説明

エンコーダ装置、及び装置

【課題】基準位置を高精度に検出する。
【解決手段】エンコーダ装置は、基準位置を示す基準位置パターンと位置情報パターンとを有するスケールと、スケールに光を照射する光源と、光を変調させる変調信号を生成する変調部と、変調信号に基づいて変調された変調光によって位置情報パターンを検出した位置情報信号に基づいて、スケールの位置情報を検出する位置情報検出部と、変調光によって基準位置パターンを検出した検出信号を出力する基準位置受光部と、検出信号に基づいて、基準位置を検出する基準位置検出部と、を備え、基準位置検出部は、光を変調することによって生じる基準位置の変位を補正する補正部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ装置、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報を検出する機能とともに、基準位置(例えば原点位置など)を検出する機能を備えたエンコーダ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなエンコーダ装置は、例えば、位置情報を検出するためのスケールに、位置情報を検出するための主信号トラックに併設して、原点位置を検出する原点マークが配置される。この原点マークに、レーザダイオードなどの光源から光を照射して、原点検出用受光素子によって検出された信号に基づいて生成された信号(例えば、三角波状の信号における頂点の位置)によって、原点位置を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−207627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、エンコーダ装置では、例えば、レーザダイオードの電流を変調して内挿をおこなう場合(例えば、波長変調型のエンコーダである場合)がある。このような場合に、エンコーダ装置は、電流を変調したレーザダイオードからの光を原点位置の検出に用いているために、検出した信号が変調信号によって増減し、原点位置の検出精度が低下する場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、基準位置を高精度に検出することができるエンコーダ装置、及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一実施形態は、基準位置を示す基準位置パターンと位置情報パターンとを有するスケールと、前記スケールに光を照射する光源と、前記光を変調させる変調信号を生成する変調部と、前記変調信号に基づいて変調された変調光によって前記位置情報パターンを検出した位置情報信号に基づいて、前記スケールの位置情報を検出する位置情報検出部と、前記変調光によって前記基準位置パターンを検出した検出信号を出力する基準位置受光部と、前記検出信号に基づいて、前記基準位置を検出する基準位置検出部と、を備え、前記基準位置検出部は、前記光を変調することによって生じる前記基準位置の変位を補正する補正部を備えることを特徴とするエンコーダ装置である。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、上記に記載のエンコーダ装置と、前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、を備えることを特徴とする装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基準位置を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるエンコーダ装置の光学系の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態におけるインデックス格子、スケール、及び受光部の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態におけるエンコーダ装置を示す概略ブロック図である。
【図4】第1の実施形態における原点検出部を示す概略ブロック図である。
【図5】第1の実施形態における原点検出部の動作を示す波形図である。
【図6】第1の実施形態における原点信号Z_SIGの生成動作を示す波形図である。
【図7】第2の実施形態によるエンコーダ装置を示す概略ブロック図である。
【図8】第2の実施形態における原点検出部を示す概略ブロック図である。
【図9】第3の実施形態による駆動装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図10】第1の実施形態における原点検出部の変形例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるエンコーダ装置(位置検出装置)について図面を参照して説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるエンコーダ装置1の光学系4の構成を示す模式図である。また、図2は、インデックス格子5、スケール6、及び受光部7の構成を示す図である。
エンコーダ装置1は、例えば、波長変調型の回折干渉方式のエンコーダであり、所定の移動方向(例えば、X軸方向のような一方向)に移動するスケール6の位置情報(例えば、スケール6の移動方向、移動量、あるいは変位など)を検出する光学式エンコーダである。また、第1の実施形態によるエンコーダ装置1は、スケール6の基準位置(例えば、原点位置PZ)を検出する機能を有している。なお、本実施形態によるエンコーダ装置1の位置関係を説明するため、図1において、紙面の下方に向かう方向をY軸の正方向、紙面の右方向をX軸の正方向として、以下説明する。また、図2において、光源部2から照射方向(+Y軸方向)に向かってインデックス格子5、スケール6、及び受光部7を見た場合の図である。
【0012】
図1において、エンコーダ装置1は、光源部2、コリメータレンズ3、光学系4、スケール6、受光部7、及び信号処理部8を備えている。また、光学系4は、ガラスブロック41、及びインデックス格子5を備えている。
なお、光源部2、コリメータレンズ3、ガラスブロック41、インデックス格子5、及び受光部7は、検出ヘッド部9(検出ヘッド)に対応する。光源部2、コリメータレンズ3、ガラスブロック41、インデックス格子5、及び受光部7は、検出ヘッド部9に一体的に支持されている。また、検出ヘッド部9とスケール6とは、上述したX軸方向に、相対的に移動する。
【0013】
光源部2(光源)は、例えば、レーザ光を出射するレーザ素子であって、信号処理部8の後述する変調部81により変調されたコヒーレントな変調光を出射する。光源部2は、スケール6に光を照射する。
コリメータレンズ3は、光源部2が出射した変調光を受光し、Y軸方向の平行光に偏向する。コリメータレンズ3は、偏向した平行光を光学系4に照射する。
【0014】
ガラスブロック41は、コリメータレンズ3から照射された光のうちの少なくとも一部の光の光路長を変更する光路長変更部である。ガラスブロック41は、例えば、コリメータレンズ3とインデックス格子5との間に配置され、コリメータレンズ3から照射された光を透過させる。ガラスブロック41は、所定の屈折率N1を有し、コリメータレンズ3から照射された光の進行方向に、所定の厚さDを有する。
よって、ガラスブロック41を透過する光の光路長は、この屈折率N(例えば、屈折率N1)および厚さDの大きさに応じて、例えば空気中を透過する光の光路長に比べて長くなる。つまり、ガラスブロック41は、スケール6に照射される光の光路長を相対的に変更することができる。
【0015】
インデックス格子5は、例えば、格子状のパターンが形成された回折格子であって、X軸方向に沿って周期的に形成された回折パターンを有する透過型の回折格子である。インデックス格子5は、コリメータレンズ3とスケール6との間に配置され、入射光に基づいて回折光を生成し、生成した回折光をスケール6に照射する。
【0016】
なお、インデックス格子5は、図2(a)に示すように、スケール6の位置情報を検出するための回折格子パターンである位置パターンスリット53と、原点位置PZを検出するためのスリットパターンである原点パターン50とを有している。また、原点パターン50は、ランダムパターンによって形成されたランダムパターンスリット(51、52)を有している。
ランダムパターンスリット(51、52)は、スケール6が原点位置PZである場合に、後述するスケール6の原点パターン60におけるランダムパターン(61、62)に対応する位置にスリットが配置されるように形成されている。
【0017】
スケール6は、インデックス格子5と受光部7との間に配置され、光源部2、ガラスブロック41、インデックス格子5及び受光部7に対して相対的に移動する。ここでは、一例として、検出ヘッド部9(光源部2、ガラスブロック41、インデックス格子5及び受光部7)が固定され、スケール6が移動方向(例えば、X軸方向)に移動する。
また、スケール6は、図2の(b)に示すように、位置検出に使用されるスケールであって、位置情報を検出するための位置パターン63(位置情報パターン)とスケール6の基準位置(一例として、原点位置PZ)を示す基準位置パターン(原点パターン60)とを有している。
【0018】
原点パターン60は、スケール6の原点位置PZを示す基準位置パターンであり、光源部2からコリメータレンズ3を介して照射された変調光を透過するように形成されている。また、原点パターン60は、矩形上の透過部の左右にランダムパターン(61、62)を備えている。このランダムパターン(61、62)は、上述したように、スケール6が原点位置PZである場合に、インデックス格子5のランダムパターンスリット(51、52)とランダムパターン(61、62)のスリットとが一致するように配置されている。
【0019】
位置パターン63は、位置情報を検出するためのパターンであり、光源部2からコリメータレンズ3を介して照射された変調光を透過するように形成されている。また、位置パターン63は、スケール6の移動方向(例えば、X軸方向)に沿って周期的に形成された回折パターンが形成された回折格子である。
なお、位置パターン63は、ガラスブロック41を介した回折光と、ガラスブロック41を介していない回折光との干渉光を受光部7に射出する。
【0020】
受光部7は、受光面が光源部2と対向して配置され、光源部2からコリメータレンズ3、インデックス格子5及びスケール6を介して照射された変調光を受光し、光電変換した信号(後述する位置情報信号及び検出信号)を信号処理部8に出力する。また、受光部7は、図2(c)に示すように、変調光によって原点パターン60を検出した検出信号を出力する原点受光部70と、変調光によって位置パターン63を検出した位置情報信号を出力する主信号受光部73とを有している。
【0021】
原点受光部70は、原点位置PZに対して互いに異なる信号レベルに遷移する信号である第1信号Z及び第2信号Zを検出信号として出力する。原点受光部70は、原点受光素子(71、72)を有している。原点受光素子(71、72)は、インデックス格子5の原点パターン50に対応した位置に配置されている。
原点受光素子71は、光源部2から照射された変調光がランダムパターンスリット51を介して原点パターン60を透過した光を受光(検出)し、第1信号Z(検出信号)を出力する。また、原点受光素子72は、光源部2から照射された変調光がランダムパターンスリット52を介して原点パターン60を透過した光を受光(検出)し、第2信号Z(検出信号)を出力する。
なお、第1信号Zは、上述したランダムパターンスリット51及びランダムパターン61によって、原点位置PZに対して、異なる信号レベルに急峻に遷移する。また、第2信号Zは、上述したランダムパターンスリット52及びランダムパターン62によって、原点位置PZに対して、異なる信号レベルに急峻に遷移する。
【0022】
主信号受光部73は、スケール6の移動方向(X軸方向)に対して、信号レベルが周期的に変動する(例えば、正弦波状に変動する)位置情報信号を出力する。主信号受光部73は、主信号受光素子(73a、73b)を有している。主信号受光素子(73a、73b)は、それぞれ位置パターン63の異なる位置から射出した上述した干渉光を受光し、干渉光の干渉強度を示す光電変換信号を位置情報信号として出力する。
【0023】
信号処理部8は、光源部2が照射する変調光を周期的に変調する。また、信号処理部8は、受光部7が出力する上述した検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて、スケール6の原点位置PZを検出する信号処理と、上述した位置情報信号に基づいて、スケール6の位置情報を検出する信号処理を実行する。信号処理部8の構成の詳細については、図3を参照して後述する。
【0024】
次に、本実施形態における信号処理部8の構成について説明する。
図3は、本実施形態におけるエンコーダ装置1を示す概略ブロック図である。
図3において、図1及び図2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図3において、光学系4は、原点光学系42及び主信号光学系43を有している。ここで、インデックス格子5の原点パターン50(ランダムパターンスリット(51、52))とスケール6の原点パターン60とが原点光学系42に対応する。また、ガラスブロック41と、インデックス格子5の位置パターンスリット53と、スケール6の位置パターン63とが主信号光学系43に対応する。
【0025】
図3において、信号処理部8は、変調部81、ドライブ部82、内挿回路部83、及び原点検出部90を備えている。
変調部81は、光の波長を周期的に変調させる変調信号を生成する。すなわち、変調部81は、スケール6に(位置パターン63と原点パターン50とに)照射する光を変調する変調信号を生成する。変調部81は、例えば、正弦波状に変調した変調信号を生成する。変調部81は、生成した変調信号をドライブ部82、内挿回路部83、及び原点検出部90に供給する。
【0026】
ドライブ部82は、変調部81から供給された変調信号に応じて、光源部2に供給する電流を変動させる。ここで、光源部2に供給する電流が変動されると、光源部2は、照射光の波長及び光量が変動(変化)する。
【0027】
内挿回路部83(位置情報検出部)は、変調信号に基づいて変調された変調光によって位置パターン63を検出した位置情報信号に基づいて、スケール6の位置情報を検出する。すなわち、内挿回路部83は、主信号受光部73から出力された位置情報信号に基づいて、内挿処理を行うエンコード回路である。なお、主信号受光部73から出力された位置情報信号には、変調光の光量変化による変調周波数成分が重畳されている。そのため、内挿回路部83は、例えば、変調部81から供給された変調信号と、主信号受光部73から出力された位置情報信号とに基づいて、内挿処理を行う。内挿回路部83は、変調信号を用いた同期検波回路によって内挿処理を行い、スケール6の位置情報を検出する。
ここで、位置情報とは、例えば、スケール6の移動方向、移動量、あるいは変位を含むものである。このような内挿回路部83による位置情報の検出方法は、例えば、「米国特許第6,639,686明細書」の信号処理方法を利用することができる。
【0028】
原点検出部90(基準位置検出部)は、原点受光部70から出力された検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて、スケール6の原点位置PZを検出する。一例として、原点検出部90は、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて、スケール6の原点位置PZを示す二値化された原点信号Z_SIGを生成し、生成した原点信号Z_SIGを出力する。また、原点検出部90は、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて、原点位置PZの近傍の位置であり、原点信号Z_SIGが有効であること示す原点有効信号Z_VALIDを生成し、生成した原点有効信号Z_VALIDを出力する。
なお、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)は、変調光の光量変化による変調周波数成分が重畳されている。そのため、原点検出部90は、検出した原点位置PZの変調による変位を補正する変調補正部93(後述する図4参照)を備えている。本実施形態では、原点検出部90の変調補正部93は、変調部81から供給された変調信号をもとに生成した補正信号に基づいて、光を変調することによって(変調光によって)生じる原点位置PZの変位を補正する。
【0029】
次に、本実施形態における原点検出部90の構成について説明する。
図4は、本実施形態における原点検出部90を示す概略ブロック図である。
図4において、原点検出部90は、差動回路部91、コンパレータ部(92、95)、変調補正部93、及び加算回路部94を備えている。なお、本実施形態による原点検出部90は、変調部81から供給された変調信号に基づいて、コンパレータ部92の基準電圧である閾値電圧を変更する一実施形態について説明する。
【0030】
加算回路部94は、例えば、抵抗R1〜R3、及びオペアンプ(演算増幅器)87を有する反転加算回路である。加算回路部94は、第1信号Zと第2信号Zとを加算して反転した信号(−(Z+Z))を生成し、コンパレータ部95に出力する。
抵抗R1は、第1信号Zの検出信号線とオペアンプ87の反転入力端子(−(マイナス))との間に接続され、抵抗R2は、第2信号Zの検出信号線とオペアンプ87の反転入力端子(−)との間に接続されている。また、抵抗R3は、オペアンプ87の出力端子とオペアンプ87の反転入力端子(−)との間に接続され、オペアンプ87に負帰還をかけている。なお、オペアンプ87の非反転入力端子(+(プラス))は、接地されている。ここで、抵抗R1〜R3は、例えば、同じ抵抗値を持つ。
【0031】
コンパレータ部95は、加算回路部94によって生成された信号(−(Z+Z))を予め定められた閾値電圧Vに基づいて、二値化するコンパレータ(比較器)である。コンパレータ部95は、信号(−(Z+Z))を二値化した反転信号を生成し、生成した反転信号を原点有効信号Z_VALIDとして出力する。コンパレータ部95は、例えば、抵抗(R6、R7)、及びオペアンプ88を有している。
【0032】
オペアンプ88は、コンパレータとして機能し、反転入力端子(−)がオペアンプ87の出力端子に、非反転入力端子(+)が抵抗R6を介してノードAに、それぞれ接続されている。また、オペアンプ88は、抵抗R7を介して、出力端子と非反転入力端子(+)とが接続され、正帰還がかけられている。
抵抗(R6、R7)は、原点有効信号Z_VALIDを二値化するために、抵抗(R4、R5)によって生成される閾値電圧Vにヒステリシスを付加している。なお、閾値電圧Vは、抵抗(R4、R5)の抵抗分圧により生成され、例えば、第1信号Z及び第2信号Zの出力電圧レベルである(+V)及び(−V)の中間値を示す電位が設定されている。
【0033】
差動回路部91は、例えば、抵抗R8〜R11、及びオペアンプ84を有する差動増幅回路である。差動回路部91は、第1信号Zから第2信号Zを減算した信号(Z−Z)を生成し、コンパレータ部92に出力する。なお、信号(Z−Z)は、原点受光部70の検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて生成されたスケール6の原点位置を示す信号である。すなわち、差動回路部91は、第1信号Z及び第2信号Zの差分によって、原点位置PZを示す信号を生成する。
【0034】
抵抗R8は、第1信号Zの検出信号線とオペアンプ84の反転入力端子(−)との間に接続され、抵抗R9は、第2信号Zの検出信号線とオペアンプ84の非反転入力端子(+)との間に接続されている。また、抵抗R10は、オペアンプ84の出力端子とオペアンプ84の反転入力端子(−)との間に接続され、オペアンプ84に負帰還をかけている。また、オペアンプ84の非反転入力端子(+)は、抵抗R11を介して接地されている。ここで、抵抗R8〜R11は、例えば、同じ抵抗値を持つ。
【0035】
なお、本実施形態のように光源変調を行う場合には、第1信号Z、第2信号Z、及び信号(Z−Z)にも光量変化による変調周波数成分が重畳される。ここでは、第1信号Z、第2信号Z、又は信号(Z−Z)に重畳される変調周波数成分を変調ノイズと呼ぶことにする。この変調ノイズは、光源変調と同一の(光源変調とほぼ同一の)周波数で時間とともに信号レベルが変動する信号である。
【0036】
変調補正部93(補正部)は、例えば、抵抗(R14、R15)、及びオペアンプ86を有する反転増幅回路である。変調補正部93は、光を変調することによって(変調光によって)生じる原点位置PZの変位を補正する。例えば、変調補正部93は、変調部81から出力された変調信号に基づく光の光量変化によって生じる原点位置PZの変位を補正する。本実施形態では、変調補正部93は、変調部81から出力された変調信号を反転増幅して補正信号を生成し、生成した補正信号をコンパレータ部92の閾値電圧(所定の閾値)として供給する。つまり、変調補正部93は、生成した補正信号に応じて、コンパレータ部92の閾値を変更する。これにより、変調補正部93は、光を変調することによって(変調光によって)生じる原点位置PZの変位を補正する。すなわち、変調補正部93は、変調信号をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。なお、この原点位置PZの変位は、光を変調することによって(変調光によって)生じる変位であり、上述した変調ノイズによって発生する変位である。
【0037】
抵抗R14は、変調信号の信号線とオペアンプ86の反転入力端子(−)との間に接続され、抵抗R15は、オペアンプ86の出力端子とオペアンプ86の反転入力端子(−)との間に接続され、オペアンプ86に負帰還をかけている。なお、抵抗R14及び抵抗R15の抵抗値(R14、R15)は、変調光によって生じる原点位置PZの変位を補正するように、所定の値に設定されている。抵抗値R14及び抵抗値R15の詳細については、後述する。
【0038】
コンパレータ部92(二値化部)は、差動回路部91によって生成された信号(Z−Z)を所定の閾値に基づいて二値化するコンパレータ(比較器)である。すなわち、コンパレータ部92は、原点受光部70の検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて生成されたスケール6の原点位置PZを示す信号を、所定の閾値(補正信号の電圧)に基づいて二値化する。コンパレータ部92は、信号(Z−Z)を二値化した反転信号を生成し、生成した反転信号を原点信号Z_SIGとして出力する。なお、上述したように、二値化に使用される所定の閾値は、変調補正部93によって、変調信号に基づいて生成された補正信号に応じて変更される。そのため、コンパレータ部92は、変調光によって生じる原点位置PZの変位を低減した原点信号Z_SIGとして出力する。
【0039】
また、コンパレータ部92は、例えば、抵抗(R12、R13)、及びオペアンプ85を有している。
オペアンプ85は、コンパレータとして機能し、反転入力端子(−)がオペアンプ84の出力端子に、非反転入力端子(+)が抵抗R12を介してオペアンプ86の出力端子に、それぞれ接続されている。また、オペアンプ85は、抵抗R13を介して、出力端子と非反転入力端子(+)とが接続され、正帰還がかけられている。なお、ここで、オペアンプ85の非反転入力端子(+)をノードBとし、ノードBにおける電圧を電圧Vとして説明する。
抵抗(R12、R13)は、原点信号Z_SIGを二値化するために、変調補正部93によって生成される所定の閾値(補正信号の電圧)にヒステリシスを付加している。このヒステリシスは、コンパレータ部92の出力である原点信号Z_SIGに、チャタリングが生じることを抑えている。ここで、例えば、コンパレータ部92の正の出力電圧を電圧VOUTとした場合におけるヒステリシスを付加した閾値電圧Vは、下記の式(1)によって示される。
【0040】
【数1】

【0041】
ここで、R12は抵抗R12の抵抗値、R13は抵抗R13の抵抗値である。
すなわち、検出ヘッド部9に対して、スケール6を+X軸方向に移動させた場合、信号(Z−Z)が電圧Vに達すると、原点信号Z_SIGが、信号レベルH(High:ハイ)から信号レベルL(Low:ロウ)に遷移する。
【0042】
次に、抵抗R14及び抵抗R15の抵抗値について説明する。
まず、変調部81によって変調された光源部2から照射される変調光の光量Iの変化(変動)は、式(2)によって示される。
【0043】
【数2】

【0044】
ここで、Aは光量の平均値、mは変調度、ωは変調角周波数にそれぞれ対応する。また、R14は抵抗R14の抵抗値、R15は抵抗R15の抵抗値である。
上述した変調ノイズを含まない場合における原点受光部70の出力である第1信号ZL0及び第2信号ZR0に対して、変調ノイズを含む場合における第1信号Z及び第2信号Zは、式(3)及び式(4)によって示される。
【0045】
【数3】

【0046】
【数4】

【0047】
また、式(3)及び式(4)により、信号(Z−Z)は、式(5)として示される。
【0048】
【数5】

【0049】
この式(5)により、変調ノイズを含む場合における信号(Z−Z)は、信号(ZR0−ZL0)に比例することがわかる。ここで、変調ノイズを含まない場合に、コンパレータ部92の出力である原点信号Z_SIGが反転する位置は、信号(ZR0−ZL0)が上述した式(1)により示される閾値電圧Vと等しくなる点である。そこで、(ZR0−ZL0)=Vとおくと、下記の式(6)が得られる。
【0050】
【数6】

【0051】
また、変調補正部93は、抵抗R14と抵抗R15との抵抗値の比率によって、変調信号(Vsinωt)を反転増幅した信号をコンパレータ部92の抵抗R12の一端に供給する。すなわち、変調補正部93は、原点位置PZの変位(微小なズレ)を補正するために、原点検出部90に変調信号を導入する。この場合、ノードBにおける電圧を電圧Vは、下記の式(7)で示される。
【0052】
【数7】

【0053】
式(6)及び式(7)に基づいて、抵抗R14及び抵抗R15の抵抗値(R14、R15)は、下記の式(8)を満たすように設定されている。
【0054】
【数8】

【0055】
すなわち、抵抗値R14及び抵抗値R15は、原点位置PZの近傍における電圧Vの変動(変化)が信号(Z−Z)に含まれ変調ノイズと等しくなるように設定される。つまり、変調補正部93は、信号(Z−Z)に含まれ変調ノイズを打ち消すように、コンパレータ部92の閾値を変更する補正信号を生成する。
なお、抵抗値R14及び抵抗値R15は、負の値をとらないので変調信号の振幅Vが負の値である。すなわち、光源を変調させる変調信号に対して抵抗R14に供給される変調信号は位相が反転している必要がある。
【0056】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1の原点位置PZの検出動作について説明する。
図5は、本実施形態における原点検出部90の動作を示す波形図である。
図5において、各グラフの横軸は、移動方向(検出方向)におけるスケール6の位置Xを示し、縦軸は電圧を示している。また、図5(a)〜図5(f)に示す各波形は、順番に、第1信号Z、第2信号Z、信号(−(Z+Z))、信号(Z−Z)、原点有効信号Z_VALID、原点信号Z_SIGにそれぞれ対応する。
また、本実施形態では、検出ヘッド部9に対して、スケール6を+X軸方向に移動させた場合の一例について説明する。
【0057】
まず、図5(a)及び図5(b)を参照して、原点受光部70から出力される検出信号(第1信号Z、第2信号Z)について説明する。
検出ヘッド部9に対して、スケール6を+X軸方向に移動させた場合、ランダムパターン62が原点受光素子71と重なる位置P1において、原点受光素子71は、原点パターン60を透過した光源部2からの変調光を受光する。この場合、位置P1において、原点受光素子71は、変調光を受光して、図5(a)に示すように、検出信号として、例えば、第1信号Zを低い信号レベルから高い信号レベルに遷移させる。
【0058】
さらにスケール6を移動させた場合、スケール6の位置が原点位置PZに到達する。原点位置PZにおいて、ランダムパターン61の端が原点受光素子71と重なり、原点パターン60を透過した光源部2からの変調光が減少するため、原点受光素子71は、検出信号として、例えば、第1信号Zを高い信号レベルから低い信号レベルに遷移させる(図5(a))。
また、原点位置PZにおいて、ランダムパターン62が原点受光素子72と重なり、原点受光素子72は、原点パターン60を透過した光源部2からの変調光を受光する。この場合、原点位置PZにおいて、原点受光素子72は、変調光を受光して、図5(b)に示すように、検出信号として、例えば、第2信号Zを低い信号レベルから高い信号レベルに遷移させる。つまり、原点受光部70は、原点位置PZに対して互いに異なる信号レベルに遷移する信号である第1信号Z及び第2信号Zを検出信号として出力する。
【0059】
なお、原点位置PZにおいて、原点光学系42は、インデックス格子5のランダムパターンスリット(51、52)と、スケール6の原点パターン60におけるランダムパターン(61、62)とが一致した状態になる。そのため、第1信号Z及び第2信号Zは、原点位置PZにおいて、急峻な波形により遷移する。
【0060】
そして、さらにスケール6を移動させた場合、ランダムパターン61が原点受光素子72と重なる位置P2に到達する。この位置P2において、ランダムパターン61の端が原点受光素子72と重なり、原点パターン60を透過した光源部2からの変調光が減少するため、原点受光素子72は、検出信号として、例えば、第2信号Zを高い信号レベルから低い信号レベルに遷移させる(図5(b))。
【0061】
次に、原点検出部90が、上述した第1信号Z及び第2信号Zに基づいて、原点有効信号Z_VALID及び原点信号Zを生成する動作について説明する。
【0062】
<原点有効信号Z_VALIDの生成>
まず、原点検出部90の加算回路部94は、第1信号Zと第2信号Zとを加算して反転した信号(−(Z+Z))を生成し、コンパレータ部95に出力する。加算回路部94は、図5(c)に示すように、信号(−(Z+Z))を位置P1において高い信号レベルから低い信号レベルに遷移させ、位置P2において低い信号レベルから高い信号レベルに遷移させる。
【0063】
次に、コンパレータ部95は、信号(−(Z+Z))を二値化した反転信号を生成し、生成した反転信号を原点有効信号Z_VALIDとして出力する。なお、この二値化の際に使用されるコンパレータ部95の閾値は、抵抗(R4、R5)によって生成される閾値電圧Vに、抵抗(R6、R7)によりヒステリシスを付加した電圧(V±α)である。これにより、コンパレータ部95は、図5(e)に示すように、位置P1においてレベルLから信号レベルHに遷移し、位置P2において信号レベルHから信号レベルLに遷移する信号を、原点有効信号Z_VALIDとして出力する。
【0064】
ここで、原点有効信号Z_VALIDとは、スケール6の原点位置PZの近傍位置を示す信号であり、原点信号Z_SIGが有効か否かを示す信号である。原点有効信号Z_VALIDは、例えば、原点位置PZの近傍位置であり、原点信号Z_SIGが有効な場合に、信号レベルHに遷移する。また、原点有効信号Z_VALIDは、原点位置PZの近傍位置でない、原点信号Z_SIGが無効な場合に、信号レベルLに遷移する。
【0065】
なお、例えば、原点位置PZの近傍位置である場合とは、スケール6の移動方向(X方向)の位置範囲において、受光部7が、スケール6の原点位置PZに近い位置であり、例えば、位置P1から位置P2までの範囲のこと又は位置P1から位置P2までの範囲のうちの所定の点のことである。
【0066】
<原点信号Z_SIGの生成>
まず、原点検出部90の差動回路部91は、第1信号Zから第2信号Zを減算した信号(Z−Z)を生成し、コンパレータ部92に出力する。差動回路部91は、図5(d)に示すように、原点位置PZにおいて信号(Z−Z)を低い信号レベルから高い信号レベルに遷移させる。
【0067】
次に、コンパレータ部92は、信号(Z−Z)を二値化した反転信号を生成し、生成した反転信号を原点信号Z_SIGとして出力する。なお、コンパレータ部92(二値化部)は、差動回路部91によって生成された信号(Z−Z)を所定の閾値(補正信号の電圧)に基づいて二値化する。ここで、上述したように、二値化に使用される所定の閾値は、変調補正部93によって、変調信号に基づいて生成された補正信号に応じて変更される。そのため、コンパレータ部92は、変調光によって生じる原点位置PZの変位を低減した原点信号Z_SIGとして出力する。コンパレータ部92は、図5(e)に示すように、信号(Z−Z)を原点位置PZにおいて信号レベルHから信号レベルLに遷移する信号を、原点信号Z_SIGとして出力する。
【0068】
なお、原点位置PZの近傍位置でない場合に、変調光がスケール6を透過しないため、原点検出部90は、ほとんど光を受光できない。そのため、信号(Z−Z)は、外乱などのノイズによって、所定の閾値をまたいで信号レベルが変動する場合がある。このような場合、コンパレータ部92は、例えば、図5(f)の信号S1及び信号S2のような誤った原点信号Z_SIGを出力する。そこで、エンコーダ装置1は、原点有効信号Z_VALIDに基づいて、原点位置PZの近傍位置である場合に、原点信号Z_SIGを検出する。これにより、エンコーダ装置1は、原点信号Z_SIGの誤検出を低減することができる。
【0069】
図6は、本実施形態における原点信号Z_SIGの生成動作を示す波形図である。
図6(a)は、図5(d)の信号(Z−Z)におけるスケール6の原点位置PZの近傍を拡大した波形を示している。ここで波形W0は、信号(Z−Z)を示し、波形W0aは、信号(Z−Z)の原点位置PZの近傍の部分R1における拡大波形を示している。
また、図6(b)は、図6(a)に対応した原点信号Z_SIGの波形を示している。
【0070】
図6(a)の波形W0に示すように、信号(Z−Z)には、上述した変調ノイズNZが含まれている(重畳されている)。なお、原点位置PZの近傍における変調ノイズ成分(ΔNZ)は、式(6)に示されるように、(Vmsinωt)である。原点位置PZの近傍における信号(Z−Z)に対するスケール6の変位Xの傾きを(dX/dV)とおくと、閾値電圧Vに近い領域R1における波形W0に示すように、(ΔX=VmsinωtdX/dX)が原点位置PZのばらつきとして現われる。
【0071】
すなわち、従来のエンコーダ装置では、変調補正部93を備えていない。そのため、このようなエンコーダ装置では、変調光を用いた場合に、図6(b)の波形W2及び波形W3に示すように、原点信号Z_SIGに、変調光によって生じる原点位置PZの変位が発生する。
これに対して、本実施形態のエンコーダ装置1は、変調補正部93によって生成された補正信号に応じて閾値電圧Vを変更する。そのため、図6(b)の波形W1に示すように、コンパレータ部92は、変調光によって生じる原点位置PZの変位を補正し、安定した原点信号Z_SIGを出力する。
【0072】
以上のように、本実施形態のエンコーダ装置1は、スケール6が原点位置PZ(基準位置)を示す原点パターン50と位置パターン63とを有し、変調部81が位置パターン63と原点パターン50とに照射する光を変調する変調信号を生成する。内挿回路部83(位置情報検出部)は、この変調信号に基づいて変調された変調光によって位置パターン63を検出した位置情報信号に基づいて、スケール6の位置情報を検出する。原点受光部70(基準位置受光部)は、変調光によって原点パターン50を検出した検出信号(Z−Z)を出力する。原点検出部90(基準位置検出部)は、検出信号(Z−Z)に基づいて原点位置PZを検出する。さらに、原点検出部90は、光を変調することによって生じる原点位置PZの変位を補正する変調補正部93を備えている。
【0073】
これにより、本実施形態によるエンコーダ装置1は、変調補正部93によって原点位置PZの変位を補正した原点信号Z_SIGを出力する。なお、原点信号Z_SIGは、原点位置PZを示す信号である。すなわち、変調補正部93は、原点信号Z_SIGの変調ノイズによる影響を低減することができる。そのため、本実施形態によるエンコーダ装置1は、原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0074】
また、本実施形態では、変調補正部93は、変調部81が生成する変調信号に基づく光の光量変化によって生じる原点位置PZの変位を補正する。
これにより、本実施形態によるエンコーダ装置1は、変調信号に基づく光の光量変化によって生じる原点位置PZの変位を補正するので、原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0075】
また、本実施形態では、変調補正部93は、変調部81が生成した変調信号に基づいて補正信号を生成し、生成した補正信号に基づいて、光を変調することによって生じる原点位置PZの変位を補正する。つまり、変調補正部93は、変調部81が生成した変調信号をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。
変調部81が生成した変調信号と変調ノイズとは、変調光の光量に応じて変動(変化)する。例えば、変調部81が生成した変調信号は、変調ノイズに同期して変動(変化)しているので、本実施形態によるエンコーダ装置1は、変調信号に基づいて(変調信号をもとに)、原点位置PZの変位を補正することができる。この場合、変調部81が生成した変調信号を利用できるため、本実施形態によるエンコーダ装置1は、簡易な構成により原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0076】
また、本実施形態では、原点検出部90は、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて生成された原点位置PZを示す信号(Z−Z)を、所定の閾値に基づいて二値化するコンパレータ部92(二値化部)を備える。変調補正部93は、補正信号に応じて、所定の閾値を変更する。
この場合、変調補正部93がコンパレータ部92(二値化部)の所定の閾値を変更する簡易な構成により、原点位置PZの変位を補正することができる。よって、本実施形態によるエンコーダ装置1は、簡易な構成により原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0077】
また、本実施形態では、原点受光部70は、原点位置PZに対して互いに異なる信号レベルに遷移する信号である第1信号Z及び第2信号Zを検出信号として出力する。原点検出部90は、第1信号Z及び第2信号Zの差分によって、原点位置PZを示す信号(Z−Z)を生成する差動回路部91を備える。
これにより、原点検出部90は、第1信号Z及び第2信号Zの差分により原点信号Z_SIGを生成するため、正確な原点位置PZを検出することができる。
【0078】
また、本実施形態では、変調部81が生成する変調信号は、位置パターン63と原点パターン50とに照射する光の波長を変調させる信号である。また、光の波長を変調させることにより、変調部81が生成する変調信号は、位置パターン63と原点パターン50とに照射する光の光量を変調する。すなわち、変調部81が生成する変調信号は、位置パターン63と原点パターン50とに照射する光(変調光)の波長を変調させる信号である。
これにより、波長変調の手法を用いたスケール6の位置検出が可能になる。そのため、本実施形態によるエンコーダ装置1は、高精度な波長変調型のエンコーダにおいても、原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0079】
また、本実施形態では、抵抗R14の抵抗値R14、抵抗R15の抵抗値R15、及び変調信号の振幅Vは、式(8)の関係を満たすように設定されている。すなわち、抵抗R14の抵抗値R14、抵抗R15の抵抗値R15、及び変調信号の振幅Vは、原点位置PZの近傍における電圧Vの変動(変化)が信号(Z−Z)に含まれ変調ノイズと等しくなるように設定されている。
これにより、原点検出部90は、正確な原点位置PZを検出することができる。
【0080】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態によるエンコーダ装置1aについて説明する。
本実施形態では、エンコーダ装置1aが、受光部7によって検出された信号に基づいて、光の波長を変調することによって生じる原点位置PZの変位を補正する一実施形態について説明する。
本実施形態において、光源部2、コリメータレンズ3、光学系4、インデックス格子5、スケール6、及び受光部7の構成は、図1及び図2に示される第1の実施形態と同様である。
【0081】
図7は、本実施形態におけるエンコーダ装置1aを示す概略ブロック図である。
図7において、図1から図3と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図7において、原点検出部90aの構成が図3に示される第1の実施形態におけるエンコーダ装置1と異なり、他の構成は、エンコーダ装置1と同様である。
【0082】
図7において、信号処理部8aは、変調部81、ドライブ部82、内挿回路部83、及び原点検出部90aを備えている。
原点検出部90aには、第1の実施形態における原点検出部90と異なり、変調部81から出力された変調信号が接続されていない。
【0083】
図8は、本実施形態における原点検出部90aを示す概略ブロック図である。
図8において、原点検出部90aは、差動回路部91、コンパレータ部(92、95)、変調補正部93a、及び加算回路部94を備えている。なお、本実施形態による原点検出部90aは、受光部7の原点受光部70から出力される検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて、コンパレータ部92の基準電圧である閾値電圧を変更する一形態について説明する。ここでは、一例として、変調補正部93aは、加算回路部94が出力する信号(−(Z+Z))に基づいて、コンパレータ部92の基準電圧である閾値電圧を変更する。
また、図8において、図4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
変調補正部93a(補正部)は、例えば、コンデンサC1、抵抗(R14、R14a、R15)、及びオペアンプ86を有する反転増幅回路である。変調補正部93aは、光を変調することによって生じる原点位置PZの変位を補正する。本実施形態では、変調補正部93aは、加算回路部94から出力された信号(−(Z+Z))を反転増幅して補正信号を生成し、生成した補正信号をコンパレータ部92の閾値電圧(所定の閾値)として供給する。つまり、変調補正部93aは、生成した補正信号に応じて、コンパレータ部92の閾値を変更する。これにより、変調補正部93aは、原点位置PZの変位を補正する。例えば、変調補正部93aは、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。つまり、変調補正部93aは、変調光によって(変調光を受光して)検出された信号をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。なお、この原点位置PZの変位は、光を変調することによって(変調光によって)生じる変位であり、上述した変調ノイズによって発生する変位である。
【0085】
抵抗R14は、コンデンサC1の一端(ノードC)とオペアンプ86の反転入力端子(−)との間に接続され、抵抗R15は、オペアンプ86の出力端子とオペアンプ86の反転入力端子(−)との間に接続され、オペアンプ86に負帰還をかけている。なお、抵抗R14及び抵抗R15の抵抗値(R14、R15)は、原点位置PZの変位を補正するように、所定の値に設定されている。本実施形態における抵抗値R14及び抵抗値R15の詳細については、後述する。
コンデンサC1は、一端が抵抗R14の一端に、他端が加算回路部94の出力信号線に接続されている。コンデンサC1と抵抗R14の接続点はR14aを介して接地されている。コンデンサC1とR14aとは、低周波カットフィルター回路を形成し、加算回路部94の出力である信号(−(Z+Z))に含まれる直流成分をカットし、交流成分をオペアンプ86の反転入力端子(−)に供給する。すなわち、オペアンプ86の反転入力端子(−)と信号(−(Z+Z))に含まれる変調ノイズ成分を抽出し、オペアンプ86に供給するように機能する。
【0086】
次に、抵抗R14及び抵抗R15の抵抗値について説明する。
加算回路部94の出力信号(−(Z+Z))は、下記の式(9)で示される。
【0087】
【数9】

【0088】
原点位置PZの近傍では、信号(−(Z+Z))が一定値であることを考慮し、この一定値を電圧Vとおく。さらにコンデンサC1とR14aとによって直流成分をカットすることによって、ノードVにおける電圧Vは下記の式(10)で示される。
なお、ここでコンデンサC1の静電容量Cと抵抗R14aの抵抗値R14aとからなる低周波カット周波数fは(1/(2πR14a))で決定され、コンデンサC1の静電容量Cと抵抗R14aの抵抗値R14aとは、信号(−(Z+Z))の直流成分をカットするが、変調角周波数ωは十分に通過するように定められている。
【0089】
【数10】

【0090】
さらに、上述の式(8)のVを(−Vm)と置き換えることによって、下記の式(11)の関係式が得られる。
【0091】
【数11】

【0092】
このように、本実施形態では、式(8)の代わりに、式(11)を満たすように、抵抗値R14及び抵抗値R15が設定される。すなわち、第1の実施形態と同様に、抵抗値R14及び抵抗値R15は、原点位置PZの近傍における電圧Vの変動(変化)が信号(Z−Z)に含まれ変調ノイズと等しくなるように設定される。つまり、変調補正部93aは、信号(Z−Z)に含まれ変調ノイズを打ち消すように、コンパレータ部92の閾値を変更する補正信号を生成する。
【0093】
次に、本実施形態におけるエンコーダ装置1aの原点位置PZの検出動作について説明する。
エンコーダ装置1aにおける原点有効信号Z_VALIDを生成する動作は、第1の実施形態におけるエンコーダ装置1と同様である。また、エンコーダ装置1aにおける原点信号Z_SIGを生成する動作は、上述の変調補正部93aの動作を除いて、第1の実施形態におけるエンコーダ装置1と同様である。
変調補正部93aは、上述したように、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて補正信号を生成し、生成した補正信号に基づいて、コンパレータ部92の二値化に使用される閾値を変更する補正信号を生成する。
【0094】
以上のように、本実施形態によるエンコーダ装置1aは、光を変調することによって生じる原点位置PZの変位を補正する変調補正部93aを備えている。これにより、本実施形態によるエンコーダ装置1aは、変調補正部93aによって原点位置PZの変位を補正した原点信号Z_SIGを出力する。つまり、変調補正部93は、原点信号Z_SIGの変調ノイズによる影響を低減することができる。そのため、本実施形態によるエンコーダ装置1aは、原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0095】
また、本実施形態では、変調補正部93aは、変調部81が変調した変調光を受光部7が受光して検出した信号をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。つまり、変調補正部93aは、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)をもとに生成した補正信号に基づいて、原点位置PZの変位を補正する。
受光部7の原点受光部70が検出した検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)と変調ノイズとは、変調光の光量に応じて変動(変化)する。つまり、この検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)は、同期して変動(変化)しているので、本実施形態によるエンコーダ装置1は、変調信号に基づいて(変調信号をもとに)、原点位置PZの変位を補正することができる。この場合、変調部81が生成した変調信号を利用できるため、本実施形態によるエンコーダ装置1は、簡易な構成により原点位置PZを高精度に検出することができる。
【0096】
[第3の実施形態]
次に、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1(1a)を駆動装置に適用した場合の一実施形態について説明する。
図9は、本実施形態における駆動装置100の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態は、上記の各実施形態におけるエンコーダ装置1(1a)を使用して、移動体を駆動する駆動装置100である。なお、本実施形態では、移動体の一例としてステージ10を駆動するステージ装置について説明する。
【0097】
図9において、ステージ装置である駆動装置100(装置)は、エンコーダ装置1(1a)、ステージ10、駆動部11及び制御部12を備えている。この図において、図1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
エンコーダ装置1(1a)は、スケール6、検出ヘッド部9、及び信号処理部8を備えている。
【0098】
ステージ10(移動体)は、例えば、スケール6又は検出ヘッド部9と固定されており、駆動部11によって駆動(移動)される。すなわち、ステージ10は、スケール6又は検出ヘッド部9に接続されている。
駆動部11は、ステージ10をスケール6における位置検出方向に相対的に駆動する。
制御部12は、制御信号線L1を介してエンコーダ装置1(1a)の信号処理部8と接続されている。この制御信号線L1を介して、エンコーダ装置1(1a)は、上述した位置情報、原点信号Z_SIG、及び原点有効信号Z_VALIDを制御部12に供給する。
また、制御部12は、制御信号線L2を介して駆動部11と接続されている。制御部12は、この制御信号線L2を介して駆動部11を制御する。
【0099】
制御部12は、エンコーダ装置1(1a)から供給されたステージ10の位置情報及び原点位置PZに基づいて、駆動部11を制御する。
制御部12は、原点有効信号Z_VALIDに基づいて、ステージ10の位置が原点位置PZの近傍であるか否かを判定し、原点位置PZの近傍であると判定した場合に、原点信号Z_SIGに基づいて原点位置PZを検出する。
【0100】
以上のように、本実施形態における駆動装置100は、エンコーダ装置1(1a)と、スケール6又は検出ヘッド部9に接続されているステージ10とを備えている。
エンコーダ装置1(1a)が、原点位置PZを高精度に検出することができるため、本実施形態における駆動装置100は、原点位置PZを高精度に検出することができる。これにより、本実施形態における駆動装置100は、高精度にステージ10の位置を制御することができる。
【0101】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
上記の各実施形態では、変調補正部93(93a)は、コンパレータ部92の閾値を変更して原点位置PZの変位を補正する形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示される原点検出部90bの変調補正部93bは、コンパレータ部92の閾値を変更する代わりに、抵抗R16〜R19、及びオペアンプ89を有する差動回路部96を備えている。この場合、変調補正部93bは、差動回路部91から出力された原点位置PZを示す信号(Z−Z)に含まれる変調ノイズを、オペアンプ86の出力である補正信号に基づいてオフセットして補正する。すなわち、変調補正部93bは、検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)に基づいて生成された基準位置を示す信号(Z−Z)を、補正信号に基づいて補正する。これにより、変調補正部93bは、上記の各実施形態と同様の効果を奏する。
【0102】
また、上記の各実施形態において、変調部81は、波長を変調することにより光源部2の光量も変調される形態を説明したが、光量のみを変調する形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、変調光によって(変調光を受光して)検出された信号の一例として検出信号(第1信号Z及び第2信号Z)を用いる形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変調補正部93aは、受光部7の主信号受光部73が検出した信号に基づいて原点位置PZの変位を補正する形態でもよいし、補正用の受光部を別途備える形態でもよい。
【0103】
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド部9は、信号処理部8を含まない形態を説明したが、信号処理部8を含む形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、スケール6がリニアスケールである形態について説明したが、円盤型や扇型のスケール6を用いてロータリー式のエンコーダに適用する形態でもよい。また、上記の各実施形態は、反射型のエンコーダに適用する形態でもよいし、透過型のエンコーダに適用する形態でもよい。
また、上記の各実施形態において、検出ヘッド部9が固定され、スケール6が変位方向に移動する形態を説明したが、スケール6が固定され、ヘッド部9が変位方向に移動する形態でもよい。
【0104】
また、上記の第3の実施例において、ステージ10を移動方向(一方向)に駆動する駆動装置100にエンコーダ装置1(1a)を適用する形態を説明したが、この形態に限定されるものではない。例えば、XY移動ステージ、3次元計測装置、モータ装置、工作機械、精密機械、半導体のチップマウンタ、ステッパ装置などの装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1、1a…エンコーダ装置、6…スケール、9…検出ヘッド部、10…ステージ、60…原点パターン、63…位置パターン、70…原点受光部、81…変調部、83…内挿回路部、90,90a,90b…原点検出部、91…差動回路部、92…コンパレータ部、93,93a,93b…変調補正部、100…駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準位置を示す基準位置パターンと位置情報パターンとを有するスケールと、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記光を変調させる変調信号を生成する変調部と、
前記変調信号に基づいて変調された変調光によって前記位置情報パターンを検出した位置情報信号に基づいて、前記スケールの位置情報を検出する位置情報検出部と、
前記変調光によって前記基準位置パターンを検出した検出信号を出力する基準位置受光部と、
前記検出信号に基づいて、前記基準位置を検出する基準位置検出部と、
を備え、
前記基準位置検出部は、前記光を変調することによって生じる前記基準位置の変位を補正する補正部を備える
ことを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記変調信号に基づく前記光の光量変化によって生じる前記基準位置の変位を補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ装置。
【請求項3】
前記補正部は、
前記変調信号をもとに生成した補正信号に基づいて、前記基準位置の変位を補正する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンコーダ装置。
【請求項4】
前記補正部は、
前記変調光によって検出された信号をもとに生成した補正信号に基づいて、前記基準位置の変位を補正する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項5】
前記補正部は、
前記検出信号又は前記位置情報信号をもとに生成した補正信号に基づいて、前記基準位置の変位を補正する
ことを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ装置。
【請求項6】
前記基準位置検出部は、
前記検出信号に基づいて生成された前記基準位置を示す信号を、所定の閾値に基づいて二値化する二値化部を備え、
前記補正部は、
前記補正信号に応じて、前記閾値を変更する
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項7】
前記補正部は、
前記検出信号に基づいて生成された前記基準位置を示す信号を、前記補正信号に基づいて補正する
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項8】
前記基準位置受光部は、
前記基準位置に対して互いに異なる信号レベルに遷移する信号である第1信号及び第2信号を前記検出信号として出力し、
前記基準位置検出部は、
前記第1信号及び前記第2信号の差分によって、前記基準位置を示す信号を生成する差動回路部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項9】
前記変調信号は、
前記位置情報パターンと前記基準位置パターンとに照射する光の光量を変調させる信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項10】
前記変調信号は、
前記位置情報パターンと前記基準位置パターンとに照射する前記光の波長を変調させる信号である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダ装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ装置と、
前記スケール又は前記エンコーダ装置の検出ヘッドに接続された移動体と、
を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−40834(P2013−40834A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177422(P2011−177422)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】