説明

エレベータ用防犯カメラシステム

【課題】 ハードディスクの故障やデータ異常の発生を有効に防止すること。
【解決手段】 エレベータ制御盤8のエレベータ運転状態出力手段9は、オン信号(停止状態であることを示す信号)又はオフ信号(走行中であることを示す信号)を画像データ書込手段6に出力している。画像データ書込手段6は、この信号に基づき、停止状態と判別した場合にメモリ5に記録されている画像データをハードディスク7に書き込み、一方、走行中と判別した場合には書込を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータかごの防犯カメラからの画像データを、エレベータかごに取り付けたハードディスクに保存するエレベータ用防犯カメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ用防犯カメラシステムは、エレベータかごの防犯カメラからの画像データをディスプレイにリアルタイムで表示することにより犯罪発生に対する抑止的効果を意図するものであり、また、この画像データをエレベータかごに取り付けた画像記録装置に保存して犯罪発生後の捜査資料や証拠資料等に役立てることを意図するものである。
【0003】
そして、防犯カメラからの画像データを記録媒体に保存する場合、以前はその記録媒体としてはビデオテープが多く用いられていた。しかし、近時はハードディスクの大容量化、高速化、及び低価格化が著しく進んでおり、ビデオテープに代わり、アクセスに便利なハードディスクが記録媒体として用いられる場合が多くなってきている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−40542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ハードディスクは精密機械であり、構造的に振動・衝撃に弱いという性質を有している。特に、機械的可動部である読み書きヘッドの動作中に一定レベル以上の振動・衝撃を受けると、ハードディスクの故障発生率はかなり大きくなる。
【0005】
ここで、最近のエレベータ運転においては、インバータによるモータ制御の技術が大きく進歩して以前に比べてかなり静粛な走行が可能になっているために、一見すると、ハードディスクの構造に影響を与えるほどの振動・衝撃が発生することは殆どないようにも思われる。しかし、巻上機及びシーブ等からの機械的振動、更に乗りかごがレールの継ぎ目を通過するときの機械的振動、あるいはモータ制御系による電気的振動が発生しており、これらの振動はロープ等を介して乗りかごに伝達されるため、ハードディスクは繰り返し発生する振動の影響を長期間にわたって常時受けていることになる。また、エレベータ運転中に、突然の停電や異常事態が発生した場合、走行中の乗りかごは急停止することがあり、このような場合にはハードディスクに大きな衝撃が加わることになる。
【0006】
したがって、エレベータかごに取り付けられた画像記録装置内に搭載されているハードディスクは、実際にはかなり故障が発生しやすい環境に置かれていることになる。事実、従来のエレベータ用防犯カメラシステムではハードディスクの故障やハードディスクに保存されたデータの異常が無視し得ない割合で発生していた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ハードディスクの故障やデータ異常の発生を有効に防止することが可能なエレベータ用防犯カメラシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段として、請求項1記載の発明は、エレベータかご内の様子を撮影する防犯カメラと、前記エレベータかごに取り付けられ、前記防犯カメラからの画像データを一旦メモリに記録し、その後にハードディスクへの書込を行う画像記録装置と、を備えたエレベータ用防犯カメラシステムにおいて、前記画像記録装置は、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であるか否かを判別し、可能な状態であると判別した場合にのみ前記ハードディスクへの書込を実行する画像データ書込手段を、有するものである、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記メモリの容量は、少なくとも前記エレベータかごが最下階と最上階との間を移動する期間中に蓄積される前記画像データを記録可能なものである、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、エレベータが停止状態であるか走行中であるかを示す信号を出力するエレベータ運転状態出力手段がエレベータ制御盤に設けられており、前記画像データ書込手段は前記エレベータ運転状態出力手段から前記エレベータかごが停止中であることを示す信号を入力した場合に、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であると判別する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、エレベータかごの加速度を検出する加速度計がエレベータかごに設置されており、前記画像データ書込手段は該加速度計からの検出信号のレベルが、所定時間以上にわたって閾値より小さな場合に、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であると判別する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記画像記録装置は、前記エレベータかごの枠部材に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、前記ハードディスクは防振ゴムを介して前記画像記録装置内に固定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシステムでは、画像記録装置の画像データ書込手段が、ハードディスクへの書込が可能な状態であるか否かを判別し、可能な状態であると判別した場合にのみハードディスクへの書込を実行する構成となっているので、ハードディスクの故障やデータ異常の発生を確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベータ用防犯カメラシステムの構成図である。この図において、かご1の室内の天井部付近にはかご内の様子を撮影する防犯カメラ2が設置されている。そして、かご1の上部に位置する上枠部材には画像記録装置3が取り付けられている。この画像記録装置3は、画像データ圧縮回路4、メモリ5、画像データ書込手段6、及びハードディスク7を含んで構成されている。
【0016】
また、エレベータ制御盤8には、エレベータが走行中であるか停止中であるかを示す信号を出力するエレベータ運転状態出力手段9が設けられている。このエレベータ運転状態出力手段9から出力される信号はテイルコード10を介して画像データ書込手段6に送られるようになっている。なお、エレベータ運転状態出力手段9は、ハードウエア的に構成されるもの、あるいはソフトウエア的に構成されるもののいずれであってもよい。
【0017】
次に、図1の動作を図2のフローチャートに基づき説明する。防犯カメラ2が撮影を開始すると、画像記録装置3は最初のフレームの画像データを入力し(ステップ1)、画像データ圧縮回路4はこの画像データをA/D変換した後、データ圧縮処理を行う(ステップ2)。そして、画像データ圧縮回路4は、圧縮処理を行った画像データをメモリ5に記録する(ステップ3)。このときのデータ圧縮方式としては、例えばJPEG方式、ウェーブレット変換方式等がある。なお、本実施形態における画像データは、コマ落ち的な表示を行うための静止画像を想定しているが、動画像であってもよい。その場合には、MPEG方式によるデータ圧縮方式を採用することができる。
【0018】
一方、エレベータ制御盤8のエレベータ運転状態出力手段9は、かご1が停止状態であるか走行中であるかを示す信号、すなわちオン信号(停止状態であることを示す信号)又はオフ信号(走行中であることを示す信号)をテイルコード10を介して画像データ書込手段6に出力している。画像データ書込手段6は、このエレベータ運転状態出力手段9からの信号の入力に基づき、かご1が現在停止状態であるか走行中であるかを判別している(ステップ4,5)。
【0019】
そして、画像データ書込手段6は、停止状態と判別した場合に、メモリ5に記録されている画像データをハードディスク7に書き込み(ステップ6)、一方、走行中と判別した場合には書込を行わないようにする。
【0020】
次いで、画像データ書込手段6は、記録間隔の所定時間(静止画像の場合は数秒程度)の経過を待った後(ステップ7)、書込停止指令の有無を判別する(ステップ8)。書込停止指令が無ければ、ステップ1以降の処理が繰り返され、書込停止指令が有ればそこで全ての処理は停止する。この書込停止指令は、例えば異常検出回路(図示せず)が停電等の異常事故が発生した場合に画像データ書込手段6に出力したり、あるいはエレベータ管理人等が外部スイッチ(図示せず)を操作して画像データ書込手段6に出力したりするものである。
【0021】
上述した図1の構成においては、画像データ書込手段6によるメモリ5からハードディスク7への画像データの書込は、かご1が停止状態にある場合にのみ行われ、かご1が走行中である場合には行われない。そして、かご1が停止状態にあれば、大きな振動・衝撃が生じることは殆どないので、ハードディスク7は支障なく書込動作を行うことができる。一方、かご1が走行中であれば、停止状態になるのを待って書込動作を行うことになる。したがって、ハードディスク7の故障やデータ異常の発生を有効に防止することができる。
【0022】
なお、かご1が走行中の状態が長い時間継続するような場合、つまりステップ5において「NO」の判別が連続して繰り返される場合は、メモリ5に蓄積される画像データ量も大きくなる。したがって、メモリ5の容量は、少なくともかご1が最下階と最上階との間を移動する期間中に蓄積される画像データを蓄積可能な容量であることが望ましい。また、メモリ5の容量が一杯になった場合は、新しいデータを一番古いデータに上書きするようになっている。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施形態に係るエレベータ用防犯カメラシステムの構成図である。この第2の実施形態における画像記録装置3Aは、内部に加速度計11を有しており、画像データ書込手段6はこの加速度計11からの検出信号を入力するようになっている。画像データ書込手段6は、図1の第1の実施形態ではエレベータ運転状態出力手段9からの信号に基づきハードディスク7への書込が可能か否かを判別していたが、この第2の実施形態では加速度計11からの信号に基づきハードディスク7への書込が可能か否かを判別する構成となっている。
【0024】
そして、この図3の構成では画像記録装置3Aの内部に加速度計11が配設されているので、図1のようにテイルコード10による接続が必要なく、既設のシステムに対する適用が容易となる。
【0025】
次に、図3の動作の要部を図4のフローチャートに基づき説明する。この図4のフローチャートは、図2におけるステップ4をステップ41に、また、図5をステップ51〜53に置き換えたものである。したがって、この図4以外の動作は、既述したステップ1〜3、及びステップ6〜8の通りであるため、重複した説明を省略する。
【0026】
図4において、ステップ3の処理が行われた後、画像データ書込手段6は、加速度計11からの検出信号を入力し(ステップ41)、この検出信号のレベルすなわち加速度が所定時間以上閾値より小さなものとなっているか否かにつき判別する(ステップ51)。
【0027】
そして、ステップ51の判別結果が「YES」の場合、つまり加速度が所定時間以上閾値より小さなものとなっていれば、画像データ書込手段6はメモリ5の画像データをハードディスク7に書き込むことが可能な状態と判別し(ステップ52)、ステップ6の書込を実行する。一方、ステップ51の判別結果が「NO」であれば、画像データ書込手段6はハードディスク7への書込が不可能な状態と判別し(ステップ53)、ステップ6の書込を実行することなくステップ7に進む。
【0028】
この第2の実施形態では、第1の実施形態のように、かご1が停止状態であるか走行中であるかに基づき、ハードディスク7への書込が可能な状態であるかを判別するのではなく、一定レベル以上の加速度が所定時間以上発生しているか否かに基づき判別している。そのため、第1の実施形態の判別よりも正確な判別となっている。
【0029】
何故なら、例えば、かご1が停止状態であったとしても、利用者がかご1に対して急な乗降動作を行ったり、利用者がかご1内で飛び跳ねたりしたような場合は、ハードディスク7への書込を行うには不適切な状態となるが、本実施形態ではこのような場合は加速度計11の検出信号のレベルが大きくなるので、画像データ書込手段6は書込を行うことはしない。
【0030】
逆に、かご1が走行中であったとしても、定速度で走行中であれば画像記録装置3に伝わる振動も小さなレベルとなるため、ハードディスク7へ書込を行っても支障はない。本実施形態ではこのような場合は加速度計11の検出信号のレベルが小さくなるので、画像データ書込手段6は書込を行うことになる。
【0031】
本発明の実施形態は、概ね上述したようなものであるが、その他に本発明は次のような形態を広く包含するものである。
【0032】
(1)画像記録装置3,3A内でのハードディスク7の取付構造については特に制約を受けるものではないが、ハードディスク7は防振ゴムを介して固定されていることが好ましい。これにより、ハードディスク7の故障やデータ異常の発生を一層有効に防止することができる。
【0033】
(2)上記実施形態では、画像記録装置3がかご1の上枠部材に取り付けられた構成につき説明したが、下枠部材としてもよい(但し、上枠側の方が配線作業が容易である)。いずれの場合も、画像記録装置3は、かご1に直接に取り付けるよりも枠部材を介して取り付けた方が好ましい。これは、エレベータ床とかご枠との間には防振ゴム等の防振部材が介挿されているので、利用者が乗降する際の振動・衝撃の影響を減少させることができるからである。
【0034】
(3)画像データ圧縮回路4の圧縮率については、エレベータ管理者等のユーザ側で選択が可能になっているものが好ましい。これは、圧縮率を変化させた場合、伸張したときの映像の鮮明さと記録可能時間とが反比例の関係にあるため、ユーザ側の判断に委ねた方が妥当だからである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベータ用防犯カメラシステムの構成図。
【図2】図1の動作を説明するためのフローチャート。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るエレベータ用防犯カメラシステムの構成図。
【図4】図3の動作の要部を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0036】
1 かご
2 防犯カメラ
3,3A 画像記録装置
4 画像データ圧縮回路
5 メモリ
6 画像データ書込手段
7 ハードディスク
8 エレベータ制御盤
9 エレベータ運転状態出力手段
10 テイルコード
11 加速度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご内の様子を撮影する防犯カメラと、
前記エレベータかごに取り付けられ、前記防犯カメラからの画像データを一旦メモリに記録し、その後にハードディスクへの書込を行う画像記録装置と、
を備えたエレベータ用防犯カメラシステムにおいて、
前記画像記録装置は、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であるか否かを判別し、可能な状態であると判別した場合にのみ前記ハードディスクへの書込を実行する画像データ書込手段を、
有するものである、ことを特徴とするエレベータ用防犯カメラシステム。
【請求項2】
前記メモリの容量は、少なくとも前記エレベータかごが最下階と最上階との間を移動する期間中に蓄積される前記画像データを記録可能なものである、
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ用防犯カメラシステム。
【請求項3】
エレベータが停止状態であるか走行中であるかを示す信号を出力するエレベータ運転状態出力手段がエレベータ制御盤に設けられており、前記画像データ書込手段は前記エレベータ運転状態出力手段から前記エレベータかごが停止中であることを示す信号を入力した場合に、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であると判別する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータ用防犯カメラシステム。
【請求項4】
エレベータかごの加速度を検出する加速度計がエレベータかごに設置されており、前記画像データ書込手段は該加速度計からの検出信号のレベルが、所定時間以上にわたって閾値より小さな場合に、前記ハードディスクへの書込が可能な状態であると判別する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のエレベータ用防犯カメラシステム。
【請求項5】
前記画像記録装置は、前記エレベータかごの枠部材に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエレベータ用防犯カメラシステム。
【請求項6】
前記ハードディスクは防振ゴムを介して前記画像記録装置内に固定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のエレベータ用防犯カメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−151581(P2006−151581A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344300(P2004−344300)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】