説明

エレベータの安全装置

【課題】かご出入口が開いた状態でのかごの移動の防止をより確実に図ることができ、容易に設置することができるエレベータの安全装置を得る。
【解決手段】上部及び下部滑車7,8間に巻き掛けられた把持用ロープ9は、滑車7,8の回転に伴って互いに逆方向へ移動される第1及び第2ロープ並列部9a,9bを有している。かご3には、第1ロープ並列部9aのかご3に対する変位によりかごガイドレール2を把持するレール把持装置10と、第1及び第2ロープ並列部9a,9bを選択的に把持可能なロープ把持装置11とが設けられている。かごの戸5とロープ把持装置11とは、連動装置12により連動する。ロープ把持装置11は、かごの戸5が戸閉位置にあるときに第1ロープ並列部9aを把持し、かごの戸5が戸閉位置から外れることより第1ロープ並列部9aの把持を解除して第2ロープ並列部9bを把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かご出入口が開いたままかごが移動することの防止を図ることができるエレベータの安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、かご出入口が開いたままかごが自走することを防止するために、かごを吊り下げる主索をエレベータの異常時に把持するエレベータの安全装置が提案されている。従来のエレベータでは、ブレーキ動作とかごの戸の戸開状態とを検出している状態でかごの速度が所定の速度以上になると、主索がロープ把持装置により把持される。ロープ把持装置は、ソレノイドの付勢(通電)により把持動作を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−221285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロープ把持装置が電気的な制御により動作されるので、電機機器等のランニングコストが増加してしまう。また、停電時には、ロープ把持装置を動作させることができなくなってしまう。
【0005】
また、通常、ロープ把持装置はかごを移動させる巻上機の近傍に設置されるが、巻上機の近傍は設置スペースの制約が大きいため、既存のエレベータにロープ把持装置を設置する場合には、ロープ把持装置の設置作業に手間がかかったり、ロープ把持装置を設置することができなかったりすることもある。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、かご出入口が開いた状態でのかごの移動の防止をより確実に図ることができ、容易に設置することができるエレベータの安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータの安全装置は、ガイドレールに案内されながら移動するかごの移動方向に沿ってそれぞれ張られた第1ロープ並列部及び第2ロープ並列部を有し、滑車に巻き掛けられ、滑車の回転に伴って第1及び第2ロープ並列部が互いに逆方向へ移動されるロープ、かごに設けられ、第1及び第2ロープ並列部を選択的に把持可能なロープ把持装置、かごに設けられたかご出入口を開閉するかごの戸と、ロープ把持装置とを互いに連動させる連動手段、及びかごに設けられ、第1ロープ並列部がかごに対して変位されることにより上記ガイドレールを把持するレール把持装置を備え、ロープ把持装置は、かごの戸がかご出入口を閉じる戸閉位置にあるときに第1ロープ並列部を把持し、かごの戸が戸閉位置から外れることにより第1ロープ並列部の把持を解除して第2ロープ並列部を把持する。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータの安全装置では、第1ロープ並列部のかごに対する変位によりかごガイドレールを把持するレール把持装置と、かごの戸と連動するロープ把持装置とがかごに設けられ、かごの戸が戸閉位置にあるときに第1ロープ並列部がロープ把持装置によって把持され、かごの戸が戸閉位置から外れることにより第1ロープ並列部の把持が解除されて第2ロープ並列部が把持されるので、かご出入口が開いた状態で、かごの移動が開始された場合には、第1ロープ並列部をかごに対して上下方向へ変位させることができる。これにより、レール把持装置を動作させることができ、かごの移動を阻止することができる。即ち、かご出入口が開いたままかごが移動することを機械的構造のみによって阻止することができ、かご出入口が開いた状態でのかごの移動の防止をより確実に図ることができる。また、レール把持装置やロープ把持装置を巻上機の近傍に設置する必要がないので、エレベータの安全装置を容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータの安全装置を示す斜視図である。図において、昇降路1には、一対のかごガイドレール2が設置されている。各かごガイドレール2間には、かご3が配置されている。かご3は、巻上機の駆動シーブ(図示せず)に巻き掛けられた主索(図示せず)により昇降路1内に吊り下げられている。かご3は、巻上機の駆動力により、かごガイドレール2に案内されながら上下方向へ移動される。
【0010】
かご3の正面には、かご出入口4と、かご出入口4を開閉する一対のかごの戸5とが設けられている。かご出入口4は、各かごの戸5がかご出入口4の間口方向へ移動されることにより開閉される。
【0011】
また、かご3には、ドア駆動装置6が設けられている。ドア駆動装置6は、各かごの戸5を移動させるための駆動力を発生するモータを有している。ドア駆動装置6の駆動力は、図示しない動力伝達機構を介して各かごの戸5に伝達される。各かごの戸5は、ドア駆動装置6からの駆動力を受けることにより、かご出入口4を閉じる戸閉位置と、かご出入口4を開ける戸開位置との間を移動される。
【0012】
昇降路1の上部には上部滑車7が設けられ、昇降路1の下部には下部滑車8が設けられている。上部滑車7及び下部滑車8間には、把持用ロープ9が巻き掛けられている。把持用ロープ9の一端部及び他端部は、共通の取付金(図2)に接続されている。即ち、把持用ロープ9は、取付金を介して無端状に連結されている。把持用ロープ9には、上部滑車7及び下部滑車8により張力が与えられている。
【0013】
把持用ロープ9の上部滑車7及び下部滑車8間に張られた部分は、水平方向について間隔を置いて並んだ第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9b(一対のロープ並列部)とされている。第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bは、かご3の移動方向に沿って配置されている。即ち、把持用ロープ9は、かご3の移動方向に沿ってそれぞれ張られた第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bを有している。把持用ロープ9が接続された取付金は、第1ロープ並列部9aに設けられている。
【0014】
上部滑車7及び下部滑車8が回転しながら把持用ロープ9が移動されるときには、第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bは、かご3の移動方向に沿って互いに逆方向へ移動される。即ち、第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bは、上部滑車7及び下部滑車8のそれぞれの回転に伴って、かご3の移動方向に沿って互いに逆方向へ移動される。
【0015】
かご3の上部には、第1ロープ並列部9aのかご3に対する変位により一方のかごガイドレール2を把持するレール把持装置10と、第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bを選択的に把持可能なロープ把持装置11と、かごの戸5とロープ把持装置11とを互いに連動させる連動装置(連動手段)12とが設けられている。
【0016】
連動装置12は、ドア駆動装置6の出力軸と一体に回転される駆動側プーリ13と、ロープ把持装置11に連結された把持側プーリ14と、駆動側プーリ13及び把持側プーリ14のそれぞれに対して間隔を置いて配置され、一体に回転される第1中間プーリ15及び第2中間プーリ16と、駆動側プーリ13及び第1中間プーリ15間に巻き掛けられた第1伝達ベルト17と、第2中間プーリ15及び把持側プーリ14間に巻き掛けられた第2伝達ベルト18とを有している。
【0017】
ドア駆動装置6の駆動力は、駆動側プーリ13、第1伝達ベルト17、第1中間プーリ15、第2中間プーリ16、第2伝達ベルト18及び把持側プーリ14の順に伝わり、ロープ把持装置11に達する。ロープ把持装置11は、連動装置12からの駆動力を受けることにより、各かごの戸5の移動に応じた動作を行う。また、ロープ把持装置11は、各かごの戸5が戸閉位置にあるときに第1ロープ並列部9aを把持し、各かごの戸が戸閉位置から外れることにより第1ロープ並列部9aの把持を解除して第2ロープ並列部9bを把持する。
【0018】
図2は、図1のレール把持装置10を示す正面図である。図において、レール把持装置10は、一方のかごガイドレール2に対向している。また、レール把持装置10は、取付金30の上部に設けられた一対の上部楔19と、取付金30の下部に設けられた一対の下部楔20と、各上部楔19の上方に設けられ、取付金30のかご3に対する上方への変位により各上部楔19を受ける上部受け金21と、各下部楔20の下方に設けられ、取付金30のかご3に対する下方への変位により各下部楔20を受ける下部受け金22とを有している。
【0019】
かごガイドレール2は、各上部楔19間及び各下部楔20間のそれぞれに通されている。各上部楔19は、複数の付勢ばね23により、かごガイドレール2から離れる方向(即ち、互いに離れる方向)へ付勢されている。また、各下部楔20は、複数の付勢ばね23により、かごガイドレール2から離れる方向(即ち、互いに離れる方向)へ付勢されている。これにより、通常時には、各上部楔19及び各下部楔20がかごガイドレール2から離れたまま保持される。
【0020】
上部受け金21及び下部受け金22は、かご3に固定された受け枠24と、受け枠24に対して水平方向へ変位可能に保持された一対の受け部材25と、各受け部材25の背面と受け枠24との間に配置され、かごガイドレール2から離れる方向への受け部材25の変位に逆らう弾性反発力を発生する複数の受けばね26とをそれぞれ有している。
【0021】
各受け部材25には、かごガイドレール2に対して傾斜された傾斜部25aが設けられている。各傾斜部25aには、複数のガイドローラ27が設けられている。また、受け枠24には、各受け部材25がかごガイドレール2に接触しないように、ストッパ28が設けられている。
【0022】
各上部楔19は、第1ロープ並列部9aのかご3に対する上方への変位により、上部受け金21の各傾斜部25aとかごガイドレール2との間に挿入される。これにより、各上部楔19は、付勢ばね23の付勢力に逆らって、傾斜部25aに案内されながら、かごガイドレール2に接触する方向(即ち、互いに近づく方向)へ変位される。各上部楔19は、さらに上方へ変位されることにより、上部受け金21の受け部材25とかごガイドレール2との間に噛み込む。これにより、かごガイドレール2が各上部楔19間に把持される。
【0023】
各下部楔20は、第1ロープ並列部9aのかご3に対する下方への変位により、下部受け金22の各傾斜部25aとかごガイドレール2との間に挿入される。これにより、各下部楔20は、付勢ばね23の付勢力に逆らって、傾斜部25aに案内されながら、かごガイドレール2に接触する方向(即ち、互いに近づく方向)へ変位される。各下部楔20は、さらに下方へ変位されることにより、下部受け金22の受け部材25とかごガイドレール2との間に噛み込む。これにより、かごガイドレール2が各下部楔20間に把持される。
【0024】
図3は、図1のロープ把持装置11を示す斜視図である。また、図4は図3のロープ把持装置11が第1ロープ並列部9aを把持している状態を示す上面図、図5は図3のロープ把持装置11が第2ロープ並列部9bを把持している状態を示す上面図である。図において、ロープ把持装置11は、水平方向について互いに対向しかご3にそれぞれ固定された第1固定部31及び第2固定部32と、第1固定部31及び第2固定部32間で変位可能な可動体33と、正逆いずれの方向へも回転可能で、回転により、第1固定部31及び第2固定部32に対して可動体33を変位させる棒状の操作回転軸(変位手段)34とを有している。
【0025】
第1ロープ並列部9aは第1固定部31と可動体33との間に通され、第2ロープ並列部9bは第2固定部32と可動体33との間に通されている。第1固定部31及び第2固定部32間には、第1固定部31と第2固定部32とが互いに対向する方向へ可動体33を案内する複数のガイド部材35が固定されている。
【0026】
可動体33は、第1固定部31に対向する第1可動部36と、第2固定部32に対向する第2可動部37と、第1可動部36及び第2可動部37間に接続された複数の接続ばね(弾性体)38とを有している。可動体33が変位されるときには、第1可動部36及び第2可動部37が各ガイド部材35に案内される。
【0027】
操作回転軸34は、連動装置12の把持側プーリ14に接続され、把持側プーリ14と一体に回転されるようになっている(図1)。また、操作回転軸34は、第2固定部32、第2可動部37及び第1可動部36を貫通し、第1固定部31に軸受を介して回転可能に支持されている。
【0028】
第2固定部32及び第2可動部37のそれぞれには、隙間ができるように操作回転軸34を通す軸通し穴39が設けられている。操作回転軸34の一部には、ねじ部34aが設けられている。第1可動部36には、操作回転軸34のねじ部34aに螺合されるねじ穴40が設けられている。
【0029】
操作回転軸34は、連動装置12からの伝達力を受けることにより、各かごの戸5の移動に応じて回転される。また、操作回転軸34は、各かごの戸5の戸閉位置に近づく方向への移動(戸閉動作)により正方向へ回転され、各かごの戸5の戸開位置に近づく方向への移動(戸開動作)により逆方向(図1の矢印の方向)へ回転される(図1)。
【0030】
第1可動部36は、操作回転軸34の回転に応じて操作回転軸34に沿った方向へ変位される。また、第1可動部36は、各かごの戸5の戸閉動作が行われて操作回転軸34が正方向へ回転されることにより、第1固定部31に近づく方向(即ち、第2固定部32から離れる方向)へ変位される。さらに、第1可動部36は、各かごの戸5の戸開動作が行われて操作回転軸34が逆方向へ回転されることにより、第1固定部31から離れる方向(即ち、第2固定部32に近づく方向)へ変位される。
【0031】
また、第1可動部36は、各かごの戸5が戸閉位置に達することにより、所定の第1ロープ把持位置(図4)に達し、各かごの戸5が戸開位置に達することにより、第1ロープ把持位置よりも第1固定部31から離れた第1ロープ解除位置(図5)に達する。
【0032】
第2可動部37には、複数の規制部材41が固定されている。各規制部材41は、第2可動部37と第2固定部32との間に介在している。各規制部材41が第2固定部32に当接しているときには、第2固定部32に近づく方向への第2可動部37の変位が阻止される。従って、第2固定部32と第2可動部37との間の間隔は、各規制部材41が第2固定部32に当接されることにより所定の間隔に保たれる。
【0033】
第2可動部37は、各規制部材41が第2固定部32から離れているときに第1可動部36に追従して変位される。各規制部材41が第2固定部32に当接しているときには、第1可動部36の変位により各接続ばね38が伸縮される。
【0034】
第1ロープ並列部9aは、第1可動部36が第1固定部31に近づく方向へ変位されて第1ロープ把持位置に達することにより、第1可動部36と第1固定部31との間で把持される(図4)。また、第2ロープ並列部9bは、第1可動部36が第1固定部31から離れる方向(第2固定部32に近づく方向)へ変位されて各規制部材41が第2固定部32に当接することにより、第2可動部37と第2固定部32との間で把持される(図5)。各規制部材41の第2固定部32への当接により、第2ロープ並列部9bの把持力が極端に大きくなることが防止される。
【0035】
即ち、第1ロープ並列部9aは、可動体33が第1固定部31に近づく方向へ変位されることにより、可動体33と第1固定部31との間で把持される。また、第2ロープ並列部9bは、可動体33が第2固定部31に近づく方向へ変位されることにより、可動体33と第2固定部32との間で把持される。
【0036】
第1ロープ並列部9aが把持されるときには、各規制部材41が第2固定部32から離れるので、第2ロープ並列部9bの把持は解除される。また、第2ロープ並列部9bが把持されるときには、第1可動部36の位置が第1ロープ把持位置よりも第1固定部31から離れるので、第1ロープ並列部9aの把持は解除される。
【0037】
なお、エレベータの安全装置は、把持用ロープ9、レール把持装置10、ロープ把持装置11及び連動装置12を有している。
【0038】
次に、ロープ把持装置11の動作について説明する。各かごの戸5が戸閉位置にあるときには、第1可動部36が第1ロープ把持位置に達している。このときには、第1ロープ並列部9aが第1可動部36と第1固定部31との間で把持され、第2ロープ並列部9bの把持が解除されている(図4)。
【0039】
各かごの戸5が戸開動作を開始すると、操作回転軸34が逆方向へ回転される。これにより、可動体33が第2固定部32に近づく方向へ変位される。これにより、第1ロープ並列部9aの把持が解除される。
【0040】
この後、各かごの戸5が戸開位置に達するまでの間に、各規制部材41が第2固定部32に当接する。これにより、第2ロープ並列部9bが第2可動部37と第2固定部32との間で把持される。また、各規制部材41の第2固定部32への当接により、第2可動部37の第2固定部32に近づく方向への変位が阻止される。
【0041】
この後も、各かごの戸5の移動が継続されるので、第1可動部36は、各接続ばね38を縮めながら第2固定部32に近づく方向へさらに変位される。この後、各かごの戸5が戸開位置に達すると、第1可動部36が第1ロープ解除位置に達する(図5)。
【0042】
また、各かごの戸5が戸閉動作を行う場合には、上記の動作と逆の動作が行われる。即ち、各かごの戸5の戸開位置から戸閉位置への移動により、ロープ把持装置11による第2ロープ並列部9bの把持が解除され、第1ロープ並列部9aがロープ把持装置11により把持される。
【0043】
次に、エレベータの安全装置の動作について説明する。各かごの戸5がかご出入口4を閉じているときには、ロープ把持装置11により第1ロープ並列部9aが把持され、第2ロープ並列部9bの把持が解除されている。
【0044】
この状態でかご3が上下方向へ移動されると、第1ロープ並列部9aがかご3とともに移動され、第2ロープ並列部9bが第1ロープ並列部9aの移動方向と逆方向へ移動される。このとき、第1ロープ並列部9aがかご3に対して上下方向へ変位されることはないので、レール把持装置10によってかごガイドレール2が把持されることはなく、かごガイドレール2の把持が解除されたレール把持装置10の状態が維持される。
【0045】
一方、各かごの戸5がかご出入口4を開いているときには、第1ロープ並列部9aの把持が解除され、ロープ把持装置11により第2ロープ並列部9bが把持されている。
【0046】
この状態でかご3の上下方向への移動が開始されると、第2ロープ並列部9bがかご3とともに移動され、第1ロープ並列部9aが第2ロープ並列部9bの移動方向と逆方向へ移動される。従って、第1ロープ並列部9aがかご3に対して上下方向へ変位される。これにより、レール把持装置10が動作され、レール把持装置10によりかごガイドレール2が把持される。これにより、かご3に制動力が与えられ、かご3の移動が阻止される。
【0047】
このようなエレベータの安全装置では、第1ロープ並列部9aのかご3に対する変位によりかごガイドレール2を把持するレール把持装置10と、かごの戸5と連動するロープ把持装置11とがかご3に設けられ、かごの戸5が戸閉位置にあるときに第1ロープ並列部9aがロープ把持装置11によって把持され、かごの戸5が戸閉位置から外れることにより第1ロープ並列部9aの把持が解除されて第2ロープ並列部9bが把持されるので、かご出入口4が開いた状態で、かご3の移動が開始された場合には、第1ロープ並列部9aをかご3に対して上下方向へ変位させることができる。これにより、レール把持装置10を動作させることができ、かご3の移動を阻止することができる。即ち、かご出入口4が開いたままかご3が移動することを機械的構造のみによって阻止することができ、かご出入口4が開いた状態でのかご3の移動の防止をより確実に図ることができる。また、レール把持装置10やロープ把持装置11を巻上機の近傍に設置する必要がないので、エレベータの安全装置を容易に設置することができる。
【0048】
また、ロープ把持装置11は、かご3に固定された第1固定部31及び第2固定部32と、第1固定部31及び第2固定部32間で変位可能な可動体33とを有し、第1ロープ並列部9aは、可動体33と第1固定部31との間で把持され、第2ロープ並列部9bは、可動体33と第2固定部32との間で把持されるので、簡単な構成で、第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bを選択的に把持することができる。
【0049】
また、可動体33は、第1可動部36と、第2可動部37と、第1可動部36及び第2可動部37間に接続された接続ばね38とを有しているので、第1可動部36のみを変位させた場合であっても、第2可動部37を変位させることができる。また、第1可動部36のみの変位により、第1可動部36と第2可動部37との間隔が変化した場合であっても、接続ばね38が伸縮することにより可動体33が破損することを防止することができる。
【0050】
なお、上記の例では、共通の可動体33の変位によって第1ロープ並列部9a及び第2ロープ並列部9bが選択的に把持されるようになっているが、これに限定されず、例えば第1ロープ並列部9aを把持する装置と、第2ロープ並列部9bを把持する装置とを独立してかご3に設けてもよい。
【0051】
また、上記の例では、ドア駆動装置6の出力軸の回転方向と、操作回転軸34の回転方向とが同じになっているが、ドア駆動装置6の出力軸の回転方向が操作回転軸34の回転方向と逆方向であるときには、第1伝達ベルト17又は第2伝達ベルト18に逆回転用のギヤを介在させることにより、各かごの戸5の移動方向と操作回転軸34の回転方向との関係を上記の例と同様にすることができる。
【0052】
実施の形態2.
また、実施の形態1では、かご3に設けられたレール把持装置10により一方のかごガイドレール2のみが把持されるようになっているが、各かごガイドレール2をそれぞれ把持する一対のレール把持装置10をかご3に設けてもよい。
【0053】
即ち、図6は、この発明の実施の形態2によるエレベータの安全装置を示す模式的な要部構成図である。図において、かご3の上部には、一対のレール把持装置10が設けられている。一方のレール把持装置10は一方のかごガイドレール2に対向し、他方のレール把持装置10は他方のかごガイドレール2に対向している。各レール把持装置10の構成は、実施の形態1におけるレール把持装置10の構成と同様である。
【0054】
一方のレール把持装置10の上部楔19及び下部楔20は、把持用ロープ9の一端部及び他端部が接続された一方の取付金30に設けられている。他方のレール把持装置10の上部楔19及び下部楔20は、かご3に上下方向へ変位可能に設けられた他方の取付金51に設けられている。
【0055】
各レール把持装置10間には、一方の取付金30の変位に同期させて他方の取付金51を変位させるリンク装置52が配置されている。リンク装置52は、一方の取付金30に回動自在に接続された第1リンク53と、他方の取付金51に回動自在に接続された第2リンク54とを有している。
【0056】
一方の取付金30には第1リンク53の一端部が接続され、他方の取付金51には第2リンク54の一端部が接続されている。第1リンク53及び第2リンク54のそれぞれの他端部は、互いに回動自在に接続されている。
【0057】
かご3には、互いに平行なリンク用水平軸55,56が設けられている。第1リンク53の中間部はリンク用水平軸55に回動自在に設けられ、第2リンク54の中間部はリンク用水平軸56に回転自在に設けられている。
【0058】
一方の取付金30がかご3に対して上方へ変位されると、第1リンク53及び第2リンク54が図6の矢印の方向へそれぞれ回動され、他方の取付金51が上方へ変位される。一方の取付金30がかご3に対して下方へ変位されると、第1リンク53及び第2リンク54が図6の矢印の方向と逆方向へそれぞれ回動され、他方の取付金51が下方へ変位される。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0059】
このようなエレベータの安全装置では、各かごガイドレール2をそれぞれ把持する一対のレール把持装置10がかご3に設けられ、各レール把持装置10がリンク装置52を介して同期して動作されるので、かご3への制動力を複数のレール把持装置10により発生させることができ、かご出入口4が開いた状態でのかご3の移動の防止をさらに確実に図ることができる。
【0060】
なお、上記の例では、一方のレール把持装置10と他方のレール把持装置10とがリンク装置52を介して同期して動作されるようになっているが、他方のかごガイドレール2側にも、把持用ロープ9、レール把持装置10、ロープ把持装置11及び連動装置12を一方のかごガイドレール2側と同様に設けてもよい。この場合、各ロープ把持装置11には、共通のドア駆動装置6の駆動力が各連動装置12により個別に伝えられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータの安全装置を示す斜視図である。
【図2】図1のレール把持装置を示す正面図である。
【図3】図1のロープ把持装置を示す斜視図である。
【図4】図3のロープ把持装置が第1ロープ並列部を把持している状態を示す上面図である。
【図5】図3のロープ把持装置が第2ロープ並列部を把持している状態を示す上面図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるエレベータの安全装置を示す模式的な要部構成図である。
【符号の説明】
【0062】
2 かごガイドレール、3 かご、4 かご出入口、5 かごの戸、7 上部滑車、8 下部滑車、9 ロープ、9a 第1ロープ並列部、9b 第2ロープ並列部、10 レール把持装置、11 ロープ把持装置、12 連動装置(連動手段)、31 第1固定部、32 第2固定部、33 可動体、34 操作回転軸(変位手段)、36 第1可動部、37 第2可動部、38 接続ばね(弾性体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールに案内されながら移動するかごの移動方向に沿ってそれぞれ張られた第1ロープ並列部及び第2ロープ並列部を有し、滑車に巻き掛けられ、上記滑車の回転に伴って上記第1及び第2ロープ並列部が互いに逆方向へ移動されるロープ、
上記かごに設けられ、上記第1及び第2ロープ並列部を選択的に把持可能なロープ把持装置、
上記かごに設けられたかご出入口を開閉するかごの戸と、上記ロープ把持装置とを互いに連動させる連動手段、及び
上記かごに設けられ、上記第1ロープ並列部が上記かごに対して変位されることにより上記ガイドレールを把持するレール把持装置
を備え、
上記ロープ把持装置は、上記かごの戸が上記かご出入口を閉じる戸閉位置にあるときに上記第1ロープ並列部を把持し、上記かごの戸が上記戸閉位置から外れることにより上記第1ロープ並列部の把持を解除して上記第2ロープ並列部を把持することを特徴とするエレベータの安全装置。
【請求項2】
上記ロープ把持装置は、水平方向について互いに対向し上記かごにそれぞれ固定された第1固定部及び第2固定部と、上記第1及び第2固定部間で変位可能な可動体と、上記連動手段からの伝達力を受けて上記可動体を変位させる変位手段とを有しており、
上記可動体が上記第1固定部に近づく方向へ変位されることにより、上記第1固定部と上記可動体との間で上記第1ロープ並列部が把持され、
上記可動体が上記第2固定部に近づく方向へ変位されることにより、上記第2固定部と上記可動体との間で上記第2ロープ並列部が把持されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの安全装置。
【請求項3】
上記可動体は、上記第1固定部に対向する第1可動部と、上記第2固定部に対向する第2可動部と、上記第1及び第2可動部間に接続された弾性体とを有し、
上記弾性体は、上記第1可動部と上記第2可動部との間隔が変化することにより伸縮されることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−166933(P2009−166933A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5525(P2008−5525)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】