説明

エレベータの終端階検出装置

【課題】乗りかごが終端階に接近したことを確実に検出できるようにしつつその構造を簡単なものとしたエレベータの終端階検出装置を提供する。
【解決手段】昇降路の頂部および底部にそれぞれ固定されるとともに、その表面にそれぞれ異なる色彩の色彩部分11a,12aを有する少なくとも2つの被検出部材11,12と、色彩部分11a,12aの色彩を認識する、乗りかご2に設けられた色彩認識センサと20と、色彩認識センサ20が認識した色彩と被検出部材11,12の昇降路内における上下方向位置を判別する判別手段21とを備える。乗りかご2に設けるセンサは一つでよいから、従来の装置に比較してその構造が簡単であり、取付けや調整を容易に行うことができるばかりでなく、取り付けに必要なスペースもわずかで済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗りかごが昇降路の終端階、すなわち最上階若しくは最下階に接近したことを検出する装置に関し、より詳しくは、乗りかごが終端階に接近したことを確実に検出できるようにしつつその構造を簡単なものに改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータには乗りかごが昇降路の終端階、すなわち最上階若しくは最下階を越えてさらに昇降しないように制御するべく、乗りかごが終端階に接近したことを検出するための装置が設けられている(例えば下記特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、図4および図5を参照し、乗りかごが終端階に接近したことを検出する従来の装置の構造について概説する。
【0004】
図4に示した装置は、左右一対のかご側ガイドレール1L,1Rに案内されて昇降する乗りかご2の側面に上下方向に延びるカム3を設けるとともに、昇降路の頂部および底部にそれぞれリミットスイッチ4,5を設けたものである。
これにより、乗りかご2が最上階に接近すると上側カム部3aが頂部リミットスイッチ4を作動させるとともに、乗りかごが最下階に接近すると下側カム部3bが底部リミットスイッチ5を作動させるから、乗りかご2の最上階および最下階への接近を検出することができる。
【0005】
また、図5に示した装置は、乗りかご2の上部に前後一対の被検出部材6,7をそれぞれ固定するとともに、昇降路の頂部および底部においてかご側ガイドレール1Lに腕木8a,9aをそれぞれ取り付け、かつこれらの腕木8a,9aにセンサ8,9をそれぞれ固定したものとなっている。
これにより、乗りかご2が上昇して最上階に接近すると、一方のセンサ8が一方の被検出部材6を検出するとともに、乗りかご2が降下して最下階に接近すると、他方のセンサ9が他方の被検出部材7を検出するから、乗りかご2の最上階および最下階への接近を検出することができる。
なお、センサ8,9は、例えば反射型光電センサ、遮断型光電センサ、あるいは磁気近接センサを用いることができる。
【0006】
そして、乗りかご2の昇降を制御する制御装置は、昇降路に設けたリミットスイッチ4,5あるいはセンサ8,9の作動によって 乗りかご2の終端階への接近が検出されると、乗りかご2が終端階を越えてさらに昇降することがないように巻上機あるいはブレーキの作動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−230758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図5に示した従来の終端階検出装置は、昇降路に設けたセンサ8,9を用いるものであが、これらのセンサ8,9はいずれもオン/オフ動作するものである。
これにより、乗りかご2が終端階に接近したことを検出するためには、昇降路の頂部および底部に少なくとも2つのセンサ8,9を設けるとともに、乗りかご2に少なくとも2つの被検出部材6,7を設ける必要がある。
このとき、一方の被検出部材6が一方のセンサ8に対向し、他方の被検出部材7が他方のセンサ9と対向するように、被検出部材6,7およびセンサ8,9は、前後方向に位置をずらして配置しなければならない。
【0009】
また、乗りかご2が終端階に接近したことの検出に加えて、乗りかご2の昇降速度を強制的に減速させる減速開始位置を検出するためには、2つのセンサおよび2つの被検出部材を追加しなければならず、その全体的な構造が複雑なものとなる。
特に、乗りかご2の上部には4つの被検出部材を前後方向に位置をずらして配置しなければならず、スペースの確保が困難となる。
【0010】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、乗りかごが終端階に接近したことを確実に検出できるようにしつつその構造を簡単なものに改良したエレベータの終端階検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
エレベータの乗りかごが昇降路の終端階に接近したことを検出する装置であって、
前記終端階の近傍において前記昇降路に固定された、その表面に色彩部分を有する被検出部材と、
前記色彩部分の色彩を認識する、前記乗りかごに設けられた色彩認識センサと、
前記色彩認識センサが認識した色彩とその色彩の色彩部分を有する前記被検出部材の昇降路内における上下方向位置とを対比することにより前記乗りかごの上下方向位置を判別する判別手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1に記載したエレベータの終端階検出装置は、終端階の近傍に固定した被検出部材に色彩部分を設けるとともに、乗りかごに固定した色彩認識センサが色彩部分の色彩を認識したときに、色彩認識センサが認識した色彩に基づいて昇降路内における乗りかごの上下方向位置を判別することにより、乗りかごが終端階に接近したことを検出するものである。
これにより、乗りかごに設けるセンサは一つでよいから、従来技術の装置のように多くのセンサやスイッチを用いる場合に比較してその全体的な構造が簡単であり、取付けや調整を容易に行うことができるばかりでなく、取り付けに必要なスペースもわずかで済む。
また、昇降路にそれぞれ固定する被検出体は、前後方向や左右方向に位置をずらすことなく、上下方向に一直線に並ぶように配置することができるから、それらの昇降路への取付や調整を容易に行うことができる。
【0013】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載したエレベータの終端階検出装置において、前記判別手段が、前記色彩部分の色彩を予め記憶しており、前記色彩認識センサが認識した色彩と予め記憶している色彩とが相違する場合には異常有りとの情報を送出するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、各色彩部分に汚れや異物が付着すると色彩認識センサによる色彩の認識が不安定となるおそれがある。
このとき、請求項2に記載したエレベータの終端階検出装置においては、判別手段が各色彩部分の色彩を予め記憶しており、記憶している色彩とは異なる色彩を色彩認識センサ認識したときには、異常有りとの情報を送出する。
これにより、直ちに乗りかごの運行を停止して保守点検作業を行うことができるから、エレベータの運行をより一層安定させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エレベータの乗りかごが昇降路の終端階に接近したことを確実に検出できるようにしつつその構造を簡単なものに改良したエレベータの終端階検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の着床検出装置を示す斜視図。
【図2】図1に示した着床検出装置の構造を示すブロック図。
【図3】図1に示した着床検出装置の作動を説明する模式図。
【図4】従来の終端階検出装置の一例を示す斜視図。
【図5】従来の終端階検出装置の他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図3を参照し、本発明のエレベータの着床検出装置の一実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1に示した本実施形態のエレベータの終端階検出装置100は、エレベータの乗りかご2が昇降路の終端階に接近したことを検出するための装置であって、昇降路の最上階および最下階の近傍において一方のかご側ガイドレール1Lにそれぞれ固定された被検出部材11,12と、乗りかご2の上部に固定された色彩認識センサ20とを備えている。
【0019】
被検出部材11,12は、それぞれ色彩が異なる色彩部分11a,12aを有しており、これらの色彩部分11a,12aは昇降路内において上下方向に一直線に並ぶように配置されている。
なお、色彩部分11a,12aの色彩は、例えば一方を赤色、他方を緑色とすることができる。
【0020】
色彩認識センサ20は、被検出部材11,12の各色彩部分11a,12aに向けてLEDから投光するとともに、各色彩部分11a,12aで反射した反射光をフォトダイオードで受光し、これをフィルタ処理することによって各色彩部分11a,12aの色彩を認識する。
そして、図2に示したように、色彩認識センサ20が認識した各色彩部分11a,12aの色彩情報は、上下方向位置判別手段21に送信される。
【0021】
上下方向位置判別手段21は、各色彩部分11a,12aの色彩と、各色彩部分11a,12aの昇降路内における上下方向の位置情報とを対比させたマップを内蔵しており、色彩認識センサ20から色彩情報を受信すると、その色彩を有する色彩部分の昇降路内における上下方向位置情報をエレベータの運行制御装置22に送信する。
すると、運行制御装置22は、各色彩部分11a,12aの昇降路内における上下方向位置情報に基づいて乗りかご2が最上階若しくは最下階に接近したと判断し、乗りかご2が最上階若しくは最下階を越えてさらに昇降しないようにする終端減速制御を実行する。
【0022】
次に、図3を参照し、本実施形態のエレベータの着床検出装置100の作動について説明する。
【0023】
図3(A)に示したように、乗りかご2が上昇して最上階に接近すると、乗りかご2に設けられた色彩認識センサ20が、最上階の近傍に配置されている被検出部材11の色彩部分11aの色彩を認識し、その色彩情報を上下方向位置判別手段21に送信する。
上下方向位置判別手段21は、受信した色彩情報と内蔵しているマップとを対比することにより、色彩部分11aが昇降路の天井15から下方に距離L1の位置にあることを判別し、この上下方向位置情報を運行制御装置22に送信する。
【0024】
同様に、図3(B)に示したように、乗りかご2が降下して最下階に接近すると、乗りかご2に設けられた色彩認識センサ20が、最下階の近傍に配置されている被検出部材12の色彩部分12aの色彩を認識し、その色彩情報を上下方向位置判別手段21に送信する。
上下方向位置判別手段21は、受信した色彩情報と内蔵しているマップとを対比することにより、この色彩部分12aが昇降路の底部16から上方に距離L2の位置にあることを判別し、この上下方向位置情報を運行制御装置14に送信する。
【0025】
運行制御装置22は、上下方向位置判別手段21から受信した乗りかご2の上下方向位置情報に基づいて、乗りかご2が最上階若しくは最下階に接近したと判断し、昇降路内における乗りかご2の昇降速度を制御して乗りかご2が最上階若しくは最下階を越えてさらに昇降しないようにする終端減速制御を実行する。
【0026】
すなわち、本実施形態のエレベータの終端階検出装置100は、最上階および最下階の近傍にそれぞれ固定した被検出部材11,12に色彩部分11a,12aをそれぞれ設けるとともに、乗りかご2の上部に固定した色彩認識センサ20が色彩部分11a,12aの色彩を認識したときに、色彩認識センサ20が認識した色彩に基づいて昇降路内における乗りかご2の上下方向位置を判別することにより、乗りかご2が最上階あるいは最下階に接近したことを検出するものである。
これにより、乗りかご2に設けるセンサは一つでよいから、従来技術の装置のように多くのセンサやスイッチを用いる場合に比較してその全体的な構造が簡単であり、取付けや調整を容易に行うことができるばかりでなく、取り付けに必要なスペースも最小限に抑えることができる。
また、昇降路にそれぞれ固定する被検出部材11,12は、各色彩部分11a,12aが上下方向に一直線に並ぶように配置することができるから、それらの昇降路への取付を調整を容易に行うことができる。
【0027】
変形例
上述した実施形態の終端階検出装置100は、色彩認識センサ20が各色彩部分11a,12aの色彩を認識することによって作動する構造である。
このとき、各色彩部分11a,12aに汚れや異物が付着すると、色彩認識センサ20による色彩の認識が不安定となるおそれがある。
そこで、上下方向位置判別手段21は、各色彩部分11a,12aの色彩を予め記憶しており、記憶している色彩とは異なる色彩を色彩認識センサ20が認識したときには、異常有りとの情報を運行制御装置22に報告する。
これにより、直ちに乗りかご2の運行を停止して保守点検作業を行うことができるから、エレベータの運行をより一層安定させることができる。
【0028】
以上、本発明に係るエレベータの着床検出装置の一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては昇降路の最上階および最下階の近傍に被検出部材11,12を設けて、乗りかご2が最上階および最下階に接近したことを検出する構造であった。
これに対して、昇降路の頂部および底部に追加の被検出部材を設けるとともに、これらの被検出部材が有している色彩部分の色彩を色彩認識センサ20が認識すると、運行制御装置22が乗りかご2の昇降速度を強制的に減速させる機能を追加することもできる。
また、予め記憶している色彩と異なる色彩を色彩認識センサ20が認識したときに異常有りと報告する機能は、色彩認識センサ20が実行するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 かご側ガイドレール
2 乗りかご
3 カム
4,5 リミットスイッチ
6,7 被検出部材
8,9 センサ
11,12 被検出部材
11a,12a 色彩部分
20 色彩認識センサ
21 上下方向位置判別手段
22 運行制御装置
100 一実施形態の終端階検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗りかごが昇降路の終端階に接近したことを検出する装置であって、
前記終端階の近傍において前記昇降路に固定された、その表面に色彩部分を有する被検出部材と、
前記色彩部分の色彩を認識する、前記乗りかごに設けられた色彩認識センサと、
前記色彩認識センサが認識した色彩とその色彩の色彩部分を有する前記被検出部材の昇降路内における上下方向位置とを対比することにより前記乗りかごの上下方向位置を判別する判別手段と、
を備えることを特徴とするエレベータの終端階検出装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記色彩部分の色彩を予め記憶しており、前記色彩認識センサが認識した色彩と予め記憶している色彩とが相違する場合には異常有りとの情報を送出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載したエレベータの終端階検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−37579(P2011−37579A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186427(P2009−186427)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】