説明

エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた繊維強化複合材料

【課題】60℃以下の比較的低温において、粘度上昇が小さいために樹脂含浸性に優れ、しかも1時間以内の短時間で脱型可能な硬化物となる生産性に優れたエポキシ樹脂組成物、およびこれを用いることにより、表面意匠性に優れる繊維強化複合材料を提供することにある。
【解決手段】少なくともエポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを30〜90質量%、ノルボルナンジアミンを70〜10質量%含んでなるものであるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料に好適に用いられるエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて得られる繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料(以下、FRPと略すことがある)は、強化繊維とマトリックス樹脂の利点を活かした材料設計ができるため、航空宇宙分野をはじめ、スポーツ分野、自動車分野、一般産業分野等に広く用途が拡大されている。
【0003】
強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維等が用いられる。マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いられるが、強化繊維への含浸が容易な熱硬化性樹脂が用いられることが多い。かかる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂等が用いられる。
【0004】
FRPの製造には、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、RTM(Resin Transfer Molding)法等の方法が適用される。
【0005】
この中でも、型内に配置した強化繊維基材に液状の熱硬化性樹脂組成物を注入し、加熱硬化する方法であるRTM法は、複雑な形状を有するFRPを成形できるという大きな利点を有する。
【0006】
FRPを自動車用途、なかでも、フード(ボンネット)、ルーフ、トランクリッド、ドアなどの外板に用いようとする場合、軽量性、強度および弾性率などの機械特性が優れるといった機能面だけでなく、意匠面においても、写像が鮮明に映し出される様な平滑な表面を有することが求められる。
【0007】
しかしながら、強化繊維の織物、編み物などの凹凸を有する強化繊維基材を用いてFRPを製造しようとすると、平滑な表面が得られにくいという問題があった。これは、FRPの表面に織物、編み物などの織り柄・編み柄を反映した凹凸が生じる現象であり、この凹凸は「プリントスルー」と呼ばれている。この原因は、マトリックス樹脂の硬化反応に伴う収縮、および硬化温度から室温にまで冷却する際の熱収縮という2つの要因に起因している。すなわち、強化繊維基材の凹部におけるマトリックス樹脂の厚みは、他の部分におけるマトリックス樹脂の厚みよりも大きいため、強化繊維基材の凹部ではより収縮量が大きくなり、その結果、FRP表面に凹凸が生じるものである。
【0008】
FRP表面に凹凸を生じさせる要因の1つである熱収縮は、熱収縮量をΔL(μm)、マトリックス樹脂の厚みをL(μm)、マトリックス樹脂の線膨脹係数をα(K−1)、硬化温度と室温との温度差をΔT(K)とするとΔL=α×L×ΔTで表される。従って、熱収縮量を小さくし、FRP表面の凹凸を小さくしようとする場合、硬化温度は低く、室温に近いほど有利である。
【0009】
上記理由から、熱収縮量を小さくする上では、室温硬化型のエポキシ樹脂組成物が最も有利であり、その硬化剤として直鎖脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、メルカプタン類等を用いたエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、非特許文献1、特許文献1〜3参照)。
【0010】
しかしながら、これら非特許文献1、および特許文献1〜3で開示されるエポキシ樹脂組成物は、室温での硬化に7日間程度の長時間を要するため生産性が悪いか、逆に室温で数分間という短時間で硬化してしまうため、RTM法によりFRPを製造する場合、強化繊維基材への含浸性が極端に悪く、未含浸部ができる問題があった。さらに、硬化剤として用いられる直鎖脂肪族ポリアミンやメルカプタン類は、分子骨格自体が柔軟であり、得られる樹脂硬化物の耐熱性が低い欠点がある。
【0011】
一方、100℃以下の比較的低温で硬化可能な加熱硬化型のエポキシ樹脂組成物として、40〜70℃の低温活性タイプの硬化剤と、120〜170℃の高温活性タイプの硬化剤からなる混合系硬化剤を用いるエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、および100℃以下で活性化する加熱硬化型の潜在性硬化剤と高温での二次硬化に必要なアミン系硬化剤とからなるエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0012】
しかしながら、これら特許文献で示されるエポキシ樹脂組成物は、脱型に必要な一次硬化に0.5〜2時間の長時間を要するため、依然として生産性が不十分であり、またプリプレグに適した高粘度組成物であるため、RTM法のごとく低粘度が要求される方法には適していない。
【0013】
また、加熱硬化型のエポキシ樹脂組成物のうち、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂と、芳香族ポリアミン化合物および/または脂環族ポリアミン化合物からなり、RTM法に適用可能な低粘度と、60〜200℃において2時間以内の硬化とを両立したエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献6)。
【0014】
しかしながら、該特許文献では、60℃以下の比較的低温において、1時間以内の硬化を可能とする具体的な組成、および60℃以下の比較的低温での硬化が熱収縮量を小さくし、ひいてはFRPの意匠性が向上することについて、何ら示唆されていない。
【0015】
従って、60℃以下の比較的低温において、1時間以内の短時間で硬化が可能であり、さらに強化繊維基材への含浸性を両立したエポキシ樹脂組成物、およびFRPの表面凹凸が小さく、意匠性に優れたFRPが要望されている。
【非特許文献1】室井総一・石村秀一著、入門エポキシ樹脂 第1版第2刷、株式会社高分子刊行会、第73〜84頁
【特許文献1】特公平7−49572号公報
【特許文献2】特開平6−248053号公報
【特許文献3】特開平8−253556号公報
【特許文献4】特公平7−121989号公報
【特許文献5】特開2003−96163号公報
【特許文献6】国際公開第00/53654号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のような現状を鑑み、本発明の課題は、60℃以下の比較的低温において、粘度上昇が小さいために樹脂含浸性に優れ、しかも1時間以内の短時間で脱型可能な硬化物となる生産性に優れたエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いることにより、熱収縮が小さく、表面意匠性に優れる繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は、少なくともエポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを30〜90質量%、ノルボルナンジアミンを70〜10質量%含んでなるものであるエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いて得られる繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物によれば、表面意匠性に優れる繊維強化複合材料を短時間で成形することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者らは、特定の構造を有する脂環族ポリアミン硬化剤が特定の割合で配合されてなるエポキシ樹脂組成物によって、従来よりも樹脂の注入作業性と強化繊維への含浸性が大きく改善され、さらには1時間以内で硬化が可能なため生産性に優れ、得られるFRPについても、優れた表面意匠性を備えたものとなることを見出し、本発明に至った。
【0020】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について説明する。なお、本発明において、「エポキシ樹脂」とは1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を言う。また、ポリマー化ないしは硬化反応に必要な要素が混合されたものを「エポキシ樹脂組成物」、ポリマー化ないしは硬化反応がなされたものを「エポキシ樹脂硬化物」(以下、単に「樹脂硬化物」、「硬化物」、もしくは「エポキシ樹脂組成物の硬化物」と称することもある。)と定義する。また、「ポリアミン」とは、分子内に複数のアミン性窒素原子を有し、かつ複数の活性水素を有する化合物を意味する。また、「活性水素」とは、アミン性窒素原子に結合した水素原子をいう。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)からなり、該硬化剤(B)が全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを30〜90質量%、ノルボルナンジアミンを70〜10質量%含むことが必要である。なお、硬化剤(B)は、例えば、脂環族ポリアミン、直鎖脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンなど、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン以外の他の成分が含まれていても良く、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンとノルボルナンジアミンのみで構成されている必要はないが、かかる他の成分は、全硬化剤(B)100質量%のうち、20質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。また、硬化剤(B)には、当該他の成分が実質的に含まれていなくても良い。
【0022】
一般に、ポリアミン系硬化剤は化学構造から脂肪族、脂環族、芳香族等に類別され、この順に塩基性が弱くなるため、エポキシ樹脂との硬化に高い温度が必要となる。具体的には脂肪族ポリアミンは室温〜50℃、脂環族ポリアミンは室温〜100℃、芳香族ポリアミンは100℃以上での硬化に適している。本発明の硬化剤(B)として用いられる、式(1)で示されるビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、式(2)で示されるノルボルナンジアミンは化学構造から脂環族ポリアミンに分類される。ここで、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンは、分子内に有する2個のアミノ基が3級炭素と結合していること、および、環構造にメチル基が結合した立体障害のため、脂環族ポリアミンのなかでもエポキシ樹脂との反応性が低い。一方、ノルボルナンジアミンは分子内の2個のアミノ基がいずれも1級炭素に結合しているため、エポキシ樹脂との反応性が2級炭素や3級炭素に結合した脂肪族ポリアミンと比べて高い。このため、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンの配合量が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し過ぎることを防ぎ、かつ、ノルボルナンジアミンが上記範囲内であると、硬化時間を短縮し1時間以内での硬化が可能となる。すなわち、本エポキシ樹脂組成物におけるビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、および、ノルボルナンジアミンの配合量が上記範囲内においてのみ、それぞれを単独で配合した場合や他のポリアミン硬化剤の配合ではなし得なかった低温での液状樹脂の粘度上昇と1時間以内の短時間硬化とが両立可能となる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンの配合量が30質量%未満であると、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇が大きくなることがあり、一方、90質量%を越えると、1時間以内で硬化しないことがある。また、全硬化剤100質量%に対して、ノルボルナンジアミンが10質量%未満であると、1時間以内で硬化しないことがあり、一方、70質量%を越えるとエポキシ樹脂組成物の粘度上昇が大きくなることがある。
【0026】
また、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンは、脂環族ポリアミンの分子内に有する全てのアミノ基が環構造を構成する炭素に直接結合していること、および、ノルボルナンジアミンは環構造に橋架け構造を有することから、FRPの耐熱性や機械物性を高めることができる利点がある。
【0027】
ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンの市販品としては“アンカミン”(登録商標)2049(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社)、ラロミンC−260(BASF社)等、ノルボルナンジアミンの市販品としては“NBDA”(登録商標)(三井化学社)等を挙げることができる。
【0028】
本発明における硬化剤(B)には、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン以外に、他のポリアミンを含有することができる。硬化剤(B)に含有できる他のポリアミンの具体例としては、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン以外の脂環族ポリアミン、直鎖脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン等がある。硬化剤(B)に含有することが出来る他の脂肪族ポリアミンの具体例としては、メンセンジアミン(式(3))、イソフォロンジアミン(式(4))、N−アミノエチルピペラジン(式(5))、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト((式6))、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(式(7))等が挙げられるが、これら他の脂環族ポリアミンの配合量は、全硬化剤(B)100質量%のうち、20質量%未満であることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
また、本発明における硬化剤(B)には、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミン以外の他のポリアミンとして、直鎖脂肪族ポリアミン、および、芳香族ポリアミンを配合することができるが、これらポリアミンは、全硬化剤(B)100質量%のうち、10質量%未満で配合することが好ましい。
【0035】
本発明で用いるエポキシ樹脂(A)としては、特に限定されず全てのエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、本発明で用いるエポキシ樹脂(A)は、前記例示したエポキシ樹脂を単独で配合しても良いし、また複数種混合して配合しても良い。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が250g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは200g/eqである。エポキシ当量が250g/eqであるとエポキシ樹脂(A)が低粘度となり、ひいてはエポキシ樹脂組成物が低粘度となるため、強化繊維への樹脂含浸が容易となる。なお、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、例えば、JIS K7236(2001)エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方に準拠し、過塩素酸酢酸標準液を用いた電位差滴定により求めることができる。また、複数種(ここではn種類とする)のエポキシ樹脂を混合して配合する場合の平均エポキシ当量は、n種類のエポキシ樹脂の配合質量をそれぞれew、ew、・・・、ew、及びエポキシ当量をEEW、EEW、・・・、EEWとすると以下の式により算出することができる。
【0037】
【数1】

【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、60℃での初期粘度が10〜1000mPa・sの範囲にあり、60℃15分間保持後の粘度が1000mPa・s以下であることが好ましく、60℃での初期粘度はより好ましくは50〜500mPa・sの範囲、さらに好ましくは50〜300mPa・sの範囲である。ここで、初期粘度とは、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを混合攪拌後、1分間経過した後の粘度をいい、60℃15分間保持後の粘度とは、混合攪拌後15分間経過した後の粘度をいう。初期粘度を1000mPa・s以下とすることにより、硬化温度における粘度を低くでき、強化繊維基材への注入時間が短くなり、未含浸の原因を防ぐことができるからである。また、初期粘度を10mPa・s以上とすることにより、硬化温度での粘度が低くなりすぎず、強化繊維基材への注入時に空気を巻き込んでピットの原因を防ぐことができ、含浸が不均一になって未含浸の原因を防ぐことができるからである。また、60℃15分間保持後の粘度が1000mPa・sを越えると、そのエポキシ樹脂組成物を用いて得られるFRPに未含浸が生じることがある。
【0039】
本発明において、エポキシ樹脂組成物の粘度は、例えば、JIS Z8803(1991)における円すい定速方式の円すい−平板形回転粘度計を使用した測定方法に基づき、エポキシ樹脂組成物の粘度を測定することで求められる。測定装置としては、例えば、東機産業社製のTVE−30H型等を挙げることができる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化温度60℃での硬化時間が60分間以内であることが好ましい。ここで、硬化時間とはJIS K6300−2(2001)における未加硫ゴム−物理特性−第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方に従い、振動数毎分100回、振動角±1°の条件で求めた90%加硫時間tc(90)をいう。硬化時間が60分間以内であれば、すなわち生産性が高いことを意味し、硬化時間が60分間を越えると生産性が低いことを意味するする。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化温度60℃で1時間硬化して得た樹脂硬化物のガラス転移温度Tg(℃)がTg≧60であることが好ましく、より好ましくはTg≧70、さらに好ましくはTg≧80である。Tgが60℃以上であれば、脱型の際に樹脂硬化物やFRPが変形することがなく、型の形状どおりの硬化物が得られるためである。なお、本発明において、樹脂硬化物のTgは、DSC装置を用い、昇温速度20℃/分で測定した値とする。より具体的には、得られたDSC曲線の階段状変化を示す部分において、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある点の集合である直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をTgとする。Tgの測定にはDSC装置以外にもTMA装置による熱膨張を用いた測定、DMA装置による粘弾性を用いた測定など多数あるが、測定原理の違いにより値が異なる場合がある。また、DSC装置による吸熱を利用した測定では昇温速度の影響があるので、本発明におけるTgは上記測定条件の値とする。測定装置としては、例えば、パーキンエルマー社製のPyris1 DSC等を挙げることができる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量と硬化剤(B)の活性水素当量の比が1/0.7〜1/1.2の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1/0.9〜1/1.1の範囲である。エポキシ当量と活性水素当量の比がこの範囲内であると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性、機械特性、耐薬品性に優れるためである。なお、硬化剤(B)の活性水素当量は、例えば、ポリアミンの平均分子量をポリアミン1分子内に有する活性水素の数で除することで求めることができる。また、複数種(ここではn種類とする)の硬化剤を混合して配合する場合の平均活性水素当量は、n種類の硬化剤の配合質量をそれぞれaw、aw、・・・、aw、及び活性水素当量をAHEW、AHEW、・・・、AHEWとすると以下の式により算出することができる。
【0043】
【数2】

【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂注入から脱型に至るまでの型温を一定に保持するRTM法に最も適するが、樹脂注入後に昇温して硬化させるRTM法や、RTM法以外のハンドレイアップ、プルトルージョン、フィラメントワインディングなど、液状熱硬化性樹脂を用いるあらゆる成形法において適用可能であり、いずれの成形法においても表面凹凸の低減、強化繊維への含浸性の向上に効果がある。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として好適に用いることができるが、低粘度、低温硬化である特徴により、それ以外にも塗料、土木建築材料、接着剤、ゲルコート、注型用樹脂、積層物等の用途にも用いることができる。
【0046】
次に、本発明に係るエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを用いて得られる、本発明の繊維強化複合材料の一例について説明する。
【0047】
本発明のFRPにおいて、強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維等が好適に用いられる。中でも、軽量でありながら、強度や、弾性率等の力学物性が優れるFRPが得られるという理由から、炭素繊維が好適に用いられる。
【0048】
強化繊維は、短繊維、連続繊維いずれであってもよく、両者を併用してもよい。高い繊維体積含有率(以下、Vfと略すことがある)のFRPを得るためには、連続繊維が好ましい。
【0049】
本発明のFRPでは、強化繊維はストランドの形態で用いられることもあるが、強化繊維をマット、織物、ニット、ブレイド、一方向シート等の形態に加工した強化繊維基材が好適に用いられる。中でも、高VfのFRPが得やすく、かつ取扱い性に優れた織物が好適に用いられる。
【0050】
本発明のFRPは、加温した前記エポキシ樹脂組成物を、特定温度に加熱した成形型内に配置した強化繊維基材に注入し、含浸させ、該成形型内で硬化することにより製造されることが好ましい。
【0051】
型は、剛体からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛体のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いる方法も可能である。後者の場合、強化繊維基材は剛体オープンモールドと可撓性フィルムの間に設置する。
【0052】
剛体からなる型の材料としては、金属(スチール、アルミニウム、INVARなど)、FRP、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。また、可撓性のフィルムの材料としては、ナイロン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
【0053】
剛体からなるクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプなどの手段により吸引することも可能である。吸引を行い、特別な加圧手段を用いず、大気圧のみでエポキシ樹脂を注入することも可能である。
【0054】
剛体のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、通常、吸引口を設け真空ポンプなどの手段により吸引し、大気圧による注入を用いるVaRTM法を用いる。国際公開第01/41993号パンフレットに引用されるCAPRI法のごとく、大気圧より低い圧力に注入圧力を調整する方法も可能である。大気圧あるいはそれ以下の圧力による注入で、良好な含浸を実現するためには、米国特許第4902215号公報に示されるような、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。
【0055】
エポキシ樹脂組成物の注入圧力は、通常0.1〜1.0MPaで、型内を真空吸引して樹脂組成物を注入するVaRTM(Vacuum Assist Resin Transfer Molding)法も用いることができるが、注入時間と設備の経済性の点から0.1〜0.6MPaが好ましい。また、加圧注入を行う場合でも、樹脂組成物を注入する前に型内を真空に吸引しておくと、ボイドの発生が抑えられ好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂組成物の粘度特性は温度に敏感に依存するため、樹脂注入工程では、エポキシ樹脂組成物の容器、型ともにそれぞれ一定の温度に保持されることが好ましい。エポキシ樹脂組成物、あるいはエポキシ樹脂および硬化剤の容器の温度は、40〜70℃が好ましく、より好ましくは50〜60℃であり、注入工程における型の温度、すなわち注入温度は40〜70℃が好ましく、より好ましくは50〜60℃である。
【0057】
エポキシ樹脂組成物は、全成分をバッチで混合した単一の液体を単一の容器から型に注入することも、エポキシ樹脂と硬化剤とを別々の容器に格納し、混合器を経由して型に注入することも、容器から大気圧で型に注入することも可能である。
【0058】
樹脂注入完了後、型内で熱硬化が行われる。型内の熱硬化は、注入時の型の温度のまま一定時間保持して行う方法、注入時の型の温度と最高硬化温度の中間の温度まで昇温し一定時間保持した後再度昇温し、最高硬化温度に達した後一定時間保持して硬化させる方法、最高硬化温度まで昇温し一定時間保持して硬化させる方法のいずれも用いることが可能である。型内での硬化における最高硬化温度の保持時間は0.5〜1時間であることが好ましい。
【0059】
脱型後、型内の最高硬化温度より高い温度でアフターキュアすることも可能である。この場合、型内の硬化はプリキュアになる。アフターキュアの時間は、0.5〜12時間が好ましく、1〜4時間であることがより好ましい。
【0060】
50℃〜70℃でプリキュアする方法は、型の材質、副資材、熱源に安価なものを使用できるので、経済的に有利である。
【0061】
また、かかるFRPの製造方法においては、成形型に複数の注入口を有するものを用い、エポキシ樹脂組成物を複数の注入口から同時に、または時間差を設けて順次注入するなど、得ようとするFRPに応じて適切な条件を選ぶことが、様々な形状や大きさの成形体に対応できる自由度が得られるために好ましい。かかる注入口の数や形状に制限はないが、短時間での注入を可能にするために注入口は多い程良く、その配置は、成形品の形状に応じて樹脂の流動長を短くできる位置が好ましい。
【0062】
本発明のFRPを自動車外板などの意匠面に用いる場合は、表面凹凸が0.6μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。なお、表面凹凸はJIS B0601(1994)に準拠して、FRPの表面凹凸を測定し、表面凹凸をRyで表すとFRPの見た目の品位と一致する。測定装置としては、例えば、小坂研究所社製のサーフコーダSE3400等を挙げることができる。
【0063】
本発明によるFRPは、軽量でありながら強度や弾性率等の力学特性が優れるので、航空機や宇宙衛星、産業機械、鉄道車両、船舶、自動車などの構造部材や外板などに好ましく用いられる。また、表面品位にも優れるので、特に自動車外板用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物および該エポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の具体的な構成を実施例に基づいて説明する。尚、実施例および比較例の各エポキシ樹脂組成物にて使用した各成分は、下記の略号で示す通りである。
【0065】
A.樹脂原料
以下の樹脂原料を適用した。
1.エポキシ樹脂(A)
(1)“jER(登録商標)”828:ジャパンエポキシレジン製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184〜194g/eq
(2)“jER(登録商標)”1004:ジャパンエポキシレジン製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量875〜975g/eq
(3)“jER(登録商標)”1001:ジャパンエポキシレジン製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500g/eq
2.硬化剤(B)
(4)“アンカミン”(登録商標)2049:エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、活性水素当量60g/eq
(5)“NBDA”(登録商標):三井化学社製、ノルボルナンジアミン、活性水素当量:38.5g/eq
(6)“アミキュア”(登録商標)PACM:エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社製、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、活性水素当量:52.5g/eq
(7)IPDA:ピィ・ティ・アイ・ジャパン社製、イソフォロンジアミン、活性水素当量:43g/eq
(8)“キュアゾール”(登録商標)2MZ:四国化成社製、2−メチルイミダゾール
(9)グリセリン:和光純薬社製。
【0066】
B.エポキシ樹脂組成物の調整
エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを表1〜3に示す通り混合・攪拌し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表中の数字は、配合した成分の質量部を示す。
【0067】
C.樹脂組成物の粘度測定
JIS Z8803(1991)における円すい定速方式の円すい−平板形回転粘度計を使用した測定方法に準拠し、エポキシ樹脂組成物の初期粘度および10分後の粘度を測定した。ここでは、東機産業社製のTVE−30H型を用い、ローター1゜34’×R24、サンプル量1cmとした。
【0068】
D.硬化時間の測定
前記Bの方法により得られたエポキシ樹脂組成物の硬化時間を以下の方法により測定した。JIS K6300−2(2001)における未加硫ゴム−物理特性−第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方に従い、振動数毎分100回、振動角±1°の条件とし、90%加硫時間tc(90)を硬化時間とした。ここでは、オリエンテック社製キュラストメーターV型を用いた。
【0069】
E.樹脂硬化物の作成
前記Bの方法により得られたエポキシ樹脂組成物を厚み2mmの板状キャビティーを有する型に注入し、オーブンを用いて、60℃で1時間、および表1、3に示す硬化時間の2条件でそれぞれ硬化せしめ、厚み2mmの板状の樹脂硬化物を得た。
【0070】
F.ガラス転移温度Tg
前記Eの方法で得た樹脂硬化物板について、JIS K7121(1987)に準拠し、DSC法によりガラス転移温度Tgを測定した。ここでは、パーキンエルマー社製DSCのPyris1DSCを用い、昇温速度20℃/分とした。
【0071】
G.FRPの作製
RTM成形法によりFRPを作製した。金型には、縦1000mm×横1000mm×高さ1.2mmの板状キャビティーを有する、上型と下型からなるものを用いた。プリフォームとしては、強化繊維基材として東レ製の炭素繊維織物“トレカ”クロスBT70−30(炭素繊維:T700−12K、織り組織:平織、目付:300g/m)を5枚積層したものを用いた。
【0072】
まず、金型のキャビティーにプリフォームをセットし、型締めした。次に、所定温度に保持した金型内を、0.1mmHg以下に減圧した後、エポキシ樹脂組成物を注入し、プリフォームに含浸させた。樹脂が吸引口から流出した時点で、樹脂注入口、続いて吸引口を閉じ、表1〜3に示す硬化時間で樹脂組成物を硬化せしめて平板状のFRPを得た。
【0073】
H.FRPの表面凹凸
上記Gの方法で得た平板状のFRPについて、JIS B0601(1994)に準拠して、FRPの表面凹凸を測定し、表面凹凸をRyで表した。ここでは、小坂研究所社製のサーフコーダSE3400を用いた。測定条件は、測定距離10mm、測定速度2mm/minとし、FRP表面の任意の5ヶ所を測定して平均値を算出した。
【0074】
実施例1
本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを70質量%、ノルボルナンジアミンを30質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0075】
実施例2
本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを50質量%、ノルボルナンジアミンを50質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0076】
実施例3
・ 本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを30質量%、ノルボルナンジアミンを70質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0077】
表1に示す通り、実施例1〜3のエポキシ樹脂組成物は60℃での粘度上昇が小さく、60分間以内での硬化が可能である。また、得られたFRPの表面凹凸は0.6μmであり、表面意匠性に優れるものであった。
【0078】
比較例1
本発明のエポキシ樹脂組成物以外の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを100質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0079】
表1に示す通り、本比較例の樹脂組成物は60℃での硬化に287分間を要し、FRPの生産性が低いものであった。
【0080】
比較例2
本発明のエポキシ樹脂組成物以外の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ノルボルナンジアミンを100質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0081】
表1に示す通り、本比較例の樹脂組成物は60℃10分後の粘度が1680mPa・sと高く、得られたFRPの一部に未含浸部が生じた。
【0082】
比較例3
本発明のエポキシ樹脂組成物以外の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタンを100質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0083】
表1に示す通り、本比較例の樹脂組成物は60℃での硬化に75分間を要し、FRPの生産性が低いものであった。
【0084】
比較例4
本発明のエポキシ樹脂組成物以外の1例として、全硬化剤100質量%に対して、イソフォロンジアミンを100質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0085】
表1に示す通り、比較例4の樹脂組成物は60℃10分後の粘度が5400mPa・sと高く、得られたFRPに未含浸部が生じた。
【0086】
比較例5
本発明のエポキシ樹脂組成物以外の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ノルボルナンジアミンを50質量%、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタンを50質量%含むエポキシ樹脂組成物を表1に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0087】
表1に示す通り、比較例4の樹脂組成物は60℃10分後の粘度が1380mPa・sと高く、得られたFRPに未含浸部が生じた。
【0088】
比較例6
100℃10分間で硬化可能なエポキシ樹脂組成物として、国際公開02/081540号パフレットの実施例1に記載されるエポキシ樹脂組成物、すなわち、表2に示す通りに調整されたエポキシ樹脂組成物を、100℃10分間の硬化条件でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。表2に示す通り得られたFRPの表面凹凸は1.2μmで表面意匠性に劣るものであった。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
参考例1
本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを50質量%、ノルボルナンジアミンを50質量%含むエポキシ樹脂組成物を表3に示す通り調整し、硬化温度60℃にてエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0092】
表3に示す通り、本実施例のエポキシ樹脂組成物はエポキシ当量が277.2g/eqであるために、60℃での初期粘度、および10分後の粘度が高く、一部に未含浸部が生じていたものの、得られたFRPの表面凹凸は0.6μmと意匠性に優れるものであった。
【0093】
参考例2
本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを50質量%、ノルボルナンジアミンを50質量%含むエポキシ樹脂組成物を表3に示す通り調整し、硬化温度60℃にてエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0094】
表3に示す通り、本実施例のエポキシ樹脂組成物はエポキシ当量が249.0g/eqであるために、60℃での初期粘度、および10分後の粘度が高く、参考例1と同様に一部に未含浸部が生じていたものの、得られたFRPの表面凹凸は0.6μmと意匠性に優れるものであった。
【0095】
参考例3
本発明のエポキシ樹脂組成物の1例として、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを90質量%、ノルボルナンジアミンを10質量%含むエポキシ樹脂組成物を表3に示す通り調整し、硬化温度60℃でエポキシ樹脂硬化物およびFRPを得た。
【0096】
表3に示す通り、本実施例のエポキシ樹脂組成物は60℃での硬化に150分間を要したものの、得られたFRPの表面凹凸は0.6μmと表面意匠性に優れるものであった。
【0097】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のエポキシ樹脂組成物は60℃以下の比較的低温において、粘度上昇が小さいために樹脂含浸性に優れ、しかも1時間以内の短時間で脱型可能な硬化物となるため、生産性に優れた繊維強化複合材料の成形に好適である。また、RTM成形法などによって、表面意匠性にも優れた繊維強化複合材料が得られため、産業機械、鉄道車両、船舶、自動車など多くの部材に適用可能であり、特に生産量の多い自動車部材への適用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ樹脂(A)および硬化剤(B)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化剤(B)が、全硬化剤100質量%に対して、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンを30〜90質量%、ノルボルナンジアミンを70〜10質量%含んでなるものであるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が250g/eq以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物
【請求項3】
60℃における初期粘度が10〜1000mPa・sである、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
60℃で1時間硬化して得た樹脂硬化物のガラス転移温度Tg(℃)が60℃以上である、請求項1〜3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られた樹脂硬化物と強化繊維とからなる繊維強化複合材料。
【請求項6】
表面凹凸(Ry)が0.6μm以下である、請求項5に記載の繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2009−102563(P2009−102563A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277290(P2007−277290)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】