説明

エンコーダ及び駆動装置

【課題】検出精度の低下を低減すること。
【解決手段】磁気パターンを形成する磁石を有する磁場形成部と、少なくとも一部が磁性体で構成される凹部を有し、当該凹部の側面に磁場形成部が配置され、測定対象の回転軸と一体的に回転する回転部と、凹部の側面に対向して配置され、磁気パターンによる磁場を検出する磁場検出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ及び駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置などの回転軸の位置情報(例、回転数)を検出する装置として、エンコーダが知られている(例えば、特許文献1)。エンコーダは、駆動装置の回転軸に取り付けられて用いられる。エンコーダとして、光学パターンの変化を読み取る光学式エンコーダや、磁気パターンの変化を検出する磁気式エンコーダなどが知られている。
【0003】
近年、電気自動車などの自動車においても、高分解能を有するエンコーダが求められている。自動車に搭載される駆動装置は、振動、温度、結露、塵埃などの面で使用環境が厳しい。この点で、光学式エンコーダは結露や塵埃などに対する耐性が磁気式エンコーダより低い。そこで、このような使用環境においては、磁気式エンコーダを搭載することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−308171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、磁気式エンコーダの構造上、磁気パターンの周囲に鉄などの磁性材料を含んだ磁性部材が固定されていると、当該磁性部材において、磁気パターンの回転による磁場の変化を打ち消す方向に磁場を発生させようとする作用が生じる場合がある。この作用で発生した磁場により磁気パターンによる磁場が乱されてしまうと、正確な位置情報の検出が困難となり、検出精度が低下してしまう場合がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、検出精度の低下を低減することが可能なエンコーダ及び駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、磁気パターンを形成する磁石を有する磁場形成部と、少なくとも一部が磁性体で構成される凹部を有し、当該凹部の側面に磁場形成部が配置され、測定対象の回転軸と一体的に回転する回転部と、凹部の側面に対向して配置され、磁気パターンによる磁場を検出する磁場検出部と、を備えるエンコーダが提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、本発明の第一の態様に従うエンコーダと、回転軸を回転させる駆動部と、を備える駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、検出精度の低下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る駆動装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るエンコーダの構成を示す図。
【図3】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す図。
【図4】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す図。
【図5】本実施形態に係るエンコーダによる検出結果の一例を示すグラフ。
【図6】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図7】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図8】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図9】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図10】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図11】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【図12】本実施形態に係るエンコーダの他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る駆動装置100の全体構成を示す図である。
図1に示すように、駆動装置100は、回転軸SF、駆動部AC、エンコーダEC及びコネクタCNを有する。
【0012】
以下、各図の説明においてはXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。本実施形態では、回転軸SFの中心軸Cの延在方向をZ方向として設定している。なお、Z軸周りの方向については、θZ方向と表記する。また、図2以降において、Z軸に垂直な平面をXY平面とし、XY平面上の一方向をX方向とし、XY平面上で当該X方向に直交する方向をY方向とする。
【0013】
図1に示すように、回転軸SFは、円筒状又は円柱状に形成されている。駆動部ACは、回転軸SFをθZ方向に回転させる。回転軸SFは、ベアリング部BG(図2等参照)を介して駆動部ACに取り付けられている。回転軸SFは、駆動部ACをZ方向に貫通して設けられている。回転軸SFは、駆動部ACに対して−Z側に突出する第一部分SFaと、駆動部ACに対して+Z側に突出する第二部分SFbとを有する。回転軸SFは、第一部分SFaが駆動装置100において回転力を伝達する負荷側となっており、第二部分SFbが反負荷側となっている。
【0014】
エンコーダECは、回転軸SFの反負荷側である第二部分SFbに固定されている。エンコーダECは、例えば回転軸SFの回転角度や回転速度など、回転軸SFのθZ方向における位置情報を検出する。本実施形態では、エンコーダECとして、磁場の変化によって上記の位置情報を検出する磁気式エンコーダが用いられている。
【0015】
図2は、駆動部AC及びエンコーダECの内部構成を示す断面図である。
図2に示すように、エンコーダECは、磁場形成部10、回転部20、磁場検出部30及び固定部40を有している。
【0016】
磁場形成部10は、円筒状に形成された磁石11を有している。磁石11は、回転部20に保持されている。Z軸方向視において、磁石11は、当該磁石11の中心軸が回転軸SFの中心軸Cに一致するように配置されている。
【0017】
図3は、エンコーダECを+Z側から見たときの構成を示す図である。
図3に示すように、磁石11は、例えば半分(図3の−X側半分)の領域がN極に着磁されており、他の半分(図3の+X側半分)の領域がS極に着磁されている。このように、磁石11には、N極及びS極の磁気パターン11pが円筒面である内周面11bに沿って形成されている。
【0018】
また、図2に示すように、回転部20は、ネジなどの固定部材50によって回転軸SFに固定されている。回転部20は、回転軸SFと一体的に回転する。回転部20は、装着部21、鍔部22、第一磁気回路部23、第二磁気回路部24、第一ラビリンス形成部25及び第二ラビリンス形成部26を有している。
【0019】
回転部20は、上記の各部が一体的に形成されている。本実施形態では、例えば回転部20は磁性体を用いて一部材として形成されている。なお、回転部20は、各部が一体的に形成されていれば良く、一部材に形成された構成に限られるものでは無い。したがって、例えば複数の部材を一体化させた構成であっても構わない。また、上記磁気回路部(例、第一磁気回路部23、第二磁気回路部24)は、磁性体であるため、磁石11と磁気回路部とで磁気回路を形成することによって磁力を向上させることができる。
【0020】
図4は、エンコーダECの一部を拡大して示す図である。
装着部21は、回転軸SFの第二部分SFbに装着される部分である。装着部21は、底部21a及び壁部21bを有している。
【0021】
底部21aは、円板状に形成されており、回転軸SFの第二部分SFbの+Z側端面に当接される。壁部21bは、円筒状に形成されており、第二部分SFbの外周を保持する。壁部21bの内径は、第二部分SFbの外径とほぼ等しくなっている。このため、回転軸SFの第二部分SFbは、底部21aと壁部21bとで形成される凹部に嵌め込まれた状態で装着部21に装着される。底部21aには、固定部材50を貫通させる貫通部21cが設けられている。
【0022】
鍔部22は、壁部21bの外周面に設けられている。鍔部22は、当該壁部21bの外周面に沿って円環状に形成されている。鍔部22は、回転軸SFの回転面(XY平面)に平行に形成されている。
【0023】
第一磁気回路部23は、鍔部22の+Z側の面に設けられており、当該鍔部22の外周に沿って円筒状に形成されている。第一磁気回路部23には、磁石11の磁気回路の一部が形成されている。第一磁気回路部23の中心軸は、回転軸SFの中心軸Cに一致している。
【0024】
第一磁気回路部23の内径は、磁石11の外径にほぼ一致する寸法に設定されている。上記の磁石11は、第一磁気回路部23の内周面23bに取り付けられている。当該磁石11は、不図示の接着剤などを介して第一磁気回路部23の内周面23bに接着されている。磁石11が第一磁気回路部23の内周面23bに配置されていることにより、磁石11が例えば高速で回転し、遠心力などにより磁石11と内周面23bとの間の接着剤が剥離した場合でも、磁石11が回転部20の外部(例、エンコーダ本体内、等)に飛散しない構成になっている。
【0025】
第二磁気回路部24は、鍔部22の+Z側の面に設けられている。第二磁気回路部24は、第一磁気回路部23及び磁石11の内側に配置されており、装着部21及び固定部材50を囲うように円筒状に形成されている。第二磁気回路部24には、磁石11の磁気回路の一部が形成されている。第二磁気回路部24は、鍔部22を介して第一磁気回路部23に接続されている。したがって、鍔部22は、第一磁気回路部23と第二磁気回路部24とを接続する接続部となっている。
【0026】
第二磁気回路部24の中心軸は、回転軸SFの中心軸Cに一致している。第二磁気回路部24の外周面24aは、第一磁気回路部23の内周面23bの一部及び磁石11の内周面11bに対向している。第二磁気回路部24は、外周面24aと磁石11の内周面11bとの間に所定のスペースが設けられるように形成されている。当該スペースには、磁場検出部30の少なくとも一部が配置される。
【0027】
図2〜図4に示すように、回転部20の+Z側には、鍔部22と、第一磁気回路部23と、第二磁気回路部24とによって囲まれた凹部27(例、凹状の部分)が形成されている。凹部27は、Z方向視で円環状に形成されている(図3参照)。当該凹部27は、回転部20の+Z側から−Z側へ向けて凹んでいる。すなわち、凹部27は、回転部20の+Z側に開口部を有する構成である。鍔部22の+Z側の面は、凹部27の底面に相当する。第一磁気回路部23の内周面23b及び第二磁気回路部24の外周面24aは、それぞれ凹部27の側面に相当する。したがって、上記の磁石11は、凹部27の側面に接着されている。なお、本実施形態における凹部27は、くぼみ、へこみ、溝、等であって、凹状、V字状、等の形状を有する。また、本実施形態における凹部27は、例えば、凹状の形状の場合、凹部27の側面は回転軸SFの外周面と平行方向の面で構成され、V字状の形状の場合、凹部27の側面は回転軸SFの外周面と異なる方向の面で構成される。
【0028】
第一ラビリンス形成部25は、鍔部22の−Z側に設けられている。第一ラビリンス形成部25は、回転軸SFの外周面を囲うように、鍔部22の外周に沿って円筒状に形成されている。第一ラビリンス形成部25の中心軸は、回転軸SFの中心軸Cに一致している。したがって、第一ラビリンス形成部25及び上記の第一磁気回路部23は、同一の円筒面上に形成されている。
【0029】
第二ラビリンス形成部26は、鍔部22の−Z側に設けられている。第二ラビリンス形成部26は、回転軸SFの外周面に沿って円筒状に形成されている。第二ラビリンス形成部26の内径は、回転軸SFの第二部分SFbの外径とほぼ等しくなっている。第二ラビリンス形成部26の中心軸は、回転軸SFの中心軸Cに一致している。このように、第二ラビリンス形成部26及び上記の装着部21の壁部21bは、同一の円筒面に沿って形成されている。
【0030】
回転軸SFの第二部分SFbの一部は、第二ラビリンス形成部26の一部によって保持されている。このため、第二ラビリンス形成部26は、回転軸SFを嵌め込ませる装着部21の一部としての機能を有する。
【0031】
磁場検出部30は、図2及び図4に示すように、基板31、磁気センサ32及び処理回路33を有する。磁場検出部30は、磁石11の磁気パターン11pによる磁場を検出する。
【0032】
基板31は、回転部20の+Z側に設けられている。基板31は、XY平面に平行に配置されている。基板31は、磁気センサ32及び処理回路33を保持する。基板31には、不図示の配線や端子などが形成されている。基板31は、固定部材31cによって固定部40に固定されている。
【0033】
磁気センサ32は、基板31の第一面31aに固定されている。磁気センサ32は、例えばホール素子や磁気抵抗素子などの検出素子(不図示)を有している。磁気センサ32は、磁気パターン11pによる磁場を検出し、電気信号に変換する。磁気センサ32において生成された電気信号は、基板31の不図示の配線を介して処理回路33に送信される。
【0034】
磁気センサ32は、センサ本体32a及び支持部32bを有する。センサ本体32aは、凹部27のうち、第二磁気回路部24の外周面24aと磁石11の内周面11bとの間に形成された隙間27a(図4参照)に挿入される。センサ本体32aには、上記ホール素子や磁気抵抗素子などの検出素子が設けられている。支持部32bは、センサ本体32aと基板31とを接続する。支持部32bには、センサ本体32aに設けられた検出素子と基板31とを電気的に接続する配線(不図示)が設けられている。
【0035】
図3に示すように、磁気センサ32は、回転軸SFの中心軸Cを中心としてθZ方向に90°ずれた位置に1つずつ配置されている。センサ本体32aは、磁場形成部10(磁石11)及び回転部20に接触しないように、第二磁気回路部24や磁石11との間に隙間を空けて配置されている。
【0036】
センサ本体32aは、板状に形成されている。センサ本体32aは、第一磁気回路部23の内周面23b、第二磁気回路部24の外周面24a及び磁石11の内周面11bに対向して配置されている。すなわち、センサ本体32aは、回転部20の上記凹部27の側面に対向して配置されている。
【0037】
磁石11の内周面11bは回転軸SFの延在方向に沿って形成されているため、当該内周面11bとセンサ本体32aとは、回転軸SFの延在方向に直交する方向に対向する。この構成により、磁石11とセンサ本体32aとがZ方向(回転軸SFの軸方向)に相対的に位置ずれを起こしても、磁気センサ32の検出精度にはほとんど影響を及ぼさずに済む。
【0038】
処理回路33は、基板31の+Z側の第二面31b上に配置されている。処理回路33は、磁気センサ32からの電気信号の波形を整形する処理を含む所定の処理を行う。処理回路33を経由した電気信号は、基板31に形成された不図示の配線や端子などを介して駆動装置100のコネクタCNに送信され、当該コネクタCNを介して外部の不図示の制御装置などに送信される。
【0039】
固定部40は、図2に示すように、基材41、カバー部材42及び固定部材43を有している。基材41は、円盤状に形成されており、駆動部ACの+Z側端面及びベアリング部BGを覆っている。カバー部材42は、上記磁場形成部10、回転部20及び磁場検出部30を覆うように設けられている。カバー部材42は、固定部材43によって基材41と共に駆動部ACに固定されている。基材41とカバー部材42との間には、Oリング44が設けられている。当該Oリング44は、カバー部材42の外部から内部への異物の進入を防ぐ機能を有する。
【0040】
図2及び図4に示すように、基材41には、回転軸SFの外周を囲うように+Z側に突出した突出部(凸部)41aが形成されている。突出部41aは、回転軸SFの外周に沿って円筒状に形成されている。突出部41aは、回転部20が装着された状態において、第一ラビリンス形成部25と第二ラビリンス形成部26との間に挿入されている。
【0041】
突出部41aは、上記第一ラビリンス形成部25及び第二ラビリンス形成部26に対して隙間を空けて配置されている。このため、第一ラビリンス形成部25と、突出部41aと、第二ラビリンス形成部26とにより、断面視U字状のラビリンス部60が形成されている。また、本実施形態における凹部27の側面と突出部41aの側面とは、互いに平行に構成されている。
【0042】
ラビリンス部60は、回転軸SFから磁場形成部10への流体の移動を規制する規制部の一つである。ラビリンス部60は、当該回転軸SFの断面視U字状に形成されており、回転軸SFの延在方向に直交する部分を有するため、回転軸SFから流れてくる流体(駆動部ACの潤滑油など)の移動が妨げられることになる。このように、ラビリンス部60は、磁場形成部10の磁石11へ向けて流体が移動するのを規制(又は低減)している。
【0043】
なお、回転部20の凹部27を構成する第一磁気回路部23及び第二磁気回路部24と、磁気センサ32とで形成される隙間についても、ラビリンス部60と同様の形状を含んでいる。すなわち、当該隙間は、回転軸SFの延在方向に沿った部分と当該回転軸SFの延在方向に直交する部分とを含んでいる。このため、凹部27に上記の流体が到達する場合であっても、凹部27において流体の移動が規制(又は低減)されることになる。
【0044】
次に、上記のように構成された駆動装置100の動作を説明する。
駆動装置100の回転軸SFのうち負荷側である第一部分SFaに駆動対象を取り付けた後、駆動部ACが回転軸SFをθZ方向に回転させる。この動作により、回転軸SFの回転が駆動対象に伝達される。
【0045】
一方、上記回転軸SFの回転動作により、回転軸SFの回転が第二部分SFbを介してエンコーダECの回転部20に伝達され、回転部20が回転する。回転部20の回転により、当該回転部20に保持された磁石11がθZ方向に回転する。磁石11の回転により、磁気パターン11pがθZ方向に移動する。
【0046】
磁気センサ32では、磁気パターン11pの移動による磁場の変化を検出する。図5は、磁気センサ32における検出結果の一例を示すグラフである。グラフの縦軸は検出信号の大きさであり、グラフの横軸は位相である。なお、図5では、回転軸SFが一回転(360°回転)したときの検出結果を示している。
【0047】
図5に示すように、θZ方向に90°ずれて配置された2つの磁気センサ32において、位相が90°ずれた2つの正弦波信号として磁場の変化が検出されている。この検出信号により、1回転以内の回転角度と回転軸の回転方向を検出することができる。
【0048】
本実施形態では、高精度な検出を可能とするため、磁気センサ32による検出結果が正弦波信号となるように、磁石11の磁気パターン11pが形成されている。一例として、隙間27aにおける磁束分布が平行分布となるように磁石11を予め着磁しておくことにより、上記のような正弦波信号の検出結果を得ることができる。
【0049】
なお、エンコーダECの構成として、仮に、磁石11が第一磁気回路部23や第二磁気回路部24などの磁気回路部から分離され、磁性体で構成された磁気回路部を固定して磁石11のみを単独で回転させる構成とした場合、磁性体によって形成された磁気回路部においては、磁石11の回転(特に、高速回転)による磁場の変化を打ち消す方向に磁場を発生させようとする作用が生じる。このため、磁気回路部の内部には渦電流が生じる。この渦電流により発生した起磁力により、磁石11による磁場が乱されてしまう。
【0050】
したがって、磁石11と磁気回路部とを分離させ、磁気回路部を固定させて磁石11のみを回転させる構成では、磁石11と磁気回路部との間に磁気センサ32を配置させて磁場を検出する場合において、正確な検出が困難となるおそれがある。
【0051】
これに対して、本実施形態に係るエンコーダECは、回転部20に設けられる凹部27の側面に磁石11が配置され、磁性体を用いて一部材として形成された回転部20と磁石11とが回転軸SFと共に一体的に回転する構成となっているため、回転部20に渦電流が生じることが無い。したがって、磁石11による磁場が乱されることが無い。これにより、磁気センサ32を凹部27の側面に対向させて磁石11による磁場を検出する構成において、検出精度の低下を抑制(又は低減)することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、高精度を有するエンコーダECを提供することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るエンコーダECは、磁性体で形成された回転部20に磁石11が取り付けられているため、当該回転部20が磁石11に対して磁気シールドとして機能することになる。これにより、外部からの磁気変化の影響に対して検出信号が影響を受けにくくなるため、検出精度の低下を抑制(又は低減)することができる。
【0053】
また、駆動装置100においては、回転軸SFの回転に伴い、回転軸SFの潤滑油がミスト状又は飛沫となって回転軸SFを+Z方向に流れてくる場合がある。このような流体がエンコーダECの内部に浸入し、磁場形成部10に到達すると、磁場が乱され検出精度の低下を引き起こす場合がある。これに対して、本実施形態では、回転部20の−Z側にラビリンス部60が形成されているため、当該流体の移動を規制(又は低減)することができる。これにより、本実施形態のエンコーダECは、検出精度の低下を防ぐことができる。
【0054】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、第一ラビリンス形成部25、第二ラビリンス形成部26及び突出部41aによってラビリンス部60が形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図6に示すように、第一磁気回路部23及び第一ラビリンス形成部25を囲う第一円筒部32cが設けられた構成であっても構わない。
【0055】
第一円筒部32cは、磁気センサ32の支持部32bの外周部分に接続されており、第一磁気回路部23及び第一ラビリンス形成部25との間に隙間を空けて設けられている。この構成により、第一円筒部32cと第一磁気回路部23及び第一ラビリンス形成部25との間にラビリンス部61が形成されることになる。
【0056】
また、上記実施形態では、磁場形成部10の磁気回路部として、第一磁気回路部23及び第二磁気回路部24が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、第一磁気回路部23及び第二磁気回路部24のうち、磁石11が配置される第一磁気回路部23のみが設けられ、第二磁気回路部24が省略された構成であっても構わない。この場合、第一磁気回路部23によって形成される円筒の内部が凹部27となり、第一磁気回路部23の内周面が凹部27の側面となる。
【0057】
また、図6に示すように、第二磁気回路部24の内側に第二円筒部32dが設けられた構成であっても構わない。第二円筒部32dは、磁気センサ32の支持部32bの内周部分に接続されており、第二磁気回路部24との間に隙間を空けて設けられている。この構成により、第二円筒部32dと第二磁気回路部24との間にラビリンス部62が形成されることになる。
【0058】
上記実施形態に記載のラビリンス部60と共に、ラビリンス部61及び62が設けられることにより、回転軸SFからの流体が磁気形成部10(磁石11)に到達するのを防ぐことが可能となる。なお、図6では第一円筒部32c及び第二円筒部32dの両方が設けられた構成が示されているが、第一円筒部32c及び第二円筒部32dのうちいずれか一方のみが形成された構成であっても構わない。
【0059】
また、上記実施形態においては、磁石11が凹部27の側面として第一磁気回路部23の内周面23bに接着された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図7に示すように、磁石11が凹部27の側面として第二磁気回路部24の外周面24aに取り付けられた構成であっても構わない。
【0060】
図7に示すように、第二磁気回路部24の外周面24aには、磁石11の内周面11bが不図示の接着剤を介して接着されている。また、磁気センサ32のセンサ本体32aは、磁石11の外周面11aと第一磁気回路部23の内周面23bとの間に挿入されている。したがって、磁気センサ32のセンサ本体32aは、磁石11と対向して配置される。
【0061】
この場合であっても、上記実施形態と同様、回転部20と磁石11とが回転軸SFと共に一体的に回転する構成となるため、回転部20に渦電流が生じることが無い。したがって、磁石11による磁場が乱されることが無い。これにより、本実施形態におけるエンコーダECは、磁気センサ32を凹部27の側面に対向させて磁石11による磁場を検出する構成において、検出精度の低下を防ぐことが可能となる。
【0062】
また、上記実施形態では、磁場形成部10が1つの磁石11を有する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図8及び図9に示すように、磁場形成部10が2つの磁石(磁石11及び磁石12)を有する構成であっても構わない。
【0063】
図8及び図9に示すように、磁場形成部10は、凹部27の側面として第一磁気回路部23の内周面23bに磁石11が取り付けられると共に、凹部27の側面として第二磁気回路部24の外周面24aに磁石12が取り付けられている。この場合、磁石11については上記実施形態と同様の配置である。また、磁石12については、第二磁気回路部24の外周面24aには、磁石12の内周面12bが不図示の接着剤を介して接着されている。磁気センサ32のセンサ本体32aは、磁石11の内周面11bと磁石12の外周面12aとの間に挿入されている。
【0064】
図9に示すように、磁石11は、上記実施形態と同様、例えば図9の−X側半分の領域がN極に着磁されており、図9の+X側半分の領域がS極に着磁されている。この場合、磁石11には、N極及びS極の磁気パターン11pが円筒面である内周面11bに沿って形成されている。また、磁石12は、例えば図9の+X側半分の領域がN極に着磁されており、図9の−X側半分の領域がS極に着磁されている。この場合、磁石12には、N極及びS極の磁気パターン12pが円筒面である外周面12aに沿って形成されている。
【0065】
この場合であっても、上記実施形態と同様、回転部20と磁石11及び12とが回転軸SFと共に一体的に回転する構成となるため、回転部20に渦電流が生じることが無い。したがって、磁石11及び12による磁場が乱されることが無い。これにより、本実施形態のエンコーダECは、磁気センサ32を凹部27の側面に対向させて磁石11及び12による磁場を検出する構成において、検出精度の低下を低減することが可能となる。また、磁石11及び磁石12のいずれか一方に対して回転軸SFからの流体が到達する場合であっても、他方の磁場を検出することができるため、検出精度が低下しにくい構成となる。
【0066】
また、上記実施形態においては、磁石11が一部材として形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図10に示すように、凹部27の側面(第一磁気回路部23の内周面23b)に配列された複数の単位磁石13を組み合わせて形成される磁石14が用いられた構成であっても構わない。
【0067】
図10に示すように、単位磁石13は、一の円筒が周方向に八等分された形状に形成されている。このような円弧状の単位磁石13が第一磁気回路部23の内周面23bに沿って配置されている。しかしながら、上記した一体形の円筒形状の磁石(例、磁石11及び12)は、製造コストが高く、同心寸法や真円寸法の確保が難しい場合がある。
【0068】
これに対して、図10に示す磁石14は、分割された形状の単位磁石13が複数配置されることで一体型の円筒形状の磁石11と同様の磁気パターンが形成される。このため、製造コストを抑えることができ、容易に製造することができる。なお、一体型の円筒形状の磁石11と同様の磁気パターンを形成するためには、単位磁石13を組み合わせた磁石14と第二磁気回路部24との隙間における磁束分布が平行分布となるように個々の単位磁石13を着磁させるようにする。
【0069】
また、上記実施形態では、回転軸SFからの流体の移動を規制する規制部として、ラビリンス部60などが形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図11に示すように、流体(例、グリース等)に含まれる磁性体(例、鉄粉等)の移動を規制(又は低減)する磁石が設けられた構成であっても構わない。
【0070】
図11に示すように、第二ラビリンス形成部26の外周面26aには、磁石15が設けられている。磁石15は、第二ラビリンス形成部26の外周面26aに沿って円筒状に形成されている。磁石15の内周面は、不図示の接着剤を介して当該外周面26aに接着されている。当該磁石15は、ラビリンス部60に配置されている。
【0071】
磁石15が設けられることにより、鉄粉などの磁性粉を含む流体がラビリンス部60に進入しようとする場合であっても、当該流体に含まれる磁性粉を磁石15に吸着させることができる。このため、磁性粉が磁石11に到達するのを防ぐことができるので、磁気検出部の検出精度が低下するのを防ぐことができる。これにより、鉄粉などの磁性粉を含む流体(例、油や冷却水)の中でもエンコーダECを用いることが可能となる。このように、鉄粉などの磁性粉を含む流体(例、油や冷却水)の中においてエンコーダECを用いる場合、上記した検出部(例、磁場検出部30)や制御部は、防水加工、防油加工やモールド加工が行われる。
【0072】
このように流体に含まれる磁性粉を吸着させる磁石は、ラビリンス部60もしくはラビリンス構造を有する部分のどの部分に設けられていても構わない。例えば、図11に示すように、基材41の突出部41aの外周面41bに磁石16が設けられた構成であっても構わない。磁石16は、外周面41bに沿って円筒状に形成されている。磁石16の内周面は、不図示の接着剤などを介して突出部41aの外周面41bに接着されている。磁石16が設けられることにより、ラビリンス部60を通過する流体に含まれる磁性粉が吸着される。
【0073】
また、図11に示すように、磁場検出部30の磁気センサ32に設けられた構成であっても構わない。磁気センサ32の支持部32bのうちセンサ本体32aの外側には磁石17が設けられている。また、支持部32bのうちセンサ本体32aの内側には磁石18が設けられている。このように、磁気センサ32と回転部20との間でラビリンス構造が形成されている部分に磁石17及び18を配置させることで、当該ラビリンス構造に進入しようとする流体に含まれる磁性粉を吸着させることができる。
【0074】
また、上記実施形態において、ラビリンス部60や回転部20と磁気センサ32との間のラビリンス構造を得るための寸法は、例えば0.1mm〜0.3mm程度とすることができる。このような寸法のラビリンス部60等を実現するため、エンコーダECを組み立てる際に、所期の寸法が確保されているかどうか確認することが必要となる。
【0075】
そこで、上記実施形態の構成に加えて、例えば図12に示すように、当該寸法が確保されているかどうか確認するため、基板31に貫通孔35を設けておく構成としても構わない。図12では、回転部20と磁気センサ32との間で形成されるラビリンス構造を確認するための貫通孔35を例に挙げて説明する。
【0076】
貫通孔35は、磁場形成部10(磁石11)の支持位置を露出する位置に設けられている。図12では、例えば第一磁気回路部23、磁石11、第二磁気回路部24の+Z側の端面を露出する位置に形成されている。なお、図12では、磁気センサ32のセンサ本体32aを露出する位置に設けられた構成となっているが、センサ本体32aについては露出していなくても構わない。
【0077】
貫通孔35からは、磁石11とセンサ本体32aとの隙間G1と、センサ本体32aと第二磁気回路部24との隙間G2の寸法を確認することができる。センサ本体32aが露出していない場合については、隙間G1及びG2の寸法を計算で求めるようにしても構わない。
【0078】
貫通孔35は1個に限られず、磁石11の周方向に沿って複数設けられた構成であっても構わない。なお、基板31には、光を透過可能な材料(樹脂、ガラスなど)を用いて形成され貫通孔35を塞ぐ閉塞部36が設けられた構成であっても構わない。この場合、塵埃や、油、オイルミストの侵入を防ぐことができる。
【0079】
なお、上記実施形態においては、磁石11として、等方性磁石や異方性磁石などを使用することができる。また、磁石11の材料としては、例えばNeFeB磁石をナイロンで成型した磁石を用いることができる。また、磁石11の材料として、NeFeB系磁石の他、SmCo系磁石やフェライト系磁石などを用いることができる。また、回転部20を構成する磁性体として、例えばSS400、SS41やSS45Cなどの磁性体を用いることができる。
【0080】
また、本実施形態におけるエンコーダECは、磁性体で構成される凹部27の内側(例、内周面)の側面に磁石11を配置し、その側面に対向して磁気センサ32が配置された突出部41aを設けることによって、上記した渦電流を低減させることやラビリンス効果による流体の移動を規制することができる。このように、本実施形態におけるエンコーダECは、凹部27のうち磁石11が配置される部分と突出部41aのうち磁気センサ32が配置される部分とによってラビリンスを構成している。また、本実施形態における凹部27の開口方向と突出部41aの突出方向とは、回転軸SFの軸方向と平行である。そして、磁石11は該凹部27の側面に配置され、磁気センサ32は突出部41aに配置されるので、本実施形態のエンコーダECは、回転軸SFの軸方向のギャップ変動が生じた場合であっても、検出精度の低下を低減することができる。また、ラビリンス部60や回転部20と磁気センサ32との間のラビリンス構造の形状は、上記実施形態のような断面視U字状に限られず、他の形状であっても構わない。このような他の構成としては、例えば、上記のU字状の形状が組み合わされた構成などが挙げられる。また、本実施形態によれば、電気自動車などに使用される高速回転用駆動装置の角度検出器や回転速度検出器として、高精度、高応答性、や高信頼性を有するエンコーダECを提供できる。
【符号の説明】
【0081】
EC…エンコーダ SF…回転軸 AC…駆動部 10…磁場形成部 11…磁石 11p…磁気パターン 11a…外周面 11b…内周面 13…単位磁石 14〜18…磁石(第二磁石、第三磁石、第四磁石) 20…回転部 23…第一磁気回路部 23a…内周面 23b…内周面 24…第二磁気回路部 24a…外周面 25…第一ラビリンス形成部 26…第二ラビリンス形成部 27…凹部 30…磁場検出部 32…磁気センサ 35…貫通孔 36…閉塞部 40…固定部 60〜62…ラビリンス部 100…駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気パターンを形成する磁石を有する磁場形成部と、
少なくとも一部が磁性体で構成される凹部を有し、前記凹部の側面に前記磁場形成部が配置され、測定対象の回転軸と一体的に回転する回転部と、
前記凹部の側面に対向して配置され、前記磁気パターンによる磁場を検出する磁場検出部と、
を備えるエンコーダ。
【請求項2】
前記凹部は、前記回転軸の軸方向に開口部を有する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記磁石と前記磁場検出部とは、前記回転軸の軸方向と直交する方向に対向させて配置される、
請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記凹部は、前記磁性体で構成される第一磁気回路部を有する、
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記凹部は、前記第一磁気回路部と対向して形成され、前記磁性体で構成される第二磁気回路部を有する
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記磁場検出部は、前記第一磁気回路部と前記第二磁気回路部との間に配置される、
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記磁石と対向するように前記回転軸の軸方向に延伸した突出部を備え、
前記磁場検出部は、前記突出部の側面に配置される、
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記凹部の側面と前記突出部の側面とは、互いに平行である、
請求項7に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記回転部に設けられ、前記回転軸から前記磁場形成部への流体の移動を規制する規制部を備える
請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記規制部は、前記回転軸の周面を囲う第一ラビリンス形成部を有する
請求項9に記載のエンコーダ。
【請求項11】
前記規制部は、前記流体に含まれる磁性体を吸着させる第二磁石を有する、
請求項9又は請求項10に記載のエンコーダ。
【請求項12】
前記磁場検出部を前記測定対象に固定する固定部を備え、
前記固定部は、前記固定部と前記回転部とでラビリンス構造を形成する第二ラビリンス形成部を有する、
請求項1から請求項11のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項13】
前記第二ラビリンス形成部は、前記流体に含まれる磁性体を吸着させる第三磁石を有する、
請求項12に記載のエンコーダ。
【請求項14】
前記磁場検出部は、前記流体に含まれる磁性体を吸着させる第四磁石を有する、
請求項1から請求項13のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項15】
前記磁石は、前記凹部の側面に配列された複数の単位磁石を有する、
請求項1から請求項14のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項16】
前記測定対象との間で前記磁場形成部及び前記回転部を挟む位置に配置された基板を備え、
前記基板は、前記磁場形成部の支持位置を露出する貫通孔を有する、
請求項1から請求項15のうちいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項17】
前記基板は、光を透過可能な材料を用いて形成され前記貫通孔を塞ぐ閉塞部を有する、
請求項16に記載のエンコーダ。
【請求項18】
請求項1から請求項17のうちいずれか一項に記載のエンコーダと、
前記回転軸を回転させる駆動部と、
を備える駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−230083(P2012−230083A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100139(P2011−100139)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】