説明

エレベーター装置及びロープ検査装置

【課題】本発明は、樹脂被覆ロープを構成する各シェンケルに夫々独立した電流を流すことでシェンケル間接触の有無を診断するロープ検査装置及びそれを備えたエレベーター装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、昇降体3,4とロープ1と、巻上機とを備え、ロープ1は、樹脂で構成され中心部に配置される芯と、導体のストランドが撚り合わされて構成された複数のシェンケルと、芯及び複数のシェンケルの外周を覆う外層樹脂とを備え、前記ロープの端部にコネクタ7を設置し、導線9を介してそれぞれのシェンケルに独立した電流を流してその電流の状態を検知してシェンケル同士の接触を検出するロープ検査装置が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロープ検査装置を備えたエレベーター装置及びそのロープ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロープ式エレベーターは、巻上機に取付けたシーブにワイヤロープをかけて、シーブを中心に片側にかごを吊るし、その反対側にかごとバランスするためのカウンタウェイトを吊るして、つるべ式に昇降させる構造となっている。一般にワイヤロープは、鋼製の素線を撚り合わせて形成される素線束(以下、ストランドと称する)をさらに撚り合わせて形作られる。このワイヤロープの損傷はロープがシーブ上やプーリ上で屈曲を繰返すことで起こる。この屈曲による損傷の種類とロープ破断に至る過程を以下に説明する。ロープが屈曲を繰返すことで起こる素線の曲げ疲労破壊,ストランド相互の滑りによる素線の摩耗、およびシーブとの接触による素線の摩耗がある。これらの損傷により構成要素の素線が最初に破断し、素線破断数が増加するとストランドが破断する。さらに素線破断数が増えると最終的にはロープが破断することになる。このように素線の破断箇所は屈曲回数が増すにつれ増大するため、定期的な検査により素線の破断箇所を目視や検査装置で確認し、ワイヤロープが安全に使用できるか否かを診断している。
【0003】
ところで近年、シーブの小径化やロープの長寿命化を図るためにワイヤロープを樹脂で被覆したロープ(以下、樹脂被覆ロープと称する)が提案されている。このロープは構成要素の素線径を縮小化することで柔軟性を得ている。樹脂被覆ロープは、素線を撚り合わせたストランドをさらに撚り合わせて素線束群(以下、シェンケルと称する)を形成し、さらにそのシェンケルを撚り合わせて形作られている。また各シェンケル同士の間には樹脂が充填されており、シェンケル相互の接触を防止している。さらに外層を樹脂で覆うことで素線とシーブとの接触を防ぎ長寿命化を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
該樹脂被覆ロープを用いたエレベーターの検査装置として、素線切れを起こす原因の一つであるシェンケル間接触を検出するものが提案されている。これは隣接しないシェンケル同士をそれぞれ電気的に接続し、電気的導通の有無により隣接するシェンケル間の接触を検出する。シェンケル間接触が発生した場合には、監視センターに設けられている警報器が作動し検査員に報告される(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また樹脂製のジャケットで鋼線コードが被覆された平型のエレベーターロープに電流を流し、ロープの抵抗値の応答からストランド損傷を検査するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
上記の平型のエレベーターロープにおいては、電気信号を印加するコントローラと鋼線コードとの間に電気的な接続を確立するコネクタが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−28671号公報
【特許文献2】特願2007−322701号公報
【特許文献3】特表2002−540419号公報
【特許文献4】特表2007−529391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したようにエレベーターに用いられる樹脂被覆ロープにあっては、該ロープを構成するシェンケル間の電気導通の有無によりロープ内部のシェンケル間接触を検出するロープ検査装置が提案されているが、その際にシェンケルに電流を流すために、樹脂被覆ロープとロープ検査装置を電気的に接続する必要がある。
【0009】
特許文献3と特許文献4に示す平型のエレベーターロープでは、平行に並ぶコードに電気信号を印加してコードの損傷を検出する構造となっている。しかし樹脂被覆ロープのような丸型ロープでは、各シェンケルはロープの周方向に螺旋状に回転していることから、ロープ周方向から電極をさしてシェンケルに電流を流すことは困難である。また特許文献1と特許文献3に示すような樹脂により鋼線が被覆されたロープでは、ロープの据付け作業時のロープ切断により、切断装置によるロープ周方向から中心方向に向かうせん断力によるロープの変形等に起因して、ロープ切断面で隣接するシェンケル間、あるいは鋼線コード間に接触が生じる恐れがある。ロープ切断面でシェンケル間接触が生じると、樹脂被覆ロープ内部のシェンケル間接触を検出することが不可能となる。
【0010】
本発明の目的は、樹脂被覆ロープを構成する各シェンケルに夫々独立した電流を流すことでシェンケル間接触の有無を診断するロープ検査装置及びそれを備えたエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のエレベーター装置は、昇降体と前記昇降体を吊持するロープと、前記ロープを駆動する巻上機とを備えたエレベーター装置において、前記ロープは、樹脂で構成され中心部に配置される芯と、導体のストランドが撚り合わされて構成された複数のシェンケルと、前記芯及び前記複数のシェンケルの外周を覆う外層樹脂とを備え、前記複数のシェンケルは互いが接触しないように前記芯の周囲に放射状に配置されて撚り合わされた状態で外層樹脂により被覆されており、前記ロープの端部にソケットを設置し、前記ソケットのロープ切断面側に設けられた挿入穴より前記ロープ切断面の前記芯にくさび部材を取付けて前記ロープ切断面での前記複数のシェンケル同士の絶縁を確保し、前記複数のシェンケルのそれぞれに対して前記ソケットの前記ロープ周面側に設けられた接触部材挿入穴に接触部材を挿入して前記外層樹脂を貫通してそれぞれの前記シェンケルと前記接触部材とを接触させ、前記接触部材と導線を接続し、前記導線を介してそれぞれの前記シェンケルに独立した電流を流してその電流の状態を検知して前記シェンケル同士の接触を検出するロープ検査装置が設けられたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のロープ検査装置は、昇降体と前記昇降体を吊持するロープと、前記ロープを駆動する巻上機とを備え、前記ロープは、樹脂で構成され中心部に配置される芯と、導体のストランドが撚り合わされて構成された複数のシェンケルと、前記芯及び前記複数のシェンケルの外周を覆う外層樹脂とを備え、前記複数のシェンケルは互いが接触しないように前記芯の周囲に放射状に配置されて撚り合わされた状態で外層樹脂により被覆されているエレベーター装置に用いられるロープ検査装置において、前記ロープの端部に設置するソケットと、前記ソケットのロープ切断面側に設けられた挿入穴より前記ロープ切断面の前記芯に取付けて前記ロープ切断面での前記複数のシェンケル同士の絶縁を確保するくさび部材と、前記複数のシェンケルのそれぞれに対して前記ソケットの前記ロープ周面側に設けられた接触部材挿入穴に挿入して前記外層樹脂を貫通してそれぞれの前記シェンケルと接触させる接触部材と、前記接触部材と接続される導線と、を有し、前記導線を介してそれぞれの前記シェンケルに独立した電流を流してその電流の状態を検知して前記シェンケル同士の接触を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるロープ検査装置及びそれを用いたエレベーター装置は、各シェンケルに夫々独立した電流が流せるため、ロープ検査装置によりロープ内部の隣接するシェンケル間接触を検出することができる。これによりロープ交換までの猶予を把握しロープ保全の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のロープ検査装置付きエレベーターの構成図。
【図2】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のロープ断面図。
【図3】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のシェンケル間接触を説明するロープ切断面図。
【図4】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のシェンケル間接触を説明するロープ内部断面図。
【図5】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタの構成図。
【図6】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ断面図。
【図7】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の平面図。
【図8】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の断面図。
【図9】本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の接続確認を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るロープの検査装置付きエレベーター装置の実施形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のロープ検査装置付きエレベーター装置の構成図である。巻上機に取付けたシーブ2に樹脂被覆ロープ1をかけ、シーブを中心に片側にかご3を吊るし、その反対側にかごとバランスをとるためのカウンタウェイト4を吊り下げ、さらに樹脂被覆ロープ1がロープ支持ソケット5とシンブルロッド6を介して建屋に支持された構造において、ロープ検査装置本体8がコネクタ7を介して樹脂被覆ロープ端部101に備え付けられている。このように本実施形態におけるエレベーター装置では昇降体であるかご3とカウンタウェイト4を樹脂被覆ロープ1で吊持している。そして樹脂被覆ロープは巻上機に取付けられたシーブ2が回転することで駆動され昇降体を昇降路内で昇降させるように構成されている。
【0017】
ロープ検査装置本体8とコネクタ7は導線9により連結されており、ロープ検査装置本体8とカスタマーセンター10は通信網により接続されている。これにより、樹脂被覆ロープ1はカスタマーセンター10により監視される。シェンケル間接触が検知された場合、ロープ検査員に報告され、漏洩磁束を用いた装置により精密なロープ検査を行い、該樹脂被覆ロープ1の安全性を確保する。
【0018】
図2は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のロープ断面図である。樹脂被覆ロープ1は、金属の素線102を撚り合わせたストランド103をさらに撚り合わせてシェンケル104を形成し、さらにそのシェンケルを例えば、ポリウレタンからなる内層樹脂105の周りに撚り合わせて形作られる。またシェンケル104の外周は、例えば、ポリウレタンからなる外層樹脂106により被覆されており、シェンケルとシーブとの接触を防いでいる。よって各シェンケルは個々に樹脂に覆われて保護されており、通常互いには接触していない。
【0019】
このように本実施形態における樹脂被覆ロープ1は、樹脂で構成され中心部に配置される芯としての内層樹脂105と、導体である金属のストランド103が撚り合わされて構成された複数のシェンケル104と、芯である内層樹脂105及び複数のシェンケル104の外周を覆う外層樹脂106とを備え、複数のシェンケル104は互いが接触しないように芯である内層樹脂105の周囲に放射状に配置されて撚り合わされた状態で外層樹脂106により被覆されている。
【0020】
この樹脂被覆ロープ1の損傷は該樹脂被覆ロープがシーブ上やプーリ上で屈曲を繰返すことで起こる。この屈曲による損傷の種類とロープ破断に至る過程を以下に説明する。ロープが屈曲を繰返すことで起こる素線102の曲げ疲労破壊,ストランド103相互の滑りによる素線102の摩耗,シーブとの摩擦による外層樹脂106の摩耗、およびシェンケル104相互の滑りの発生による素線102の摩耗がある。これらの損傷により、最初に構成要素の素線が破断する。素線破断数が増加するとストランドが破断し、次にシェンケル破断、最終的にはロープ破断に至る。
【0021】
ここで、シェンケル相互の滑り発生と、その後のシェンケル破断に至るメカニズムを以下に説明する。ロープが屈曲すると、シェンケル間に充填された内層樹脂105と該シェンケル間に相対すべりが生じ内層樹脂105が摩耗する。屈曲回数が増加するに連れ、この内層樹脂105の摩耗量が増加する。これにより該内層樹脂105においては断面積の減少や断面形状が崩れ、隣接するシェンケル104同士が接触する。該シェンケル104同士が接触している状態で、樹脂被覆ロープ1が屈曲するとシェンケル同士の間で接触を伴った相対すべりが生じる。その結果シェンケルを構成している素線102が摩耗する。
【0022】
この損傷モードの原因である内層樹脂105の摩耗は金属と樹脂間の摩耗であるため避けることはできない。さらに、樹脂被覆ロープ1を構成している各シェンケルには油が塗布されていないため、シェンケル間の相互滑り、つまり金属同士の直接接触を伴った摩擦が生じる。この接触による素線102間の面圧はシェンケル内での素線102間の接触よりも高面圧になるため素線102の摩耗速度が速く、ロープ破断に至るまでの速度が他の損傷モードに比べて速い。よってこのシェンケル間接触を伴ったロープ破断を未然に防止する保全方法の構築が必要である。そこで、先ずロープ内部損傷の前兆であるシェンケル間接触を検知し、シェンケル間接触発生後は、定期検査によりストランド破断を検出する保全方法が樹脂被覆ロープの安全性を保証する有効な手段となる。
【0023】
図3は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のシェンケル間接触を説明するロープ切断面図である。エレベーター装置の据付け作業時において、油圧式のロープカッターなどで樹脂被覆ロープ1を切断する場合、ロープ切断面には圧縮力とせん断力が作用する。せん断力によりロープは切断されるが、圧縮力により内層樹脂105および外層樹脂106が変形しロープ切断面107において隣接するシェンケル104の間で接触が起こる可能性がある。このようなロープ切断面での接触はロープ寿命と関係なく発生する可能性があり、切断面でのシェンケル104間での接触を防止する手段が必要となる。
【0024】
図4は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のシェンケル間接触を説明するロープ内部断面図である。ここでは切断面での接触に対し、ロープ寿命に重大な影響を与える樹脂被覆ロープ内部でのシェンケル104間での接触について説明する。エレベーター装置稼働後、シーブ通過回数が増加することで樹脂被覆ロープ内部断面108の内層樹脂105の摩耗が進行する。これにより該内層樹脂105においては断面積の減少や断面形状が崩れ、樹脂被覆ロープ内部断面108の隣接するシェンケル104の間で接触が起こる。
【0025】
図5は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタの構成図である。本実施形態でのロープ検査装置はロープ切断面でのシェンケル104間での絶縁を良好に図りながら、樹脂被覆ロープ内部でのシェンケル104間での接触を検出するための構造を有している。コネクタ7はソケット701,ネジ状のくさび部材706、および接触部材としての接触ネジ707から構成されている。ソケット701は樹脂被覆ロープ1のロープ端部101を覆う形状となっている。即ちロープ切断面107及びその切断面から所定の長さ分の樹脂被覆ロープ1の周面部分を覆う形状である。またソケット701のロープ切断面側には、くさび部材706が挿入されるくさび挿入穴702及びロープ切断面107のシェンケル104の位置を確認する位置決め穴703が、ソケット701のロープ周面側には接触ネジ707がねじ込まれる接触部材挿入穴であるネジ穴704が設けられている。
【0026】
図6は本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ断面図であり図5のA−A断面を表している。同図に示すようにソケット701には上記構成に加え、雌ネジ711,導線9が挿入される導線挿入穴709および図5に示すネジ穴704の位置を定める基準線705が加工されている。くさび挿入穴702は内層樹脂105と同軸になる位置に加工される。各位置決め穴703は各シェンケル104と同軸になる位置に加工される。基準線705はくさび挿入穴702の中心と位置決め穴703の中心を結ぶ線上の位置に加工される。また、ネジ穴704はシェンケルピッチ長がLのロープの場合、垂直方向にはロープ切断面107からh=nL離れ、周方向には基準線705からθ=360°×n(nは有理数)だけ、シェンケル撚り方向に回転した位置に加工される。
【0027】
ソケット701には図6に示すように樹脂被覆ロープ端部101がロープ挿入口710から挿入され、段差708にロープ切断面107が接触するまで差し込まれる。このときソケット701はロープ切断面107の各シェンケル104と位置決め穴703が同軸となるように配置する。くさび部材706はくさび挿入穴702から、接触ネジ707はネジ穴704から、導線9は導線挿入穴709から挿入される。また、導線9の先端には端子901が接続されており接触ネジ707が該端子901を通ることにより導線9はコネクタ7に固定され、同時に接触ネジ707と接触してそれぞれのシェンケル104と導通可能となる。
【0028】
図7は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の平面図である。このコネクタ7と樹脂被覆ロープ端部101の接続は、まずソケット701を、各位置決め穴703とロープ切断面107の各シェンケル104が同軸に来るように配置する。これによりロープ切断面107の各シェンケルとネジ穴704の位置でのロープ断面の各シェンケルは夫々同軸に配置されることになる。次にくさび部材706をくさび挿入穴702からロープ切断面107の内層樹脂105にねじ込み、最後に各接触ネジ707を各ネジ穴704から各シェンケルに接触する位置までねじ込むことで行われる。
【0029】
図8は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の断面図であり、図7のA−A断面を表している。ソケット701の段差708にロープ切断面107が接触する。くさび部材706をくさび挿入穴702よりロープ切断面107の内層樹脂105にねじ込む。すると芯である内層樹脂105はくさび部材706が内層樹脂105の中心から外周方向に向かい押し広げる方向に内層樹脂105を拡大させることで、各シェンケル104同士の引き離し、各シェンケル104のロープ端部であるロープ切断面107での絶縁を確保しやすくする。さらにくさび部材706を内層樹脂105にねじ込むことで、内層樹脂105はロープ切断面107から空間712に突出される。これにより、内層樹脂105がロープ切断面107から突出し、シェンケル間の隙間を内層樹脂105の形状で確保でき、シェンケル間のロープ切断面での絶縁が確保される。またシェンケルピッチ長がLのロープの場合、垂直方向にはロープ切断面107からh=nL離れ、周方向には基準線705からθ=360°×n(nは有理数)だけ、シェンケル撚り方向に回転した位置に接触ネジ707が配置される。該接触ネジ707は端子901を介して外層樹脂106にねじ込まれ、シェンケル104と接触する。これにより該シェンケルと導線9が電気的に連結される。
【0030】
このように、樹脂被覆ロープ1の一端側には上記の通り、コネクタ7を設け、導線9を接続して検査装置本体8と接続する。また、樹脂被覆ロープ1の他端側には図1に示すように、ソケット701とくさび部材706を設ける。即ち、他端側の樹脂被覆ロープ端部は、一端側と同様にソケット701を各位置決め穴703とロープ切断面107の各シェンケル104が同軸に来るように配置し、次にくさび部材706をくさび挿入穴702からロープ切断面107の内層樹脂105にねじ込むのである。このようにすることで、樹脂被覆ロープ1の両端のロープ切断面において、各シェンケル104同士の絶縁が確保されるので、各シェンケル104同士が接触してしまった場合に、その接触を正確に検出できるようになる。
【0031】
図9は、本発明に係るエレベーター装置の一実施形態のコネクタ接続後の接続確認を説明する図である。ロープ検査装置本体8から入力された電流は導線9を通り接触ネジ707を介して各シェンケルに流れる。しかしロープの製造誤差によるシェンケルピッチ寸法の誤差や内層樹脂の位置が中心からずれていた場合、接触ネジ707が各シェンケルに接続していない可能性がある。よって電流が各シェンケルに夫々独立して流れるか否かを確認するため、テスター11の一方の端子を位置決め穴703よりシェンケル104に接続し、もう片方の端子を接触ネジ707に接続することで、一対一に対応した電流が各シェンケルに流れているかを確認する。それぞれのシェンケル104ごとにこのような検査を行い、設置直後にそれぞれのシェンケル104同士で絶縁が確保されていること、及び、それぞれのシェンケル104とロープ検査装置本体8が導線9を介して確実に接続されていることを確認する。
【0032】
このような確認が終了した後、ロープ検査装置により素線切れを起こす原因の一つであるシェンケル104間接触を検出して、ロープ破断に至るステップの初期の兆候として監視し、重大な事象が発生する前に対処することを可能とするのである。
【0033】
このように本実施例におけるロープ検査装置は樹脂被覆ロープ1の端部に設置するソケット701と、くさび部材706と、接触部材としての接触ネジ707と、導線9とを有していて、ロープ検査装置本体8から導線9を介してそれぞれのシェンケル104に独立した電流を流してその電流の状態を検知して前記シェンケル同士の接触を検出する。即ちロープ切断面におけるシェンケル間接触を防止し、各シェンケルに夫々独立した電流を流す機構を備えたコネクタ7によりロープとロープ検査装置本体8とが接続され、電気的導通の有無によりロープ内部のシェンケル間接触を監視する。
【0034】
なお、監視の方法としては、一定期間ごとにカスタマーセンターからロープ検査装置を動作させてシェンケル間接触を監視してもよいし、ロープ検査装置を常時動作させて常時監視する構成としてもよい。さらには他の方法を用いてもよく監視の方法は特に限定されない。
【0035】
また、電流を流す方法としては、それぞれのシェンケルに順番に電位をかけて行き、電位をかけていないシェンケルに電流が流れたことを検知する構成であってもよいし、複数のシェンケルに異なる電位をかけて検知する構成であってもよい。さらには他の検出方法を用いてもよく検出の方法についても特に限定されない。
【符号の説明】
【0036】
1 樹脂被覆ロープ
2 シーブ
3 かご
4 カウンタウェイト
5 ロープ支持ソケット
6 シンブルロッド
7 コネクタ
8 ロープ検査装置本体
9 導線
10 カスタマーセンター
11 テスター
101 樹脂被覆ロープ端部
102 素線
103 ストランド
104 シェンケル
105 内層樹脂
106 外層樹脂
107 ロープ切断面
108 樹脂被覆ロープ内部断面
701 ソケット
702 くさび挿入穴
703 位置決め穴
704 ネジ穴
705 基準線
706 くさび部材
707 接触ネジ
708 段差
709 導線挿入穴
710 ロープ挿入口
711 雌ネジ
712 空間
901 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体と前記昇降体を吊持するロープと、前記ロープを駆動する巻上機とを備えたエレベーター装置において、
前記ロープは、樹脂で構成され中心部に配置される芯と、導体のストランドが撚り合わされて構成された複数のシェンケルと、前記芯及び前記複数のシェンケルの外周を覆う外層樹脂とを備え、前記複数のシェンケルは互いが接触しないように前記芯の周囲に放射状に配置されて撚り合わされた状態で外層樹脂により被覆されており、
前記ロープの端部にソケットを設置し、前記ソケットのロープ切断面側に設けられた挿入穴より前記ロープ切断面の前記芯にくさび部材を取付けて前記ロープ切断面での前記複数のシェンケル同士の絶縁を確保し、前記複数のシェンケルのそれぞれに対して前記ソケットの前記ロープ周面側に設けられた接触部材挿入穴に接触部材を挿入して前記外層樹脂を貫通してそれぞれの前記シェンケルと前記接触部材とを接触させ、前記接触部材と導線を接続し、前記導線を介してそれぞれの前記シェンケルに独立した電流を流してその電流の状態を検知して前記シェンケル同士の接触を検出するロープ検査装置が設けられたことを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
前記シェンケルの前記芯に対する撚り合わせピッチ長がLであるときに、前記接触部材挿入穴は、前記ロープ切断面から前記ロープの長手方向にh=nLだけ離れ、前記ロープ周方向に対する基準線からθ=360°×n(nは有理数)だけ前記シェンケルの撚り方向に回転した前記ソケットの位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記ロープ切断面における前記シェンケルと接触部材との導通をそれぞれ確認するための位置決め穴が、前記ソケットのロープ切断面側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
前記ソケットは、前記ロープ端部に設置した際に、前記くさび部材を前記芯に取付けたとき前記ロープの切断面から前記芯を引き出すための空間を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエレベーター装置。
【請求項5】
昇降体と前記昇降体を吊持するロープと、前記ロープを駆動する巻上機とを備え、前記ロープは、樹脂で構成され中心部に配置される芯と、導体のストランドが撚り合わされて構成された複数のシェンケルと、前記芯及び前記複数のシェンケルの外周を覆う外層樹脂とを備え、前記複数のシェンケルは互いが接触しないように前記芯の周囲に放射状に配置されて撚り合わされた状態で外層樹脂により被覆されているエレベーター装置に用いられるロープ検査装置において、
前記ロープの端部に設置するソケットと、前記ソケットのロープ切断面側に設けられた挿入穴より前記ロープ切断面の前記芯に取付けて前記ロープ切断面での前記複数のシェンケル同士の絶縁を確保するくさび部材と、前記複数のシェンケルのそれぞれに対して前記ソケットの前記ロープ周面側に設けられた接触部材挿入穴に挿入して前記外層樹脂を貫通してそれぞれの前記シェンケルと接触させる接触部材と、前記接触部材と接続される導線と、を有し、前記導線を介してそれぞれの前記シェンケルに独立した電流を流してその電流の状態を検知して前記シェンケル同士の接触を検出することを特徴とするロープ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153458(P2012−153458A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12466(P2011−12466)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】