印加し、1KHzインピーダンスをモニターした。インピーダンスは25℃から100℃まではほぼ一定であった。約135℃で、セパレーターアセンブリのインピーダンスは上昇し始めた。1KHzインピーダンスが100℃での1KHzインピーダンスより1000倍高くなる温度と定義される、シャットダウン温度は、152℃であると測定された。個々のフィルムを同じ試験で調べたところ、Teklon GOLD LPは、約152℃のシャットダウン温度を呈したが、このシリカ充填フィルムは25℃から180℃までほとんどインピーダンスの変化を呈さず、シャットダウン温度も検出されなかった。
【0079】
自立性、無機材充填微多孔質フィルム10の好ましい実施は、バッテリーにおけるその使用である。バッテリーは化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。David Linden (Editor in Chief), Handbook of Batteries, 2nd ed., McGraw-Hill, Inc. (1995)に参照されるように、バッテリーのアノード及びカソードを形成させるのにはさまざまな電気化学活物質が用いられ得る。例となる電気化学活物質は、アノード用のカーボン及びカソード用の酸化コバルトリチウムである。図10と11は、開示された自立性無機材充填微多孔質フィルムが一構成要素となっている非水性リチウムイオン二次(すなわち、再充電可能)バッテリーの2つの例を示している。
【0080】
図10は、自立性、耐熱性無機材充填微多孔質フィルム72が一構成要素となっている円筒形非水性二次バッテリー70の半分部分の内部の部分展開図である。バッテリー70は、負電極(カソード)シート78と正電極(アノード)シート80との間に配置された微多孔質フィルム72の各構成要素がプレス合体された長いスパイラル構造体の形態にあるバッテリーアセンブリ76のための加圧円筒形金属エンクロージャ74を有している。バッテリーアセンブリ76は、上部絶縁体82と下部絶縁体84との間に配置されていて、電解質に沈められている。感圧式ベント86は、過圧力からバッテリー70が爆発する可能性のある点まで過熱した場合に金属エンクロージャ74から過剰圧力を開放する。正温度係数(PTC)スイッチ88は、バッテリー70が過熱するのを防ぐ。カソードエンクロージャカバー90はカソードリード線92に接続されており、そしてアノード端子94はアノードリード線96に接続されている。
【0081】
図11は、微多孔質フィルム72が一構成要素となっている、薄型形状非水性二次バッテリー100の一部分の内部の部分展開図である。バッテリー100は、バッテリーアセンブリ76に対して上述したように、負電極78と正電極80との間に配置されていて、電解質に沈められている微多孔質フィルム72を含有している角形バッテリーアセンブリ104のための大体長方形の断面の薄型エンクロージャ102を包含している。カソードエンクロージャカバー106はカソードリード線92に接続されており、そしてアノード端子108はアノードリード線96に接続されている。
【0082】
図12は、図10のバッテリー70及び図11のバッテリー100の作製と大体同じようにして作製された直列接続非水性二次電池122(10個図示されている)を含んでなるバッテリーパック120のブロック線図である。各電池122は、好ましくは電気モーター車両用途用に設計された大型仕様リチウムイオン電池である。この微多孔質フィルム72の高温機械及び寸法安定性は、巨視的及び顕微的尺度で、電極78及び80を物理的に離間させた状態に保持するものであって、これによって、HEV及びPHEV用途に用いられる大型仕様リチウムイオン電池の安全性が確実なものになる。バッテリーパック120の各電池122は相互接続リード線124によって電気的に接続されていて、スタック126に配置されており、そこでは2つの末端電池122はカソード出力リード線128及びアノード出力リード線130を具備している。
【0083】
電池スタック126にはバッテリーマネージメントシステム(BMS)が出力リード線128と130、及び、相互接続リード線124への電圧用及び温度検出用各接続線134によって接続されている。BMS132は、先の背景技術の項で論述したように、HEV又はPHEV用途用に設計された大型仕様リチウムイオン電池と共に用いられるタイプのものである。
【0084】
電池スタック122は、電池冷却ユニット(BCU)138の制御下にある各電池122及び電池122のための流体(空気又は液体)冷却系に物理的防護を賦与する適切な材質及び外形のエンクロージャ136に収容されている。
【0085】
図13A、13B、13C、及び13Dは、原動力を伝達してモーター車両の車輪148を回転させるための図12のバッテリーパック120で少なくとも一部が実施されているモーター伝動機構のさまざまな配置のブロック線図である。
【0086】
図13Aは、並列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター/発電機154を包含しているハイブリッド電気車両モーター伝動機構150のブロック線図である。図13Aを参照して、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター/発電機154に供給し、この電気モーター/発電機がこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、トランスミッション160を介して減速ギア158に接続されている。内燃機関152から伝達される動力は、モーター/発電機154及びインバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのにも用いられ得る。
【0087】
図13Bは、直列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター172を包含しているハイブリッド電気車両伝動機構170のブロック線図である。図13Bを参照して、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター172に供給し、この電気モーターがこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、発電機174に接続されている。機関駆動発電機174からの電力は、電気モーター172を駆動するのに又はインバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのに用いられ得る。
【0088】
図13Cは、直列−並列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター172を包含しているハイブリッド電気車両伝動機構180のブロック線図である。図13Cへの参照では、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター172に供給し、この電気モーターがこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、発電機174と動力スプリットデバイス182とに接続されており、この動力スプリットデバイスは、内燃機関152から伝達される動力を、車輪148を駆動する減速ギア158と発電機174とに分割するものである。機関駆動発電機174からの電力は、インバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのに用いられ得る。
【0089】
図13Dは、電気モーター/発電機154を包含している電気モーター車両伝動機構190のブロック線図である。図13Dへの参照では、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力をモーター/発電機154に供給し、このモーター/発電機がこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。バッテリーパック120は、車両にあるプラグインコネクター194を介して外部電力源192から再充電される。
【0090】
上述した実施形態の詳細には、本発明の根底にある原理から逸脱することなく多くの改変がなされ得ることは当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、したがって、以下の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。
【符号の説明】
【0091】
10 ポリマーフィルム
14 ポリマーマトリックス
16 無機フィラー粒子
18 孔
24 主面
26 主面
28 フィルム厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
無機フィラー材を結着していて、融点温度によって特徴付けられるポリマーマトリックス;
を含んでいる、エネルギー貯蔵デバイスにおいて使用するための、第1及び第2の反対側の面を有している自立性、耐熱性微多孔質ポリマーフィルムであって、
前記ポリマーマトリックスが、結着された無機フィラー材が第1の面から第2の面まで大体均一に分散されている三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を形成するために十分な分子鎖絡み合いをもたらす分子量である超高分子量ポリオレフィンを含有しており;及び
前記無機フィラー材が、ポリマーマトリックスの融点温度を超える温度での、自立性微多孔質ポリマーフィルムの低熱収縮を達成するのに十分に高い充填量で存在している;
前記微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項2】
超高分子量ポリオレフィンが、超高分子量ポリエチレンである、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項3】
超高分子量ポリエチレンが、架橋性ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又は超高分子量ポリエチレンの分子量よりも低い分子量である他のポリエチレンのうちの1つ又はそれ以上と組み合わせられている、請求項2に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項4】
三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、微多孔質ポリマーフィルムの孔隙率を規定しており、ポリマーマトリックスが、そのポリマーマトリックスの融点温度を超える温度への曝露の結果、高い孔隙率を維持する一方で低下した残留応力を呈するような、二軸配向され熱処理されたタイプのものである、請求項1に記載の多孔質ポリマーフィルム。
【請求項5】
無機フィラー材が、アルミナ又はシリカ、又はアルミナとシリカの組み合わせを含有している、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項6】
無機フィラー材が、表面処理されたシリカ又は表面処理されたアルミナ、又は表面処理されたシリカと表面処理されたアルミナの組み合わせを含有している、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項7】
相互接続・相互貫入孔網目構造が、約60%より大きい体積分率を包容する孔を有している、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項8】
三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、4.5未満の、MacMullin数(NMac)によって表される電気抵抗をもたらしている、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項9】
サーマルシャットダウン特性を有し、多層セパレーターアセンブリを形成させるように配置された非充填微多孔質ポリオレフィンフィルムをさらに含んでいる、請求項1に記載の微多孔質ポリマーフィルム。
【請求項10】
複数の電極を有し、電解質で満たされたパッケージ中に巻かれ又はスタックされたタイプのエネルギー貯蔵デバイスにおいて、以下:
自立特性を呈し、第1及び第2の反対側の面を有する耐熱性微多孔質ポリマーフィルムであって、前記ポリマーフィルムが、無機フィラー材を結着していて、融点温度によって特徴付けられるポリマーマトリックスを含有していること;
前記ポリマーマトリックスが、結着された無機フィラー材が第1の面から第2の面まで大体均一に分散されている三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を形成するための十分な分子鎖絡み合いをもたらす分子量及び量である超高分子量ポリオレフィンを含有していること;及び
前記無機フィラー材が、ポリマーマトリックスの融点温度を超える温度での、微多孔質ポリマーフィルムの低熱収縮を達成するのに十分に高い充填量で存在していること;
を含む改良がなされている、前記エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項11】
ポリマーマトリックス中に含有されている超高分子量ポリオレフィンが、超高分子量ポリエチレンである、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項12】
超高分子量ポリエチレンが、架橋性ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又は超高分子量ポリエチレンの分子量よりも低い分子量である他のポリエチレンのうちの1つ又はそれ以上と組み合わせられている、請求項11に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項13】
三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、微多孔質ポリマーフィルムの孔隙率を規定しており、ポリマーマトリックスが、そのポリマーマトリックスの融点温度を超える温度への曝露の結果、高い孔隙率を維持する一方で低下した残留応力を呈するような、二軸配向され熱処理されたタイプのものである、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項14】
ポリマーマトリックスによって結着された無機フィラー材が、アルミナ又はシリカ、又はアルミナとシリカの組み合わせを含有している、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項15】
ポリマーマトリックスによって結着された無機フィラー材が、表面処理されたシリカ又は表面処理されたアルミナ、又は表面処理されたシリカと表面処理されたアルミナの組み合わせを含有している、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項16】
微多孔質ポリマーフィルムの相互接続・相互貫入孔網目構造が、約60%より大きい体積分率を包容する孔を有している、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項17】
微多孔質ポリマーフィルム中に形成された三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、4.5未満の、MacMullin数(NMac)によって表される電気抵抗をもたらしている、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項18】
高温寸法安定性及びサーマルシャットダウン特性を有する多層セパレーターアセンブリを形成するように、無機材充填微多孔質ポリマーフィルムと面対面で配置された非充填微多孔質ポリオレフィンフィルムをさらに含んでいる、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
リチウムバッテリーである、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項20】
以下:
電解質で満たされたパッケージ中に含有され、自立特性を呈する耐熱性微多孔質ポリマーフィルムによって隔てられている複数の電極をそれぞれが有している複数の電気的に接続された二次電池;
無機フィラー材を結着し、融点温度によって特徴付けられるポリマーマトリックスを含有している、第1及び第2の反対側の面を有しているポリマーフィルム;
結着された無機フィラー材が第1の面から第2の面まで大体均一に分散されている、三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を形成するための十分な分子鎖絡み合いをもたらす分子量及び量である超高分子量ポリオレフィンを含有しているポリマーマトリックス;及び
ポリマーマトリックスの融点温度を超える温度での、微多孔質ポリマーフィルムの低熱収縮を達成するのに十分に高い充填量で存在している無機フィラー材;
を含む、バッテリーパック。
【請求項21】
複数の電気的に接続された二次電池のそれぞれの微多孔質ポリマーフィルム中に形成された三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、約60%より大きい体積分率を包容する孔を有している、請求項20に記載のバッテリーパック。
【請求項22】
複数の電気的に接続された二次電池のそれぞれの微多孔質ポリマーフィルム中に形成された三次元相互接続・相互貫入孔網目構造が、4.5未満の、MacMullin数(NMac)によって表される電気抵抗をもたらしている、請求項20に記載のバッテリーパック。
【請求項23】
以下:
交流電力を発生させるためのインバーターに直流電力を供給する、複数の電気的に接続された二次電池を包含しているバッテリーパックであって、前記複数の二次電池のそれぞれが、電解質で満たされたパッケージ中に含有され、自立特性を呈する耐熱性微多孔質ポリマーフィルムによって隔てられている複数の電極を有している、前記バッテリーパック;
無機フィラー材を結着し、融点温度によって特徴付けられるポリマーマトリックスを含有している、第1及び第2の反対側の面を有しているポリマーフィルム;
結着された無機フィラー材が第1の面から第2の面まで大体均一に分散されている、三次元相互接続・相互貫入孔・ポリマー網目構造を形成するための十分な分子鎖絡み合いをもたらす分子量及び量である超高分子量ポリオレフィンを含有しているポリマーマトリックス;
ポリマーマトリックスの融点温度を超える温度での、微多孔質ポリマーフィルムの低熱収縮を達成するのに十分に高い充填量で存在している無機フィラー材;
一組の車両車輪に動作可能に接続された減速ギア;及び
減速ギアに動作可能に接続されている電気モーターであって、インバーターによって発生させた交流電力に応答し、前記減速ギアに原動力を与え、それによって一組の車両車輪を回転させる、前記電気モーター;
を含む、電気モーター車両伝動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【公表番号】特表2012−521615(P2012−521615A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501014(P2012−501014)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/028055
【国際公開番号】WO2010/108148
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(501328762)アムテック リサーチ インターナショナル エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】