説明

エンジン駆動発電装置

【課題】安価且つ簡単な構成で、燃費改善及び排気ガス性能の向上を実現することができるエンジン駆動発電装置を提供する。
【解決手段】発電専用の産業機械であるエンジン駆動発電装置1において、エンジン負荷を示すパラメータとしてエンジン10側で検出可能な吸入空気量等に代えて発電機45の負荷電流を用い、この負荷電流とエンジン回転数とに基づいて燃料噴射弁33に対する燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出する。これにより、安価且つ簡単な構成で、燃費改善及び排気ガス性能の向上を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力軸に連結するロータの回転によって発電する発電体を備えたエンジン駆動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、比較的小型で安価な汎用のエンジン駆動発電装置では、機械式のガバナ装置や負圧を利用して燃料を霧化する気化器を備えたものが広く普及している。
【0003】
その一方で、エンジン駆動発電装置についても各種電子制御技術が採用される傾向にあり、このような電子制御化は、基本的には、自動車等のエンジンに広く用いられている技術を応用することで実現が可能である。例えば、エンジン駆動発電装置等においては、出力電圧の急激な変動等を抑制すべく、電子制御式のスロットル弁等を用いて積極的にエンジン回転数制御を行う技術が実用化されている。
【0004】
さらに、近年においては、燃費改善や排気ガス性能の向上等を目的として、気化器に代えて燃料噴射弁を設け、電子制御を通じて能動的に燃料噴射量を制御する燃料供給システムが採用される傾向にある。例えば、特許文献1には、パルサ(クランク角センサ)からの信号に基づくエンジン回転速度(エンジン回転数)や、スロットルセンサからの信号に基づくスロットル開度等からエンジンの吸入空気量を推定し、推定した吸入空気量に応じた燃料噴射制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−108355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術のように、燃料噴射制御を行うにあたり、エンジン負荷を検出すべく新たにスロットルセンサや吸入空気量センサ等を追加しようとした場合、エンジンの設計変更や改造が必要となる等、製造コストの高騰や構造の複雑化等を招く虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、安価且つ簡単な構成で、燃費改善及び排気ガス性能の向上を実現することができるエンジン駆動発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるエンジン駆動発電装置は、エンジンの出力軸に連結するロータの回転によって発電を行う発電機を備えたエンジン駆動発電装置において、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記発電機の負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出する燃料噴射情報算出手段と、算出された前記燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間に基づいて燃料噴射弁を駆動する駆動手段と、を備え、前記燃料噴射情報算出手段は、検出された前記回転数と前記負荷電流とを用いて前記燃料噴射タイミング及び前記燃料噴射時間を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエンジン駆動発電装置によれば、安価且つ簡単な構成で、燃費改善及び排気ガス性能の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】エンジン駆動発電装置の概略構成図
【図2】エンジンに連結した発電体を示す断面図
【図3】燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャート
【図4】入力信号処理サブルーチンを示すフローチャート
【図5】燃料噴射制御情報演算サブルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1はエンジン駆動発電装置の概略構成図、図2はエンジンに連結した発電体を示す断面図、図3は燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャート、図4は信号入力処理サブルーチンを示すフローチャート、図5は燃料噴射制御情報演算サブルーチンを示すフローチャートである。
【0012】
図1,2に示すエンジン駆動発電装置1は、例えば、比較的小型の汎用エンジン10と、インバータ式の発電機45とを有して構成されている。
【0013】
エンジン10は、シリンダブロック11を有し、このシリンダブロック11には、シリンダ12と、クランクケース13とが一体的に形成されている。また、シリンダ12内には、ピストン14が摺動自在に嵌挿され、このピストン14の下部が、クランクケース13内に回転自在に軸支された出力軸としてのクランク軸16に、コネクティングロッド15を介して連結されている。
【0014】
一方、シリンダ12の上端にはシリンダヘッド20が冠設され、このシリンダヘッド20は、シリンダ12及びピストン14とともに燃焼室21を画成する。
【0015】
シリンダヘッド20には、燃焼室21に予混合気を供給する吸気ポート22と、排気ガスを排出する排気ポート23とが形成され、さらに、吸気ポート22を開閉する吸気弁24と、排気ポート23を開閉する排気弁25とが組み付けられている。また、シリンダヘッド20の上部にはシリンダヘッドカバー27が冠設され、これらの間に形成されたロッカ室28には、クランク軸16に同期して吸,排気カムを動作させることによって吸、排気弁24,25を所定のタイミングで開閉する動弁機構(図示せず)が収容されている。
【0016】
吸気ポート22にはスロットルボディ30が連通され、このスロットルボディ30内には、例えば、スロットルアクチュエータ32によって開閉動作する電子制御式のスロットル弁31が配設されている。また、スロットルボディ30には燃料噴射弁33が固設され、この燃料噴射弁33の噴口がスロットルボディ30内に臨まされている。さらに、スロットルボディ30には吸気の脈動に応動するダイアフラム式の燃料ポンプ34が固設され、この燃料ポンプ34の吸入ポートが燃料管37aを介して燃料タンク35に接続さている。一方、燃料ポンプ34の吐出ポートは燃料管37bを介してプレッシャレギュレータ36の吸入ポートに接続され、このプレッシャレギュレータ36の吐出ポートには燃料管37cを介して燃料噴射弁33が接続されている。さらに、プレッシャレギュレータ36のリターンポートには燃料管37dを介して燃料タンク35が接続されている。
【0017】
本実施形態において、燃料噴射弁33には、例えば、300[kPa]までの燃料圧力に対応可能な汎用の多孔インジェクタが採用されている。また、プレッシャレギュレータ36によって調圧される燃料圧力は、例えば、30[kPa]以下の低圧に設定され、これにより、各燃料管37a〜37dには安価なゴムホース等が採用されている。
【0018】
図2に示すように、クランク軸16の突端部にはフライホイール40が固設され、このフライホイール40には、発電体46が連設されている。また、フライホイール40と発電体46との間には冷却ファン41が配設されている。さらに、フライホイール40とクランクケース13との間にはリコイルスタータ42が配設されている。
【0019】
発電体46は、例えば、三相のアウタロータ式発電体であり、フライホイール40を介してクランク軸16に連結された環状のロータ46aがステータ46bの外周を回転することにより発電を行う。図1に示すように、この発電体46には、整流回路47を介して、DCレギュレータ48及びインバータ49が接続され、これらにより、インバータ式の発電機45が構成されている。そして、発電体46の出力は、整流回路47で全波整流され、DCレギュレータ48で電圧調整され、さらにインバータ49で所定周波数の交流電力に変換されて各種電気負荷に供給される。
【0020】
ここで、本実施形態のエンジン駆動発電装置1は、バッテリを持たない簡易な構成となっており、発電機45から電源供給される負荷には、スロットルアクチュエータ32や燃料噴射弁33等のエンジン補機類、及び、これらを通じてエンジン10の制御を行う電子制御ユニット(ECU)50等も含まれる。
【0021】
ECU50には、エンジン温度サーミスタ51で検出されたエンジン温度、吸気温度サーミスタ52で検出された吸気温度、エンジン回転数センサ53で検出されたエンジン回転数等に関する各種信号が入力される。また、ECU50には、例えば、燃料噴射弁33の駆動用に電圧調整された電源系統において電圧センサ54で検出された電圧値(電源電圧)が入力されると共に、負荷電流検出手段としての電流センサ55によってインバータ49の出力側で検出された電流値が発電機45の負荷電流として入力される。
【0022】
そして、ECU50は、基本的には、エンジン回転数が設定回転数(例えば、エンジンの回転に出力周波数が依存する同期式発電機の場合には、発電機45の出力周波数が50[Hz]の場合には3000[rpm]、60[Hz]の場合には3600[rpm])に収束するようスロットル弁31の開度を制御し、エンジンの回転に出力周波数が依存しないインバータ式発電機の場合等では、任意のエンジン回転数に収束するよう制御する。
【0023】
また、ECU50は、エンジン回転数と負荷電流とを用いて燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出し、算出した燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間に基づいて燃料噴射弁を駆動する。すなわち、ECU50は、エンジン負荷を示すパラメータとして、エンジン10側で検出可能な吸入空気量等に代えて発電機45の負荷電流を用いる。そして、ECU50は、この負荷電流とエンジン回転数とに基づいて基本となる燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出し、これらに各種補正を行うことで最終的な燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出する。このように、本実施形態において、ECU50は、燃料噴射情報算出手段、駆動手段としての各機能を実現する。
【0024】
次に、ECU50で実行されるエンジン10の燃料噴射制御について、図3に示す燃料噴射制御ルーチンに従って説明する。このルーチンは、例えば、図示しないメインスイッチがONされた後、リコイルスタータ42を通じてエンジン10が始動されることに伴い実行されるもので、ルーチンがスタートすると、ECU50は、先ず、ステップS101において、メインスイッチがオフされたか否かを調べる。そして、ECU50は、メインスイッチがオフされていると判定した場合にはステップS106に進み、メインスイッチがオンされていると判定した場合にはステップS102に進む。
【0025】
ステップS101からステップS102に進むと、ECU50は、前回の処理からの経過時間が予め設定されたメインループ時間(例えば、10[msec])を越えたか否かを調べる。そして、ECU50は、メインループ時間を越えていないと判定した場合にはそのまま待機し、メインループ時間を超えたと判定した場合にはステップS103に進む。
【0026】
ステップS102からステップS103に進むと、ECU50は、各種スイッチ・センサ類から入力される信号の処理を行う。この処理は、例えば、図4に示す入力信号処理サブルーチンのフローチャートに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、ECU50は、ステップS201において、エンジン回転数センサ53から入力されるパルス信号から回転信号を検出し、この回転信号の周期に基づいてエンジン回転数(I_RPM_LEV0)を算出する。この場合において、ECU50は、例えば、最新4回の検出結果を移動平均した値をエンジン回転数(I_RPM_LEV0)として算出する。
【0027】
続くステップS202において、ECU50は、エンジン温度サーミスタ51からの入力信号に基づいてエンジン温度(D_AD1)を算出する。この場合において、ECU50は、例えば、最新16回の検出結果を移動平均した値をエンジン温度(D_AD1)として算出する。
【0028】
続くステップS203において、ECU50は、吸気温度サーミスタ52からの入力信号に基づいて吸気温度(D_AD2)を算出する。この場合において、ECU50は、例えば、最新16回の検出結果を移動平均した値を吸気温度(D_AD2)として算出する。
【0029】
続くステップS204において、ECU50は、DCレギュレータ48からの入力信号に基づいて電源電圧(D_AD3)を算出する。この場合において、ECU50は、例えば、最新16回の検出結果を移動平均した値を電源電圧(D_AD3)として算出する。
【0030】
続くステップS205において、ECU50は、電流センサ55からの入力信号に基づいて負荷電流(D_AD0)を算出した後、サブルーチンを抜ける。この場合において、ECU50は、例えば、最新16回の検出結果を移動平均した値を負荷電流(D_AD0)として算出する。
【0031】
図3のメインルーチンにおいて、ステップS103からステップS104に進むと、ECU50は、燃料噴射制御情報の演算を行う。この演算は、例えば、図5に示す燃料噴射制御情報演算サブルーチンのフローチャートに従って実行されるもので、サブルーチンがスタートすると、ECU50は、ステップS301において、エンジン回転数(I_RPM_LEV0)に基づいてエンジン10の回転数レベル(I_RPM_LEV0_LEV)及び回転数エラーレベル(I_RPM_ERR_LEV0)を算出する。
【0032】
具体的に説明すると、ECU50には、例えば、エンジン回転数を、0[rpm]〜5000[rpm]の範囲内において判定ステップ250[rpm]毎に区分する20段階の回転数レベルが設定されており、ECU50は現在のエンジン回転数(I_RPM_LEV0)がどの回転数レベル(I_RPM_LEV0_LEV)に該当するかを判定する。
【0033】
また、ECU50には、例えば、エンジン回転数(I_RPM_LEV0)と前回のエンジン回転数(I_RPM_LEV0_OLD)の差である回転数エラー(I_RPM_ERR = I_RPM_LEV0_OLD − I_RPM_LEV0)を、0[rpm]〜5000[rpm]の範囲内において判定ステップ250[rpm]毎に区分する20段階の回転数エラーレベルが設定されており、ECU50は、現在の回転数エラー(I_RPM_ERR)がどの回転数エラーレベル(I_RPM_ERR_LEV)に該当するかを判定する。
【0034】
続くステップS302において、ECU50は、電流負荷(D_AD0)に基づいてエンジン10の負荷レベル(D_AD_LEV0)を算出する。すなわち、ECU50には、例えば、負荷電流を、0[A]〜49[A]の範囲内において判定ステップ5[A]毎に区分する10段階の負荷レベルが設定されており、ECU50は現在の負荷電流(D_AD0)がどの負荷レベル(D_AD_LEV0)に該当するかを判定する。
【0035】
そして、ステップS303に進むと、ECU50は、ステップS301及びステップS302で算出した回転数レベル(I_RPM_LEV0_LEV)及び負荷レベル(D_AD_LEV)に基づき、予め設定された基本燃料噴射タイミングテーブルF1を参照して、基本燃料噴射タイミングT1ref(=F1(I_RPM_LEV0_LEV、D_AD_LEV0))を算出する。なお、燃料噴射タイミングとは、例えば、エンジン回転数センサ53からのエンジン回転パルス信号が入力されたタイミングを基準とする燃料噴射開始のタイミングである。
【0036】
続くステップS304において、ECU50は、ステップS301及びステップS302で算出した回転数エラーレベル(I_RPM_ERR_LEV)及び負荷レベル(D_AD_LEV)に基づき、予め設定された基本燃料噴射時間テーブルF2を参照して、基本燃料噴射時間T2ref(=F2(I_RPM_ERR_LEV0、D_AD_LEV0))を算出する。なお、燃料噴射時間とは、例えば、燃料噴射開始から終了までの時間である。
【0037】
ステップS305に進むと、ECU50は、基本燃料噴射タイミングT1refに対する各種調整値(補正値)を算出する。本実施形態において、ステップS305では、補正値として、例えば、加速補正値T1_D、エンジン温度補正係数K1eng、及び、吸気温度補正係数K1airが算出される。
【0038】
具体的に説明すると、ECU50は、負荷電流(D_AD0)及び前回の負荷電流(D_AD0_OLD)の差である負荷電流変位(D_AD0_D = D_AD0_OLD − D_AD0)のレベル(負荷変位レベル(D_AD0_D_LEV))を算出し、この負荷変位レベル(D_AD0_D_LEV)に基づいて燃料噴射タイミング用の加速補正値T1_Dを算出する。すなわち、ECU50には、例えば、負荷電流変位を11段階の負荷変位レベルに区分するためのテーブルが設定されており、ECU50は、このテーブルを参照して、現在の負荷電流変位(D_AD0_D)がどの負荷変位レベル(D_AD0_D_LEV)に該当するかを判定する。そして、ECU50は、負荷変位レベル(D_AD0_D_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射タイミング用の加速補正テーブルF3を参照して、加速補正値T1_D(=F3(D_AD0_D_LEV)を算出する。
【0039】
また、ECU50は、エンジン温度(D_AD1)に基づいてエンジン温度補正レベル(D_AD1_LEV)を算出し、このエンジン温度補正レベル(D_AD1_LEV)に基づいて燃料噴射タイミング用のエンジン温度補正係数K1engを算出する。すなわち、ECU50には、例えば、エンジン温度(D_AD1)を、−30[℃]〜150[℃]の範囲内において判定ステップ15[℃]毎に区分する13段階のエンジン温度補正レベルが設定されており、ECU50は、現在のエンジン温度(D_AD1)がどのエンジン温度補正レベル(D_AD1_LEV)に該当するかを判定する。そして、ECU50は、エンジン温度補正レベル(D_AD1_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射タイミング用のエンジン温度補正テーブルF7を参照して、エンジン温度補正係数K1eng(=F7(D_AD1_LEV))を算出する。
【0040】
また、ECU50は、吸気温度(D_AD2)に基づいて吸気温度補正レベル(D_AD2_LEV)を算出し、この吸気温度補正レベル(D_AD2_LEV)に基づいて燃料噴射タイミング用の吸気温度補正係数K1airを算出する。すなわち、ECU50には、例えば、吸気温度(D_AD1)を、−30[℃]〜100[℃]の範囲内において判定ステップ10[℃]毎に区分する14段階の吸気温度補正レベルが設定されており、ECU50は、現在の吸気温度(D_AD2)がどの吸気温度補正レベル(D_AD2_LEV)に該当するかを判定する。そして、ECU50は、吸気温度補正レベル(D_AD2_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射タイミング用の吸気温度補正テーブルF9を参照して、吸気温度補正係数K1airを算出する。
【0041】
ステップS306に進むと、ECU50は、基本燃料噴射時間T1refに対する各種調整値(補正値)を算出する。本実施形態において、ステップS306では、補正値として、例えば、加速補正値T2_D、エンジン温度補正係数K2eng、吸気温度補正係数K2airが算出される。
【0042】
具体的に説明すると、ECU50は、負荷変位レベル(D_AD0_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射時間用の加速補正テーブルF4を参照して、加速補正値T1_D(=F4(D_AD0_LEV))を算出する。
【0043】
また、ECU50は、エンジン温度補正レベル(D_AD1_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射時間用のエンジン温度補正テーブルF8を参照して、エンジン温度補正係数K2eng(=F8(D_AD1_LEV))を算出する。
【0044】
また、ECU50は、吸気温度補正レベル(D_AD2_LEV)に基づき、予め設定された燃料噴射時間用の吸気温度補正テーブルF10を参照して、吸気温度補正係数K2air(=F10(D_AD2_LEV))を算出する。
【0045】
ステップS306からステップS307に進むと、ECU50は、電源電圧(D_AD3)の電源電圧レベル(D_AD3_LEV)を算出する。すなわち、ECU50には、例えば、電源電圧(D_AD3)を、0[V]〜20[V]の範囲内において区分する8段階(不等幅)の電源電圧レベルが設定されており、ECU50は、現在の電源電圧(D_AD3)がどの電源電圧レベル(D_AD3_LEV)に該当するかを判定する。
【0046】
続くステップS308において、ECU50は、電源電圧レベル(D_AD3_LEV)に基づき、予め設定された無効噴射時間テーブルF12を参照して、無効噴射時間Tinvを算出する。
【0047】
ステップS308からステップS309に進むと、ECU50は、基本燃料噴射タイミングT1ref、加速補正値T1_D、エンジン温度補正係数K1eng、及び、吸気温度補正係数K1airに基づいて、以下の(1)式により、最終的な燃料噴射タイミングである燃料噴射タイミング確定値T1correctを算出する。
T1correct=K1eng ・ K1air ・ T1ref +T1_D …(1)
そして、ステップS310において、ECU50は、基本燃料噴射時間T1ref、加速補正値T2_D、エンジン温度補正係数K2eng、吸気温度補正係数K2air、及び、無効噴射時間Tinvに基づいて、以下の(2)式により、最終的な燃料噴射時間である燃料噴射時間確定値T2correctを算出した後、サブルーチンを抜ける。
T2correct=K2eng ・K2air ・ T2ref +T2_D +Tinv …(2)
図3のメインルーチンにおいて、ステップS104からステップS105に進むと、ECU50は、算出した燃料噴射タイミング確定値T1correct及び燃料噴射時間確定値T2correctに基づいて燃料噴射出力を行った後、ステップS101に戻る。
【0048】
また、ステップS101からステップS106に進むと、ECU50は、エンジン10に対する停止処理を行った後、ルーチンを抜ける。
【0049】
このような実施形態によれば、発電専用の産業機械であるエンジン駆動発電装置1において、エンジン負荷を示すパラメータとしてエンジン10側で検出可能な吸入空気量等に代えて発電機45の負荷電流を用い、この負荷電流とエンジン回転数とに基づいて燃料噴射弁33に対する燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出することにより、安価且つ簡単な構成で、燃費改善及び排気ガス性能の向上を実現することができる。
【0050】
すなわち、エンジン負荷を示すパラメータとして負荷電流を用いることにより、例えば、もともと電子制御式のスロットル弁を備えたエンジン駆動発電装置に対しては、エンジン側に新たなセンサ類を追加することなく、発電機からの出力系統に対する配線上の追加を行う程度の簡単な構成により、燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間の各基準値の算出に必要なエンジン回転数とエンジン負荷とを得ることができる。従って、エンジンの吸気系等にセンサ類を追加するための専用の加工や改造等を行う必要がなく、簡単な構成により燃料噴射制御を実現することができる。
【0051】
この場合、特に、発電機の出力電流の変動をエンジン負荷の変動として直接的に感知することができるので、検出信号の変換等の必要がなく、実負荷を精度良く詳細に、且つ高速に把握することができる。従って、燃料噴射量の増減をきめ細やかに制御することが可能となる。
【0052】
また、負荷電流を監視することにより、当該負荷電流の変化に追従して変化するエンジン回転を事前に検知することが可能となり、このように事前に検知したエンジン回転変動に対して燃料噴射制御を行うことが可能となるため、エンジン回転数の変動を最小限に留めることができる。
【0053】
また、エンジン負荷を検出するために吸入空気量センサやスロットル開度センサ等を設ける必要がないため、良好な吸気やスロットル動作等を確保することができる。
【0054】
また、燃料噴射弁33及び燃料ポンプ34をスロットル弁31等と共にスロットルボディ30に配設してモジュール化等を行えば、キャブレター式のエンジン駆動発電装置等との互換性を向上することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態においては、エンジン回転数及び負荷電流に基づいて算出した基本燃料噴射タイミング及び基本燃料噴射時間に各種補正を行うことで最終的な燃料噴射タイミング確定値及び燃料噴射時間確定値を算出した一例について説明したが、製品として燃料噴射制御に要求される精度と、補正値算出のための各種センサ類を追加することに対する製造コスト等との関係を考慮した上で、各補正項を必要に応じて適宜省略することも可能である。
【0056】
ところで、例えば、ガバナ式のエンジン駆動発電装置等に燃料噴射弁を設けて燃料噴射制御を行う場合、例えば、図1中に破線で示すように、発電体46からの出力電圧の波形をECU50においてモニタリングすることにより、エンジン回転数センサ等を新たに設けることなく、エンジン回転数を算出することも可能である。
【0057】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。
【符号の説明】
【0058】
1 … エンジン駆動発電装置
10 … エンジン
11 … シリンダブロック
12 … シリンダ
13 … クランクケース
14 … ピストン
15 … コネクティングロッド
16 … クランク軸
20 … シリンダヘッド
21 … 燃焼室
30 … スロットルボディ
31 … スロットル弁
32 … スロットルアクチュエータ
33 … 燃料噴射弁
34 … 燃料ポンプ
35 … 燃料タンク
36 … プレッシャレギュレータ
37a〜37d … 燃料管
40 … フライホイール
41 … 冷却ファン
42 … リコイルスタータ
45 … 発電機
46 … 発電体
46a … ロータ
46b … ステータ
47 … 整流回路
48 … DCレギュレータ
49 … インバータ
50 … 電子制御ユニット(燃料噴射情報算出手段、駆動手段)
51 … エンジン温度サーミスタ
52 … 吸気温度サーミスタ
53 … エンジン回転数センサ(回転数検出手段)
54 … 電圧センサ
55 … 電流センサ(負荷電流検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸に連結するロータの回転によって発電を行う発電機を備えたエンジン駆動発電装置において、
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記発電機の負荷電流を検出する負荷電流検出手段と、
燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間を算出する燃料噴射情報算出手段と、
算出された前記燃料噴射タイミング及び燃料噴射時間に基づいて燃料噴射弁を駆動する駆動手段と、を備え、
前記燃料噴射情報算出手段は、検出された前記回転数と前記負荷電流とを用いて前記燃料噴射タイミング及び前記燃料噴射時間を算出することを特徴とするエンジン駆動発電装置。
【請求項2】
前記燃料噴射弁と、当該燃料噴射弁に燃料を圧送する燃料ポンプをスロットルボディに設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−184730(P2012−184730A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49345(P2011−49345)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】