説明

エポキシ官能性重合性化合物を含む歯科用組成物

本発明は、少なくとも1個のアリールアルキルエーテル部分と、前記アリールアルキルエーテル部分の各アリール残基に結合された少なくとも1個のハロゲン原子と、少なくとも2個の脂肪族エポキシ部分と、零個のグリシジルエーテル構造とを含むハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体と、開始剤と、任意に充填剤と、任意に、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料の群から選択された添加剤成分とを含む歯科用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエポキシ官能性重合性化合物を含む硬化性歯科用組成物に関する。本組成物は改善された特性を有し、例えば歯科充填用材料として用いることが可能である。
【背景技術】
【0002】
複合材は市場にある周知された歯科用修復材である。しかし、今までの有機系歯科用修復材の殆どは、メタクリレートおよび/またはアクリレートの化学的性質に基づいている。それらは、通常は不飽和成分の光誘導ラジカル重合を経由して硬化する。それらは、高い重合収縮のゆえに、硬化すると非常に大きい応力をしばしば示す。オキシランの化学的性質に基づく歯科用修復材は、より収縮が小さく、そして重合応力がより小さい可能性があることが考えられる。
【0003】
(特許文献1)には、エポキシ樹脂および光開始剤系を含む光硬化性付加重合性組成物が記載されている。エポキシ樹脂はグリシジルエーテルモノマーを含む。
【0004】
(特許文献2)には、カチオン硬化プロセスを経由して重合可能であるエポキシ反応性官能基を含む義歯または歯科用修復材を製造するために有用な歯科用組成物が開示されている。エポキシ反応性官能基には、脂環式エポキシド、グリシジルエーテルまたはオキセタンが挙げられる。
【0005】
(特許文献3)には、エポキシドまたはエポキシドの混合物、充填剤材料、開始剤、禁止剤および/または促進剤を含む重合性物質が記載されている。この物質は比較的高い粘度を有する脂環式エポキシ官能基を含む。
【0006】
(特許文献4)には、エポキシシロキサンおよびポリエポキシ樹脂のダイ接着剤または封入剤が記載されている。重合性混合物は、脂環式エポキシ官能性シロキサンおよび非ケイ素含有ジエポキシ樹脂、非ケイ素含有トリエポキシ樹脂または非ケイ素含有ポリエポキシ樹脂を含む。この樹脂は、特に臭素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルの樹脂であってもよい。
【0007】
(特許文献5)には、脂肪族エポキシド樹脂および脂環式エポキシド樹脂を含むケイ素化合物に基づく重合性調製物が開示されている。その中で開示された調製物は、分子当たり少なくとも1個の脂環式エポキシド基を有する重合性化合物を含む。
【0008】
最新技術から知られている歯科用複合材の欠点は、グリシジルエーテルに基づく重合性化合物が重合反応においてさほど反応性ではないことである。更なる欠点は、歯科用複合材材料の成分の一部が美的理由で望ましくない色を硬化中に形成することである。色の形成は、L***スケールに関する値を用いて硬化した組成物上で測定することが可能である。それぞれ赤色と黄色の量を表すa*値およびb*値は、硬化した歯科用組成物の美的特性を指示するために特に重要な値である。必要な場合に色を補正するために組成物に添加することが可能である歯科用組成物に関する一般的な染料は、黄色染料および赤色染料である。従って、低いa*値およびb*値は望ましい。
【0009】
従って、本発明の目的は上述した問題の1つ以上を軽減することである。
【0010】
本発明のもう1つの目的は、改善された特性を有する組成物、特に硬化中の発色の低さと合わせて硬化反応においてより反応性の高いエポキシ部分を有する組成物を提供することである。
【0011】
【特許文献1】国際公開第98/47046号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/19967号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/22521号パンフレット
【特許文献4】国際公開第98/33645号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/066535号パンフレット
【特許文献6】EP第0897710A1号明細書
【特許文献7】国際公開第98/47047号パンフレット
【特許文献8】米国特許第3,971,754号明細書
【特許文献9】EP第0238025A1号明細書
【特許文献10】米国特許第6,387,981号明細書
【特許文献11】米国特許第6,572,693号明細書
【特許文献12】国際公開第01/30305号パンフレット
【特許文献13】国際公開第01/30306号パンフレット
【特許文献14】国際公開第01/30307号パンフレット
【特許文献15】国際公開第03/063804号パンフレット
【特許文献16】米国特許第5,322,440A1号明細書
【特許文献17】米国特許第4,391,590号明細書
【特許文献18】米国特許第5,165,890号明細書
【特許文献19】米国特許第4,788,268号明細書
【非特許文献1】フーベン−ウェイル(Houben−Weyl)著、「有機化学の方法(Methoden der Organischen Chemie)」、第VI/3巻、ゲオルグ・ティエメ・ベルラグ(Georg Thieme Verlag)発行、シュツッツガルト(Stuttgart)、1965、第4版。
【非特許文献2】ターベル(Tarbell,D.S.)、ウィルソン(Wilson,J.W.)著、J.Am.Chem.Soc.、1942、64(5)、1066〜1070。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の意味内の「含む(comprise)」および「含む(contain)」という用語は、機能の網羅的でないリストを含む。同様に、「1つの」または「a」という単語は「少なくとも1つ」の意味で理解されるべきである。
【0013】
本発明による「歯科用組成物」という用語は、例えば、接着剤、修復材およびセメントなどの種々の目的のために歯科分野で用いられるべき硬化性組成物である。代表的には、こうした材料は数グラムのような少量で歯科用途において用いられる。
【0014】
以下のテキストで記載された組成物を提供することにより、上述した目的の1つ以上を達成することが可能であることが見出された。
【0015】
驚くべきことに、グリシジルエーテル部分を含まない脂肪族エポキシなど重合性基を含むハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を用いると、改善された特性を有する硬化性歯科用組成物を提供することを可能にすることが見出された。
【0016】
従って、本発明は、
a)少なくとも1個のアリールアルキルエーテル部分であって、各アリール残基が少なくとも1個のハロゲン原子で置換されているアリールアルキルエーテル部分と、
少なくとも1個の脂肪族エポキシ部分と、
を各々が含む少なくとも1種のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体であって、グリシジルエーテル部分を含まない誘導体と、
b)開始剤と、
c)任意に充填剤と、
d)任意に、変性剤、安定剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料の群から選択された添加剤成分と、
を含む硬化性歯科用組成物に関する。
【0017】
1種以上のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、本発明の範囲内の歯科用組成物を提供するための反応性要素として単独で、または脂肪族エポキシ官能基および/または脂環式エポキシ官能基および/またはエポキシ以外の他の官能基の重合性化合物を含む他の成分との混合物中で用いることが可能である。本発明の組成物は、必要ならば他の反応性成分および/または非反応性成分も含んでよい。
【0018】
本発明は以下で記載されたように歯科用組成物を製造する方法にも関連する。
【0019】
更に、本発明は以下で記載されたように組成物を使用する方法に関連する。
【0020】
本発明の硬化性歯科用組成物中のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を用いることにより、硬化(例えば、光誘導カチオン開環重合)中の発色が大幅に減少されることが見出された。
【0021】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の反応性は、文献から知られている類似の脂肪族エポキシ官能性アリールアルキルエーテル誘導体の反応性より一般に高い。
【0022】
驚くべきことに、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は同等に高い屈折率および高い分子量を好ましく有する。ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の屈折率は、最新技術から知られている類似の脂肪族エポキシ官能性アリールアルキルエーテル誘導体と比べて特に高い場合がある。これは、(例えば、コーヒー、お茶、赤ワインからの)水および/または水溶性染料の取込みによる汚れおよび/または膨潤に歯科用材料が耐えなければならないので歯科用材料のために多少重要である。
【0023】
本発明のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体により、改善された美的特性を有する歯科用材料を達成することが可能である。
【0024】
本発明により記載された歯科用組成物のもう1つの利点は、それらの適切な親油性である。
【0025】
好ましくは、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、1.530〜1.680、好ましくは1.560〜1.650、より好ましくは1.590〜1.620の屈折率を有する。
【0026】
好ましくは、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、400〜10,000g/モル、好ましくは600〜5,000g/モル、より好ましくは800〜2,000g/モルの平均分子量を有する。
【0027】
好ましくは、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、40Pas未満、好ましくは20Pas未満、より好ましくは5Pas未満の粘度を有する。
【0028】
好ましくは、本発明の歯科用組成物は、1重量%〜90重量%、好ましくは3重量%〜65重量%、より好ましくは10重量%〜30重量%の1種以上のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を含むことが可能である。
【0029】
好ましくは、開始剤の量は、0.01〜25重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜3重量%の範囲であることが可能である。
【0030】
充填剤が歯科用組成物中に存在する場合、それは、3〜90重量%、好ましくは25〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%の量で好ましく存在する。
【0031】
1種以上の任意の添加剤成分は、0〜25重量%、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜3重量%の量で存在することが可能である。
【0032】
これらの上述した範囲のすべては硬化性組成物の重量%として計算される。
【0033】
好ましくは、本発明の硬化性歯科用組成物は、硬化した状態にある時に以下の特徴の少なくとも1つを保持する。
【0034】
硬化した歯科用組成物の不透明度は、好ましくは10〜88%である。それは、より好ましくは40〜86%、最も好ましくは70〜84%であるべきである。
【0035】
硬化した歯科用組成物の圧縮強度は、好ましくは約150MPaより大きい、好ましくは約200MPaより大きい、より好ましくは約250MPaより大きい。
【0036】
硬化した歯科用組成物の曲げ強度は、好ましくは約50MPaより大きい、好ましくは約65MPaより大きい、より好ましくは約80MPaより大きい。
【0037】
硬化した歯科用組成物の発色(a*値)は、−15〜0、好ましくは−8〜0、より好ましくは−8〜−4であるべきである。
【0038】
硬化した歯科用組成物の発色(b*値)は、0〜18、好ましくは1〜16、より好ましくは2〜14であるべきである。好ましくは、それは14を超えるべきではない。
【0039】
AMES変異原性試験プロトコールによって決定されたハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の変異原性は、好ましくは陰性であるべきである。
【0040】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は以下の化学部分を含む。
− 少なくとも1個、好ましくは2個、より好ましくは2〜4個のアリールアルキルエーテル部分。
ここで、前記アリール基は、好ましくは少なくとも1個、より好ましくは2個のハロゲン原子によって置換されている。
− 少なくとも2個、好ましくは3〜4個、より好ましくは3個の脂肪族エポキシ部分。
− 零個のグリシジルエーテル構造。
【0041】
本発明の一実施形態において、歯科用組成物は、一般式(A’)
【0042】
【化1】

(式中、
各Aは独立して、1〜30個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基または4〜30個の炭素原子を有する脂肪族エポキシ部分を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Bは独立して、H、Br、Clまたは(2,3−エポキシ)プロピルを表し、好ましくはClであり、
各Dは独立してBrまたはClを表し、好ましくはClであり、
各Eは独立して、H、1〜100の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
aは1、2、3または4(好ましくは3、より好ましくは1または2)であり、
eは1、2、3または4(好ましくは3または2)であり、
aまたはeの少なくとも一方=1であり、
置換基Aの脂肪族エポキシ部分はグリシジルエーテル構造を含まないとともに隣接O原子とグリシジルエーテルを形成しない)
の少なくとも1個の基を各々が含む異なるハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の1種または混合物を含む。
【0043】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の好ましい実施形態は、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の分子構造および一般式(A’)のアリールアルキルエーテル部分の数aまたはeに応じて式(I〜III)によって特徴付けられることが可能である。
【0044】
好ましい実施形態おいて、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、唯一のアリールアルキルエーテル部分およびAとしてエポキシアルキル残基を含み(すなわち、a=1、e=1およびA=エポキシアルキル)、式(I)によって特徴付けられることが可能である。
【0045】
【化2】

式中、
DはBrまたはClを表し、好ましくはClであり、
EはH、BrまたはClを表し、好ましくはClであり、
FはH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
GはH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Kは独立してH、メチルまたはエチルを表し、
cは2〜11、好ましくは5、より好ましくは4、最も好ましくは2または3であり、
他の指標は上で定義された通りである。
【0046】
以下の化合物は、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の式(I)による好ましい例である。
【0047】
【化3】


【0048】
本発明の好ましい実施形態において、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、1個を上回るアリールアルキルエーテル部分を含み、Bは(2,3−エポキシ)プロピル残基(すなわち、a≧2およびe=1ならびにB=(2,3−エポキシ)−プロピル)であり、式(II)によって特徴付けられることが可能である。
【0049】
【化4】

式中、
Aは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Dは独立してBrまたはClを表し、好ましくはClであり、
各Eは独立してH、BrまたはClを表し、好ましくはClであり、
aは2、3または4、好ましくは3、より好ましくは2であり、
他の指標は上で定義された通りである。
【0050】
以下の化合物は、式(II)による好ましいハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の例である。
【0051】
【化5】




【0052】
もう1つの好ましい実施形態において、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、1個を上回るアリールアルキルエーテル部分およびAとしてエポキシアルキル残基を含み(すなわち、a=1およびe≧2ならびにA=1〜12個の炭素原子を有するエポキシアルキル)、式(III)によって特徴付けられることが可能である。
【0053】
【化6】

式中、
各Bは独立してH、BrまたはClを表し、好ましくはClであり、
各Dは独立してBrまたはClを表し、好ましくはClであり、
Eは1〜80個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Fは独立してH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル部分またはアリール部分を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Gは独立してH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル部分またはアリール部分を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Kは独立してH、メチルまたはエチルを表し、
c=2〜11、好ましくは4、より好ましくは2または3であり、
eは2、3または4、好ましくは3、より好ましくは2であり、
他の指標は上で定義された通りである。
【0054】
以下の化合物は、式(III)によるハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の好ましい例である。
【0055】
【化7】





【0056】
有用な開始剤は、硬化性組成物のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の硬化を開始させることが可能である。
【0057】
こうした開始剤は光硬化性または化学硬化性あるいはレドックス硬化性の反応を経由して硬化し得る。開始剤のすべてのタイプは当業者に周知されている。
【0058】
こうした開始剤の例は、重合を開始させる例えば、ルイス酸またはブレンステッド酸あるいはこうした酸を遊離する化合物、例えば、BF3またはそのエーテル付加体(例えば、BF3.THF、BF3*Et2O)、AlCl3、FeCl3、HPF6、HAsF6、HSbF6またはHBF4あるいは例えば、(エタ−6−クメン)(エタ−5−シクロペンタジエニル)ヘキサフルオロ燐酸鉄、(エタ−6−クメン)(エタ−5−シクロペンタジエニル)テトラフルオロ硼酸鉄、(エタ−6−クメン)(エタ−5−シクロペンタジエニル)ヘキサフルオロアンチモン酸鉄、置換ジアリールヨードニウム塩およびトリアリールスルホニウム塩などの、UV線または可視光線よる照射後重合を開始させるあるいは熱および/または圧力によって重合を開始させる物質である。促進剤は開始剤と組み合わせて用いることが可能である。有用な促進剤の例には、過エステル(perester)、過酸化ジアシル、ペルオキシジカーボネートおよびヒドロペルオキシ型のペルオキシ化合物が挙げられる。ヒドロペルオキシドが好ましく用いられる。クメン中の約70〜90%溶液のクメンヒドロペルオキシドは特に好ましい促進剤である。光開始剤対クメンヒドロペルオキシドの比は、例えば1:0.001〜1:10の広い限界内で異なることが可能であるが、用いられる比は、好ましくは1:0.1〜1:6、最も好ましくは1:0.5〜1:4である。シュウ酸、8−ヒドロキシキノリン、エチレンジアミン四酢酸および芳香族ポリヒドロキシ化合物などの錯化剤の使用は可能である。
【0059】
同様に、異なる成分からなる開始剤系は本発明において用いることが可能であり、例えば(特許文献6)、(特許文献1)または(特許文献7)に記載されている。好ましい開始剤系には、(例えば、2−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート)のようなベンゾエートとして)第三芳香族アミンおよび/または(例えばアントラセンとして)適するポリ縮合芳香族化合物と合わせて、(例えば樟脳キノンとして)1,2ジケトン、(例えば、トリクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートまたはトリクミルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートとして)貧配位アニオン(poor cordinating anion)を有するヨードニウム塩が挙げられる。
【0060】
本発明の組成物は1種以上の充填剤も含んでよい。石英、粉砕ガラス、シリカゲルならびに発熱性珪酸および沈降珪酸またはそれらの粒体のような無機充填剤は好ましく用いられる。X線不透明充填剤も少なくとも部分的に好ましく用いられる。これらは、例えば、ストロンチウム、バリウムまたはランタンを含有するガラスなどの例えばX線不透明ガラスであることが可能である(例えば、(特許文献8)に記載されたもの)。充填剤の一部は、(例えば、(特許文献9)による)例えば、三弗化イットリウム、ヘキサフルオロジルコン酸ストロンチウムまたは希土類金属の弗素化物などのX線不透明添加剤からなってもよい。ポリマーマトリックスに充填剤をより良く導入するために、無機充填剤を疎水化することが有益である。通例の疎水化剤には、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシランおよび[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシランなどのシランが挙げられる。充填剤は、20μm未満、好ましくは5μm未満、特に2μm未満の平均粒径および150μm、好ましくは70μm、特に25μmの上限粒度を好ましく有する。こうした充填剤は、硬化性組成物の約3〜約90重量%、特に約25〜約80重量%または約50〜約75重量%の量で存在することが可能である。
【0061】
適する他の充填剤は、(特許文献10)および(特許文献11)ならびに(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)で開示されている。これらの参考文献に記載された充填剤成分には、ナノサイズシリカ粒子、ナノサイズ金属酸化物粒子およびそれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤も米国特許出願、発明の名称「ナノジルコニア充填剤を含む歯科用組成物(Dental Compositions Containing Nanozirconia Fillers)」(代理人事件番号59609US002)、「ナノ充填剤を含む歯科用組成物および関連方法(Dental Compositions Containing Nanofillers and Related Methods)」(代理人事件番号59610US002)および「歯科用組成物の屈折率を調節するためのナノ粒子の使用(Use of Nanoparticles to Adjust Refractive Index of Dental Compositions)」(代理人事件番号59611US002)に記載されている。それらのすべては2004年5月17日出願であった。
【0062】
石英、クリストバライト、珪酸カルシウム、珪藻土、珪酸ジルコニウム、(ベントナイトなどの)モンモリロナイト、ゼオライト、(アルミニウム珪酸ナトリウム)などのモレキュラーシーブ、(酸化アルミニウムまたは酸化亜鉛あるいはそれらの混合酸化物などの)金属酸化物粉末、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、プラスター、ガラスおよびプラスチック粉末などの非強化用充填剤も用いてよい。
【0063】
適する充填剤は、例えば、発熱性珪酸または沈降珪酸およびシリカアルミニウム混合酸化物などの強化用充填剤でもある。上述した充填剤は、例えば、オルガノシランまたはシロキサンで処理することにより、またはヒドロキシル基をアルコキシ基にエーテル化することにより疎水化することが可能である。充填剤の1つのタイプまたは少なくとも2種の充填剤の混合物を本発明において用いることが可能である。
【0064】
強化用充填剤と非強化用充填剤の組み合わせは特に好ましい。この点に関して、強化用充填剤の量は、硬化した組成物の約1〜約10重量%まで、特に約2〜約5重量%までの範囲である。
【0065】
指定された全体範囲の差、すなわち約2〜約89重量%は、非強化用充填剤によって占められる。
【0066】
表面処理によって好ましく疎水化された熱分解で調製された高度に分散した珪酸は強化用充填剤として好ましい。表面処理は、例えば、充填剤をジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルシクロテトラシロキサンまたはポリメチルシロキサンで処理することによって行うことが可能である。
【0067】
特に好ましい非強化用充填剤は、表面処理されることが可能である石英、クリストバライト、炭酸カルシウムおよびアルミニウム珪酸ナトリウムである。表面処理は、強化用充填剤の場合に記載されたのと同じ方法で行うことが可能である。
【0068】
安定剤、変性剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、希薄剤、高分子増粘剤、界面活性剤および希釈剤のような任意の添加剤成分を単独で、または混合して添加することが可能である。
【0069】
上述したハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、エポキシ基のカチオン開環重合を好ましくは経由して硬化可能である歯科用組成物中のモノマーとして用いることが可能である。
【0070】
本発明の歯科用組成物は、例えば、歯科充填用材料、歯冠材料および架工義歯材料、ベニヤ材料、インレーまたはアンレー、小蒿裂溝封鎖剤、結合剤を調製するために用いることが可能である。
【0071】
本発明の歯科用組成物は、1パート混合物または多パート混合物として提供することが可能である。これは、通常は用いられる開始剤に応じて決まる。開始剤が光硬化開始剤である場合、歯科用組成物は1パート混合物として提供することが可能である。開始剤がレドックス硬化開始剤である場合、歯科用組成物は多パート混合物として提供するべきである。
【0072】
従って、本発明は、ベースパート(i)および触媒パート(ii)を含む要素からなるキットにも関連する。ここで、ベースパート(i)は、1種以上のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を含み、触媒パート(ii)は開始剤を含む。充填剤および任意の添加剤成分は、ベースパートまたは触媒パート中に存在するか、あるいは両方のパートの中に存在してもよい。
【0073】
本発明の歯科用組成物は、容器またはカートリッジ、好ましくは歯科用コンプル中に通常は包装される。こうしたコンプルの例は、(特許文献16)、(特許文献17)または(特許文献18)において記載されている。
【0074】
本発明は、
a)ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体、開始剤、任意に充填剤および任意に添加剤成分を提供する工程と、
b)工程a)の成分を混合する工程と、
を含む硬化性歯科用組成物を製造する方法にも関連する。ここで、エポキシ化反応を経由してハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を得ることが可能である。
【0075】
好ましくは、本発明のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、(非特許文献1)のp385ffに記載された反応などのオレフィン前駆体のエポキシ化反応を経由して合成することが可能である。
【0076】
好ましくは、エポキシ化反応は、スキーム1で示したように有機過酸R2−CO3H(bb)の使用によってオレフィン前駆体(aa)のC=C二重結合を3員環式エーテル(cc)に変換する酸化反応である。
【0077】
【化8】

式中、
1は少なくとも1個の脂肪族エポキシ基を含む脂肪族部分、脂環式部分、芳香族部分、(環式)脂肪族芳香族部分または芳香族(環式)脂肪族部分を表し、エポキシ化反応を妨げないあらゆる原子または部分、例えば、O原子、Br原子、Cl原子およびSi原子によって置換されることが可能である。
2は1個以上のBr原子、Cl原子、F原子によって任意に置換されていてもよい脂肪族部分または芳香族部分を表す。
ここで、R1は3員環式エーテル(cc)がグリシジルエーテル構造を含まないように選択される。
【0078】
例えば、本発明のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体は、(特許文献19)(欄6〜17の調製実施例1、2、4、5、6および7)において類似シロキサン系化合物のために記載されたように脂肪族オレフィン前駆体(aa)を有機過酸(bb)と反応させることによってスキーム1によりエポキシ化反応を経由して得ることが可能である。この特許の開示は本明細書において参考として援用される。
【0079】
適する脂肪族オレフィン前駆体(aa)の例には、(例えば(非特許文献2)によって記載された方法により合成することが可能である)例えば、1,5−ビス(2−アリル−6−クロロフェノキシ)ペンタンまたは2,2−ビス[3,5−ジクロロ−4−(4−ペンテニルオキシ)フェニル]プロパン、および例えば(非特許文献1)内のそれぞれp57(第1の調製実施例)、p56(第1の調製実施例)に記載の例えばアリルフェニルエーテルまたはbut−2−エニル−(2−メトキシフェニル)エーテルのような、または例えば(非特許文献2)によって記載された例えばアリル−(2−クロロフェニル)エーテルのような類似化合物のために記載された1,5−ジブロモペンタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたは1−ブロモ−4−ペンテンが挙げられる。
【0080】
以下の化合物は、式(I)によるエーテル誘導体化合物を提供するためのハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の合成のためにスキーム1により用いられる好ましい脂肪族オレフィン前駆体(aa)の例である。
【0081】
【化9】


【0082】
以下の化合物は、式(II)によりハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を調製するためにスキーム1により用いられる好ましい脂肪族オレフィン前駆体(aa)の例である。
【0083】
【化10】



【0084】
以下の化合物は、式(III)によりハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を調製するためにスキーム1により用いられる好ましい脂肪族オレフィン前駆体(aa)の例である。
【0085】
【化11】





【実施例】
【0086】
本発明を以後実施例によって説明する。実施例は例示目的のみのためであり、本発明を限定することを意図していない。
【0087】
特に指示がない限り、実施例の測定は以下で記載した方法により標準温度および標準圧力(「STP」、すなわち25℃および1023hPa)で行った。
【0088】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の屈折率は、「クルエス(Kruess)」AR4D装置(アッベ(Abbe)の測定原理による屈折計)で測定した。屈折率は20.0℃および589nmの波長で測定した。
【0089】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の分子量(Mw)はGPCで決定した。
【0090】
硬化した歯科用組成物の不透明度および測色は、規定高さ3.6(±0.1)mmおよび直径20(±0.1)mmの試験片によって測定した。これらは、検査しようとする材料を適切に高い環に均一に且つ泡がないようにフリーで充填し、平らで透明でシリコーン油処理されたガラススライドの間で照明装置(「トリライト(Trilight)」(登録商標)、3M ESPS)によって重なり面において40秒ごとに接触して材料に照射することにより調製した。その後、米国のハンター・ラブ・アソーシエーツ・ラボラトリー(Hunter Lab Associates Laboratory,Inc.)の測色装置「ハンターラブ・ラブスキャン・スペクトラルカラリメータ(HunterLab LabScan Spectralcolorimeter)」(ソフトウェア、「スペックウェア・ソフトウェア・バージョン(SpecWare Software Version)」1.01)で暗所において標準温度で追加の24時間試験片を貯蔵して乾燥後に不透明度を測定し、不透明度を装置によって%値で与えた。その後、米国のハンター・ラブ・アソーシエーツ・ラボラトリー(Hunter Lab Associates Laboratory,Inc.)の測色装置「ハンターラブ・ラブスキャン・スペクトラルカラリメータ(HunterLab LabScan Spectralcolorimeter)」(黒の背景に対して12mmアパチャ、ソフトウェア、「スペックウェア・ソフトウェア・バージョン(SpecWare Software Version)」1.01)で暗所において標準温度で追加の24時間試験片を貯蔵して乾燥後に色を測定し、L***スケールで明度として装置によって色を与えた。
【0091】
AMES変異原性試験プロトコールに準拠したハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の変異原性は、OECDガイドライン471およびISO10993−3(2003)に準拠して試験してきた。
【0092】
表1、2および3に記載された化合物および歯科用組成物は上で記載した参考文献により調製した。
【0093】
それらの屈折率は上述したように測定した。
【0094】
実施例1〜6は、参考文献化合物1〜5より高い屈折率および高い分子量を示している。
【0095】
表2は、参考文献化合物を含む歯科用組成物と比べてハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を含む歯科用組成物の実施例のL***値としての硬化後の色および不透明度を示している。実施例1〜6のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体を含む歯科用組成物11〜17の実施例が大幅により低いa*値およびb*値を有することが分かる。特に、それらは低いb*値と組み合わせた低いa*値を実証している。それらは有用なL*値および良好な不透明度を更に示している。
【0096】
表3は、実施例1〜6の化合物のすべてがAMES変異原性試験プロトコールに準拠して、試験済み非変異原性であることを明らかにしている。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1個のアリールアルキルエーテル部分であって、各アリール残基が少なくとも1個のハロゲン原子で置換されているアリールアルキルエーテル部分と、
少なくとも1個の脂肪族エポキシ部分と、
を各々が含む少なくとも1種のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体であって、グリシジルエーテル部分を含まない誘導体と、
b)開始剤と、
c)任意に充填剤と、
d)任意に、変性剤、安定剤、染料、顔料、チキソトロープ剤、流動改善剤、高分子増粘剤、界面活性剤、芳香物質、希釈剤および香料の群から選択された添加剤成分と、
を含む硬化性歯科用組成物。
【請求項2】
a)ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が1.530を上回る、好ましくは1.560を上回る、より好ましくは1.590を上回る屈折率を有する、
b)ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が40Pas未満、好ましくは20Pas未満、より好ましくは5Pas未満の粘度を有する、
c)ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が400〜10,000g/モル、好ましくは600〜5,000g/モル、より好ましくは800〜2,000g/モルの平均分子量を有する、
d)硬化した歯科用組成物の不透明度が10%を上回る、
e)硬化した歯科用組成物の発色(b*値)が0〜18、好ましくは1〜16、より好ましくは2〜14である、
の内の少なくとも1つの要求事項を満たす、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
全組成物を基準にして、
a)1〜90重量%、好ましくは3〜65重量%、より好ましくは10〜30重量%のハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の1種または混合物と、
b)0.01〜25重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の開始剤と、
c)0〜90重量%、好ましくは25〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%の充填剤と、
d)0〜25重量%の添加剤成分と、
を含む、請求項1または2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が、一般式(A’):
【化1】

(式中、
各Aは独立して、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールアルキルまたはアリールシクロアルキル基あるいは4〜30個の炭素原子を有する脂肪族エポキシ部分を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Bは独立してH、Br、Clまたは(2,3−エポキシ)−プロピルを表し、
各Dは独立してBrまたはClを表し、
各Eは独立してHまたは1〜100個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、N、Oによって置換されていることが可能であり、
a=1、2、3または4であり、
e=1、2、3または4であり、
ここでaまたはeの少なくとも一方は1であり、そして、
置換基Aの脂肪族エポキシ部分はグリシジルエーテル構造を含まないとともに隣接O原子とグリシジルエーテルを形成しない)
の少なくとも1個の基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が、式(I):
【化2】

(式中、
DはBrまたはClを表し、
EはH、BrまたはClを表し、
FはH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
GはH、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Kは独立してH、メチルまたはエチルを表し、
c=2〜11であり、
他の指標は請求項4で定義された通りである);
式(II):
【化3】

(式中、
Aは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Dは独立してBrまたはClを表し、
各Eは独立してH、BrまたはClを表し、
a=2、3または4であり、
他の指標は請求項4で定義された通りである);
または式(III):
【化4】

(式中、
各Bは独立してH、BrまたはClを表し、
各Dは独立してBrまたはClを表し、
Eは1〜80個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基またはアリールシクロアルキル基を表し、
各Fは独立してH、1〜6の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Gは独立してH、1〜6の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、ここで、1個以上のC原子またはH原子は、Br、Cl、NまたはOによって置換されていることが可能であり、
各Kは独立してH、メチルまたはエチルを表し、
c=2〜11であり、
e=2、3または4であり、
他の指標は請求項4で定義された通りである);
の1つによって表される、請求項4に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が、
【化5】








から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
開始剤が光硬化開始剤またはレドックス硬化開始剤あるいは両方の組み合わせを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
充填剤が強化用充填剤および/または非強化用充填剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
容器またはカートリッジに充填された、請求項1〜8のいずれか1項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
少なくともベースパート(i)および少なくとも触媒パート(ii)を含む要素からなるキットであって、該ベースパート(i)が請求項1〜9に記載されたハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の1種または混合物を含み、該触媒パート(ii)が開始剤を含み、充填剤および添加剤成分が任意に、該ベースパートまたは該触媒パート中に存在するか、あるいは該ベースパート及び該触媒パート中に存在するキット。
【請求項11】
a)請求項1〜9に記載されたハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体、開始剤、任意に充填剤および任意に添加剤成分を提供する工程と、
b)工程a)の成分を混合する工程と、
を含む硬化性歯科用組成物を製造する方法であって、ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体が、エポキシ化反応を経由して得られる方法。
【請求項12】
前記エポキシ化反応がオレフィン前駆体化合物を有機過酸と反応させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
歯科充填用材料、歯冠材料および架工義歯材料、ベニヤ材料、インレーまたはアンレーとして請求項1〜9のいずれか1項に記載の歯科用組成物を用いる方法。
【請求項14】
a)ハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体および開始剤を含む歯科用組成物を提供する工程と、
b)該歯科用組成物を表面に被着させる工程と、
c)該歯科用組成物を硬化させる工程と、
を含む方法において歯科用材料を調製するための請求項1〜9のいずれか1項に記載されたハロゲン化エポキシ官能性エーテル誘導体の使用。

【公表番号】特表2008−505941(P2008−505941A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520670(P2007−520670)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007748
【国際公開番号】WO2006/005365
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】