説明

オイルミストセパレータ

【課題】フィルタの目詰まりを抑制して、オイルミストの分離効率を向上することができるとともに、ブローバイガス流の圧力損失を低減することができるオイルミストセパレータを提供する。
【解決手段】エンジンのシリンダヘッドカバー12の上面にハウジング13を一体に形成する。ハウジング13の底壁13aの一側にガス流入口14を形成し、他側にオイル排出口19を形成する。前記ハウジング13の内部に第1フィルタ17を配設するとともに、該第1フィルタ17の下流側に所定の間隔をおいて第2フィルタ18を配設する。前記第1フィルタ17の目付けを、前記第2フィルタ18の目付けよりも大きく設定する。そして、前記ガス流入口14から第1分離室R1内に流入したブローバイガスに含まれる粒径の大きいオイルミストを前記第1フィルタ17によって捕捉し、粒径の小さいオイルミストを前記第2フィルタ18によって捕捉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのブローバイガス等のオイルミスト含有ガスからオイルミストを分離するようにしたオイルミストセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンには、燃焼室からクランクケース内へ流出するブローバイガスを大気中に放出せずに回収するためのPCV(ポジティブ・クランクケース・ベンチレーション)が設けられている。このPCVによってブローバイガスをクランクケースから吸気系統に戻し、ブローバイガスの燃焼が行われる。通常、ブローバイガス中にはオイルが微小粒子(オイルミスト)となって存在するので、ブローバイガスをそのまま燃焼しないで、オイルミストをブローバイガスから分離してクランクケース内に戻すオイルミストの分離手段が備えられている。
【0003】
従来、この種のオイルミストの分離手段に用いられるオイルミストセパレータエレメントとして、例えば特許文献1に開示されたものが提案されている。このセパレータエレメントは、中心部に位置する円筒状をなす上流層と、該上流層の外周面に装着された円筒状をなす中流層と、該中流層の外周面に装着された円筒状をなす下流層とにより三層構造のセパレータエレメントとして構成されている。前記上流層は、繊維接点が熱接合されたポリエステル複合繊維からなる平均繊維径が10〜45μmの不織布で構成されている。中流層は平均繊維径が10μm以下のガラス繊維集合体で構成され、下流層は前記ポリエステル複合繊維からなる平均繊維径が10〜45μmの不織布で構成されている。
【0004】
ブローバイガスに含まれるオイルミストは、通常、粒径が0.1μm〜100μm程度の大きさで分散している。前記上流層によって特に十数μm以上のオイルミストが分離され、上流層で分離できない小さな1μm以下のオイルミストが中流層で分離されるというように、段階的に効果的な分離が行われるようになっている。さらに、前記下流層は、上流層及び中流層によりガス流から分離したオイルミストを液滴化して速やかに落下除去させる役割をもっている。即ち、上流層と下流層でガス中から分離されたオイルミストは、上流層と中流層の内部で凝集しながらガス流によって下流層へ導かれ、下流層で液滴化されて落下除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−160328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記セパレータエレメントにおいては、次のような問題があった。即ち、円筒状の上流層の外周面に、円筒状の中流層の内周面が接触され、中流層の外周面に円筒状の下流層の内周面が接触されているので、上流層の内部に供給されたブローバイガスが上流層から中流層に直接進入する。このため、上流層によって捕捉された大きな粒径のオイルミストが中流層に共に進入し、オイルミストに含まれる異物(カーボンや金属粒子等)が中流層の細隙に付着して目詰まりが促進される。この目詰まりによって中流層のオイルミストの分離機能が阻害され、オイルミストの分離効率が低下するとともに、ブローバイガス流の圧力損失が増大し、その結果オイルミストの分離効率がさらに低下するという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、フィルタの目詰まりを抑制して、オイルミストの分離効率を向上することができるとともに、オイルミスト含有ガス流の圧力損失を低減することができるオイルミストセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、オイルミスト含有ガスに含まれるオイルミストを分離する分離室を形成したハウジングの前記分離室の底壁にオイルミスト含有ガスの入口孔を形成するとともに、前記分離室内にオイルミストを分離するためのフィルタを配設し、前記分離室の底壁に分離されたオイルの排出孔を設けたオイルミストセパレータにおいて、前記分離室内にガス流路の方向に間隔をおいて複数のフィルタを配設し、ガス流路方向に関して、上流側のフィルタの細隙を、下流側のフィルタの細隙よりも大きく設定したことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記分離室の底壁に、最上流に位置するフィルタの上流側に位置するように、かつ該フィルタと間隔をおいて、分離板を立設し、該分離板の上端縁と、前記分離室の上壁との間に第1間隙を形成し、最上流側に位置するフィルタの下端面と、前記分離室の底壁との間に第2間隙を形成したことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記分離室の上壁に、最上流に位置するフィルタの上流側に位置するように、かつ該フィルタと所定の間隔をおいて、分離板を垂下し、該分離板の下端縁と、前記分離室の底壁との間に第1間隙を形成し、最上流のフィルタの上端面と、分離室の上壁との間に第2間隙を形成したことを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記分離室の上壁に、前記最上流のフィルタ及び次のフィルタの間にそれぞれ所定の間隔をおいて位置するように、分離板を垂下し、該分離板の下端縁とハウジングの底壁との間に第3間隙を形成したことを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、上流側に配設されたフィルタは、親水性及び親油性を有する材料により形成され、下流側に配設されたフィルタは、撥水性及び撥油性を有する材料により形成されていることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項において、前記分離板には給電装置によりプラスの電荷が付与されるようになっていることを要旨とする。
(作用)
この発明は、ガス流入口から分離室にオイルミスト含有ガスが導入されると、最初に上流側のフィルタの大きい細隙によってオイルミスト含有ガスに含まれる粒径の大きいオイルミストが捕捉されて分離される。分離されたオイルは、上流側のフィルタの細隙を凝集されながら流下し、該フィルタの下面と分離室の底壁との隙間に導かれる。このオイルは前記隙間を流れるガス流によって該フィルタの下流側に押され、下流側のフィルタの下面と底壁との隙間を通過して、下流側のフィルタよりも下方に流動し、オイル排出口に導かれる。
【0014】
一方、前記上流側のフィルタから流出した粒径の大きいオイルミストを分離されたオイルミスト含有ガスは、上流側のフィルタと下流側のフィルタとの間のガス流路を流動し、下流側のフィルタの細隙に流入する。この細隙によってオイルミスト含有ガスに含まれる粒径の小さいオイルミストが捕捉されて分離される。捕捉されたオイルは凝集されながら、該フィルタの細隙を流下して該フィルタの下端面と底壁との隙間に導かれ、この隙間を流れるガス流によって下流側に流動され、オイル排出口に導かれる。
【0015】
この発明は、上流側のフィルタの細隙を粒径の小さいオイルミストが素通りするので、該フィルタに多量のオイルが付着されて、該オイルに含まれる異物による上流側のフィルタの目詰まりが抑制される。又、上流側のフィルタと下流側のフィルタとの間に間隔が設けられているので、上流側のフィルタによって捕捉されたオイルが下流側のフィルタの細隙に進入するのが防止される。このため、下流側のフィルタの細隙に多量のオイルが進入されて、該オイルに含まれる異物による下流側のフィルタの目詰まりが防止される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、フィルタの目詰まりを抑制して、オイルミストの分離効率を向上することができるとともに、オイルミスト含有ガス流の圧力損失を低減することができる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明のオイルミストセパレータを具体化した第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の1−1線における断面図。
【図3】この発明のオイルミストセパレータの第2の実施形態を示す縦断面図。
【図4】この発明のオイルミストセパレータの第3の実施形態を示す縦断面図。
【図5】この発明のオイルミストセパレータの第4の実施形態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を具体化したオイルミストセパレータの第1の実施形態を図1及び図2に従って説明する。
図1に示すように、この第1の実施形態のオイルミストセパレータ11は、エンジンの合成樹脂製のシリンダヘッドカバー12上に配設されている。オイルミストセパレータ11のハウジング13は、前記シリンダヘッドカバー12と一体に形成され、ほぼ四角箱形状をなしている。ハウジング13の一側における底壁13aには、エンジンのクランク室に連通するガス流入口14が形成されている。ハウジング13の他側における上壁13bには、エンジンの吸気通路に連通するガス流出口15が形成されている。そして、ガス流入口14とガス流出口15との間において、ハウジング13内には、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスのガス流路16が形成されている。このガス流路16は、ブローバイガスからオイルミストを分離する分離室Rとして機能する。
【0019】
前記ハウジング13のガス流路16には、前記ガス流入口14の近傍に位置するように第1フィルタ17が該ガス流路16を遮蔽するように配設されている。前記ハウジング13のガス流路16には、前記第1フィルタ17の下流側に位置するように、かつ該第1フィルタ17から所定の間隔をおいて、該ガス流路16を遮蔽するように第2フィルタ18が配設されている。
【0020】
この実施形態では、前記分離室Rは、前記第1フィルタ17と第2フィルタ18によって2つの分離室、すなわち第1フィルタ17の上流側の第1分離室R1と、第1フィルタ17及び第2フィルタ18の間の下流側の第2分離室R2とに区画されている。
【0021】
前記第1フィルタ17は、繊維の集合体である不織布により構成され、その繊維相互間の細隙は、第2フィルタ18の繊維相互間の細隙よりも大きく設定されている。第1フィルタ17の繊維としては、ストレート形状でかつ表面平滑で、親水性及び親油性が高い例えばレーヨン等の繊維が用いられている。前記第1フィルタ17の繊維の平均繊維径は、例えば10〜45μm、目付けは100〜1000g/mに設定されている。このように第1フィルタ17は、平均繊維径が太く、細隙が大きいので、粒径の大きいオイルミストの捕捉性能が高められるとともに、捕捉されたオイルが凝集されて繊維に沿って流れ落ちるようになっている。
【0022】
前記第2フィルタ18は、繊維の集合体である不織布により構成され、その繊維相互間の細隙は、前述したように第1フィルタ17の繊維相互間の細隙よりも小さく設定されている。第2フィルタ18の繊維としては、ストレート形状でかつ表面平滑で、撥水性及び撥油性が高い例えばセラミックやフッ素樹脂等の繊維が用いられている。さらに、第2フィルタ18の繊維として、油の滑落性を有するものが好ましい。前記第2フィルタ18の繊維の平均繊維径は、1〜10μm、目付けは100〜1000g/mに設定されている。このように第2フィルタ18は、平均繊維径が細く、細隙が小さいので、粒径の小さいオイルミストの捕捉性能が高められるとともに、捕捉されたオイルが凝集されて繊維に沿って流れ落ちるようになっている。
【0023】
前記第2フィルタ18の下流側に位置するように、ハウジング13の底壁13aにはオイル排出口19が形成されている。そして、第2フィルタ18で分離されて底壁13aの上面に流れ落ちるオイルが、前記オイル排出口19に案内されるとともに、そのオイル排出口19からシリンダヘッドカバー12の内部に回収される。回収されたオイルは、カム軸(図示しない)等の可動部の潤滑に供される。
【0024】
次に、前記のように構成されたオイルミストセパレータ11の作用を説明する。
さて、エンジンが低速で運転されると、その運転にともなって発生する低流速のブローバイガスが図1に示すガス流入口14からハウジング13内に導入され、ガス流路16に沿ってガス流出口15側に流れる。そして、ガス流入口14から第1分離室R1に流入したブローバイガスに含まれる大きな粒径(例えば10μm以上)のオイルミストの一部は、該第1分離室R1の内壁に付着して分離され、内壁を流下して、ガス流入口14からクランク室側に還元される。前記第1分離室R1内に進入したブローバイガスは、第1フィルタ17の細隙を通過する。この過程で、該ブローバイガスに含まれる比較的大きな粒径(例えば1μm以上)のオイルミストが捕捉される。この捕捉されたオイルミストは第1フィルタ17の細隙内で凝集され、流れ落ちる。そして、第1,第2フィルタ17,18の下部を通ってブローバイガスの下流側に流動される。
【0025】
前記第1フィルタ17の細隙を通過したブローバイガスは、第2分離室R2内を流れて、第2フィルタ18の細隙に流入し、該細隙により小さい粒径(例えば1μm以下)のオイルミストが捕捉されて分離される。この分離されたオイルは、第2フィルタ18の細隙内で凝集され、流れ落ちる。このオイルが第1フィルタ17によって分離されたオイルとともに第2フィルタ18の下流側の底壁13aの表面から前記オイル排出口19に導かれる。前記第2フィルタ18によってオイルミストを除去されたブローバイガスは、前記ガス流出口15からエンジンの吸気系に供給される。
【0026】
従って、この第1の実施形態のオイルミストセパレータ11においては、以下の効果がある。
(1)第1の実施形態においては、図1に示すように、ハウジング13の分離室Rに第1フィルタ17及び第2フィルタ18を所定の間隔、つまり第2分離室R2を形成するようにして配設した。又、第1フィルタ17の繊維の平均繊維径を太く、かつ繊維間の細隙を大きく設定し、第2フィルタ18の繊維の平均繊維径を細く、かつ繊維間の細隙を小さく設定した。このため、ブローバイガスに含まれる大きい粒径のオイルミストを、第1フィルタ17によって効率的に捕捉することができるとともに、小さい粒径のオイルミストを、前記第2フィルタ18によって効率的に捕捉することができ、オイルミストの全体としての分離効率を向上することができる。
【0027】
(2)第1の実施形態においては、ブローバイガスに含まれる小さい粒径のオイルミストの大半は、第1フィルタ17の大きい細隙を素通りするので、第1フィルタ17の細隙が小粒径のオイルミストに含まれる異物(例えばカーボン等)よって目詰まりするのを抑制することができる。さらに、前記第1フィルタ17と第2フィルタ18との間に、所定の間隔、つまり第2分離室R2が形成されている。このため、第1フィルタ17によって捕捉された大きい粒径のオイルミストは、前記第2フィルタ18の細隙には、それほど進入しない。従って、該第2フィルタ18の細隙にオイルミストが過剰に供給されることはなく、該細隙がオイルミストに含まれる例えばカーボン等の異物によって目詰まりするのを抑制することができる。このように、第1フィルタ17及び第2フィルタ18の目詰まりを共に抑制することができるので、両フィルタ17,18の細隙を通過するブローバイガスの圧力損失を低減することができる。この結果、ガス流路16内におけるブローバイガスの過度の圧力上昇を阻止できるため、エンジンのクランク室内の圧力高騰を防止でき、クランク室のパッキン損傷等を未然に防止できる。さらに、第1及び第2フィルタ17,18の目詰まりを抑制できるので、両フィルタの耐久性を向上することができる。
【0028】
(3)第1の実施形態においては、平均繊維径が太く、かつ細隙が大きい第1フィルタ17を、親水性及び親油性を有する繊維により形成したので、繊維により大粒径のオイルミストが捕捉され易くなり、分離効率を向上することができる。又、繊維は親水性及び親油性を有しているが、繊維間の細隙は大きいので、捕捉されたオイルは繊維に沿って流下される。一方、平均繊維径が細く、かつ細隙が小さい第2フィルタ18を、撥水性及び撥油性を有する繊維により形成したので、細隙が小さい繊維により小粒径のオイルミストが捕捉される。又、一旦捕捉されたオイルは、細隙の小さい繊維が撥水性及び撥油性を有するので、細隙にオイルが滞留することなく繊維に沿って流下される。
【0029】
(4)第1の実施形態においては、図1及び図2に示すように、前記ハウジング13のガス流路16を遮蔽するように前記第1フィルタ17及び第2フィルタ18を配設したので、オイルミストの捕捉漏れを防止することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルミストセパレータの第2の実施形態を、前記第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
図3に示す第2の実施形態のオイルミストセパレータ11においては、前記ハウジング13の底壁13aに前記ガス流入口14の下流側近傍に位置するように、かつ前記第1フィルタ17の上流側の側面との間に所定間隔のガス流路16が形成されるように導電性を有する分離板21が立設されている。さらに、前記分離板21の上端縁と前記ハウジング13の上壁13bとの間にガス流路16を確保するための第1間隙22が形成されている。前記分離板21には図示しない給電装置から供給される電圧によって、プラスの電荷が付与されるようになっている。前記第1フィルタ17の下端面と、ハウジング13の底壁13aの上面との間にガス流路16を確保するための第2間隙23が形成されている。前記分離板21、第1間隙22及び第2間隙23等によって前記第1分離室R1内に蛇行するガス流路16が形成されている。前記分離板21のガス流路16に関して上流側の側面は、オイルミストの分離面21aとなっている。
【0032】
この実施形態においては、エンジンのクランク室からガス流入口14を通して前記第1分離室R1内に導入されたブローバイガスは、分離板21の作用によって上方向に導かれてハウジング13の上壁13bに当たった後、変向されて、矢印で示すように前記第1フィルタ17に吹付けられる。又、ブローバイガスは、第1フィルタ17と分離板21との間のガス流路16を通して下方に導かれ、第2間隙23を経て第2分離室R2に流入される。
【0033】
前記第1分離室R1内を蛇行するブローバイガスに含まれる粒径の大きいオイルミストは、上壁13bの内面、分離板21の分離面21aに付着されて捕捉・分離される。上壁13bに捕捉されたオイルはブローバイガスによって前記第1フィルタ17の細隙に進入し、該細隙を流れ落ちる。分離板21の分離面21aに付着されたオイルは、流下されて分離板21の下端部に形成された小孔21bからガス流路の下流側に流れる。又、前記第1間隙22を通って第1フィルタ17に吹付けられたブローバイガスは該第1フィルタ17の細隙に流入し、該細隙によって粒径の大きいオイルミストが捕捉されて分離され、細隙内を流れ落ちる。そして、第1フィルタ17の下端縁から分離されたオイルが底壁13a上に滴下される。さらに、前記ブローバイガスに含まれるマイナスの電荷をもった例えば粒状のカーボンは、プラスの電荷に保持された前記分離板21によって捕捉されてブローバイガスから分離される。
【0034】
従って、第2の実施形態においては、前記分離板21によって、オイルミスト以外のカーボンをブローバイガスから捕捉して分離することができる。又、前記第1フィルタ17が異物により目詰まりした場合に、前記第2間隙23を通してブローバイガスが流れるので、ガスの圧力損失を低減することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
図4に示す第3の実施形態のオイルミストセパレータ11においては、前記分離板21を前記ハウジング13の上壁13bに垂下して、分離板21の下端縁とハウジング13の底壁13aの上面との間に前記第1間隙22を形成し、前記第1フィルタ17を底壁13a上に固定して第1フィルタ17の上端面とハウジング13の上壁13bの下面との間に第2間隙23を形成している。
【0036】
この第3の実施形態においては、前記分離板21、第1間隙22及び第2間隙23等によって第1分離室R1内に蛇行するガス流路16が形成されている。そして、前記ガス流入口14から上方向に供給されたブローバイガスが袋状の空間の内頂面に吹き付けられて下方に変向され、前記第1間隙22から第1フィルタ17と分離板21との間のガス流路16に流入され、第2間隙23から第2分離室R2へ導かれる。このようにブローバイガスが蛇行するガス流路16を流れる間に粒径の大きいオイルミストが前記上壁13b、分離板21及び底壁13aによって捕捉・分離されるとともに、前記第1フィルタ17によって捕捉・分離される。このため、オイルミストの分離効率を向上することができる。
【0037】
(第4の実施形態)
図5に示す第4の実施形態のオイルミストセパレータ11は、前記第2フィルタ18の断面形状が蛇行状に形状されている。従って、第2フィルタ18はその表面積が広く形成されている。前記ハウジング13の上壁13bに、前記第2フィルタ18と前記第1フィルタ17との間に位置するように、かつ前記第1フィルタ17及び第2フィルタ18と所定の間隔をおいて、分離面24aを有する分離板24が垂下されている。前記分離板24の下端縁と、前記底壁13aの間には、ガス流路となる第3間隙25が形成されている。その他の構成は、図4に示す第3の実施形態の構成と同様である。
【0038】
この第4の実施形態においては、前記第2分離室R2の内部に前記分離板24及び第3間隙25が設けられ、蛇行するガス流路16が形成される。このため、前記分離板24から第2分離室R2内に流入したブローバイガスが前記分離板24に衝突する際に、ブローバイガスに含まれるオイルミストが分離板24の分離面24aに付着して分離される。又、第3間隙25から第2フィルタ18に流れたブローバイガスは表面積の広い第2フィルタ18の細隙に流入され、この第2フィルタ18は表面積が広いので、粒径の小さいオイルミストの付着量が多くなり、オイルが効率的に捕捉・分離される。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0039】
・図1及び図2に示す実施形態において、前記第1及び第2フィルタ17,18に代えて、3枚又は4枚以上のフィルタをそれぞれガス流路16の方向に関して、所定の間隔をもって収容する。そして、上流側のフィルタから下流側のフィルタへ行くに従って、目付けを段階的に小さくするようにしてもよい。
【0040】
・前記第1フィルタ17の繊維として、撥水性及び撥油性を有する繊維を用いても良い。
・図4及び図5に示す前記分離板21及び分離板24に給電装置からプラスの電荷が付与されるようにしてもよい。
【0041】
・前記実施形態では、エンジンのシリンダヘッドカバー12に設けられたオイルミストセパレートとして具体化したが、これ以外に例えば圧縮機の吐出ガスに含まれるオイルミストを分離するオイルミストセパレータとして具体化してもよい。
【符号の説明】
【0042】
R…分離室、R1…第1分離室、R2…第2分離室、11…オイルミストセパレータ、13…ハウジング、13a…底壁、13b…上壁、16…ガス流路、17…第1フィルタ、18…第2フィルタ、21,24…分離板、22…第1間隙、23…第2間隙、25…第3間隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルミスト含有ガスに含まれるオイルミストを分離する分離室を形成したハウジングの前記分離室の底壁にオイルミスト含有ガスの入口孔を形成するとともに、前記分離室内にオイルミストを分離するためのフィルタを配設し、前記分離室の底壁に分離されたオイルの排出孔を設けたオイルミストセパレータにおいて、
前記分離室内にガス流路の方向に間隔をおいて複数のフィルタを配設し、ガス流路方向に関して、上流側のフィルタの細隙を、下流側のフィルタの細隙よりも大きく設定したことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項2】
請求項1において、前記分離室の底壁に、最上流に位置するフィルタの上流側に位置するように、かつ該フィルタと間隔をおいて、分離板を立設し、該分離板の上端縁と、前記分離室の上壁との間に第1間隙を形成し、最上流側に位置するフィルタの下端面と、前記分離室の底壁との間に第2間隙を形成したことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項3】
請求項1において、前記分離室の上壁に、最上流に位置するフィルタの上流側に位置するように、かつ該フィルタと所定の間隔をおいて、分離板を垂下し、該分離板の下端縁と、前記分離室の底壁との間に第1間隙を形成し、最上流のフィルタの上端面と、分離室の上壁との間に第2間隙を形成したことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項4】
請求項3において、前記分離室の上壁に、前記最上流のフィルタ及び次のフィルタの間にそれぞれ所定の間隔をおいて位置するように、分離板を垂下し、該分離板の下端縁とハウジングの底壁との間に第3間隙を形成したことを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上流側に配設されたフィルタは、親水性及び親油性を有する材料により形成され、下流側に配設されたフィルタは、撥水性及び撥油性を有する材料により形成されていることを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれか一項において、前記分離板には給電装置によりプラスの電荷が付与されるようになっていることを特徴とするオイルミストセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47306(P2011−47306A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195408(P2009−195408)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】