説明

エンジン排気ガス中の粒状物の質量、粒径、個数のリアルタイム測定装置および方法

【構成】
エンジン排気ガスにおける粒状物の固体粒子の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する装置である。この測定装置は、粒状物の少なくとも約90%の揮発性成分を除去し、粒状物の固体成分の少なくとも約95%を通過させる触媒ストリッパーを有し、かつ触媒ストリッパーを通過した後で、粒径測定兼個数カウンター装置に送る前に、試験媒体を冷却する微小希釈トンネルを有する。本発明の測定方法では、サンプル試験流れの粒状物の揮発性成分を除去し、揮発性成分除去後のサンプルと揮発性成分が除去されていない第2サンプルと比較する。これら2つのサンプル間の差が試験排気ガスの揮発性成分の液相を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月8日を出願日とする米国仮出願第60/427,114号の優先権を主張する出願である。
【0002】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物の固体粒子の量を測定する装置および方法、特に燃焼源から排出される固体粒状物および揮発性粒状物からなる粒子の質量、粒径、個数をリアルタイムで測定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃焼源、特にディーゼルエンジンから排出される粒状物(PM)は、代表的には、揮発性成分および固体成分からなる。時には“スス”と呼ばれることがある固体成分は、主成分として炭素からなり、少量の無機灰分を含む。揮発性成分は、未燃焼燃料、部分燃焼燃料、未燃焼潤滑油、部分燃焼潤滑油およびイオウ化合物を含有する。乾燥スス粒子はエンジンの燃焼室内に形成し、一方揮発性成分の多くは、排気ガスの冷却時に、気相から粒子相に入る。揮発性成分の粒子相は、前から存在する固体粒子に付着する、析出液滴および析出液体からなる。よって、粒状物は揮発性成分及び固体成分の複合的測定となる。これらは形成メカニズムおよび制御メカニズムが異なるため、両者を区別できるようにすることが重要である。
【0004】
全粒状物(固体成分および析出液体成分)を測定するためにいくつかの装置および方法が提案されている。2000年11月21日にBretonに付与され、“Real−Time On−Road Vehicle Exhaust Gas Modular Flow Meter And Emissions Reporting Systems”を発明の名称とするUSP6,148,656には、車両からの排気ガスを走行時にリアルタイムで測定する装置が開示されている。この装置の場合、排出された全粒状物を化学的に分析し、測定する。単位は、グラム/マイルである。ところが、この装置は、粒状物の固体成分および揮発性成分に別々に寄与する固体粒子を同定できず、また固体粒子の粒径分布および個数についても同定できない。
【0005】
如何に排気ススを特性化し、これを減少することに焦点をあてているエンジン開発者や排気ガス研究者にとって、粒状物の固体成分および揮発性成分をリアルタイムで測定、同定することには大きな価値がある。さらに、全粒状物(ススおよび揮発性成分)の測定と平行して、揮発性成分を取り除いた状態で固体粒子を測定すると、固体PMと全PMとの間に差を取ることによって揮発性PM成分をリアルタイムで決定できると考えられている。現在、固体粒子質量、数及び排出量のリアルタイムでの測定を容易にする有効な方法はない。従来利用されている方法の大半は化学的検査に頼っているため、上記Breton提案の精巧な装置にもかかわらず、検出が遅く、初期測定時から数時間から数日間必要とする。粒子はいうまでもなく、従来の方法の結果から、粒子個数および粒径を知ることはできない。
【特許文献1】USP6,148,656
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粒状物の固体成分および揮発性成分に寄与する、排気ガス中の粒状物源を個別に同定する問題を解決することを目的としている。粒状物から揮発性成分を除去し、固体成分から粒子のみを残して粒子の質量、粒径分布および粒子個数を測定できる装置および方法も望ましい。また、固体粒子の測定する前に急冷を行って、高温の排気ガス温度からの冷却時に、硫酸粒子の生成を抑制できる装置および方法も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物である粒子の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する方法において、所定の運転モード時所定の時間にわたって内燃機関から排気ガスを排出する測定方法に関する。上記所定の時間にわたって排出された排気ガスの第1サンプルを連続的に回収し、触媒ストリッパー装置に第1サンプルを送って第1ガスサンプルから揮発性成分の少なくとも約90%を除去する。次に、第1サンプルを約52℃未満の温度に冷却し、所定の時間にわたって排気ガスの第1サンプルに含まれる粒状物の粒径および個数を測定する。このさい固体粒子の測定された粒径および個数が、所定の時間にわたって内燃機関から排出された固体成分粒状物の分布を表すものとする。所定の時間にわたって固体粒子を回収し、回収された固体粒子の質量を測定する。このさい、第1サンプルに含まれる固体粒子の測定質量が、所定の時間にわたって内燃機関から排出される粒状物の固体成分の全質量を表すものとする。
【0008】
本発明の別な態様では、上記の相当する時間にわたって排気ガスの第2サンプルを連続的に回収し、排気ガスの第2サンプルを、上記気相から実質的にすべての揮発性成分が液相に析出する十分な温度まで冷却する。上記の相当する時間にわたって生成した固体成分および揮発性成分の析出液相粒子を回収し、測定する。このさい測定された質量が、上記の相当する時間の間に内燃機関から排出された粒状物からなる固体成分および揮発性成分の液体粒子の全質量を表すものとする。
【0009】
本発明のさらに別な態様では、排気ガスの第1サンプルと第2サンプルとの間の質量差を計算し、この質量差が、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる揮発性成分粒状物を表すものとする。
【0010】
本発明のさらに別な態様は、内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物である粒子の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する装置において、内燃機関の排気装置と流体連絡する触媒ストリッパーを有する測定装置に関する。この触媒ストリッパーは排気ガスから少なくとも約90%の揮発性成分粒状物を除去するとともに、排気ガスの少なくとも約95%の固体成分粒状物を触媒ストリッパーに送る。この測定装置は、さらに、触媒ストリッパーと選択的に流体連絡し、排気ガスの温度よりも低い温度の空気と排気ガスを混合し、空気/温度が約52℃未満の排気ガスからなる混合体を形成する微小希釈トンネルを有する。さらに、この測定装置は、上記微小希釈トンネルと流体連絡する粒径測定器、および上記微小希釈トンネルと流体連絡する粒子個数カウンターを有する。さらに、この測定装置は、所定の時間にわたって、空気/排気ガス混合体に含まれる粒状物を連続回収する手段、および上記の所定時間にわたって回収された粒状物の質量を測定する手段を有する。
【0011】
本発明のさらに別な態様では、内燃機関の排気装置と触媒ストリッパーとの間に希釈トンネルを配設し、空気と内燃機関から排出される排気ガスとを混合するとともに、空気/排気ガスの混合体を触媒ストリッパーに送るように構成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付図面を参照して以下の詳細な説明を読めば、本発明の構成および作用効果をより完全に理解できるはずである。
【0013】
本発明の好適な実施態様を説明すると、図1に、エンジン、即ち内燃機関12から排出される排気ガス中の固体粒状物および揮発性粒状物の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する装置10を示す。測定装置10は、全量希釈トンネル18、または排気装置16と触媒ストリッパー装置14との間に延設した導管20のいずれかを介してエンジン12の排気装置16と流体連絡する触媒ストリッパー装置14で構成する。
【0014】
この好適な実施態様では、希釈トンネル18は従来の希釈装置であればよい。即ち、エンジンからの排気ガスを空気で希釈し、排気ガスの内容を分析し、測定するために有利な、空気/排気ガスの比較的低温の混合体を発生する希釈装置である。希釈トンネル18には、矢印24で示す新鮮な空気を吸引する端部にHEPAフィルター28を配設し、希釈トンネル18の反対側端部にブロワ兼熱交換器装置22を配設する。エンジン12の排気装置16が希釈トンネル18と流体連絡しているため、矢印26で示す排気ガスが希釈トンネル18に導入され、空気と混合し、矢印29で示される、排気ガス/空気の混合体を発生する。
【0015】
測定装置10の下流端部に配設した空気ポンプ66によって希釈排気ガス29の代表的なサンプルを希釈トンネル18からサンプリング管30内に吸引する。図1の概略図に示すように、このサンプリング管30は希釈トンネル18と触媒ストリッパー装置14との間に延設する。希釈トンネルと、導管20とサンプリング管との接続部との間にある位置においてサンプリング管30に配設した第1流量制御弁32が開き、また導管20とサンプリング管との接続部と触媒ストリッパー装置14との間にある位置においてサンプリング管30に配設した第2流量制御弁34が開くと、このサンプリング管30は希釈トンネル18と触媒ストリッパー装置14とを直接連絡する。第1流量制御弁32を閉じ、導管20と排気装置16との接続部に隣接する位置において導管20に配設した第3流量制御弁36を開き、そして導管20とサンプリング管30との接続部に隣接する位置において導管20に配設した第4流量制御弁38を開くと、排気ガスを未希釈の状態で触媒ストリッパー装置14に直接送ることができる。従って、第3流量制御弁36および第4流量制御弁38を閉じ、かつ第1流量制御弁32および第2流量制御弁34を開くことによって、希釈排気ガス29を触媒ストリッパー14に送ることができる。また、同様に、第2流量制御弁32を閉じ、かつ第3流量制御弁36および第4流量制御弁38を開くことによって、希釈されていない排気ガス27をエンジン12の排気装置16から直接触媒ストリッパー装置14に送ることができる。
【0016】
本発明の好適な実施態様の場合、触媒ストリッパー装置14は、白金担持ハニカム構造のディーゼル酸化触媒などの通常の酸化触媒40を有する。また、流れが通過する触媒基材については、未燃焼燃料分子、部分燃焼燃料分子、未燃焼潤滑油分子および部分燃焼潤滑油分子が十分な時間滞留して、基材チャネルの内表面にそって拡散し、酸化されるように構成する。重要なことは、酸化触媒40が、HCの二酸化炭素(CO)および水(HO)への転化を通じて、サンプルから炭化水素(HC)分子をストリップすることである。
【0017】
触媒ストリッパー装置14の他の構成要素は、酸化触媒40の入り口端部に隣接する位置においてサンプリング管30に配設した第1温度センサー42、および酸化触媒40の出口端部に配設した第2温度センサー44である。この触媒ストリッパー装置14は、さらに、ヒーター46を有する。このヒーターとしては、抵抗カートリッジ式ヒーターであればよく、酸化触媒40に密接配設し、触媒を所定の温度まで加熱する。温度センサー42、44の少なくとも一つに、そしてヒーター46に電気的に連絡するように温度制御器48を配設する。ヒーター46および温度制御器48が酸化触媒40を約250℃〜約500℃の範囲にある温度に、好ましくは約350℃に制御加熱し、この温度に維持し、粒状物の揮発性成分を酸化する。
【0018】
粒状物の固体成分および揮発性成分の両方を含むサンプルを測定することが望ましい場合には、流体流れを酸化触媒40の周囲に向けるバイパス導管52を配設する。酸化触媒40周囲の流れについては、バイパス導管52とサンプリング管30との接続部に隣接する位置においてバイパス導管52に配設した第5流量制御弁54によって制御する。酸化触媒40をバイパスする場合には、酸化触媒40の排出端部に付加的な流量制御弁(図示省略)を配設し、触媒への逆流を防止するようにしてもよい。
【0019】
触媒ストリッパー装置14には、さらに、矢印56で示すように、クリーンな圧縮空気を発生する微小な希釈トンネル50を配設し、必要に応じて、希釈排気ガス29、または希釈されていない排気ガス26を直ちに(即ち、約100ms未満で)冷却するようにしてもよい。これについては、後で詳しく説明する。
【0020】
本発明の測定装置10は、さらに、検出サンプル全体の代表的な部分、例えば10%の部分を分析する粒径測定兼粒子個数カウンター装置58を有する。この粒径測定兼粒子個数カウンター装置58は、TSI製のScanning Mobility Particle Sizer Model No.3934などの通常の粒径測定器およびTSI製のCondensation Particle Counter Model No.3025などの通常の粒子個数カウンターを有する。粒径測定兼粒子個数カウンター装置58は、流れる空気/排気ガスの混合体の容量流れを制御するもので、流れる試験サンプルの温度を実質的に周囲温度、即ち約25℃に保持する必要がある。また、この粒径測定兼粒子個数カウンター装置58は、粒子の大きさ、粒子の粒径分布およびこの装置58に流れる粒子の個数を測定できる。粒径、粒径分布および粒子個数がサンプル全体を表すものである。
【0021】
本発明の測定装置10は、さらに、空気/排気ガス混合体の残りの部分に含まれる粒状物を連続的に所定の時間、例えば20分のサイクルで回収する手段、例えば微小希釈トンネル50の出口端部に配設したフィルターパック60を有する。またさらに、この測定装置10は、所定の時間にわたって回収された粒状物の全質量を測定する手段62、例えば分析用バランススケールを有する。
【0022】
本発明の好適な実施態様では、測定装置10は、さらに、質量流れを測定する手段64を有する。例えば、通常の質量流れセンサーをフィルターパック60の下流側に配設して、固体粒子がフィルターパック60によって所定の時間取り除かれた空気/排気ガス混合体の質量流れを測定する。
【0023】
次に、内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する本発明方法を図2のフローチャートに従って説明する。ブロック100に示すエンジン排気ガスをエンジン12の排気装置15によって希釈トンネル18に送り、ブロック102に示すように、希釈し、被試験用の第1サンプルをサンプリングする。希釈トンネルを流れる空気/排気ガスの混合体を表す第1サンプルをポンプ66によって希釈トンネルから吸引する。あるいは、上述したように、エンジン排気ガス16を希釈せずに、導管20によって触媒ストリッパー装置14に直接回してもよい。吸引された第1サンプルを触媒ストリッパー装置14に通し、ブロック104に示すように、空気/排気ガスの流れから粒状物の揮発性成分の少なくとも90%を取り出す。この触媒ストリッパー装置14については、粒状物の固体成分の少なくとも95%以上を通過させた状態で、エンジン排気ガスに存在する揮発性炭化水素および硫酸塩物質の少なくとも90%を除去するように構成する。
【0024】
触媒ストリッパー装置14を通過した後、第1試験サンプルは微小希釈トンネル50を通過する。微小希釈トンネル50でクリーンな圧縮空気56を付加し、直ちに(100ms未満)、空気/排気ガスの加熱された混合体、または排気ガスサンプルそのものを希釈し、ブロック106に示すように、サンプルの温度を52℃未満、好ましくは約25℃にする。この急速冷却のために、硫酸粒子の生成はなく、また触媒ストリッパー装置14のいくつかの要素の壁部に粒子が伝熱的に(thermophoretic)付着することも少なくなる。
【0025】
冷却された第1試験サンプルの所定の容量部分を粒径測定兼粒子個数カウンター装置58に送り、ブロック108に示すように、固体粒子の粒径および個数を測定する。試験を行っている時間、例えば20分間のサイクルでフィルターパック60に回収された第1試験サンプルの残りの部分における固体粒子の質量を、ブロック110に示すように、測定し、そしてブロック112に示すように、試験流れの残りの部分の質量流れを測定する。
【0026】
ブロック114に示すように、排気ガス26の第2サンプルを希釈トンネルに送り、ブロック116に示すように、空気24で希釈する。あるいは、第2サンプルが未希釈排気ガスであることが望ましい場合には、上述したように、導管20によってエンジン排気ガスを希釈トンネル18の周囲に送ってもよい。
【0027】
以上説明してきた実施態様では、第2サンプルが触媒ストリッパー装置14をバイパスし、直接微小希釈トンネル50に回され、この後、ブロック118に示すように、第2試験サンプルを冷却する。
【0028】
第2サンプル中の全粒状物、即ち固体成分粒子および析出揮発性成分粒子をフィルターパック60で回収し、ブロック120に示すように、測定する。この回収のために必要なことは、第2サンプルを約52℃未満の温度に急速冷却することだけであるが、第2サンプルの一部を粒径測定兼粒子個数カウンター装置58に送ることによって、ブロック118とブロック120との間に点線によって接続したブロック122に示すように、第2流れの全粒子の粒径および個数を測定することが望ましい場合には、試験サンプルを周囲温度付近の温度、即ち約25℃に冷却する必要がある。
【0029】
全粒状物を除去した後、ブロック124に示すように、第2サンプルの質量流れを測定する。
【0030】
次に、ブロック126に示すように、排気ガス流れ中の粒状物のそれぞれの固体成分および揮発性成分について測定する。同じ排気ガス流れに対して平行に第1サンプルおよび第2サンプルを同じ時間量流す。全粒状物(固体成分、および揮発性成分の液相粒子)は、第2サンプルの全粒状物の測定値によって表される。第1サンプルの場合、揮発性成分の実質的に全部が触媒ストリッパー装置によって除去されるため、固体成分からなる粒状物のみが回収、測定される。従って、粒状物の揮発性成分は、第2サンプルの全粒状物の測定質量から第1サンプルの粒状物の測定質量を差し引くことによって同定できる。さらに、第1試験流れ中の、そして所望ならば第2試験流れ中の粒子の粒径、粒径分布および個数については、粒径測定兼粒子個数カウンター装置58の表示器を読むことによってリアルタイムで簡単に知ることができる。
【0031】
粒状物については、排気ガス流れ中のPMの濃度、例えば部/cmで表してもよいことがある。排気ガス流れ中の粒状物濃度は、本発明の方法を使用すると得ることができる。エンジン12の排気装置16および希釈トンネル18に適当な流量センサーを配設すると、サンプリング管30に導入される排気ガス26を希釈する場合にはその希釈比を簡単に確認することができる。さらに、フィルターパック60の下流側に質量流れセンサー64を配設すると、微小希釈トンネル50に導入される空気による希釈後に、質量流れを測定することができる。従って、ブロック128に示すように、それぞれサンプルとして粒径測定兼粒子個数カウンター装置58およびフィルターパック60を流れる第1サンプルおよび第2サンプルに含まれる排気ガス26の量及び排気ガス流れ中の粒状物濃度を簡単に知ることができる。排気流れ中の粒状物を距離の単位、例えばグラム/マイル(g/mi)、グラム/馬力時間(g/Hph)などで表すことが望ましい場合には、走行距離、または試験サイクル時にエンジン12が出力する馬力に、試験サイクルの時間を掛ければよく、また回収粒状物の質量を走行距離か馬力と時間の積によって割ればよい。
【0032】
以上、本発明を好適な実施態様について説明してきたが、当業者ならば、上記の装置および方法は、本発明の具体的な装置および方法を使用する代表的構成例に過ぎないことを認識できるはずである。例えば、三方向流量制御弁の数を少なくするために二方向流量制御弁を使用することができる。同様に、第1試験サンプルを処理、試験するために説明したステップを、第2サンプルの処理するために説明したステップの後に実施しても、簡単に実施することができる。即ち、本発明方法を実施するさい、試験サンプルのサンプリングおよび試験順序は、任意でよい。このような本発明装置の構成、本発明方法の実施態様はいずれも特許請求の範囲に含まれるものである。
【0033】
また、本発明の上記以外の態様、特徴および作用効果についても、特許請求の範囲および本明細書の開示から理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】内燃機関から排出される排気ガス中の固体粒状物および揮発性粒状物の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定するための本発明装置の概略図である。
【図2】排気ガス中の固体粒状物および揮発性粒状物の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定するための本発明方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10:測定装置、
12:内燃機関(エンジン)、
14:触媒ストリッパー装置、
16:排気装置、
18:希釈トンネル、
20:導管、
28:HEPAフィルター、
29:希釈排気ガス、
30:サンプリング管、
32:流量制御弁、
34:流量制御弁、
36:流量制御弁、
38:流量制御弁、
40:酸化触媒、
42:温度センサー、
44:温度センサー、
46:ヒーター、
48:温度制御器、
58:粒径測定兼粒子個数カウンター装置、
66:空気ポンプ、
100:エンジン排気ガス、
102:希釈第1サンプル、
104:PMの揮発性成分の除去、
106:52℃未満の温度への急速冷却、
108:固体粒子の粒径および個数の測定、
110:固体粒子の質量の測定、
112:質量流れの測定、
114:エンジン排気ガス、
116:希釈第2サンプル、
118:52℃未満の温度への急速冷却、
120:全粒子の質量の測定、
122:全粒子の粒径および個数の測定、
124:質量流れの測定、
126:PMの固体成分および揮発性成分の計算、
128:PM濃度、またはPM/単位仕事量の計算。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物である粒子の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する方法において、
所定の運転モード時所定の時間にわたって内燃機関から排気ガスを排出し、このさい排出された排気ガスに含まれる粒状物の揮発性成分を、未燃焼燃料、部分燃焼燃料、未燃焼潤滑油、部分燃焼潤滑油およびイオウ化合物からなる気相に主に設定するとともに、固体成分を炭素および無機灰分の粒子からなるものとし、
上記の所定の時間にわたって排出された排気ガスの第1サンプルを連続的に回収し、
排気ガスを触媒ストリッパー装置に第1サンプルを送って第1サンプルから揮発性成分の少なくとも約90%を除去するとともに、第1サンプルの固体成分の少なくとも約95%を触媒ストリッパー装置を通過させ、
排気ガスの第1サンプルを約25℃〜約52℃の温度に冷却し、
上記の所定の時間にわたって排気ガスの冷却された第1サンプルの代表的な部分に含まれる粒状物の粒径および個数を測定し、このさい粒状物の測定された粒径および個数が、上記の定の時間にわたって内燃機関から排出された粒状物の固体成分である粒子の分布を表すものとし、
上記の所定の時間にわたって排気ガスの第1サンプルから粒状物を回収し、そして
第1サンプルの回収された粒状物の質量を測定し、このさい測定された質量が、上記の所定の時間にわたって内燃機関から排出された固体成分粒状物の全質量を表すものとすることを特徴とする測定方法。
【請求項2】
第1サンプルを回収する所定の時間に相当する所定の時間にわたって、所定運転モード時内燃機関から排気ガスを排出し、
上記の相当する時間にわたって排気ガスの第2サンプルを連続的に回収し、
排気ガスの第2サンプルを、上記気相から実質的にすべての揮発性成分が液相に析出する十分な温度まで冷却し、
上記の相当する時間にわたって生成した固体成分および揮発性成分の析出液相粒子を回収し、そして
回収された固体成分および揮発性成分の析出液相の全質量を測定し、このさい測定された質量が、上記の相当する時間の間に内燃機関から排出された全粒状物を表すものとする請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
排気ガスの第1サンプルと第2サンプルとの間の質量差を計算し、この質量差が、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる揮発性成分粒状物を表すものとする請求項2記載の測定方法。
【請求項4】
排出された排気ガスを希釈トンネルに送り、第1サンプルおよび第2サンプルを連続回収する前に、排気ガスと所定質量流れをもつ空気とを混合する請求項2記載の測定方法。
【請求項5】
第1サンプルおよび第2サンプルを冷却するさいに、これらサンプルと空気とを微小希釈トンネル内で混合する請求項2記載の測定方法。
【請求項6】
第1サンプルの固体粒子を回収し、かつ固体成分の固体粒子および第2サンプルの揮発性成分の析出液相を回収するさいに、これらサンプルが冷却される微小希釈トンネルの下流側に配設したフィルターで固体成分の粒子および揮発性成分の析出液相を回収する請求項5記載の測定方法。
【請求項7】
第1サンプルおよび第2サンプルを冷却するさいに、硫酸粒子を生成させない程度の冷却速度でこれらサンプルを急速冷却する請求項1記載の測定方法。
【請求項8】
上記の所定の時間にわたって排気ガスの冷却された第1サンプルの代表的な部分に含まれる粒状物の粒径および個数を測定するさいに、この代表的な部分を粒径測定器に送って第1サンプルの代表的な部分における粒状物の粒径を測定するとともに、粒子個数カウンターに送って、上記の所定時間にわたって送られる代表的部分における粒状物の全個数を測定する請求項1記載の測定方法。
【請求項9】
触媒ストリッパーを約250℃〜約500℃の範囲内にある所定温度に加熱し、排気ガスの第1サンプルを触媒ストリッパーに送った状態で、この所定の温度に触媒ストリッパーを維持する請求項1記載の測定方法。
【請求項10】
内燃機関から排出される排気ガス中の粒状物である粒子の質量、粒径および個数をリアルタイムで測定する装置において、
内燃機関の排気装置と流体連絡し、排気ガスから少なくとも約90%の揮発性成分を除去するとともに、排気ガスの少なくとも95%の固体成分を触媒ストリッパーに送る触媒ストリッパー、
触媒ストリッパーと選択的に流体連絡し、排気ガスの温度よりも低い温度の空気と排気ガスを混合し、空気/温度が約52℃未満の排気ガスからなる混合体を形成する微小希釈トンネル、
上記微小希釈トンネルと流体連絡する粒径測定器、
上記微小希釈トンネルと流体連絡する粒子個数カウンター、
所定の時間にわたって、空気/排気ガス混合体に含まれる粒状物を連続回収する手段、および
上記の所定時間にわたって回収された粒状物の質量を測定する手段を有することを特徴とする測定装置。
【請求項11】
内燃機関の排気装置と触媒ストリッパーとの間に希釈トンネルを配設し、空気と内燃機関から排出される排気ガスとを混合するとともに、空気/排気ガスの混合体を触媒ストリッパーに送るように構成した請求項10記載の測定装置。
【請求項12】
約250℃〜約500℃の範囲にある温度に触媒ストリッパーを制御加熱する手段を有する請求項10記載の測定装置。
【請求項13】
所定の時間にわたって、空気/排気ガスの混合体に含まれる粒状物を連続回収する上記手段によって粒状物を回収した空気/排気ガスの混合体の質量流れを測定する手段を有する請求項10記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506640(P2006−506640A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553432(P2004−553432)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/031346
【国際公開番号】WO2004/046517
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(500553730)サウスウエスト リサーチ インスティテュート (9)
【住所又は居所原語表記】6220 CULEBRA ROAD SAN ANT ONIO,TEXAS 78238 USA
【Fターム(参考)】