説明

エンボスキャリアテープ及びその製造方法ならびに包装部品巻回体

【課題】部品収納部へ部品を容易に収納できると共に、部品収納部での部品の収納状態を安定化できるエンボスキャリアテープ及びその製造方法ならびに包装部品巻回体を提供する。
【解決手段】長尺状の樹脂製の基材シート2の一方の面に開口する凹形状の部品収納部10が、基材シート2の他方の面に膨出して設けられたエンボスキャリアテープ1において、前記基材シート2の前記他方の面には、任意の部品収納部10の外周縁11に、前記任意の部品収納部10を挟んで一対の第一の溝部20が形成され、前記第一の溝部20は、その深さが前記基材シート2の厚みより小さく、前記基材シート1の幅方向に延びることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品、電子部品等を部品収納部に収納するエンボスキャリアテープ及びその製造方法ならびに包装部品巻回体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を実装機に搬送する際には、電子部品等の部品を収納するための凹形状の部品収納部が設けられたキャリアテープが用いられている。
キャリアテープとしては、基材の一部を打抜き加工により取り除いた後、基材裏面にボトムテープを装着して部品収納部を設けたパンチドキャリアテープ、基材の一部を凹形状に加工して部品収納部(エンボス部)を形成したエンボスキャリアテープ、基材の一部を圧縮加工することによって部品収納部を設けたプレスキャリアテープ等が一般的である。
【0003】
近年、電子部品の微細化が進み、例えば縦、横の寸法が、1.6×0.8mm(1608チップ)、1.0×0.5mm(1005チップ)、0.6×0.3mm(0603チップ)、0.4×0.2mm(0402チップ)の電子部品のような微細部品を収納するのに適したキャリアテープが用いられるようになってきた。
【0004】
かかる微細部品に用いられるキャリアテープは、基材として紙基材を用いたものが一般的であり、紙基材を用いたキャリアテープとしては、パンチドキャリアテープ又はプレスキャリアテープが一般的であった。これらのキャリアテープは、部品収納部を設ける際に、プレスパンチによるせん断又は圧縮加工が施されるため、ケバ、バリ等の異物が発生するという問題がある。このような異物は実装精度や実装率の低下を招いてしまう。さらに、紙基材を用いた場合、吸湿による寸法変化、紙基材同士又は紙基材と実装機ガイド部との摩擦による紙粉の発生、剥離帯電による実装ミス等が生じやすい。
このため、紙基材を用いたキャリアテープに代えて、コストと寸法精度に優れるプラスチック製のエンボスキャリアテープが使用されている。
また、上記したように、収納する部品の寸法が小さくなり、軽くなってきていることや、高速実装すること等から、静電気によって、部品がエンボスキャリアテープやカバーテープに付着して、部品の取り出しや収納が正常にできなくなるという問題が生じる。このため、導電性が付与された導電性のエンボスキャリアテープの市場要求が高まっている。
【0005】
樹脂製の基材を用いたエンボスキャリアテープは、例えば、パンチと、該パンチが挿入されるパンチ受入孔を有するダイスとの間に基材シートを配置し、次いでパンチをパンチ受入孔に挿入して基材シートを延伸させるプレス成形により形成される。このパンチの側面とパンチ受入孔の内周面との間には、クリアランスが形成されており、このクリアランスを形成することで、基材シートの局所的な過度の延伸を防止し、エンボスキャリアテープの強度を維持している。
【0006】
このようなエンボスキャリアテープは、部品収納部の内側面が開口部に向けて広がるようなテーパー形状とされると共に、部品収納部の開口部の周縁が、その製造に由来した曲面とされ、テーピングや実装の容易性、成形の容易性等が図られたものである。エンボスキャリアテープは、部品収納部の開口部の周縁に曲面が形成されると、開口部の矩形性等の形状精度が低下し、部品を所定の位置に収納しにくかったり、部品収納部の内側面がテーパー形状とされると、微細部品を安定して収納しにくかったりする。例えば、微細部品を収納した際、部品収納部の内側面と微細部品との間の隙間が大きく、微細部品を所定の位置で収納することが困難であったり、部品収納部内で微細部品が動きやすいため、収納当初は所定の位置で収納されても、振動や衝撃等により位置がずれることがある。このような収納安定性の低さは、テーピング機の高速化及び実装工程における高実装密度化、狭隣接実装化の妨げとなり、テーピング時の収納安定性、マウント時の実装精度や実装率を低下させる原因となる。
【0007】
こうした問題に対し、複数の凹部の間の基材が圧縮され薄肉化されたエンボスキャリアテープが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のエンボスキャリアテープによれば、凹部の寸法精度、テーピング時の収納安定性、マウント時の実装精度や実装率等の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−272952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した技術では、エンボスキャリアテープにおける収納安定性を未だ満足できなかった。
特に、薄型の微細部品を収納するために部品収納部の内部(凹部)が浅いエンボスキャリアテープをプレス成形で製造した場合、部品収納部の内側面の傾斜は、内底面から開口部に向かって、より広がるものとなる。加えて、部品収納部の開口部周縁の曲面は、その曲率半径が拡大しやすくなる。これは、パンチ受入孔とパンチとの間にクリアランスが形成されているため、パンチ受入孔へのパンチの挿入距離が短くなると基材シートにおけるパンチ受入孔の深さ方向の延伸が少なくなり、パンチ受入孔の周縁において、基材シートのパンチ受入孔の深さ方向に対する屈曲が小さくなるためである。そして、部品収納部の内側面の傾斜の拡大や、開口部周縁の曲面の曲率半径の拡大が生じると、収納した部品がずれたり、飛び出したりしやすくなるという問題がある。
一方、部品収納部の内側面の傾斜を小さくするために、パンチとパンチ受入孔とのクリアランスを単に狭くすると、基材シートが局所的に延伸され、破断が生じる等の形態不良を生じる場合がある。加えて、単に、部品収納部の内側面のテーパー角度を小さくしたり、凹部開口部の開口面積を小さくしたりすると、部品収納部へ部品を収納しにくくなるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、部品収納部へ部品を容易に収納できると共に、部品収納部での部品の収納状態を安定化できるエンボスキャリアテープ及びその製造方法ならびに包装部品巻回体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のエンボスキャリアテープは、長尺状の樹脂製の基材シートの一方の面に開口する凹形状の部品収納部が、基材シートの他方の面に膨出して設けられたエンボスキャリアテープにおいて、前記基材シートの前記他方の面には、任意の部品収納部の周縁に、前記任意の部品収納部を挟んで前記基材シートの幅方向に延びる一対の第一の溝部が形成され、前記第一の溝部は、その深さが前記基材シートの厚みより小さいことを特徴とする。
[2]本発明のエンボスキャリアテープは、前記基材シートの他方の面には、前記任意の部品収納部の周縁に、前記任意の部品収納部を挟んで前記基材シートの長さ方向に延びる一対の第二の溝部が形成され、前記第二の溝部は、その深さが前記基材シートの厚みより小さく、前記任意の部品収納部に対する前記第一の溝部と前記第二の溝部とは、離間していることを特徴とする、[1]に記載のエンボスキャリアテープである。
[3]本発明のエンボスキャリアテープは、前記第一の溝部は、その深さが、前記第二の溝部の深さと異なることを特徴とする、[2]に記載のエンボスキャリアテープである。
[4]本発明のエンボスキャリアテープは、前記第一の溝部は、その深さが、前記第二の溝部の深さよりも深いことを特徴とする、[2]又は[3]に記載のエンボスキャリアテープである。
[5]本発明のエンボスキャリアテープは、前記第一の溝部は、その長さ方向において、両端から中央に向かうに従いその深さが深くなることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載のエンボスキャリアテープである。
[6]本発明のエンボスキャリアテープは、前記第二の溝部は、その長さ方向において、両端から中央に向かうに従いその深さが深くなることを特徴とする、[2]に記載のエンボスキャリアテープである。
[7]本発明のエンボスキャリアテープは、前記部品収納部は、その開口部が略矩形とされると共に、対向する内側面同士が、内底面から前記開口部に向かうに従って離れる方向に傾斜し、前記基材シートの長さ方向に沿った内側面と前記部品収納部の深さ方向とのなす角度が、前記基材シートの幅方向に沿った内側面と前記部品収納部の深さ方向とのなす角度より大きいものとされていることを特徴とする、[2]に記載のエンボスキャリアテープである。
【0011】
[8]本発明の包装部品巻回体は、[1]〜[7]のいずれかに記載のエンボスキャリアテープの部品収納部に、部品が収納され、かつ前記部品収納部の開口部をカバーテープで封止されリールに巻き取られてなることを特徴とする。
【0012】
[9]本発明のエンボスキャリテープの製造方法は、[1]〜[7]のいずれかに記載のエンボスキャリアテープの製造方法であって、前記部品収納部の形状に対応する形成用凸部を有する第一の金型と、前記形成用凸部を受け入れる形成用凹部と前記第一の溝部の形状に対応する第一の凸条とを備える第二の金型とで前記基材シートを挟圧し、前記形成用凸部で前記基材シートを前記形成用凹部に延伸して前記部品収納部を形成すると共に、前記第一の凸条で前記第一の溝部を形成することを特徴とする。
[10]本発明のエンボスキャリテープの製造方法は、[2]に記載のエンボスキャリアテープの製造方法であって、前記部品収納部の形状に対応する形成用凸部を有する第一の金型と、前記形成用凸部を受け入れる形成用凹部と前記第一の溝部の形状に対応する第一の凸条と前記第二の溝部の形状に対応する第二の凸条とを備える第二の金型とで、前記基材シートを挟圧し、前記形成用凸部で前記基材シートを前記形成用凹部に延伸して前記部品収納部を形成すると共に、前記第一の凸条で前記第一の溝部、前記第二の凸条で前記第二の溝部を形成することを特徴とする。
[11]本発明のエンボスキャリテープの製造方法は、前記第一の凸条は、その高さが、前記第二の凸状の高さより高いことと特徴とする、[10]に記載のエンボスキャリアテープの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品収納部へ部品を容易に収納できると共に、部品収納部での部品の収納状態を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の実施形態にかかるエンボスキャリアテープの平面図である。(b)(a)におけるB1−B1断面図である。(c)(a)におけるC1−C1断面図である。
【図2】本発明の包装部品巻回体の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明のエンボスキャリアテープの製造装置の一例を示す部分断面図である。
【図4】(a)図3のエンボスキャリアテープの製造装置の第二の金型の平面図である。(b)(a)のB2−B2断面図である。(c)(a)のC2−C2断面図である。
【図5】本発明の製造方法を説明するエンボスキャリアテープの製造装置の部分断面図である。
【図6】本発明のエンボスキャリアテープの製造装置の第二の金型の一例を示す部分断面図である。
【図7】(a)実施例のエンボスキャリアテープに部品が収納された部品包装体の平面図である。(b)(a)のB3−B3断面図である。
【図8】(a)比較例に用いたエンボスキャリアテープの製造装置の部分断面図である。(b)(a)の第二の金型の平面図である。
【図9】(a)比較例のエンボスキャリアテープの平面図である。(b)(a)におけるB4−B4断面図である。(c)(a)におけるC4−C4断面図である。
【図10】(a)比較例のエンボスキャリアテープに部品が収納された部品包装体の平面図である。(b)(a)のB5−B5断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(エンボスキャリアテープ)
本発明のエンボスキャリアテープの一例について、以下に図面を参照して説明する。
図1に示すように、エンボスキャリアテープ1は、長尺状の基材シート2の幅方向の両端が側縁部3、側縁部4とされ、基材シート2の一方の面に開口する複数の部品収納部10が設けられ、基材シート2の他方の面に複数の第一の溝部20と第二の溝部30とが形成されたものである。基材シート2には、複数の部品収納部10が基材シート2の長さ方向に離間して並設され、任意の部品収納部10と、この任意の部品収納部10に隣接する部品収納部10との間は、平坦部5とされている。また、基材シート2には、部品収納部10と側縁部3との間に、複数のスプロケットホール(送り穴)6が基材シート2の長さ方向に離間して並設されている。
【0016】
部品収納部10は、基材シート2の一方の面を凹部開口部12とする凹部13が形成されたものであり、その底部が基材シート2の他方の面に膨出した凹形状とされている。凹部開口部12は、基材シート2の幅方向を長手、基材シート2の長さ方向を短手とする平面視略矩形とされている。
凹部開口部12の長手方向の周縁である凹部周縁部14は、平坦部5から凹部13の深さ方向に漸次下る曲面とされ、凹部開口部12の短手方向の周縁である凹部周縁部15は、平坦部5から凹部13の深さ方向に漸次下る曲面とされている。凹部13は、凹部周縁部14と、凹部周縁部15と、内底面16と、凹部周縁部14から内底面16に続く内側面18と、凹部周縁部15から内底面16に続く内側面19とで形成されている。対向する内側面18同士は、内底面16から凹部開口部12に向かうに従って離れる傾斜面とされ、対向する内側面19同士は、内底面16から凹部開口部12に向かうに従って離れる傾斜面とされている。
【0017】
第一の溝部20は、基材シート2の他方の面、即ち部品収納部10の底部が膨出した面の部品収納部10の外周縁11(即ち基材シート2における部品収納部10の外側面17が立ち上がる部分)に、基材シート2の幅方向に延び、部品収納部10を挟んで対向するように形成されたものである。第二の溝部30は、部品収納部10の外周縁11に、基材シート2の長さ方向に延び、部品収納部10を挟んで対向するように形成されたものである。この実施形態においては、任意の部品収納部10に対し、一対の第一の溝部20が内側面18に略平行なものとされ、一対の第二の溝部30が内側面19に略平行なものとされている。そして、任意の部品収納部10に対して形成された第一の溝部20と第二の溝部30とは、離間している。
【0018】
基材シート2は、任意の幅寸法にスリットされた長尺状のシートである。
基材シート2の材質は、樹脂製であれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ナイロン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂及びこれら2種以上を混合したポリマーアロイ等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、中でも、熱可塑性樹脂が好ましい。また、これらの樹脂やこれらの樹脂を含むポリマーアロイに、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤等の帯電防止剤、導電性カーボン、カーボンやステンレス等の導電性繊維、酸化スズや酸化チタン等の導電性金属酸化物、アニリン、ピロール、チオフェン等の有機導電性物質等の導電剤を添加して帯電防止や導電性を付与したものや、樹脂製基材の表面に帯電防止剤や導電性物質を塗布して帯電防止層や導電層を設けたもの等の導電性プラスチック基材であってもよい。基材シート2は、同一の樹脂又は異なる樹脂を2層以上積層したものであってもよい。
基材シート2の厚みは、収納する部品の大きさ等を勘案して決定でき、例えば、0.1〜1mmとされる。
【0019】
部品収納部10の深さ、即ち、凹部開口部12から内底面16までの距離は、収納する部品の大きさを勘案して決定できる。
部品収納部10の内底面16の幅、即ち、内底面16の短手方向で対向する内側面18同士の距離は、収納する部品の大きさを勘案して決定できる。
部品収納部10の内底面16の長さ、即ち、内底面16の長手方向で対向する内側面19同士の距離は、収納する部品の大きさを勘案して決定できる。
【0020】
部品収納部10は、部品収納部10の深さ方向と内側面18とのなす角度(テーパー角度)が小さい程、即ち内側面18が凹部開口部12の面に対して垂直(テーパー角度=0°)に近い程、凹部開口部12の形状精度が高まり、部品の収納状態が安定する。従って、内側面18のテーパー角度は、部品収納部10の深さ等を勘案して決定でき、例えば、部品収納部10が0402サイズの部品を収納する大きさであれば、0.5〜10°が好ましく、1〜5°がより好ましい。
部品収納部10は、部品収納部10の深さ方向と内側面19とのなす角度(テーパー角度)が小さい程、即ち内側面19が凹部開口部12の面に対して垂直に近い程、凹部開口部12の形状精度が高まり、部品の収納状態が安定する。一方、部品収納部10への部品の収納は、基材シート2の幅方向に部品を滑らせて行われることがあるため、内側面19のテーパー角度が小さすぎると、部品を収納しにくくなる。収納した部品の安定性と部品の収納のしやすさとを両立させる観点から、内側面19のテーパー角度は、0.5〜10°が好ましく、1〜5°がより好ましい。0.5°以上であれば、かかるテーパーにより部品の収納が容易となり、10°以下であれば、内側面19による部品の安定化を損なうことがない。
【0021】
内側面18のテーパー角度と内側面19のテーパー角度とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。内側面18のテーパー角度と内側面19のテーパー角度とが異なる場合、(内側面19のテーパー角度)>(内側面18のテーパー角度)とすることが好ましい。内側面19のテーパー角度を大きくすることで、部品が部品収納部10内に滑り込みやすくなり、内側面18のテーパー角度を小さくすることで、収納された部品と内側面18との遊びがなくなり部品の収納状態が安定するためである。
【0022】
部品収納部10は、凹部周縁部14の曲率半径rが小さい程、凹部開口部12の形状精度が高まると共に、内側面18のテーパー角度が小さくなって部品の収納状態が安定する。凹部周縁部14の曲率半径rは、凹部開口部12の面積等を勘案して決定でき、例えば、部品収納部10が0402サイズの部品を収納する大きさであれば、0.30mm未満が好ましく、0.20mm未満がより好ましく、0.12mm未満がさらに好ましい。0.30mm未満であれば、収納した部品の安定化が図れる。
部品収納部10は、凹部周縁部14の幅、即ち平面視における内側面18と平坦部5との距離(曲面幅)R1が短い程、凹部開口部12の形状精度が高まると共に、内側面18のテーパー角度が小さくなって部品の収納状態が安定する。従って、曲面幅R1は、凹部開口部12の面積等を勘案して決定でき、例えば、部品収納部10が0402サイズの部品を収納する大きさであれば、0.30mm未満が好ましく、0.20mm未満がより好ましく、0.12mm未満がさらに好ましい。
【0023】
部品収納部10は、凹部周縁部15の曲率半径rが小さい程、凹部開口部12の形状精度が高まると共に、内側面19のテーパー角度が小さくなって部品の収納状態が安定する。凹部周縁部15の曲率半径rは、凹部開口部12の面積等を勘案して決定でき、例えば、部品収納部10が0402サイズの部品を収納する大きさであれば、0.05以上30mm未満が好ましく、0.10以上0.30mm未満がより好ましい。0.05mm以上であれば、部品の収納が容易であり、0.30mm未満であれば、収納した部品の安定化が図れる。
部品収納部10は、凹部周縁部15の幅、即ち平面視における内側面19と平坦部5との距離(曲面幅)R2が短い程、凹部開口部12の形状精度が高まると共に、内側面19のテーパー角度が小さくなって部品の収納状態が安定する。一方、曲面幅R2が小さすぎると、部品を部品収納部10に収納しにくくなる。従って、曲面幅R2は、凹部開口部12の面積等を勘案して決定でき、例えば、部品収納部10が0402サイズの部品を収納する大きさであれば、0.05mm以上30mm未満が好ましく、0.10mm以上0.30mm未満がより好ましい。
【0024】
凹部周縁部14の曲率半径rと凹部周縁部15の曲率半径rとは、同じであっても異なっていてもよい。凹部周縁部14の曲率半径rと凹部周縁部15の曲率半径rとが異なる場合、(凹部周縁部14の曲率半径r)<(凹部周縁部15の曲率半径r)が好ましい。通常、エンボスキャリアテープ1への部品の収納は、基材シート2の幅方向に部品を滑らせて行われる。凹部周縁部15の曲率半径rを大きくすることで、部品が部品収納部10に滑り込みやすくなる。
曲面幅R1と曲面幅R2とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。曲面幅R1と曲面幅R2とが異なる場合、R2>R1であることが好ましい。曲面幅R2を大きくすることで、部品が部品収納部10内に滑り込みやすくなり、曲面幅R1を小さくすることで、収納された部品と部品収納部10内との遊びがなくなり部品の収納状態が安定する。
【0025】
第一の溝部20の長さL1は、内底面16の大きさに応じて決定でき、例えば、内底面16の長手方向の長さに対し、10%以上100%未満が好ましく、50%以上100%未満がより好ましい。10%以上であれば、内側面18のテーパー角度を十分に小さくでき、100%未満であれば、内側面19の形成に干渉せず、内側面19のテーパー角度を任意のものに制御できるためである。
【0026】
第一の溝部20の深さD1は、基材シート2の厚みより小さければよく、例えば、基材シート2の厚みの10〜90%が好ましく40〜80%がより好ましい。深さD1が基材シート2の厚みより小さければ、平坦部5の平滑性が保たれ、部品収納部10への部品の収納が容易である。さらに、深さD1が基材シートの厚みの10%以上であれば、第一の溝部20を形成した効果が得られやすく、90%以下であれば、基材シート2が破断するのを防止できる。
第一の溝部20の幅W1は、第一の溝部20の深さD1、基材シート2の厚みや、部品収納部10同士の間隔等を勘案して決定でき、例えば、第一の溝部20の深さD1の10〜200%が好ましく、40〜100%がより好ましい。10%未満であると、後述する第二の金型に形成されたリブの強度が不十分となり、成形時にリブが変形するおそれがある。200%超であると、隣接する部品収納部10同士の間隔を広くすることとなり、エンボスキャリアテープ1における単位長さ当たりの部品収納部10の数が少なくなる。
【0027】
第二の溝部30の長さL2は、内底面16の大きさに応じて決定でき、例えば、内底面16の短手方向の長さに対し、10%以上100%未満が好ましく、50以上100%未満がより好ましい。10%以上であれば、内側面19のテーパー角度を十分に小さくでき、100%未満であれば、内側面18の形成に干渉せず、内側面18のテーパー角度を任意のものに制御できるためである。
第二の溝部30の幅W2は、第一の溝部20の幅W1と同様であり、第二の溝部30の深さD2は、第一の溝部20の深さD1と同様である。
第一の溝部20の深さD1と第二の深さD2とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、部品収納部10において、内側面18のテーパー角度及び曲面幅R1をできる限り小さくし、かつ、内側面19のテーパー角度及び曲面幅R2を適度に大きくするためには、D1>D2が好ましく、深さD2が深さD1の50%以下であることがより好ましい。
なお、第一の溝部20の幅W1と第二の幅W2とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
(包装部品巻回体)
本発明の包装部品巻回体は、エンボスキャリアテープの部品収納部に部品が収納され、凹部開口部がカバーテープで封止された部品包装体が、リールに巻き取られたものである。本発明の包装部品巻回体の一例について、図1〜2を参照して説明する。
図2に示す包装部品巻回体50は、部品60を部品収納部10に収納したエンボスキャリアテープ1がカバーテープ54で封止されて部品包装体51とされ、この部品包装体51がリール52に巻き取られて巻回体とされたものである。
【0029】
部品収納部10に収納される部品60としては、例えば、セラミックコンデンサ、抵抗、ICチップ、インダクタ、LED等の電子部品や、シールド部材、コネクタ等の電気部品等が挙げられる。
【0030】
カバーテープ54は、従来公知のものを用いることができ、基材シート2と同様の材質のものが挙げられる。
【0031】
凹部開口部12のカバーテープ54による封止方法は、基材シート2の材質とカバーテープ54の材質とを勘案して決定でき、例えば、接着剤により、エンボスキャリアテープ1とカバーテープ54とを基材シート2の長さ方向にわたって、その幅方向の両端を接着剤で接着したり、熱融着又は超音波融着する方法が挙げられる。
【0032】
(製造方法)
本発明のエンボスキャリアテープの製造方法は、第一の金型と第二の金型とで、基材シートを挟圧し、部品収納部、第一の溝部及び第二の溝部を形成するものである。
【0033】
<製造装置>
本発明のエンボスキャリアテープの製造に用いるエンボスキャリアテープの製造装置(以下、単に製造装置ということがある)について、以下に図面を参照して説明する。
図3は、第一の金型と第二の金型とを備える製造装置の部分断面図であり、図4(a)は、第二の金型の平面図、図4(b)、(c)は、第二の金型の部分断面図である。
図3に示すように、製造装置100は、第一の金型110と第二の金型120とを備え、第一の金型110の挟圧面111と第二の金型120の挟圧面121とが対向配置されたものである。
【0034】
第一の金型110は、パンチ孔116が形成されたストリッパー112と、出し入れ自在にパンチ孔116に備えられたドローパンチ114とを備えるものであり、ドローパンチ114は、そのパンチ端面117が、部品収納部10の内底面16(図1)に対応した形状の略四角柱状とされている。
【0035】
第二の金型120は、ダイス122を備え、ダイス122には、パンチ孔116から突出したドローパンチ114を受け入れるパンチ受入孔126が形成されている。挟圧面121に形成されたパンチ受入孔126の開口部(受入孔開口部)127は、部品収納部10の外周縁11の輪郭形状に対応した形状とされ、パンチ受入孔126は、その内周面とドローパンチ114の側面とが任意の距離で離間するものとされている。図4に示すように、ダイス122の挟圧面121上には、パンチ受入孔126の受入孔開口部127の周縁に、受入孔開口部127の長手方向に延びる第一のリブ124と、受入孔開口部127の短手方向に延びる第二のリブ134とが立設されている。
第一のリブ124は、挟圧面121に対し略垂直に立設されたものであり、リブ端面125が挟圧面121と略平行なものとされている。第一のリブ124は、長さl1が第一の溝部20の長さL1(図1)に対応するものとされ、高さh1が第一の溝部20の深さD1(図1)に対応するものとされ、幅w1が第一の溝部20の幅W1(図1)と対応するものとされている。第二のリブ134は、挟圧面121に対し略垂直に立設されたものであり、リブ端面135が挟圧面121と略平行なものとされている。第二のリブ134は、長さl2が第二の溝部30の長さL2(図1)に対応するものとされ、高さh2が第二の溝部30の深さD2(図1)に対応するものとされ、幅w2が第二の溝部30の幅W2(図1)と対応するものとされている。
従って、第一のリブ124の高さh1と第二のリブ134の高さh2とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第一のリブ124の高さh1と第二のリブ134の高さh2とが異なる場合、h1>h2が好ましく、高さh2が高さh1の50%以下であることがより好ましい。このような高さとすることで、部品収納部10への部品の収納がより容易となると共に、部品の収納状態をより安定化できる。
【0036】
「部品収納部の形状に対応する形成用凸部」は、ドローパンチ114であり、「形成用凸部を受け入れる形成用凹部」は、パンチ受入孔126であり、「第一の溝部の形状に対応する第一の凸条」は、第一のリブ124であり、「第二の溝部の形状に対応する第二の凸条」は、第二のリブ134である。
【0037】
<エンボスキャリアテープの製造方法>
本発明の製造方法について、図1、3、5を用いて説明する。図5は、第一の金型110と第二の金型120とで基材シート2を挟圧した状態を示す製造装置の部分断面図である。
まず、挟圧面111と挟圧面121とが対向離間した状態(図3)で第一の金型110と第二の金型120とを配置する。挟圧面111と挟圧面121との間に、任意の温度に加熱され軟化した基材シート2を送り込む。
挟圧面111と挟圧面121との間に基材シート2が送り込まれた後、第一の金型110と第二の金型120とで基材シート2を挟圧する。この際、挟圧面121に形成された第一のリブ124が基材シート2を圧縮することで第一の溝部20が形成され、第二のリブ134が基材シート2を圧縮することで第二の溝部30が形成される。
次いで、ドローパンチ114をパンチ受入孔126に挿入するようにパンチ孔116から突出させる。突出されたドローパンチ114は、そのパンチ端面117を基材シート2に押し当てた状態で、基材シート2をパンチ受入孔126に押し込む。押し込まれた基材シート2は、パンチ受入孔126内で延伸されて、部品収納部10が形成されて、エンボスキャリアテープ1となる。この際、基材シート2は、受入孔開口部127周縁に形成された第一のリブ124及び第二のリブ134で強固に挟持されているため、パンチ受入孔126に押し込まれる際に、基材シート2がパンチ受入孔126に向かってずれたりせず、十分に延伸される。この結果、部品収納部10は、凹部周縁部14の曲率半径r及び曲面幅R1(図1)、並びに凹部周縁部15の曲率半径r及び曲面幅R2(図1)が小さく、かつ内側面18、19(図1)のテーパー角度が小さいものとなり、凹部開口部12の形状精度が高いものとなる。加えて、凹部開口部12の周縁角部、即ち凹部周縁部14と凹部周縁部15との境界部分は、凹部周縁部14及び凹部周縁部15に比べて、曲率半径rが大きくなる。
【0038】
(使用方法)
次に、本発明のエンボスキャリアテープの使用方法の一例について、図1〜2を用いて説明する。
まず、図1に示すように、エンボスキャリアテープ1を凹部開口部12が鉛直方向上方となるように配置し、矢印Fの方向に搬送させつつ、部品収納部10に部品を収納する。エンボスキャリアテープ1には部品収納部10に対して第一の溝部20と第二の溝部30とが離間して形成されているため、内側面18に対する第二の溝部30の干渉、内側面19に対する第一の溝部20の干渉がなく、内側面18及び内側面19が高い精度で任意のテーパー角とされている。さらに、部品収納部10に対する第一の溝部20と第二の溝部30とが離間しているため、凹部周縁部14と凹部周縁部15との境界部分が比較的大きな曲率半径rとされ、部品60の部品収納部10への収納が、容易かつ安定的になされる。
【0039】
部品収納部10に部品を収納した後、カバーテープ54で凹部開口部12を封止して部品包装体51としつつ、リール52に巻き取り、図2に示す包装部品巻回体50とする。
次いで、図2に示すように、リール52から、部品包装体51を繰り出し、カバーテープ54を剥離しながら部品60の実装機に搬送する。この際、部品収納部10は、凹部開口部12の形状精度が高く、内側面18のテーパー角度及び内側面19のテーパー角度が小さいものとされているため、部品60は、部品収納部10内で収納位置がずれたり、部品収納部10から飛び出したりすることなく、安定的に実装機に搬送される。
そして、部品60は、任意の収納状態が維持されたまま実装機に供給され、部品収納部10から取り出されて電子製品等の製造に供される。この際、部品60の収納状態が安定しているため、実装機は、高い実装精度、高い実装率で部品60を実装できる。
【0040】
本発明のエンボスキャリアテープは、部品収納部の外周縁に、基材シートの幅方向に延びると共に、部品収納部を挟んで位置する一対の第一の溝部が形成されているため、部品収納部は、基材シートの幅方向に沿った内側面のテーパー角度、及びこの内側面に続く凹部周縁部の曲率半径rが小さいものとされている。そして、部品収納部に収納された部品は、基材シートの幅方向の内側面により挟持されるため、収納位置がずれたり、飛び出したりすることなく、安定した収納状態で部品収納部に収納される。
加えて、エンボスキャリアテープは、基材シートに圧縮された第一の溝部が形成されているため、エンボスキャリアテープを長さ方向に向かって搬送させた際にも、第一の溝部の剛性により部品収納部の変形が抑制され、部品の収納が容易であると共に、部品の安定した収納状態を維持できる。
さらに、第一の溝部は、凹部開口部が形成された面の反対側の面に形成されているため、部品収納部に部品を収納する際の支障とならない。
【0041】
本実施形態のエンボスキャリアテープは、第二の溝部が形成されているため、凹部開口部の形状精度がより高くなり、部品の収納状態をより安定化できる。
加えて、任意の部品収納部に対する第一の溝部と第二の溝部とが離間して形成されているため、凹部開口部の周縁角部の曲率半径rが比較的大きくなり、部品収納部への部品の収納がより容易となる
【0042】
本発明の包装部品巻回体によれば、凹部開口部の形状精度が高く、かつ対向する内側面のテーパー角度が小さい部品収納部に部品が収納されているため、搬送時においても部品の収納状態が良好であり、マウント時の実装精度や実装率の向上が図れる。
【0043】
本発明の製造方法によれば、エンボスキャリアテープの第一の溝部に対応する第一のリブを備える第二の金型を用いるため、容易に第一の溝部を備える本発明のエンボスキャリアテープを精度高く製造できる。加えて、第二の金型が第二の溝部に対応する第二のリブを備えることで、容易に第二の溝部を備える本発明のエンボスキャリアテープを製造できる。
【0044】
上述の実施形態では、第二の溝部30がその長さ方向において、一端から他端にかけて同じ深さとされているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第二の溝部30は、その長さ方向において、両端から中央に向かうに従ってその深さが深くなるものとされていてもよい。このような第二の溝部を形成することで、部品収納部は、第二の溝部の最深部に対応する内側面のテーパー角度及びこの内側面に続く凹部周縁部の曲率半径rを小さくし、第二の溝部の最浅部に対応する内側面のテーパー角度及びこの内側面に続く凹部周縁部の曲率半径rを大きくすることができる。このような部品収納部を設けることで、安定した部品の収納状態を維持しつつ、部品の収納のさらなる円滑化が図れる。
かかる第二の溝部を形成するための製造装置としては、図6に示す第二の金型220を備えるものが挙げられる。第二の金型220は、第二のリブ234がその長さ方向の両端から中央に向かうに従って、高さが高くなるものである。即ち、第二のリブ234は、端面235が、高さ方向に膨出する曲面とされたものである。
また、あるいは、図6に示す第二のリブ234は、両端から中央に向かって直線的に高くなるものであってもよいし、段階的に高くなるものであってもよい。これらの形状は、所望する第二の溝部の形状に従って選択できる。
なお、第一のリブ124を第二のリブ234と同様の形状としてもよい。第一のリブ124を第二のリブ234と同様の形状にすることで、第一の溝部20をその長さ方向において、両端から中央に向かうに従ってその深さが深くなるものできる。
【0045】
また、例えば、第二の金型120は、リブ端面125が、第一のリブ124の長さ方向に直行する断面において、曲面とされたものであってもよい。第二のリブ134についても第一のリブ124と同様に、リブ端面135が第二のリブ134の長さ方向に直交する断面が曲面とされたものであってもよい。
【0046】
上述の実施形態では、エンボスキャリアテープ1には、第一の溝部20と第二の溝部30とが形成されているが、本発明はこれに限定されず、第二の溝部30が形成されていなくてもよい。第一の溝部20が形成されていれば、部品収納部10に収納した部品60は、安定した収納状態に維持される。
このようなエンボスキャリアテープは、第二の金型120を、第一のリブ124を備え、第二のリブ134を備えない第二の金型とすることで製造できる。
【0047】
上述の実施形態では、部品収納部10は、凹部開口部12が平面視略矩形の有底四角筒状とされているが、部品収納部の形状は収納する部品に応じて決定でき、例えば、凹部開口部が平面視円形又は楕円形とされた有底略円筒状であってもよく、凹部開口部が平面視三角形、五角形、六角形等の有底多角筒状であってもよい。
加えて、上述の実施形態では、ドローパンチ114が略四角柱状とされているが、本発明はこれに限定されず、部品収納部10の形状に応じてドローパンチ114の形状を決定できる。
【0048】
上述の実施形態では、第一の金型110と第二の金型120とを用いたプレス成形によりエンボスキャリアテープ1を製造しているが、エンボスキャリアテープ1の製造方法はこれに限定されず、例えば、プレス成形の他、圧空成形、真空成形、あるいはこれらを組みあわせた成形方法でもよい。
【実施例】
【0049】
以下に本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
図3の製造装置100と同様の金型を用い、厚み0.2mmのポリスチレン系樹脂シートを図1に示すエンボスキャリアテープ1と同様のエンボスキャリアテープとした。第二の金型は、図4に示すものと同様とし、下記の仕様とした。
<リブ仕様>
第一のリブの長さl1:0.27mm
第一のリブの幅w1:0.1mm
第一のリブの高さh1:0.1mm
第二のリブの長さl2:0.13mm
第二のリブの幅w2:0.1mm
第二のリブの高さh2:0.1mm
ドローパンチの端面形状:矩形、長手=0.4mm、短手=0.2mm
受入孔開口部の形状:矩形、長手=0.5mm、短手=0.3
【0051】
このエンボスキャリテープは、図1に示すエンボスキャリアテープ1と同様の形態であり、その部品収納部が0402サイズのセラミックコンデンサ用の大きさ、即ち部品収納部の内底面が、長手0.4mm、短手0.2mmとされたものである。
【0052】
このエンボスキャリアテープに0402サイズのセラミックコンデンサ160を収納し、収納状態、収納性、回転抑制について評価し、その結果を表1に示す。
【0053】
<収納性の評価>
部品の収納性の評価につき、図1を用いて説明する。20万個のセラミックコンデンサ160を部品収納部10に順次収納し、その収納状態により評価した。具体的には、エンボスキャリアテープを矢印Fの方向に搬送させながら、基材シート2の側縁部3側からセラミックコンデンサ160を滑らせて収納した際、部品収納部10にセラミックコンデンサ160を正しく収納できた割合が99.99%以上のものを「○」、正しく収納できた割合が99%以上99.99%未満のものを「△」、正しく収納できた割合が99%未満のものを「×」とした。
【0054】
<収納状態の評価>
収納状態の評価方法について、図7を用いて説明する。
図7は、エンボスキャリアテープ1にセラミックコンデンサ160が収納された状態を説明するものである。
「<収納性の評価>」で部品収納部にセラミックコンデンサ160が収納されたエンボスキャリアテープを、凹部開口部12が鉛直方向上方となるように静置し、収納されたセラミックコンデンサ160の水平方向傾き及び鉛直方向傾きを下記の方法により測定した。収納されたセラミックコンデンサ160の内、無作為の100個について、水平方向傾きの測定及び鉛直方向傾きの測定を行い、その最大値をもって収納安定性を評価した。
水平方向傾きは、図7(a)に示すように、凹部開口部12の長手方向で凹部開口部12の中心を通る凹部水平線Q1と、セラミックコンデンサ160の長手方向でセラミックコンデンサ160の中心を通る部品水平線P1とのなす角度θ1である。
鉛直方向傾きは、図7(b)に示すように、部品収納部10の深さ方向で凹部13の中心を通る凹部鉛直線Q2と、セラミックコンデンサ160の高さ方向でセラミックコンデンサ160の中心を通る部品鉛直線P2とのなす角度θ2である。
測定した水平方向傾き、鉛直方向傾きを下記評価基準に分類して評価した。
【0055】
≪評価基準≫
10°未満:○(搬送中の部品の位置ずれ又は飛び出しの懸念がない)
10°以上:×(搬送中の部品の位置ずれ又は飛び出しの懸念がある)
【0056】
測定の結果、本実施例で得られたエンボスキャリアテープ1における水平方向傾きは9°で「○」であり、鉛直方向傾きは4.0°で「○」であった。
【0057】
<回転抑制の評価>
エンボスキャリアテープの部品収納部にセラミックコンデンサを収納した後、カバーテープで凹部開口部を閉止して部品包装体とした後、無作為の100個のセラミックコンデンサについて、JIS C0806−3の「図2の見取り図A」に準じて部品の傾きを測定した。部品の傾きの測定結果の最大値を下記の判定基準に分類し、その結果を表1に示す。
10°以下:○
10°超20度未満:△
20°以上:×
【0058】
(比較例1)
図8に示す製造装置600を用い、厚み0.2mmのポリスチレン系樹脂シートを図9に示すエンボスキャリアテープ700と同様のエンボスキャリアテープとした。
図8の製造装置600について、説明する。なお、図8において、図3の製造装置100と同一の構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、製造装置600は、第一の金型110と第二の金型620とを備え、第一の金型110の挟圧面111と第二の金型620の挟圧面621とが対向配置されたものである。
第二の金型620は、ダイス622を備え、ダイス622には、ドローパンチ114を受け入れるパンチ受入孔126が形成されている。そして、挟圧面621にはリブが形成されておらず、挟圧面621は平坦面とされている。
この製造装置600は、ドローパンチのパンチ端面117が長手0.4mm、短手0.2mmとされ、受入孔開口部が長手0.5mm、短手0.3mmとされたものである。
【0059】
図9に、本比較例で得られたエンボスキャリアテープ700を示す。
図9に示すように、エンボスキャリアテープ700は、基材シート2の一方の面に開口する部品収納部710が形成され、部品収納部710の外周縁711に溝部が形成されていないものである。部品収納部710は、基材シート2の一方の面を凹部開口部712とする凹部713が形成されたものであり、その底部が基材シート2の他方の面に膨出した凹形状とされている。凹部開口部712は平面視略矩形とされ、凹部713は、その周縁の凹部周縁部714が、平坦部5から凹部713の深さ方向に漸次下る曲面とされている。凹部713は、凹部周縁部714と、内底面716と、凹部周縁部714から内底面716に続く内側面718とで形成され、対向する内側面718同士が、内底面716から凹部周縁部714に向かうに従って広がる形状とされている。
【0060】
このエンボスキャリアテープに0402サイズのセラミックコンデンサ160を収納し、収納状態、収納性、回転抑制について評価し、その結果を表1に示す。
【0061】
<収納状態の評価>
収納状態の評価方法は、エンボスキャリアテープを本比較例のエンボスキャリアテープとした以外は実施例1と同様にして、以下のように行った。
図10は、エンボスキャリアテープ700にセラミックコンデンサ160が収納された状態を説明するものである。
収納状態は、開口部712が鉛直方向上方となるように、セラミックコンデンサ160が収納されたエンボスキャリアテープ700を静置し、収納されたセラミックコンデンサ160の水平方向傾き及び鉛直方向傾きにより評価した。
水平方向傾きは、図10(a)に示すように、凹部開口部712の長手方向で凹部開口部713の中心を通る凹部水平線Q3と、セラミックコンデンサ160の平面視長手方向でセラミックコンデンサ160の中心を通る部品水平線P1とのなす角度θ3である。
鉛直方向傾きは、図10(b)に示すように、部品収納部710の深さ方向で凹部713の中心を通る凹部鉛直線Q4と、セラミックコンデンサ160の高さ方向でセラミックコンデンサ160の中心を通る部品鉛直線P2とのなす角度θ4である。
【0062】
実施例1と同様にして、水平方向傾きと鉛直方向傾きとを測定し、測定した水平方向傾きの最大値、鉛直方向傾きの最大値を評価基準に分類して評価した。
【0063】
(実施例2〜3)
第二の金型における第一のリブの高さ及び第二のリブの高さを表1に記載の仕様とした以外は、実施例1と同様にしてエンボスキャリアテープを作製した。なお、表中、リブの高さの項目で「0.00」は、リブを形成しなかったことを意味する。
得られたエンボスキャリアテープについて、実施例1と同様にして、収納状態、収納性、回転抑制を評価し、その評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
第二のリブを図6に示す第二のリブ234のように、リブ端面が第二のリブの高さ方向に膨出した曲面とされたものとした以外は、実施例1と同様にしてエンボスキャリアテープを作製した。この第二のリブは、リブ端面の曲率半径r=0.7mm、長さ方向中央の高さが0.1mm、長さ方向の両端の高さが0mmとされたものである。
得られたエンボスキャリアテープについて、実施例1と同様にして、収納状態、収納性、回転抑制を評価し、その評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
第二の金型のパンチ受入孔の開口部の周縁に該開口部を周回するリブ(高さ0.1mm、幅0.1mm)を形成した以外は、比較例1と同様の製造装置を用いてエンボスキャリアテープを作製した。このエンボスキャリアテープは、凹部開口部と反対側の面に、部品収納部の外周縁に該部品収納部を周回する溝部が形成されたものである。得られたエンボスキャリテープについて、実施例1と同様にして、収納状態、収納性、回転抑制を評価し、その評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1〜4のエンボスキャリアテープは、いずれも収納性が「△」又は「○」であり、収納状態及び回転抑制の評価が「○」であった。中でも、第一の溝部の深さより第二の溝部の深さを浅くした実施例2〜3、及び第二の溝部を長さ方向の両端から中央に向かうに従って、その深さが深くなるようにした実施例4には、収納性の向上が見られた。
一方、第一の溝部及び第二の溝部を形成しなかった比較例1は、収納性が「○」であったものの、水平方向傾きが「×」であり、部品回転抑制が「△」であった。また、第一の溝部と第二の溝部とが離間していない比較例2のエンボスキャリアテープは、収納性が著しく劣るものであった。
【符号の説明】
【0068】
1 エンボスキャリテープ
2 基材シート
10 部品収納部
11 外周縁
12 凹部開口部
14、15 凹部周縁面
16 内底面
18、19 内側面
20 第一の溝部
30 第二の溝部
50 包装部品巻回体
54 カバーテープ
60 部品
110 第一の金型
114 ドローパンチ
120、220 第二の金型
124 第一のリブ
134、234 第二のリブ
126 パンチ受入孔
160 セラミックコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の樹脂製の基材シートの一方の面に開口する凹形状の部品収納部が、基材シートの他方の面に膨出して設けられたエンボスキャリアテープにおいて、
前記基材シートの前記他方の面には、任意の部品収納部の周縁に、前記任意の部品収納部を挟んで前記基材シートの幅方向に延びる一対の第一の溝部が形成され、
前記第一の溝部は、その深さが前記基材シートの厚みより小さいことを特徴とするエンボスキャリアテープ。
【請求項2】
前記基材シートの他方の面には、前記任意の部品収納部の周縁に、前記任意の部品収納部を挟んで前記基材シートの長さ方向に延びる一対の第二の溝部が形成され、
前記第二の溝部は、その深さが前記基材シートの厚みより小さく、
前記任意の部品収納部に対する前記第一の溝部と前記第二の溝部とは、離間していることを特徴とする、請求項1に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項3】
前記第一の溝部は、その深さが、前記第二の溝部の深さと異なることを特徴とする、請求項2に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項4】
前記第一の溝部は、その深さが、前記第二の溝部の深さよりも深いことを特徴とする、請求項2又は3に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項5】
前記第一の溝部は、その長さ方向において、両端から中央に向かうに従いその深さが深くなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項6】
前記第二の溝部は、その長さ方向において、両端から中央に向かうに従いその深さが深くなることを特徴とする、請求項2に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項7】
前記部品収納部は、その開口部が略矩形とされると共に、対向する内側面同士が、内底面から前記開口部に向かうに従って離れる方向に傾斜し、前記基材シートの長さ方向に沿った内側面と前記部品収納部の深さ方向とのなす角度が、前記基材シートの幅方向に沿った内側面と前記部品収納部の深さ方向とのなす角度より大きいものとされていることを特徴とする、請求項2に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンボスキャリアテープの部品収納部に、部品が収納され、かつ前記部品収納部の開口部をカバーテープで封止されリールに巻き取られてなることを特徴とする包装部品巻回体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンボスキャリアテープの製造方法であって、
前記部品収納部の形状に対応する形成用凸部を有する第一の金型と、前記形成用凸部を受け入れる形成用凹部と前記第一の溝部の形状に対応する第一の凸条とを備える第二の金型とで前記基材シートを挟圧し、前記形成用凸部で前記基材シートを前記形成用凹部に延伸して前記部品収納部を形成すると共に、前記第一の凸条で前記第一の溝部を形成することを特徴とする、エンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載のエンボスキャリアテープの製造方法であって、
前記部品収納部の形状に対応する形成用凸部を有する第一の金型と、前記形成用凸部を受け入れる形成用凹部と前記第一の溝部の形状に対応する第一の凸条と前記第二の溝部の形状に対応する第二の凸条とを備える第二の金型とで、前記基材シートを挟圧し、前記形成用凸部で前記基材シートを前記形成用凹部に延伸して前記部品収納部を形成すると共に、前記第一の凸条で前記第一の溝部、前記第二の凸条で前記第二の溝部を形成することを特徴とする、エンボスキャリアテープの製造方法。
【請求項11】
前記第一の凸条は、その高さが、前記第二の凸状の高さより高いことを特徴とする、請求項10に記載のエンボスキャリアテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−225257(P2011−225257A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97806(P2010−97806)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】