説明

エラストマー成形方法およびエラストマー成形品

【課題】外側のみが一体化され、内側は粉体状または粒体状のままであるエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供する。
【解決手段】粉体状または粒体状のエラストマー1を成形型2,3内に収容した上、この成形型2,3を加熱し、エラストマーのうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分は一体化する一方、遠い側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とし、しかる後に、成形型2,3からエラストマー成形品8を取り出す。得られるエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままで、前記一体化した外側の部分6内に閉じ込められた状態となっている。このエラストマー成形品8は、従来の、全体が一体化しているエラストマー成形品では得られない性能を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー、ゴム等のエラストマーの成形方法およびエラストマー成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエラストマー成形品は、例えば特許文献1に示されているように、その全部分が一体化されており、その全部分がゴム弾性を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−47761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、用途によっては、例えば、過度のゴム弾性を示したり、衝撃吸収能力が低かったり、防振性能が低かったり、触感が悪い等の問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、外側のみが一体化されていて外側のみが一体化された状態でゴム弾性を示し、内側は粉体状または粒体状のままであるエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、過度のゴム弾性を示すことのないエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、衝撃吸収能力が高いエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、防振性能が高いエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、触感がよいエラストマー成形品およびそのエラストマー成形方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるエラストマー成形方法は、
粉体状または粒体状のエラストマーを成形型内に収容する段階と、
前記粉体状または粒体状のエラストマーを収容した前記成形型を、前記エラストマーのうちの、前記成形型の内面に近い側の部分は一体化する一方、前記成形型の内面から遠い側の部分は粉体状または粒体状のままとなっている状態となるまで加熱する段階と、
前記成形型から前記エラストマーを取り出し、外側の部分は一体化する一方、内側の部分は粉体状または粒体状のままで、前記外側の一体化した部分内に閉じ込められた状態となっているエラストマー成形品を得る段階とを有してなるものである。
【0012】
また、本発明によるエラストマー成形品は、
一体化したエラストマーからなる外側の部分と、前記外側の部分内に閉じ込められた、粉体状または粒体状のエラストマーからなる内側の部分とを有してなり、
前記一体化したエラストマーと前記粉体状または粒体状のエラストマーとは同一のエラストマーであるものである。
【0013】
本発明におけるエラストマーとしては、基本的には、全ての種類の熱可塑性エラストマーおよびゴムを使用することができる。
【0014】
エラストマーとして熱可塑性エラストマーを用いる場合は、一体化する部分を加熱により可塑化するだけで、架橋はしないようにしてもよいが、耐熱性向上等のため、一体化する部分を可塑化するとともに架橋してもよい。
【0015】
エラストマーとしてゴムを用いる場合は、一体化する部分を架橋して一体化する。ゴムのみでは流動性に欠ける等のことが問題になるときは、熱可塑性樹脂を混合してもよい。ただし、勿論。ゴムのみを使用してもよい。
【0016】
また、本発明においては、熱可塑性エラストマーとゴムとを混合して用いてもよい。
【0017】
本発明における粉体状または粒体状のエラストマーの粒径は、50μm〜300μmが好ましく、さらに好ましくは数μm〜数10μmである。
【0018】
本発明のエラストマー成形品は、外側部分のみが一体化しており、内側部分は粉体状または粒体状であるので、過度のゴム弾性を示さないようにしたり、衝撃吸収能力を高めたり、防振性能を高めたり、触感を良好にしたりする等の、従来の全体が一体化しているエラストマー成形品では得られない性能を得ることができる。
【0019】
そして、本発明によるエラストマー成形品の上記のような各種特性は、外側の一体化した部分と内側の粉体状または粒体状の部分との厚さの割合を変えることによって調整することが可能である。
【0020】
なお、本発明によるエラストマー成形法においては、外側の部分の完全に一体化したエラストマーの部分と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分との間に、これらの2つ部分の中間的な状態の中間状態層が形成される。そして、この中間状態層の存在も、該中間状態層が存在しない場合には得られない優れた特性をエラストマー成形品に与えていると考えられる。
【0021】
本発明によるエラストマー成形品は、例えば、衝撃干渉材、防振材、クッション材、生体モデル、玩具、人形、ぬいぐるみ、ロボット等の種々の用途に使用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のエラストマー成形品は、外側部分のみが一体化しており、内側部分は粉体状または粒体状であるので、過度のゴム弾性を示さないようにしたり、衝撃吸収能力を高めたり、防振性能を高めたり、触感を良好にしたりする等の、従来の全体が一体化しているエラストマー成形品では得られない性能を得ることができるという優れた効果を得られるものである。
【0023】
また、本発明によるエラストマー成形方法によれば、本発明のエラストマー成形品を簡単に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1において、成形型内に粉体状または粒体状のエラストマーを密閉状態で収容した状態を示す断面図である。
【図2】前記実施例1において、成形型を高温の熱媒液体に浸漬し、エラストマーのうちの、成形型の内面に近い側の部分は一体化する一方、遠い側の部分は粉体状または粒体状のままとなっている状態となるまで加熱した状態を示す断面図である。
【図3】前記実施例1において得られたエラストマー成形品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
エラストマーとして、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)を用いた。最初の粉体状または粒体状時のエラストマーの粒径は数μm〜数10μmとした。
【0027】
上記粉体状または粒体状のエラストマーには、エラストマー100重量部に対しパラフィン系オイルを1〜500重量部、従来公知の補強剤、充填剤および着色剤を適量添加している(これらの添加物をエラストマーに混練した混合物を粉体状または粒子状としているので、これらの添加物はエラストマーの各粒子に添加されている)。なお、前記パラフィン系オイルを添加するのは、粉体状または粒体状のエラストマーに適度の流動性を付与するためであり、ナフテン系オイル等の他の種のオイルを同じ目的で使用することもできる。
【0028】
図1〜3は、本実施例におけるエラストマー成形方法の工程を示している。まず、図1のように、前記粉体状または粒体状のエラストマー1を、下部成形型2と上部成形型3との間に密閉状態で収容する。この際、見かけの体積で、上部成形型3の容積より5〜30%大きい体積の粉体状または粒体状のエラストマー1を下部成形型2と上部成形型3との間に収容し、粉体状または粒体状のエラストマー1がやや圧縮されて下部成形型2と上部成形型3との間に一杯に詰まった状態となるようにし、下部成形型2および上部成形型3の内面全面に粉体状または粒体状のエラストマー1が接触している状態とすることが好ましい。
【0029】
下部成形型2と上部成形型3としては、アルミ合金等からなる熱伝導性が高いものが好ましい。
【0030】
次に、図2のように、粉体状または粒体状のエラストマー1を収容した成形型2,3を、熱媒容器4内に収容された150〜200℃の高温の熱媒液体5に1〜20分、浸漬して加熱することにより、エラストマーのうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分6は可塑化して一体化する一方、成形型2,3の内面から遠い側に存在する部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とした。完全に一体化したエラストマーの部分6と、初期状態通りに完全に粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成される。
【0031】
なお、前記熱媒液体5としては、例えば、シリコンオイル、ワックス類、硝酸ナトリウム等の無機塩類等が使用できる。
【0032】
また、上記加熱段階時には、下部成形型2と上部成形型3との間から熱媒液体5が下部成形型2および上部成形型3内に侵入しないようにするため、下部成形型2と上部成形型3とをクランプ手段(図示せず)により締め付ける等の対策を施してもよい。
【0033】
図3は、下部成形型2および上部成形型3を熱媒液体5から取り出し、水に浸漬して急冷した後、下部成形型2および上部成形型3から取り出したエラストマー成形品8を示している。この得られたエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっており、外側の一体化した部分6内に粉体状または粒体状のままの部分1’が閉じ込められた状態となっている。そして、外側の完全に一体化したエラストマーの部分6と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成されている。
【0034】
このエラストマー成形方法によれば、図3のような、外側の部分6のみが一体化し、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままのエラストマー成形品8を簡単に作成することができる。
【0035】
このエラストマー成形品8においては、外側部分6のみが一体化しており、内側部分1’は粉体状または粒体状であるので、過度のゴム弾性を示さないようにしたり、衝撃吸収能力を高めたり、防振性能を高めたり、触感を良好にしたりする等の、従来の全体が一体化したエラストマー成形品では得られない性能を得ることができる。
【0036】
そして、エラストマー成形品8の上記のような各種特性は、成形時の加熱温度、時間等を変化させて、一体化した部分6と粉体状または粒体状のままの部分6との割合を変えることによって調整することが可能である。
【0037】
エラストマー成形品8は、例えば、衝撃干渉材、防振材、クッション材、生体モデル、玩具、人形、ぬいぐるみ、ロボット等の種々の用途に使用可能である。
【0038】
なお、本発明において、本実施例と同様にスチレン系熱可塑性エラストマーを用いる場合は、前記SEBS以外に、例えばSEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)等他の種のスチレン系熱可塑性エラストマーも使用できる。
【0039】
また、本発明において、本実施例と同様に、エラストマーとして熱可塑性エラストマーを用いる場合は、前記スチレン系以外に、例えば1,2−ポリブタジエン、オレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、ブタジエン系、塩ビ系等の他の種の熱可塑性エラストマーも使用できる。
【0040】
また、図1〜3では、エラストマー成形品8は直方体状であるものとしているが、本発明におけるエラストマー成形品の形状は、直方体に限られることはなく、任意の形状とすることができる。
【実施例2】
【0041】
エラストマーとして、熱可塑性エラストマーである1,2−ポリブタジエンを用いた。最初の粉体状または粒体状時のエラストマーの粒径は、実施例1と同様に数μm〜数10μmとした。粉体状または粒体状のエラストマーには、エラストマー100重量部に対し、エラストマーに流動性を与えるオイルとしてナフテン系オイルを1〜500重量部、架橋剤としてパーオキサイドを0.1〜0.2重量部添加している(エラストマーの各粒子に添加されている)。
【0042】
実施例1の場合と同様にして、成形型2,3内に上記粉体状または粒体状のエラストマー1を収容した上、成形型2,3を、150〜200℃の高温の熱媒液体5に1〜20分、浸漬して加熱することにより、エラストマーのうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分6は可塑化および架橋して一体化する一方、成形型2,3の内面から遠い側に存在する部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とした。完全に一体化したエラストマーの部分6と、初期状態通りに完全に粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成される。
【0043】
実施例1の場合と同様に、下部成形型2および上部成形型3を熱媒液体5から取り出し、水に浸漬して急冷した後、下部成形型2および上部成形型3からエラストマー成形品8を取り出した。得られたエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっており、外側の一体化した部分6内に粉体状または粒体状のままの部分1’が閉じ込められた状態となっている。外側の完全に一体化したエラストマーの部分6と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分1’との間に、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成されている。
【0044】
本実施例においても、実施例1の場合と同様の作用効果を得ることができる上、熱可塑性エラストマーを架橋しているため、得られるエラストマー成形品8の耐熱性等を向上することができる。
【実施例3】
【0045】
エラストマーとして、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)を用いた。最初の粉体状または粒体状時のエラストマーの粒径は、実施例1と同様に数μm〜数10μmとした。粉体状または粒体状のエラストマー(SBR)は未架橋の状態である。粉体状または粒体状のエラストマーには、SBR100重量部に対し架橋剤として硫黄1〜3重量部、チオラム系加硫促進剤を0.1〜0.3重量部、加硫助剤として亜鉛華を1〜5重量部、従来公知の充填剤を1〜100重量部、従来公知の補強材を1〜100重量部添加している(エラストマーの各粒子に添加されている)。
【0046】
実施例1の場合と同様にして、成形型2,3内に上記粉体状または粒体状のエラストマー1(SBR)を収容した上、成形型2,3を、150〜200℃の高温の熱媒液体5に1〜20分、浸漬して加熱することにより、エラストマーのうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分は架橋して一体化する一方、成形型2,3の内面から遠い側に存在する部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とした。完全に一体化したエラストマーの部分6と、初期状態通りに完全に粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成される。
【0047】
実施例1の場合と同様に、下部成形型2および上部成形型3を熱媒液体5から取り出し、水に浸漬して急冷した後、下部成形型2および上部成形型3からエラスマー(SBR)成形品8を取り出した。得られたエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっており、外側の一体化した部分6内に粉体状または粒体状のままの部分1’が閉じ込められた状態となっている。外側の完全に一体化したエラストマーの部分6と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分1’との間に、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成されている。
【0048】
本実施例においても、前記各実施例の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
なお、本発明において、本実施例と同様に、エラストマーとしてゴムを用いる場合は、前記SBR以外の各種のゴムも使用できる。
【実施例4】
【0050】
エラストマーとして、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)を用いた。最初の粉体状または粒体状時のエラストマーの粒径は、実施例1と同様に数μm〜数10μmとした。粉体状または粒体状のエラストマーには、EPDM100重量部に対し、熱可塑性樹脂であるポリエチレンを30〜100重量部、架橋剤としてパーオキサイドを2〜5重量部、エラストマーに流動性を付与するオイルとしてパラフィン系オイルを1〜50重量部、従来公知の補強剤、充填剤および着色剤を適量添加している(エラストマーの各粒子に添加されている)。粉体状または粒体状の段階では、EPDMは未架橋状態である。
【0051】
実施例1の場合と同様にして、成形型2,3内に上記粉体状または粒体状のエラストマー1(EPDM)を収容した上、成形型2,3を、150〜200℃の高温の熱媒液体5に1〜20分、浸漬して加熱することにより、エラストマー(EPDM)のうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分6は架橋し、ポリエチレン(熱可塑性樹脂)と混合した状態で一体化する一方、成形型2,3の内面から遠い側に存在する部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とした。完全に一体化したエラストマーの部分6と、初期状態通りに完全に粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成される。
【0052】
実施例1の場合と同様に、下部成形型2および上部成形型3を熱媒液体5から取り出し、水に浸漬して急冷した後、下部成形型2および上部成形型3からエラスマー(EPDM)成形品8を取り出した。得られたエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっており、外側の一体化した部分6内に粉体状または粒体状のままの部分1’が閉じ込められた状態となっている。外側の完全に一体化したエラストマーの部分6と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分1’との間に、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成されている。
【0053】
本実施例においても、実施例3の場合と同様の作用効果を得ることができる。そして、実施例3の場合のようにエラストマーとしてゴムを単独で用いる場合は、ゴムは流動性に乏しいため、成形時に大きな圧力を作用させないと、成形品の一体化した部分が多孔質になる傾向があるが、本実施例のように熱可塑性樹脂を混合すれば、成形品の一体化した部分が多孔質にならないようにすることができる。
【0054】
なお、本実施例のようにゴムに熱可塑性樹脂を混合したものを粉体状または粒体状とするのではなく、ゴムの粉体または粒体と熱可塑性樹脂の粉体または粒体とを混合したものを成形型内に収容してもよいが、本実施例のようにした方がゴムと熱可塑性樹脂とがよく混合される。
【0055】
また、本発明において、本実施例と同様に、エラストマーとしてゴムを用い、かつこのゴムに熱可塑性樹脂を混合する場合は、前記ポリエチレン以外の熱可塑性樹脂も使用可能である。
【実施例5】
【0056】
エラストマーとして、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)とスチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)とを混合したものを用いた。両者の配合比は、EPDM100重量部に対しSEBS10〜100重量部とした。最初の粉体状または粒体状時のエラストマーの粒径は、実施例1と同様に数μm〜数10μmとした。
【0057】
粉体状または粒体状のエラストマーには、エラストマー100重量部に対し、架橋剤としてパーオキサイドを1〜5重量部、エラストマーに流動性を付与するオイルとしてパラフィン系オイルを1〜200重量部、従来公知の補強剤、充填剤および着色剤を適量添加した。
【0058】
実施例1の場合と同様にして、成形型2,3内に上記粉体状または粒体状のエラストマー1(EPDM)を収容した上、成形型2,3を、150〜200℃の高温の熱媒液体5に1〜20分、浸漬して加熱することにより、エラストマーのうちの、成形型2,3の内面に近い側の部分6は架橋および可塑化して一体化する一方、成形型2,3の内面から遠い側に存在する部分1’は粉体状または粒体状のままとなっている状態とした。完全に一体化したエラストマーの部分6と、初期状態通りに完全に粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分1’との間には、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成される。
【0059】
実施例1の場合と同様に、下部成形型2および上部成形型3を熱媒液体5から取り出し、水に浸漬して急冷した後、下部成形型2および上部成形型3からエラストマー成形品8を取り出した。得られたエラストマー成形品8は、外側の部分6は一体化する一方、内側の部分1’は粉体状または粒体状のままとなっており、外側の一体化した部分6内に粉体状または粒体状のままの部分1’が閉じ込められた状態となっている。外側の完全に一体化したエラストマーの部分6と、内側の完全に粉体状または粒体状のエラストマーの部分1’との間に、これらの2つ部分6,1’の中間的な状態の中間状態層7が形成されている。
【0060】
本実施例においても、実施例3の場合と同様の作用効果を得ることができる。そして、実施例3の場合のようにエラストマーとしてゴムを単独で用いる場合は、ゴムは流動性に乏しいため、大きな圧力を作用させないと、成形品の一体化した部分が多孔質になる傾向があるが、本実施例のように熱可塑性エラストマーを混合すれば、成形品の一体化した部分が多孔質にならないようにすることができる。
【0061】
なお、本発明において、エラストマーとしてゴムと熱可塑性エラストマーとを混合して用いる場合、本実施例のようにゴムと熱可塑性エラストマーとを混練した混合物を粉体状または粒体状とするのではなく、ゴムの粉体または粒体と熱可塑性エラストマーの粉体または粒体とを混合したものを成形型内に収容することも可能であるが、本実施例のようにした方がゴムと熱可塑性エラストマーとがよく混合される。
【0062】
また、本発明において、エラストマーとしてゴムと熱可塑性エラストマーとを混合して用いる場合、必ずしも本実施例のように熱可塑性エラストマーも架橋する必要はなく、熱可塑性エラストマーの方は可塑化のみして一体化するようにしてもよい。
【0063】
また、前記各実施例では、エラストマーに各種の添加物がよく混合されるようにするため、エラストマーにオイル、補強剤、充填剤、着色剤、架橋剤等の各種添加物を混練した混合物を粉体状または粒子状としているので、エラストマーの各粒子に各種添加物が添加されているが、場合によっては、粉体状または粒体状のエラストマーにそれらの外部から各種添加物を添加してもよい。
【0064】
また、実施例2〜4では、架橋剤および熱可塑性樹脂(実施例4のみ)がエラストマーの各粒子内に混合されているので、架橋剤および熱可塑性樹脂はエラストマーと一緒に成形型2,3内に収容されることになるが、本発明において、架橋剤および熱可塑性樹脂をエラストマーの各粒子の外部から添加する場合は、架橋剤および熱可塑性樹脂は成形型を加熱する段階の前までに成形型内に収容すればよい。
【0065】
また、前記各実施例では、粉体状または粒体状のエラストマー1を収容した成形型2,3を高温の熱媒液体5に浸漬して加熱しているが、本発明おいては、成形型を炉内で加熱したり、ヒーターで直接加熱する等の他の方法により加熱してもよい。
【0066】
また、本発明においては、成形型の構造、形状は、図1および2に示されるようなものに限られることはない。
【0067】
また、前記各実施例では、エラストマーの一体化が所望の程度を超えて進行しないようにするため、加熱後、成形枠から水に浸漬して急冷しているが、成形枠を水以外の液体で急冷してもよいし、場合によっては、空冷や自然放熱等の他の方法で成形枠を冷却してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように本発明によるエラストマー成形方法およびエラストマー成形品は、外側の部分は一体化する一方、内側の部分は粉体状または粒体状のままとなっているエラストマー成形品およびその成型方法として有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 粉体状または粒体状のエラストマー
1’ 加熱後も粉体状または粒体状のままのエラストマーの部分
2 下部成形型
3 上部成形型
4 熱媒容器
5 熱媒液体
6 一体化したエラストマーの部分
7 中間状態層
8 エラスマー成形品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状または粒体状のエラストマーを成形型内に収容する段階と、
前記粉体状または粒体状のエラストマーを収容した前記成形型を、前記エラストマーのうちの、前記成形型の内面に近い側の部分は一体化する一方、前記成形型の内面から遠い側の部分は粉体状または粒体状のままとなっている状態となるまで加熱する段階と、
前記成形型から前記エラストマーを取り出し、外側の部分は一体化する一方、内側の部分は粉体状または粒体状のままで、前記外側の一体化した部分内に閉じ込められた状態となっているエラストマー成形品を得る段階とを有してなるエラストマー成形方法。
【請求項2】
前記エラストマーは熱可塑性エラストマーであり、前記成形型を加熱する段階により、前記粉体状または粒体状のエラストマーのうちの前記成形型の内面に近い側の部分を可塑化して一体化する請求項1記載のエラストマー成形方法。
【請求項3】
前記成形型を加熱する段階の前に架橋剤を前記成形型内に収容しておき、前記成形型を加熱する段階により、前記粉体状または粒体状のエラストマーのうちの前記成形型の内面に近い側の部分を可塑化するとともに架橋して一体化する請求項2記載のエラストマー成形方法。
【請求項4】
前記粉体状または粒体状のエラストマーは未架橋のゴムであり、前記成形型を加熱する段階の前に架橋剤を前記成形型内に収容しておき、前記成形型を加熱する段階により、前記粉体状または粒体状のエラストマーのうちの前記成形型の内面に近い側の部分を架橋して一体化する請求項1記載のエラストマー成形方法。
【請求項5】
前記成形型を加熱する段階の前に熱可塑性樹脂を前記成形型内に収容しておき、前記成形型を加熱する段階により、前記粉体状または粒体状のエラストマーのうちの前記成形型の内面に近い側の部分を、前記熱可塑性樹脂が混合した状態で架橋して一体化する請求項4記載のエラストマー成形方法。
【請求項6】
前記粉体状または粒体状のエラストマーは熱可塑性エラストマーと未架橋のゴムとを有し、前記成形型を加熱する段階の前に架橋剤を前記成形型内に収容しておき、前記成形型を加熱する段階により、前記粉体状または粒体状のエラストマーのうちの前記成形型の内面に近い側の部分の前記熱可塑性エラストマーおよび前記ゴムを可塑化および(または)架橋し、前記熱可塑性エラストマーおよび前記ゴムを互いに混合した状態で一体化する請求項1記載のエラストマー成形方法。
【請求項7】
前記成形型を加熱する段階は、前記成形型を高温の熱媒液体に浸漬することにより行う請求項1乃至6いずれか1項に記載のエラストマー成形方法。
【請求項8】
前記成形型を加熱する段階の後、前記エラストマーを収容したまま前記成形型を低温の液体に浸漬して急冷する段階を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエラストマー成形方法。
【請求項9】
一体化したエラストマーからなる外側の部分と、前記外側の部分内に閉じ込められた、粉体状または粒体状のエラストマーからなる内側の部分とを有してなり、
前記一体化したエラストマーと前記粉体状または粒体状のエラストマーとは同一のエラストマーであるエラストマー成形品。
【請求項10】
前記エラストマーは熱可塑性エラストマーを有し、前記外側の部分は一旦加熱されて可塑化することにより一体化している請求項9記載のエラストマー成形品。
【請求項11】
前記エラストマーは熱可塑性エラストマーを有し、前記外側の部分は一旦加熱されて可塑化および架橋することにより一体化している請求項9記載のエラストマー成形品。
【請求項12】
前記エラストマーはゴムを有し、前記外側の部分は一旦加熱されて架橋することにより一体化している請求項9記載のエラストマー成形品。
【請求項13】
前記エラストマーは熱可塑性エラストマーとゴムとを有し、前記外側の部分の前記熱可塑性エラストマーおよび前記ゴムは一旦加熱されて可塑化および(または)架橋することにより、互いに混合した状態で一体化している請求項1記載のエラストマー成形品。
【請求項14】
外側の部分の完全に一体化したエラストマーと、内側の部分の完全に粉体状または粒体状のエラストマーとの間に、前記2つ部分の中間的な状態の中間状態層が存在する請求項9乃至13のいずれか1項に記載のエラストマー成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−61825(P2012−61825A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209993(P2010−209993)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(391022083)株式会社ポリテック・デザイン (8)
【Fターム(参考)】