説明

エンコーダ

【課題】入力画像の一部についてはより高精細に表示させて、入力画像の全体についてはより効果的に符号量を減少させるエンコーダを提供することを目的とする。
【解決手段】量子化ステップ値設定部14は、量子化ステップ値を設定する。顔領域検出部15は、顔領域および顔領域以外の画像領域を分別する。量子化ステップ値補正部16は、顔領域における量子化ステップ値が顔領域以外の画像領域における量子化ステップ値より小さくなるように、量子化ステップ値を補正する。エンコーダ1は、顔領域については、より高精細に表示させることができる。エンコーダ1は、顔領域を含む入力画像の全体については、より効果的に符号量を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像を出力画像に圧縮符号化するエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、入力画像を出力画像に圧縮符号化する。通信システムは、圧縮符号化前の入力画像を通信することなく、圧縮符号化後の出力画像を通信することにより、通信負担を軽減できる。特許文献1のエンコーダについて、図7および図8を用いて説明する。
【0003】
入力画像D、Eは、圧縮符号化が実行される入力画像である。画像領域D1、E1は、画像領域D1、E1以外の画像領域より、高精細に表示される必要がある画像領域である。画像領域D1、E1は、例えば、顔領域などである。
【0004】
図7において、入力画像Dに分散する3つのブロックD2、D3、D4が選択される。3つのブロックD2、D3、D4は、合計100の目標符号量が割り振られる。ブロックD3は、画像領域D1に含まれる。ブロックD2、D4は、画像領域D1に含まれない。
【0005】
ブロックD3については、多くの符号量が割り振られる。ブロックD2、D4については、残りの符号量が割り振られる。例えば、ブロックD3については、50の符号量が割り振られる。ブロックD2、D4については、各々25の符号量が割り振られる。
【0006】
図7においては、入力画像の一部については、高精細に表示させることができる。入力画像の全体については、符号量を減少させることができる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−340534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8において、入力画像Eに分散する3つのブロックE2、E3、E4が選択される。3つのブロックE2、E3、E4は、合計100の目標符号量が割り振られる。ブロックE2、E3、E4は、画像領域E1に含まれる。
【0009】
ブロックE2、E3、E4について、多くの符号量が割り振られる必要がある。例えば、ブロックE2、E3、E4について、各々33の符号量が割り振られる必要がある。ブロックE2、E3、E4について各々割り振られる符号量を、ブロックD3について割り振られる符号量と同等にすることは容易でない。
【0010】
図8においては、入力画像の一部について、確実に高精細に表示させることは容易でない。入力画像の全体について、確実に符号量を減少させることは容易でない。
【0011】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み、入力画像を出力画像に圧縮符号化するエンコーダにおいて、入力画像の一部についてはより高精細に表示させて、入力画像の全体についてはより効果的に符号量を減少させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、入力画像を出力画像に圧縮符号化するエンコーダであって、前記入力画像について、第1量子化ステップ値を設定する量子化ステップ値設定部と、前記入力画像について、所定画像領域と前記所定画像領域以外の非所定画像領域を分別する画像領域分別部と、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、異なる特性で前記第1量子化ステップ値を補正することにより、第2量子化ステップ値を設定する量子化ステップ値補正部と、前記入力画像について、前記第2量子化ステップ値に基づいて量子化する量子化部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のエンコーダにおいて、前記所定画像領域は、前記非所定画像領域より高精細に表示される必要がある画像領域、を含み、前記所定画像領域における前記第2量子化ステップ値は、前記非所定画像領域における前記第2量子化ステップ値より、小さいことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のエンコーダにおいて、前記所定画像領域は、前記非所定画像領域より高精細に表示される必要がない画像領域、を含み、前記所定画像領域における前記第2量子化ステップ値は、前記非所定画像領域における前記第2量子化ステップ値より、大きいことを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエンコーダにおいて、前記量子化ステップ値補正部は、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に乗算されるべき乗算補正係数を設定する乗算補正係数設定部と、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に前記乗算補正係数を乗算することにより、前記第2量子化ステップ値を設定する補正係数乗算部と、を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエンコーダにおいて、前記量子化ステップ値補正部は、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に加算されるべき加算補正係数を設定する加算補正係数設定部と、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に前記加算補正係数を加算することにより、前記第2量子化ステップ値を設定する補正係数加算部と、を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエンコーダにおいて、前記量子化ステップ値補正部は、前記所定画像領域と前記非所定画像領域の境界領域について、前記第2量子化ステップ値の高周波成分を除去する高周波成分除去部、を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエンコーダにおいて、前記画像領域分別部は、前記入力画像について、前記所定画像領域の座標位置を検出することにより、前記所定画像領域の座標位置を前記量子化ステップ値補正部に通知する手段、を含むことを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエンコーダにおいて、前記画像領域分別部は、前記入力画像について、前記所定画像領域の座標位置を指定されることにより、前記所定画像領域の座標位置を前記量子化ステップ値補正部に通知する手段、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエンコーダは、画像領域分別部、量子化ステップ値補正部から構成される。画像領域分別部は、所定画像領域および所定画像領域以外の非所定画像領域を分別する。量子化ステップ値補正部は、所定画像領域および非所定画像領域の各々について、異なる特性で量子化ステップ値を補正する。
【0021】
所定画像領域が非所定画像領域より高精細に表示される必要があるときには、量子化ステップ値補正部は、所定画像領域における量子化ステップ値が非所定画像領域における量子化ステップ値より小さくなるように、量子化ステップ値の補正を実行する。
【0022】
所定画像領域が非所定画像領域より高精細に表示される必要がないときには、量子化ステップ値補正部は、所定画像領域における量子化ステップ値が非所定画像領域における量子化ステップ値より大きくなるように、量子化ステップ値の補正を実行する。
【0023】
本発明のエンコーダは、入力画像の一部については、より高精細に表示させることができる。本発明のエンコーダは、入力画像の全体については、より効果的に符号量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
{第1の実施の形態}
[エンコーダの構成要素]
以下、図面を参照しつつ、第1の実施の形態について説明する。図1は、第1の実施の形態におけるエンコーダ1を示す図である。エンコーダ1は、単数または複数の顔領域を含む入力画像を出力画像に圧縮符号化する。
【0025】
エンコーダ1は、周波数変換部11、量子化部12、符号化部13、量子化ステップ値設定部14、顔領域検出部15、量子化ステップ値補正部16から構成される。
【0026】
周波数変換部11は、入力画像について、周波数変換を実行する。量子化部12は、周波数変換後の入力画像について、量子化を実行する。符号化部13は、周波数変換後および量子化後の入力画像について、符号化を実行する。
【0027】
量子化ステップ値設定部14は、量子化ステップ値を設定する。しかし、量子化部12は、量子化ステップ値設定部14により設定される量子化ステップ値に基づいて、量子化を実行するのではない。
【0028】
顔領域検出部15は、顔領域を検出する。例えば、顔領域検出部15は、肌色の画像領域を検出することにより、顔領域を検出する。水平方向スキャン部15Hは、入力画像を水平方向にスキャンすることにより、顔領域を検出する。垂直方向スキャン部15Vは、入力画像を垂直方向にスキャンすることにより、顔領域を検出する。
【0029】
量子化ステップ値補正部16は、量子化ステップ値を補正する。そして、量子化部12は、量子化ステップ値補正部16により補正される量子化ステップ値に基づいて、量子化を実行するのである。
【0030】
量子化ステップ値補正部16は、補正係数設定部161、補正係数格納部162、補正係数平均部163、高周波成分除去部164、補正係数乗算部165から構成される。
【0031】
補正係数設定部161は、補正係数を設定する。補正係数設定部161は、顔領域における補正係数を、顔領域以外の画像領域における補正係数より小さく設定する。
【0032】
補正係数格納部162は、補正係数を格納する。水平方向補正係数162Hは、水平方向スキャンに基づいて設定された補正係数である。垂直方向補正係数162Vは、垂直方向スキャンに基づいて設定された補正係数である。
【0033】
補正係数平均部163は、水平方向補正係数162Hおよび垂直方向補正係数162Vの平均値を計算する。高周波成分除去部164は、顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、補正係数の平均値の高周波成分を除去する。
【0034】
補正係数乗算部165は、量子化ステップ値設定部14から、補正前の量子化ステップ値を入力する。補正係数乗算部165は、補正前の量子化ステップ値に、補正係数の平均値を乗算することにより、補正後の量子化ステップ値を計算する。補正係数乗算部165は、量子化部12に、補正後の量子化ステップ値を出力する。
【0035】
[量子化ステップ値の補正係数]
図2は、第1の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。入力画像Aは、圧縮符号化が実行される入力画像である。画像領域A1は、顔領域である。
【0036】
スキャンラインAH1、AH2、AH3は、水平方向スキャン部15Hによるスキャン方向を示す。スキャンラインAH2は、画像領域A1を貫通する。スキャンラインAH1、AH3は、画像領域A1を貫通しない。
【0037】
スキャンラインAV1、AV2、AV3は、垂直方向スキャン部15Vによるスキャン方向を示す。スキャンラインAV2は、画像領域A1を貫通する。スキャンラインAV1、AV3は、画像領域A1を貫通しない。
【0038】
入力画像Aの下側に記載された横方向の実線は、スキャンラインAH1、AH2、AH3について、補正係数格納部162に格納される水平方向補正係数162Hを示す。
【0039】
スキャンラインAH1、AH3においては、入力画像Aの左端から右端まで、水平方向補正係数162Hは1.0を採用する。スキャンラインAH2においては、画像領域A1を貫通しない部分では、水平方向補正係数162Hは1.0を採用して、画像領域A1を貫通する部分では、水平方向補正係数162Hは1.0より小さい0.8を採用する。
【0040】
実線HH2は、画像領域A1および画像領域A1以外の画像領域の境界領域において、水平方向補正係数162Hが0.8から1.0まで急激に変化することを示す。
【0041】
入力画像Aの右側に記載された縦方向の実線は、スキャンラインAV1、AV2、AV3について、補正係数格納部162に格納される垂直方向補正係数162Vを示す。
【0042】
スキャンラインAV1、AV3においては、入力画像Aの上端から下端まで、垂直方向補正係数162Vは1.0を採用する。スキャンラインAV2においては、画像領域A1を貫通しない部分では、垂直方向補正係数162Vは1.0を採用して、画像領域A1を貫通する部分では、垂直方向補正係数162Vは1.0より小さい0.8を採用する。
【0043】
実線HV2は、画像領域A1および画像領域A1以外の画像領域の境界領域において、垂直方向補正係数162Vが0.8から1.0まで急激に変化することを示す。
【0044】
顔領域については、量子化ステップ値が小さくなるように、量子化ステップ値が補正される。エンコーダ1は、顔領域については、より高精細に表示させることができる。エンコーダ1は、入力画像全体については、より効果的に符号量を減少させることができる。
【0045】
入力画像Aの下側に記載された一点鎖線LH2は、スキャンラインAH2について、高周波成分除去部164により高周波成分を除去された水平方向補正係数を示す。
【0046】
一点鎖線LH2は、画像領域A1および画像領域A1以外の画像領域の境界領域において、水平方向補正係数が0.8から1.0まで緩やかに変化することを示す。
【0047】
入力画像Aの右側に記載された一点鎖線LV2は、スキャンラインAV2について、高周波成分除去部164により高周波成分を除去された垂直方向補正係数を示す。
【0048】
一点鎖線LV2は、画像領域A1および画像領域A1以外の画像領域の境界領域において、垂直方向補正係数が0.8から1.0まで緩やかに変化することを示す。
【0049】
顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、量子化ステップ値が緩やかに変化するように、量子化ステップ値が補正される。エンコーダ1は、顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、高精細に表示される画像領域から高精細に表示されない画像領域まで、緩やかに移行させることができる。
【0050】
図2において、水平方向スキャン部15Hおよび垂直方向スキャン部15Vはともに、画像領域A1が顔領域であることを検出している。しかし、水平方向スキャン部15Hおよび垂直方向スキャン部15Vは、特に顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、顔領域の有無について異なる判断をすることがある。すなわち、水平方向補正係数162Hおよび垂直方向補正係数162Vは、特に顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、異なる値を採用することがある。
【0051】
顔領域検出部15は、両スキャン部が顔領域の有無について異なる判断をするときであっても、より精度よく顔領域を検出することができる。補正係数平均部163は、両補正係数が異なる値を採用するときであっても、両補正係数の平均値を計算することにより、境界領域における補正係数として補正係数を計算することができる。
【0052】
{第2の実施の形態}
次に、第2の実施の形態について説明する。図3は、第2の実施の形態におけるエンコーダ2を示す図である。エンコーダ2は、第1画像端を含む入力画像を出力画像に圧縮符号化する。第1画像端は、入力解像度の縦横比率および出力解像度(あるいは表示解像度)の縦横比率が異なるときに、出力画像に付加される画像端領域である。
【0053】
エンコーダ2は、周波数変換部21、量子化部22、符号化部23、量子化ステップ値設定部24、第1画像端検出部25、量子化ステップ値補正部26から構成される。
【0054】
周波数変換部21、量子化部22、符号化部23、量子化ステップ値設定部24、第1画像端検出部25、量子化ステップ値補正部26は、エンコーダ1の対応構成要素とほぼ同様な処理を実行する。
【0055】
第1画像端検出部25は、第1画像端を検出する。例えば、第1画像端検出部25は、動きが少ない画像領域または黒色の画像領域を検出することにより、第1画像端を検出する。水平方向スキャン部25Hは、入力画像を水平方向にスキャンすることにより、第1画像端を検出する。垂直方向スキャン部25Vは、入力画像を垂直方向にスキャンすることにより、第1画像端を検出する。
【0056】
補正係数設定部261は、補正係数を設定する。補正係数設定部261は、第1画像端における補正係数を、1.0より大きく設定して、第1画像端以外の画像領域における補正係数を、第1の実施の形態と同様に設定する。
【0057】
補正係数格納部262は、補正係数を格納する。水平方向補正係数262Hは、水平方向スキャンに基づいて設定された補正係数である。垂直方向補正係数262Vは、垂直方向スキャンに基づいて設定された補正係数である。
【0058】
図4は、第2の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。入力画像Bは、圧縮符号化が実行される入力画像である。画像領域B1、B2は、第1画像端である。図4においては、説明を簡潔にするため、画像領域B1、B2以外の画像領域における補正係数は、1.0に設定されている。画像領域B1、B2以外の画像領域が顔領域を含むときには、画像領域B1、B2以外の画像領域における補正係数は、第1の実施の形態と同様に設定されればよい。
【0059】
スキャンラインBH1は、水平方向スキャン部25Hによるスキャン方向を示す。スキャンラインBH1は、画像領域B1、B2を貫通する。
【0060】
スキャンラインBV1、BV2、BV3は、垂直方向スキャン部25Vによるスキャン方向を示す。スキャンラインBV1、BV3は、各々画像領域B1、B2を貫通する。スキャンラインBV2は、画像領域B1、B2を貫通しない。
【0061】
入力画像Bの下側に記載された横方向の実線は、スキャンラインBH1について、補正係数格納部262に格納される水平方向補正係数262Hを示す。
【0062】
スキャンラインBH1においては、画像領域B1、B2を貫通しない部分では、水平方向補正係数262Hは1.0を採用して、画像領域B1、B2を貫通する部分では、水平方向補正係数262Hは1.0より大きい1.2を採用する。
【0063】
入力画像Bの右側に記載された縦方向の実線は、スキャンラインBV1、BV2、BV3について、補正係数格納部262に格納される垂直方向補正係数262Vを示す。
【0064】
スキャンラインBV2においては、入力画像Bの上端から下端まで、垂直方向補正係数262Vは1.0を採用する。スキャンラインBV1、BV3においては、入力画像Bの上端から下端まで、垂直方向補正係数262Vは1.0より大きい1.2を採用する。
【0065】
第1画面端については、量子化ステップ値が大きくなるように、量子化ステップ値が補正される。エンコーダ2は、第1画面端以外の画像領域については、より高精細に表示させることができる。エンコーダ2は、入力画像全体については、より効果的に符号量を減少させることができる。
【0066】
実線HH1は、高周波成分が除去される前における、補正係数の1.0から1.2までの急激な変化を示す。一点鎖線LH1は、高周波成分が除去された後における、補正係数の1.0から1.2までの緩やかな変化を示す。エンコーダ2は、第1画像端および第1画像端以外の画像領域の境界領域において、高精細に表示される画像領域から高精細に表示されない画像領域まで、緩やかに移行させることができる。
【0067】
図4において、水平方向スキャン部25Hおよび垂直方向スキャン部25Vはともに、画像領域B1、B2が第1画像端であることを検出している。しかし、水平方向スキャン部25Hおよび垂直方向スキャン部25Vは、特に第1画像端および第1画像端以外の画像領域の境界領域において、第1画像端の有無について異なる判断をすることがある。すなわち、水平方向補正係数262Hおよび垂直方向補正係数262Vは、特に第1画像端および第1画像端以外の画像領域の境界領域において、異なる値を採用することがある。
【0068】
第1画像端検出部25は、両スキャン部が第1画像端の有無について異なる判断をするときであっても、より精度よく第1画像端を検出することができる。補正係数平均部263は、両補正係数が異なる値を採用するときであっても、両補正係数の平均値を計算することにより、境界領域における補正係数として補正係数を計算することができる。
【0069】
{第3の実施の形態}
次に、第3の実施の形態について説明する。図5は、第3の実施の形態におけるエンコーダ3を示す図である。エンコーダ3は、第2画像端を含む入力画像を出力画像に圧縮符号化する。第2画像端は、入力解像度の縦横比率および出力解像度(あるいは表示解像度)の縦横比率が異なるときに、出力画像に付加される画像端領域である。
【0070】
エンコーダ3は、周波数変換部31、量子化部32、符号化部33、量子化ステップ値設定部34、第2画像端検出部35、量子化ステップ値補正部36から構成される。
【0071】
周波数変換部31、量子化部32、符号化部33、量子化ステップ値設定部34、第2画像端検出部35、量子化ステップ値補正部36は、エンコーダ1の対応構成要素とほぼ同様な処理を実行する。
【0072】
第2画像端検出部35は、第2画像端を検出する。しかし、第2画像端検出部35は、入力画像をスキャンすることにより、第2画像端を検出するのではない。むしろ、第2画像端検出部35は、画面サイズおよび表示サイズをエンコーダ3の外部から指定されることにより、第2画像端を検出する。
【0073】
補正係数設定部361は、補正係数を設定する。補正係数設定部361は、第2画像端における補正係数を、1.0より大きく設定して、第2画像端以外の画像領域における補正係数を、第1の実施の形態と同様に設定する。
【0074】
補正係数格納部362は、補正係数を格納する。ここで、第2画像端検出部35は、入力画像をスキャンしない。そのため、補正係数格納部362は、入力画像の各ブロックについて、水平方向補正係数および垂直方向補正係数を格納するのではない。むしろ、補正係数格納部362は、入力画像の各ブロックについて、単一の補正係数を格納する。
【0075】
第2画像端検出部35は、入力画像をスキャンしない。量子化ステップ値補正部36は、水平方向補正係数および垂直方向補正係数の平均値を計算する必要はないため、補正係数平均部を構成要素としない。
【0076】
第2画像端検出部35は、画面サイズおよび表示サイズをエンコーダ3の外部から指定される。量子化ステップ補正部36は、第2画像端から第2画像端以外の画像領域まで緩やかに移行させる必要はないため、高周波成分除去部を構成要素としない。
【0077】
図6は、第3の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。入力画像Cは、圧縮符号化が実行される入力画像である。画像領域C1、C2は、第2画像端である。ラインCH1、CH2、CH3、CV1は、実際にスキャンされたラインではなく、補正係数を分かりやすく示すためのラインである。図6においては、説明を簡潔にするため、画像領域C1、C2以外の画像領域における補正係数は、1.0に設定されている。画像領域C1、C2以外の画像領域が顔領域を含むときには、画像領域C1、C2以外の画像領域における補正係数は、第1の実施の形態と同様に設定されればよい。
【0078】
ラインCH1、CH3は、各々画像領域C1、C2を貫通する。ラインCH2は、画像領域C1、C2を貫通しない。ラインCV1は、画像領域C1、C2を貫通する。
【0079】
入力画像Cの下側に記載された横方向の実線は、ラインCH1、CH2、CH3について、補正係数格納部362に格納される補正係数を示す。
【0080】
ラインCH2においては、入力画像Cの左端から右端まで、補正係数は1.0を採用する。ラインCH1、CH3においては、入力画像Cの左端から右端まで、補正係数は1.0より大きい1.2を採用する。
【0081】
入力画像Cの右側に記載された縦方向の実線は、ラインCV1について、補正係数格納部362に格納される補正係数を示す。
【0082】
ラインCV1においては、画像領域C1、C2を貫通しない部分では、補正係数は1.0を採用して、画像領域C1、C2を貫通する部分では、補正係数は1.0より大きい1.2を採用する。
【0083】
第2画面端については、量子化ステップ値が大きくなるように、量子化ステップ値が補正される。エンコーダ3は、第2画面端以外の画像領域については、より高精細に表示させることができる。エンコーダ3は、入力画像全体については、より効果的に符号量を減少させることができる。
【0084】
{変形例}
第1から第3までの実施の形態において、量子化ステップ値設定部14、24、34は、入力画像の各ブロックについて、同一の量子化ステップ値を補正前に設定してもよい。第1および第2の実施の形態において、高周波成分除去部164、264は、補正係数または補正係数が乗算された量子化ステップ値について、高周波成分を除去すればよい。
【0085】
第1から第3までの実施の形態において、量子化ステップ値設定部14、24、34は、入力画像の各ブロックについて、異なる量子化ステップ値を補正前に設定してもよい。第1および第2の実施の形態において、高周波成分除去部164、264は、補正係数が乗算された量子化ステップ値について、高周波成分を除去すればよい。
【0086】
第1および第2の実施の形態において、補正係数平均部163、263は、水平方向補正係数および垂直方向補正係数の平均値を計算する。ここで、乗算部が、水平方向補正係数および垂直方向補正係数を乗算してもよい。または、選択部が、水平方向補正係数および垂直方向補正係数のうちいずれかの補正係数を選択してもよい。
【0087】
第1の実施の形態において、同一の画像領域について、水平方向補正係数が0.8であり、垂直方向補正係数が1.0である場合を考える。乗算部は、0.8および1.0を乗算して、補正係数として0.8を、高周波成分除去部164に出力する。選択部は、0.8および1.0のうち0.8を選択して、補正係数として0.8を、高周波成分除去部164に出力する。乗算部または選択部は、補正係数平均部163と同様に、顔領域および顔領域以外の画像領域の境界領域において、境界領域における補正係数として補正係数を計算することができる。
【0088】
第2の実施の形態において、同一の画像領域について、水平方向補正係数が1.2であり、垂直方向補正係数が1.0である場合を考える。乗算部は、1.2および1.0を乗算して、補正係数として1.2を、高周波成分除去部264に出力する。選択部は、1.2および1.0のうち1.2を選択して、補正係数として1.2を、高周波成分除去部264に出力する。乗算部または選択部は、補正係数平均部263と同様に、第1画像端および第1画像端以外の画像領域の境界領域において、境界領域における補正係数として補正係数を計算することができる。
【0089】
第1から第3までの実施の形態において、補正係数乗算部165、265、363は、補正前の量子化ステップ値に補正係数を乗算することにより、補正後の量子化ステップ値を計算する。ここで、補正係数加算部が、補正前の量子化ステップ値に補正係数を加算することにより、補正後の量子化ステップ値を計算してもよい。または、補正係数減算部が、補正前の量子化ステップ値から補正係数を減算することにより、補正後の量子化ステップ値を計算してもよい。
【0090】
補正係数加算部は、高精細に表示する必要がない画像領域については、補正前の量子化ステップ値に正の補正係数を加算して、高精細に表示する必要がある画像領域については、補正前の量子化ステップ値をそのまま出力するなどすればよい。補正係数減算部は、高精細に表示する必要がある画像領域については、補正前の量子化ステップ値から正の補正係数を減算して、高精細に表示する必要がない画像領域については、補正前の量子化ステップ値をそのまま出力するなどすればよい。
【0091】
第1から第3までの実施の形態において、エンコーダ1、2、3は、トランスコーダに配置されていてもよい。第1段階のデコーダは、入力画像を復号画像に復号化する。第2段階のエンコーダ1、2、3は、復号画像を出力画像に符号化する。デコーダおよびエンコーダ1、2、3は、異なるまたは同一の符号化方式を採用すればよい。
【0092】
量子化ステップ値設定部14、24、34は、デコーダにおける量子化ステップ値に基づいて、エンコーダ1、2、3における量子化ステップ値を設定すればよい。顔領域検出部15、第1画像端検出部25、第2画像端検出部35は、顔領域、第1画像端、第2画像端の座標位置を、デコーダから指定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】第1の実施の形態におけるエンコーダを示す図である。
【図2】第1の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。
【図3】第2の実施の形態におけるエンコーダを示す図である。
【図4】第2の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。
【図5】第3の実施の形態におけるエンコーダを示す図である。
【図6】第3の実施の形態における量子化ステップ値の補正係数を示す図である。
【図7】従来技術における符号量の割り振り方法を示す図である。
【図8】従来技術における符号量の割り振り方法を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1、2、3 エンコーダ
11、21、31 周波数変換部
12、22、32 量子化部
13、23、33 符号化部
14、24、34 量子化ステップ値設定部
15 顔領域検出部
25 第1画像端検出部
35 第2画像端検出部
15H、25H 水平方向スキャン部
15V、25V 垂直方向スキャン部
16、26、36 量子化ステップ値補正部
161、261、361 補正係数設定部
162、262、362 補正係数格納部
162H、262H 水平方向補正係数
162V、262V 垂直方向補正係数
163、263 補正係数平均部
164、264 高周波成分除去部
165、265、363 補正係数乗算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を出力画像に圧縮符号化するエンコーダであって、
前記入力画像について、第1量子化ステップ値を設定する量子化ステップ値設定部と、
前記入力画像について、所定画像領域と前記所定画像領域以外の非所定画像領域を分別する画像領域分別部と、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、異なる特性で前記第1量子化ステップ値を補正することにより、第2量子化ステップ値を設定する量子化ステップ値補正部と、
前記入力画像について、前記第2量子化ステップ値に基づいて量子化する量子化部と、
を備えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載のエンコーダにおいて、
前記所定画像領域は、
前記非所定画像領域より高精細に表示される必要がある画像領域、
を含み、
前記所定画像領域における前記第2量子化ステップ値は、前記非所定画像領域における前記第2量子化ステップ値より、小さいことを特徴とするエンコーダ。
【請求項3】
請求項1に記載のエンコーダにおいて、
前記所定画像領域は、
前記非所定画像領域より高精細に表示される必要がない画像領域、
を含み、
前記所定画像領域における前記第2量子化ステップ値は、前記非所定画像領域における前記第2量子化ステップ値より、大きいことを特徴とするエンコーダ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエンコーダにおいて、
前記量子化ステップ値補正部は、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に乗算されるべき乗算補正係数を設定する乗算補正係数設定部と、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に前記乗算補正係数を乗算することにより、前記第2量子化ステップ値を設定する補正係数乗算部と、
を含むことを特徴とするエンコーダ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエンコーダにおいて、
前記量子化ステップ値補正部は、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に加算されるべき加算補正係数を設定する加算補正係数設定部と、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の各々について、前記第1量子化ステップ値に前記加算補正係数を加算することにより、前記第2量子化ステップ値を設定する補正係数加算部と、
を含むことを特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエンコーダにおいて、
前記量子化ステップ値補正部は、
前記所定画像領域と前記非所定画像領域の境界領域について、前記第2量子化ステップ値の高周波成分を除去する高周波成分除去部、
を含むことを特徴とするエンコーダ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエンコーダにおいて、
前記画像領域分別部は、
前記入力画像について、前記所定画像領域の座標位置を検出することにより、前記所定画像領域の座標位置を前記量子化ステップ値補正部に通知する手段、
を含むことを特徴とするエンコーダ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のエンコーダにおいて、
前記画像領域分別部は、
前記入力画像について、前記所定画像領域の座標位置を指定されることにより、前記所定画像領域の座標位置を前記量子化ステップ値補正部に通知する手段、
を含むことを特徴とするエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−212749(P2009−212749A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52929(P2008−52929)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】