説明

エバポレータ

【課題】下ヘッダタンクからの凝縮水の排水性能を向上しうるエバポレータを提供する。
【解決手段】エバポレータの下ヘッダタンクは、タンク形成部材と、タンク形成部材の上面を覆う上面被覆部35およびタンク形成部材の前後両側面を覆う側面被覆部36を有する管接続用プレート31とからなる。上面被覆部35外面の前後方向に隣り合う熱交換管群4A間に、左右方向にのびる第1排水溝50を形成する。管接続用プレート31およびタンク形成部材に、第1排水溝50の溝底とタンク形成部材の下面とを通じさせる複数の排水穴47を形成する。上面被覆部35外面の左右方向に隣り合う熱交換管4間に、前後方向にのびる第2排水溝51を第1排水溝50と交差するように形成する。前側面被覆部36外面に、第2排水溝51に通じる上下方向にのびる第3排水溝52を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エバポレータに関し、さらに詳しくは、たとえばCO(二酸化炭素)などの超臨界冷媒が用いられ、かつカーエアコンとして車両に搭載される超臨界冷凍サイクルのエバポレータとして好適に使用されるエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「超臨界冷凍サイクル」とは、高圧側において、冷媒が臨界圧力を超えた超臨界状態となる冷凍サイクルを意味するものとし、「超臨界冷媒」とは、超臨界冷凍サイクルに用いられる冷媒を意味するものとする。
【0003】
さらに、この明細書および特許請求の範囲において、図1および図2の上下、左右をそれぞれ上下、左右というものとする。さらに、隣接する熱交換管どうしの間の通風間隙を流れる空気の下流側(図1に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【背景技術】
【0004】
たとえば車両のカーエアコンに適用される超臨界冷凍サイクルのエバポレータとして、従来、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向に長い1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に前後方向に間隔をおいて配置された複数列の熱交換管群と、左右方向に隣り合う熱交換管間に配置されたコルゲートフィンとを備えており、下ヘッダタンクが、タンク形成部材と、タンク形成部材の上面を覆う上面被覆部およびタンク形成部材の前後両側面の少なくとも上側部分を覆う前後両側面被覆部を有する管接続用プレートとからなり、熱交換管群が左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換管からなるものが知られている。
【0005】
しかしながら、このエバポレータにおいては、下ヘッダタンクの頂面とコルゲートフィンの下端との間に比較的多くの凝縮水が溜まり、空気側圧力損失が増大してエバポレータの性能が低下したり、凝縮水が飛散するおそれがある。
【0006】
そこで、このような問題を解決したエバポレータとして、本出願人は、先に、管接続用プレートの上面被覆部外面の前後両側縁部と前後両側面被覆部外面の上部とに跨るような排水ガイドが、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて複数形成されているものを提案した(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のエバポレータの場合、排水ガイドが、管接続用プレートの上面被覆部の前後両側縁部と前後両側面被覆部の上部とに跨るものであるから、管接続用プレートの上面被覆部の外面における前後の排水ガイド間に流下してきた凝縮水を効率良く排水することができず、その結果下ヘッダタンクからの凝縮水の排水性能が不足するおそれがあった。
【特許文献1】特開2006−29765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、下ヘッダタンクからの凝縮水の排水性能を向上しうるエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)上下方向に間隔をおいて配置された左右方向に長い1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に前後方向に間隔をおいて配置された複数列の熱交換管群と、左右方向に隣り合う熱交換管間に配置されたフィンとを備えており、下ヘッダタンクが、タンク形成部材と、タンク形成部材の上面を覆う上面被覆部およびタンク形成部材の前後両側面の少なくとも上側部分を覆う前後両側面被覆部を有する管接続用プレートとからなり、熱交換管群が左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換管からなるエバポレータであって、
管接続用プレートの上面被覆部外面における前後方向に隣り合う熱交換管群間に、左右方向にのびる第1排水溝が形成され、管接続用プレートおよびタンク形成部材に、第1排水溝の溝底とタンク形成部材の下面とを通じさせる複数の排水穴が、左右方向に間隔をおいて形成され、管接続用プレートの上面被覆部外面における左右方向に隣り合う熱交換管間に、前後方向にのびる第2排水溝が第1排水溝と交差するように形成され、管接続用プレートの前面被覆部の外面に上下方向にのびる第3排水溝が形成され、第3排水溝が第2排水溝に通じさせられているエバポレータ。
【0011】
2)排水穴が、第1排水溝と第2排水溝との交差部に形成されている上記1)記載のエバポレータ。
【0012】
3)第3排水溝が、ヘッダタンクの長さ方向に関して熱交換管と同一位置に形成されている上記1)または2)記載のエバポレータ。
【0013】
4)管接続用プレートの上面被覆部の外面における前端の熱交換管群よりも前方の部分に、左右方向にのびる長尺排水溝が、全第2排水溝の前端部と通じるように形成され、第3排水溝の上端部が管接続用プレートの上面被覆部まで延長されるとともに長尺排水溝に通じさせられ、第3排水溝が長尺排水溝を介して第2排水溝に通じさせられている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0014】
5)管接続用プレートの後側面被覆部の外面に上下方向にのびる第4排水溝が形成され、第4排水溝が第2排水溝に通じさせられている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0015】
6)管接続用プレートの上面被覆部の外面における後端の熱交換管群よりも後方の部分に、ヘッダタンクの長さ方向にのびる後側長尺排水溝が、全第2排水溝の後端部と通じるように形成され、第4排水溝の上端部が管接続用プレートの上面被覆部まで延長されるとともに後側長尺排水溝に通じさせられ、第4排水溝が後側長尺排水溝を介して第2排水溝に通じさせられている上記5)記載のエバポレータ。
【0016】
7)管接続用プレートの上面被覆部の外形、前後両側面被覆部、第1排水溝、第2排水溝、第3排水溝と第4排水溝、排水穴、前後の長尺排水溝、および前後の連通溝が、それぞれ管接続用プレートの上面被覆部の中心点に関して点対称となっている上記6)記載のエバポレータ。
【0017】
8)管接続用プレートの上面被覆部の外面が水平状である上記1)〜7)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0018】
9)管接続用プレートの上面被覆部および前後両側面被覆部の内面が平坦面である上記1)〜8)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0019】
10)下ヘッダタンクのタンク形成部材が、左右方向に伸びる少なくとも1つの外方膨出部を有する第1プレートと、管接続用プレートと第1プレートとの間に、第1プレートの外方膨出部の開口を塞ぐように介在させられるとともに両プレートに接合された第2プレートとよりなり、管接続用プレートにおける外方膨出部と対応する部分に、複数の管挿入穴が管接続用プレートの長さ方向に間隔をおいて貫通状に形成され、タンク形成部材の第2プレートに、管接続用プレートの各管挿入穴を第1プレートの外方膨出部内に通じさせる連通穴が貫通状に形成され、熱交換管の両端部が両ヘッダタンクの管接続用プレートの管挿入穴内に挿入されて管接続用プレートにろう付されている上記1)〜9)のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【0020】
11)コンプレッサ、ガスクーラ、エバポレータ、減圧器、およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えており、かつ超臨界冷媒を用いる冷凍サイクルであって、エバポレータが上記1)〜10)のうちのいずれかに記載のエバポレータからなる超臨界冷凍サイクル。
【0021】
12)超臨界冷媒が二酸化炭素である上記10)記載の超臨界冷凍サイクル。
【0022】
13)上記11)または12)記載の超臨界冷凍サイクルがカーエアコンとして搭載されている車両。
【発明の効果】
【0023】
上記1)のエバポレータによれば、超臨界冷凍サイクルの運転中に、後側(風上側)において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下してきた凝縮水は、第2排水溝内に入って前方(風下側)に流れ、あるいは上面被覆部上を前方に流れて第1排水溝内に入り、排水穴を通って下ヘッダタンクの下方に落下する。また、前側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下してきた凝縮水は、第2排水溝内に入って前方に流れて第3排水溝内に入り、第3排水溝内を下方に流れて下ヘッダタンクの下方に落下する。また、前側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下しかつ第2排水溝内に流入しなかった凝縮水は、上面被覆部上を前方に流れ、第3排水溝内に入って下方に流れ、あるいは前面被覆部に沿って下方に流れ、下ヘッダタンクの下方に落下する。こうして、下ヘッダタンクに流下してきた凝縮水が効率良く排水される。したがって、下ヘッダタンクの頂面とフィンの下端との間に多くの凝縮水が溜まることに起因する空気側圧力損失の増大が防止され、その結果エバポレータの性能低下が防止される。
【0024】
また、後側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下してきた凝縮水が、排水穴を通って下ヘッダタンクの下方に落下するので、下ヘッダタンクの前側縁部から排水される凝縮水の量は、前側においてのみ熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下した凝縮水の量とほぼ等しくなり、その量は比較的少なくなる。したがって、下ヘッダタンクからの凝縮水の飛散が防止される。
【0025】
上記2)エバポレータによれば、後側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下してきた凝縮水のうち、第2排水溝内に入って前側に流れた凝縮水は、確実に排水穴を通って下ヘッダタンクの下方に落下する。したがって、排水穴を通っての排水効率が向上する。
【0026】
上記3)のエバポレータによれば、熱交換管を伝って流下してきた凝縮水は、熱交換管の近傍に位置する第3排水溝内に入って下方に流下するので、凝縮水が熱交換管の周囲に滞留することが防止される。
【0027】
上記4)のエバポレータによれば、前側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下しかつ第2排水溝内に流入しなかった凝縮水は、上面被覆部上を前方に流れて長尺排水溝内に入り、長尺排水溝を経て第3排水溝内に入り、第3排水溝内を下方に流れて下ヘッダタンクの下方に落下する。したがって、前側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下した凝縮水の排水性能が向上し、エバポレータの性能低下および凝縮水の飛散を防止する効果が一層向上する。
【0028】
5)上記のエバポレータによれば、超臨界冷凍サイクルの運転が停止された場合、下ヘッダタンク上に溜まっていた凝縮水のうち後側のものは、上記1)の場合と同様にして排水穴を通って下ヘッダタンクの下方に落下するとともに、第2排水溝内に入って後方に流れ、連通溝を経て第3排水溝内に入り、第3排水溝内を下方に流れて下ヘッダタンクの下方に落下する。また、下ヘッダタンク上に溜まっていた凝縮水のうち前側のものは、上記1)の場合と同様にして下ヘッダタンクの下方に落下する。なお、この場合の凝縮水の排水は、緩やかに行われる。
【0029】
上記6)のエバポレータによれば、超臨界冷凍サイクルの運転が停止された場合、後側において熱交換管およびフィンから下ヘッダタンク上に流下しかつ第2排水溝内に流入しなかった凝縮水が、管接続用プレートの上面被覆部上を後方に流れると、後側長尺排水溝内に入り、後側長尺排水溝を経て第4排水溝内に入り、第4排水溝内を下方に流れて下ヘッダタンクの下方に落下する。
【0030】
上記7)のエバポレータによれば、エバポレータの製造の際に、管接続用プレートを、その中心点の周りに180度回転させた逆向きの状態で配置したとしても、管接続用プレートは元の形状と同じ形状となる。したがって、製造されたエバポレータの性能の低下を防止することができる。
【0031】
上記8)のエバポレータのように、管接続用プレートの上面被覆部の外面が水平状であると、下ヘッダタンク上に流下してきた凝縮水の排水は困難であるが、この場合であっても、上記1)〜6)のように構成されていると、凝縮水を効率良く排水することができる。
【0032】
上記9)のエバポレータによれば、タンク形成部材の上面と管接続用プレートの上面被覆部との間、およびタンク形成部材の前後両面と管接続用プレートの前後両面被覆部との間での隙間の発生を防止することができる。
【0033】
上記10)のエバポレータによれば、第1プレートに、その長さ方向にのびかつ閉鎖プレートにより開口が閉鎖された外方膨出部が形成されているので、ヘッダタンクの両端開口を閉鎖するキャップが不要になる。したがって、部品点数が少なくなるとともにキャップを接合する作業も不要になる。しかも、キャップを別個につくる作業も不要になる。また、上ヘッダタンクも下ヘッダタンクと同様な構成としておき、少なくともいずれか一方のヘッダタンクの第1プレートに複数の外方膨出部を形成しておくことにより、エバポレータにおける冷媒の流れ方向を熱交換性能を向上させる上で好適なものに設定することが可能になる。しかも、仕切などの別部材を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施形態は、この発明によるエバポレータを超臨界冷凍サイクルのエバポレータに適用したものである。
【0035】
図1〜図3はこの発明を適用したエバポレータの全体構成を示し、図4〜図10はエバポレータの要部の構成を示し、図11は図1に示すエバポレータにおける冷媒の流れを示す。
【0036】
図1〜図3において、超臨界冷媒、たとえばCOを使用する超臨界冷凍サイクルのエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置されかつ左右方向にのびる2つのヘッダタンク(2)(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に前後方向に間隔をおいて配置された複数列、ここでは2列の熱交換管群(4A)と、隣接する熱交換管(4)どうしの間の通風間隙、および左右両端の熱交換管(4)の外側に配置されて熱交換管(4)にろう付されたコルゲートフィン(5)と、左右両端のコルゲートフィン(5)の外側にそれぞれ配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウムベア製サイドプレート(6)とを備えており、各熱交換管群(4A)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置された複数の扁平状熱交換管(4)からなる。なお、両熱交換管群(4A)の各熱交換管(4)は、それぞれ左右方向に関して同一位置にある。
【0037】
図2〜図5に示すように、上ヘッダタンク(2)は、アルミニウム製タンク形成部材(7)と、両面にろう材層を有するブレージングシート、ここではアルミニウムブレージングシートから形成され、かつタンク形成部材(7)にろう付された管接続用プレート(8)とを備えている。タンク形成部材(7)は、両面にろう材層を有するブレージングシート、ここではアルミニウムブレージングシートから形成され、かつ上下方向外側、ここでは上側に配置された第1プレート(9)と、金属ベア材、ここではアルミニウムベア材からなり、かつ第1プレート(9)と管接続用プレート(8)との間に介在させられて両プレート(9)(8)にろう付された第2プレート(10)とにより構成されている。
【0038】
上ヘッダタンク(2)のタンク形成部材(7)における第1プレート(9)の右側部分および左側部分に、それぞれ左右方向にのびる2つの外方膨出部(12A)(12B)(12C)(12D)が前後方向に間隔をおいて形成されている。以下、この実施形態において、右側前部分の外方膨出部(12A)を第1外方膨出部、右側後部分の外方膨出部(12B)を第2外方膨出部、左側前部分の外方膨出部(12C)を第3外方膨出部、左側後部分の外方膨出部(12D)を第4外方膨出部というものとする。そして、各外方膨出部(12A)〜(12D)の下側を向いた開口が、第2プレート(10)により塞がれている。各外方膨出部(12A)〜(12D)の膨出高さ、長さおよび幅は等しくなっている。ここで、第1および第2外方膨出部(12A)(12B)が、COがその内部を長さ方向に流れる冷媒流通用外方膨出部となっている。第1プレート(9)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施することにより形成されている。
【0039】
上ヘッダタンク(2)の管接続用プレート(8)は、タンク形成部材(7)の第2プレート(10)における上下方向内側面、ここでは下面を覆う下面被覆部(13)と、下面被覆部(13)の前後両側縁にそれぞれ上方に突出するように一体に形成され、かつ先端が第1プレート(9)の外面まで至ってタンク形成部材(7)の前後両側面を全高にわたって覆う前後両側面被覆部(14)とよりなる。下面被覆部(13)が、タンク形成部材(7)の第2プレート(10)の下面にろう付され、両側面被覆部(14)が、タンク形成部材(7)の第1プレート(9)および第2プレート(10)の前後両側面にろう付されている。各側面被覆部(14)の上端に、第1プレート(9)の外面に係合する複数の係合部(16)が、左右方向に間隔をおいて一体に形成され、第1プレート(9)にろう付されている。なお、係合部(16)は、3枚のプレート(7)(8)(9)を重ねる前には、図4に鎖線で示すように、折り曲げられておらず、側面被覆部(14)に真っ直ぐに連なっている。折り曲げ前の係合部を(16A)で示す。
【0040】
管接続用プレート(8)の下面被覆部(13)の前後両側部分に、それぞれ前後方向に長い複数の貫通状管挿入穴(15)が、左右方向に間隔をおいて形成されている。前側の右半部における複数の管挿入穴(15)は、第1プレート(9)の第1外方膨出部(12A)の左右方向の範囲内に形成され、後側の右半部における複数の管挿入穴(15)は、第2外方膨出部(12B)の左右方向の範囲内に形成され、前側の左半部における複数の管挿入穴(15)は、第3外方膨出部(12C)の左右方向の範囲内に形成され、後側の左半部における複数の管挿入穴(15)は、第4外方膨出部(12D)の左右方向の範囲内に形成されている。また、各管挿入穴(15)の長さは、各外方膨出部(12A)〜(12D)の前後方向の幅よりも若干長く、管挿入穴(15)の前後両端部は各外方膨出部(12A)〜(12D)の前後両側縁よりも外方に突出している。管接続用プレート(8)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されている。
【0041】
上ヘッダタンク(2)のタンク形成部材(7)の第2プレート(10)における管挿入穴(15)と対応する位置に、管接続用プレート(8)の管挿入穴(15)を第1プレート(9)の外方膨出部(12A)〜(12D)内に通じさせる貫通状連通穴(17)が、管挿入穴(15)と同じ数だけ形成されている。連通穴(17)は管挿入穴(15)よりも一回り大きくなっている。そして、管接続用プレート(8)の前側の右半部における複数の管挿入穴(15)は、第2プレート(10)の前側の右半部における複数の連通穴(17)を介して第1外方膨出部(12A)内に通じさせられ、同じく後側の右半部における複数の管挿入穴(15)は、第2プレート(10)の後側の右半部における複数の連通穴(17)を介して第2外方膨出部(12B)内に通じさせられ、同じく前側の左半部における複数の管挿入穴(15)は、第2プレート(10)の前側の左半部における複数の連通穴(17)を介して第3外方膨出部(12C)内に通じさせられ、同じく後側の左半部における複数の管挿入穴(15)は、第2プレート(10)の後側の左半部における複数の連通穴(17)を介して第4外方膨出部(12D)内に通じさせられている。
【0042】
第2プレート(10)における第3外方膨出部(12C)に通じる各連通穴(17)と第4外方膨出部(12D)に通じる各連通穴(17)とは、第2プレート(10)における前後方向に隣り合う連通穴(17)間の部分を切除することにより形成された冷媒ターン用連通部(18)により連通させられ、これにより第3外方膨出部(12C)内と第4外方膨出部(12D)内とは相互に通じ合っている。第1外方膨出部(12A)内に通じるすべての連通穴(17)および第2外方膨出部(12B)内に通じるすべての連通穴(17)は、それぞれ第2プレート(10)における左右方向に隣り合う連通穴(17)間の部分を切除することにより形成された連通部(19)により連通させられている。第2プレート(10)は、アルミニウムベア材にプレス加工を施すことにより形成されている。
【0043】
管接続用プレート(8)の下面被覆部(13)における幅方向の中央部、すなわち前後の管挿入穴(15)間の部分には、複数の円形貫通穴(29)が、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。貫通穴(29)と管挿入穴(15)とは左右方向にずれている。第1プレート(9)における幅方向の中央部、すなわち第1および第3外方膨出部(12A)(12C)と、第2および第4外方膨出部(12B)(12D)との間の部分には、複数の円形貫通穴(28)が、管接続用プレート(8)の貫通穴(29)と合致するように、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。さらに、第2プレート(10)における幅方向の中央部、すなわち前後の管挿入穴(15)間の部分には、複数の円形貫通穴(30)が、第1プレート(9)および管接続用プレート(8)の貫通穴(28)(29)と合致するように、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。貫通穴(30)と連通穴(17)および連通部(18)とは左右方向にずれている。管接続用プレート(8)および第2プレート(10)の貫通穴(29)(30)の内径は等しく、かつ第1プレート(9)の貫通穴(28)の内径よりも小さくなっている。そして、第2プレート(10)における貫通穴(30)の周縁部に、第1プレート(9)側に突出したフランジ部(30a)が一体に形成され、このフランジ部(30a)が第1プレート(9)の貫通穴(28)内に挿入されるとともに拡管され、さらに管接続用プレート(8)における貫通穴(29)の周縁部が第2プレート(10)側に突出させられるとともに、この突出部(29a)が第2プレート(10)の貫通穴(30)内に圧入されることによって、第1プレート(9)と、管接続用プレート(8)の下面被覆部(13)と、第2プレート(10)とが、貫通穴(28)(29)(30)の周縁部でカシメ止めされた状態で相互にろう付されている。
【0044】
図4〜図6に示すように、3つのプレート(8)(9)(10)の右端部には、それぞれ前後方向に間隔をおいて2つの右方突出部(8a)(9a)(10a)が形成されている。第2プレート(10)には、前後2つの外方突出部(10a)の先端から右端部の連通穴(17)に通じる切り欠き(21A)(21B)が形成されており、これにより上ヘッダタンク(2)に、第1外方膨出部(12A)内に通じる冷媒入口(22)と、第2外方膨出部(12B)内に通じる冷媒出口(23)とが形成されている。3つのプレート(8)(9)(10)の2つの右方突出部(8a)(9a)(10a)にまたがるように、冷媒入口(22)に通じる冷媒流入路(25)および冷媒出口(23)に通じる冷媒流出路(26)を有する冷媒入出部材(24)が、両面にろう材層を有するブレージングシート、ここではアルミニウムブレージングシート(27)により上ヘッダタンク(2)にろう付されている。冷媒入出部材(24)は、金属ベア材、ここではアルミニウムベア材からなる。
【0045】
図2、図3、図7および図8に示すように、下ヘッダタンク(3)は、アルミニウム製タンク形成部材(20)と、両面にろう材層を有するブレージングシート、ここではアルミニウムブレージングシートから形成され、かつタンク形成部材(20)にろう付された管接続用プレート(31)とを備えている。タンク形成部材(20)は、両面にろう材層を有するブレージングシート、ここではアルミニウムブレージングシートから形成され、かつ上下方向外側、ここでは下側に配置された第1プレート(32)と、金属ベア材、ここではアルミニウムベア材からなり、かつ第1プレート(32)と管接続用プレート(31)との間に介在させられて両プレート(32)(31)にろう付された第2プレート(33)とにより構成されている。下ヘッダタンク(3)のタンク形成部材(20)の上面、すなわち第2プレート(33)上面は水平平坦面となっている。の
下ヘッダタンク(3)のタンク形成部材(20)の第1プレート(32)に、前後方向に間隔をおいて2つの外方膨出部(34A)(34B)が、第1外方膨出部(12A)と第3外方膨出部(12C)、および第2外方膨出部(12B)と第4外方膨出部(12D)とにそれぞれまたがるように第1プレート(32)の右端部から左端部にかけて形成されている。そして、各外方膨出部(34A)(34B)の上側を向いた開口が、第2プレート(33)により塞がれている。各外方膨出部(34A)(34B)の膨出高さ、長さおよび幅は等しくなっている。ここで、各外方膨出部(34A)(34B)が、COがその内部を長さ方向に流れる冷媒流通用外方膨出部となっている。第1プレート(32)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施することにより形成されている。
【0046】
下ヘッダタンク(3)の管接続用プレート(31)は、タンク形成部材(20)の第2プレート(33)における上下方向内側面、ここでは上面を覆う上面被覆部(35)と、上面被覆部(35)の前後両側縁にそれぞれ下方に突出するように一体に形成され、かつ先端が第1プレート(32)の外面まで至ってタンク形成部材(20)の前後両側面を全高にわたって覆う前後両側面被覆部(36)とよりなる。上面被覆部(35)が、タンク形成部材(20)の第2プレート(33)の上面にろう付され、前後両側面被覆部(36)が、タンク形成部材(20)の第1プレート(32)および第2プレート(33)の前後両側面にろう付されている。上面被覆部(35)の外面(上面)は水平状となっている。各側面被覆部(36)の下端に、第1プレート(32)の外面に係合する複数の係合部(37)が、左右方向に間隔をおいて一体に形成され、第1プレート(32)にろう付されている。なお、係合部(37)は、3枚のプレート(7)(8)(9)を重ねる前には、図7に鎖線で示すように、折り曲げられておらず、側面被覆部(36)に真っ直ぐに連なっている。折り曲げ前の係合部を(37A)で示す。また、タンク形成部材(20)
下ヘッダタンク(3)の管接続用プレート(31)における上面被覆部(35)の前後両側部分に、それぞれ前後方向に長い複数の貫通状管挿入穴(38)が、左右方向に間隔をおいて形成されている。前側の複数の管挿入穴(38)は、第1プレート(32)の前側外方膨出部(34A)の左右方向の範囲内に形成され、後側の複数の管挿入穴(38)は、後側外方膨出部(34B)の左右方向の範囲内に形成されている。また、各管挿入穴(38)の長さは、各外方膨出部(34A)(34B)の前後方向の幅よりも若干長く、管挿入穴(38)の前後両端部は各外方膨出部(34A)(34B)の前後両側縁よりも外方に突出している。管接続用プレート(31)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工を施すことにより形成されている。
【0047】
図9および図10に示すように、管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)の外面(上面)における前後の熱交換管群(4A)間の部分に、左右方向にのびる第1排水溝(50)が上面被覆部(35)の全長にわたって形成されている。また、上面被覆部(35)の外面における左右方向に隣り合う熱交換管(4)間の部分に、前後方向にのびる第2排水溝(51)が第1排水溝(50)と交差するように形成されている。管接続用プレート(31)の前側面被覆部(36)の外面(前面)における左右方向に関して熱交換管(4)と同一の位置には、上下方向にのびる第3排水溝(52)が形成されている。第3排水溝(52)の下端は、前側面被覆部(36)の下端面に開口している。管接続用プレート(31)の後側面被覆部(36)の外面(後面)における左右方向に関して熱交換管(4)と同一の位置には、上下方向にのびる第4排水溝(53)が形成されている。第4排水溝(53)の下端は、後側面被覆部(36)の下端面に開口している。また、管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)の外面における前側熱交換管群(4A)よりも前方の部分および後側熱交換管群(4A)よりも後方の部分に、それぞれ左右方向にのびる長尺排水溝(54)(55)が上面被覆部(35)の全長にわたって形成されている。第2排水溝(51)の前後両端部は、それぞれ前後の長尺排水溝(54)(55)内に開口している。また、第3排水溝(52)および第4排水溝(53)の上端部は上面被覆部(35)まで延長されるとともに、前後の長尺排水溝(54)(55)に通じさせられている。そして、第3排水溝(52)および第4排水溝(53)が、前後の長尺排水溝(54)(55)を介して第2排水溝(51)に通じさせられている。管接続用プレート(31)に第1〜第4排水溝(50)〜(53)が形成されているが、上面被覆部(35)および前後両側面被覆部(36)の内面は平坦面となっている。そして、上面被覆部(35)の内面とタンク形成部材(20)、すなわち第2プレート(33)の上面との間には隙間は存在していない。
【0048】
第2プレート(33)における管挿入穴(38)と対応する位置に、管接続用プレート(31)の管挿入穴(38)を第1プレート(32)の外方膨出部(34A)(34B)内に通じさせる貫通状連通穴(42)が、管挿入穴(38)と同じ数だけ形成されている。連通穴(42)は管挿入穴(38)よりも一回り大きくなっている。そして、管接続用プレート(31)の前側の複数の管挿入穴(38)は、第2プレート(33)の前側の複数の連通穴(42)を介して前側外方膨出部(34A)内に通じさせられ、同じく後側の複数の管挿入穴(38)は、第2プレート(33)の後側の複数の連通穴(42)を介して後側外方膨出部(34B)内に通じさせられている。また、第2プレート(33)における前側外方膨出部(34A)内に通じるすべての連通穴(42)および後側外方膨出部(34B)内に通じるすべての連通穴(42)は、それぞれ第2プレート(33)における左右方向に隣り合う連通穴(42)間の部分を切除することにより形成された連通部(43)により連通させられている。第2プレート(33)は、アルミニウムベア材にプレス加工を施すことにより形成されている。
【0049】
管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)における第1排水溝(50)の溝底と対応する部分には、複数の円形貫通穴(45)が、第1排水溝(50)と第2排水溝(51)との交差部に合致するように、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。貫通穴(45)と管挿入穴(38)とは左右方向にずれている。第1プレート(32)における幅方向の中央部、すなわち両外方膨出部(34A)(34B)間の部分には、複数の円形貫通穴(44)が、管接続用プレート(31)の貫通穴(45)と合致するように、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。さらに、第2プレート(33)における幅方向の中央部、すなわち前後の管挿入穴(42)間の部分には、複数の円形貫通穴(46)が、管接続用プレート(31)および第1プレート(32)の貫通穴(44)(45)と合致するように、左右方向に間隔をおいて複数形成されている。貫通穴(46)と連通穴(42)とは左右方向にずれている。管接続用プレート(31)および第2プレート(33)の貫通穴(45)(46)の内径は等しく、かつ第1プレート(32)の貫通穴(44)の内径よりも小さくなっている。そして、第2プレート(33)における貫通穴(46)の周縁部に、第1プレート(32)側に突出したフランジ部(46a)が一体に形成され、このフランジ部(46a)が第1プレート(32)の貫通穴(44)内に挿入されるとともに拡管され、さらに管接続用プレート(31)における貫通穴(45)の周縁部が第2プレート(33)側に突出させられるとともに、この突出部(45a)が第2プレート(33)の貫通穴(46)内に圧入されることによって、第1プレート(32)と、管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)と、第2プレート(33)とが、貫通穴(44)(45)(46)の周縁部でカシメ止めされた状態で相互にろう付されている。ここで、3つの貫通穴(44)(45)(46)によって、第1排水溝(50)の溝底と、タンク形成部材(20)の下面とを通じさせる排水穴(47)が形成されている。
【0050】
熱交換管(4)は、金属のベア材、ここではアルミニウム製押出形材からなり、前後方向に幅広の扁平状で、その内部に長さ方向にのびる複数の冷媒通路(4a)が並列状に形成されている。熱交換管(4)の両端部は、それぞれ両ヘッダタンク(2)(3)の管挿入穴(15)(38)に挿入された状態で、管接続用プレート(8)(31)のろう材層を利用して管接続用プレート(8)(31)にろう付されている。なお、熱交換管(4)の両端は第2プレート(10)(33)の厚さ方向の中間部まで連通穴(17)(42)内に入り込んでいる。前側熱交換管群(4A)の右半部に位置する複数の熱交換管(4)の上下両端部は第1外方膨出部(12A)内および前側外方膨出部(34A)内に通じるように両ヘッダタンク(2)(3)に接続され、同じく左半部に位置する複数の熱交換管(4)の上下両端部は第3外方膨出部(12C)内および前側外方膨出部(34A)内に通じるように両ヘッダタンク(2)(3)に接続されている。また、後側熱交換管群(4A)の右半部に位置する複数の熱交換管(4)の上下両端部は第2外方膨出部(12B)内および後側外方膨出部(34B)内に通じるように両ヘッダタンク(2)(3)に接続され、同じく左半部に位置する複数の熱交換管(4)の上下両端部は第4外方膨出部(12D)内および後側外方膨出部(34B)内に通じるように両ヘッダタンク(2)(3)に接続されている。
【0051】
コルゲートフィン(5)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを用いて波状に形成されたものであり、その波頭部と波底部を連結する連結部に、前後方向に並列状に複数のルーバが形成されている。コルゲートフィン(5)は前後両熱交換管群(4A)に共有されており、その前後方向の幅は前側熱交換管群(4A)の熱交換管(4)の前側縁と後側熱交換管群(4A)の熱交換管(4)の後側縁との間隔をほぼ等しくなっている。なお、1つのコルゲートフィン(5)が前後両熱交換管群(4A)に共有される代わりに、両熱交換管群(4A)の隣り合う熱交換管(4)どうしの間にそれぞれコルゲートフィンが配置されていてもよい。
【0052】
エバポレータ(1)は、コンプレッサ、ガスクーラ、減圧器、気液分離器およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器とともに超臨界冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして車両、たとえば自動車に搭載される。超臨界冷凍サイクルには、超臨界冷媒として、CO、エチレン、エタン、酸化窒素などが使用される。
【0053】
上述したエバポレータ(1)において、超臨界冷凍サイクルの運転時には、図11に示すように、減圧器(膨張弁)を通過して減圧されたCO が、入出部材(24)の冷媒流入路(25)を通って冷媒入口(22)から上ヘッダタンク(2)の第1外方膨出部(12A)内に入り、第1外方膨出部(12A)内を左方に流れ、第1外方膨出部(12A)内に通じているすべての熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内に流入する。
【0054】
第1外方膨出部(12A)内に通じているすべての熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内に流入したCOは、冷媒通路(4a)内を下方に流れて下ヘッダタンク(3)の前側外方膨出部(34A)内に流入する。前側外方膨出部(34A)内に流入したCOはその内部を通って左方に流れ、分流して第3外方膨出部(12C)内に通じているすべての熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内に流入する。
【0055】
第3外方膨出部(12C)内に通じているすべての熱交換管(4)内に流入したCOは、流れ方向を変えて冷媒通路(4a)内を上方に流れて上ヘッダタンク(2)の第3外方膨出部(12C)内に入る。第3外方膨出部(12C)内に流入したCOは、上ヘッダタンク(2)の第2プレート(10)の冷媒ターン用連通部(18)を通って第4外方膨出部(12D)内に入り、分流して第4外方膨出部(12D)に接続されているすべての熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内に流入し、流れ方向を変えて冷媒通路(4a)内を下方に流れて下ヘッダタンク(3)の後側外方膨出部(34B)内に入る。後側外方膨出部(34B)内に流入したCOはその内部を通って右方に流れ、分流して第2外方膨出部(12B)に接続されているすべての熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内に流入する。
【0056】
第2外方膨出部(12B)内に通じているすべての熱交換管(4)内に流入したCOは、流れ方向を変えて冷媒通路(4a)内を上方に流れて上ヘッダタンク(2)の第2外方膨出部(12B)内に入る。その後、COは、第2外方膨出部(12B)内を流れ、冷媒出口(23)および入出部材(24)の冷媒流出路(26)を通って流出する。そして、COが熱交換管(4)の冷媒通路(4a)内を流れる間に、通風間隙を図1および図11に矢印Xで示す方向に流れる空気と熱交換をし、気相となって流出する。
【0057】
このとき、コルゲートフィン(5)の表面に凝縮水が発生し、この凝縮水が、コルゲートフィン(5)および熱交換管(4)を伝って下ヘッダタンク(3)の上面に流下する。後側(風上側)において下ヘッダタンク(3)の上面に流下してきた凝縮水は、第2排水溝(51)内に入って前側に流れ、あるいは管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)上を前側に流れて第1排水溝(50)内に入り、排水穴(47)を通って下ヘッダタンク(3)の下方に落下する。ここで、第1プレート(32)の貫通穴(44)の内径が他のプレート(32)(33)の貫通穴(45)(46)の内径よりも大きく、第2プレート(33)における貫通穴(46)の周縁部に、第1プレート(32)側に突出したフランジ部(46a)が一体に形成されるとともに、このフランジ部(46a)が第1プレート(32)の貫通穴(44)内に挿入されて拡管され、さらに管接続用プレート(31)における貫通穴(45)の周縁部が第2プレート(33)側に突出させられるとともに、この突出部(45a)が第2プレート(33)の貫通穴(46)内に圧入されていると、貫通穴(46)(45)(44)からなる排水穴(47)を通っての凝縮水の排水がスムーズに行われる。
【0058】
前側において下ヘッダタンク(3)の上面に流下してきた凝縮水は、第2排水溝(51)内に入って前方に流れ、あるいは管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)上を前側に流れて前側長尺排水溝(54)内に流入し、前側長尺排水溝(54)を経て第3排水溝(52)内に流入し、第3排水溝(52)内を下方に流れて下ヘッダタンク(3)の下方に落下する。
【0059】
したがって、下ヘッダタンク(3)の頂面とコルゲートフィン(5)の下端との間に多くの凝縮水が溜まることに起因する空気側圧力損失の増大が防止され、その結果エバポレータ(1)の性能低下が防止される。また、後側において下ヘッダタンク(3)上に流下してきた凝縮水は、排水穴(47)を通って下ヘッダタンク(3)の下方に落下するので、下ヘッダタンク(3)の第3排水溝(52)を通って下ヘッダタンク(3)の下方に落下する凝縮水の量は、前側においてのみ下ヘッダタンク(3)上に流下した凝縮水の量とほぼ等しくなり、その量は比較的少なくなる。したがって、下ヘッダタンク(3)からの凝縮水の飛散が効果的に防止される。
【0060】
超臨界冷凍サイクルの運転が停止された場合、下ヘッダタンク(3)上に溜まっていた凝縮水のうち後側のものは、上述した運転中における後側において下ヘッダタンク(3)の上面に流下してきた凝縮水の場合と同様にして排水穴(47)を通って下ヘッダタンク(3)の下方に落下するとともに、第2排水溝(51)内に入って後側に流れ、あるいは管接続用プレート(31)の上面被覆部(35)上を後側に流れて後側長尺排水溝(55)内に入り、後側長尺排水溝(55)を経て第4排水溝(53)内に入り、第4排水溝(53)内を下方に流れて下ヘッダタンク(3)の下方に落下する。また、下ヘッダタンク(3)上に溜まっていた凝縮水のうち前側のものは、上述した運転中における前側において下ヘッダタンク(3)の上面に流下してきた凝縮水の場合と同様にして下ヘッダタンクの下方に落下する。なお、運転停止時の凝縮水の排水は、緩やかに行われる。
【0061】
こうして、下ヘッダタンク(3)の上面とコルゲートフィン(5)の下端との間に多くの凝縮水が溜まることに起因する空気側凝縮水の氷結が防止され、その結果エバポレータ(1)の性能低下が防止される。
【0062】
上記の実施形態においては、熱交換管(4)は、アルミニウム押出形材からなるが、これに両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる管製造用金属板を曲げた折り曲げ体からなるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明による熱交換器を適用したエバポレータの全体構成を示す一部省略斜視図である。
【図2】図1に示すエバポレータの後方から前方を見た一部を切り欠いた背面図である。
【図3】一部を省略した図2のA−A線断面図である。
【図4】図1のエバポレータの上ヘッダタンクを示す分解斜視図である。
【図5】一部を省略した図2のB−B線拡大断面図である。
【図6】図1のエバポレータにおける上ヘッダタンクの右端部を示す分解斜視図である。
【図7】図1のエバポレータの下ヘッダタンクを示す分解斜視図である。
【図8】一部を省略した図2のC−C線拡大断面図である。
【図9】一部を省略した図2のD−D線拡大断面図である。
【図10】図2のE−E線拡大断面図である。
【図11】図1のエバポレータにおける冷媒の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
(1):エバポレータ
(2)(3):ヘッダタンク
(4):熱交換管
(4A):熱交換管群
(5):コルゲートフィン
(20):タンク形成部材
(31):管接続用プレート
(32):第1プレート
(33):第2プレート
(34A)(34B):外方膨出部
(35):上面被覆部
(36):側面被覆部
(38):管挿入穴
(42):連通穴
(47):排水穴
(50):第1排水溝
(51):第2排水溝
(52):第3排水溝
(53):第4排水溝
(54):前側長尺排水溝
(55):後側長尺排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に間隔をおいて配置された左右方向に長い1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に前後方向に間隔をおいて配置された複数列の熱交換管群と、左右方向に隣り合う熱交換管間に配置されたフィンとを備えており、下ヘッダタンクが、タンク形成部材と、タンク形成部材の上面を覆う上面被覆部およびタンク形成部材の前後両側面の少なくとも上側部分を覆う前後両側面被覆部を有する管接続用プレートとからなり、熱交換管群が左右方向に間隔をおいて配置された複数の熱交換管からなるエバポレータであって、
管接続用プレートの上面被覆部外面における前後方向に隣り合う熱交換管群間に、左右方向にのびる第1排水溝が形成され、管接続用プレートおよびタンク形成部材に、第1排水溝の溝底とタンク形成部材の下面とを通じさせる複数の排水穴が、左右方向に間隔をおいて形成され、管接続用プレートの上面被覆部外面における左右方向に隣り合う熱交換管間に、前後方向にのびる第2排水溝が第1排水溝と交差するように形成され、管接続用プレートの前面被覆部の外面に上下方向にのびる第3排水溝が形成され、第3排水溝が第2排水溝に通じさせられているエバポレータ。
【請求項2】
排水穴が、第1排水溝と第2排水溝との交差部に形成されている請求項1記載のエバポレータ。
【請求項3】
第3排水溝が、左右方向に関して熱交換管と同一位置に形成されている請求項1または2記載のエバポレータ。
【請求項4】
管接続用プレートの上面被覆部の外面における前端の熱交換管群よりも前方の部分に、左右方向にのびる長尺排水溝が、全第2排水溝の前端部と通じるように形成され、第3排水溝の上端部が管接続用プレートの上面被覆部まで延長されるとともに長尺排水溝に通じさせられ、第3排水溝が長尺排水溝を介して第2排水溝に通じさせられている請求項1〜3のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項5】
管接続用プレートの後側面被覆部の外面に上下方向にのびる第4排水溝が形成され、第4排水溝が第2排水溝に通じさせられている請求項1〜4のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項6】
管接続用プレートの上面被覆部の外面における後端の熱交換管群よりも後方の部分に、ヘッダタンクの長さ方向にのびる後側長尺排水溝が、全第2排水溝の後端部と通じるように形成され、第4排水溝の上端部が管接続用プレートの上面被覆部まで延長されるとともに後側長尺排水溝に通じさせられ、第4排水溝が後側長尺排水溝を介して第2排水溝に通じさせられている請求項5記載のエバポレータ。
【請求項7】
管接続用プレートの上面被覆部の外形、前後両側面被覆部、第1排水溝、第2排水溝、第3排水溝と第4排水溝、排水穴、前後の長尺排水溝、および前後の連通溝が、それぞれ管接続用プレートの上面被覆部の中心点に関して点対称となっている請求項6記載のエバポレータ。
【請求項8】
管接続用プレートの上面被覆部の外面が水平状である請求項1〜7のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項9】
管接続用プレートの上面被覆部および前後両側面被覆部の内面が平坦面である請求項1〜8のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項10】
下ヘッダタンクのタンク形成部材が、左右方向に伸びる少なくとも1つの外方膨出部を有する第1プレートと、管接続用プレートと第1プレートとの間に、第1プレートの外方膨出部の開口を塞ぐように介在させられるとともに両プレートに接合された第2プレートとよりなり、管接続用プレートにおける外方膨出部と対応する部分に、複数の管挿入穴が管接続用プレートの長さ方向に間隔をおいて貫通状に形成され、タンク形成部材の第2プレートに、管接続用プレートの各管挿入穴を第1プレートの外方膨出部内に通じさせる連通穴が貫通状に形成され、熱交換管の両端部が両ヘッダタンクの管接続用プレートの管挿入穴内に挿入されて管接続用プレートにろう付されている請求項1〜9のうちのいずれかに記載のエバポレータ。
【請求項11】
コンプレッサ、ガスクーラ、エバポレータ、減圧器、およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えており、かつ超臨界冷媒を用いる冷凍サイクルであって、エバポレータが請求項1〜10のうちのいずれかに記載のエバポレータからなる超臨界冷凍サイクル。
【請求項12】
超臨界冷媒が二酸化炭素である請求項11記載の超臨界冷凍サイクル。
【請求項13】
請求項11または12記載の超臨界冷凍サイクルがカーエアコンとして搭載されている車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−263437(P2007−263437A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88133(P2006−88133)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】