説明

エンジンの制御装置

【課題】エンジンへ燃料を供給する電動燃料ポンプに関して信頼性の維持を図りつつ、減速回生で得られるエネルギを効率的に利用する。
【解決手段】減速回生手段62が減速回生制御を実行中であり、且つ、燃料カット手段64がエンジン2への燃料供給を停止中である場合において、発電機の発電電流Igが、エンジン2へ燃料を供給する電動燃料ポンプ16とその他の車載機器50とで消費される車両消費電流Icと、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibとを合算してなる車両要求電流Irよりも小さいとき、電動燃料ポンプ16の駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速回生を実行する車両に搭載され、電動燃料ポンプにより燃料が供給されるエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の減速時において、燃料消費を低減するためにエンジンへの燃料供給を停止すること(以下、「燃料カット」ともいう。)は従来から行われている。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、燃料カットの際、エンジンの燃料供給系に設けられた電動燃料ポンプを停止させて、エネルギ消費の低減を図る技術も知られている。
【0004】
しかし、燃料カットを行う度に電動燃料ポンプを停止させると、ポンプの信頼性が損なわれやすくなる。特に、ブラシ付き電動モータにより駆動される燃料ポンプを使用する場合、頻繁なオンオフ動作に伴い、該モータのブラシが摩耗しやすくなる問題がある。
【0005】
このように、車両の減速に伴う燃料カット中において、エネルギ消費の低減と電動燃料ポンプの信頼性維持との両立を図ることは困難であるが、これらの均衡を図りながら、状況に応じて適切に電動燃料ポンプをオンオフさせることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−72670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、減速回生を行うハイブリッド車においても、上記のように減速時に燃料カットが行われる。そのため、ハイブリッド車においても、減速回生による発電量やバッテリの受け入れ可能量などに応じて、減速回生中に適切に電動燃料ポンプをオンオフさせることで、回生エネルギの有効利用と、電動燃料ポンプの信頼性維持とを両立させることが求められる。
【0008】
そこで、本発明は、エンジンへ燃料を供給する電動燃料ポンプに関して信頼性の維持を図りつつ、減速回生で得られるエネルギを効率的に利用することができるエンジンの制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係るエンジンの制御装置は、次のように構成したことを特徴とする。
【0010】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
エンジンと、発電機と、該発電機で発電された電力により充電されるバッテリと、前記エンジンに燃料を供給する電動燃料ポンプと、該電動燃料ポンプ以外の車載機器と、減速時に前記発電機でエネルギを回生する減速回生制御を行う減速回生手段と、減速時に前記エンジンへの燃料供給を停止する燃料カット手段と、を備えた車両に搭載されるエンジンの制御装置であって、
前記電動燃料ポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御手段と、
前記減速回生手段が減速回生制御を実行中であるか否かを判定する減速回生判定手段と、
前記燃料カット手段が燃料供給を停止中であるか否かを判定する燃料カット判定手段と、
前記発電機の発電電流を検出する発電電流検出手段と、
前記バッテリで受け入れ可能な電流を検出する受け入れ可能電流検出手段と、
前記電動燃料ポンプと前記車載機器とで消費される車両消費電流を検出する車両消費電流検出手段と、
前記受け入れ可能な電流と前記車両消費電流とを合算してなる車両要求電流と、前記発電電流との大小関係を判定する比較判定手段と、を有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記燃料カット判定手段により燃料供給が停止中であると判定され、且つ、前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、前記電動燃料ポンプの駆動を停止することを特徴とする。
【0011】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、
前記電動燃料ポンプで消費されるポンプ消費電流を検出するポンプ消費電流検出手段を更に有し、
前記比較判定手段は、電動燃料ポンプ駆動時の前記車両要求電流から前記ポンプ消費電流を減算してなる電動燃料ポンプ停止時の前記車両要求電流について、前記発電電流との大小関係を判定し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記比較判定手段による電動燃料ポンプ停止時の前記車両要求電流と前記発電電流との大小関係の判定結果に基づいて、前記電動燃料ポンプの駆動を制御することを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、前記車両要求電流が前記発電電流に等しくなるまで低下するのに要する時間を予測する時間予測手段を更に有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記時間予測手段により予測された時間が所定時間よりも長いことを更なる条件として、前記電動燃料ポンプの駆動停止を実行することを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の発明において、
前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、少なくとも前記車両の運転者からの減速要求に基づいて、前記減速回生制御の実行中に回生される総回生量を予測する総回生量予測手段と、
該総回生量予測手段により予測された総回生量に基づいて、前記減速回生制御終了時の前記受け入れ可能な電流を予測する受け入れ可能電流予測手段と、を更に有し、
前記比較判定手段は、前記受け入れ可能電流予測手段により予測された前記減速回生制御終了時の前記受け入れ可能電流と前記車両消費電流とを合算してなる減速回生制御終了時の前記車両要求電流について、前記発電電流との大小関係を判定し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記比較判定手段による減速回生制御終了時の前記車両要求電流と前記発電電流との大小関係の判定結果に基づいて、前記電動燃料ポンプの駆動を制御することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
前記発電電流検出手段により検出された発電電流が、前記車両消費電流検出手段により検出された車両消費電流よりも小さいか否かによって、前記バッテリが放電中であるか否かを判定する放電判定手段を更に有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記燃料カット判定手段により燃料供給が停止中であると判定され、且つ、前記放電判定手段により前記バッテリが放電中であると判定されたとき、前記発電電流と前記車両要求電流との大小関係に関わらず、前記電動燃料ポンプの駆動を停止することを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
前記車両は、該車両の運転者からの減速要求を検出する減速要求検出手段を更に有し、
前記減速回生手段は、前記減速要求検出手段の検出値に基づいて前記発電電流を制御する発電機制御手段を有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発明において、
前記車両は、前記電動燃料ポンプから前記エンジンへ燃料を導く燃料供給経路を更に有し、
該燃料供給経路には、前記エンジンにより駆動される燃料ポンプが、前記電動燃料ポンプよりも下流側に配設されていることを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発明において、
前記電動燃料ポンプは、ブラシ付き電動モータにより駆動されるポンプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願の請求項1の発明によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、バッテリで受け入れ可能な電流と車両消費電流とを合算してなる車両要求電流に比べて発電機の発電電流が小さければ、電動燃料ポンプの駆動が停止されるため、これにより、バッテリの充電量の増大または放電量の低減を図ることができる。また、発電電流が前記車両要求電流以上であるとき、すなわち、発電電流により電動燃料ポンプ及びその他の車載機器に十分に電力を供給しつつ、バッテリの充電を最大限に行うことができるときは、電動燃料ポンプの駆動が継続されるため、該ポンプのオンオフ動作の頻度を低減することができる。つまり、請求項1の発明によれば、電動燃料ポンプの信頼性の維持を図りつつ、減速回生で得られるエネルギを効率的に利用することができる。
【0019】
本願の請求項2の発明によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、発電機の発電電流が、電動燃料ポンプ駆動時の車両要求電流と比較されるのではなく、電動燃料ポンプ停止時の車両要求電流と比較されて、該車両要求電流よりも小さいときに、電動燃料ポンプの駆動が停止される。言い換えると、発電電流のうち、仮に電動燃料ポンプを停止した場合にこれによって該ポンプで消費されなくなることにより生じる全ての余剰分の電流をバッテリが受け入れることができる場合でなければ、電動燃料ポンプの駆動が停止されない。そのため、回生エネルギの有効利用を図りつつ、電動燃料ポンプのオンオフ動作の頻度を一層低減することで、該ポンプの信頼性を効果的に高めることができる。
【0020】
本願の請求項3の発明によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、発電電流が車両要求電流に比べて小さい場合であっても、車両要求電流が低下することに伴って所定時間以内に発電電流が車両要求電流以上となることが予測された場合は、電動燃料ポンプの駆動が継続されるため、該ポンプのオンオフ動作が過度に頻繁になされることを回避して、該ポンプの信頼性の維持を図ることができる。
【0021】
本願の請求項4の発明によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、発電電流が車両要求電流に比べて小さい場合であっても、発電電流が減速回生制御終了時の車両要求電流以上となることが予測される場合は、電動燃料ポンプの駆動が継続されるため、該ポンプのオンオフ動作が過度に頻繁になされることを回避して、該ポンプの信頼性の維持を図ることができる。
【0022】
本願の請求項5の発明によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、バッテリが放電中である場合には、発電電流と前記車両要求電流との大小関係に関わらず、電動燃料ポンプの駆動が停止されるため、バッテリの放電量を低減して、燃費の向上を図ることができる。
【0023】
本願の請求項6の発明によれば、運転者の減速要求に基づいて発電電流が制御される場合に、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明を効果的に実現することができる。
【0024】
本願の請求項7の発明によれば、燃料供給経路において、電動燃料ポンプよりも下流側に、エンジンにより駆動される燃料ポンプが配設されているため、電動燃料ポンプの再始動時における燃料供給不足を抑制することができる。
【0025】
本願の請求項8の発明によれば、電動燃料ポンプがブラシ付き電動モータにより駆動される場合に、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発明を適用することで、該電動モータのオンオフ頻度が低減されるため、該電動モータのブラシの摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るエンジンの燃料供給系の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエンジンの制御装置を示すシステム図である。
【図3】図1に示すエンジンが搭載されたハイブリッド車における減速回生時の電気の流れを示す図である。
【図4】図2に示すコントローラが行う第1の実施形態に係る制御動作を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す制御動作を行う場合において減速回生時にバッテリが放電中であるときの電気の流れの具体例を示す図である。
【図6】図4に示す制御動作を行う場合において減速回生時にバッテリが充電中であるときの電気の流れの具体例を示す図である。
【図7】図2に示すコントローラが行う第2の実施形態に係る制御動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に示す制御動作を行う場合において減速回生時にバッテリが充電中であるときの電気の流れの具体例を示す図である。
【図9】図2に示すコントローラが行う第3の実施形態に係る制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
先ず、図1を参照しながら、本実施形態に係るエンジン2の燃料供給系10について説明する。
【0029】
エンジン2及び該エンジン2の燃料供給系10は、車両走行用の電動モータ及びバッテリ42と共にハイブリッド車に搭載されている。
【0030】
なお、前記車両走行用の電動モータは、減速回生時に発電を行う発電機40としての機能を兼ね備えたものであり、該発電機40で発電された電力により前記バッテリ42を充電可能となっている。ただし、本発明において、発電機40は、車両走行用モータとは別個に設けたものであってもよい。また、前記ハイブリッド車のエンジンと走行用モータの役割に関する方式は、減速回生を実行可能な方式であれば特に限定されるものでなく、シリーズ方式、パラレル方式またはその他の方式であってもよい。
【0031】
図1に示すように、エンジン2は、ガソリン等の燃料がインジェクタ32により燃焼室に直接噴射される直噴エンジンである。
【0032】
燃料供給系10は、前記燃料を収容する燃料タンク12と、該燃料タンク12内に設けられて該燃料タンク12内の燃料をエンジン2に供給する電動燃料ポンプ16と、該電動燃料ポンプ16からエンジン2へ燃料を導く燃料供給経路14とを有する。
【0033】
電動燃料ポンプ16は、ブラシ付き電動モータ80により駆動されるポンプであり、該電動モータ80は、前記バッテリ42及び/又は前記発電機40から供給される電力により駆動される。また、電動燃料ポンプ16は、調圧弁18を介して燃料供給経路14に接続されており、これにより、電動燃料ポンプ16の吐出圧が調整されるようになっている。
【0034】
燃料供給経路14の下流側端部は、複数のインジェクタ32が取り付けられた高圧デリバリーパイプ30に連結されており、燃料供給経路14を搬送された燃料は、高圧デリバリーパイプ30を経由して各インジェクタ32に分配されて、各インジェクタ32からエンジン2の燃焼室へ供給されるようになっている。
【0035】
また、燃料供給経路14には、電動燃料ポンプ16よりも下流側において、エンジン2により駆動される機械式高圧燃料ポンプ20が設けられている。
【0036】
この機械式高圧燃料ポンプ20は、電動燃料ポンプ16から供給された燃料を一時的に収容する燃料収容室22と、該燃料収容室22の内壁面の一部を構成するとともに該燃料収容室22の容積の拡大と縮小を交互に行うように摺動するピストン24と、燃料収容室22よりも上流側に設けられた入口バルブ26と、燃料収容室22よりも下流側に設けられた出口バルブ28とを有する。これらのバルブ26,28は、上流側から下流側へ向かう燃料の流れのみを許容し逆方向の燃料の流れを規制する逆止弁で構成されている。ピストン24は、エンジン2のクランク軸4と連動して回転駆動されるカム軸6に設けられたカム8により駆動されて摺動するようになっている。そのため、エンジン2が駆動されているとき、これに伴いピストン24が摺動して燃料収容室22の容積の拡大と縮小が交互に繰り返され、燃料収容室22の容積が拡大される度に入口バルブ26を通して燃料収容室22に燃料が取り込まれ、燃料収容室22の容積が縮小される度に燃料収容室22から出口バルブ28を通して燃料が排出される。これにより、機械式高圧燃料ポンプ20は、電動燃料ポンプ16から供給された燃料を一時的に収容した後、電動燃料ポンプ16の吐出圧よりも高い吐出圧でエンジン2のインジェクタ32に燃料を送り込むようになっている。
【0037】
上記のように、機械式高圧燃料ポンプ20は、エンジン2が駆動されている限り継続して駆動される。そのため、燃料カット中に電動燃料ポンプ16が停止されている場合であっても、燃料供給が再開されるとき、機械式高圧燃料ポンプ20からエンジン2へ燃料を十分に供給することができる。また、電動燃料ポンプ16及び調圧弁18の下流側に機械式高圧燃料ポンプ20が設けられていることで、燃料供給経路14における調圧弁18よりも下流側部分において燃料の脈動の発生が抑制されるため、調圧弁18のばたつきが抑制されて、電動燃料ポンプ16の吐出圧が安定化する。
【0038】
図2は、本実施形態に係るエンジンの制御装置を示すシステム図である。図2に示すコントローラ60は、前記エンジン2等と共に前記ハイブリッド車に搭載されており、同じく該ハイブリッド車に搭載された減速回生装置62、燃料カット装置64、SOCセンサ66、発電電流センサ68、車両消費電流センサ70、ポンプ消費電流センサ72及びブレーキセンサ74から送られる信号に基づいて演算処理を行い、前記電動モータ80へ制御信号を出力することで、前記電動燃料ポンプ16の駆動を制御するように構成されている。
【0039】
減速回生装置62は、車両減速時に発電機40でエネルギ回生する減速回生制御を実行する装置である。この減速回生装置62には、ブレーキペダルのオンオフ操作を検出するブレーキセンサ74から送られる検出信号が入力されるようになっており、このブレーキセンサ74の検出値に基づいて発電機40の発電電流Igを制御する発電機制御部76を有する。発電機40は、車両減速時において車輪側から伝わる駆動力により発電を行うように設けられており、前記減速回生制御の実行中において発電能力の範囲内であれば減速度が大きいほど大きな電力を発生させるようになっている。
【0040】
燃料カット装置64は、燃費を低減するために車両減速時に燃料カット(エンジン2への燃料供給停止)を行う装置であり、車両の減速を検知したときに、別の所定条件を満たしていればインジェクタ32からの燃料噴射を停止するようにインジェクタ32を電子制御するように構成されている。
【0041】
SOCセンサ66は、バッテリ42の出力電圧等に基づいてバッテリ42の残容量を検出するセンサであり、コントローラ60は、SOCセンサ66の出力値に基づき、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibを検出する。バッテリ42は、残容量が少ないほど多くの電力を受け入れることができるため、前記受け入れ可能な電流Ibの検出値は、SOCセンサ66の出力値が小さいほど大きくなる。
【0042】
また、発電電流センサ68は、前記発電機40の発電電流Igを検出するセンサであり、車両消費電流センサ70は、前記電動燃料ポンプ16と、前記バッテリ42及び/又は前記発電機40から供給される電力により駆動される電動燃料ポンプ16以外の車載機器50とで消費される車両消費電流Icを検出するセンサであり、ポンプ消費電流センサ72は、電動燃料ポンプ16で消費されるポンプ消費電流Ipを検出するセンサである。
【0043】
図3を参照しながら、前記ハイブリッド車における減速回生制御中の電気の流れについて説明する。
【0044】
図3に示すように、車両消費電流Icは、電動燃料ポンプ16で消費されるポンプ消費電流Ipと、その他の車載機器50で消費される車載機器消費電流Iqとの合算値に等しい。
【0045】
この車両消費電流Icに比べて発電電流Igが大きいとき、この発電電流Igの余剰分の電流Ibiは、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibを超えない範囲内でバッテリ42に充電される。このとき、仮に電動燃料ポンプ16の駆動を停止させれば、その分だけ車両消費電流Icを小さくすることができるため、より大きな電流Ibiをバッテリ42に充電することができる。
【0046】
一方、車両消費電流Icに比べて発電電流Igが小さいとき、発電電流Igのみでは電動燃料ポンプ及び車載機器50へ十分に電力を供給できないため、この不足分を補う電流Iboがバッテリ42から放電される。このときも、同様に、仮に電動燃料ポンプ16の駆動を停止させれば、その分だけ車両消費電流Icを小さくすることができるため、バッテリ42からの放電電流Iboを小さくすることができる。
【0047】
このような観点に基づいて、本発明では、減速回生および燃料カットの実行中において所定の条件を満たしたときは電動燃料ポンプ16の駆動を停止するように制御することで、バッテリ42の充電量の増大または放電量の低減を図っている。
【0048】
以下、コントローラ60による各実施形態の具体的な制御動作について説明する。
【0049】
[第1の実施形態]
図4のフローチャートを参照しながら、第1の実施形態に係る制御動作について説明する。
【0050】
図4に示す制御動作は、アクセル開度がゼロになったときに開始され、先ず、ステップS1において、コントローラ60への入力信号に基づいて各種情報の読み込みが行われる。具体的には、減速回生装置62が減速回生制御を実行中であるか否かの情報、燃料カット装置64が燃料カットを実行中であるか否かの情報、並びに、SOCセンサ66、発電電流センサ68及び車両消費電流センサ70の各出力値が読み込まれる。
【0051】
次のステップS2では、ステップS1で減速回生装置62から読み込まれた情報に基づき、減速回生装置62が減速回生制御を実行中であるか否かが判定される。ステップS2の判定の結果、減速回生制御が実行されていないときは電動燃料ポンプ16の駆動が停止されることなく制御動作は終了し、減速回生制御が実行されているときのみステップS3に進む。
【0052】
ステップS3では、ステップS1で発電電流センサ68と車両消費電流センサ70とから読み込まれた情報に基づき、発電電流Igが車両消費電流Icよりも小さいか否か、すなわち、バッテリ42が放電中であるか否かが判定される。
【0053】
ステップS3の判定の結果、バッテリ42が放電中である場合について説明する。この場合、ステップS4〜ステップS6の各処理が省略されて、ステップS7の処理が実行される。
【0054】
ステップS7では、ステップS1で燃料カット装置64から読み込まれた情報に基づき、燃料カット装置64が燃料カットを実行中であるか否かが判定される。
【0055】
このステップS7の判定の結果、燃料カット中でなければ、電動燃料ポンプ16の駆動が停止されることなく制御動作は終了する。
【0056】
一方、ステップS7の判定の結果、燃料カット中であれば、電動燃料ポンプ16の駆動が停止され(ステップS8)、これにより、車両消費電流Icが低減される。そのため、バッテリ42が放電中であれば、車両消費電流Icの低下分だけバッテリ42の放電電流Iboが低減されて、燃費の向上に貢献することができる。具体例を挙げて説明すると、例えば図5に示すように、発電電流Igが50A、ポンプ消費電流Ipが3A、車載機器消費電流Iqが60A、車両消費電流Icが63A、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが70A、バッテリ42からの放電電流Iboが13Aである場合に、ステップS8において電動燃料ポンプ16の駆動が停止されると、車両消費電流Icが60Aに低減されるため、放電電流Iboを10Aに低減することができ、エネルギ消費の低減を図ることができる。
【0057】
次に、ステップS3の判定の結果、バッテリ42が放電中でない場合について説明する。この場合、ステップS4の処理が実行される。
【0058】
ステップS4では、ステップS1でSOCセンサ66と発電電流センサ68と車両消費電流センサ70とから読み込まれた情報に基づき、発電電流Igと、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibと車両消費電流Icとを合算してなる車両要求電流Irとの大小関係が判定される。すなわち、ステップS4では、発電電流Igの大きさが、電動燃料ポンプ16の駆動を継続しても該ポンプ16及びその他の車載機器50に十分に電力を供給しつつバッテリ42の充電を最大限に行うことができる大きさであるか否かが判定される。
【0059】
ステップS4の判定の結果、発電電流Igが車両要求電流Ir以上である場合、すなわち、発電電流Igの大きさが、電動燃料ポンプ16の駆動を継続しても該ポンプ16及びその他の車載機器50に十分に電力を供給しつつバッテリ42の充電を最大限に行うことができる大きさである場合、電動燃料ポンプ16の駆動が停止されることなく、制御動作は終了する。これにより、電動燃料ポンプ16の不必要な駆動停止が回避されて、該ポンプ16の信頼性の維持が図られている。
【0060】
一方、ステップS4の判定の結果、発電電流Igが車両要求電流Irよりも小さい場合、すなわち、発電電流Igの大きさが、電動燃料ポンプ16の駆動を継続するとバッテリ42の充電を最大限に行えなくなる大きさである場合、ステップS5に進み、この次のステップS6及びステップS7の判定結果によっては、電動燃料ポンプ16の駆動が停止される(ステップS8)。これにより、車両消費電流Icが低減されるため、バッテリ42の充電電流Ibiを増大させることができ、減速回生で得られるエネルギの有効利用を図ることができる。具体例を挙げて説明すると、例えば図6に示すように、発電電流Igが100A、ポンプ消費電流Ipが3A、車載機器消費電流Iqが30A、車両消費電流Icが33A、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが70A、バッテリ42への充電電流Ibiが67Aである場合、発電電流Ig(100A)は車両要求電流Ir(103A)よりも小さいため、ステップS8において電動燃料ポンプ16の駆動が停止されると、車両消費電流Icが30Aに低減される。これにより、充電電流Ibiを70Aに増大させることができるため、回生エネルギの有効利用を図ることができる。
【0061】
続いて、発電電流Igが車両要求電流Irよりも小さい場合に実行されるステップS5及びステップS6の各処理について説明する。
【0062】
ステップS5では、減速回生によるバッテリ42の充電が進むに連れてバッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが低下し、これに伴い車両要求電流Irが低下することに鑑みて、車両要求電流Irが発電電流Igに等しくなるまで低下するのに要する時間Tが予測される。すなわち、この時間Tは、車両要求電流Irの低下に伴いステップS4の判定結果が逆転して電動燃料ポンプ16の駆動停止が不必要となるまでに要する時間である。このステップS5における時間Tの予測は、ステップS1でSOCセンサ66と発電電流センサ68と車両消費電流センサ70とから読み込まれた情報に基づいて行われる。
【0063】
続くステップS6では、ステップS5で予測された時間Tが所定時間Tよりも長いか否かが判定される。この時間Tは、時間Tだけ電動燃料ポンプ16の駆動を停止した場合に回生エネルギを効果的に利用することができ、且つ、電動燃料ポンプ16のオンオフ動作の頻度を適度に抑制することができるような時間に設定される。
【0064】
ステップS6の判定の結果、予測時間Tが所定時間Tよりも長ければ、ステップS7の判定結果によっては、電動燃料ポンプ16の駆動が停止され(ステップS8)、これにより、減速回生で得られる電気エネルギを有効に利用して、バッテリ42の充電量を増大させることができる。
【0065】
一方、ステップS6の判定の結果、予測時間Tが所定時間T以下であれば、電動燃料ポンプ16の駆動が継続されたまま制御動作が終了し、これにより、電動燃料ポンプ16のオンオフ動作の頻度が低減されて、該ポンプ16の信頼性を高めることができる。
【0066】
以上のように、第1の実施形態によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、必要に応じて電動燃料ポンプ16の駆動が停止されるため、電動燃料ポンプ16の信頼性の維持を図りつつ、減速回生で得られるエネルギを効率的に利用することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、従来のように燃料カット中において常に電動燃料ポンプ16を駆動し続ける場合に比べると、該ポンプ16を駆動するブラシ付き電動モータ80が消耗しやすくなるが、近年の開発によりブラシ付き電動モータの耐久性は向上しているため、本実施形態において電動モータ80が顕著に消耗するおそれはない。
【0068】
[第2の実施形態]
図7のフローチャートを参照しながら、第2の実施形態に係る制御動作について説明する。
【0069】
第2の実施形態に係る制御動作は、アクセル開度がゼロになったときに開始され、先ず、ステップS11において、コントローラ60への入力信号に基づいて各種情報の読み込みが行われる。具体的には、第1の実施形態のステップS1(図4参照)で読み込まれる情報に加えて、ポンプ消費電流センサ72の出力値が読み込まれる。
【0070】
次のステップS12では、第1の実施形態のステップS2(図4参照)と同様、減速回生装置62が減速回生制御を実行中であるか否かが判定されて、減速回生制御が実行されているときのみステップS13に進む。
【0071】
ステップS13では、第1の実施形態のステップS3(図4参照)と同様、バッテリ42が放電中であるか否かが判定される。
【0072】
ステップS13の判定の結果、バッテリ42が放電中である場合は、ステップS17において、第1の実施形態のステップS7(図4参照)と同様、燃料カット装置64が燃料カットを実行中であるか否かが判定され、この判定の結果、燃料カット中であるときのみ、電動燃料ポンプ16の駆動が停止される(ステップS18)。これにより、第1の実施形態と同様、バッテリ42の放電電流Iboが低減されて、エネルギ消費の低減を図ることができる。
【0073】
一方、ステップS13の判定の結果、バッテリ42が放電中でない場合、ステップS14の判定が実行されるが、この判定方法は、第1の実施形態のステップS4(図4参照)の判定方法と異なっている。
【0074】
具体的に、ステップS14では、ステップS11でSOCセンサ66と発電電流センサ68と車両消費電流センサ70とから読み込まれた情報に加えて、ポンプ消費電流センサ72から読み込まれた情報に基づいて、発電電流Igと、電動燃料ポンプ16駆動時の前記車両要求電流Irから前記ポンプ消費電流Ipを減算してなる電動燃料ポンプ16停止時の車両要求電流Ir’との大小関係が判定される。すなわち、ステップS14では、発電電流Igのうち、仮に電動燃料ポンプ16を停止した場合にこれによって該ポンプ16で消費されなくなることにより生じる全ての余剰分の電流をバッテリが受け入れることができるか否かが判定される。
【0075】
ステップS14の判定の結果、発電電流Igが電動燃料ポンプ16の駆動停止時の車両要求電流Ir’以上である場合、すなわち、発電電流Igのうち、仮に電動燃料ポンプ16を停止した場合にこれによって該ポンプ16で消費されなくなることにより生じる全ての余剰分の電流をバッテリが受け入れることができない場合、電動燃料ポンプ16の駆動が停止されることなく、制御動作は終了する。具体例を挙げて説明すると、例えば図8に示すように、発電電流Igが100A、ポンプ消費電流Ipが3A、車載機器消費電流Iqが30A、車両消費電流Icが33A、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが68A、バッテリ42への充電電流Ibiが67Aである場合、発電電流Ig(100A)は、電動燃料ポンプ16停止時の車両要求電流Ir’(98A)以上であるため、電動燃料ポンプ16の駆動は停止されない。ところで、この場合、仮に電動燃料ポンプ16の駆動が停止されると、車両消費電流Icが30Aに低減されるが、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが68Aであるため、バッテリ42への充電電流Ibiは67Aから68Aに増加するに止まる。すなわち、本実施形態では、バッテリ42の充電量を最大限に増大させることができる場合にのみ、電動燃料ポンプ16が停止されるため、該ポンプ16のオンオフ動作の頻度を一層低減することで、該ポンプ16の信頼性の向上が図られている。
【0076】
一方、ステップS14の判定の結果、発電電流Igが電動燃料ポンプ16の駆動停止時の車両要求電流Ir’よりも小さい場合、すなわち、発電電流Igのうち、仮に電動燃料ポンプ16を停止した場合にこれによって該ポンプ16で消費されなくなることにより生じる全ての余剰分の電流をバッテリが受け入れることができる場合、ステップS15に進み、この次のステップS16及びステップS17の判定結果によっては、電動燃料ポンプ16の駆動が停止される(ステップS18)。これにより、車両消費電流Icが低減されるため、その分だけバッテリ42の充電電流Ibiを増大させることができ、減速回生で得られるエネルギの有効利用を図ることができる。
【0077】
なお、ステップS15及びステップS16の処理は、それぞれ第1の実施形態のステップS5及びステップS6(図4参照)と同様の処理であるため、具体的な説明は省略する。
【0078】
以上のように、第2の実施形態によれば、減速回生制御および燃料カットの実行中において、第1の実施形態に比べて電動燃料ポンプ16のオンオフ動作の頻度を一層低減できるため、該ポンプ16の信頼性を効果的に高めることができる。
【0079】
[第3の実施形態]
図9のフローチャートを参照しながら、第3の実施形態に係る制御動作について説明する。
【0080】
第3の実施形態に係る制御動作は、アクセル開度がゼロになったときに開始され、先ず、ステップS21において、コントローラ60への入力信号に基づいて各種情報の読み込みが行われて、ステップS22に進む。ステップS21において、具体的には、第1の実施形態のステップS1(図4参照)で読み込まれる情報に加えて、ブレーキセンサ74の出力信号が読み込まれる。なお、ステップS21では、必要に応じて、ブレーキセンサ74以外に車両の運転者からの減速要求を検出するために必要な検出装置の出力信号も併せて読み込まれるようにしてもよい。
【0081】
ステップS22〜ステップS24では、それぞれ第1の実施形態のステップS2〜ステップS4(図4参照)と同様の処理が実行され、ステップS28及びステップS29では、それぞれ第1の実施形態のステップS7及びステップS8(図4参照)と同様の処理が実行されるため、それらのステップにおける各処理の具体的な説明は省略する。
【0082】
これに対して、残りのステップS25〜ステップS27では、第1の実施形態のステップS5及びステップS6(図4)とは異なる処理が実行される。
【0083】
ステップS25及びステップS26の処理は、ステップS24において発電電流Igが車両要求電流Irよりも小さいと判定された場合に実行される。
【0084】
これらステップS25及びステップS26の各処理は、減速回生によるバッテリ42の充電が進むに連れてバッテリ42で受け入れ可能な電流Ibが低下し、これに伴い車両要求電流Irが低下することに鑑みて実行される点では、第1の実施形態のステップS5(図4)と共通しているが、その処理方法が異なっている。
【0085】
具体的に説明すると、ステップS25では、ステップS21において読み込まれた車両の運転者からの減速要求に関する情報に基づいて、減速回生制御の実行中に回生される総回生量が予測される。
【0086】
次のステップS26では、ステップS25で予測された総回生量に基づいて、減速回生制御終了時におけるバッテリ42で受け入れ可能な電流Ib’が予測される。具体的には、ステップS25で予測された総回生量に基づいて、減速回生制御終了時のバッテリ42の残容量が予測された後、該残容量に基づいて前記受け入れ可能な電流Ib’が予測される。
【0087】
続くステップS27では、ステップS26で予測された受け入れ可能な電流Ib’とステップS21で読み込まれた車両消費電流Icとを合算してなる減速回生制御終了時の車両要求電流Irについて、ステップS21で読み込まれた発電電流Igとの大小関係が判定される。すなわち、ステップS27では、減速回生制御が終了したときにステップS24の判定結果が逆転することが予想されるか否かが判定される。
【0088】
ステップS27の判定の結果、発電電流Igが減速回生制御終了時の車両要求電流Irよりも小さい場合、すなわち、減速回生制御が終了したときもステップS24の判定結果が維持されると予想される場合、ステップS28の判定結果によっては、電動燃料ポンプ16の駆動が停止され(ステップS29)、これにより、減速回生で得られる電気エネルギを有効に利用して、バッテリ42の充電量を増大させることができる。
【0089】
一方、ステップS27の判定の結果、発電電流Igが減速回生制御終了時の車両要求電流Ir以上である場合、すなわち、減速回生制御が終了したときにステップS24の判定結果が逆転することが予想される場合、電動燃料ポンプ16の駆動が継続されたまま制御動作が終了し、これにより、電動燃料ポンプ16のオンオフ動作の頻度が低減されて、該ポンプ16の信頼性を高めることができる。
【0090】
このように、第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様、回生エネルギの有効利用を図りつつ、電動燃料ポンプ16の信頼性を可及的に高く維持することができる。
【0091】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0092】
例えば、第1の実施形態では、図4に示すようにステップS4において発電電流Igが車両要求電流Irよりも小さいと判定された場合にステップS5及びステップS6の各処理が実行されるが、本発明において、これらステップS5及びステップS6の処理は必ずしも実行されなくてもよい。同様に、本発明は、第2の実施形態のステップS15及びステップS16の処理を省略することを妨げるものでない。
【0093】
また、第3の実施形態のステップS24及びステップS27では、発電電流Igと車両要求電流Irとの大小関係が判定されるが、第2の実施形態のステップS14と同様、発電電流Igと電動燃料ポンプ16停止時の車両要求電流Ir’(Ir−Ip)との大小関係が判定されるようにしてもよい。
【0094】
さらに、上述の実施形態では、ハイブリッド車を例に挙げて説明を行ったが、本発明は、ハイブリッド車のみならず、走行用動力源としてエンジンのみを搭載した車両にも適用可能である。この場合、エンジンにより駆動される発電機(オルタネータ)により、減速回生時の発電が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明によれば、エンジンへ燃料を供給する電動燃料ポンプに関して信頼性の維持を図りつつ、減速回生で得られるエネルギを効率的に利用することが可能となるから、減速回生と燃料カットを行うハイブリッド車等の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0096】
2:エンジン、10:燃料供給系、12:燃料タンク、14:燃料供給経路、16:電動燃料ポンプ、20:エンジンで駆動される機械式燃料ポンプ、32:インジェクタ、40:発電機、42:バッテリ、50:車載機器、60:コントローラ、62:減速回生装置、64:燃料カット装置、66:SOCセンサ、68:発電電流センサ、70:車両消費電流センサ、72:ポンプ消費電流センサ、74:ブレーキセンサ(減速要求検出手段)、80:ブラシ付き電動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、発電機と、該発電機で発電された電力により充電されるバッテリと、前記エンジンに燃料を供給する電動燃料ポンプと、該電動燃料ポンプ以外の車載機器と、減速時に前記発電機でエネルギを回生する減速回生制御を行う減速回生手段と、減速時に前記エンジンへの燃料供給を停止する燃料カット手段と、を備えた車両に搭載されるエンジンの制御装置であって、
前記電動燃料ポンプの駆動を制御するポンプ駆動制御手段と、
前記減速回生手段が減速回生制御を実行中であるか否かを判定する減速回生判定手段と、
前記燃料カット手段が燃料供給を停止中であるか否かを判定する燃料カット判定手段と、
前記発電機の発電電流を検出する発電電流検出手段と、
前記バッテリで受け入れ可能な電流を検出する受け入れ可能電流検出手段と、
前記電動燃料ポンプと前記車載機器とで消費される車両消費電流を検出する車両消費電流検出手段と、
前記受け入れ可能な電流と前記車両消費電流とを合算してなる車両要求電流と、前記発電電流との大小関係を判定する比較判定手段と、を有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記燃料カット判定手段により燃料供給が停止中であると判定され、且つ、前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、前記電動燃料ポンプの駆動を停止することを特徴とするエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記電動燃料ポンプで消費されるポンプ消費電流を検出するポンプ消費電流検出手段を更に有し、
前記比較判定手段は、電動燃料ポンプ駆動時の前記車両要求電流から前記ポンプ消費電流を減算してなる電動燃料ポンプ停止時の前記車両要求電流について、前記発電電流との大小関係を判定し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記比較判定手段による電動燃料ポンプ停止時の前記車両要求電流と前記発電電流との大小関係の判定結果に基づいて、前記電動燃料ポンプの駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、前記車両要求電流が前記発電電流に等しくなるまで低下するのに要する時間を予測する時間予測手段を更に有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記時間予測手段により予測された時間が所定時間よりも長いことを更なる条件として、前記電動燃料ポンプの駆動停止を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記比較判定手段により前記発電電流が前記車両要求電流よりも小さいと判定されたとき、少なくとも前記車両の運転者からの減速要求に基づいて、前記減速回生制御の実行中に回生される総回生量を予測する総回生量予測手段と、
該総回生量予測手段により予測された総回生量に基づいて、前記減速回生制御終了時の前記受け入れ可能な電流を予測する受け入れ可能電流予測手段と、を更に有し、
前記比較判定手段は、前記受け入れ可能電流予測手段により予測された前記減速回生制御終了時の前記受け入れ可能電流と前記車両消費電流とを合算してなる減速回生制御終了時の前記車両要求電流について、前記発電電流との大小関係を判定し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記比較判定手段による減速回生制御終了時の前記車両要求電流と前記発電電流との大小関係の判定結果に基づいて、前記電動燃料ポンプの駆動を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記発電電流検出手段により検出された発電電流が、前記車両消費電流検出手段により検出された車両消費電流よりも小さいか否かによって、前記バッテリが放電中であるか否かを判定する放電判定手段を更に有し、
前記ポンプ駆動制御手段は、前記減速回生判定手段により減速回生制御が実行中であると判定され、且つ、前記燃料カット判定手段により燃料供給が停止中であると判定され、且つ、前記放電判定手段により前記バッテリが放電中であると判定されたとき、前記発電電流と前記車両要求電流との大小関係に関わらず、前記電動燃料ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項6】
前記車両は、該車両の運転者からの減速要求を検出する減速要求検出手段を更に有し、
前記減速回生手段は、前記減速要求検出手段の検出値に基づいて前記発電電流を制御する発電機制御手段を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項7】
前記車両は、前記電動燃料ポンプから前記エンジンへ燃料を導く燃料供給経路を更に有し、
該燃料供給経路には、前記エンジンにより駆動される燃料ポンプが、前記電動燃料ポンプよりも下流側に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【請求項8】
前記電動燃料ポンプは、ブラシ付き電動モータにより駆動されるポンプであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−154252(P2012−154252A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14120(P2011−14120)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】