説明

エンジンの換気システム

【課題】過給式エンジンにおいて、吸気通路のブースト圧が正圧であるときに、エンジンの運転状態に応じ、そのエンジンの運転状態に適した量の新気をクランク室内に導入するようにしたエンジンの換気システムを提供する。
【解決手段】ブローバイガス還元通路10に設けられたPCVバルブ12が、ブースト圧が正圧のときにクランク室1aへ新気を導入するための新気流量制御オリフィス16を備えている。新気流量制御オリフィス16は、ブースト圧の正圧の度合いが比較的小さいときにクランク室1aに新気を導入する一方で、ブースト圧の正圧の度合いが比較的大きいときにはクランク室1aへの新気の導入を停止し、エンジン1により多くの新気を供給することで当該エンジン1の出力低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャー等による過給式エンジンの換気システムに関し、特にブローバイガス処理システムの一部を構成することになるポジティブ・クランクケース・ベンチレーション・システム(PCVシステム)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、自然吸気式または無過給式エンジンにおけるPCVシステムは、吸気通路であるインテークマニホールドのうちスロットルバルブよりも下流側位置とエンジンのクランク室(クランクケース)とを連通するブローバイガス還元通路と、インテークマニホールドのうちスロットルバルブよりも上流側位置と上記クランク室とを連通する新気導入通路と、上記ブローバイガス還元通路に設けられたPCVバルブと、を備えている。
【0003】
そして、エンジンの低負荷時には、PCVバルブの作用によりエンジン内部が負圧となることから、上記新気導入通路を経て新気がクランクケース内に導入され、同時にブローバイガスはクランクケース内で新気と混ざり、PCVバルブを経てインテークマニホールドのうちスロットルバルブよりも下流側位置に導かれることになる。このようにクランクケース内が換気されることで、クランクケース内のエンジンオイルの劣化が抑制される。
【0004】
一方、エンジンの高負荷時には、インテークマニホールド内の負圧が小さくなり(正圧に近づく)、PCVバルブを経て排出されるブローバイガスの量が、エンジンそれ自体から発生するブローバイガスの量よりも少なくなる。その結果、クランクケース内のブローバイガスが上記新気導入通路を通しても排出され、クランクケース内に新気が導入されなくなることから、クランクケース内のエンジンオイルがブローバイガスによって劣化されてしまう。
【0005】
このような構成は、例えばターボチャージャーによる過給式エンジンにおいても基本的に同様であり、特に過給式エンジンの場合には、自然吸気式または無過給式エンジンと比較して、エンジンの低負荷時にも過給圧の影響でインテークマニホールド内の圧力が大きくなるため、クランクケース内に新気が導入されない運転領域が多くなり、結果としてクランクケース内のエンジンオイルがブローバイガスによって一段と劣化されやすくなってしまうという課題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、特許文献2に記載されているように、過給式エンジンのPCVバルブに新気導入用のオリフィスを設け、吸気通路の圧力であるブースト圧が正圧となった場合に、PCVバルブを通じてクランク室内に新気を導入し、クランク室内のエンジンオイルの劣化を抑制するようにしたエンジンの換気システムを先に提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−16664号公報
【特許文献2】特開2010−112178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、ブースト圧が正圧となった場合に、吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側の位置からPCVバルブを経てクランク室内に新気を導入することでクランク室の換気効率は向上することになるものの、クランク室内に導入される新気の流量を積極的に制御するものではなく、なおも改善の余地がある。
【0009】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、特に過給式エンジンにおいて、吸気通路のブースト圧が正圧であるときに、エンジンの運転状態に応じ、そのエンジンの運転状態に適した量の新気をクランク室内に導入するようにしたエンジンの換気システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、過給式エンジンの吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置とエンジンのクランク室とを連通するブローバイガス還元通路と、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも上流側位置と上記クランク室とを連通する新気導入通路と、上記ブローバイガス還元通路に設けられ、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が負圧である場合に、上記吸気通路側へ向かうブローバイガスの流量を制御するPCVバルブと、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が正圧となった場合に、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置から上記クランク室へ新気を導入する新気流量制御手段と、を備えていて、上記新気流量制御手段は、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が正圧であって且つ所定の設定圧力よりも低い中負荷運転領域で、上記クランク室に新気を導入する一方、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が上記設定圧力以上となる高負荷運転領域で、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の導入を停止、またはその新気の流量を少なくとも上記中負荷運転領域における最大流量よりも小さくするようになっていることを特徴としている。
【0011】
ここで、請求項1に記載の発明は、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室に新気を導入すると、その分だけエンジンに供給する新気の量が減少してしまうという知見に基づいてなされたものである。すなわち、上記中負荷運転領域では、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室に新気を導入することにより、上記クランク室を積極的に換気する一方、エンジンに高出力が要求される上記高負荷運転領域では、エンジンに供給される新気量の減少を抑制すべく、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の導入を停止、またはその新気の流量を少なくとも上記中負荷運転領域における最大流量よりも小さくするようにしている。
【0012】
この場合、請求項2に記載の発明のように、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを上記ブローバイガス還元通路に設け、上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスの流路断面積を、少なくとも上記中負荷運転領域での流路断面積よりも小さくすることが、構造の簡素化の上で望ましい。
【0013】
具体的には、請求項3に記載の発明のように、上記PCVバルブが、PCVバルブ本来の機能であるブローバイガス流量制御用の可変オリフィスとは別に、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを有しているとよい。
【0014】
一方、請求項4に記載の発明のように、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを上記PCVバルブと並列に配置し、上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスの流路断面積を、少なくとも上記中負荷運転領域での流路断面積よりも小さくするようにしてもよい。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを閉止するようになっていることが、上記高負荷運転領域でより多くの新気をエンジンに供給する上で望ましい。
【0016】
そして、請求項6の発明のように、上記中負荷運転領域において、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の流量が一定となり、上記高負荷運転領域において、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の流量が、上記中負荷運転領域における流量とと等しくなっていれば、ブローバイガス還元通路の少なくとも一部を通して一定量以上の新気がクランク室に導入されることはないので、エンジンの高負荷時に、エンジンへ流れる新気の量(空気量)が減ることはない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、上記中負荷運転領域では、上記クランク室の換気を重視して比較的多くの新気をクランク室に導入する一方、上記高負荷運転領域では、エンジン出力を重視してより多くの新気をエンジンに供給することで、上記クランク室内のエンジンオイルの劣化を抑制しつつ、上記高負荷運転領域におけるエンジンの出力低下を抑制できる。
【0018】
その上で請求項2に記載の発明によれば、既存の通路を利用して上記クランク室へ新気を導入することになるため、構造の簡素化の上で有利になる。
【0019】
さらにその上で請求項3に記載の発明によれば、既存のPCVバルブにわずかな改良を加えるだけで所期の目的を達成できるようになるから、構造の簡素化の上で一段と有利になる。
【0020】
一方、請求項4に記載の発明によれば、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスをPCVバルブとは別に設け、その可変オリフィスによって上記クランク室に導入する新気の流量を制御するようになっているから、上記クランク室に導入する新気の流量をより高精度で且つ安定して制御できるようになる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、上記高負荷運転領域で上記クランク室への新気の導入を止めることで、上記高負荷運転領域におけるエンジンの出力低下をより効果的に抑制できる。
【0022】
そいて、請求項6に記載の発明によれば、スロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が正圧の状態では、スロットルバルブよりも下流側位置の位置からクランクケースに導入される新気の量は一定量以上とはならないので、エンジンの出力低下を招くことなく、換気効率を向上させ、クランク室内のエンジンオイルの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、エンジンの低負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図2】図1において、エンジンの中負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図3】図1において、エンジンの高負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図4】図1〜3におけるPCVバルブの詳細を示す図。
【図5】図1〜3における吸気系のブースト圧とブローバイガスおよび新気の流量との関係を示す特性図。
【図6】図4に示す新気流量制御オリフィスの動作状態を示す要部拡大図であって、同図(a),(b)は図5に示す中負荷運転領域における新気流量制御オリフィスの動作状態を示す図、同図(c)は図5に示す高負荷運転領域における新気流量制御オリフィスの動作状態を示す図。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示す図で、エンジンの低負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図8】図7において、エンジンの中負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図9】図7において、エンジンの高負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図10】図7〜9におけるPCVバルブの詳細を示す図。
【図11】図7〜9における新気流量制御バルブの詳細を示す図。
【図12】本発明の第3の実施の形態を示す図で、エンジンの低負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示す図。
【図13】第4の実施の形態におけるPCVバルブの詳細を示す図。
【図14】図13におけるPCVバルブの弁体のみの斜視図。
【図15】第4の実施の形態における吸気系のブースト圧とブローバイガスおよび新気の流量との関係を示す特性図。
【図16】図13に示す新気流量制御オリフィスの動作状態を示す要部拡大図であって、同図(a),(b)は図15に示す中負荷運転領域における新気流量制御オリフィスの動作状態を示す図、同図(c)は図5に示す高負荷運転領域における新気流量制御オリフィスの動作状態を示す図。
【図17】他の実施の形態におけるPCVバルブの弁体のみの斜視図。
【図18】他の実施の形態におけるPCVバルブの弁体のみの斜視図。
【図19】第4の実施の形態において、図17に示す弁体を有するPCVバルブを適用した場合における吸気系のブースト圧とブローバイガスおよび新気の流量との関係を示す特性図。
【図20】第4の実施の形態において、図18に示す弁体を有するPCVバルブを適用した場合における吸気系のブースト圧とブローバイガスおよび新気の流量との関係を示す特性図。
【図21】第5の実施の形態における新気流量制御バルブの詳細を示す図。
【図22】第6の実施の形態における新気流量制御バルブの詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1〜6は本発明に係る換気システムの好適な第1の実施の形態を示す図であり、特に図1はエンジンの低負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示し、図2はエンジンの中負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示し、図3はエンジンの高負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示している。
【0025】
図1では、過給式直列多気筒型エンジンの単一の気筒を便宜的にエンジン1として示し、その吸気通路としての吸気系2には、上流側から順に、エアクリーナー3、エアフローメーター4、過給機であるターボチャージャー5の圧縮機インペラー5b、インタークーラー6、スロットルバルブ7をそれぞれ介装してある。他方、エンジン1の排気系8にはターボチャージャー5のタービンインペラー5aを介装してある。
【0026】
そして、周知のように、吸入空気はエアクリーナー3およびエアフローメーター4を経て、エンジン1からの排気により駆動されるターボチャージャー5の圧縮機インペラー5bにより圧縮(過給)された後に後段のインタークーラー6にて冷却され、さらにスロットルバルブ7にて流量調整された上でエンジン1の燃焼室に導入されることになる。なお、エンジン1からの排気の一部はEGRクーラー9を経て吸気系2側に還流される。
【0027】
そして、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側位置とエンジン1のクランク室1aとを連通するブローバイガス還元通路10を設けてあるとともに、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも上流側位置、ここでは吸気系2のうちターボチャージャー5の圧縮機インペラー5bよりも上流側位置とエンジン1のクランク室1aとを連通する新気導入通路11を設けてある。
【0028】
上記ブローバイガス還元通路10には、PCVバルブ12とオイルミストセパレーター13とをPCVバルブ12がスロットルバルブ7側となるように直列に介装してあるとともに、新気導入通路11にも別のオイルミストセパレーター14を介装してある。なお、いずれのオイルミストセパレーター13,14も、エンジン1とは別体に独立して設けられてホース等により接続される場合のほか、エンジン1のロッカーカバー(シリンダヘッドカバー)と一体に設けられる場合もある。
【0029】
さらに、PCVバルブ12には、PCVバルブ12本来の流量制御機能、すなわち吸気系2側へ向かうブローバイガスの流量を制御する機能を司るブローバイガス流量制御オリフィス15とは別に、後述するようにクランク室1a側へ向かう新気の流量を制御するための新気流量制御オリフィス16を新気流量制御手段として設けてある。つまり、ブローバイガス流量制御オリフィス15がブローバイガス流量制御用の可変オリフィスとして機能する一方、新気流量制御オリフィス16が新気流量制御用の可変オリフィスとして機能することになる。また、新気流量制御オリフィス16は、ブローバイガス流量制御オリフィス15のオイルミストセパレーター13側に直列に設けてある。
【0030】
図4はPCVバルブ12の詳細を示している。このPCVバルブ12は、内外周面ともに段付き円筒状を呈する中空状のバルブボディ(ケーシングまたはハウジング)17内にスプール型の弁体22をスライド可能に内挿したものであり、バルブボディ17は、略有底円筒状のバルブボディ本体18と、そのバルブボディ本体18の開口部に接続された略円筒状のカバー19と、に軸心方向で二分割されている。そして、カバー19のうち反バルブボディ本体18側の開口部である第1ポート20が吸気系2のうちスロットルバルブ7の下流側に、バルブボディ本体18の底壁に開口形成された第2ポート21がオイルミストセパレーター13側(クランク室1a側)にそれぞれ繋がることになる。
【0031】
弁体22の軸心方向中間部にはフランジ部23が形成されており、そのフランジ部23とカバー19との間に第1圧縮コイルスプリング26を介装し、フランジ部23とバルブボディ本体18の底壁との間に第2圧縮コイルスプリング27を介装してある。両圧縮コイルスプリング26,27の先端同士はフランジ部23の肉厚よりも大きく離間していて、フランジ部23が両圧縮コイルスプリング26,27の一方に着座したときに、両圧縮コイルスプリング26,27の他方とフランジ部23との間に隙間Gが形成されるように設定してある。このように弁体22にいわゆる遊びを設け、両圧縮コイルスプリング26,7のうち一方のみの弾性力が弁体22に作用するように構成することで、弁体22が安定して動作するようにしている。
【0032】
また、カバー19のうちバルブボディ本体18側の開口部には、段状部をもって第1スロート部19aを形成してある一方、弁体22のうちフランジ部23よりも第1ポート20側の部分は、フランジ部23側に向かって直径が大きくなる先細り形状のブローバイガス計量部24として形成してある。そして、吸気系2側のブースト圧が負圧である場合には、その負圧により引っ張られた弁体16がバルブボディ17に対してスライド変位し、そのブースト圧と第1圧縮コイルスプリング26の弾性力とが釣り合った位置で弁体22が静止することになる。つまり、上記負圧の大きさに応じて第1スロート部19aとブローバイガス計量部24とが相対移動することにより、両者のなす開度、ひいてはPCVバルブ12を流れるブローバイガスの流量が連続的に可変制御されることになる。言い換えれば、第1スロート部19aとブローバイガス計量部24とのなす隙間が、上述したブローバイガス流量制御オリフィス15として機能することになる。
【0033】
他方、バルブボディ本体18に形成された第2ポート21はオイルミストセパレーター13側に向かって漸次大径となるテーパ状に形成されている一方、弁体22のうちフランジ部23よりも第2ポート21側の部分はフランジ部23側に向かって段階的に大径となる略段付円柱状の新気計量部25として形成してある。
【0034】
新気計量部25は、当該新気計量部25の根元に形成され、第2ポート21の最小直径部である第2スロート部18aよりも大径な大径部25aと、その大径部25aの反フランジ部23側に隣接して形成され、第2スロート部18aよりも小径な中径部25bと、新気計量部25の先端に形成され、中径部25bよりもさらに小径な小径部25cと、中径部25bと小径部25cとの間に形成され、小径部25c側に向かって漸次小径となるテーパ部25dと、から構成してある。
【0035】
そして、吸気系2側のブースト圧が正圧である場合には、その正圧により押圧された弁体16がバルブボディ17に対してスライド変位し、そのブースト圧と第2圧縮コイルスプリング27の弾性力とが釣り合った位置で弁体が静止することになる。つまり、上記正圧の大きさに応じて第2スロート部18aと新気計量部25とが相対移動することにより、両者のなす開度、ひいてはPCVバルブ12を流れる新気の流量が連続的に可変制御されることになる。言い換えれば、第2スロート部18aと新気計量部25とのなす隙間が、上述した新気流量制御オリフィス16として機能することになる。
【0036】
図5は、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧とブローバイガス等の流量との関係を示したグラフであって、符号Aはブローバイガスの発生量を、符号Bはブローバイガス還元通路10側のオイルミストセパレーター13でのブローバイガス等の流量特性を、符号Cは新気導入通路11側のオイルミストセパレーター14でのブローバイガス等の流量特性をそれぞれ示している。なお、図5では、ブースト圧が負圧となってその度合が大きい右側が低負荷側となり、反対にブースト圧が正圧となってその度合が大きい左側ほど高負荷側となっている。また、符号B,Cで示すブローバイガス等の流量特性については、クランク室1a側から吸気系2側に向かうブローバイガスの流れを「正(+)」とし、吸気系2側からクランク室1a側に向かう新気の流れを「負(−)」としている。
【0037】
そして、図1に示したブローバイガス還元通路10において、PCVバルブ12はオイルミストセパレーター13と直列に配置されていることから、両流量制御オリフィス15,16によるPCVバルブ12のブースト圧−流量特性としては、図5の符号Bで示す特性と略同等のものとなるように予め調整してある。
【0038】
このように構成された換気システムによれば、図1,5に示すように、ブースト圧が負圧であって且つその負圧の程度が大きいとき、すなわち図5に示す低負荷運転領域A1のうち図中右側の領域では、図4に示したPCVバルブ12の弁体22が同図の左方向に大きく引っ張られ、ブローバイガス流量制御オリフィス15における流路断面積(開度)が比較的小さくなる。したがって、図5の低負荷運転領域A1のうち図中右側の領域では、図1のオイルミストセパレーター13およびPCVバルブ12を通して吸気系2側に排出(還元)されるブローバイガス流量が比較的小さいものとなるとともに、図5の符号Aで示すブローバイガス発生量そのものも他の領域と比較して小さいものとなる。なお、このとき新気流量制御オリフィス16の開度は最大となる。
【0039】
そして、この場合には、図5の符号Aで示すブローバイガス発生量よりもブローバイガス還元通路10を通して吸気系2側に排出される符号Bのブローバイガス流量の方が大きいことから、符号Cで示すように両者の流量差分の新気が新気導入通路11を通してクランク室1aへ導入される。このように、ブローバイガス還元通路10を通してクランク室1aから吸気系2側へブローバイガスを排出しつつ、新気導入通路11を通してクランク室1aへ新気を導入することで、そのクランク室1aが換気されることになる。
【0040】
また、その状態からエンジンの負荷が大きくなり、ブースト圧が徐々に正圧に近づくと、図4のPCVバルブ12の弁体22が先の場合よりも右側にスライド変位し、ブローバイガス流量制御オリフィス15における流路断面積(開度)が先の場合よりも大きくなる。これにより、ブローバイガス還元通路10を通して吸気系2側に排出される符号Bのブローバイガス流量、および新気導入通路11を通してクランク室1aに導入される符号Cの新気流量がそれぞれ増加することになる。
【0041】
さらに、ブースト圧が限りなく正圧に近付く正圧直前状態では、ブローバイガス還元通路10のオイルミストセパレータ13およびPCVバルブ12を通して吸気系2側へ排出される符号Bのブローバイガス流量は符号Aで示すブローバイガス発生量よりも少なくなり、やがては図2に示すように新気導入通路11からもブローバイガスが排気されるようになる。
【0042】
エンジン1の負荷がさらに大きくなって、図5のブースト圧が図1に示したターボチャージャー5の過給圧の影響で正圧に転じると、図4に示すPCVバルブ12の弁体22がブースト圧を受けて同図の右方向にスライド変位し、図2に示すように、吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へブースト圧によって流入した新気が、PCVバルブ12の新気流量制御オリフィス16によって計量された上で、オイルミストセパレーター13を経てクランク室1a側へ逆流することになる。同時にエンジン1で発生するブローバイガスはクランク室1a内で新気と混ざり、新気導入通路11を通して吸気系2のうちスロットルバルブ7上流側に排出され、クランク室1a内が換気されることになる。つまり、ブースト圧が正圧であるときには、ブローバイガス流量制御オリフィス15の開度が最大となり、PCVバルブ12のうち新気流量制御オリフィス16をもってブローバイガス還元通路10側のオイルミストセパレーター13での新気の流量が制御される。
【0043】
これにより、図5のブースト圧が正圧であって且つ予め定めた設定圧力P1より小さい中負荷運転領域A2では、符号Bで示すブローバイガス還元通路10側でのガス流量が「負(−)」に転じる。なお、このとき新気導入通路11を通して吸気系2のうちスロットルバルブ7上流側に排出されるブローバイガスの流量は、図5の符号Aで示すブローバイガス発生量に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量を加えた量となることから、符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガス流量が符号Aのブローバイガス発生量を上回ることになる。
【0044】
図6の(a)〜(c)は、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が正圧のときのPCVバルブ12の作動状態を示す要部拡大図である。図5の中負荷運転領域A2のうち正圧の程度が比較的小さい領域では、図6の(a),(b)に示すように、ブースト圧の増加に伴って弁体22が図中右側にスライド移動し、新気計量部25のテーパ部25dによって新気流量制御オリフィス16の流路断面積が徐々に小さくなるが、図5に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量はブースト圧の増加の影響で徐々に大きくなり、やがては中負荷運転領域A2における最大流量Qに達する。
【0045】
さらに、図5に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量が最大流量Qを超え、ブースト圧が予め定めた設定圧力P1に限りなく近付く設定圧力P1直前位置では、図6の(b)に示す新気計量部25のうち大径部25aと中径部25bとの間の段状部25eがバルブボディ本体18の底壁に接近し、新気流量制御オリフィス16の流路断面積が一段と小さくなる。これにより、図5に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量、および図5に符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガスの流量は、ブースト圧の増加に伴って徐々に小さくなる。
【0046】
そして、ブースト圧が設定圧力P1に達すると、図6の(c)に示すように新気計量部25の段状部25eがバルブボディ17の底壁に着座し、新気流量制御オリフィス16が全閉状態となる。これにより、図5のほか図3に示すように、ブースト圧が設定圧力P1以上となる高負荷運転領域A3では、符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量がほぼ零または極めて小さくなり、中負荷運転領域A2ではクランク室1aに導入されていた新気がエンジン1に供給されるようになる。なお、このとき図5の符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガスの流量は符号Aで示すブローバイガス発生量と同等になる。
【0047】
したがって、本実施の形態によれば、図5の中負荷運転領域A2では、クランク室1aの換気を重視し、ブローバイガス還元通路10を通してクランク室1aに積極的に新気を導入する一方、エンジン1により高い出力が要求される高負荷運転領域A3では、エンジン1により多くの新気を供給すべく、ブローバイガス還元通路10を通じたクランク室1aへの新気の導入を止めることにより、ブローバイガスによるエンジンオイルの劣化を抑制しつつも、高負荷運転領域A3におけるエンジン1の出力低下を防止することができる。なお、設定圧力P1は、エンジン出力とクランク室1aの換気効率とのバランスを考慮して適宜設定すればよい。
【0048】
また、上記第1の実施の形態では、図5に示すように、ブースト圧が設定圧力P1を超える高負荷運転領域A3で、ブローバイガス還元通路10を通じたクランク室1aへの新気の導入を止めるようにしているが、高負荷運転領域A3でクランク室1aへ導入する新気の流量は、必ずしもほぼ零または極めて小さくする必要はなく、少なくとも図5の中負荷運転領域A2における最大流量Qよりも小さく設定すれば、エンジン1の出力低下を少なくとも抑制ことができる。但し、高負荷運転領域A3におけるエンジン出力を重視する場合には、図5に示すブースト圧−流量特性に設定することが望ましいことは言うまでもない。
【0049】
図7〜11は、本発明に係る換気システムの第2の実施の形態を示す図であり、特に図7はエンジンの低負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示し、図8はエンジンの中負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示し、図9はエンジンの高負荷運転時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示している。なお、図7〜9において、先の図1〜3と共通する部分には同一の符号を付してある。
【0050】
この第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態におけるPCVバルブ12に代えて、クランク室1aから吸気系2側へのブローバイガスの排出量のみを制御するPCVバルブ28を採用し、吸気系2側からクランク室1aへの新気の導入量を制御する新気流量制御バルブ29をPCVバルブ28と並列に設けたものである。すなわち、吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側位置からブローバイガス還元通路10が分岐または合流していることは上述した第1の実施の形態と同様であるが、同等位置から分岐または合流するバイパス通路30を設け、そのバイパス通路30に新気流量制御バルブ29を設けるとともに、バイパス通路30の他端をオイルミストセパレーター13に接続してある点で上述した第1の実施の形態と相違している。そして、PCVバルブ28および新気流量制御バルブ29のブースト圧−流量特性としては、図5に示した符号Bの特性と略同等のものとなるように予め調整してある。
【0051】
図10はPCVバルブ28の詳細を示している。このPCVバルブ28は、上述した第1の実施の形態におけるPCVバルブ28と略同様のいわゆる2ピース構造のバルブボディ31内にスプール型の弁体36をスライド可能に内挿したものであり、バルブボディ31のうちカバー32側の第1ポート34が吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側に、バルブボディ31のうちバルブボディ本体33側の第2ポート35がオイルミストセパレーター13側にそれぞれ繋がることになる。
【0052】
弁体36は、当該弁体36のうち第2ポート35側の端部に形成されたフランジ部37と、そのフランジ部37から第1ポート34側へ突出する先細り形状のブローバイガス計量部38と、を備えていて、フランジ部37とカバー32との間に介装した圧縮コイルスプリング39によって第2ポート35側へ付勢されている。そして、当該弁体36のブローバイガス計量部38およびカバー32に形成されたスロート部32aは上述した第1の実施の形態と同等のものとして形成してあり、両者の間には上述した第1の実施の形態と同等のブローバイガス流量制御オリフィス40が形成されている。
【0053】
すなわち、吸気系2側のブースト圧が負圧である場合には、そのブースト圧と圧縮コイルスプリング39の付勢力とが釣り合う位置に弁体36がスライド変位し、ブローバイガス流量制御オリフィス40の開度、ひいては吸気系2側に向かって流れるブローバイガスの流量が可変制御されることになる。一方で、吸気系側のブースト圧が正圧である場合には、弁体36のフランジ部37がバルブボディ本体33の底壁に着座することで第2ポート35が閉塞され、PCVバルブ28が閉弁することになる。
【0054】
図11は新気流量制御バルブ29の詳細を示している。この新気流量制御バルブ29は、PCVバルブ28と同様のいわゆる2ピース構造のバルブボディ41内にスプール型の弁体46をスライド可能に内挿したものであり、バルブボディ41のうちカバー42側の第1ポート44が吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側に、バルブボディ41のうちバルブボディ本体43側の第2ポート45がオイルミストセパレーター13側にそれぞれ繋がることになる。
【0055】
弁体46は、当該弁体46のうち第1ポート44側の端部に形成されたフランジ部47と、そのフランジ部47から第2ポート45側へ突出する略段付円柱状の新気計量部48と、を備えていて、フランジ部47とバルブボディ本体43の底壁との間に介装した圧縮コイルスプリング49によって第1ポート44側へ付勢されている。そして、当該弁体46の新気計量部48は、大径部48a、中径部48b、小径部48cおよびテーパ部48dをもって上述した第1の実施の形態と同様に形成されているほか、第2ポート45の最小直径部であるスロート部43aも上述した第1の実施の形態と同等のものとして形成してあり、両者の間には上述した第1の実施の形態と同等の新気流量制御オリフィス50が形成されている。
【0056】
すなわち、吸気系2側のブースト圧が負圧である場合には、弁体46のフランジ部47がカバー42の底壁部42aに着座することで第2ポート45が閉塞され、新気流量制御バルブ29が閉弁することになる。一方で、吸気系2側のブースト圧が正圧である場合には、そのブースト圧と圧縮コイルスプリング49の付勢力とが釣り合う位置に弁体46がスライド変位し、新気流量制御オリフィス50の開度、ひいてはオイルミストセパレーター13側へ向かって流れる新気の流量が可変制御されることになる。なお、吸気系のブースト圧が図5に示す設定圧力P1以上である場合に、新気計量部48のうち大径部48aと中径部48bとの間の段状部48eがバルブボディ本体43の底壁に着座し、第2ポート45を閉塞するようになっていることは上述した第1の実施の形態と同様である。
【0057】
以上のように構成した第2の実施の形態では、吸気系2側のブースト圧が負圧となる図5の低負荷運転領域A1では、図7に示すように、新気流量制御バルブ29によってバイパス通路30が遮断される一方、吸気系2側に排出するブローバイガスの流量はPCVバルブ28によって制御され、ブローバイガス還流通路10が本来の機能を発揮する。
【0058】
また、吸気系2側のブースト圧が正圧であって且つ設定圧力P1よりも低い図5の中負荷運転領域A2では、図8に示すように、PCVバルブ28によってブローバイガス還流通路10が遮断されるとともに、新気流量制御バルブ29によって計量された新気がバイパス通路30を通してクランク室1aに導入されることになる。これにより、クランク室1aが積極的に換気される。
【0059】
さらに、吸気系2側のブースト圧が設定圧力P1以上となる図5の高負荷運転領域A3では、図9に示すように、新気流量制御バルブ29によってバイパス通路30も遮断され、エンジン1により多くの新気が供給されることになる。これにより、エンジン1の出力低下が防止される。
【0060】
したがって、第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の機能が発揮されるのは勿論のこと、吸気系2側のブースト圧が正圧であるときにクランク室1aへ導入する新気の流量を制御する新気流量制御バルブ29をPCVバルブ28とは別に設けたため、クランク室1aへ導入する新気の流量をより高精度で且つ安定して制御できるようになるメリットがある。
【0061】
図12は上述した第2の実施の形態の変形例を示し、図7と同様に低負荷時におけるブローバイガスおよび新気の流れを示している。
【0062】
この変形例では、新気流量制御バルブ29を有するバイパス通路51を、オイルミストセパレーター13ではなく、エンジン1のクランク室1aに直接接続している。
【0063】
したがって、この場合にも上述した第2の実施の形態と同様の機能が発揮されることは言うまでもない。
【0064】
図13〜16を用いて、本発明の第4の実施の形態を説明する。なお、この第4の実施の形態は、上述した第1の実施の形態に示した図1〜3の換気システムに、適用されるものであり、具体的には、上述した第1の実施の形態において、上述したPCVバルブ12に代えて、PCVバルブ12とは異なる特性のPCVバルブ80を介装したものである。
【0065】
図13は、第4の実施の形態におけるPCVバルブ80の詳細を示している。
なお、PCVバルブ12と同一の構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0066】
このPCVバルブ80は、上述したPCVバルブ12と略同一構成となっているが、図14に示すように、弁体22の新気計量部81は、当該新気計量部81の根元に形成され、第2ポート21の最小直径部である第2スロート部18aよりも大径な大径部81aと、その大径部81aの反フランジ部23側に隣接して形成され、第2ポート部21側に向かって外径が漸次小径となるテーパ部81bと、新気計量部81の先端に形成され、テーパ部81bよりも小径な小径部81cと、大径部81aとテーパ部81bとの間に形成された段状部81dと、テーパ部81bと小径部81cとの間に形成された段状部81eとから構成されている。
【0067】
そして、吸気系2側のブースト圧が正圧である場合には、その正圧により押圧された弁体22がバルブボディ17に対してスライド変位し、そのブースト圧と第2圧縮コイルスプリング27の弾性力とが釣り合った位置で弁体が静止することになる。
【0068】
この図14に示すように新気計量部81が形成された場合には、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧が正圧に切り替わり、ブースト圧の増加に伴って弁体22がスライド移動して、段状部81dがバルブボディ本体18の底壁に着座すると、新気流量制御オリフィス16が全閉状態となる。なお、このPCVバルブ80においては、第2スロート部18aと新気計量部81とのなす隙間が、上述した新気流量制御オリフィス16として機能することになる。
【0069】
図15は、上述した図1〜3の換気システムにPCVバルブ80を適用した場合における、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧とブローバイガス等の流量との関係を示したグラフであって、符号Aはブローバイガスの発生量を、符号Bはブローバイガス還元通路10側のオイルミストセパレーター13でのブローバイガス等の流量特性を、符号Cは新気導入通路11側のオイルミストセパレーター14でのブローバイガス等の流量特性をそれぞれ示している。なお、図15においても、上述した図5と同様に、ブースト圧が負圧となってその度合が大きい右側が低負荷側となり、反対にブースト圧が正圧となってその度合が大きい左側ほど高負荷側となっている。また、符号B,Cで示すブローバイガス等の流量特性についても、上述した図5と同様に、クランク室1a側から吸気系2側に向かうブローバイガスの流れを「正(+)」とし、吸気系2側からクランク室1a側に向かう新気の流れを「負(−)」としている。
【0070】
そして、ブローバイガス還元通路10において、PCVバルブ80はオイルミストセパレーター13と直列に配置されていることから、両流量制御オリフィス15,16によるPCVバルブ80のブースト圧−流量特性として、この第4の実施の形態では、図15の符号Bで示す特性と略同等のものとなるように予め調整してある。詳述すると、吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側のブースト圧が正圧となる運転領域のうち、中負荷運転領域では、スロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へ流入する新気の量がブースト圧に関わらず一定となり、高負荷運転領域ではスロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へ流入する新気の量がほぼ零または極めて小さくなるように、新気計量部101が設定されている。
【0071】
このような第4の実施の形態においても、図15に示す低負荷運転領域A1では、ブースト圧の負圧の程度が大きくなるほど、ブローバイガス流量制御オリフィス15における流路断面積(開度)が比較的小さくなる。したがって、図15の低負荷運転領域A1のうち図中右側の領域では、オイルミストセパレーター13およびPCVバルブ80を通して吸気系2側に排出(還元)されるブローバイガス流量が比較的小さいものとなるとともに、図15の符号Aで示すブローバイガス発生量そのものも他の領域と比較して小さいものとなる。なお、このとき新気流量制御オリフィス16の開度は最大となる。
【0072】
そして、この場合にも、図15の符号Aで示すブローバイガス発生量よりもブローバイガス還元通路10を通して吸気系2側に排出される符号Bのブローバイガス流量の方が大きいことから、符号Cで示すように両者の流量差分の新気が新気導入通路11を通してクランク室1aへ導入される。このように、ブローバイガス還元通路10を通してクランク室1aから吸気系2側へブローバイガスを排出しつつ、新気導入通路11を通してクランク室1aへ新気を導入することで、そのクランク室1aが換気されることになる。
【0073】
また、その状態からエンジンの負荷が大きくなり、ブースト圧が徐々に正圧に近づくと、図13のPCVバルブ80の弁体22が先の場合よりも右側にスライド変位し、ブローバイガス流量制御オリフィス15における流路断面積(開度)が先の場合よりも大きくなる。これにより、ブローバイガス還元通路10を通して吸気系2側に排出される符号Bのブローバイガス流量、および新気導入通路11を通してクランク室1aに導入される符号Cの新気流量がそれぞれ増加することになる。
【0074】
さらに、ブースト圧が限りなく正圧に近付く正圧直前状態では、ブローバイガス還元通路10のオイルミストセパレータ13およびPCVバルブ80を通して吸気系2側へ排出される符号Bのブローバイガス流量は符号Aで示すブローバイガス発生量よりも少なくなり、やがては新気導入通路11からもブローバイガスが排気されるようになる。
【0075】
エンジン1の負荷がさらに大きくなって、図15のブースト圧が正圧に転じると、図13に示すPCVバルブ80の弁体22がブースト圧を受けて同図の右方向にスライド変位し、吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へブースト圧によって流入した新気が、PCVバルブ80の新気流量制御オリフィス16によって計量された上で、オイルミストセパレーター13を経てクランク室1a側へ逆流することになる。同時にエンジン1で発生するブローバイガスはクランク室1a内で新気と混ざり、新気導入通路11を通して吸気系2のうちスロットルバルブ7上流側に排出され、クランク室1a内が換気されることになる。つまり、このPCVバルブ80においても、ブースト圧が正圧であるときには、ブローバイガス流量制御オリフィス15の開度が最大となり、PCVバルブ80のうち新気流量制御オリフィス16をもってブローバイガス還元通路10側のオイルミストセパレーター13での新気の流量が制御される。
【0076】
これにより、図15のブースト圧が正圧となる運転領域、すなわちブースト圧が正圧であって且つ予め定めた設定圧力P1よりも小さい中負荷運転領域A2及びブースト圧がこの設定圧力P1以上の高負荷運転領域A3では、符号Bで示すブローバイガス還元通路10側でのガス流量が「負(−)」に転じる。なお、このとき新気導入通路11を通して吸気系2のうちスロットルバルブ7上流側に排出されるブローバイガスの流量は、図15の符号Aで示すブローバイガス発生量に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量を加えた量となることから、符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガス流量が符号Aのブローバイガス発生量を上回ることになる。
【0077】
図16の(a)〜(c)は、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が正圧のときのPCVバルブ80の作動状態を示す要部拡大図である。図16の中負荷運転領域A2の領域では、図6の(a),(b)に示すように、ブースト圧の増加に伴って弁体22が図中右側にスライド移動し、新気計量部81のテーパ部81bによって新気流量制御オリフィス16の流路断面積が徐々に小さくなる。ここで、この第4の実施の形態では、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が正圧に切り替わると、中負荷運転領域A2では、図15に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量が、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が大きくなっても一定の流量Q1となるように、PCVバルブ80のブースト圧−流量特性が設定されている。
【0078】
そして、ブースト圧が予め定めた設定圧力P1に限りなく近付く設定圧力P1直前位置では、図16の(b)に示すように、新気計量部81のうち大径部81aとテーパ部81bとの間の段状部81dがバルブボディ本体18の底壁に接近し、新気流量制御オリフィス16の流路断面積が一段と小さくなる。これにより、図15に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量、および図15に符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガスの流量は、ブースト圧の増加に伴って徐々に小さくなる。
【0079】
そして、ブースト圧が設定圧力P1に達すると、図16の(c)に示すように新気計量部81の段状部81dがバルブボディ17の底壁に着座し、新気流量制御オリフィス16が全閉状態となる。これにより、図15に示すように、ブースト圧が設定圧力P1以上となる高負荷運転領域A3では、符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量がほぼ零または極めて小さくなり、中負荷運転領域A2ではクランク室1aに導入されていた新気がエンジン1に供給されるようになる。なお、このとき図15の符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガスの流量は符号Aで示すブローバイガス発生量と同等になる。
【0080】
このように構成された第4の実施形態における換気システムによれば、中負荷運転領域ではクランク室1aの換気を重視し、ブローバイガス還元通路10を通してクランク室1aに積極的の一定量Q1の新気を導入する一方、エンジンの高負荷運転領域では、ブローバイガス還元通路10を通してクランク室1aに新気が略導入されないようにすることで、エンジン出力を重視してより多くの新気をエンジンに供給することができる。
【0081】
なお、PCVバルブ80を適用する場合、中負荷運転領域A2おいて設定される一定流量Q1は、エンジン出力とクランク室1aの換気効率とのバランスを考えて適宜設定すればよい。
【0082】
また、上述した第4の実施の形態におけるPCVバルブ80における弁体22の新気計量部81は、図17及び図18に示すように構成することも可能である。
【0083】
図17に示す例では、弁体22の新気計量部91が、フランジ部23側に向かって直径が大きくなり、第2ポート部21側の先端側が先細り形状に形成された第1テーパ部91a及び第2テーパ91bと、第1テーパ部91aと第2テーパ91bとの間に形成された段状部91cと、から構成されている。第1テーパ部91aは第2テーパ部91bよりも大径に形成されている。
【0084】
この図17に示すように新気計量部91が形成された場合には、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧が正圧に切り替わると、PCVバルブを流れる新気の流量が、負荷に応じて2段階に切り替えられるように制御されることになる。なお、この新気計量部91を有する弁体22を備えたPCVバルブにおいては、第2スロート部18aと新気計量部91とのなす隙間が、上述した新気流量制御オリフィス16として機能することになる。
【0085】
図19は、上述した図1〜3の換気システムに、新気計量部91を有する弁体22を備えたPCVバルブを適用した場合における、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧とブローバイガス等の流量との関係を示したグラフである。
【0086】
図19の中負荷運転領域A2においては、ブースト圧の増加に伴い、新気計量部91の第2テーパ部91bによって新気流量制御オリフィス16の流路断面積が徐々に小さくなるが、図19中に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気が一定の流量Q1となるように、PCVバルブのブースト圧−流量特性が設定されている。そして、ブースト圧が予め定めた設定圧力P1に限りなく近付く設定圧力P1直前位置では、段状部91cがバルブボディ本体18の底壁に接近し、新気流量制御オリフィス16の流路断面積が一段と小さくなる。これにより、図19に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量、および図19に符号Cで示す新気導入通路11側でのブローバイガスの流量は、ブースト圧の増加に伴って徐々に小さくなる。
【0087】
そして、ブースト圧が設定圧力P1以上になる図19の高負荷運転領域A3においては、ブースト圧の増加に伴い第1テーパ部91aによって、新気流量制御オリフィス16の流路断面積が徐々に小さくなるが、図19中に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気が一定の流量Q2となるように、PCVバルブのブースト圧−流量特性が設定されている。なお、高負荷運転領域A3における一定の流量Q2は、中負荷運転領域A2における一定の流量Q1よりも小さく設定されている。
【0088】
そのため、このような新気計量部91を有する弁体22を備えたPCVバルブを適用すれば、スロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が正圧の状態であっても、エンジン1の高負荷時におけるエンジン1の出力低下を招くことなく、換気効率を向上させ、クランク室1a内のエンジンオイルの劣化を抑制することができる。
【0089】
なお、新気計量部91を有する弁体22を備えたPCVバルブを適用する場合、中負荷運転領域A2おいて設定される一定流量Q1及び高負荷運転領域A3おいて設定される一定流量Q2は、エンジン出力とクランク室1aの換気効率とのバランスを考えて適宜設定すればよい。
【0090】
図18に示す例では、弁体22のうちフランジ部23よりも第2ポート側の部分に形成された新気計量部101が、フランジ部23側に向かって直径が大きくなり、第2ポート部21側の先端側が先細り形状に形成されたテーパ部101aと、テーパ部101aの先端と同一径に形成された円柱状の先端部101bと、から構成されている。
【0091】
この新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブにおいては、上記正圧の大きさに応じて第2スロート部18aと新気計量部101とが相対移動することにより、両者のなす開度が連続的に可変制御されるが、上記正圧の大きさに関わらずPCVバルブを流れる新気の流量が一定となるように制御されることになる。なお、この新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブにおいては、第2スロート部18aと新気計量部101とのなす隙間が、上述した新気流量制御オリフィス16として機能することになる。
【0092】
図20は、上述した図1〜3の換気システムに、新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブを適用した場合における、吸気系2におけるスロットルバルブ7の下流側のブースト圧とブローバイガス等の流量との関係を示したグラフである。
【0093】
図20の中負荷運転領域A2のうち正圧の程度が比較的小さい領域から図20の高負荷運転領域A3においては、ブースト圧の増加に伴って新気計量部101のテーパ部101aによって新気流量制御オリフィス16の流路断面積が徐々に小さくなる。ここで、本実施の形態では、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が正圧に切り替わると、図20に符号Bで示すブローバイガス還元通路10側での新気の流量が、吸気系2のうちスロットルバルブ7よりも下流側のブースト圧が大きくなっても一定の流量Q1となるように、新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブのブースト圧−流量特性が設定されている。
【0094】
このように構成された新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブにおいては、スロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が大きな正圧になるほど、新気流量制御オリフィス16の流路断面積が小さくなるため、スロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が大きな正圧となっても、PCVバルブを通してクランク室1aに導入される新気の量を一定の流量Q1とすることが可能となる。
【0095】
換言すれば、スロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が大きな正圧の状態になっても、新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブを通してクランク室1aに導入される新気を一定量とすることができる。すなわち、エンジン1の高負荷時にスロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が大きな正圧となっても、PCVバルブを通して一定量以上の新気がクランク室1aに導入されることはないので、エンジン1の高負荷時に、エンジン1へ流れる新気の量(空気量)が減ることはない。
【0096】
そのため、スロットルバルブ7よりも下流側位置のブースト圧が正圧の状態では、エンジン1の高負荷時におけるエンジン1の出力低下を招くことなく、換気効率を向上させ、クランク室1a内のエンジンオイルの劣化を抑制することができる。
【0097】
なお、新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブを適用する場合、中負荷運転領域A2及び高負荷運転領域A3おいて設定される一定流量Q1は、エンジン出力とクランク室1aの換気効率とのバランスを考えて適宜設定すればよい。
【0098】
図21は、本発明に係る換気システムの第5の実施の形態に用いられる新気流量制御バルブ130を示している。
【0099】
この第5の実施の形態は、上述した第2の実施の形態におけるPCV量制御バルブ29に代えて、吸気系2側からクランク室1aへの新気の導入量を制御する新気流量制御バルブ130をPCVバルブ28と並列に設けたものである。
【0100】
そして、PCVバルブ28および新気流量制御バルブ130のブースト圧−流量特性としては、上述した第4の実施の形態におけるPCVバルブ80の特性と同等、すなわち図15に示した符号Bの特性と略同等のものとなるように予め調整してある。
【0101】
図21は、新気流量制御バルブ130の詳細を示している。この新気流量制御バルブ130は、上述した新気流量制御バルブ29と同様のいわゆる2ピース構造のバルブボディ141内にスプール型の弁体146をスライド可能に内挿したものであり、バルブボディ141のうちカバー142側の第1ポート144が吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側に、バルブボディ141のうちバルブボディ本体143側の第2ポート145がオイルミストセパレーター13側にそれぞれ繋がることになる。
【0102】
弁体146は、当該弁体146のうち第1ポート144側の端部に形成されたフランジ部147と、そのフランジ部147から第2ポート145側へ突出する略テーパ状の新気計量部148と、を備えていて、フランジ部147とバルブボディ本体143の底壁との間に介装した圧縮コイルスプリング149によって第1ポート144側へ付勢されている。そして、当該弁体146の新気計量部148は、大径部148a、テーパ部148b、小径部148c、段状部148d、段状部148eをもって上述した第4の実施の形態と同様に形成されているほか、第2ポート145の最小直径部であるスロート部143aも上述した第4の実施の形態と同等のものとして形成してあり、両者の間には上述した第4の実施の形態と同等の新気流量制御オリフィス150が形成されている。
【0103】
吸気系2側のブースト圧が負圧である場合には、弁体146のフランジ部147がカバー142の底壁部142aに着座することで第2ポート145が閉塞され、新気流量制御バルブ130が閉弁することになる。一方で、吸気系2側のブースト圧が正圧である場合には、そのブースト圧と圧縮コイルスプリング149の付勢力とが釣り合う位置に弁体146がスライド変位する。そして、中負荷運転領域では、スロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へ流入する新気の量がブースト圧に関わらず一定となり、高負荷運転領域ではスロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へ流入する新気の量がほぼ零または極めて小さくなるように、新気流量制御バルブ130のブースト圧−流量特性が設定されている。
【0104】
以上のように構成した第5の実施の形態では、吸気系2側のブースト圧が負圧となる低負荷運転領域では、新気流量制御バルブ130によってバイパス通路30が遮断される一方、吸気系2側に排出するブローバイガスの流量はPCVバルブ28によって制御され、ブローバイガス還流通路10が本来の機能を発揮する。
【0105】
また、吸気系2側のブースト圧が正圧である中負荷運転領域では、PCVバルブ28によってブローバイガス還流通路10が遮断されるとともに、新気流量制御バルブ130によって計量された一定流量Q1の新気がバイパス通路30を通してクランク室1aに導入されることになる。これにより、クランク室1aが積極的に換気される。
【0106】
そして、吸気系2側のブースト圧が正圧である高負荷運転領域では、PCVバルブ28によってブローバイガス還流通路10が遮断されるとともに、新気流量制御バルブ130によってバイパス通路30も遮断される。
【0107】
したがって、第5の実施の形態においても、上述した各実施の形態と同様の機能が発揮されるのは勿論のこと、下流クランク室1aへ導入する新気の流量を制御する新気流量制御バルブ29をPCVバルブ28とは別に設けたため、クランク室1aへ導入する新気の流量をより高精度で且つ安定して制御できるようになるメリットがある。特に、この第5実施形態では、吸気系2側のブースト圧が正圧である高負荷運転領域では、スロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10へ流入する新気の量がほぼ零または極めて小さくなるようにしているため、エンジンの高負荷運転領域でエンジン出力を重視してより多くの新気をエンジンに供給できるメリットがある。
【0108】
上述した第5の実施の形態においては、新気流量制御バルブ130に替えて、図22に示す新気流量制御バルブ160を用いることも可能である。図22は、本発明に係る換気システムの第6の実施の形態に用いられる新気流量制御バルブ160を示している。
【0109】
この第6の実施の形態において、PCVバルブ28および新気流量制御バルブ160のブースト圧−流量特性としては、上述した新気計量部101を有する弁体22を備えたPCVバルブの特性と同等、すなわち図20に示した符号Bの特性と略同等のものとなるように予め調整してある。
【0110】
図22は、新気流量制御バルブ160の詳細を示している。この新気流量制御バルブ160は、上述した新気流量制御バルブ29と同様のいわゆる2ピース構造のバルブボディ161内にスプール型の弁体166をスライド可能に内挿したものであり、バルブボディ161のうちカバー162側の第1ポート164が吸気系2のうちスロットルバルブ7下流側に、バルブボディ161のうちバルブボディ本体163側の第2ポート165がオイルミストセパレーター13側にそれぞれ繋がることになる。
【0111】
弁体166は、当該弁体166のうち第1ポート164側の端部に形成されたフランジ部167と、そのフランジ部167から第2ポート165側へ突出する略テーパ状の新気計量部168と、を備えていて、フランジ部167とバルブボディ本体163の底壁との間に介装した圧縮コイルスプリング169によって第1ポート164側へ付勢されている。そして、当該弁体166の新気計量部168は、テーパ部168a、円柱状の小径部168bをもって上述した図18の新気計量部101と同様に形成されている。そして、この新気計量部168と、第2ポート165の最小直径部であるスロート部163aと、の間に新気流量制御オリフィス170が形成されている。
【0112】
吸気系2側のブースト圧が負圧である場合には、弁体166のフランジ部167がカバー162の底壁部162aに着座することで第2ポート165が閉塞され、新気流量制御バルブ160が閉弁することになる。一方で、吸気系2側のブースト圧が正圧である場合には、そのブースト圧と圧縮コイルスプリング169の付勢力とが釣り合う位置に弁体166がスライド変位し、ブースト圧の増加に伴い新気流量制御オリフィス150の流路断面積が徐々に小さくなるが、オイルミストセパレーター13側へ向かって流れる新気の流量は一定の流量Q1となるように、新気流量制御バルブ160のブースト圧−流量特性が設定されている。
【0113】
以上のように構成した第6の実施の形態では、吸気系2側のブースト圧が負圧となる低負荷運転領域では、新気流量制御バルブ160によってバイパス通路30が遮断される一方、吸気系2側に排出するブローバイガスの流量はPCVバルブ28によって制御され、ブローバイガス還流通路10が本来の機能を発揮する。
【0114】
また、吸気系2側のブースト圧が正圧である中負荷運転領域及び高負荷運転領域では、PCVバルブ28によってブローバイガス還流通路10が遮断されるとともに、新気流量制御バルブ160によって計量された一定流量Q1の新気がバイパス通路30を通してクランク室1aに導入されることになる。これにより、クランク室1aが積極的に換気される。
【0115】
したがって、第6の実施の形態においても、上述した第5の実施の形態と略同様の作用効果を得ることができる。また、この第6の実施の形態では、吸気系2側のブースト圧が正圧である高負荷運転領域おいても一定流量Q1の新気が、スロットルバルブ7下流側からブローバイガス還元通路10を介してクランク室1a内に導入されるので、高負荷時におけるエンジン1の出力低下を招くことなく、高負荷時における換気効率を向上させ、クランク室1a内のエンジンオイルの劣化を抑制することができる。
【0116】
また、第5及び6の実施の形態においても、新気流量制御バルブ110を、オイルミストセパレーター13ではなく、エンジン1のクランク室1aに対して直接連通するよう接続してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…エンジン
1a…クランク室
2…吸気系(吸気通路)
5…ターボチャージャー(過給機)
7…スロットルバルブ
10…ブローバイガス還元通路
11…新気導入通路
12…PCVバルブ
15…ブローバイガス流量制御オリフィス(ブローバイガス流量制御用の可変オリフィス)
16…新気流量制御オリフィス(新気流量制御手段として機能する可変オリフィス)
28…PCVバルブ
40…ブローバイガス流量制御オリフィス(ブローバイガス流量制御用の可変オリフィス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給式エンジンの吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置とエンジンのクランク室とを連通するブローバイガス還元通路と、
上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも上流側位置と上記クランク室とを連通する新気導入通路と、
上記ブローバイガス還元通路に設けられ、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が負圧である場合に、上記吸気通路側へ向かうブローバイガスの流量を制御するPCVバルブと、
上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が正圧となった場合に、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置から上記クランク室へ新気を導入する新気流量制御手段と、を備えていて、
上記新気流量制御手段は、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が正圧であって且つ所定の設定圧力よりも低い中負荷運転領域で、上記クランク室に新気を導入する一方、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側位置のブースト圧が上記設定圧力以上となる高負荷運転領域で、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の導入を停止、またはその新気の流量を少なくとも上記中負荷運転領域における最大流量よりも小さくするようになっていることを特徴とするエンジンの換気システム。
【請求項2】
上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスが上記ブローバイガス還元通路に設けられていて、
上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスの流路断面積を、少なくとも上記中負荷運転領域での流路断面積よりも小さくするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの換気システム。
【請求項3】
上記PCVバルブは、PCVバルブ本来の機能であるブローバイガス流量制御用の可変オリフィスとは別に、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを有していることを特徴とする請求項2に記載のエンジンの換気システム。
【請求項4】
上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスが上記PCVバルブと並列に配置されていて、
上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスの流路断面積を、少なくとも上記中負荷運転領域での流路断面積よりも小さくするようになっていることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの換気システム。
【請求項5】
上記高負荷運転領域において、上記新気流量制御手段として機能する可変オリフィスを閉止するようになっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のエンジンの換気システム。
【請求項6】
上記中負荷運転領域において、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の流量が一定となり、
上記高負荷運転領域において、上記吸気通路のうちスロットルバルブよりも下流側から上記クランク室への新気の流量が、上記中負荷運転領域における流量とと等しくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジンの換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−21522(P2012−21522A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285450(P2010−285450)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】