説明

エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル及びその製造方法

【課題】画素電極に段差を抑制する。
【解決手段】ELディスプレイパネル1は、絶縁基板32と、絶縁基板32上に形成された供給線4と、画素ごとに基板上に形成されたキャパシタの他方の電極81と、電極81及び供給線4を被覆したゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上において電極81に対向した一方の電極82と、電極82を被覆した保護絶縁膜40と、保護絶縁膜40から突出するよう供給線4に積層された導電膜44と、保護絶縁膜40上に成膜された第1平坦化膜45と、第1平坦化膜45上に成膜された第2平坦化膜46と、第2平坦化膜46上において画素ごとに設けられたサブピクセル電極12と、サブピクセル電極12上に形成された有機化合物発光層14と、有機化合物発光層14上に形成された共通電極16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス素子を画素ごとに設けたエレクトロルミネッセンスディスプレイパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルは大きく分けてパッシブ駆動方式のものと、アクティブマトリクス駆動方式のものに分類することができるが、アクティブマトリクス駆動方式のディスプレイパネルが高コントラスト、高精細といった点でパッシブ駆動方式のディスプレイよりも優れている。例えば特許文献1に記載された従来のアクティブマトリクス駆動方式のディスプレイパネルにおいては、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という。)と、階調データに応じた電圧信号がゲートに印加されて有機EL素子に電流を流す駆動トランジスタと、この駆動トランジスタのゲートに階調データに応じた電圧信号を供給するためのスイッチングを行うスイッチ用トランジスタと、スイッチ用トランジスタのオフ時に電荷を保持するキャパシタとが、サブピクセルごとに設けられている。
【0003】
また、有機EL素子の画素電極がマトリクス状に配列され、画素電極上に有機化合物発光層が形成され、有機EL素子の共通電極が有機化合物発光層上に形成されている。
【0004】
このようなディスプレイパネルでは、走査線が選択されるとスイッチング用トランジスタがオンになり、その時に輝度を表すレベルの電圧が信号線を介して駆動トランジスタのゲートに印加される。これにより、駆動トランジスタがオンになり、ゲート電圧のレベルに応じた大きさの駆動電流が電源から駆動トランジスタのソース−ドレインを介して有機EL素子に流れ、有機EL素子が電流の大きさに応じた輝度で発光する。走査線の選択が終了してから次にその走査線が選択されるまでの間では、スイッチ用トランジスタがオフになっても駆動トランジスタのゲート電圧のレベルがキャパシタによって保持され続け、有機EL素子が電圧に応じた駆動電流の大きさに従った輝度で発光する。
【0005】
ディスプレイパネルを駆動するために、ディスプレイパネルの周辺に駆動回路を設け、ディスプレイパネルの表示領域内に形成された配線(例えば、走査線、信号線、供給線等)に電圧を印加することが行われている。配線を通じて有機EL素子に電流が流れることになり、このような配線は薄膜トランジスタの電極と同時にパターニングされる。即ち、ディスプレイパネルを製造するにあたって、薄膜トランジスタの電極のもととなる導電性薄膜に対してフォトリソグラフィー法、エッチング法を行うことによって、その導電性薄膜から薄膜トランジスタの電極を形状加工するとともに、同時に配線も形状加工する。そのため、配線の厚さは薄膜トランジスタの電極の厚さと同じになる。
【特許文献1】特開平8−330600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、薄膜トランジスタの電極は構造上、薄く設計されているため、配線も薄くなるが、そのため配線の電気抵抗が高い。そのような配線から有機EL素子に電流を流そうとすると、配線の電気抵抗によって、電圧降下が発生したり、配線を通じた電流の流れの遅延が生じたりする。そのため、本出願人は、電圧降下及び電流遅延を抑えるために配線を低抵抗化するために、配線上に別途金属層を積層することを開発している。
【0007】
ところが、金属層、キャパシタ及び薄膜トランジスタ等を被覆するように樹脂層が積層されているので、樹脂層の表面は金属層の上の部分と、キャパシタの上の部分で段差が生じてしまう。有機EL素子の画素電極がキャパシタの上において樹脂層上に形成されているので、画素電極が段差にかかってしまい、画素電極にも段差が生じてしまう。そのため、画素電極上に形成された有機化合物発光層の厚みが均一にならず、有機化合物発光層の薄い部分に流れる電流と厚い部分に流れる電流に差が生じこれらの間で発光輝度に差が発生してしまう。強いては、有機化合物発光層が途切れてしまい、画素電極と共通電極がショートしてしまうこともある。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解決しようとしてなされたものであり、画素電極に段差を抑制することことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルは、
基板と、
前記基板上に形成された導電膜と、
前記導電膜の周囲に形成された第1平坦化膜と、
前記導電膜及び前記第1平坦化膜を覆うように形成された第2平坦化膜と、
前記第2平坦化膜上に形成された有機EL素子と、
を備えることを特徴とする。
前記有機EL素子の下方には、キャパシタが配置されていてもよい。
前記第2平坦化膜は前記第1平坦化膜よりも平坦化性に優れている材料からなることが好ましい。
【0010】
本発明に係るエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法は、
導電膜が形成された基板上に第1平坦化膜を成膜し、
前記導電膜上に位置する前記第1平坦化膜を除去し、
前記導電膜及び前記第1平坦化膜を覆うように第2平坦化膜を形成する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記第1平坦化膜は感光性樹脂であることが好ましい。
前記第2平坦化膜は前記第1平坦化膜よりも平坦化性に優れている材料からなるが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電膜と基板との間の段差を第1平坦化膜が緩和し、さらに第2平坦化膜が、第1平坦化膜及び導電膜を覆うように形成することで、導電膜上と導電膜の周囲上での段差を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence)という用語をELと略称する。
【0014】
更に以下においてはカラーディスプレイパネルとして説明を行うため、「ピクセル」が赤、緑、青の「サブピクセル」からなるものとして、「サブピクセル」という用語を用いるが、モノクロディスプレイパネルの場合には、「サブピクセル」という用語が「ピクセル」という用語になる。つまり、カラーディスプレイパネルの場合には、「サブピクセル」が「画素」に相当し、モノクロディスプレイパネルの場合には、「ピクセル」が「画素」に相当する。
【0015】
図1は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELディスプレイパネル1の2行3列分のサブピクセルの回路図である。図1では、図面を簡略化するために2行3列分のサブピクセルを示したが、実際にはより多くの行数及び列数分のサブピクセルが配列されている。
【0016】
図1に示すように、ELディスプレイパネル1には、複数の走査線2が互いに平行となるよう配列され、複数の信号線3が走査線2と直交するよう配列され、隣り合う走査線2の間において供給線4が走査線2と平行になるよう設けられている。走査線2と信号線3によって囲まれた矩形領域がサブピクセルとなり、複数のサブピクセルがマトリクス状に配列されている。
【0017】
1サブピクセルにつき薄膜トランジスタ5,6,7とキャパシタ8と有機EL素子10とが設けられている。以下、薄膜トランジスタ5をスイッチトランジスタ5と称し、薄膜トランジスタ6を保持トランジスタ6と称し、薄膜トランジスタ7を駆動トランジスタ7と称する。
【0018】
それぞれのサブピクセルでは、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方が有機EL素子10のアノード、キャパシタ8の一方の電極82及び駆動トランジスタ7のソースとドレインのうちの一方に接続されている。駆動トランジスタ7のソースとドレインのうちの他方が供給線4に接続され、駆動トランジスタ7のゲートがキャパシタ8の他方の電極81及び保持トランジスタ6のドレインとソースのうちの一方に接続されている。保持トランジスタ6のドレインとソースのうちの他方が供給線4に接続され、保持トランジスタ6のゲートが走査線2に接続されている。
【0019】
全てのサブピクセルの有機EL素子10はカソードを共通電極とし、カソードが接地といった一定電圧Vcomに保たれている。有機EL素子10の発光色については、同一の行の有機EL素子10は赤、緑、青の順に配列され、同一の列の有機EL素子10は同じ色となっている。
【0020】
ELディスプレイパネル1の周囲において走査線2が電圧制御の第1の走査側ドライバに接続され、供給線4が電圧制御の第2の走査側ドライバに接続され、信号線3が電流制御のデータ側ドライバに接続され、これらドライバによってELディスプレイパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。
【0021】
図2は、ELディスプレイパネル1の2行6列分のサブピクセルの概略平面図であり、図3は、図2の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図であり、図4は、図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。図2に示すように、同じ行の走査線2と供給線4との間においては有機EL素子10の発光領域となる有機化合物発光層14が行方向に配列され、信号線3と隣りの信号線3との間においては有機化合物発光層14が列方向に配列され、全体として有機化合物発光層14がマトリクス状に配列されている。
【0022】
図3に示すように、有機EL素子10のアノードとなるサブピクセル電極12が有機化合物発光層14の下に形成され、有機EL素子10のカソードとなる共通電極16が有機化合物発光層14の上に形成され、下からサブピクセル電極12、有機化合物発光層14、共通電極16の順に積層された構造が有機EL素子10となる。サブピクセル電極12はサブピクセルごとに独立して形成され、サブピクセル電極12がマトリクス状に配列されている。共通電極16がべた一面に成膜され、共通電極16は全てのサブピクセルに共通した電極である。
【0023】
サブピクセル電極12は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。
【0024】
有機化合物発光層14は、例えばサブピクセル電極12から順に正孔輸送層、発光層の順に積層した二層構造である。正孔輸送層は、例えば、導電性高分子であるPEDOT(ポリチオフェン)及びドーパントであるPSS(ポリスチレンスルホン酸)からなり、発光層は、ポリフェニレンビニレン系発光材料からなる。
【0025】
共通電極16は、サブピクセル電極12よりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。また、共通電極16は、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていても良いし、以上の各種材料の層に加えてより高仕事関数の金属層が堆積した積層構造となっていても良く、具体的には、有機化合物発光層14と接する界面側に成膜された低仕事関数の層として高純度のバリウム層と、高仕事関数の層としてバリウム層を被覆したアルミニウム層との積層構造や、低仕事関数の層として下層にリチウム層、高仕事関数の層として上層にアルミニウム層が設けられた積層構造が挙げられる。
【0026】
サブピクセル電極12はトランジスタアレイパネル30の表面に積層されており、このトランジスタアレイパネル30に走査線2、信号線3、供給線4、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6、駆動トランジスタ7及びキャパシタ8が設けられている。
【0027】
トランジスタアレイパネル30は透明な絶縁基板32をベースとしており、絶縁基板32上に絶縁膜、導電膜、半導体膜、不純物半導体膜等がパターニングされることで、走査線2、信号線3、供給線4、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6、駆動トランジスタ7及びキャパシタ8が設けられている。
【0028】
図4に示すように、駆動トランジスタ7はアモルファスシリコントランジスタであり、逆スタガ構造とされている。つまり、駆動トランジスタ7は、絶縁基板32上に形成されたゲート71と、ゲート71を被覆したゲート絶縁膜34を挟んでゲート71に対向した半導体膜72と、半導体膜72の中央部上に形成された絶縁膜からなるチャネル保護膜73と、半導体膜73の両端部上において互いに離間するよう形成された不純物半導体膜74,75と、ドレインとソースのうちの一方の電極76であって不純物半導体膜74上に形成された電極76と、ドレインとソースのうちの他方の電極77であって不純物半導体膜75上に形成された電極77と、から構成されている。
【0029】
スイッチトランジスタ5及び保持トランジスタ6も駆動トランジスタ7と同様に逆スタガ構造とされており、絶縁基板32上に形成されたゲートと、ゲートを被覆したゲート絶縁膜34を挟んでゲートに対向した半導体膜と、半導体膜の中央部上に形成されたチャネル保護膜と、半導体膜の両端部上において互いに離間するよう形成された不純物半導体膜と、一方の不純物半導体膜上に形成されたドレインと、他方の不純物半導体膜上に形成されたソースと、から構成されている。スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7は、共通の保護絶縁膜40によって被覆されている。なお、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7はポリシリコントランジスタであってもよく、コプラナ型構造であってもよい。
【0030】
図2〜図4に示すように、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のゲートは、絶縁基板32上にべた一面に成膜された導電膜(例えば、アルミニウム−チタン合金)のパターニングにより形成されたものであり、ゲートのほかに走査線2、供給線4、キャパシタ8の他方の電極81もこの導電膜のパターニングより形成されたものである。
【0031】
ゲート絶縁膜34はべた一面に成膜され、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のゲート、キャパシタ8の他方の電極81、走査線2、供給線4は共通のゲート絶縁膜34によって被覆されている。信号線3の間においては、開口部35が走査線2に重なるようゲート絶縁膜34に形成され、開口部36が供給線4に重なるようゲート絶縁膜34に形成されている。
【0032】
スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のソースとドレインは、ゲート絶縁膜34上にべた一面に成膜された導電膜(例えば、クロムにアルミニウム−チタン合金を積層した膜)のパターニングにより形成されたものであり、キャパシタ8の一方の電極82及び信号線3もこの導電膜のパターニングにより形成されたものである。更に、開口部35内において導電パターン37が走査線2に積層され、開口部36内において導電パターン38が供給線4に積層されており、導電パターン37,38も、ゲート絶縁膜34上にべた一面に成膜された導電膜のパターニングにより形成されたものである。キャパシタ8の一方の電極82は、ゲート絶縁膜34を挟んでキャパシタ8の他方の電極81に対向するよう形成されている。図3に示すキャパシタ8の一方の電極82が、信号線3に沿って配置されるスイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方と接続されている。
【0033】
スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のソースとドレインのほかにキャパシタ8の一方の電極82及び信号線3も、共通の保護絶縁膜40によって被覆されている。保護絶縁膜40には、開口部40aが導電パターン37に重なるよう形成されているとともに、開口部40bが導電パターン38に重なるよう形成されている。更に、開口部40a内においてコンタクト層41が導電パターン37に積層され、開口部40b内において下地メッキ層42が導電パターン38に積層されている。走査線2の上方に設けられたコンタクト層41は、表示領域外に形成されるコンタクトホールを介して走査線2を走査する走査ドライバの各端子と接続されている。下地メッキ層42の上面には銅からなる導電膜44が積層されており、この導電膜44は下地メッキ層42を下地電極としてメッキ法により成長させたものである。従って、導電膜44は、走査線2、信号線3、供給線4、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のゲート、ソース、ドレイン等と比較してもこれらよりも十分に厚く設けられ、導電膜44が41bから保護絶縁膜40の表面よりも高く突出した状態とされている。コンタクト層41及び下地メッキ層42は同一の導電膜をパターニングすることによって一括に形成されている。導電膜44は、下地メッキ層42、導電パターン38を介して供給線4に接続されている。なお、コンタクト層41の代わりに、導電膜44を接着するための中間層としても良い。
【0034】
保護絶縁膜40上には、導電膜44の周囲を除いて第1平坦化膜45が成膜されている。第1平坦化膜45の厚さは、保護絶縁膜40の表面を基準とした導電膜44の突出高さにほぼ等しく、この第1平坦化膜45の表面が平坦となっており、走査線2、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6、駆動トランジスタ7及びキャパシタ8等による凹凸が第1平坦化膜45によって解消されている。更に、導電膜44の周囲を除いて第1平坦化膜45が成膜されることで、保護絶縁膜40の表面と導電膜44の頭頂との間の段差が解消される。第1平坦化膜45の厚さは導電膜44の突出した高さに等しいことが好ましいが、第1平坦化膜45は導電膜44がより薄くてもよい。
【0035】
第1平坦化膜45上には有機樹脂等からなる第2平坦化膜46がべた一面に成膜され、この第2平坦化膜46によって導電膜44が被覆されている。第2平坦化膜46は、第1平坦化膜45よりも平坦性が高い材料から選択されている。このように第1平坦化膜45上に第2平坦化膜46が成膜されることで、第2平坦化膜46の表面の平坦度が向上する。
【0036】
この第2平坦化膜46の表面に有機EL素子が形成されることになり、有機EL素子のサブピクセル電極12が第2平坦化膜46の表面でマトリクス状に配列されている。サブピクセル電極12は保護絶縁膜40、第1平坦化膜45及び第2平坦化膜46を介してキャパシタ8の電極82に一部対向している。各サブピクセル電極12の中央部が露出され、且つサブピクセル電極12の周縁の2辺乃至4辺を覆うように絶縁膜47が第2平坦化膜46上に形成されている。絶縁膜47がサブピクセル電極12の周縁の相対向する2辺のみを覆っている場合は、絶縁膜47は走査線2及び供給線4と平行となって各走査線2及び各供給線4に重なっているストライプ形状に配置されている。
【0037】
絶縁膜47上には、メッキ法により成長させた共通配線48が走査線2及び供給線4と平行となるよう形成されている。共通配線48の表面には、撥水性・撥油性を有した撥液性導通膜49が成膜されている。撥液性導通膜49は、次の化学式(1)に示されたトリアジントリチオールの1又は2のチオール基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属である共通配線48の表面に酸化吸着したものである。
【0038】
【化1】

【0039】
撥液性導通膜49はトリアジントリチオール分子ユニットが共通配線48の表面にごく薄く被膜された膜であるから、撥液性導通膜49が非常に低抵抗であって厚さ方向に導通する。なお、撥液性導通膜49は、トリアジントリチオールに限らず、トリアジンジチオール等のトリアジン化合物でもよく、撥水性・撥油性を顕著にするためにトリアジントリチオールに代えて、トリアジントリチオールの1又は2のチオール基がフッ化アルキル基に置換したトリアジンチオール誘導体でも良い。
【0040】
共通電極16は全てのサブピクセルに共通した電極であるので、共通電極16が共通配線48をも被覆してべた一面に成膜されている。
【0041】
ELディスプレイパネル1の製造方法について説明する。
まず、気相成長法(スパッタリング、蒸着法等)によって絶縁基板32の表面に導電膜を成膜し、フォトリソグラフィー法・エッチング法によってその導電膜をパターニングする。これにより、キャパシタ8の他方の電極81と、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のゲートと、走査線2と、供給線4とを形成する。
【0042】
次に、気相成長法によって窒化シリコン又は酸化シリコン等のゲート絶縁膜34をべた一面に成膜し、ゲート絶縁膜34によってキャパシタ8の他方の電極81と、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のゲートと、走査線2と、供給線4とを被覆する。次に、供給線4上において開口部36をゲート絶縁膜34に形成し、走査線2上において開口部35をゲート絶縁膜34に形成する。次に、気相成長法によって導電膜をゲート絶縁膜34上にべた一面に成膜し、フォトリソグラフィー法・エッチング法によってその導電膜をパターニングする。これにより、キャパシタ8の一方の電極82と、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7の各ドレイン・ソースと、信号線3と、導電パターン37,38とを形成する。キャパシタ8の一方の電極82は他方の電極81に対向させるようパターニングされている。
【0043】
次に、気相成長法によって窒化シリコン又は酸化シリコン等の保護絶縁膜40をべた一面に成膜し、保護絶縁膜40によってキャパシタ8の一方の電極82と、スイッチトランジスタ5、保持トランジスタ6及び駆動トランジスタ7のドレイン・ソースと、信号線3と、導電パターン37,38とを被覆するよう形成する。次に、供給線4上において開口部40bを保護絶縁膜40に形成し、走査線2上において開口部40aを保護絶縁膜40に形成する。次に、開口部40a内の導電パターン37上及び開口部40b内の導電パターン38上にそれぞれスパッタ等で銅からなるコンタクト層41及び下地メッキ層42を形成する。次に、供給線4に電圧を印加した電解メッキ法を行うことで、下地メッキ層42上に導電膜44を成長させる。このとき、導電膜44が開口部40bから突出して保護絶縁膜40の表面よりも導電膜44が高くなるように導電膜44を成長させる。なお、導電膜44を電解メッキ法ではなく無電解メッキ法によって成膜しても良い。
【0044】
次に、絶縁基板32を回転台で回転させながら、保護絶縁膜40上にポリイミド等の感光性樹脂を塗布する(スピンコート法)ことで、第1平坦化膜45を成膜する(図5)。ここで、第1平坦化膜45の厚さは導電膜44の突出高さに等しいことが好ましいが、導電膜44が第1平坦化膜45より厚くてもよい。このように第1平坦化膜45を成膜すると、図5に示すように、第1平坦化膜45は導電膜44の部分の上において盛り上がった状態になっている。基板上に400〜420nm厚のAl合金膜を堆積してからパターニングして導電膜44と同様に段差を生じさせ、その上に窒化シリコン膜を成膜し、Al合金膜がある部分とない部分での段差を420nmとし、さらにその上に第1平坦化膜45として利用できる感光性樹脂(JSR社製 PC403)を成膜したところ、図8に示すように、段差が190nm程度に縮まり、平坦度が54%になることが確認された。このように盛り上がった部分の段差は、導電膜44の突出高さよりも十分低い。なお、この感光性樹脂の粘度を30CPとしたときの、スピンコートの回転速度を500rpm、成膜時間を6秒、或いは、スピンコートの回転速度を1000rpm、成膜時間20秒に設定している。第1平坦化膜45の厚さが厚くても、絶縁基板32の回転速度を調整し、スピンコート法により図5に示すように、導電膜44上を第1平坦化膜45が覆うことが可能になる。なお、図8において、凡例(塗布前)については導電膜44のトップ部分の高さ位置をゼロ基準とし、凡例(第一平坦化膜)については導電膜44の上における第1平坦化膜45の表面の高さ位置をゼロ基準とする。
【0045】
次に、感光性樹脂を露光・現像することによって、図6に示すように、第1平坦化膜45を導電膜44の周囲の部分で除去し開口部45aを形成する。ここで、第1平坦化膜45がポジ型の場合には、導電膜44の周囲部分を露光し、第1平坦化膜45がネガ型の場合には、導電膜44の周囲部分を除いた部分を露光する。
【0046】
次に、図7に示すように、スピンコート法によって第1平坦化膜45上に絶縁膜からなる非感光性の第2平坦化膜46を成膜する。基板上に400〜420nm厚のAl合金膜を堆積してからパターニングして導電膜44と同様に段差を生じさせ、その上に窒化シリコン膜を成膜し、Al合金膜がある部分とない部分での段差を420nmとし、さらにその上に、第1平坦化膜45を成膜することなしに、第2平坦化膜46として利用できる非感光性平坦化材料(長瀬産業製 SRK-762)を成膜したところ、図8に示すように、段差が190nm程度に縮まり、平坦度が94%になることが確認された。なお、非感光性平坦化材料の粘度を10CPとしたときの、スピンコートの回転速度を500rpm、成膜時間を6秒、或いは、スピンコートの回転速度を1000rpm、成膜時間20秒に設定している。このように、第2平坦化膜46は、平坦度が第1平坦化膜45の平坦度よりも高いが、感光性ではないために第1平坦化膜45の代替として用いると、導電膜44を露出するためには、さらに上部にフォトリソマスクを形成してエッチングしなければ開口部45aが形成されない。また、第1平坦化膜45を兼ねて第2平坦化膜46のみを形成すると、導電膜44の段差によって周囲が隆起してしまい平坦度が低くなってしまう。
つまり、第1平坦化膜45を感光性樹脂としたことにより、段差抑制のために導電膜44上をエッチングするためのフォトレジストマスクを形成しなくてよく、さらに、平坦度が第1平坦化膜45の平坦度よりも高い第2平坦化膜を形成したので、より表面を平滑にすることができる。このため、導電膜44を数μmとしても第1平坦化膜45及び第2平坦化膜46を組み合わせることによって十分段差を緩和することができる。なお、図8において、凡例(第二平坦化膜)については導電膜44の上における第2平坦化膜46の表面の高さ位置をゼロ基準とする。
【0047】
次に、気相成長法、フォトリソグラフィー法、エッチング法を順に行うことによって、サブピクセルごとにサブピクセル電極12を形成する。次に、気相成長法、フォトリソグラフィー法、エッチング法を順に行うことによって、走査線2及び供給線4に重なるように絶縁膜47を形成する。次に、メッキ法によって絶縁膜47の上に共通配線48を成長させる。メッキ法によって共通配線48を成長させたので、共通配線48の高さは絶縁膜47、サブピクセル電極12の厚みよりも大きい。共通配線48の材料としては、銅、銀又は金を用いると良い。
【0048】
次に、トリアジンチオール化合物の水酸化ナトリム水溶液を精製する。次に、室温においてトリアジンチオール化合物の水酸化ナトリウム水溶液にトランジスタアレイパネル30を浸漬すると、金属からなる共通配線48の表面にトリアジンチール化合物の撥液性導通膜49が選択的に形成され撥液性を示すことになるが、ITO等の金属酸化物からなるサブピクセル電極12及び絶縁膜47の表面にはトリアジンチオール化合物の膜が撥液性を示す程度に形成されることはない。
【0049】
次に、正孔注入材料(例えば、導電性高分子であるPEDOT及びドーパントとなるPSS)を分散媒に分散した有機化合物分散液又は正孔注入材料を溶媒に溶解した有機化合物溶液をサブピクセル電極12に塗布し、その後発光材料(例えば、ポリフェニレンビニレン系等の共役二重結合ポリマを含む発光材料)の分散媒又は溶液をその上に塗布する。このような塗布によって、それぞれのサブピクセル電極12上に有機化合物からなる有機化合物発光層14を形成する。このとき、分散媒又は溶液はサブピクセル電極12になじみ、撥液性導通膜49ではじかれるので乾燥後、比較的平滑で均一な厚さに成膜することができる。さらに、厚膜の共通配線48が設けられているから、更には共通配線48の表面に撥液性導通膜49がコーティングされているから、隣り合うサブピクセル電極12に塗布された溶液又は分散媒が共通配線48を越えて混ざり合わない。そのため、互いに異なる発光色(異なる発光材料)の画素同士のサブピクセル電極12では、互いに発光材料が混じり合うことがなく、発光色ごとに独立して有機化合物発光層14を形成することができる。なお、塗布方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)、インクジェット法のような独立した液滴ではなく、連続した液体を流すノズルコート法、オフセット等の印刷方法を用いても良いし、ディップコート法、スピンコート法といったコーティング法を用いても良い。
【0050】
次に、気相成長法により共通電極16をべた一面に成膜する。以上により、ELディスプレイパネル1が完成する。
【0051】
以上のように本実施の形態においては、導電膜44を形成した後に、第1平坦化膜45を成膜し、導電膜44の周囲の第1平坦化膜45を除去してから、更にその第1平坦化膜45上に第2平坦化膜46を成膜したので、第2平坦化膜46の表面の平坦度が高くなる。特に、導電膜44の周囲で第1平坦化膜45の一部を除去したので、第2平坦化膜46の表面をより平坦にすることができ、また第1平坦化膜45及び第2平坦化膜46構造としたことによってキャパシタ8が設けられている部分と設けられていない部分での段差が抑えられるので、キャパシタ8及び導電膜44の上部に位置するサブピクセル電極12の表面が平坦とすることができる。そのため、有機化合物発光層14の厚さを均一に形成することができ、そのため共通電極16がサブピクセル電極12にショートすることを防止することができる。更には、有機化合物発光層14の厚さが均一になったので、発光斑も抑えることができる。
【0052】
また、導電膜44がトランジスタ5〜7の電極とは別層で形成されているから、導電膜44を厚くすることができ、導電膜44を低抵抗することができる。このような低抵抗な導電膜44が供給線4に積層されているから、供給線4の電圧降下を抑えることができ、更には供給線4の信号遅延を抑えることができる。そのため、面内の発光強度のムラを抑えることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第1平坦化膜45をスピンコート法によって成膜し、その後導電膜44の上の部分を除去していたが、第1平坦化膜45をインクジェット法によって成膜しても良い。この場合、インクジェットヘッドによって樹脂液を保護絶縁膜40に向けて吐出するが、導電膜44を避けるようにして樹脂液を吐出すると、導電膜44上に第1平坦化膜45が乗り上げて段差が生じることがなく、導電膜44上の第1平坦化膜45のエッチング処理を行わずに済む。インクジェット法によって第1平坦化膜45を成膜する際には、一回当たりの吐出量と吐出回数を制御することによって、第1平坦化膜45の厚さを制御することができ、導電膜44の突出高さに等しくすることもできる。
また上記実施形態では、第1平坦化膜45成膜時に、第1平坦化膜45の表面に凹凸を形成してしまう導電膜44が供給線4に接続されているが、これに限らず、第1平坦化膜45成膜時に、第1平坦化膜45の表面に凹凸を形成してしまう配線が、その他の配線であってもよい。
また上記実施形態では、駆動トランジスタ7のゲートに接続されたキャパシタ8が設けられているが、キャパシタ8がなくても正常に動作できるのであれば、キャパシタ8がなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ELディスプレイパネル1の回路図である。
【図2】ELディスプレイパネル1の2行6列分のサブピクセルの概略平面図である。
【図3】図2の切断線III−IIIに沿った面の矢視断面図である。
【図4】図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。
【図5】ELディスプレイパネル1の製造における一工程を示す断面図である。
【図6】ELディスプレイパネル1の製造における一工程を示す断面図である。
【図7】ELディスプレイパネル1の製造における一工程を示す断面図である。
【図8】段差を表したグラフである。
【符号の説明】
【0055】
1 ELディスプレイパネル
4 供給線
8 キャパシタ
12 サブピクセル電極
14 有機化合物発光層
16 共通電極
32 絶縁基板
34 ゲート絶縁膜
40 保護絶縁膜
44 導電膜
45 第1平坦化膜
46 第2平坦化膜
81 電極
82 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された導電膜と、
前記導電膜の周囲に形成された第1平坦化膜と、
前記導電膜及び前記第1平坦化膜を覆うように形成された第2平坦化膜と、
前記第2平坦化膜上に形成された有機EL素子と、
を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイパネル。
【請求項2】
前記有機EL素子の下方には、キャパシタが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイパネル。
【請求項3】
前記第2平坦化膜は前記第1平坦化膜よりも平坦化性に優れている材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイパネル。
【請求項4】
導電膜が形成された基板上に第1平坦化膜を成膜し、
前記導電膜上に位置する前記第1平坦化膜を除去し、
前記導電膜及び前記第1平坦化膜を覆うように第2平坦化膜を形成する、
ことを特徴とするエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記第1平坦化膜は感光性樹脂であることを特徴とする請求項4に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
前記第2平坦化膜は前記第1平坦化膜よりも平坦化性に優れている材料からなることを特徴とする請求項4又は5に記載のエレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−157608(P2007−157608A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354390(P2005−354390)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】