説明

エレベータ制御システム

【課題】エレベータ停止階床において、エレベータ乗りかごのドアが半開き等の開放不全、ドア開閉装置の誤動作によるドア開信号不検出となったときでも、当該乗りかご内の乗客を迅速、かつ安全に救出すること。
【解決手段】エレベータが停止階床に停止し、当該停止から所定時間経過してもドア開信号が得られないとき、エレベータのドア開信号とエレベータ乗りかごに配設された乗りかご荷重測定装置の測定値の変動の有無とを検出して、ドア開信号が無く、しかも乗りかご重量測定装置の測定値が変動していない場合はドア閉制御をして、直ちに乗客の救出に便利な特定階床へのエレベータ運転を行い、一方、ドア開信号が無く、しかも当該乗りかご荷重測定装置の測定値が変動した場合は、当該停止階床にて当該エレベータを運休とするエレベータ制御システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エレベータの制御装置に係り、特にエレベータのドアが故障したときにエレベータの動作を制御するエレベータ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは呼びのある階で停止し、ドアを開いて乗客を乗降させるものであるが、エレベータが停止しても、ドアロックが解除されないとかドア駆動装置の不具合とかによるドア故障により、エレベータのドアが開かずにエレベータ乗りかご内に乗客が閉じこめられてしまう事故が発生していた。
その場合、当該エレベータの停止階が乗客を救出するのに都合の良い救出階床とは限らず、その救出に手間どるといった問題があった。
そこで、従来は、エレベータの停止から所定時間経過してもドア開の信号が得られなかった場合にはドア故障と判断し、ドア開制御に代えてドア閉制御として次階床に運転して再びドア開制御を行い、当該再びのドア開制御を行ってもドア開の信号が得られない場合は、ドア閉制御にして次階床に運転し、再びドア開制御を行う制御を所定回数行っていた。
しかしながら、当該所定回数のドア開、閉制御によってもドア開信号が得られない場合に、はじめて乗客の救出に便利な特定階床にエレベータを運転するエレベータ制御が行われていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−242186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来行われていた、次階床へ所定回数繰返して行われる、エレベータの停止、運転制御は、エレベータ乗りかご内に閉じこめられた乗客にとっては、如何なる事態になるのかとの不安感を与える問題があった。
そればかりではなく、特許文献1に示されるような従来のエレベータ制御は、乗りかごドアのドア開制御によってもドア開信号が得られない場合として、乗りかごドアが半開き状態である危険性、ドア開閉検出装置の誤動作による危険性に対しては何ら対策が講じられていなかった。
【0004】
すなわち、ドア開閉検出装置の誤作動、又は乗りかごドアの半開きにより、実際には乗りかごのドアは開いていて乗客が乗降可能なときでもドア開の信号が得られないときに従来のエレベータ制御は、乗りかごのドア故障と判定してドア閉制御を行い、次階床への運転制御を行うこととなる。その場合、乗降客は当該ドアに挟まれる危険性が存在し、また、実際にはドアが開いていてもドア開閉検出装置の誤動作によるドア閉信号に基づいて次階床への運転制御を行うと、乗りかごのドアが開いたまま運転されることとなりどちらも安全性の面からも問題があった。
そこで、本件発明は、前記乗りかごドアの半開き状態、乗りかごドア開閉検出装置の誤動作等にも対応できるエレベータ内閉じこめを回避するエレベータ制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレベータが停止階床に停止し、当該停止から所定時間経過しても乗りかごのドア開信号が得られないときは、乗りかごのドア開信号とエレベータ乗りかごに配設された乗りかご荷重測定装置の測定値の変動の有無とを勘案して、当該エレベータの運転制御を変更する。
すなわち、乗りかごドア開信号が得られず、しかも乗りかご荷重測定装置の測定値が変動していない場合は、乗りかごドアをドア閉制御として、直ちに乗客の救出に便利な特定階床へのエレベータ運転を行う。
一方、乗りかごドア開信号が得られず、しかも当該乗りかご重量測定装置の測定値の変動が存在する場合は、当該停止階床にて当該エレベータを運休とするエレベータの運転を行う。
【発明の効果】
【0006】
乗りかごドアの異常状態に応じて処理が行えるので、閉じこめられた場合は直ちに乗客の救出に便利な特定階床(以下「救出階床」という)にエレベータを運転して乗客を速やかに救出して乗客の安全を図ることができ、しかも、当該救出階床への運転に際しては、乗りかごドア開閉検出装置の異常の有無を考慮するものであるから、乗客の安全性を確実に確保しながら救出階床へ運転することとなるので、乗客の安全性を従来より確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1において、符号1はエレベータ制御装置、符号2はエレベータ乗りかご、符号3は乗りかごドア制御装置、符号4は乗りかごドア駆動装置、符号5は乗りかごドア、符号6は乗りかごドア開閉検出装置、符号7は乗りかご荷重測定装置、符号8は乗り場ドア、符号9は救出用ドア制御装置、符号10は救出用ドア駆動装置、符号11は救出階乗り場ドアである。
ここで、救出階乗り場ドア11以外の乗り場ドア8は、乗りかごドア制御装置3での開閉または鍵による開放が可能とされ、一方、救出階乗り場ドア11では、乗りかごドア制御装置3での開閉または救出用ドア制御装置9での開放が可能となっている。
【0008】
本発明のエレベータ装置の動作を説明する。
エレベータ制御装置1が、図示しない乗り場側呼び釦、又はエレベータの停止先を指示する階床釦等により指定された階床にエレベータを停止制御すると、乗りかごドア制御装置3は乗りかごドア駆動装置4を介して乗りかごドア5の開放制御を実行する。
次いで、所定時間内に、乗りかごドア開閉検出装置6からのドア開の信号があるか否かを判定し、当該信号が無い場合は、乗りかご荷重測定器7の測定値に所定値以上の変動があるか否か判定し、所定値以上の変動がある場合、すなわち、乗りかごドア開閉検出装置6の誤動作、または乗りかごドアの半開き等により乗客の乗降が行われていると判断して、当該停止階にて当該エレベータを運行休止とする。
【0009】
一方、所定値以上の変動がない場合、すなわち、乗りかごドアが開かないので乗客は乗降できる状態にないと判断して、乗りかごドア5を閉制御して救出階床に運行し、当該救出階床にて、救出用ドア制御装置9、救出用ドア駆動装置10などの救出装置にて乗客を救出する。
なお、ここでいう「所定値以上」の変動とは、乗客の単なる位置移動による荷重変化を除く変動との意味であり、例えば、乗りかご荷重測定器の感度を鈍くして、当該所定値以上でないと変化しない荷重測定器を用いても、また、直前、直後の測定値間の減算によっても良い。
【0010】
前記動作を図2のフローチャートを用いて説明する。
ステップS0で、通常運転中に図示しない乗り場側呼び釦、又はエレベータの停止先を指示する階床釦等の信号を受けるとステップS1に進む。
ステップS1で、エレベータ制御装置1は、当該乗り場側呼び釦、階床釦等により指定された階床にエレベータを停止制御してステップS2に進む。
ステップS2で、乗りかごドア制御装置3が乗りかごドア駆動装置4を介して乗りかごドア5を開放制御をしてステップS3に進む。
ステップS3で、ステップS2の乗りかごドア5の開放制御から所定期間経過したか否か判定し、所定期間が経過したらステップS4に進む。
ステップS4で、当該所定時間内に乗りかごドア5が開いたことを検出する、乗りかごドア開閉検出装置6からの乗りかごドア開信号の有無を判定し、当該開信号が存在するYES判定のときはステップS0に戻り通常運転を行う。
ステップS4で、当該乗りかごドア5開信号が存在しないNO判定のときはステップS5に進む。
ステップS5で、エレベータ乗りかご5に配設された乗りかご荷重測定装置7による荷重測定値の変動の有無を判定する。
ステップS5で、当該荷重測定値の変動が存在するYES判定のときはステップ6に進み、当該エレベータを運休として技術保守員の到着を待つ。
ステップS5で、当該荷重測定値の変動が存在しないNO判定のときは、ステップS7に進み、乗りかごドア5を閉にするドア閉制御をしてステップS8に進む。
ステップS8で、当該エレベータを救出階床に運転し、救出用ドア制御装置9、救出用ドア駆動装置10にて閉じこめられた乗客を救出する。
【0011】
以上の実施例によると以下の効果を奏する。
エレベータ乗りかごに救出用ドア制御装置を設置すると、当該乗りかごの制御機能が故障した時には救出用ドア制御装置も駆動できない可能性があるが、本発明では、乗り場側に救出用ドア制御装置を設置することで、当該乗りかごの機能に故障が生じた場合でも、ドアを開くことができる。
さらに、特定の階床のみ救出用のドア制御装置を設置することにより、全乗り場に救出用のドア制御装置を設置することよりコストを抑えることができる。
また、従来より配設されている荷重測定装置を利用して、当該荷重測定装置による荷重変動の有無を考慮してエレベータの運転を、停止階床で運休にしたり、救出階床である特定階床に運行させる制エレベータ制御であるから、停止階床でドア開検出信号が確認できないときでも、乗降客を挟むような危険を回避でき、しかも低コストで安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の救出階床を含むエレベータの概略構成図
【図2】本発明の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0013】
1 エレベータ制御装置
2 エレベータ乗りかご
3 乗りかごドア制御装置
4 乗りかごドア駆動装置
5 乗りかごドア
6 乗りかごドア開閉検出装置
7 乗りかご荷重測定装置
8 乗り場ドア
9 救出用ドア制御装置
10 救出用ドア駆動装置
11 救出階乗り場ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ運転制御装置、エレベータ乗りかご、乗りかごドア開閉制御装置、乗りかごドア開閉検出装置、乗りかご荷重測定装置、特定階床に配設された乗客救出装置等を含むエレベータ制御システムにおいて、
前記エレベータ運転制御装置は、
エレベータ乗りかごを所定階に停止して乗りかご開閉制御装置にて乗りかごのドアが開制御された後、乗りかごドア開閉検出装置から発せられる所定期間内の乗りかごドア開信号の有無と、当該所定期間内の乗りかご荷重測定装置の測定値の変動の有無との組合せに基づいて、通常運転、乗りかごドアを閉制御して乗客救出に有利な救出階床へのエレベータ運行、当該停止階にて運休の何れかに運転制御するエレベータ制御システム
【請求項2】
請求項1のエレベータ運転制御装置は、乗りかごドア開信号の有無と測定値の変動の有無との組合せとして、乗りかごドア開信号が無く、かつ乗りかご荷重測定装置の測定値の変動がある場合は、当該停止階にて運休制御するエレベータ制御システム。
【請求項3】
請求項1のエレベータ運転制御装置は、乗りかごドア開信号の有無と測定値の変動の有無との組合せとして、乗りかごドア開信号が無く、かつ乗りかご荷重測定装置の測定値の変動がない場合は、乗りかごドアを閉制御して乗客救出に有利な救出階床にエレベータを運転制御するエレベータ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−137715(P2009−137715A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316048(P2007−316048)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】