説明

エンジン停止始動制御装置

【課題】ピニオンとリングギヤとの噛み合わせを適正に実施する。
【解決手段】ECU50は、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジン20を自動停止し、その後所定の再始動条件が成立した場合にスタータ10によるクランキングを開始してエンジン20を再始動する。また、ECU50は、再始動条件成立時のスタータ駆動制御として、スタータ10のピニオン14を回転させた後、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせを行う先回し制御を実施するか、又はその噛み合わせを行った後、ピニオン14を回転させる後回し制御を実施する。特に、エンジン自動停止後であってエンジン20の回転停止前である停止前期間にエンジン回転速度の低下態様を検出し、その停止前期間に再始動条件が成立した場合、エンジン回転速度の低下態様に基づいて、スタータ10の駆動制御として先回し制御と後回し制御とのいずれかを選択して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン停止始動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアクセル操作やブレーキ操作などといった停車又は発進のための動作等を検知してエンジンの自動停止及び自動再始動を行う、所謂アイドルストップ機能を備えるエンジン制御システムが知られている。このアイドルストップ制御により、エンジンの燃費低減等の効果を図っている。
【0003】
エンジンを再始動させる場合、ドライバビリティ向上等の観点からすると、再始動要求があった後できるだけ速やかにエンジンを始動させるのが望ましく、そのための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、エンジン自動停止後、エンジン回転速度の低下中に再始動要求があった場合、エンジンの回転が完全に停止するのを待たずにスタータによりエンジンのクランキングを行うことが開示されている。具体的には、エンジン自動停止後においてエンジンが回転停止する前に再始動要求があった場合、まず、モータによりピニオンを回転させる。その後、ピニオンの回転速度がリングギヤの回転速度(エンジン回転速度)と同期した時点でピニオンをリングギヤに噛み合わせ、ピニオンの回転によりリングギヤを回転させる。これにより、エンジンをできるだけ速やかに運転状態に復帰させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4211208号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジン自動停止後であってエンジンの回転停止前にエンジンを再始動させる際、エンジン回転速度の単位時間当たりの低下量(低下率)によっては、ピニオンの回転速度をリングギヤの回転速度に同期させた状態で両者を噛み合わせるのが難しい場合がある。この場合において、上記制御によりピニオンとリングギヤとの噛み合わせを実施すると、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とが同期していないにも関わらず、その状態でピニオンがリングギヤに噛み合わされるおそれがある。かかる場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合いを速やかに実施できなかったり、噛み合い音が過剰に大きくなったりすることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせを適正に実施することができ、ひいてはスタータによるエンジン再始動を適正に実施することができるエンジン停止始動制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0008】
本発明は、所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止し、その後所定の再始動条件が成立した場合にスタータによるクランキングを実施して前記エンジンを再始動する自動停止始動機能を有し、エンジン再始動に際して、前記エンジンの出力軸に連結されたリングギヤに前記スタータのピニオンが噛み合った状態での該ピニオンの回転により前記クランキングを実施し、クランキング終了に際し前記噛み合わせを解除するエンジン停止始動制御装置に関する。そして、請求項1に記載の発明は、前記再始動条件の成立時に、前記ピニオンを回転させた後、前記噛み合わせを行う先回し制御を実施する先回し制御手段と、前記再始動条件の成立時に、前記噛み合わせを行った後、前記ピニオンを回転させる後回し制御を実施する後回し制御手段と、前記自動停止条件の成立後であってエンジンの回転停止前である停止前期間に、エンジン回転速度の低下態様を検出する低下態様検出手段と、前記停止前期間に前記再始動条件が成立した場合、前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて、当該停止前期間において前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれかを選択して実施する再始動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
アイドルストップ機能を有するエンジンにおいて、エンジン自動停止後であってエンジンの回転停止前にエンジン再始動条件が成立した場合、エンジン再始動をできるだけ速やかに実施すべく、ピニオンの回転速度をリングギヤの回転速度に同期させ、その後、ピニオンをリングギヤに噛み合わせるピニオン先回し制御を行うことがある。ところが、ピニオン先回し制御を行う場合、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせ前におけるエンジン回転速度の低下方向への変化態様(低下態様)によっては、それらを同期させた状態で噛み合わせを実施することができず、その結果、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせを速やかに実施できなかったり、あるいは噛み合い音が過剰に大きくなったりすることが考えられる。
【0010】
その点に鑑み、本発明では、エンジン自動停止後であってエンジンの回転停止前においてエンジン再始動を行う場合、エンジン回転速度の低下態様に基づいて、ピニオン先回し制御を実施するかピニオン後回し制御を実施するかを選択する。これにより、ピニオン回転速度をリングギヤ回転速度に同期させた状態で両者の噛み合わせをできるか、そうでないかに応じて、スタータの駆動制御を実施することができる。よって、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とが同期していない状態で両者の噛み合わせが実施される際の不都合を回避することができる。したがって、本発明によれば、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせを適正に実施することができ、ひいてはスタータによるエンジン再始動を適正に実施することができる。
【0011】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、前記低下態様検出手段が、前記エンジン回転速度の低下態様として前記エンジン回転速度の低下率を検出し、前記再始動制御手段が、前記低下態様検出手段により検出した前記低下率が判定値よりも大きい場合に前記後回し制御を実施する。あるいは、請求項3に記載の発明のように、前記停止前期間であって前記再始動条件の成立後において、前記低下態様検出手段により検出した前記低下率が増大側に変化したことを判定する低下率増大判定手段を備え、前記再始動制御手段が、前記低下率増大判定手段により前記低下率が増大側に変化したと判定された場合に前記後回し制御を実施する。停止前期間において、エンジン回転速度の単位時間当たりの低下量(低下率)が大きい場合や、エンジン回転速度の低下率が大きくなる側に変化した場合、エンジン回転速度の落ち込みが急速であり、この場合にはピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とを同期させた状態で両者の噛み合わせを実施できない可能性があるからである。
【0012】
エンジン自動停止状態においてドライバの操作によってクラッチ手段が動力遮断状態から動力伝達状態へ移行され始めたことをエンジン再始動条件として含むものがある。このようなクラッチ解除操作をきっかけにピニオン先回し制御によりエンジン再始動を行う場合、エンジン再始動条件の成立後においてクラッチ繋ぎ操作が急速に行われることにより、ピニオン回転速度をリングギヤ回転速度に同期させる前にクラッチ手段が動力遮断状態から動力伝達状態に切り替わることがある。この場合、エンジン回転速度の落ち込みが大きくなり、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とを同期させた状態で両者の噛み合わせを実施できないことが考えられる。したがって、請求項4に記載の発明のように、ドライバの操作に応じてエンジンと変速機との間の動力の遮断及び伝達を行うクラッチ手段を備える車両に適用され、前記低下態様検出手段は、前記低下態様として、前記クラッチ手段が動力遮断状態から動力伝達状態に移行する際のクラッチ操作状態を検出し、前記再始動制御手段は、前記クラッチ操作状態に基づいて、前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれかを選択して実施するものとするとよい。
【0013】
請求項5に記載の発明では、前記噛み合わせの実施から前記ピニオンの回転開始までの回転待機時間を前記低下態様に基づいて設定する時間設定手段を備え、前記低下態様に基づき前記後回し制御を実施する場合、前記時間設定手段により設定した前記回転待機時間に基づいて前記ピニオンの回転開始タイミングを変更する。
【0014】
エンジンの回転速度がゼロになるときには、振り子特性によりエンジン出力軸の回転方向が正転から反転に切り替わるため、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせがエンジン反転中に実施されることがある。また、そのときの反転量は、エンジン自動停止後であってエンジンが回転停止するまでのエンジン回転速度の低下態様に応じて相違し、例えばエンジン回転速度の低下率が大きいほど反転量が大きくなる。したがって、低下率が大きいほど反転量が大きくなり、その結果、低下率が大きいほど、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせがエンジン反転中に実施される可能性が高くなると言える。
【0015】
ここで、エンジン反転中に上記噛み合わせが実施され、その反転中にピニオンを回転させるべくスタータのモータを回転させる場合、エンジン出力軸の回転方向を反転から正転にする必要があるため、スタータの消費電力が大きくなったり、噛み合い音が大きくなったりすることが懸念される。一方、噛み合わせからピニオンの回転開始(モータの回転開始)までの回転待機時間を長くすると、エンジンが再始動されるまでの時間が長くなってしまう。その点、上記構成によれば、回転待機時間をエンジン回転速度の低下態様に応じて設定するため、エンジン反転中にピニオンが回転されるのを抑制しつつ、エンジン再始動までの時間が不当に長くなるのを抑制することができる。
【0016】
ピニオンとリングギヤとの噛み合わせが速やかに実施されるようにするには、エンジンの出力軸の回転方向が正転の場合に行うのが望ましい。その点に鑑み、請求項6に記載の発明では、前記噛み合わせの実行タイミングを前記低下態様に基づいて設定するタイミング設定手段を備え、前記低下態様に基づき前記後回し制御を実施する場合、前記タイミング設定手段により設定した前記タイミングに基づいて前記噛み合わせを実施する。こうすることで、エンジン再始動条件の成立後におけるエンジン回転速度の低下率に応じて、適切なタイミングで上記噛み合わせが実施されるようにすることができる。具体的には、例えば、上記停止前期間におけるエンジン回転速度の低下率が大きいほど噛み合わせタイミングを遅くすることにより、エンジン回転速度の正転と反転との変動が落ち着いた後に上記噛み合わせが実施されるようにする。あるいは、エンジン回転速度の低下率が大きいほど噛み合わせタイミングを早くすることにより、エンジン回転速度が正転から反転に切り替わる前に上記噛み合わせが実施されるようにする。
【0017】
請求項7に記載の発明では、前記再始動条件が成立したときのエンジン回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記回転速度検出手段により検出したエンジン回転速度に基づいて、前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれを実施するかを選択する選択手段と、を備え、前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて前記後回し制御を実施する場合と、前記回転速度検出手段により検出したエンジン回転速度に基づいて前記後回し制御を実施する場合とで、前記噛み合わせの実施から前記ピニオンの回転開始までの回転待機時間を変更する。
【0018】
エンジン回転速度の低下態様に基づいてピニオン後回し制御を実施する場合、再始動条件が成立した時点のエンジン回転速度に基づいてピニオン後回し制御を実施する場合に比べて、停止前期間におけるエンジン回転速度の落ち込みが急速な状況にある場合が多いと考えられる。そのため、低下態様に基づきピニオン後回し制御を実施する場合には、エンジンの回転速度がゼロになるときにエンジン出力軸の回転方向が反転するときの反転量が大きくなることが考えられる。よって、エンジン回転速度の低下態様に基づいてピニオン後回し制御を実施する場合には、エンジン反転中にピニオンとリングギヤとの噛み合わせが実施される可能性が高くなることが考えられる。したがって、上記構成とすることにより、ピニオンとリングギヤとの噛み合わせ後、ピニオンを回転させるまでの回転待機時間を、スタータの駆動制御に応じた適正な時間に設定することができる。
【0019】
ところで、エンジン自動停止条件が成立し、エンジンの燃焼を停止した後のエンジン回転降下中では、エンジン再始動を確実に完了させる観点からすると、エンジン回転速度の落ち込み度合いによっては先回し制御や後回し制御といった特別な態様でのエンジン再始動をそもそも実施しない方が好ましい状況もあると考えられる。その点に鑑み、請求項8に記載の発明では、前記停止前期間において前記先回し制御及び前記後回し制御によるエンジン再始動を禁止する条件として、エンジン回転速度の低下率に基づき定めた所定の禁止条件が成立したか否かを判定する条件判定手段を備え、前記条件判定手段により前記所定の禁止条件が成立したと判定された場合、前記エンジンの回転停止後に前記噛み合わせ及び前記ピニオンの回転を実施する。この構成によれば、エンジン再始動に際し、迅速性と確実性との両立を図ることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、前記再始動条件の成立時において、エンジンの回転停止前に前記噛み合わせを行った後、前記ピニオンを回転させる停止前後回し制御を実施する後回し制御手段と、前記再始動条件の成立時において、エンジンの回転停止後に前記噛み合わせ及び前記ピニオンの回転を実施する停止後制御を実施する停止後制御手段と、前記自動停止条件の成立後であってエンジンの回転停止前である停止前期間に、エンジン回転速度の低下態様を検出する低下態様検出手段と、前記停止前期間に前記再始動条件が成立した場合、前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて、前記停止前後回し制御と前記停止後制御とのいずれかを選択して実施する再始動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
上述したように、自動停止条件が成立した後のエンジン回転降下中においては、エンジン再始動を確実に完了させる観点からすると、エンジン回転速度の落ち込み度合いによっては後回し制御のような特別な態様でのエンジン再始動を実施しない方が好ましい状況もあると考えられる。その点、本構成によれば、エンジン回転速度の低下態様に応じて、後回し制御を実施するか、それともエンジン回転が停止してからスタータ駆動を開始するかを選択するため、エンジン再始動に際し、迅速性と確実性との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エンジン制御システムの全体概略構成図。
【図2】スタータ駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図3】ピニオン先回し制御の処理手順を示すフローチャート。
【図4】ピニオン後回し制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】ピニオン先回し制御の具体的態様を説明するためのタイムチャート。
【図6】本システムのピニオン後回し制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図7】本システムのピニオン後回し制御の具体的態様を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施形態の禁止条件判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第2の実施形態のスタータ駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態のスタータ駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、エンジン制御システムのエンジン停止始動制御装置に具体化している。当該制御システムにおいては、電子制御ユニット(以下、ECUという)を中枢として燃料噴射量の制御や点火時期の制御、アイドルストップ制御等を実施する。この制御システムの全体概略を示す構成図を図1に示す。
【0024】
図1において、スタータ10にはモータ11が設けられており、バッテリ12からの電力供給によりモータ11が回転駆動されるようになっている。モータ11の図示しない回転軸にはピニオン軸13が係合されており、そのピニオン軸13の一端において、ピニオン14が、ピニオン軸13とピニオン14との間で動力の伝達を断続するワンウエイクラッチ15と一体に支持されている。
【0025】
ピニオン軸13は、軸16を中心に回動するレバー17の一端に支持されている。レバー17の他端には、コイル18及びプランジャ19により構成される第1ソレノイドSL1が配置されており、コイル18内に配置されたプランジャ19がレバー17によって支持されている。コイル18の非通電状態では、ピニオン14が、エンジン20の出力軸(クランク軸)21に連結されたリングギヤ22に対して非接触の状態で配置されている。ピニオン14とリングギヤ22との非接触状態において、バッテリ12からコイル18に通電されると、その通電によりプランジャ19が軸線方向に移動し、その移動に伴いレバー17が軸16を中心に回動する。これにより、ピニオン14がリングギヤ22に向かう方向に押し出されて、ピニオン14とリングギヤ22とが噛み合わされる。
【0026】
また、ピニオン14とリングギヤ22とが噛み合わされた状態において、コイル18の通電が遮断されることにより、図示しないスプリングの付勢力によりピニオン軸13がリングギヤ22に向かう方向とは反対方向に変位する。このピニオン軸13の変位により、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合いが解除され、両者の接触状態が解除される。
【0027】
スタータ10とバッテリ12との間にはIGスイッチ23が設けられており、ドライバの操作に基づくIGスイッチ23のオンにより、バッテリ12からスタータ10への通電が可能になる。また、コイル18とバッテリ12との間には、制御信号に基づいて第1ソレノイドSL1の通電/非通電を切り替えるSL1駆動リレー24が設けられており、モータ11とバッテリ12との間には、モータ11の電磁子に接続され接点の開閉により通電/非通電が切り替えられる第2ソレノイドSL2と、制御信号に基づいて第2ソレノイドSL2の通電/非通電を切り替えるSL2駆動リレー25とが設けられている。
【0028】
エンジン20の出力軸であるクランク軸21には、クラッチ装置26を介して手動変速機27が接続されている。クラッチ装置26は、クランク軸21に接続されたエンジン20側の円板26a(フライホイール等)と、トランスミッション入力軸28に接続された変速機27側の円板26b(クラッチディスク等)とを備えており、ドライバによるクラッチペダル29の踏込み操作又は踏込みの解除操作により、両円板26a,26b同士が接触及び離間のいずれかの状態に切り替えられるようになっている。詳しくは、ドライバによりクラッチペダル29が踏み込まれると、両円板26a,26bが相互に離れてエンジン20から変速機27への動力が遮断され、その踏込み操作が解除されると、両円板26a,26bが相互に接触してエンジン20から変速機27に動力が伝達されるようになっている。なお、クラッチ装置26及びクラッチペダル29により、ドライバによる操作に応じて動力の遮断及び伝達を行うクラッチ手段が構成されている。
【0029】
変速機27は、ドライバによるシフト装置31の手動操作により変速比が切り替えられるマニュアルトランスミッションであり、複数段の前進ギアと、後退ギアと、ニュートラルギアとを備えている。変速機27では、都度のシフト位置に応じた変速比により、トランスミッション入力軸28の回転がトランスミッション出力軸32の回転に変換される。
【0030】
トランスミッション出力軸32には、ディファレンシャルギア33やドライブシャフト34等を介して車輪(駆動輪)35が接続されている。また、車輪35には、図示しない油圧回路等により駆動され、各車輪35に対して制動力を付与するブレーキアクチュエータ36が設けられている。
【0031】
その他、本システムには、エンジン20の所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角センサ37や、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサ38、アクセルペダル(図示略)の踏込み操作量を検出するアクセルセンサ39、クラッチペダル29の踏込み操作量(クラッチストローク)を検出するクラッチセンサ41、ブレーキペダル(図示略)の踏込み操作量を検出するブレーキセンサ42、シフト装置31のシフト位置を検出するシフト位置センサ43などの各種センサが設けられている。
【0032】
ECU50は、周知のマイクロコンピュータ等を備えてなる電子制御装置であり、本システムに設けられている各種センサの検出結果等を入力し、それに基づいて吸入空気量制御や燃料噴射量制御、アイドルストップ制御などの各種エンジン制御や、スタータ10の駆動制御等を実施する。
【0033】
上記のシステム構成において実施されるアイドルストップ制御について詳述する。アイドルストップ制御は、エンジン20のアイドル運転時に所定の停止条件が成立すると、燃料噴射及び点火を停止してエンジン20を自動停止させるとともに、その後、所定の再始動条件が成立するとエンジン20を再始動させるものである。エンジン停止条件としては、例えば、アクセル操作量がゼロになったこと(アイドル状態になったこと)、ブレーキペダルの踏込み操作が行われたこと、車速が所定値以下まで低下したこと等の少なくともいずれかが含まれる。
【0034】
また、エンジン再始動条件としては、クラッチペダル29の踏込み解除操作(クラッチリリース操作)の開始が含まれ、エンジン停止状態において、ドライバがクラッチペダル29を完全に踏み込んだ状態からその踏込みを解除し始めるとエンジン再始動条件が成立する。その他、エンジン再始動条件として、例えばアクセルの踏込み操作が行われたこと、ブレーキ操作量がゼロになったこと等が含まれていてもよい。
【0035】
スタータ10の駆動制御についてECU50は、SL1駆動リレー24のオン/オフ信号を出力する出力ポートP1と、SL2駆動リレー25のオン/オフ信号を出力する出力ポートP2とを備えている。この出力ポートP1,P2からの制御信号により、スタータ10の通電を自動的に(図示しないスタータスイッチの切り替え状態にかかわらず)行うことが可能になっている。また、これらの制御信号により、モータ11及びコイル18の通電状態をそれぞれ個別に切り替え可能になっている。
【0036】
以下に、前提となるスタータ10の駆動制御について詳述する。
【0037】
まず、IGスイッチ23のオフからオンへの切り替えに伴いエンジン20を再始動させる場合について説明する。この場合、ECU50は、まずSL1駆動リレー24にオン信号を出力する。これにより、コイル18の通電が開始され、ピニオン14がリングギヤ22に向かう方向へ押し出される。また、ピニオン14の押出しにより、ピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされる。その後、ECU50は、SL2駆動リレー25にオン信号を出力する。これにより、モータ11の通電が開始され、そのモータ11の回転に伴いピニオン14が回転される。そして、そのピニオン14の回転力によりリングギヤ22が回転され、エンジン20の出力軸21に初期回転が付与される。
【0038】
自動停止条件の成立に伴いエンジン20の燃焼を停止した後にエンジン20を再始動させる場合では、再始動条件の成立タイミングでのエンジン回転速度に応じてスタータ10の駆動制御を異なる態様としている。すなわち、再始動条件の成立時のエンジン回転速度(始動要求時回転速度)がゼロ近傍の所定の低回転領域内(例えば200rpm未満)の場合には、再始動条件の成立に伴い、まずピニオン14の押出しによりピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせ、その後、モータ11によりピニオン14を回転させるピニオン後回し制御によりエンジン20に初期回転を付与する。
【0039】
これに対し、始動要求時回転速度が上記所定の低回転領域よりも高回転側にある場合には、再始動条件の成立に伴い、まずモータ11によりピニオン14を回転させ、その後、ピニオン14の押出しによりピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせるピニオン先回し制御によりエンジン20に初期回転を付与する。すなわち、このピニオン先回し制御では、再始動条件の成立に伴いエンジン20を再始動させる場合に、モータ11によりピニオン14の回転速度(ピニオン回転速度)をリングギヤ22の回転速度(リングギヤ回転速度)に同期させ、その同期状態でピニオン14を押出してピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせる。
【0040】
ここで、本実施形態では、リングギヤ回転速度NErがピニオン回転速度NEpよりも高く(NEr>NEp)、かつリングギヤ回転速度NErとピニオン回転速度NEpとの回転速度差が所定値α(例えば200rpm)以下のとき(NEr−NEp<α)を、ピニオン回転速度NEpがリングギヤ回転速度NErに同期された状態であるものとしている。リングギヤ回転速度NErがピニオン回転速度NEpよりも低い状態(NEr<NEp)で噛み合わせを行った場合、リングギヤ回転速度NErがピニオン14の回転力によって急速に上昇し、これによりショック発生のおそれがあるからである。
【0041】
なお、本システムにはピニオン14と一体になってワンウエイクラッチ15が設けられているため、リングギヤ回転速度NErがピニオン回転速度NEpよりも高い状態でピニオン14とリングギヤ22とが噛み合わされた場合には、ワンウエイクラッチ15によってピニオン14は空転される。したがって、NEr>NEpでピニオン14とリングギヤ22とを噛み合わせたとしても、ピニオン14の回転はピニオン軸13に伝達されず、これにより噛み合わせ時におけるショック発生が抑制される。
【0042】
本明細書では、便宜上、リングギヤ22の外周縁に設けられた歯の速度とピニオン14の外周縁に設けられた歯の速度とが所定の関係にある状態を、リングギヤ22の回転速度とピニオン14の回転速度とが同期した状態と表現している。したがって、例えば、リングギヤ22の回転速度とピニオン14の回転速度とが等しいと表現した場合は、リングギヤ22の外周縁に設けられた歯の速度とピニオン14の外周縁に設けられた歯の速度とが等しい場合であり、ピニオン14の実際の回転速度はリングギヤ22の直径とピニオン14の直径との比に応じた回転速度となっている。例えば、上記所定の関係を両者の歯の速度が等しい状態とした場合、リングギヤ22の直径がピニオン14の直径の10倍であれば、リングギヤ22の回転速度とピニオン14の回転速度とが同期した状態において、ピニオン14の実際の回転速度はリングギヤ22の実際の回転速度の10倍の回転速度になる。
【0043】
また、クランキング終了時におけるスタータ10の駆動制御については、例えばエンジン20の初回の燃焼(初爆)によりエンジン回転速度が始動回転速度NEf(例えば400〜500rpm)に達した場合に、SL1駆動リレー24及びSL2駆動リレー25にオフ信号を出力する。これにより、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが解除されるとともに、モータ11の回転駆動が停止される。
【0044】
ところで、エンジン自動停止条件の成立後であってエンジン20の回転停止前の期間(以下、停止前期間とも言う)に再始動条件が成立し、それに伴いピニオン先回し制御を実施する場合、その停止前期間におけるエンジン回転速度の低下態様によっては、その回転速度の落ち込みが急速であり、この場合には、ピニオン回転速度NEpをリングギヤ回転速度NErに同期させた状態で、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせを実施するのが難しいことがあると考えられる。また、この場合において、ピニオン先回し制御によりピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせを実施すると、ピニオン回転速度NEpとリングギヤ回転速度NErとが同期していないにも関わらず、その状態でピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされてしまうおそれがある。
【0045】
具体的には、例えば、エンジン自動停止後であってスタータ10のピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされる前に、ドライバによりブレーキペダルが急速に踏み込まれた場合、その踏込み操作によって車輪35がロックすることがある。かかる場合、車輪ロックによってエンジン回転速度がゼロに向かって急速に落ち込むことが考えられる。あるいは、クラッチリリース操作を検知したことに伴いエンジン20を再始動させる場合、クラッチリリース操作の開始後(再始動条件の成立後)において、クラッチ繋ぎ操作が急速に行われた場合には、ピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされる前にクラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態に切り替わることが考えられる。かかる場合、クラッチの急係合によってエンジン回転速度がゼロに向かって急速に低下する。このようなエンジン回転速度が急速に低下する状況では、ピニオン先回し制御を実施した場合に、ピニオン回転速度をリングギヤ回転速度に同期させた状態でピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせることが難しく、同期状態で噛み合わせが実施されない結果、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが速やかに実施されなかったり、あるいは噛み合い音が過剰に大きくなったりすることが考えられる。
【0046】
そこで、本実施形態では、自動停止条件の成立後であってエンジン20の回転が停止する前の停止前期間にエンジン再始動条件が成立した場合、その停止前期間におけるエンジン回転速度の低下態様、具体的には、エンジン回転速度の単位時間あたりの減少量(低下率)に基づいて、ピニオン先回し制御を実施するか、ピニオン後回し制御を実施するかを選択する。
【0047】
図2は、エンジン再始動時のスタータ駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、ECU50により所定周期毎に実行される。
【0048】
図2において、まずステップS101では、エンジン20の自動停止後にエンジン再始動条件が成立したタイミングか否かを判定する。エンジン再始動条件の成立タイミングであればステップS102へ進み、その成立タイミングでのエンジン回転速度(始動要求時回転速度)が第1判定値NE1以下であるか否かを判定する。第1判定値NE1は、スタータ10を用いることなく混合気の燃焼によりエンジン回転速度を上昇に転じさせることができる(自立復帰することができる)回転速度の下限値として設定してあり、本実施形態では、例えば500〜600rpmに設定してある。
【0049】
始動要求時回転速度が第1判定値NE1よりも大きい場合には、ステップS103へ進み、スタータ10を作動させずに、エンジン20の点火制御及び燃料噴射制御によりエンジン20を再始動させる。一方、始動要求時回転速度が第1判定値NE1以下の場合には、ステップS104へ進み、始動要求時回転速度が第2判定値NE2(例えば、200rpm)以上であるか否かを判定する。始動要求時回転速度が第2判定値NE2未満の場合には、ステップS111へ進み、ピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせた後、モータ11によりピニオン14を回転させるピニオン後回し制御を実施する。
【0050】
一方、始動要求時回転速度が第2判定値NE2以上の場合には、ステップS105へ進み、回転速度フラグF1に値1をセットする。この回転速度フラグF1は、始動要求時回転速度が第1判定値NE1以下であってかつ第2判定値NE2以上であることを示すものであり、この条件が成立する場合に値1にセットされる。
【0051】
ステップS106では、回転速度フラグF1が値1か否かを判定し、値1でなければ(値0であれば)そのまま本ルーチンを終了する。一方、回転速度フラグF1が値1の場合には、ステップS107へ進み、ピニオン14の押出し前であるか否かを判定し、ピニオン押出し前であればステップS108以降へ進む。
【0052】
ステップS108では、エンジン回転速度の低下率γを算出し、その算出した低下率γが判定値よりも大きいか否かを判定する。低下率γについて本実施形態では、例えば、クランク角センサ37の出力値を基に算出されるエンジン回転速度の単位時間当たりの低下量(傾き)として算出される。
【0053】
また、ステップS109では、低下率γが増大側に変化したか否か、具体的には、エンジン再始動条件の成立後であってエンジン20の回転停止前において、エンジン回転速度の単位時間当たりの低下量が大きくなる側に変化したか否かを判定する。なお、このとき、増大側に変化後の低下率γについては、ステップS108における判定値よりも小さくてもよいし大きくてもよいし同じであってもよい。
【0054】
ステップS108及びS109で否定判定された場合には、ステップS110へ進み、モータ11によりピニオン14を回転させた後、ピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせるピニオン先回し制御を実施する。一方、ステップS108又はS109で肯定判定された場合には、ステップS111へ進み、ピニオン後回し制御を実施する。なお、このとき、始動要求時回転速度に基づいてピニオン先回し制御を既に実施中の場合には、ピニオン先回し制御を中止し、以下の図4に示すピニオン後回し制御に移行する。そして、本ルーチンを終了する。
【0055】
次に、ピニオン先回し制御について、図3のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図2のステップS110においてピニオン先回し制御を実施するよう指令されたときに、ECU50により所定周期毎に実行される。
【0056】
図3において、まずステップS201では、SL2駆動リレー25にオン信号を出力し、第2ソレノイドSL2を通電オフからオンの状態に切り替える。これにより、モータ11が回転され、ピニオン14が回転される。続くステップS202では、ピニオン回転速度NEpがリングギヤ回転速度NErに同期されたか否かを判定する。本実施形態では、ピニオン回転速度NEpについてはコイル18の通電電流に基づいて算出し、リングギヤ回転速度NErについてはクランク角センサ37の出力値に基づいて算出する。そして、NEr>NEpであって、かつNEr−NEp<αの場合にピニオン回転速度NEpがリングギヤ回転速度NErに同期されたものと判定する。ピニオン回転速度NEpがリングギヤ回転速度NErに同期された場合にはステップS203へ進む。
【0057】
ステップS203では、SL1駆動リレー24にオン信号を出力し、第1ソレノイドSL1を通電オフからオンの状態に切り替える。この通電切り替えに伴いプランジャ19が変位し、そのプランジャ19の変位に伴いピニオン軸13が、モータ11により回転力が付与された状態のままリングギヤ22に向かう方向に変位する。これにより、ピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされ、エンジン20のクランキングが開始される。
【0058】
ステップS204では、エンジン回転速度が始動回転速度NEf(例えば、400〜500rpm)以上であるか否かを判定する。この始動回転速度NEfは、クランキング回転速度よりも所定速度だけ高い値に設定してある。そして、エンジン回転速度が始動回転速度NEf以上であることを条件にステップS205へ進み、SL1駆動リレー24にオフ信号を出力するとともに、SL2駆動リレー25にオフ信号を出力する。これにより、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが解除されるとともに、モータ11の回転が停止される。
【0059】
次に、ピニオン後回し制御について、図4のフローチャートを用いて説明する。この処理は、図2のステップS111においてピニオン後回し制御を実施するよう指令されたときに、ECU50により所定周期毎に実行される。
【0060】
図4において、まずステップS301では、回転速度フラグF1に値1がセットされているか否かを判定し、値1がセットされている場合には、ステップS302において、SL2駆動リレー25にオン信号を出力中か否かを判定する。このとき、オン信号の出力中であれば、ピニオン先回し制御を実行する旨の指令に基づきモータ11の回転を開始した後、ピニオン先回し制御からピニオン後回し制御に切り替える場合であり、この場合には、ステップS303において、SL2駆動リレー25にオフ信号を出力する。これにより、モータ11の回転が停止される。
【0061】
ステップS304では、ピニオン14の押出しタイミングか否かを判定する。本実施形態では、エンジン20の回転停止直前か又は回転停止後をピニオン14の押出しタイミングとしている。具体的には、クランク角センサ37の出力値に基づき算出されるエンジン回転速度が所定の低回転速度(例えば100rpm)以下になったタイミングとしている。そして、ピニオン14の押出しタイミングであれば、ステップS305へ進み、SL1駆動リレー24にオン信号を出力する。これにより、第1ソレノイドSL1が通電オンの状態に切り替わり、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが実施される。
【0062】
ステップS306では、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが完了したか否かを判定し、噛み合わせ完了と判定された場合には、ステップS307において、SL2駆動リレー25にオン信号を出力し、第2ソレノイドSL2を通電オフからオンの状態に切り替える。これにより、モータ11の回転に伴いピニオン14が回転され、エンジン20のクランキングが開始される。
【0063】
なお、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ判定について、本実施形態では、例えば、ピニオン14の押出しタイミングからの経過時間に基づいて行う。あるいは、両者が噛み合ったことを検出可能なセンサを設けておき、そのセンサの出力値に基づいて判定してもよい。
【0064】
その後、ステップS308及びS309では、図3のステップS204及びS205と同様の処理、すなわち、エンジン回転速度が始動回転速度NEf以上になった場合にピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ解除及びモータ11の回転停止を行う。
【0065】
次に、図5〜図7のタイムチャートを用いて、本実施形態におけるスタータ駆動制御の具体的態様について説明する。図5〜図7では、エンジン自動停止後において、エンジン回転速度NEがゼロになる前に、詳しくはエンジン回転速度NEが第1判定値NE1未満であって第2判定値NE2以上のときにエンジン再始動条件が成立した場合を想定している。なお、図中、実線はリングギヤ回転速度NEr(エンジン回転速度)の推移を示し、一点鎖線はピニオン回転速度NEpの推移を示す。また、図中では、リングギヤ22の外周縁に設けられた歯の速度、ピニオン14の外周縁に設けられた歯の速度をそれぞれリングギヤ回転速度NEr、ピニオン回転速度NEpとして示している。
【0066】
図5は、ピニオン先回し制御が実施される場合を示すタイムチャートである。図5において、エンジン自動停止条件が成立した後のタイミングt11でエンジン再始動条件が成立した場合、まず第2ソレノイドSL2が通電オンの状態に切り替えられ、モータ11が回転される。これによりピニオン回転速度NEpが上昇し、エンジン回転速度(リングギヤ回転速度NEr)との差が次第に小さくなっていく。そして、ピニオン回転速度NEpとリングギヤ回転速度NErとの回転速度差がαとなるまでピニオン回転速度NEpが上昇すると、そのタイミングt12で第1ソレノイドSL1が通電オンの状態に切り替えられる。これにより、ピニオン回転速度NEpとリングギヤ回転速度NErとが同期した状態でピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされ、エンジン20のクランキングが開始される。その後、エンジン20の初爆が行われ、エンジン回転速度NEが始動回転速度NEfに達すると、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせが解除されるとともに、モータ11の回転が停止される。
【0067】
次に、エンジン回転速度の低下率γに基づいて、ピニオン先回し制御とピニオン後回し制御とのいずれかを選択して実施する場合について図6及び図7を用いて説明する。
【0068】
図6では、例えば、エンジン自動停止後であってエンジン再始動条件の成立前に車輪ロックが発生した場合を想定している。図6において、再始動条件の成立タイミングt21で、エンジン回転速度の低下率γが判定値よりも大きい場合、タイミングt21でのエンジン回転速度NE(始動要求時回転速度)がNE2≦NE<NE1であっても、ピニオン後回し制御によりエンジン20の再始動を行う。すなわち、エンジン再始動条件の成立後、そのままエンジン20の惰性回転によりエンジン回転速度が低下し、リングギヤ回転速度NErがゼロ近傍になると、そのタイミングt22で第1ソレノイドSL1が通電オンされる。これにより、ピニオン14がリングギヤ22に向かって押し出され、両者が噛み合わされる。また、噛み合わせが完了したタイミングt23で第2ソレノイドSL2が通電オンされ、モータ11が回転される。その結果、エンジン20のクランキングが行われ、エンジン20が再始動される。
【0069】
図7では、例えばドライバのクラッチリリース操作によりエンジン再始動条件が成立し、そのエンジン再始動条件の成立後にドライバによるクラッチ繋ぎ操作が急速に行われた場合を想定している。図7において、再始動条件の成立タイミングt31では、エンジン回転速度の低下率γが判定値よりも小さく、この場合には、第2ソレノイドSL2の通電オンによりモータ11の回転が開始される。その後、タイミングt32で、クラッチ急係合によりエンジン回転速度の低下率γが大きくなる側に変化した場合、タイミングt32で第2ソレノイドSL2が通電オフされ、モータ11の回転が停止される。
【0070】
そして、エンジン20の惰性回転によりエンジン回転速度が低下し、リングギヤ回転速度NErがゼロ近傍になると、そのタイミングt33で第1ソレノイドSL1が通電オンされ、ピニオン14がリングギヤ22に噛み合わされる。また、噛み合わせが完了したと判定されたタイミングt34で第2ソレノイドSL2が通電オンされ、モータ11が回転される。これにより、エンジン20のクランキングが行われ、エンジン20が再始動される。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0072】
エンジン自動停止条件の成立後であってエンジン20の回転停止前においてエンジン再始動を行う場合、エンジン回転速度の低下態様に基づいて、具体的には、エンジン回転速度の低下率γに基づいて、ピニオン先回し制御とピニオン後回し制御とのいずれかを選択して実施する構成としたため、ピニオン回転速度をリングギヤ回転速度に同期させた状態で両者の噛み合わせをできるかそうでないかに応じて、スタータ10の駆動制御を実施することができる。これにより、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とが同期していない状態で両者の噛み合わせが実施される際の不都合を回避することができる。その結果、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせを適正に実施することができ、ひいてはスタータ10によるエンジン再始動を適正に実施することができる。
【0073】
エンジン自動停止後であってエンジン20の回転停止前において、エンジン回転速度の低下率γが判定値よりも大きい場合や、その低下率γが増大側に変化した場合に、ピニオン後回し制御を実施する構成としたため、エンジン回転速度の落ち込みが急速であり、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とを同期させた状態で両者の噛み合わせを実施できない可能性が高い状況下でピニオン先回し制御が実施されるのを回避することができる。特に、再始動条件成立後に低下率γが増大側に変化した場合には、再始動条件の成立タイミングと噛み合わせ実施のタイミングとで低下率γが異なることが考えられる。その点、本構成によれば、再始動条件成立後の状況変化に対応して、その都度最適なスタータ駆動制御を実施することができる。
【0074】
特に、ドライバによりクラッチリリース操作が開始され、この操作によってエンジン再始動条件が成立したものとしてエンジン再始動を行う本構成では、急速なクラッチ繋ぎ操作があった場合に、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ前においてエンジン回転速度が急速に落ち込みやすく、ピニオン回転速度とリングギヤ回転速度とを同期させた状態で両者の噛み合わせを実施できない可能性がより高いと考えられる。したがって、クラッチリリース操作に基づきエンジン再始動を行う構成に適用することにより、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせを適正に実施するといった効果をより好適に得ることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、エンジン20の自動停止条件が成立し、エンジン20の燃焼を停止してからエンジン20が回転停止するまでの停止前期間において、エンジン再始動条件の成立前に所定の禁止条件が成立した場合には、ピニオン先回し制御及びピニオン後回し制御のいずれも実施せず、エンジン回転が停止するのを待ってクランキングを実施する構成としている。この点において上記第1の実施形態と相違する。以下、本実施形態のスタータ駆動制御について、図8及び図9を用いて詳細に説明する。
【0076】
図8は、禁止条件判定処理の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、ECU50により所定周期毎に実行される。
【0077】
図8において、ステップS401では、エンジン自動停止条件が成立してからエンジン再始動条件が成立するまでの期間(自動停止期間)であるか否かを判定し、自動停止期間である場合、ステップS402へ進む。
【0078】
ステップS402では、所定の禁止条件が成立しているか否かを判定する。ここで、禁止条件とは、エンジン20の燃焼を停止してからエンジン20が回転停止するまでの停止前期間において先回し制御及び後回し制御によるエンジン再始動を禁止する条件として予め設定したものである。本実施形態では、エンジン回転速度の低下率γに基づいて禁止条件が定めてあり、具体的には、
・低下率γが判定値TH1よりも大きいこと
・低下率γが増大側に変化したこと
を含んでいる。
【0079】
これらの条件の成否について本実施形態では、エンジン回転速度の検出値から低下率γを算出し、その算出した低下率γに基づいて判定したり、あるいはダイアグデータに基づいて判定したりする。ダイアグデータによる判定について具体的には、例えば、オルタネータの異常(ロック異常)を示すダイアグデータがECU50に記憶されている場合が挙げられる。この場合、エンジン出力軸に加わる負荷が大きくなり、停止前期間におけるエンジン回転速度の低下率γが判定値TH1よりも大きくなると考えられるからである。
【0080】
なお、判定値TH1について本実施形態では、先回し制御及び後回し制御のいずれを実施するかを切り替えるための低下率γの判定値(下記図9のステップS509における判定値TH2)よりも大きく設定してある。
【0081】
その他、禁止条件として本実施形態では、クランク角センサ37の異常が検出された場合を含む。クランク角センサ37などの異常発生時において、先回し制御や後回し制御といった特別な態様でスタータ10を駆動するのを回避するためである。
【0082】
さて、ステップS402において、禁止条件が成立していない場合にはそのまま本処理を終了する。一方、禁止条件が成立している場合、ステップS403へ進み、禁止条件成立フラグF2に値1をセットし、本処理を終了する。
【0083】
次に、本実施形態のスタータ駆動制御の処理手順について図9のフローチャートを用いて説明する。この処理は、ECU50により所定周期毎に実行される。なお、図9の各処理のうち、上記図2と同様の処理については、図2のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0084】
図9において、ステップS501〜502では、ステップS101〜S102と同様の処理を実施し、ステップS502で、始動要求時回転速度が第1判定値NE1以下である場合、ステップS504へ進む。ステップS504では、禁止条件成立フラグF2に値1がセットされているか否かを判定し、F2=1でない場合、つまり禁止条件が成立していない場合、ステップS505以降へ進み、ステップS104〜S111と同様の処理としてステップS505〜S512を実施する。これにより、ピニオン先回し制御又は後回し制御によりクランキングが実施され、エンジン20が再始動される。
【0085】
一方、ステップS504において禁止条件が成立している場合、ステップS513へ進み、エンジン再始動に際し、エンジン回転が停止するのを待ってクランキングを実施する。具体的には、エンジン回転速度がゼロの状態が所定時間継続した後に、まずピニオン14の押出しによりピニオン14をリングギヤ22に噛み合わせ、その噛み合い後、モータ11によりピニオン14を回転させる。これにより、エンジン20に初期回転を付与する。
【0086】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0087】
エンジン20の燃焼を停止した後であってエンジン回転停止する前の停止前期間において、エンジン回転速度の低下率に基づき定めた所定の禁止条件が成立した場合、その停止前期間に再始動条件が成立した場合であっても、ピニオン先回し制御及び後回し制御によるエンジン再始動を実施せず、エンジン回転停止後にピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ及びモータ駆動を実施する構成としたため、禁止条件が成立していない場合にはエンジン再始動の迅速性を優先させることができ、禁止条件が成立している場合には確実性を優先させることができる。よって、上記構成によれば、エンジン再始動に際し、迅速性と確実性との両立を図ることができる。
【0088】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、エンジン20の燃焼を停止してからエンジン20が回転停止するまでの停止前期間においてエンジン再始動条件が成立した場合、その停止前期間におけるエンジン回転速度の変化態様に応じて、ピニオン後回し制御を実施するか、それとも、エンジン20の回転停止後に噛み合わせ処理及びピニオン14の回転を実施する回転停止後制御を実施するかを選択する。
【0089】
より具体的には、停止前期間においてエンジン再始動条件が成立した場合、基本的にはピニオン後回し制御によりエンジン再始動を行う。但し、エンジン再始動条件が成立する前に所定の禁止条件が成立した場合には、ピニオン後回し制御を実施せず、エンジン回転が停止するのを待ってクランキングを実施する構成としている。以下、本実施形態のスタータ駆動制御について、図10を用いて詳細に説明する。なお、図10の処理は、ECU50により所定周期毎に実行される。また、図10の各処理のうち、上記図2と同様の処理については、図2のステップ番号を付してその説明を省略する。
【0090】
図10において、ステップS601〜602では、ステップS101〜S102と同様の処理を実施し、ステップS602で、始動要求時回転速度が第1判定値NE1以下である場合、ステップS605へ進む。ステップS605では、始動要求時回転速度が第2判定値NE2以上か否かを判定し、ステップS605がNOの場合、ステップS607へ進み、禁止条件成立フラグF2に値1がセットされているか否かを判定する。なお、ECU50は、上記図8の禁止条件判定処理を実施しており、禁止条件成立フラグF2として、上記図8のフローチャートにより設定したものを読み込む。
【0091】
禁止条件成立フラグF2が値1でない場合、ステップS608へ進み、ピニオン後回し制御を実施する。一方、禁止条件成立フラグF2が値1の場合、ステップS609へ進み、エンジン回転が停止するのを待ってスタータ10のよるエンジン20のクランキングを実施する停止後駆動制御を実施する。
【0092】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0093】
自動停止条件の成立後であってエンジン回転停止する前の停止前期間において再始動条件が成立した場合にピニオン後回し制御によりエンジン再始動を実施する構成において、当該停止前期間に、エンジン回転速度の低下率に基づき定めた所定の禁止条件が成立した場合、その停止前期間に再始動条件が成立した場合であっても、ピニオン後回し制御によるエンジン再始動を実施せず、エンジン回転停止後にピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ及びモータ駆動を実施する構成とした。これにより、禁止条件が成立していない場合にはエンジン再始動の迅速性を優先させることができ、禁止条件が成立している場合には確実性を優先させることができる。よって、上記構成によれば、エンジン再始動に際し、迅速性と確実性との両立を図ることができる。
【0094】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0095】
・始動要求時回転速度に基づいてピニオン後回し制御を実施する場合と、エンジン回転速度の低下率γに基づいてピニオン後回し制御を実施する場合とで、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせの開始タイミング又は終了タイミングからモータ11の回転開始タイミングまでの遅れ時間を変更する構成とする。エンジン20の回転速度がゼロになるときには、振り子特性によりエンジン出力軸の回転方向が反転する。また、低下率γに基づいてピニオン後回し制御を実施する場合、エンジン回転速度の急速な落ち込みのため、エンジン回転速度がゼロになるときのエンジン出力軸の反転量が、始動要求時回転速度に基づいてピニオン後回し制御を実施する場合に比べて大きくなることが考えられる。そのため、低下率γに基づきピニオン後回し制御を実施する場合には、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせがエンジン出力軸の反転中に実施される可能性が高いと考えられる。また、この反転中にモータ11を回転させた場合には、エンジン出力軸を反転方向から正転方向に回転させる必要があるため、スタータ10の消費電力が大きくなったり、噛み合い音が大きくなったりすることが考えられる。したがって、上記構成とすることにより、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ後、モータ11を回転させるまでの時間を十分に確保することができ、その結果、エンジン出力軸の反転中にモータ11が回転されるのを抑制することができる。
【0096】
・エンジン回転速度の低下率γに基づいてピニオン後回し制御を実施する場合、その低下率γに基づいて、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ開始タイミング(SL1駆動リレー24の出力タイミング)又は噛み合わせ終了タイミングからモータ11の回転開始タイミングまでの待ち時間を変更する。エンジン20の回転速度がゼロになるときのエンジン出力軸の反転量は、低下率γが大きいほど大きくなる。したがって、低下率γが大きいほど上記待ち時間を大きくすることにより、スタータ10の駆動時にスタータ10の消費電力の抑制や、噛み合い音の抑制を好適に行うことができる。
【0097】
・エンジン回転速度の低下率γに基づきピニオン後回し制御を実施する場合、その低下率γに応じて、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせタイミング、具体的には、SL1駆動リレー24のオン信号の出力タイミングを変更する。上記噛み合わせを速やかに行うには、エンジン出力軸の正転中に実施するのが望ましい。したがって、低下率γが大きいほど噛み合わせタイミングを遅くすることにより、エンジン回転速度の正転と反転との変動が落ち着いた後に上記噛み合わせが実施されるようにする。あるいは、低下率γが大きいほど噛み合わせタイミングを早くすることにより、エンジン回転速度が正転から反転に切り替わる前に上記噛み合わせが実施されるようにする。
【0098】
・上記実施形態では、停止前期間におけるエンジン回転速度の低下態様としてエンジン回転速度の低下率γを算出し、その算出した低下率γに基づいてピニオン先回し制御を実施するかピニオン後回し制御を実施するかを選択する構成としたが、これを変更し、エンジン回転速度の低下態様として、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態に移行する際のドライバによるクラッチ操作状態を検出し、その検出したクラッチ操作状態に基づいて、ピニオン先回し制御を実施するかピニオン後回し制御を実施するかを選択する構成とする。
【0099】
具体的には、始動要求時回転速度が第1判定値NE1未満であって第2判定値NE2以上の場合、エンジン再始動条件の成立後であって、ピニオン14の押出しが実施されるまでの期間に、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態になったか否かをクラッチセンサ41により検出されるクラッチストロークに基づいて判定する。そして、その判定において肯定された場合、ピニオン後回し制御を選択して実施する。すなわち、上記期間に、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態になった場合には、モータ11の回転を停止し、エンジン回転速度がゼロ近傍になったときにピニオン14の押出しを実施する。また、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせの完了後にモータ11の回転を開始する。これにより、スタータ10によるエンジン20のクランキングが開始される。このとき、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態になるまでの時間が判定値以下の場合にピニオン後回し制御を選択して実施する構成としてもよい。
【0100】
あるいは、上記期間において、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態になった場合にピニオン後回し制御を選択して実施する構成に代えて、クラッチ装置26が動力遮断状態から動力伝達状態になるまでのクラッチストロークの単位時間当たりの変化量(変化率)をクラッチセンサ41により検出し、その検出された変化率が判定値よりも大きい場合にピニオン後回し制御を選択して実施する構成としてもよい。
【0101】
・上記実施形態では、コイル18の通電/非通電を制御するSL1駆動リレー24と、モータ11の通電/非通電を制御するSL2駆動リレー25とを有するスタータ10を本発明に適用する場合について説明したが、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ解除とモータ11の回転停止とを独立して制御可能なスタータであればよく、例えば従来のスタータにおいてモータ通電制御用のリレーを設けたものを本発明に適用してもよい。すなわち、この構成では、図1のスタータ10における第2ソレノイドSL2に代えて、プランジャ19において、レバー17とは反対側の端部にモータ通電用の接点が設けられている。また、本構成では、モータ11とバッテリ12との間において、ECU50からの制御信号に基づいてオン/オフの切り替え可能なモータ通電制御用のリレーが設けられている。この構成においても、SL1駆動リレー24とモータ通電制御用のリレーとを個別に制御することにより、ピニオン14とリングギヤ22との噛み合わせ動作とモータ11の回転動作とを独立して制御可能である。
【0102】
・上記実施形態では、手動変速機27を備える自動車(マニュアル車)に本発明を適用する場合について説明したが、自動変速機を備える自動車(AT車)に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0103】
10…スタータ、11…モータ、14…ピニオン、15…ワンウエイクラッチ、18…コイル、20…エンジン、21…クランク軸、22…リングギヤ、24…SL1駆動リレー、25…SL2駆動リレー、26…クラッチ装置(クラッチ手段)、27…変速機、29…クラッチペダル(クラッチ手段)、50…ECU、SL1…第1ソレノイド、SL2…第2ソレノイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止し、その後所定の再始動条件が成立した場合にスタータによるクランキングを実施してエンジンを再始動する自動停止始動機能を有し、エンジン再始動に際して、エンジンの出力軸に連結されたリングギヤに前記スタータのピニオンが噛み合った状態での該ピニオンの回転により前記クランキングを実施し、クランキング終了に際し前記噛み合わせを解除するエンジン停止始動制御装置において、
前記再始動条件の成立時に、前記ピニオンを回転させた後、前記噛み合わせを行う先回し制御を実施する先回し制御手段と、
前記再始動条件の成立時に、前記噛み合わせを行った後、前記ピニオンを回転させる後回し制御を実施する後回し制御手段と、
前記自動停止条件の成立後であってエンジンの回転停止前である停止前期間に、エンジン回転速度の低下態様を検出する低下態様検出手段と、
前記停止前期間に前記再始動条件が成立した場合、前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて、当該停止前期間において前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれかを選択して実施する再始動制御手段と、
を備えることを特徴とするエンジン停止始動制御装置。
【請求項2】
前記低下態様検出手段は、前記エンジン回転速度の低下態様として前記エンジン回転速度の低下率を検出し、
前記再始動制御手段は、前記低下態様検出手段により検出した前記低下率が判定値よりも大きい場合に前記後回し制御を実施する請求項1に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項3】
前記低下態様検出手段は、前記低下態様として前記エンジン回転速度の低下率を検出し、
前記停止前期間であって前記再始動条件の成立後において、前記低下態様検出手段により検出した前記低下率が増大側に変化したことを判定する低下率増大判定手段を備え、
前記再始動制御手段は、前記低下率増大判定手段により前記低下率が増大側に変化したと判定された場合に前記後回し制御を実施する請求項1又は2に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項4】
ドライバの操作に応じてエンジンと変速機との間の動力の遮断及び伝達を行うクラッチ手段を備える車両に適用され、
前記低下態様検出手段は、前記低下態様として、前記クラッチ手段が動力遮断状態から動力伝達状態に移行する際のクラッチ操作状態を検出し、
前記再始動制御手段は、前記クラッチ操作状態に基づいて、前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれかを選択して実施する請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項5】
前記噛み合わせの実施から前記ピニオンの回転開始までの回転待機時間を前記低下態様に基づいて設定する時間設定手段を備え、
前記低下態様に基づき前記後回し制御を実施する場合、前記時間設定手段により設定した前記回転待機時間に基づいて前記ピニオンの回転開始タイミングを変更する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項6】
前記噛み合わせの実行タイミングを前記低下態様に基づいて設定するタイミング設定手段を備え、
前記低下態様に基づき前記後回し制御を実施する場合、前記タイミング設定手段により設定した前記タイミングに基づいて前記噛み合わせを実施する請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項7】
前記再始動条件が成立したときのエンジン回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記回転速度検出手段により検出したエンジン回転速度に基づいて、前記先回し制御と前記後回し制御とのいずれを実施するかを選択する選択手段と、を備え、
前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて前記後回し制御を実施する場合と、前記回転速度検出手段により検出したエンジン回転速度に基づいて前記後回し制御を実施する場合とで、前記噛み合わせの実施から前記ピニオンの回転開始までの回転待機時間を変更する請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項8】
前記停止前期間における前記先回し制御及び前記後回し制御によるエンジン再始動を禁止する条件として、エンジン回転速度の低下率に基づき定めた所定の禁止条件が成立したか否かを判定する条件判定手段を備え、
前記条件判定手段により前記所定の禁止条件が成立したと判定された場合、前記エンジンの回転停止後に前記噛み合わせ及び前記ピニオンの回転を実施する請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンジン停止始動制御装置。
【請求項9】
所定の自動停止条件が成立した場合にエンジンを自動停止し、その後所定の再始動条件が成立した場合にスタータによるクランキングを実施してエンジンを再始動する自動停止始動機能を有し、エンジン再始動に際して、エンジンの出力軸に連結されたリングギヤに前記スタータのピニオンが噛み合った状態での該ピニオンの回転により前記クランキングを実施し、クランキング終了に際し前記噛み合わせを解除するエンジン停止始動制御装置において、
前記再始動条件の成立時において、エンジンの回転停止前に前記噛み合わせを行った後、前記ピニオンを回転させる停止前後回し制御を実施する後回し制御手段と、
前記再始動条件の成立時において、エンジンの回転停止後に前記噛み合わせ及び前記ピニオンの回転を実施する停止後制御を実施する停止後制御手段と、
前記自動停止条件の成立後であってエンジンの回転停止前である停止前期間に、エンジン回転速度の低下態様を検出する低下態様検出手段と、
前記停止前期間に前記再始動条件が成立した場合、前記低下態様検出手段により検出した前記低下態様に基づいて、前記停止前後回し制御と前記停止後制御とのいずれかを選択して実施する再始動制御手段と、
を備えることを特徴とするエンジン停止始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190799(P2011−190799A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284650(P2010−284650)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】