説明

エポキシ基含有重合体及びその製法

【課題】電気絶縁性に優れた新規なエポキシ基含有重合体及びその製法の提供。
【解決手段】式(g)又は式(h):


{式中、R9=エチレン性不飽和基}で表される化合物のエチレン性不飽和結合部分を重合、又は他の1種以上のエチレン性不飽和結合を持つ化合物と共重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルダーレジストや層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板などの分野への利用が期待される電気絶縁性に優れた新規なエポキシ基含有重合体及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子工業の著しい発展に伴い、多種多様な高分子材料が広範囲にわたって用いられるようになってきた。近年、特に、工業製品の高機能化、高性能化に伴ってより優れた高分子材料の開発が進められている。
【0003】
そのような材料の中で、エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂として又はそれ以外の反応性樹脂として広範囲な工業的用途を有し、様々な分野から検討・開発が行われてきた。産業界において現在最も広く使用されているエポキシ樹脂は、ビスフェノ−ルAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0004】
この樹脂は液体から固体まで幅広い製品があり、また反応性、耐薬品性、強靱性、接着性、耐熱性などに優れており、土木、建築、塗料、接着剤など広範囲に使用されている。しかしながら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンと反応させるため、樹脂中に塩素が数10ppm〜100ppm含まれ、それが電気部品の電気特性を悪くするなどの問題がある。また、誘電率についてもビスフェノールA型エポキシ樹脂は高く、半導体封止材などには、塩素を含まず電気特性、耐熱性に優れた脂環式エポキシ樹脂が使用されている。
【0005】
脂環式エポキシ樹脂としては、以下の式(f)又は式(g):
【化1】

【化2】

で表されるものが工業的に製造され使用されている。
【0006】
また、その他の残留ハロゲンを低減化したエポキシ樹脂として、例えば、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンを開環重合した後、ビニル基をエポキシ化させたエポキシ樹脂(特許文献1)、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンと酸無水物との交互共重合で得られた化合物をエポキシ化した樹脂(特許文献2)、エポキシシクロヘキサンメタノールのメタクリル酸エステルを他のメタクリルあるいはアクリル酸エステルと重合させて得られるエポキシ樹脂組成物(特許文献3)なども提案されている。
【特許文献1】特開昭60−166675号公報
【特許文献2】特開平06−41275号公報
【特許文献3】特開平08−291214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術は、それぞれ一応の成果を上げているが、未だ不十分な面も少なくない。例えば、式(l)で表される化合物は、毒性が強く作業者の皮膚が著しくかぶれるという問題があり、また、式(l)又は式(m)で表される化合物は、いずれも低粘度のエポキシ樹脂であるためトランスファー成形などの固形エポキシ樹脂の成形システムが適用できない。
【0008】
また、特許文献1又は特許文献2では、4−ビニル−エポキシシクロヘキサンのエポキシ基を開環重合して高分子化し、次工程で過酸を用いエポキシ樹脂化しているが、高分子化後のエポキシ化は工業的に、高収率かつ全ての二重結合をエポキシ基に転化することが難しい。また、特許文献3では、エポキシシクロヘキサンのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのラジカル重合ポリマーでは分子量の制御が難しいうえに、分子量が大きくなりすぎると、相溶性、溶解性等で問題になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、アリル基、ビニル基又はメタリル基と脂環式エポキシ基を併せ持つ化合物をベースとして、アリル基、ビニル基又はメタリル基のラジカル重合を行うことにより、ハロゲン濃度の低いエポキシ基含有重合体が得られ、高い電気絶縁性を有すると共に、エチレン性不飽和結合を持つ他の化合物との共重合により、フレキシブルプリント基板のソルダーレジスト等の用途で必要な、可とう性、密着性等の物性を制御することが期待できる新規なエポキシ含有重合体を得ることに成功し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[11]に示される脂環式エポキシ基とアリル基、ビニル基又はメタリル基を併せ持つ化合物を単独でラジカル重合あるいは他のエチレン性不飽和化合物とのラジカル共重合で得られるエポキシ含有重合体及びその製法に関する。
【0010】
[1] 以下の式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f):
【化3】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又はC6H5である。}のいずれかで表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0011】
[2] 重合体のエポキシ当量が180g/eq.〜2000g/eq.である、前記[1]記載のエポキシ基含有重合体。
【0012】
[3] 以下の式(a):
【化4】

{式中、R3〜R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0013】
[4] 以下の式(a):
【化5】

{式中、R3〜R7=H、R8=CH3である。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0014】
[5] 以下の式(a):
【化6】

{式中、R3〜R6=H 、R7=CH3、R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0015】
[6] 以下の式(b):
【化7】

{式中、R1〜R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0016】
[7] 以下の式(b):
【化8】

{式中、R1〜R7=H 、R8=CH3である。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0017】
[8] 以下の式(b):
【化9】

{式中、R1〜R6=H 、R7=CH3、R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【0018】
[9] エポキシ基含有重合体の製造方法であって、以下のステップ:
以下の式(g)又は式(h):
【化10】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又C6H5、R9
【化11】

のいずれかである。}のいずれかで表される化合物のエチレン性不飽和結合部分を重合させることを含む前記方法。
【0019】
[10] エポキシ基含有重合体の製造方法であって、以下のステップ:
以下の式(g)又は式(h):
【化12】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又C6H5、R9
【化13】

のいずれかである。}のいずれかで表される化合物及び他の1種以上のエチレン性不飽和結合を持つ化合物とを共重合させることを含む前記方法。
【0020】
[11] 前記さらに他の1種以上のエチレン性不飽和結合を持つ化合物が、炭素数20以下であり、かつ、CH2=CHCH2OC(O)−、CH2=CHOC(O)−、−CH=CH2−C(O)−、−CH=CHCH3−C(O)−のいずれかの基を有する、前記[10]記載の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ソルダーレジストや層間絶縁膜等の電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板などの分野への利用が期待される電気絶縁性に優れた新規なエポキシ基含有重合体、その製造法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明を具体的に説明する。
まず、本発明の原料であるエポキシ化合物は、式(g)又は式(h)の何れか一方で、R1〜R8=H又はCH3、R9は(i)、(j)、(k)の何れか一つの構造を持つ化合物の組み合わせの範囲内なら特に限定されない。例えば、工業的に使用する見地から鑑み、より好ましいものとしては、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−メチル−1−カルボン酸アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−6−メチル−1−カルボン酸アリルエステル、5,6−エポキシノルボルナン−2−カルボン酸アリルエステル、5,6−エポキシノルボルナン−2−メチル−2−カルボン酸アリルエステル、5,6−エポキシノルボルナン−3−メチル−2−カルボン酸アリルエステルが挙げられる。なぜなら、それぞれのエポキシ化前の前駆体が、アクリル酸(又はアクリル酸アリルエステル)、メタクリル酸(またはメタクリル酸アリルエステル)、クロトン酸(又はクロトン酸アリルエステル)の何れかと、ブタジエン、シクロペンタジエン(ジシクロペンタジエン)のどちらかとのディールスアルダー反応で得られるが、その反応性が非常によいことが理由として挙げられる。
【0023】
このエポキシ化前の前駆体は、位置選択的なエポキシ化反応を用いてモノエポキシ化合物として得ることができ、この段階で精製工程にかけるため、反応で使用される酸化剤や触媒などの残留はほとんど無い。
【0024】
また、この化合物が脂環式エポキシ基を有しているために、グリシジルタイプのエポキシ化合物に比べて貯蔵安定性が高く、工業的に使用することが容易である。さらに脂環式エポキシ基は、カルボキシル基とのカチオン重合性が通常のグリシジル基より高いことから、より低温・短時間での硬化を要求される電子材料の世界では、非常に有利な特徴を有する。
【0025】
また、本発明においては、前記エポキシ化合物以外の、他の共重合可能な単量体を使用することもできる。この共重合可能な単量体としては、n−ヘキサン酸アリル、シクロヘキサン酸アリル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、安息香酸アリル、フェニル酢酸アリル、フェノキシ酢酸アリル、トリフルオロ酢酸アリル、メチル炭酸アリル、エチル炭酸アリル、アリルメチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルベンシルエーテル、アリルオキシトリメチルシラン、アジピン酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、マロン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、1,2−ジアリロキシエタン、フタル酸ジアリル、などのアリル基含有化合物、酢酸ビニル、n-ヘキサン酸ビニル、シクロヘキサン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、n−ドデカン酸ビニル、安息香酸ビニル、4−t−ブチル安息香酸ビニル、フェニル酢酸ビニル、N−ビニルフタルイミド、ビニルシクロヘキシルエーテル、トリフルオロ酢酸ビニル、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ジビニルジメチルシラン、ジビニロキシエタン、ジビニルジエチレングリコールジエーテル、1,4−ジビニロキシブタン、などのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸グリシジル、アルリロニトリル、アクリル酸N−メチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸N−メチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル等のメタクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルビフェニル等のスチレン系単量体、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−置換マレイミド等があげられる。
【0026】
これらの単量体は任意に選択することができるため、これらを成分とする樹脂に様々な性能を付与させることができる。
【0027】
これらの単量体およびエポキシ化合物の配合比は、最終的に得られるエポキシ樹脂組成物に付与したい疎水性基や、芳香環、官能基などによって自由に決められ、また、エポキシ化合物の使用量は、目的とするエポキシ樹脂に付与したいエポキシ基含有量をどの程度にするかによって自由に決めることができるが、エポキシ当量として180〜2,000g/eqになるように使用することがより好ましい。
【0028】
溶媒は無溶媒でもよく、使用する場合は、単量体およびポリマーを溶解するものであれば特に制限はなく、エポキシ基に対して不活性であることが望ましい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテートなどのエステル類、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、四塩化炭素、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、2−プロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類等が使用することができる。また条件によっては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類等も使用しても良い。これらの溶媒は単独で、または混合して使用してもよい。
【0029】
重合開始剤は通常のラジカル重合開始剤を用いることができ、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、1,1ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物系を単独あるいは混合して使用する。重合開始剤は、単量体の0.1重量%〜30重量%の範囲で配合されることが望ましい。
【0030】
反応温度は、重合開始剤の種類によるが、10〜200℃の間で適宜選択することができ、エポキシ基の安定性、および取り扱いのし易さから、50〜120℃であることが望ましい。
【0031】
生成するポリマーの分子量は、反応温度、単量体や重合開始剤の滴下速度、単量体濃度、単量体の種類などによって決まる。これらの分子量は、ラジカル重合させた後のエポキシ樹脂組成物が、数平均分子量で500〜5,000になるようにすることが好ましい。分子量が高すぎると作業性が低下し、分子量が低すぎると、硬化後充分な性能が得られない。
【0032】
以上のようにして得られたエポキシ基含有重合体は、分子量と導入する単量体の種類を変えることによりソルダーレジストや層間絶縁膜等に必要な様々な物性を持たせることができる。
【0033】
本明細書を通して、エポキシ基含有重合体のエポキシ当量(固形分濃度換算)は以下の方法により測定したものである。2〜4mg当量の試料を、精密に秤採り、200mlの共栓三角フラスコに入れる。この容器に0.2M塩酸−ジオキサン溶液25mLを、ホールピペットを用いて添加して溶解し、室温で30分間放置する。次に、10mlのメチルセロソルブで三角フラスコの栓及び内壁を洗いながら添加し、指示薬として0.1%クレゾールレッド−エタノール溶液を4〜6滴添加し、試料が均一になるまで十分に攪拌する。これを、0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬の青紫色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果を下記の計算式を用いて得た値を、樹脂のエポキシ当量とする。
【0034】
エポキシ当量(g/eq.)=(10000×S×C)/〔(B−A)×f〕
S:試料の採取量(g)
A:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量
B:空試験での0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量(ml)
f:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
C:固形分濃度ファクター
【0035】
固形分濃度ファクターは、次の方法で測定した値を用いた。すなわち、エポキシ基含有重合体の溶液約1.0gを精密に秤採り、電気炉にて200℃、3時間加熱した後の残渣をデシケーターにて放冷後、精密に秤量する。その結果を下記の計算式を用いて得た値を、固形分濃度ファクターとする。
【0036】
固形分濃度ファクター:C=W2/W1
1:試料の採取量(g)
2:加熱後の残さの重量(g)
【0037】
また、数平均分子量Mnの測定にはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと省略する。)を用い、ポリスチレン(標準試料 昭和電工(株)製STANDARD SM−105使用)に換算した値で求めた。
【実施例】
【0038】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ制限されるものではない。
【0039】
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 80g、及び3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル 100g、安息香酸アリルエステル 89g、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート[日本油脂(株)製パーブチルI(主成分75%含有)] 4.7gを仕込み、110℃に昇温後、1時間撹拌する。t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネートを、1時間毎、3回に分けて4.7gずつ添加し、添加終了後さらに2時間熟成することによって、エポキシ基含有重合体溶液を得た。反応は窒素気流下で行った。
【0040】
反応はガスクロマトグラフィーで、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステルと安息香酸アリルエステルの残量を測定し、転化率を算出することによって反応を追跡し、両エステルが1%以下になった点を反応終点とした。この時点でのゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCと省略する)の結果と合わせて、重合反応が進行したことを確認した。得られた樹脂の固形分のエポキシ当量は381g/eq.(理論エポキシ当量344g/eq.)、数平均分子量Mnは1,315であった。
【0041】
実施例2
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 96gおよび3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル 100g、n−ヘキサン酸ビニルエステル 78g、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート[日本油脂(株)製パーブチルI(主成分75%含有)] 3.0gを仕込み、110℃に昇温後、1時間撹拌する。t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネートを、1時間毎、3回に分けて3.0gずつ添加し、添加終了後さらに2時間熟成することによって、エポキシ基含有重合体溶液を得た。反応は窒素気流下で行った。
【0042】
反応はガスクロマトグラフィーで、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステルとn−ヘキサン酸ビニルエステルの残量を測定し、転化率を算出することによって反応を追跡し、両エステルが1%以下になった点を反応終点とした。この時点でのGPCの結果と合わせて、重合反応が進行したことを確認した。得られた樹脂の固形分のエポキシ当量は395g/eq.(理論エポキシ当量324g/eq.)、数平均分子量Mnは1,491であった。
【0043】
実施例3
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル 135gおよび3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステル 100g、アクリル酸フェノキシエチル 70g、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン[日本油脂(株)製パーヘキサC(主成分70%含有)] 3.0gを仕込み、120℃に昇温後、1時間撹拌する。 1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンを1時間毎、3回に分けて3.0gずつ添加し、添加終了後さらに2時間熟成することによって、エポキシ基含有重合体溶液を得た。反応は窒素気流下で行った。
【0044】
反応はガスクロマトグラフィーで、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸アリルエステルとアクリル酸フェノキシエチルの残量を測定し、転化率を算出することによって反応を追跡し、両エステルが1%以下になった点を反応終点とした。この時点でのGPCの結果と合わせて、重合反応が進行したことを確認した。得られた樹脂の固形分のエポキシ当量は386g/eq.(理論エポキシ当量310g/eq.)、数平均分子量Mnは1,590であった。
【0045】
実施例4
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 184gおよび5,6−エポキシノルボルナン−2−カルボン酸アリルエステル 100g、安息香酸アリルエステル 84g、t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネート[日本油脂(株)製パーブチルI(主成分75%含有)] 6.1gを仕込み、110℃に昇温後、1時間撹拌する。t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネートを、1時間毎、3回に分けて6.1gずつ添加し、添加終了後さらに3時間熟成することによって、エポキシ基含有重合体溶液を得た。反応は窒素気流下で行った。
【0046】
反応はガスクロマトグラフィーで、5,6−エポキシノルボルナン−2−カルボン酸アリルエステルと安息香酸アリルエステルの残量を測定し、転化率を算出することによって反応を追跡し、両エステルが1%以下になった点を反応終点とした。この時点でのGPCの結果と合わせて、重合反応が進行したことを確認した。得られた樹脂の固形分のエポキシ当量は414g/eq.(理論エポキシ当量356g/eq.)、数平均分子量Mnは994であった。
【0047】
実施例5
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた500mlセパラブルフラスコに、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 108gおよび3,4−エポキシシクロヘキサン−1−メチル−1−カルボン酸アリルエステル 100g、シクロヘキシルプロピオン酸アリルエステル 100g、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン[日本油脂(株)製パーヘキサC(主成分70%含有)]7.1gを仕込み、110℃に昇温後、1時間撹拌する。t−ブチルイソプロピルパーオキシカーボネートを、1時間毎、3回に分けて7.1gずつ添加し、添加終了後さらに3時間熟成することによって、エポキシ基含有重合体溶液を得た。反応は窒素気流下で行った。
【0048】
反応はガスクロマトグラフィーで、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−メチル−1−カルボン酸アリルエステルと安息香酸アリルエステルの残量を測定し、転化率を算出することによって反応を追跡し、両エステルが1%以下になった点を反応終点とした。この時点でのGPCの結果と合わせて、重合反応が進行したことを確認した。得られた樹脂の固形分のエポキシ当量は443g/eq.(理論エポキシ当量391g/eq.)、数平均分子量Mnは1,560であった。
【0049】
実施例1〜実施例5とビスAエポキシ樹脂エピコート1002(ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量)との残留塩素量および誘電率の測定比較結果を、以下の表1に示す:
【0050】
【表1】

【0051】
(1)残留塩素量
各化合物について約0.2gを精密に秤採り、酸素気流中管状炉(三菱化成(株)QF−02)で加熱分解し、発生したハロゲンガスをアルカリに吸収させ、イオンクロマトグラフィー法(Dionex社製DX−500、カラム 昭和電工(株)製Shodex S1−90−4E)にて測定した。
【0052】
(2)誘電率
実施例で得られたエポキシ基含有重合体の溶液と4−メチル−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(東京化成(株)製)をエポキシ当量:無水カルボン酸当量=1:1になるよう配合し、硬化促進剤キュアゾール2E4MZ(四国化成(株))を、実施例で得られたエポキシ基含有重合体の溶液の採取量に固形分濃度ファクターを掛けた重量の1wt%を添加し、良く混合した後、容器径17φmmのフッ素樹脂容器に流し込み、120℃で30分、続いて150℃で2時間加熱し、硬化させ、測定用のサンプルを調製した。インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー(株)製E4991A)を用い、誘電率を測定した。電極には同社の16453Aを用いた。周波数を順次変化させ測定を行い、測定周波数は1MHz〜1GHzとした。同一周波数での積算回数は30回行った。得られたグラフから1MHzにおける誘電率の値を読み取った。測定は複数のサンプルについて行い、平均値を求めて誘電率の値とした。
【0053】
無水カルボン酸当量(g/eq.)とは、酸無水物の分子量を、酸無水物構造(O=C−O−C=O)の数で割った値である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例1のGPCチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f):
【化1】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又はC6H5である。}のいずれかで表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項2】
重合体のエポキシ当量が180g/eq.〜2000g/eq.である、請求項1記載のエポキシ基含有重合体。
【請求項3】
以下の式(a):
【化2】

{式中、R3〜R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項4】
以下の式(a):
【化3】

{式中、R3〜R7=H、R8=CH3である。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項5】
以下の式(a):
【化4】

{式中、R3〜R6=H 、R7=CH3、R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項6】
以下の式(b):
【化5】

{式中、R1〜R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項7】
以下の式(b):
【化6】

{式中、R1〜R7=H 、R8=CH3である。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項8】
以下の式(b):
【化7】

{式中、R1〜R6=H 、R7=CH3、R8=Hである。}で表されるモノマー単位を含むことを特徴とするエポキシ基含有重合体。
【請求項9】
エポキシ基含有重合体の製造方法であって、以下のステップ:
以下の式(g)又は式(h):
【化8】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又C6H5、R9
【化9】

のいずれかである。}のいずれかで表される化合物のエチレン性不飽和結合部分を重合させることを含む前記方法。
【請求項10】
エポキシ基含有重合体の製造方法であって、以下のステップ:
以下の式(g)又は式(h):
【化10】

{式中、R1〜R7=H又はCH3、R8=H、CH3又C6H5、R9
【化11】

のいずれかである。}のいずれかで表される化合物及び他の1種以上のエチレン性不飽和結合を持つ化合物とを共重合させることを含む前記方法。
【請求項11】
前記さらに他の1種以上のエチレン性不飽和結合を持つ化合物が、炭素数20以下であり、かつ、CH2=CHCH2OC(O)−、CH2=CHOC(O)−、−CH=CH2−C(O)−、−CH=CHCH3−C(O)−のいずれかの基を有する、請求項10記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−204642(P2007−204642A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26038(P2006−26038)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有害化学物質リスク削減基盤技術研究開発(非フェノール系樹脂原料を用いたレジスト材料の開発)」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】