説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】エポキシ化合物に硬化剤としてスルホニウム塩化合物およびエポキシ化合物硬化用酸無水物を用いたエポキシ樹脂組成物において、硬化性および接着性を共に改善せしめたものを提供する。
【解決手段】上記エポキシ樹脂組成物において、スルホニウム塩化合物として、一般式


(ここで、R1はイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である芳香族または脂肪族炭化水素基であり、これらの炭化水素基はヘテロ原子を有していてもよく、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、X-は非求核性アニオン性基であり、nは1〜10の整数である)で表わされるウレタン結合含有スルホニウム塩化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、基材積層体の接着剤などとして好適に用いられるエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物の硬化剤としてスルホニウム塩化合物を用いた場合、硬化性は非常に良好であるが、各種基材への接着性に劣ることが問題とされている。スルホニウム塩化合物を硬化剤として用い、さらにエポキシ化合物硬化用酸無水物を硬化系に組み込むことで、硬化性を低下させることなく、接着性を向上させることが可能になっているが、なお接着性のさらなる向上が求められている。
【0003】
特許文献1〜2には、エネルギー線照射によって硬化可能な光重合性樹脂成分、エネルギー線を照射した際に光重合性樹脂成分の硬化を可能とする光重合開始剤成分および光重合性樹脂成分の内少なくとも1種をエネルギー線による照射以外の方法で硬化させるのに用いられる硬化剤成分を含むエネルギー線硬化樹脂組成物が記載されている。
【0004】
ここで、光重合開始剤成分としてアリール系スルホニウム塩が、また硬化剤成分としてエポキシ化合物硬化用酸無水物がそれぞれ用いられるとされ、このエネルギー線硬化樹脂組成物は、薄型ディスプレイパネルの放電表示セル等を構成する隔壁の成形もしくは欠損部の補修などに用いられ、硬化性を向上させた隔壁用組成物を形成することが、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−89639号公報
【特許文献2】特開2006−117950号公報
【特許文献3】特開2006−216567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エポキシ化合物に硬化剤としてスルホニウム塩化合物およびエポキシ化合物硬化用酸無水物を用いたエポキシ樹脂組成物において、硬化性および接着性を共に改善せしめたものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる本発明の目的は、上記エポキシ樹脂組成物において、スルホニウム塩化合物として、一般式

(ここで、R1はイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である芳香族または脂肪族炭化水素基であり、これらの炭化水素基はヘテロ原子を有していてもよく、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、X-は非求核性アニオン性基であり、nは1〜10の整数である)で表わされるウレタン結合含有スルホニウム塩化合物を用いることによって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物において、前記一般式〔I〕で表わされるウレタン結合含有スルホニウム塩化合物がカチオン重合開始剤として用いられたとき、それとエポキシ化合物硬化用酸無水物とを併用することによって、硬化性および接着性を共に改善することができる。また、このエポキシ樹脂組成物は、その貯蔵安定性においてもすぐれている。
【0009】
このような特徴を有する本発明のエポキシ樹脂組成物は、ガラスエポキシ基板等の基材への接着剤層形成成分として好適に用いられ、同種または異種の基材間を接着させた積層体として、あるいはこれらの基材上に任意の方法でコーティングし、基材表面の性質を改善させた積層体等として用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明組成物の有効成分として用いられるスルホニウム塩化合物は、前記一般式〔I〕で表わされ、このウレタン結合含有スルホニウム塩化合物は、一般式

(ここで、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は芳香族炭化水素基であり、X-は非求核性アニオン性基である)で表わされる水酸基含有スルホニウム塩を、芳香族系または脂肪族系イソシアネート化合物〔III〕と反応させることにより製造される。
【0011】
前記一般式〔II〕で表わされる水酸基含有スルホニウム塩において、R2は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基、エチル基であり、R3は芳香族炭化水素基、好ましくはフェニル基、1-ナフチル基(α-ナフチル基)であり、これらの芳香族炭化水素基はアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、ビニル基、ニトロ基等でモノ置換またはポリ置換されたものであってもよい。またX-は非求核性アニオン性基であり、例えばB(C6F5)4、BF4、PF6、SbF6、AsF6、SbCl4等が挙げられ、好ましくは硬化性、耐腐食性の点からアニオン性ホウ酸塩基が用いられ、特に好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートB(C6F5)4が用いられる。
【0012】
このような水酸基含有スルホニウム塩〔II〕と反応する芳香族系または脂肪族系イソシアネート化合物〔III〕としては、モノイソシアネート、ジイソシアネート、3官能以上のイソシアネート化合物が用いられ、それぞれn=1、2または3以上のウレタン結合含有スルホニウム塩化合物を形成させる。
【0013】
モノイソシアネートとしては、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ステアリイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイソシアネート、p-トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。ジイシシアネートとしては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられ、好ましくはポリウレタン形成に用いられるTDI、MDI、ポリメリックMDI、TODI、PPDI、NDI等の芳香族系ジイソシアネート、HDI、水素添加MDI(H12MDI)、IPDI等の脂肪族系ジイソシアネートが用いられる。
【0014】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、これらのジイソシアネート化合物のビュレット体、アロファネート体、カルボジイミド体、ウレチジンジオン体、イソシアヌレート体、さらにはトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールとの付加体等が挙げられ、例えばヘキサメチレンジイソシアネート-トリメチロールプロパン(3:1)付加体は、市販品として購入することができる。
【0015】
これら両者間のウレタン化反応は、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7等の3級アミン、ジラウリン酸錫ジブチル、ジラウリン酸錫ジオクチル、ナフテン酸鉛等の触媒の存在下または非存在下で、α-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、イソホロン、ブチルカルビトール等の溶媒を用い、約5〜40℃、好ましくは室温条件下で行われる。
【0016】
反応生成物であるウレタン結合含有スルホニウム塩化合物〔I〕は、カチオン重合開始剤として、エポキシ基を有するモノマーまたはポリマーの硬化剤として用いられる。ウレタン結合含有スルホニウム塩化合物の使用割合は、硬化さるべきモノマーまたはポリマー100重量部当り約0.5〜10重量部、好ましくは約1〜3重量部であり、これを硬化さるべきモノマーまたはポリマーに添加し、約80〜200℃に加熱することによりカチオン重合が開始され、それぞれの硬化物が得られる。
【0017】
ウレタン結合含有スルホニウム塩化合物によってカチオン重合するビニルエーテル化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9-ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0018】
また、ウレタン結合含有スルホニウム塩化合物によってカチオン重合するエポキシ化合物としては、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0019】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ-またはトリ-グリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ-またはテトラ-グリシジルエーテル、ソルビトールヘプタ-またはヘキサ-グリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7-ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6-ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0020】
脂環エポキシ化合物の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)等が挙げられる。
【0021】
また、エポキシ化合物硬化用酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸のリノレイン酸またはメチルシクロペンタジエン付加物、無水マレイン酸-メチルビニルエーテルまたはスチレン共重合体、無水アルケニル酸、無水トリカルバリル酸、無水クロレンディック酸、無水アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水メチル-2-置換ブテニルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、エチレングリコールビストリメート、無水ピロメリット酸、無水シクロペンタジエンテトラカルボン酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられ、好ましくは無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸が用いられる。
【0022】
これらの硬化用酸無水物は、エポキシ化合物中の活性水素当量に対して0.05〜1.2当量、好ましくは0.1〜0.7当量の割合で用いられる。酸無水物の使用割合がこれよりも少ないと、酸無水物の硬化作用が発揮されず、一方これよりも多い割合で用いられると、耐水性が低下するようになる。
【0023】
以上の各成分を必須成分とするエポキシ樹脂組成物中には、必要に応じてカーボンブラック、シリカ等の充填剤、その他の配合剤が配合され、シリカを用いた場合にはシランカップリング剤を併用して組成物が調製される。調製されたエポキシ樹脂組成物の硬化は、一般に約80〜200℃で常圧下または加圧下で行われ、所望のエポキシ樹脂成形品を得ることができる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0025】
参考例1
ナフチルメチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔NSF〕2.0g(2.1ミリモル)を乾燥したγ-ブチロラクトン2.4gに溶解させ、その溶液中にp-トルエンスルホニルイソシアネート0.43g(2.1ミリモル)を添加し、室温条件下で1時間反応させた後、蒸留水中に沈殿させ、式

X-:B(C6F5)4-
で表わされる、アモルファス状固体のウレタン結合含有スルホニウム塩化合物〔NSF-TI〕2.2g(収率90%)を得た。
赤外線吸収スペクトル:1720cm-1 (-NHCOO-)
1H NMR(CDCl3):2.45ppm (3H,-C6H4CH3)
3.05ppm (3H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
5.01ppm (2H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
7.0−8.0ppm (15H,C6H4SO2NHCOOC6H4S(CH3)CH2C10H7)
【0026】
参考例2
ナフチルメチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔NSF〕2.0g(2.1ミリモル)を乾燥したγ-ブチロラクトン2.45gに溶解させ、その溶液中にフェニルイソシアネート0.45g(2.1ミリモル)を添加し、室温条件下で1時間反応させた後、蒸留水中に沈殿させ、式

X-:B(C6F5)4-
で表わされる、アモルファス状固体のウレタン結合含有スルホニウム塩化合物〔NSF-PI〕2.2g(収率90%)を得た。
赤外線吸収スペクトル:1735cm-1 (-NHCOO-)
1H NMR(CDCl3):5.01ppm (4H,C10H7CH2S=)
2.88ppm (6H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
7.05−7.50ppm (10H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
【0027】
参考例3
ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔BSF〕3.0g(3.3ミリモル)を乾燥したγ-ブチロラクトン2.32gに溶解させ、その溶液中にフェニルイソシアネート0.39g(3.3ミリモル)を添加し、室温条件下で1時間反応させた後、蒸留水中に沈殿させ、式

X-:B(C6F5)4-
で表わされる、アモルファス状固体のウレタン結合含有スルホニウム塩化合物〔BSF-PI〕3.0g(収率88%)を得た。
赤外線吸収スペクトル:1735cm-1 (-NHCOO-)
1H NMR(CDCl3):4.55ppm (2H,C6H5CH2S=)
3.02ppm (3H,-C6H4S(CH3)CH2C6H5)
7.05−7.50ppm (10H,-C6H4S(CH3)CH2C6H5)
【0028】
参考例4
ナフチルメチル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート〔NSF〕2.0g(2.1ミリモル)を乾燥したγ-ブチロラクトン1.26gに溶解させ、その溶液中に4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート0.27g(1ミリモル)を添加し、室温条件下で1時間反応させた後、蒸留水中に沈殿させ、式

X-:B(C6F5)4-
で表わされる、アモルファス状固体のウレタン結合含有スルホニウム塩化合物〔NSF-MDI〕2.1g(収率93%)を得た。
赤外線吸収スペクトル:1735cm-1 (-NHCOO-)
1H NMR(CDCl3):5.01ppm (4H,C10H7CH2S=)
2.88ppm (6H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
3.89ppm (2H, -C6H4CH2C6H4-)
7.05−7.50ppm (10H,-C6H4S(CH3)CH2C10H7)
【0029】
実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(アデカ製品EP4100E) 100重量部
参考例1で得られたウレタン結合含有スルホニウム塩化合物 2 〃
無水メチルヘキサヒドロフタル酸(活性水素当量に対し) 0.1当量
球状シリカ充填剤(アドマテックス社製品SE5050) 50重量部
シランカップリング剤(信越化学工業製品KBM403) 2 〃
以上の各成分を混合して得られたエポキシ樹脂組成物について、次の各項目の測定を行った。
貯蔵安定性:25℃、24時間後の粘度を測定し、その上昇率を算出
硬化性:安田精機製作所製安田式ゲルタイムテスター(No.153ゲルタイムテスタ
ー)を用い、150℃でのゲルタイムを測定
接着強度:2枚の被着体(10×50×1.6mmのガラスエポキシ)を準備し、エポキシ
樹脂組成物をそこに塗布して2枚重ねて貼り合わせ、貼り合わせた
ものについて、150℃、1時間の加熱を行い、2枚の被着体が接着剤
を介して積層したサンプルを得、この接着強度試験用サンプルを引
張試験機に取付け、引張速度1mm/分の条件下で引張試験を行い、接
着強度を測定した
【0030】
実施例2
実施例1において、酸無水物量が0.3当量に変更された。
【0031】
実施例3
実施例1において、酸無水物量が0.5当量に変更された。
【0032】
実施例4〜6
実施例1〜3において、参考例1で得られたウレタン結合含有スルホニウム塩化合物の代わりに、それぞれ同量(2重量部)の参考例3で得られたウレタン結合含有スルホニウム塩化合物が用いられた。
【0033】
実施例7
実施例1において、参考例1で得られたウレタン結合含有スルホニウム塩化合物の代わりに、それぞれ同量(2重量部)の参考例4で得られたウレタン結合含有スルホニウム塩化合物が用いられた。
【0034】
実施例8
酸無水物が0.3当量用いられた実施例2において、無水メチルヘキサヒドロフタル酸の代わりに、同量(0.3当量)の無水メチルナジック酸が用いられた。
【0035】
実施例9
酸無水物が0.3当量用いられた実施例5において、無水メチルヘキサヒドロフタル酸の代わりに、同量(0.3当量)の無水メチルナジック酸が用いられた。
【0036】
比較例1
実施例1において、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が用いられなかった。
【0037】
比較例2
実施例4において、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が用いられなかった。
【0038】
比較例3
実施例1においてウレタン結合含有スルホニウム塩化合物の代わりに、同量の三新化学製品スルホニウム塩SI80Lが用いられた。
【0039】
比較例4
実施例1においてウレタン結合含有スルホニウム塩化合物の代わりに、同量の三新化学製品スルホニウム塩SI100Lが用いられた。
【0040】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。

硬化剤 貯蔵安定性 硬化性(秒) 接着強度(MPa)
実施例1 NSF-TI 0.5% 23 10
〃 2 〃 0.5% 37 15
〃 3 〃 0.5% 47 14
〃 4 BSF-PI 1.0% 27 11
〃 5 〃 1.0% 40 15
〃 6 〃 1.0% 53 13
〃 7 NSF-MD 1.0% 53 14
〃 8 NSF-TI 0.5% 40 13
〃 9 BSF-PI 1.0% 54 13
比較例1 NSF-TI 0.5% 14 5
〃 2 BSF-PI 1.0% 17 5
〃 3 SI80L 0.5% 80 5
〃 4 SI100L 0.5% 100 5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物、一般式

(ここで、R1はイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基である芳香族または脂肪族炭化水素基であり、これらの炭化水素基はヘテロ原子を有していてもよく、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、X-は非求核性アニオン性基であり、nは1〜10の整数である)で表わされるウレタン結合含有スルホニウム塩化合物およびエポキシ化合物硬化用酸無水物を含有してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ化合物100重量部当りウレタン結合含有スルホニウム塩化合物が0.5〜10重量部用いられた請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
酸無水物がエポキシ化合物中の活性水素に対し0.05〜1.2当量用いられた請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
基材への接着剤として用いられる請求項1、2または3記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のエポキシ樹脂組成物を用いて接着した基材積層体。

【公開番号】特開2011−231243(P2011−231243A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103724(P2010−103724)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】