エンコーダ
【課題】大型化を招かずに広範囲で絶対位置信号を高精度に取得可能なエンコーダを提供すること
【解決手段】エンコーダにおいて、スケール20のパターンは、|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|を満たすように移動方向であるX方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向に第1の変調周期P1と第2の変調周期P2を有する。エンコーダの信号処理手段30は、第1の変調周期P1の位相である第1の位相Φ1を取得する第1の位相取得手段32と、第2の変調周期P2の位相である第2の位相Φ2を取得する第2の位相取得手段33と、整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いてSv=A・Φ1−B・Φ2を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段34と、を有する。
【解決手段】エンコーダにおいて、スケール20のパターンは、|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|を満たすように移動方向であるX方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向に第1の変調周期P1と第2の変調周期P2を有する。エンコーダの信号処理手段30は、第1の変調周期P1の位相である第1の位相Φ1を取得する第1の位相取得手段32と、第2の変調周期P2の位相である第2の位相Φ2を取得する第2の位相取得手段33と、整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いてSv=A・Φ1−B・Φ2を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段34と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アブソリュートエンコーダの検出精度をインクリメンタルエンコーダのように上げるため、スケールの各トラックにインクリメンタルパターンを、そのパターンの形状又はピッチが測長方向に変調周期で周期的に変化するように形成している。これにより、インクリメンタルパターンは相対位置の情報のみではなく変調周期の繰り返しによる絶対位置の変調情報を持つことになる。この結果、高精度な相対位置の情報と精度がそれほど高くない絶対位置情報を利用してスケールの絶対位置を高精度に検出することができる。
【0003】
特許文献1は、スケールからの光を受光する受光素子アレイとして、インクリメンタル信号検出用フォトダイオードアレイ(INC用アレイ)と変調信号検出用フォトダイオードアレイ(変調用アレイ)を設けている。INC用アレイの測長方向の長さは変調周期の整数倍の長さに設定され、INC用アレイからの出力に基づいて相対位置を表す相対位置信号が生成される。変調用アレイからの出力に基づいて変調パターン位置信号が生成され、これを絶対位置信号として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、異なる周期の信号を各トラックに設けられたインクリメンタルパターンから得ているのでパターンを検出可能な範囲がINC用アレイの測長方向の長さによって制限されてしまう。よって、パターンの広い範囲を小さなINC用アレイで検出することができない。
【0006】
本発明は、大型化を招かずに広範囲で絶対位置信号を高精度に取得可能なエンコーダを提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンコーダは、エネルギー分布を空間変調するパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、を有する。前記パターン列は、移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有する。前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段と、前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|の条件を満たす整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大型化を招かずに広範囲で絶対位置信号を高精度に取得可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンコーダのブロック図である。(実施例1、2、3)
【図2】トラックの部分拡大平面図である。(実施例1)
【図3】図2の部分拡大平面図である。(実施例1)
【図4】図2の部分拡大平面図である。(実施例1)
【図5】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図6】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例1)
【図7】トラックの部分拡大平面図である。(実施例2)
【図8】図7の部分拡大平面図である。(実施例2)
【図9】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図10】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例2)
【図11】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図12】2トラック構成の検出素子の読み取り領域とパターン領域の位置関係を示す図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10とスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0012】
センサユニット10は、LEDからなる光源12と受光素子アレイ16を有する受光IC14が同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16は、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が、スケール20(または可動部の)移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。本実施形態ではエネルギーは光であるが、後述するように、磁気、電気などその種類は光に限定されない。
【0013】
スケール20は、ガラス基板上にクロム反射膜のパターンを複数有するパターン列がトラック21にパターニングされている。パターンはエネルギー分布を空間変調するためのパターンである。
【0014】
各トラック21は、X方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向にそれぞれ異なるピッチ(変調周期)を有する複数の領域を有する。例えば、2種類の領域が設けられている場合には、X方向に第1のピッチ(第1の変調周期)を有する第1の領域とX方向に第2のピッチ(第2の変調周期)を有する第2の領域が設けられる。
【0015】
なお、第1の変調周期の領域と第2の変調周期の領域は必ずしも分かれている必要はなく、両者は重なっていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態では、受光素子アレイ16はスケール20のパターンの反射光を受光しているが、スケール20のパターンの透過光を受光する場合にも本実施形態は適用可能である。即ち、受光素子アレイ16は、スケール20のパターンからの光を受光できれば足りる。
【0017】
信号処理回路30は、センサユニット10の受光素子アレイ16の出力信号を処理して位置情報に変換する。信号処理回路30は、センサユニット10で得られたエンコーダ信号の内挿処理や、記憶装置40への信号の書き込み、および、読み出しも行う。
【0018】
信号処理回路30は、不図示のノイズフィルタ、増幅回路、A/D変換回路の他に、信号分離手段31、第1の位相取得手段32、第2の位相取得手段33、位置情報取得手段34を有する。
【0019】
信号分離手段31は、受光素子アレイ16の出力をトラック21の各領域に対応する信号に分離する機能を有する。信号分離手段31は、受光IC14にスイッチ回路が設けられる場合にはスイッチ回路による接続を切り替える信号を送信し、受光IC14にスイッチ回路が設けられない場合には高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって信号を分離することができる。あるいは、信号分離手段31は、受光素子アレイ16にパターンピッチごとに別々の受光面を有する受光素子を設けることによって実現してもよい。
【0020】
第1の位相取得手段32は、(第1の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第1の領域のエネルギー分布の位相(第1の位相)を取得する。第1の位相取得手段32は後述する相対位置信号取得手段として機能してもよい。
【0021】
第2の位相取得手段33は、(第2の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第2の領域のエネルギー分布の位相(第2の位相)を取得する。
【0022】
なお、トラック21に第3のピッチを有するパターン列を有する領域などが設けられている場合にはそれに合わせて第3の位相取得手段等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0023】
位置情報取得手段34は、スケール20の位置の情報を取得する。位置情報取得手段34は、スケール20の相対位置を表す相対位置信号を取得する相対位置信号取得手段とスケール20の絶対位置を表す絶対位置信号を取得する絶対位置信号取得手段を有してもよい。
【0024】
動作において、センサユニット10内の光源12から出射した発散光束はスケール20のトラック21に照射され、トラック21で反射した光束はセンサユニット10の受光素子アレイ16に受光される。受光素子アレイ16は、トラック21の反射率分布が2倍拡大された像として受光する。受光素子アレイ16によって受光された光束は電気信号に変換され、エンコーダ信号として信号処理回路30に送られる。信号処理回路30は、受光素子アレイ16からの出力を位置情報に変換し、スケール20の位置の情報を高精度に取得および出力する。
【実施例1】
【0025】
図2は、図1に示すトラック21に適用可能な実施例1のトラック21Aの部分拡大平面図である。トラック21Aは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、2種類の領域(領域23、領域25)が交互に並べられており、図2の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Aの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。領域23は上述した第1の領域に相当し、領域25は上述した第2の領域に相当する。図2において、白色部は光を透過または吸収する非反射部22である。
【0026】
図3は、領域23のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域23は、X方向のピッチ(第1のピッチ)P1(=100μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部24と非反射部22から構成されている。ピッチP1は上述した第1の変調周期として機能する。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。
【0027】
領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW1/8以下の領域においては、反射部24のX方向の幅はP1・23/30である。Y方向の中心からの距離がW1/8からW1/4までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・17/30である。Y方向の中心からの距離がW1/4からWa・3/8までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・13/30である。Y方向の中心からの距離がW1・3/8からW1/2までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・7/30である。
【0028】
図4は、領域25のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域25は、X方向のピッチ(第2のピッチ)P2(=202μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部26、27と非反射部22から構成されている。ピッチP2は上述した第2の変調周期として機能する。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。
【0029】
領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW2/6以下の領域においては、反射部26のX方向の幅はP2・70/96である。この領域は、周期両端からそれぞれP2・3/96の幅で反射部27が形成される。Y方向中心からの距離がW2/6からW2・1/3までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・54/96である。Y方向の中心からの距離がW2・1/3からW2・1/2までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・22/96である。
【0030】
図5は、図1の受光素子アレイ16に適用可能な実施例1の受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Aにおいては、受光素子17AがX方向に50μmピッチで24個並んでおり、一つの受光素子17AはX方向の幅X_pdが50μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Aの全幅X_totalは1200μmである。
【0031】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0032】
各受光素子17Aからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Aがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0033】
スイッチ回路18は信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Aと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Aにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0034】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図5(a)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aの中心間隔は200μmとなっており、領域23(P1=100μm)を検出することができる。
【0035】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図5(b)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aの中心間隔は400μmとなっており、領域25(P2=202μm)を検出することができる。
【0036】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0037】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、領域25から得られる信号の補正について説明する。受光素子17Aの検出ピッチ(200μm)と、スケール状のパターン周期(202μm)がわずかにずれているため、2相正弦波状信号S(A)、S(B)間の相対位相差補正処理を行うことが望ましい。以下に、位相差補正の方法について説明する。
【0041】
まず、相対位相差誤差eを含む2相正弦波信号S(A)、S(B)は、位相をθとして、次式のように表すことができる。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
数式3、4より、2相正弦波信号S(A)、S(B)の和と差を取ると次に示すように誤差成分eを分離することができる。
【0045】
【数5】
【0046】
【数6】
【0047】
相対位相差誤差eは設計値よりe=(1−200/202)・πと表すことができる。数式5、6の振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)、2・cos(e(x)/2−π/4)について、それぞれ逆数を乗じることにより、以下のように位相差誤差を補正した2相正弦波信号S(A)’、S(B)’を算出する。但し、φ=θ−π/4である。
【0048】
【数7】
【0049】
【数8】
【0050】
相対位相差誤差eを初期化動作によって記憶してもよい。例えば、所定のX方向範囲のS(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)を取得し、−S(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・cos(e(x)/2−π/4)を取得する。そして、それぞれの値を記憶装置40に記憶してもよい。この場合、光源12と受光素子アレイ16Aの実装高さずれや、スケール20とセンサの相対傾きによる像倍率の誤差の影響を含めて補正することが可能である。
【0051】
以上のようにして得られたS(A)´をS(A)、S(B)´をS(B)とおく。
【0052】
スイッチ回路18への入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段32は領域23のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ1を次式の演算によって取得する。ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0〜2π位相に変換する逆正接演算関数である。
【0053】
【数9】
【0054】
同様に、スイッチ回路18への入力がローレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第2の位相取得手段33は領域25のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ2を次式の演算によって取得する。
【0055】
【数10】
【0056】
本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32の出力を相対位置信号として取得する。相対位置信号の変化を計数することによってスケール20が測定開始位置から所定周期として何周期目に位置するかの情報を取得することができる。
【0057】
また、本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32と第2の位相取得手段33の出力に基づいて後述するバーニア信号を生成することによってスケール20の絶対位置の情報を出力する。
【0058】
スイッチ回路18への入力の切り替え前後で、時間差をおかずに信号を取得することにより、ほぼ同一位置でのΦ1、Φ2を得ることができる。
【0059】
本実施例では、図5に示すように、受光素子アレイ16Aの複数の受光素子17Aの少なくとも一部は、位相信号Φ1を取得する受光素子17Aと位相信号Φ2を取得する受光素子17Aに共通に使用されている。このため、従来のように両者を別々に設けるよりも受光素子アレイが小型になる。
【0060】
スケール20が高速移動中は同期性が低下するが、その場合は複数回の取り込みを行って位相の平均を取るようにして同期性を確保すればよい。まず、検出ピッチ100μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をハイからローへ切り替える。続いて、検出ピッチ200μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をローからハイへ切り替え、再度検出ピッチ100μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得する。それぞれの取得タイミングのインターバルはほぼ一定とする。これらから演算した1回目のΦ1と2回目Φ1の平均を取ることによって、Φ1とΦ2の同期性を向上させることができる。
【0061】
次に、信号処理回路30は、絶対位置信号として機能するバーニア信号Svを下記の演算によって取得する。
【0062】
【数11】
【0063】
このとき、信号処理回路30は、Sv<0のときはSv=Sv+2π、Sv>2πのときはSv=Sv−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。位相信号Φ1、Φ2とX方向の位置xとの関係は以下のように表すことができる。
【0064】
【数12】
【0065】
【数13】
【0066】
バーニア信号Svの周期Tvは、Φ1−2・Φ2が0から±2πに変化するX方向の位置変化量であるので次式のように表すことができる。
【0067】
【数14】
【0068】
【数15】
【0069】
このようにして得られたバーニア信号Svとスケール位置との関係は図6(a)のようになる。本実施例では数式15よりバーニア信号Svの周期Tv=10.1mmとなり、これが検出可能範囲となる。受光素子アレイ長におけるスケール上の検出範囲はX方向に600μmの範囲なので検出可能範囲は受光素子アレイ長の検出範囲よりもはるかに長くなる。従って、バーニア信号Svを絶対位置信号として使用することによって広い範囲でスケールの移動方向の絶対位置を検出することができる。
【0070】
また、逆正接演算を施す前の位相出力Φ1とスケール位置との関係は図6(b)のようになる。位相出力Φ1をスケール20の相対位置を表す相対位置信号(インクリメンタル信号)として使用する。 本実施例の効果を更に詳しく説明するため、より一般化した原理を以下に示す。まず、位相Φ1、Φ2に係数を掛けずに差分演算を行い、バーニア信号Svを生成する場合、位相Φ1、Φ2はそれぞれ数式12、13のように表すことができ、バーニア信号Svは次式のように表すことができる。
【0071】
【数16】
【0072】
バーニア信号Svの周期Tvは、バーニア信号Svが0から±2πに変化するX方向の位置の変化量であるので次式が成立する。
【0073】
【数17】
【0074】
よって、次式でバーニア信号Svによる検出移動範囲を表わすことができる。
【0075】
【数18】
【0076】
次に、位相Φ1、Φ2を分離して取得できる条件について説明する。スケール上での検出幅Wpdによる空間周波数分解能Δfは1/Wpdとなるため、スケール上の2つの周期成分P1とP2を分離する条件は以下のように表わすことができる。
【0077】
【数19】
【0078】
よって、次式が成立する。
【0079】
【数20】
【0080】
数式18、20を比較すると、次式が成立する。
【0081】
【数21】
【0082】
つまり、Φ1、Φ2に係数を掛けずに差分演算を行った場合のバーニア信号で検出できる移動範囲はスケール上の検出幅Wpdを超えることはできない。これに対し、位相の差分演算をする際、Φ1、Φ2に対し、別々の係数を掛けることで、バーニア信号の検出可能範囲をWpd以上に伸ばすことが可能である。これを以下に説明する。
【0083】
この場合、バーニア信号Svは以下のように表すことができる。
【0084】
【数22】
【0085】
Φ1、Φ2は周期関数の位相成分であるため、2π→0となる出力の折り返しが発生する。バーニア信号SvをSv’=Sv±2πl(lは整数)なる関係で表わされるSv´(0≦Sv´<2π)によって出力範囲を変換した場合、これらの折り返し点での連続性を保つためには、n、mをいずれも整数に設定する必要がある。
【0086】
n・Φ1、m・Φ2の折り返しはそれぞれ2π・n、2π・mとなるので、n、mが整数であれば、それらを差分した結果の折り返し点の前後の差は2πの整数倍となり、連続性が保たれる。
【0087】
但し、Svの係数は整数m、nに限定されるものではない。即ち、数式22は、A/B=n/mを満たす係数A、Bを使用して次式として表されれば足りる。
【0088】
【数23】
【0089】
バーニア信号Svを、Sv’=Sv±c・l(lは整数)なる関係で表わされるSv´(0≦Sv´<c)によって出力範囲を変換した場合に、2π・n/c、2π・m/cがいずれも整数になるようにc、n、mを設定すればよい。
【0090】
バーニア信号Svの周期Tvは、n、mが整数の場合には以下のように表すことができる。
【0091】
【数24】
【0092】
数式20、24より、検出幅Wpdよりもバーニア信号Svの周期Tvが広くなる条件は次式のようになる。
【0093】
【数25】
【0094】
よって、次式を満たせば検出幅Wpdよりも大きな検出可能範囲の周期Tvを得ることができる。
【0095】
【数26】
【0096】
以上より、m、n、P1、P2を適切に設定すれば(例えば、P1≒(n/m)・P2に設定すれば)、検出幅Wpdよりもはるかに広い検出可能範囲を得ることができる。
【0097】
なお、n、mはなるべく小さい整数とすることが望ましい。なぜなら、Φ1、Φ2に含まれる位相検出誤差は、それぞれn倍、m倍されてバーニア信号Svに影響するためである。よって、最も望ましいのは、n、mを1と2の組み合わせにすることである。
【0098】
また、本実施例では、光学式エンコーダの例となっているが、磁気式エンコーダ、静電容量式エンコーダ等でも同様な効果が得られる。磁気式エンコーダの場合、スケール20に磁性体を用い、磁性の極性分布を本実施例のスケール20の反射膜と同様の形状で形成する。このスケールに近接してアレイ状に並べた磁界検出素子を配して検出する。静電容量式の場合は、本実施例のスケール反射膜と同様の形状に導電性の電極パターンを形成し、別のアレイ状の電極パターンを近接対向させて検出するようにすればよい。
【0099】
以上のようにして、センサを大型化せず、広い範囲の絶対位置信号を高精度に検出することが可能である。
【実施例2】
【0100】
図1に示すエンコーダの基本構成は本実施例でも同じである。図7は、図1に示すトラック21に適用可能な実施例2のトラック21Bの部分拡大平面図である。
【0101】
トラック21Bは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、3種類の領域(領域23、領域25、領域28)が順番に周期的に配列されている。図7の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Bの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。
【0102】
領域23は図3に示すもので、X方向のピッチP1(=99.50249μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなる。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0103】
領域25は図4に示すもので、X方向のピッチP2(=200μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなる。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0104】
図8は、領域28のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域28は、X方向のピッチP3(=769.23077μm)ごとに図8のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部29と非反射部22から構成されている。領域28のY方向の幅はW3=50μmである。
【0105】
領域28のY方向の位置によって反射部29のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW3/8以下の領域においては、反射部29のX方向の幅はP3・185/240である。Y方向の中心からの距離がW3/8からW3/4までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・141/240である。Y方向の中心からの距離がW3/4からWa・3/8までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・105/240である。Y方向の中心からの距離がW3・3/8からW3/2までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・61/240である。
【0106】
図9は、図1の受光素子アレイ16に適用可能な実施例2の受光素子アレイ16Bの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Bは、クロックタイミングに同期して、各受光素子17Bの受光量に対応した出力を順番に取りだすことができる、いわゆるリニアセンサアレイである。
【0107】
受光素子アレイ16Bは受光素子17BがX方向に12.5μmピッチで128個並んでおり、Y方向の幅Y_pdは600μm、X方向の全幅X_totalは1600μmである。
【0108】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向300μm、X方向800μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、領域23、領域25、および領域28がY方向にそれぞれ2ライン分ずつ含まれる。
【0109】
受光素子アレイ16Bの出力部19から出力されるリニアイメージ信号Vより領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法としては、高速フーリエ変換(FFT)を行ってもよいし、実施例1と同様に各周期に対応した4相正弦波に変換してもよい。
【0110】
こうして得られた領域23(P1=99.50249μm周期)に対応する信号の位相をΦ1、領域25(P2=200μm周期)に対応する信号の位相をΦ2、領域28(P3=769.23077μm周期)に対応する信号の位相をΦ3とする。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0111】
次に、位相信号Φa、Φbを次式の演算によって取得する。ここでも数式22においてSvをΦaとおいてm、nを2、1としている。
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【0114】
このとき、Φa<0のときはΦa=Φa+2π、Φa>2πのときはΦa=Φa−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。Φbについても同様である。
【0115】
数式24より、ΦaとΦbのX方向の周期Ta、Tbはそれぞれ、Ta=20000[μm]、Tb=5000[μm]となる。Φaとスケール位置との関係は図10(a)のようになる。Φbとスケール位置との関係は図10(b)のようになる。
【0116】
数式28の係数は検出ストロークであるTb=5000[μm]を得るために設定されている。係数は任意に設定可能であるが、長い検出ストロークを得るには、数式24においてTb=|P2・P3/(m×P2−n×P3)|の分母(m×P2−n×P3)を小さくする必要がある。P2=200μm、P3=769.23077μmからm=4、n=1とすることで上記ストロークを検出することができる。
【0117】
次に、信号処理回路30の位置情報取得手段34による絶対位置の情報を取得するための処理について説明する。まず、信号処理回路30は、上述の信号Svに対応する上位信号Cは位相信号Φaとして取得し、検出可能な総ストロークはTa=20000[μm]となる。
【0118】
次に、信号処理回路30は、上位信号CとΦbとの同期をとり、上位信号CからΦbの周期の何番目にあるかを算出し、Φbをつなぎ合わせてΦbの位置精度を持つ位置信号(次式の中位信号M)を取得する。
【0119】
【数29】
【0120】
ここで、ROUND[x]はxに最も近い整数に変換する関数である。
【0121】
続いて、信号処理回路30は、中位信号MとΦ3との同期をとり、中位信号MからΦ3の周期の何番目にあるかを算出し、Φ3をつなぎ合わせてΦ3の位置精度を持つ位置信号(次式の下位信号F)を取得する。
【0122】
【数30】
【0123】
更に、信号処理回路30は、下位信号FとΦ1との同期をとり、下位信号FからΦ1の周期の何番目にあるかを算出し、Φ1をつなぎ合わせてΦ1の位置精度を持つ絶対位置信号ABSを取得する。
【0124】
【数31】
【0125】
以上、高精度なインクリメントパターン信号を使用して、長ストロークの絶対位置の情報を取得することができる。また、ΦaとΦbには、数式27、28に示すように、ともにΦ2の成分が同符号で含まれている。これにより、ΦaとΦbとの相対的な位相誤差を低減し、合成処理のエラーを回避することができる。
【0126】
本実施例は相対位置信号としてのΦ1の位置精度を有する絶対位置信号ABSを生成しているので相対位置信号を使用する必要がない。もちろん絶対位置信号ABSを実施例1においても生成してもよい。
【0127】
以上、本実施例によれば、実施例1よりも高精度に絶対位置信号を取得することができる。
【実施例3】
【0128】
実施例3におけるエンコーダの構成およびスケール20のパターンは実施例1と同様である。図11は、図1に示す受光素子アレイ16に適用可能な実施例3の受光素子アレイ16Cの受光面を示す平面図である。
【0129】
受光素子アレイ16CはY方向に2列に分かれており、各列のピッチ、アレイ数が異なっている。
【0130】
図11の下側にある1列目は、第1の検出素子である受光素子17C1がX方向に50μmピッチで24個並んでおり、各受光素子17C1はX方向の幅X_pd1が50μm、Y方向の幅Y_pd1が800μm、全幅X_totalが1200μmである。スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。電気的に接続されている受光素子17C1の中心間隔は200μmであり、領域23(P1=100μm)を検出することができる。
【0131】
図11の上側にある2列目は、第2の検出素子である受光素子17C2がX方向に100μmピッチで12個並んでおり、各受光素子17C2はX方向の幅X_pd2が100μm、Y方向の幅Y_pd2が800μm、全幅X_totalは1200μmである。スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。電気的に接続されている受光素子17C2の中心間隔は400μmであり、領域25(P2=202μm)を検出することができる。
【0132】
それぞれの列の受光素子からの出力は、別々の4つの初段増幅器(不図示)に接続されている。信号処理回路30は、1列目の受光素子17C1より得られた4相正弦波状信号S(A1+)、S(B1+)、S(A1−)、S(B1−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A1)、S(B1)を生成する。
【0133】
【数32】
【0134】
【数33】
【0135】
同様に、信号処理回路30は、2列目の受光素子17C2より得られた4相正弦波状信号S(A2+)、S(B2+)、S(A2−)、S(B2−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A2)、S(B2)を生成する。
【0136】
【数34】
【0137】
【数35】
【0138】
更に、信号処理回路30は、以下の演算によりP1に対応する位相信号Φ1および、P2に対応する位相信号Φ2を生成する。
【0139】
【数36】
【0140】
【数37】
【0141】
以降の処理は実施例1と同様である。
【0142】
ここで、それぞれの受光素子アレイ16Cが異なる周期パターンからの像を同時に受光する利点について説明する。それぞれの受光素子アレイで別々の周期パターンを走査させる場合の各受光素子の読み取り領域と位置ずれ可能なY方向の範囲を図12に示す。
【0143】
受光素子の読み取り領域が対応するパターンからはみ出ないようにするためには、読み取り領域の間隔Dによって、可能な位置ずれ量が±D/2に制限されるため、Y方向の相対位置を精密に位置決めする必要がある。
【0144】
一方、本実施例は、異なる周期パターンからの像をまとめて受光し、必要な信号のみを分離して検出しており、上記制限を受けず、Y方向の位置によらず安定的に高精度な信号を取得することが可能である。
【0145】
以上のように、本実施例は、別々の受光素子で異なる周期を取得するようにしたので、切り替え処理が不要となる。よって、実施例1に対し周期信号間の時間的同期性を重視するシステムの場合には有効である。
【0146】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
エンコーダは位置(変位)を検出する用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0148】
16…受光素子アレイ(検出素子アレイ)、20…スケール、23…第1の領域、25…第2の領域、30…信号処理回路(信号処理手段)、32…第1の位相取得手段、33…第2の位相取得手段、34…位置情報取得手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アブソリュートエンコーダの検出精度をインクリメンタルエンコーダのように上げるため、スケールの各トラックにインクリメンタルパターンを、そのパターンの形状又はピッチが測長方向に変調周期で周期的に変化するように形成している。これにより、インクリメンタルパターンは相対位置の情報のみではなく変調周期の繰り返しによる絶対位置の変調情報を持つことになる。この結果、高精度な相対位置の情報と精度がそれほど高くない絶対位置情報を利用してスケールの絶対位置を高精度に検出することができる。
【0003】
特許文献1は、スケールからの光を受光する受光素子アレイとして、インクリメンタル信号検出用フォトダイオードアレイ(INC用アレイ)と変調信号検出用フォトダイオードアレイ(変調用アレイ)を設けている。INC用アレイの測長方向の長さは変調周期の整数倍の長さに設定され、INC用アレイからの出力に基づいて相対位置を表す相対位置信号が生成される。変調用アレイからの出力に基づいて変調パターン位置信号が生成され、これを絶対位置信号として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、異なる周期の信号を各トラックに設けられたインクリメンタルパターンから得ているのでパターンを検出可能な範囲がINC用アレイの測長方向の長さによって制限されてしまう。よって、パターンの広い範囲を小さなINC用アレイで検出することができない。
【0006】
本発明は、大型化を招かずに広範囲で絶対位置信号を高精度に取得可能なエンコーダを提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンコーダは、エネルギー分布を空間変調するパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、を有する。前記パターン列は、移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有する。前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段と、前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|の条件を満たす整数m、nに対し、A/B=n/mの関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大型化を招かずに広範囲で絶対位置信号を高精度に取得可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンコーダのブロック図である。(実施例1、2、3)
【図2】トラックの部分拡大平面図である。(実施例1)
【図3】図2の部分拡大平面図である。(実施例1)
【図4】図2の部分拡大平面図である。(実施例1)
【図5】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例1)
【図6】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例1)
【図7】トラックの部分拡大平面図である。(実施例2)
【図8】図7の部分拡大平面図である。(実施例2)
【図9】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例2)
【図10】検出信号とスケール位置との関係を示す図である。(実施例2)
【図11】受光素子アレイの受光面の平面図である。(実施例3)
【図12】2トラック構成の検出素子の読み取り領域とパターン領域の位置関係を示す図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態の光学式エンコーダのブロック図である。エンコーダは、固定部に取り付けられるセンサユニット10、不図示の可動部に取り付けられるスケール20、信号処理回路(信号処理手段)30、記憶装置40を有する。なお、固定部と可動部の関係は逆でもよく、センサユニット10とスケール20が相対的に移動可能な構成であれば足りる。
【0012】
センサユニット10は、LEDからなる光源12と受光素子アレイ16を有する受光IC14が同一パッケージ内に実装された受発光一体型のセンサユニットである。受光素子アレイ16は、スケール20のパターンからのエネルギー分布を検出する複数の検出素子が、スケール20(または可動部の)移動方向(測長方向)であるX方向に並べられた検出素子アレイとして機能する。本実施形態ではエネルギーは光であるが、後述するように、磁気、電気などその種類は光に限定されない。
【0013】
スケール20は、ガラス基板上にクロム反射膜のパターンを複数有するパターン列がトラック21にパターニングされている。パターンはエネルギー分布を空間変調するためのパターンである。
【0014】
各トラック21は、X方向に垂直なY方向に周期的に配列され、X方向にそれぞれ異なるピッチ(変調周期)を有する複数の領域を有する。例えば、2種類の領域が設けられている場合には、X方向に第1のピッチ(第1の変調周期)を有する第1の領域とX方向に第2のピッチ(第2の変調周期)を有する第2の領域が設けられる。
【0015】
なお、第1の変調周期の領域と第2の変調周期の領域は必ずしも分かれている必要はなく、両者は重なっていてもよい。
【0016】
なお、本実施形態では、受光素子アレイ16はスケール20のパターンの反射光を受光しているが、スケール20のパターンの透過光を受光する場合にも本実施形態は適用可能である。即ち、受光素子アレイ16は、スケール20のパターンからの光を受光できれば足りる。
【0017】
信号処理回路30は、センサユニット10の受光素子アレイ16の出力信号を処理して位置情報に変換する。信号処理回路30は、センサユニット10で得られたエンコーダ信号の内挿処理や、記憶装置40への信号の書き込み、および、読み出しも行う。
【0018】
信号処理回路30は、不図示のノイズフィルタ、増幅回路、A/D変換回路の他に、信号分離手段31、第1の位相取得手段32、第2の位相取得手段33、位置情報取得手段34を有する。
【0019】
信号分離手段31は、受光素子アレイ16の出力をトラック21の各領域に対応する信号に分離する機能を有する。信号分離手段31は、受光IC14にスイッチ回路が設けられる場合にはスイッチ回路による接続を切り替える信号を送信し、受光IC14にスイッチ回路が設けられない場合には高速フーリエ変換(FFT)を行うことによって信号を分離することができる。あるいは、信号分離手段31は、受光素子アレイ16にパターンピッチごとに別々の受光面を有する受光素子を設けることによって実現してもよい。
【0020】
第1の位相取得手段32は、(第1の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第1の領域のエネルギー分布の位相(第1の位相)を取得する。第1の位相取得手段32は後述する相対位置信号取得手段として機能してもよい。
【0021】
第2の位相取得手段33は、(第2の領域に対応する)受光素子アレイ16の出力信号(デジタル信号)に対して逆正接演算を行うことによって第2の領域のエネルギー分布の位相(第2の位相)を取得する。
【0022】
なお、トラック21に第3のピッチを有するパターン列を有する領域などが設けられている場合にはそれに合わせて第3の位相取得手段等が設けられてもよいことは言うまでもない。
【0023】
位置情報取得手段34は、スケール20の位置の情報を取得する。位置情報取得手段34は、スケール20の相対位置を表す相対位置信号を取得する相対位置信号取得手段とスケール20の絶対位置を表す絶対位置信号を取得する絶対位置信号取得手段を有してもよい。
【0024】
動作において、センサユニット10内の光源12から出射した発散光束はスケール20のトラック21に照射され、トラック21で反射した光束はセンサユニット10の受光素子アレイ16に受光される。受光素子アレイ16は、トラック21の反射率分布が2倍拡大された像として受光する。受光素子アレイ16によって受光された光束は電気信号に変換され、エンコーダ信号として信号処理回路30に送られる。信号処理回路30は、受光素子アレイ16からの出力を位置情報に変換し、スケール20の位置の情報を高精度に取得および出力する。
【実施例1】
【0025】
図2は、図1に示すトラック21に適用可能な実施例1のトラック21Aの部分拡大平面図である。トラック21Aは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、2種類の領域(領域23、領域25)が交互に並べられており、図2の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Aの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。領域23は上述した第1の領域に相当し、領域25は上述した第2の領域に相当する。図2において、白色部は光を透過または吸収する非反射部22である。
【0026】
図3は、領域23のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域23は、X方向のピッチ(第1のピッチ)P1(=100μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部24と非反射部22から構成されている。ピッチP1は上述した第1の変調周期として機能する。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。
【0027】
領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW1/8以下の領域においては、反射部24のX方向の幅はP1・23/30である。Y方向の中心からの距離がW1/8からW1/4までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・17/30である。Y方向の中心からの距離がW1/4からWa・3/8までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・13/30である。Y方向の中心からの距離がW1・3/8からW1/2までの範囲では、反射部24のX方向の幅はP1・7/30である。
【0028】
図4は、領域25のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域25は、X方向のピッチ(第2のピッチ)P2(=202μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部26、27と非反射部22から構成されている。ピッチP2は上述した第2の変調周期として機能する。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。
【0029】
領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW2/6以下の領域においては、反射部26のX方向の幅はP2・70/96である。この領域は、周期両端からそれぞれP2・3/96の幅で反射部27が形成される。Y方向中心からの距離がW2/6からW2・1/3までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・54/96である。Y方向の中心からの距離がW2・1/3からW2・1/2までの範囲では、反射部26のX方向の幅はP2・22/96である。
【0030】
図5は、図1の受光素子アレイ16に適用可能な実施例1の受光素子アレイ16Aの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Aにおいては、受光素子17AがX方向に50μmピッチで24個並んでおり、一つの受光素子17AはX方向の幅X_pdが50μmであり、Y方向の幅Y_pdは800μmである。受光素子アレイ16Aの全幅X_totalは1200μmである。
【0031】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。
【0032】
各受光素子17Aからの出力は、スイッチ回路18を介して切り替えられ、選択的に後段の4つの不図示の初段増幅器に接続されている。4つの初段増幅器は、出力端子A+、B+、A−、B−(それぞれA+相、B+相、A−相、B−相を表す)に対応する受光素子17Aがそれぞれ接続され、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)を出力する。
【0033】
スイッチ回路18は信号処理回路30の信号分離手段31からの入力によって受光素子17Aと出力端子との接続を切り替えることができる。この結果、複数の受光素子17Aにおいて電気的に加算される間隔が切り替わる。
【0034】
信号処理回路30からの入力がハイレベルの場合は、図5(a)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aの中心間隔は200μmとなっており、領域23(P1=100μm)を検出することができる。
【0035】
信号処理回路30からの入力がローレベルの場合は、図5(b)に示すように、電気的に接続されている受光素子17Aの中心間隔は400μmとなっており、領域25(P2=202μm)を検出することができる。
【0036】
4相正弦波状信号の相対位相はそれぞれの検出ピッチに対し、S(A+)を基準とすると、S(B+)は約+90度S(A−)は約+180度S(B−)は約+270度の関係にある。
【0037】
信号処理回路30は、4相正弦波出力S(A+)、S(B+)、S(A−)、S(B−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A)、S(B)を生成する。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、領域25から得られる信号の補正について説明する。受光素子17Aの検出ピッチ(200μm)と、スケール状のパターン周期(202μm)がわずかにずれているため、2相正弦波状信号S(A)、S(B)間の相対位相差補正処理を行うことが望ましい。以下に、位相差補正の方法について説明する。
【0041】
まず、相対位相差誤差eを含む2相正弦波信号S(A)、S(B)は、位相をθとして、次式のように表すことができる。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
数式3、4より、2相正弦波信号S(A)、S(B)の和と差を取ると次に示すように誤差成分eを分離することができる。
【0045】
【数5】
【0046】
【数6】
【0047】
相対位相差誤差eは設計値よりe=(1−200/202)・πと表すことができる。数式5、6の振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)、2・cos(e(x)/2−π/4)について、それぞれ逆数を乗じることにより、以下のように位相差誤差を補正した2相正弦波信号S(A)’、S(B)’を算出する。但し、φ=θ−π/4である。
【0048】
【数7】
【0049】
【数8】
【0050】
相対位相差誤差eを初期化動作によって記憶してもよい。例えば、所定のX方向範囲のS(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・sin(e(x)/2−π/4)を取得し、−S(A)+S(B)の(最大値−最小値)/2から振幅成分2・cos(e(x)/2−π/4)を取得する。そして、それぞれの値を記憶装置40に記憶してもよい。この場合、光源12と受光素子アレイ16Aの実装高さずれや、スケール20とセンサの相対傾きによる像倍率の誤差の影響を含めて補正することが可能である。
【0051】
以上のようにして得られたS(A)´をS(A)、S(B)´をS(B)とおく。
【0052】
スイッチ回路18への入力がハイレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第1の位相取得手段32は領域23のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ1を次式の演算によって取得する。ATAN2[Y,X]は、象限を判別して0〜2π位相に変換する逆正接演算関数である。
【0053】
【数9】
【0054】
同様に、スイッチ回路18への入力がローレベルのときのS(A)、S(B)より、信号処理回路30の第2の位相取得手段33は領域25のエネルギー分布の位相(位相信号)Φ2を次式の演算によって取得する。
【0055】
【数10】
【0056】
本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32の出力を相対位置信号として取得する。相対位置信号の変化を計数することによってスケール20が測定開始位置から所定周期として何周期目に位置するかの情報を取得することができる。
【0057】
また、本実施例の位置信号取得手段は、第1の位相取得手段32と第2の位相取得手段33の出力に基づいて後述するバーニア信号を生成することによってスケール20の絶対位置の情報を出力する。
【0058】
スイッチ回路18への入力の切り替え前後で、時間差をおかずに信号を取得することにより、ほぼ同一位置でのΦ1、Φ2を得ることができる。
【0059】
本実施例では、図5に示すように、受光素子アレイ16Aの複数の受光素子17Aの少なくとも一部は、位相信号Φ1を取得する受光素子17Aと位相信号Φ2を取得する受光素子17Aに共通に使用されている。このため、従来のように両者を別々に設けるよりも受光素子アレイが小型になる。
【0060】
スケール20が高速移動中は同期性が低下するが、その場合は複数回の取り込みを行って位相の平均を取るようにして同期性を確保すればよい。まず、検出ピッチ100μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をハイからローへ切り替える。続いて、検出ピッチ200μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得し、スイッチ回路18への入力をローからハイへ切り替え、再度検出ピッチ100μmでS(A+)、S(A−)、S(B+)、S(B−)を取得する。それぞれの取得タイミングのインターバルはほぼ一定とする。これらから演算した1回目のΦ1と2回目Φ1の平均を取ることによって、Φ1とΦ2の同期性を向上させることができる。
【0061】
次に、信号処理回路30は、絶対位置信号として機能するバーニア信号Svを下記の演算によって取得する。
【0062】
【数11】
【0063】
このとき、信号処理回路30は、Sv<0のときはSv=Sv+2π、Sv>2πのときはSv=Sv−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。位相信号Φ1、Φ2とX方向の位置xとの関係は以下のように表すことができる。
【0064】
【数12】
【0065】
【数13】
【0066】
バーニア信号Svの周期Tvは、Φ1−2・Φ2が0から±2πに変化するX方向の位置変化量であるので次式のように表すことができる。
【0067】
【数14】
【0068】
【数15】
【0069】
このようにして得られたバーニア信号Svとスケール位置との関係は図6(a)のようになる。本実施例では数式15よりバーニア信号Svの周期Tv=10.1mmとなり、これが検出可能範囲となる。受光素子アレイ長におけるスケール上の検出範囲はX方向に600μmの範囲なので検出可能範囲は受光素子アレイ長の検出範囲よりもはるかに長くなる。従って、バーニア信号Svを絶対位置信号として使用することによって広い範囲でスケールの移動方向の絶対位置を検出することができる。
【0070】
また、逆正接演算を施す前の位相出力Φ1とスケール位置との関係は図6(b)のようになる。位相出力Φ1をスケール20の相対位置を表す相対位置信号(インクリメンタル信号)として使用する。 本実施例の効果を更に詳しく説明するため、より一般化した原理を以下に示す。まず、位相Φ1、Φ2に係数を掛けずに差分演算を行い、バーニア信号Svを生成する場合、位相Φ1、Φ2はそれぞれ数式12、13のように表すことができ、バーニア信号Svは次式のように表すことができる。
【0071】
【数16】
【0072】
バーニア信号Svの周期Tvは、バーニア信号Svが0から±2πに変化するX方向の位置の変化量であるので次式が成立する。
【0073】
【数17】
【0074】
よって、次式でバーニア信号Svによる検出移動範囲を表わすことができる。
【0075】
【数18】
【0076】
次に、位相Φ1、Φ2を分離して取得できる条件について説明する。スケール上での検出幅Wpdによる空間周波数分解能Δfは1/Wpdとなるため、スケール上の2つの周期成分P1とP2を分離する条件は以下のように表わすことができる。
【0077】
【数19】
【0078】
よって、次式が成立する。
【0079】
【数20】
【0080】
数式18、20を比較すると、次式が成立する。
【0081】
【数21】
【0082】
つまり、Φ1、Φ2に係数を掛けずに差分演算を行った場合のバーニア信号で検出できる移動範囲はスケール上の検出幅Wpdを超えることはできない。これに対し、位相の差分演算をする際、Φ1、Φ2に対し、別々の係数を掛けることで、バーニア信号の検出可能範囲をWpd以上に伸ばすことが可能である。これを以下に説明する。
【0083】
この場合、バーニア信号Svは以下のように表すことができる。
【0084】
【数22】
【0085】
Φ1、Φ2は周期関数の位相成分であるため、2π→0となる出力の折り返しが発生する。バーニア信号SvをSv’=Sv±2πl(lは整数)なる関係で表わされるSv´(0≦Sv´<2π)によって出力範囲を変換した場合、これらの折り返し点での連続性を保つためには、n、mをいずれも整数に設定する必要がある。
【0086】
n・Φ1、m・Φ2の折り返しはそれぞれ2π・n、2π・mとなるので、n、mが整数であれば、それらを差分した結果の折り返し点の前後の差は2πの整数倍となり、連続性が保たれる。
【0087】
但し、Svの係数は整数m、nに限定されるものではない。即ち、数式22は、A/B=n/mを満たす係数A、Bを使用して次式として表されれば足りる。
【0088】
【数23】
【0089】
バーニア信号Svを、Sv’=Sv±c・l(lは整数)なる関係で表わされるSv´(0≦Sv´<c)によって出力範囲を変換した場合に、2π・n/c、2π・m/cがいずれも整数になるようにc、n、mを設定すればよい。
【0090】
バーニア信号Svの周期Tvは、n、mが整数の場合には以下のように表すことができる。
【0091】
【数24】
【0092】
数式20、24より、検出幅Wpdよりもバーニア信号Svの周期Tvが広くなる条件は次式のようになる。
【0093】
【数25】
【0094】
よって、次式を満たせば検出幅Wpdよりも大きな検出可能範囲の周期Tvを得ることができる。
【0095】
【数26】
【0096】
以上より、m、n、P1、P2を適切に設定すれば(例えば、P1≒(n/m)・P2に設定すれば)、検出幅Wpdよりもはるかに広い検出可能範囲を得ることができる。
【0097】
なお、n、mはなるべく小さい整数とすることが望ましい。なぜなら、Φ1、Φ2に含まれる位相検出誤差は、それぞれn倍、m倍されてバーニア信号Svに影響するためである。よって、最も望ましいのは、n、mを1と2の組み合わせにすることである。
【0098】
また、本実施例では、光学式エンコーダの例となっているが、磁気式エンコーダ、静電容量式エンコーダ等でも同様な効果が得られる。磁気式エンコーダの場合、スケール20に磁性体を用い、磁性の極性分布を本実施例のスケール20の反射膜と同様の形状で形成する。このスケールに近接してアレイ状に並べた磁界検出素子を配して検出する。静電容量式の場合は、本実施例のスケール反射膜と同様の形状に導電性の電極パターンを形成し、別のアレイ状の電極パターンを近接対向させて検出するようにすればよい。
【0099】
以上のようにして、センサを大型化せず、広い範囲の絶対位置信号を高精度に検出することが可能である。
【実施例2】
【0100】
図1に示すエンコーダの基本構成は本実施例でも同じである。図7は、図1に示すトラック21に適用可能な実施例2のトラック21Bの部分拡大平面図である。
【0101】
トラック21Bは、スケール20の移動方向(X方向)に垂直な方向(Y方向)に、3種類の領域(領域23、領域25、領域28)が順番に周期的に配列されている。図7の全幅を含む範囲(受光素子アレイ16Bの受光面で走査され得る領域)が1トラックである。
【0102】
領域23は図3に示すもので、X方向のピッチP1(=99.50249μm)ごとに図3のパターンが配置されたパターン列からなる。領域23のY方向の幅はW1=50μmである。領域23のY方向の位置によって反射部24のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0103】
領域25は図4に示すもので、X方向のピッチP2(=200μm)ごとに図4のパターンが配置されたパターン列からなる。領域25のY方向の幅はW2=50μmである。領域25のY方向の位置によって反射部26、28のX方向の幅が異なる点は実施例1と同様である。
【0104】
図8は、領域28のX方向の1周期分の拡大平面図である。領域28は、X方向のピッチP3(=769.23077μm)ごとに図8のパターンが配置されたパターン列からなり、各パターンは反射膜から構成されて光を反射する反射部29と非反射部22から構成されている。領域28のY方向の幅はW3=50μmである。
【0105】
領域28のY方向の位置によって反射部29のX方向の幅が異なる。Y方向の中心からの距離がW3/8以下の領域においては、反射部29のX方向の幅はP3・185/240である。Y方向の中心からの距離がW3/8からW3/4までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・141/240である。Y方向の中心からの距離がW3/4からWa・3/8までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・105/240である。Y方向の中心からの距離がW3・3/8からW3/2までの範囲では、反射部29のX方向の幅はP3・61/240である。
【0106】
図9は、図1の受光素子アレイ16に適用可能な実施例2の受光素子アレイ16Bの受光面の平面図である。受光素子アレイ16Bは、クロックタイミングに同期して、各受光素子17Bの受光量に対応した出力を順番に取りだすことができる、いわゆるリニアセンサアレイである。
【0107】
受光素子アレイ16Bは受光素子17BがX方向に12.5μmピッチで128個並んでおり、Y方向の幅Y_pdは600μm、X方向の全幅X_totalは1600μmである。
【0108】
スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向300μm、X方向800μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、領域23、領域25、および領域28がY方向にそれぞれ2ライン分ずつ含まれる。
【0109】
受光素子アレイ16Bの出力部19から出力されるリニアイメージ信号Vより領域23、25、28の各周期信号成分を分離する方法としては、高速フーリエ変換(FFT)を行ってもよいし、実施例1と同様に各周期に対応した4相正弦波に変換してもよい。
【0110】
こうして得られた領域23(P1=99.50249μm周期)に対応する信号の位相をΦ1、領域25(P2=200μm周期)に対応する信号の位相をΦ2、領域28(P3=769.23077μm周期)に対応する信号の位相をΦ3とする。移動範囲の片方の端(X=0mm)において、Φ1=Φ2=Φ3=0となるように、スケール20上の3つの周期パターンの初期位相が設定されている。
【0111】
次に、位相信号Φa、Φbを次式の演算によって取得する。ここでも数式22においてSvをΦaとおいてm、nを2、1としている。
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【0114】
このとき、Φa<0のときはΦa=Φa+2π、Φa>2πのときはΦa=Φa−2πの演算を繰り返し行って0〜2πの出力範囲に変換する。Φbについても同様である。
【0115】
数式24より、ΦaとΦbのX方向の周期Ta、Tbはそれぞれ、Ta=20000[μm]、Tb=5000[μm]となる。Φaとスケール位置との関係は図10(a)のようになる。Φbとスケール位置との関係は図10(b)のようになる。
【0116】
数式28の係数は検出ストロークであるTb=5000[μm]を得るために設定されている。係数は任意に設定可能であるが、長い検出ストロークを得るには、数式24においてTb=|P2・P3/(m×P2−n×P3)|の分母(m×P2−n×P3)を小さくする必要がある。P2=200μm、P3=769.23077μmからm=4、n=1とすることで上記ストロークを検出することができる。
【0117】
次に、信号処理回路30の位置情報取得手段34による絶対位置の情報を取得するための処理について説明する。まず、信号処理回路30は、上述の信号Svに対応する上位信号Cは位相信号Φaとして取得し、検出可能な総ストロークはTa=20000[μm]となる。
【0118】
次に、信号処理回路30は、上位信号CとΦbとの同期をとり、上位信号CからΦbの周期の何番目にあるかを算出し、Φbをつなぎ合わせてΦbの位置精度を持つ位置信号(次式の中位信号M)を取得する。
【0119】
【数29】
【0120】
ここで、ROUND[x]はxに最も近い整数に変換する関数である。
【0121】
続いて、信号処理回路30は、中位信号MとΦ3との同期をとり、中位信号MからΦ3の周期の何番目にあるかを算出し、Φ3をつなぎ合わせてΦ3の位置精度を持つ位置信号(次式の下位信号F)を取得する。
【0122】
【数30】
【0123】
更に、信号処理回路30は、下位信号FとΦ1との同期をとり、下位信号FからΦ1の周期の何番目にあるかを算出し、Φ1をつなぎ合わせてΦ1の位置精度を持つ絶対位置信号ABSを取得する。
【0124】
【数31】
【0125】
以上、高精度なインクリメントパターン信号を使用して、長ストロークの絶対位置の情報を取得することができる。また、ΦaとΦbには、数式27、28に示すように、ともにΦ2の成分が同符号で含まれている。これにより、ΦaとΦbとの相対的な位相誤差を低減し、合成処理のエラーを回避することができる。
【0126】
本実施例は相対位置信号としてのΦ1の位置精度を有する絶対位置信号ABSを生成しているので相対位置信号を使用する必要がない。もちろん絶対位置信号ABSを実施例1においても生成してもよい。
【0127】
以上、本実施例によれば、実施例1よりも高精度に絶対位置信号を取得することができる。
【実施例3】
【0128】
実施例3におけるエンコーダの構成およびスケール20のパターンは実施例1と同様である。図11は、図1に示す受光素子アレイ16に適用可能な実施例3の受光素子アレイ16Cの受光面を示す平面図である。
【0129】
受光素子アレイ16CはY方向に2列に分かれており、各列のピッチ、アレイ数が異なっている。
【0130】
図11の下側にある1列目は、第1の検出素子である受光素子17C1がX方向に50μmピッチで24個並んでおり、各受光素子17C1はX方向の幅X_pd1が50μm、Y方向の幅Y_pd1が800μm、全幅X_totalが1200μmである。スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。電気的に接続されている受光素子17C1の中心間隔は200μmであり、領域23(P1=100μm)を検出することができる。
【0131】
図11の上側にある2列目は、第2の検出素子である受光素子17C2がX方向に100μmピッチで12個並んでおり、各受光素子17C2はX方向の幅X_pd2が100μm、Y方向の幅Y_pd2が800μm、全幅X_totalは1200μmである。スケール上のパターンは2倍の拡大投影となるため、スケール上の検出範囲はY方向400μm、X方向600μmの範囲となる。よって、スケール上の検出範囲には、位置検出方向に100μmのピッチを有する領域23と202μmのピッチを有する領域25がY方向にそれぞれ4ライン分ずつ含まれる。電気的に接続されている受光素子17C2の中心間隔は400μmであり、領域25(P2=202μm)を検出することができる。
【0132】
それぞれの列の受光素子からの出力は、別々の4つの初段増幅器(不図示)に接続されている。信号処理回路30は、1列目の受光素子17C1より得られた4相正弦波状信号S(A1+)、S(B1+)、S(A1−)、S(B1−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A1)、S(B1)を生成する。
【0133】
【数32】
【0134】
【数33】
【0135】
同様に、信号処理回路30は、2列目の受光素子17C2より得られた4相正弦波状信号S(A2+)、S(B2+)、S(A2−)、S(B2−)について次式の演算を行って直流分が除去された2相正弦波状信号S(A2)、S(B2)を生成する。
【0136】
【数34】
【0137】
【数35】
【0138】
更に、信号処理回路30は、以下の演算によりP1に対応する位相信号Φ1および、P2に対応する位相信号Φ2を生成する。
【0139】
【数36】
【0140】
【数37】
【0141】
以降の処理は実施例1と同様である。
【0142】
ここで、それぞれの受光素子アレイ16Cが異なる周期パターンからの像を同時に受光する利点について説明する。それぞれの受光素子アレイで別々の周期パターンを走査させる場合の各受光素子の読み取り領域と位置ずれ可能なY方向の範囲を図12に示す。
【0143】
受光素子の読み取り領域が対応するパターンからはみ出ないようにするためには、読み取り領域の間隔Dによって、可能な位置ずれ量が±D/2に制限されるため、Y方向の相対位置を精密に位置決めする必要がある。
【0144】
一方、本実施例は、異なる周期パターンからの像をまとめて受光し、必要な信号のみを分離して検出しており、上記制限を受けず、Y方向の位置によらず安定的に高精度な信号を取得することが可能である。
【0145】
以上のように、本実施例は、別々の受光素子で異なる周期を取得するようにしたので、切り替え処理が不要となる。よって、実施例1に対し周期信号間の時間的同期性を重視するシステムの場合には有効である。
【0146】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
エンコーダは位置(変位)を検出する用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0148】
16…受光素子アレイ(検出素子アレイ)、20…スケール、23…第1の領域、25…第2の領域、30…信号処理回路(信号処理手段)、32…第1の位相取得手段、33…第2の位相取得手段、34…位置情報取得手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー分布を空間変調するパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、
前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、
前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、
を有し、
前記パターン列は、移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有し、
前記信号処理手段は、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段と、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、
前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、前記第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、
|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|
の条件を満たす整数m、nに対し、
A/B=n/m
の関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、
を有することを特徴とするエンコーダ。
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【請求項2】
前記パターン列は、前記移動方向に垂直な方向に周期的に配列された、前記移動方向に前記第1の変調周期を有する第1の領域と、前記移動方向に前記第2の変調周期を有する第2の領域と、を有することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記複数の検出素子の少なくとも一部の検出素子は、前記第1の位相取得手段が前記第1の位相を取得する際に使用されると共に、前記第2の位相取得手段が前記第2の位相を取得する際にも使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号を前記パターン列の各領域に対応する信号に分離する信号分離手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3の1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記信号分離手段は、前記複数の検出素子の電気的に加算される間隔を第1の位相を検出可能な間隔と第2の位相を検出可能な間隔との間で切り替えることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記信号分離手段は前記検出素子アレイの出力信号に高速フーリエ変換を施すことを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記信号処理手段は、前記位置信号と前記第1の位相取得手段が検出した前記第1の位相との同期をとることによって新しい位置信号を生成し、当該新しい位置信号に基づいて前記スケールの位置の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記複数の検出素子は、
前記第1の位相取得手段に出力を与える複数の第1の検出素子と、
前記第2の位相取得手段に出力を与える複数の第2の検出素子と、
を有し、
前記第1の位相取得手段と前記第2の位相取得手段は前記複数の検出素子から同時に出力を取得することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項1】
エネルギー分布を空間変調するパターンを有するパターン列が形成されているスケールと、
前記スケールに相対的に移動するように配置され、前記パターン列からの前記エネルギー分布を検出する複数の検出素子が移動方向に並べられた検出素子アレイと、
前記検出素子アレイの出力信号を処理して位置情報に変換する信号処理手段と、
を有し、
前記パターン列は、移動方向に第1の変調周期と、前記第1の変調周期とは異なる第2の変調周期を有し、
前記信号処理手段は、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第1の変調周期の第1の位相を取得する第1の位相取得手段と、
前記検出素子アレイの出力信号から前記第2の変調周期の第2の位相を取得する第2の位相取得手段と、
前記第1の位相取得手段が取得した前記第1の位相と、前記第2の位相取得手段が取得した前記第2の位相と、
|(m・P1−n・P2)|<|(P1−P2)|
の条件を満たす整数m、nに対し、
A/B=n/m
の関係を満たす2つの係数A、Bを用いて次式を満たすSvを前記スケールの位置を表す位置信号として取得する位置情報取得手段と、
を有することを特徴とするエンコーダ。
Sv=A・Φ1−B・Φ2
但し、Φ1は前記第1の位相、Φ2は前記第2の位相、P1は前記第1の変調周期、P2は前記第2の変調周期である。
【請求項2】
前記パターン列は、前記移動方向に垂直な方向に周期的に配列された、前記移動方向に前記第1の変調周期を有する第1の領域と、前記移動方向に前記第2の変調周期を有する第2の領域と、を有することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記複数の検出素子の少なくとも一部の検出素子は、前記第1の位相取得手段が前記第1の位相を取得する際に使用されると共に、前記第2の位相取得手段が前記第2の位相を取得する際にも使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記信号処理手段は、前記検出素子アレイの出力信号を前記パターン列の各領域に対応する信号に分離する信号分離手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3の1項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記信号分離手段は、前記複数の検出素子の電気的に加算される間隔を第1の位相を検出可能な間隔と第2の位相を検出可能な間隔との間で切り替えることを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記信号分離手段は前記検出素子アレイの出力信号に高速フーリエ変換を施すことを特徴とする請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記信号処理手段は、前記位置信号と前記第1の位相取得手段が検出した前記第1の位相との同期をとることによって新しい位置信号を生成し、当該新しい位置信号に基づいて前記スケールの位置の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記複数の検出素子は、
前記第1の位相取得手段に出力を与える複数の第1の検出素子と、
前記第2の位相取得手段に出力を与える複数の第2の検出素子と、
を有し、
前記第1の位相取得手段と前記第2の位相取得手段は前記複数の検出素子から同時に出力を取得することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12】
【図8】
【図9】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2012−220458(P2012−220458A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89745(P2011−89745)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]