説明

オイルダンパ

【課題】鍛造用防振装置等に空気バネとともに組み込まれ、ピストン下降時の減衰力が小さく、ピストンの上方への戻り時に大きな減衰力を発生するオイルダンパを実現し提供する。
【解決手段】オイルダンパ41は、シリンダ本体1と、シリンダ本体1内で下端側に作動油を収納し第1油室51を形成するピストン3と、ピストン3に連結され下降時の衝撃力が大きい上下動部材75が連結され、ピストン3を上下往復駆動するピストンロッド2と、ピストン3の上端面とシリンダ蓋部5との間で作動油を収納する第2油室52と、シリンダ蓋部5側の作動油を収納する第3油室53とに区画する隔壁板4と、ピストン3に貫通配置に設けた第1油室51から第2油室52へのみ作動油を流通させる板弁式のチェック弁9付きのピストンロッド内流路2bと、隔壁板4に設けた第2油室52から第3油室53へのみ作動油を流通させるオリフィス4a及び流路4bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルダンパに関し、詳しくは、例えば、空気ばねで支承されている鍛造用防振装置等に使用して好適なオイルダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鍛造防振装置等の支承は空気ばねとオイルダンパで構成されており、鍛造機のハンマーの下降により生じる衝撃速度は極めて早く下降時はオイルダンパの減衰力を小さくして空気ばねで衝撃を受け止め、下降後は空気ばねの反発により上方への戻り時はオイルダンパの減衰力を大きくして鍛造機の揺れを素早く減衰し振動が発生するのを防止する。
【0003】
しかし、鍛造機のハンマーの下降による速度が早く、オイルダンパ内部の作動液の急激な流れによってオイルダンパ内部の機能部品の耐久性が損なわれる。
【0004】
このような構造を有する従来のオイルダンパとしては特許文献1に開示されたものが知られている。
【0005】
特許文献1に使用しているオイルダンパは、鉄道用のオイルダンパと同じ構造をしていて、ハンマーの下降によりオイルダンパが圧縮される時には減衰力を小さくするためにピストンロッドの先端に着いているピストン内部にチェックバルブを設けて油を通過させる構造になっているが、ピストンの内部に組み込まれているためにチェックバルブのサイズを大きくできず、早い流速を逃がし切れずにチェックバルブが破損してしまうという問題を包含している。
【0006】
チェックバルブが破損してしまうと、ハンマー下降後の空気バネの反発を抑え込む上方への戻り時に必要なオイルダンパの減衰力の発生も不能となり、鍛造機の揺れに対する減衰も悪くなり鍛造用防振装置等としての機能が発揮されないこととなる。
【0007】
また、鍛造用防振装置等で使われるオイルダンパの使用環境においては、オイルダンパが発生する減衰力は熱に変換され、その放熱条件も良好でないことから、放熱性、耐久性のある構造が必要とされるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】登録実用新案第3016168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、鍛造用防振装置等に空気バネとともに組み込まれるような使用態様において、ピストン下降時の減衰力が小さく、ピストンの上方への戻り時に大きな減衰力を発生して空気バネの反発力を抑え込むことができ、しかも、全体の構造も簡略で放熱性、耐久性も有り例えば鍛造防振装置用として好適に使用できるようなオイルダンパが存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のオイルダンパは、単筒式で下端部が下部取り付け機構部により閉塞され、上端部がシリンダ蓋部により閉塞されるとともに、下部取り付け機構部を介して固定配置されるシリンダ本体と、前記シリンダ本体内で下端側に作動油を収納する第1油室を形成する状態でピストン下端面を臨ませたピストンと、前記ピストンと一体構成で、かつ、下端部を前記第1油室に臨ませるとともに、前記シリンダ本体内からシリンダ蓋部を貫通して上方に突設され、突出端側に下降時の衝撃力が大きい上下動部材が連結されて前記ピストンをシリンダ本体内で上下方向に往復駆動する片側ロッド式のピストンロッドと、前記シリンダ本体内において、前記ピストンの上端面と前記シリンダ蓋部との間をピストン側の作動油を収納する第2油室と、シリンダ蓋部側の作動油を収納する第3油室とに区画する隔壁板と、前記ピストンに貫通配置に設けた第1油室から第2油室へのみ作動油を流通させる板弁付きの流路と、前記隔壁板に設けた第2油室から第3油室へのみ作動油を流通させるオリフィス式流路と、を有し、上下動部材の下降時には、ピストンの押し込みに伴う第1油室内の油圧の上昇に応じて板弁付きの流路により第1油室から第2油室に作動油を流し込むとともに、第2油室におけるピストンの押し込みに伴うピストンロッドの押し込み体積分の少量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン押し込み時の減衰力を小さくし、上下動部材の上昇時には、ピストンの上昇に伴う第2油室内の容積分の大量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン上昇時の減衰力を大きくするように構成したこと、を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、ピストンには板弁式のチェック板を設け、隔壁板にはオリフィス式流路を設けた簡略構成の基に、上下動部材の下降、上昇に応じてシリンダ本体内において早い速度で移動する作動油の流れに対応した各流路の開閉動作を実現でき、かつ、上下動部材の下降に伴うピストン押し込み時の減衰力が小さく、上下動部材の上方への戻り時に大きな減衰力を発生することから、鍛造用防振装置等に空気バネとともに組み込むような使用態様に好適なオイルダンパを実現し提供することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、鍛造用防振装置等に空気バネとともに組み込まれるような使用態様において、ピストンの下降時の減衰力が小さく、ピストンの上方への戻り時に大きな減衰力を発生して空気バネの反発力を抑え込むことができ、鍛造用ハンマーの上昇時の鍛造機の振動を的確に防止することができ、更に、ピストンには板弁式のチェック板を設け、隔壁板にはオリフィス式流路を設け、ピストンロッドには、ピストンロッド内流路と、板弁式のチェック弁とからなる作動油還流流路を設けた簡略構成の基に、早い速度で移動する作動油の流れに対応した各流路の開閉動作を実現でき、耐久性、更には放熱性にも優れたオイルダンパを実現し提供することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様な効果を奏することに加えて、ピストン本体に隔壁板に設けたオリフィス流路の作動油の流量を調整するニードルバルブを付加したことにより、オイルダンパ自体の減衰力を調整することもできるオイルダンパを実現し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るオイルダンパの概略断面図である。
【図2】図2は本実施例1に係るオイルダンパのピストン下降動作時における作動油の流れを示す説明図である。
【図3】図3は本実施例1に係るオイルダンパのピストン上昇動作時における作動油の流れを示す説明図である。
【図4】図は本実施例1に係るオイルダンパが組み込まれる鍛圧防振装置の概略構成図である。
【図5】図5は本実施例1に係るオイルダンパの鍛圧防振装置への組み込み状態を示す部分拡大断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例2に係るオイルダンパの概略断面図である。である。
【図7】図7は本発明の実施例1、2に係るオイルダンパのピストン速度と減衰力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、鍛造用防振装置等に空気バネとともに組み込まれるような使用態様において、ピストン下降時の減衰力が小さく、ピストンの上方への戻り時に大きな減衰力を発生して空気バネの反発力を抑え込むことができ、しかも、全体の構造も簡略で放熱性、耐久性も有るオイルダンパを実現し提供するという目的を、単筒式で下端部が下部取り付け機構部により閉塞され、上端部がシリンダ蓋部により閉塞されるとともに、下部取り付け機構部を介して固定配置されるシリンダ本体と、前記シリンダ本体内で下端側に作動油を収納する第1油室を形成する状態でピストン下端面を臨ませたピストンと、前記ピストンと一体構成で、かつ、下端部を前記第1油室に臨ませるとともに、前記シリンダ本体内からシリンダ蓋部を貫通して上方に突設され、突出端側に鍛造機のハンマーのような下降時の衝撃力が大きい要素に連動する上下動部材が連結されて前記ピストンをシリンダ本体内で上下方向に往復駆動する片側ロッド式のピストンロッドと、前記シリンダ本体内において、前記ピストンの上端面と前記シリンダ蓋部との間をピストン側の作動油を収納する第2油室と、シリンダ蓋部側の作動油を収納する第3油室とに区画する隔壁板と、前記ピストンに貫通配置に設けた第1油室から第2油室へのみ作動油を流通させる板弁付きの流路と、前記隔壁板に設けた第2油室から第3油室へのみ作動油を流通させるオリフィス式流路と、前記ピストンロッドの第3油室内の位置とこのピストンロッド内を経て第1油室に連通するピストンロッド内流路と、このピストンロッド内流路の一部に設けた第3油室から第1油室へのみ作動油を流通させる板弁式のチェック弁とからなる作動油還流流路と、を有し、上下動部材の下降時には、ピストンの押し込みに伴う第1油室内の油圧の上昇に応じて板弁付きの流路により第1油室から第2油室に作動油を流し込むとともに、第2油室におけるピストンの押し込みに伴うピストンロッドの押し込み体積分の少量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン押し込み時の減衰力を小さくし、上下動部材の上昇時には、ピストンの上昇に伴う第2油室内の容積分の大量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン上昇時の減衰力を大きくし、かつ、前記作動油還流流路のピストンロッド内流路及びチェック弁を経て第3油室から第1油室内へ作動油を還流させる構成により実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1に係るオイルダンパ41、特に鍛造防振装置用として好適なオイルダンパ41について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るダンパ41を示すものであり、このオイルダンパ41は、片ロッド構造で、放熱性を良くするために単筒シリンダで、正立式の構造を採用している。
【0018】
本実施例1に係るオイルダンパ41は、例えば円筒状で、内部にピストン3及びピストンロッド2を収容するシリンダ本体1と、このシリンダ本体1の上部側を前記ピストン3と一体のピストンロッド2が摺動可能に貫通する状態で閉塞するシリンダ蓋部5と、このシリンダ蓋部5の上部側に前記ピストンロッド2が中心部を貫通する状態で、かつ、シリンダ本体1の外周に嵌装する状態で配置した例えば円筒状の蓋筒部7と、シリンダ本体1の下部に、このシリンダ本体1の下端開口部を閉塞する状態で配置した下部取り付け機構部31と、前記蓋筒部7の上部に配置した上部取り付け機構部32と、を有している。
前記下部取り付け機構部31は、前記シリンダ本体1を詳細は後述する鍛造用防振装置61の固定部材80に垂直配置に取り付け固定するものである。
【0019】
前記下部取り付け機構部31は、シリンダ本体1の下端開口部に密着状態に装着されて、前記ピストン3との間で第1油室51を形成する円板状の装着体33と、この装着体33の下面側から下方に突設され、突出端側の外周にネジを設けた突出ネジ体34との一体構成からなる下部取り付け具35を具備している。
【0020】
更に、前記下部取り付け機構部31は、前記突出ネジ体34の外周部に嵌装した略円筒状の下部防振ゴム6Bと、前記装着体33の下面と下部防振ゴム6Bの上面との間に突出ネジ体34が貫通する状態で介在させる耐熱板8と、前記下部防振ゴム6Bの下面に突出ネジ体34が貫通する状態で添着する端部座金14と、突出ネジ体34に設けたネジに螺合するナット27と、突出ネジ34の端部に嵌め込む割ピン28と、を有している。
【0021】
そして、前記下部防振ゴム6Bの上下方向中間位置に、中間座金16を介在させつつ鍛造機の固定部を配置し、前記ナット27を締め付けることにより、前記シリンダ本体1を鍛造用防振装置61の固定部材80に垂直配置に固定するように構成している。
【0022】
前記上部取り付け機構部32は、前記蓋筒部7から上方に突出するピストンロッド2の外周部に嵌装した略円筒状の上部防振ゴム6Aを有している。
【0023】
さらに、前記上部取り付け機構部32は、前記蓋筒部7の上端に配置した蓋板7aの上面と、前記上部防振ゴム6Aの下面との間にピストンロッド2が貫通する状態で介在させる耐熱板8と、上部防振ゴム6Aの上面にピストンロッド2が貫通する状態で添着する端部座金14と、前記ピストンロッド2の上端部に設けたネジに螺合するナット27と、前記ピストンロッド2の上端部に嵌め込む割ピン28と、を有している。
【0024】
そして、前記上部防振ゴム6Aの上下方向中間位置に、詳細は後述するが、例えば鍛造機71の鍛造用ハンマー71aに連動して上下動する上下動部材である上架台75を、中間座金16を介在させつつ配置し、前記ナット27を締め付けることにより、鍛造機のハンマーの上下動に連動して前記ピストンロッド2及びピストン3を上下動させるように構成している。
【0025】
前記上部防振ゴム6A、下部防振ゴム6Bは、衝撃の緩衝と、上下取り付け姿勢のズレ吸収等の目的で配置されるものである。
【0026】
次に、前記シリンダ本体1及びシリンダ蓋部5内の構造について詳述する。
【0027】
前記シリンダ本体1及びシリンダ蓋部5の内部においては、前記装着体33と、ピストン3と、シリンダ蓋部5と、前記ピストン3とシリンダ蓋部5との間にピストンロッド2が摺動可能に貫通する状態で設けた円環状の隔壁板4とによって、前記シリンダ本体1内を、各々作動油を収納する第1油室(A油室)51、第2油室(B油室)52、第3油室(C油室)53の3室に区画するように構成している。
なお、図1においては、第1油室51に「A」の文字を、第2油室51に「B」の文字を、第3油室51に「C」の文字を各々付して示している。後述する図2、図3及び図6に示す場合も各々同様である。
【0028】
すなわち、前記装着体33と、ピストン3の図1において下面との間に第1油室51を、前記ピストン3の図1において上面と、前記隔壁板4の図1において下面との間に第2油室52を、前記隔壁板4の図1において上面と、前記シリンダ蓋部5の図1において下面との間に第3油室53を、各々形成している。
【0029】
また、前記ピストンロッド2には、第3油室53内を占める位置に第3油室側開口部2aを設けるとともに、前記第3油室側開口部2aからピストンロッド2内を経て第1油室51に連通するピストンロッド内流路2bを設け、更に、前記ピストンロッド内流路2bの途中(例えば前記ピストン3の中心位置で第1油室51に近い位置)に例えば板弁式のチェック弁9を設け、作動油還流流路を構成している。
【0030】
前記チェック弁9は、第3油室53から第1油室51に向かう方向のみ作動油を流通させる逆止弁として機能するように構成している。
【0031】
前記ピストン3には、第1油室51と第2油室52とを連通させるピストン内流路3aと、このピストン内流路3aの第2油室52に臨む位置に配置した板弁式のチェック板11とを設けている。
【0032】
前記チェック板11は、第1油室51から第2油室52に向かう方向のみ作動油を流通させる逆止弁として機能するように構成している。
【0033】
前記隔壁板4には、第2油室52と第3油室53とを連通し、作動油を第2油室52から第3油室53に向かう方向のみ流通させるオリフィス4a及び流路4bを設けている。
【0034】
前記隔壁板4の内周部には、ピストンロッド2の外周部をガイドするとともに作動油の漏出を阻止するブシュ21を設けている。
【0035】
前記シリンダ蓋部5の第3油室53側における端部の内周部にも、ピストンロッド2の外周部をガイドするとともに作動油の漏出を阻止するブシュ21を設けている。
【0036】
前記シリンダ蓋部5の上下方向中間位置の内周部には、作動油の漏出を阻止するパッキン(Uパッキン)22を設け、更に、前記シリンダ蓋部5の上端には、塵埃の侵入を阻止するパッキン23(ダストシール)を設けている。
【0037】
本実施例1に係るオイルダンパ41においては、前記ピストンロッド2の断面(ピストンロッド2の長さ方向と直交する方向の断面)の面積と、第2油室52の面積(シリンダ本体1の長さ方向と直交する方向の断面の面積)との比は1:5以上に設定している。
次に、図4、図5を参照して本実施例1に係るオイルダンパ41が組み込まれる鍛造用防振装置61の概略構成について説明する。
【0038】
前記鍛造用防振装置61は、図4、図5に示すように、鍛造機71の底面を形成し、鍛造用ハンマー71aの下降時に大きな衝撃力を受ける基台72と、設置面である床面(又は地面)73上の下架台76との間に、前記オイルダンパ41と、空気バネ74とを配置することにより構成している。
【0039】
すなわち、前記鍛造用防振装置61は、鍛造機71の基台72に凹部72aを形成するとともに、上下動部材である上架台75を前記基台72に密接させ、下架台76上にスペーサ77を介して空気バネ74を所定の間隔で複数個配置し、更に、前記鍛造機71における鍛造用ハンマー71aの衝撃を吸収する例えば3個構成のオイルダンパ41の各上部取り付け機構部32を前記上架台75に連結し、かつ、前記凹部72a内に臨ませた状態で垂直配置している。
【0040】
また、前記オイルダンパ41の下部取り付け機構部31は、鍛造用防振装置61に設けた固定部材80に連結し、これにより、前記オイルダンパ41のシリンダ本体1を垂直配置に支持するようにしている。
【0041】
前記空気バネ74に対しては、図示しない流体供給源から空気管78を経て空気を供給し、また、空気バネ74に供給する空気の圧力をレベル調整部79により調整して空気バネ74内の圧力の増減により前記鍛造機71自体の垂直方向のレベル調整を行うように構成している。
そして、上述した鍛造用防振装置61において、前記空気バネ74により鍛造機71における鍛造用ハンマー71aの下降時の大きな衝撃を十分に吸収し、防振を図るように構成している。
【0042】
次に、本実施例1に係るオイルダンパ41の動作について、鍛造機71の鍛造用ハンマー71aの下降、上昇動作との関連において図2、図3を参照して説明する。
本実施例1に係るオイルダンパ41は、鍛造機71の鍛造用ハンマー71aの下降動作時には、小さな減衰力を発生させ、鍛造機71のハンマーの上昇動作時には、大きな減衰力を発生するように構成している。
【0043】
すなわち、鍛造機71の鍛造用ハンマー71aの下降動作時には、前記空気バネ74により鍛造用ハンマー71aによる大きな衝撃を十分に吸収するとともに、図2に示すように、鍛造用ハンマー71aの下降動作に伴って前記ピストンロッド2と一体のピストン3が下方に押し込まれ、第1油室51内の作動油を押圧する。
【0044】
このとき、第1油室51内の油圧の上昇に応じて、ピストン3の第2油室52側に設けたチェック板11が開き、第1油室51内の作動油は第2油室52内に流れ込む。
また、前記第2油室52内において、ピストン3の押し込みに伴うピストンロッド2の押し込み体積分の油量は隔壁板4のオリフィス4aを通り、第3油室53へ流れ込むが、その油量は少ないためにオリフィス4aの絞りによるオイルダンパ41のピストン押し込み時の減衰力は小さい。
【0045】
更に、ピストンロッド2の押し込み時にシリンダ本体1の内部に押し込まれる前記ピストンロッド2の体積増加分は、第3油室53の上部に形成している空間内の気体(空気)Cbを圧縮してその体積変化により吸収する。
【0046】
次に、鍛造機71の鍛造用ハンマー71aが下降動作から上昇動作に変わると、図3に示すように、鍛造用ハンマー71aの上昇動作に伴ってピストンロッド2と一体のピストン3が上昇(伸張)し、第2油室52内の作動油が押圧され、第2油室52の容積分の油量が隔壁板4のオリフィス4aを通り第3油室53へ流れ込むが、その油量が多いためオリフィス4aの絞りによるオイルダンパ41のピストン上昇時の減衰力は押し込み時に比べ大きくなる。
【0047】
この結果、前記空気バネ74の反発力を、前記オイルダンパ41によるピストン上昇時の大きい減衰力により十分に抑え込み、鍛造機71の振動を抑えることができる。
【0048】
また、前記ピストン3の上昇時に、第3油室53内の作動油は、ピストンロッド2における常に油面Caより下にある位置に設けた第3油室側開口部2aから中心に開けられたピストンロッド内流路2bを通り、ピストンロッド2の下部に設けられた板弁式のチェック弁9を開いて第1油室51側へ吸い込まれ、これにより、第1油室51への空気の混入を防止しつつこの第1油室51がバキューム状態になるのを防ぎ、鍛造用ハンマー71aの次の下降動作に備えることができる。
【0049】
本実施例1に係るオイルダンパ41によれば、鍛造用防振装置61に空気バネ74とともに組み込まれるような使用態様において、ピストン3の下降時の減衰力が小さく、ピストン3の上方への戻り時に大きな減衰力を発生して空気バネ74の反発力を抑え込むことができ、鍛造用ハンマー71aの上昇時における鍛造機71の振動を的確に防止することができ、鍛造用防振装置61用として好適なオイルダンパ41とすることができる。
【0050】
また、本実施例1に係るオイルダンパ41によれば、ピストン3には、第1油室51から第2油室52へのみ作動油を流通させる板弁式のチェック板11を設け、第2油室52と第3油室53とを区画する隔壁板4には、第2油室52から第3油室53へのみ作動油を流通させるオリフィス4a、流路4bを設けた簡略構成の基に上述した効果を発揮させるようにしているので、前記従来例のようなピストン内部にチェックバルブを設けるというような構成を採用することなく、早い速度で移動する作動油の流れに対応した各流路の開閉動作を実現でき、耐久性、更には放熱性にも優れたオイルダンパ41とすることができる。
【0051】
更に、前記ピストンロッド2には、ピストンロッド内流路2bと、板弁式のチェック弁9とからなる作動油還流流路を設けているので、第1油室51への空気の混入を防止しつつこの第1油室51がバキューム状態になるのを防ぎ、鍛造用ハンマー71aの次の下降動作に対する備えも万全なオイルダンパ41とすることができる。
【実施例2】
【0052】
図6は本発明の実施例2に係るオイルダンパ41Aを示すものであり、このオイルダンパ41Aは、基本的構成は実施例1に係るオイルダンパ41と同様であるため、同一要素には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0053】
本実施例2のオイルダンパ41Aは、前記隔壁板4にオリフィス4aを設けるとともに、オリフィス4aから第3油室53に至る流路4bに対して、前記シリンダ本体1の外周側から嵌装したニードルバルブ10の先端を臨ませ、ニードルバル10を外部から回転操作することで第2油室52から第3油室53へ流れる油量を調整可能とし、すなわち、オイルダンパ41Aの減衰力を外部から調整可能としたことが特徴である。
【0054】
本実施例2に係るオイルダンパ41Aによれば、実施例1に係るオイルダンパ41の場合と同様な効果を奏するとともに、前記ニードルバルブ10を付加したことにより、オイルダンパ41Aの減衰力を外部から調整することもでき、例えば鍛造用防振装置61の振動衝撃特性の仕様変更にも容易に対応できる利点がある。
【0055】
図7は前記オイルダンパ41、41Aのピストン速度と減衰力との関係を、横軸にピストン速度(cm/s)を、縦軸に減衰力(kgf)をとって示すグラフである。
図7において、点線は特許文献1のオイルダンパの特性を、実線は本実施例1、2に係るオイルダンパ41、41Aの特性を示している。
図7に示すように、本実施例1、2に係るオイルダンパ41、41Aは、特許文献1のオイルダンパに比べ、ピストン押し込み時(圧側)の減衰力は小さく、ピストン上昇時(伸側)には、単純なオリフィス特性とし、リリーフバルブを使用しない特性としたものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のオイルダンパは、ピストン下降時と上昇時との減衰力を異ならせ、かつ、耐久性・放熱性を増加させたものであることから、ショックアブソーバーの発生した熱の放熱に空冷効果が期待できないような環境で使用される工場設備用として広範に応用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1 シリンダ本体
2 ピストンロッド
2a 第3油室側開口部
2b ピストンロッド内流路
3 ピストン
3a ピストン内流路
4 隔壁板
4a オリフィス
4b 流路
5 シリンダ蓋部
6A 上部防振ゴム
6B 下部防振ゴム
7 蓋筒部
7a 蓋板
8 耐熱板
9 チェック弁
10 ニードルバルブ
11 チェック板
14 端部座金
16 中間座金
21 ブシュ
22 パッキン
23 パッキン
27 ナット
28 割ピン
31 下部取り付け機構部
32 上部取り付け機構部
33 装着体
34 突出ネジ体
35 下部取り付け具
41 オイルダンパ
41A オイルダンパ
51 第1油室
52 第2油室
53 第3油室
61 鍛造用防振装置
71 鍛造機
71a 鍛造用ハンマー
72 基台
72a 凹部
73 床面
74 空気バネ
75 上架台
76 下架台
77 スペーサ
78 空気管
79 レベル調整部
80 固定部材
Ca 油面
Cb 気体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単筒式で下端部が下部取り付け機構部により閉塞され、上端部がシリンダ蓋部により閉塞されるとともに、下部取り付け機構部を介して固定配置されるシリンダ本体と、
前記シリンダ本体内で下端側に作動油を収納する第1油室を形成する状態でピストン下端面を臨ませたピストンと、
前記ピストンと一体構成で、かつ、下端部を前記第1油室に臨ませるとともに、前記シリンダ本体内からシリンダ蓋部を貫通して上方に突設され、突出端側に下降時の衝撃力が大きい上下動部材が連結されて前記ピストンをシリンダ本体内で上下方向に往復駆動する片側ロッド式のピストンロッドと、
前記シリンダ本体内において、前記ピストンの上端面と前記シリンダ蓋部との間をピストン側の作動油を収納する第2油室と、シリンダ蓋部側の作動油を収納する第3油室とに区画する隔壁板と、
前記ピストンに貫通配置に設けた第1油室から第2油室へのみ作動油を流通させる板弁付きの流路と、
前記隔壁板に設けた第2油室から第3油室へのみ作動油を流通させるオリフィス式流路と、
を有し、
上下動部材の下降時には、ピストンの押し込みに伴う第1油室内の油圧の上昇に応じて板弁付きの流路により第1油室から第2油室に作動油を流し込むとともに、第2油室におけるピストンの押し込みに伴うピストンロッドの押し込み体積分の少量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン押し込み時の減衰力を小さくし、
上下動部材の上昇時には、ピストンの上昇に伴う第2油室内の容積分の大量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン上昇時の減衰力を大きくするように構成したこと、
を特徴とするオイルダンパ。
【請求項2】
単筒式で下端部が下部取り付け機構部により閉塞され、上端部がシリンダ蓋部により閉塞されるとともに、下部取り付け機構部を介して固定配置されるシリンダ本体と、
前記シリンダ本体内で下端側に作動油を収納する第1油室を形成する状態でピストン下端面を臨ませたピストンと、
前記ピストンと一体構成で、かつ、下端部を前記第1油室に臨ませるとともに、前記シリンダ本体内からシリンダ蓋部を貫通して上方に突設され、突出端側に鍛造機のハンマーのような下降時の衝撃力が大きい要素に連動する上下動部材が連結されて前記ピストンをシリンダ本体内で上下方向に往復駆動する片側ロッド式のピストンロッドと、
前記シリンダ本体内において、前記ピストンの上端面と前記シリンダ蓋部との間をピストン側の作動油を収納する第2油室と、シリンダ蓋部側の作動油を収納する第3油室とに区画する隔壁板と、
前記ピストンに貫通配置に設けた第1油室から第2油室へのみ作動油を流通させる板弁付きの流路と、
前記隔壁板に設けた第2油室から第3油室へのみ作動油を流通させるオリフィス式流路と、
前記ピストンロッドの第3油室内の位置とこのピストンロッド内を経て第1油室に連通するピストンロッド内流路と、このピストンロッド内流路の一部に設けた第3油室から第1油室へのみ作動油を流通させる板弁式のチェック弁とからなる作動油還流流路と、
を有し、
上下動部材の下降時には、ピストンの押し込みに伴う第1油室内の油圧の上昇に応じて板弁付きの流路により第1油室から第2油室に作動油を流し込むとともに、第2油室におけるピストンの押し込みに伴うピストンロッドの押し込み体積分の少量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン押し込み時の減衰力を小さくし、
上下動部材の上昇時には、ピストンの上昇に伴う第2油室内の容積分の大量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン上昇時の減衰力を大きくし、かつ、前記作動油還流流路のピストンロッド内流路及びチェック弁を経て第3油室から第1油室内へ作動油を還流させるように構成したこと、
を特徴とするオイルダンパ。
【請求項3】
単筒式で下端部が下部取り付け機構部により閉塞され、上端部がシリンダ蓋部により閉塞されるとともに、下部取り付け機構部を介して固定配置されるシリンダ本体と、
前記シリンダ本体内で下端側に作動油を収納する第1油室を形成する状態でピストン下端面を臨ませたピストンと、
前記ピストンと一体構成で、かつ、下端部を前記第1油室に臨ませるとともに、前記シリンダ本体内からシリンダ蓋部を貫通して上方に突設され、突出端側に鍛造機のハンマーのような下降時の衝撃力が大きい要素に連動する上下動部材が連結されて前記ピストンをシリンダ本体内で上下方向に往復駆動する片側ロッド式のピストンロッドと、
前記シリンダ本体内において、前記ピストンの上端面と前記シリンダ蓋部との間をピストン側の作動油を収納する第2油室と、シリンダ蓋部側の作動油を収納する第3油室とに区画する隔壁板と、
前記ピストンに貫通配置に設けた第1油室から第2油室へのみ作動油を流通させる板弁付きの流路と、
前記隔壁板に設けた第2油室から第3油室へのみ作動油を流通させるオリフィス式流路と、
前記ピストンロッドの第3油室内の位置とこのピストンロッド内を経て第1油室に連通するピストンロッド内流路と、このピストンロッド内流路の一部に設けた第3油室から第1油室へのみ作動油を流通させる板弁式のチェック弁とからなる作動油還流流路と、
前記シリンダ本体の外周側から前記オリフィス式流路に臨ませて嵌装され、第2油室から第3油室へ流れる油量を調整するニードルバルブと、
を有し、
上下動部材の下降時には、ピストンの押し込みに伴う第1油室内の油圧の上昇に応じて板弁付きの流路により第1油室から第2油室に作動油を流し込むとともに、第2油室におけるピストンの押し込みに伴うピストンロッドの押し込み体積分の少量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン押し込み時の減衰力を小さくし、
上下動部材の上昇時には、ピストンの上昇に伴う第2油室内の容積分の大量の作動油を隔壁板に設けたオリフィスの絞りを利用して第3油室に流し込んで、ピストン上昇時の減衰力を大きくし、かつ、前記作動油還流流路のピストンロッド内流路及びチェック弁を経て第3油室から第1油室内へ作動油を還流させ、
前記ニードルバルブの操作により前記減衰力を調整可能に構成したこと、
を特徴とするオイルダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52587(P2012−52587A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194635(P2010−194635)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(591167898)ヤクモ株式会社 (18)
【出願人】(510235198)有限会社シズメテック (1)
【Fターム(参考)】