説明

オカペリドン塩およびそれらを含有する製薬学的組成物

本発明は、オカペリドンの新規な塩および特に製薬学的産業におけるそれらの使用に関する。本発明は、増加した水溶解度を有するオカペリドンの特定の塩並びに特に中枢または末梢神経系、特に中枢神経系、の種々の疾病を処置するための該塩の投与による治療方法を開示する。それはさらに、該塩を含んでなる製薬学的組成物およびそれらの製造方法も取り扱う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オカペリドン(ocaperidone)の新規な塩および特に製薬学的産業におけるそれらの使用に関する。本発明は、増加した水溶解度を有するオカペリドンの特定の塩並びに特に中枢または末梢神経系、特に中枢神経系の種々の疾病を処置するための該塩の投与による治療方法を開示する。それはさらに、該塩を含んでなる製薬学的組成物およびそれらの製造方法も取り扱う。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特に興味ある抗精神病性質を有する有効なドーパミン作用性化合物であるオカペリドンとしても知られる3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)−1−ピペリジニル]エチル]−2,9−ジメチル−ピリド−[1,2−a]ピリミジン−4−オンを記載している。それは神経伝達物質そして特にドーパミンおよびセロトニンの拮抗物質として記載されてきた。従ってオカペリドンを使用するための治療指示は主としてCNS領域であり、特に有効な抗精神病剤としてそしてより具体的には統合失調症、強迫疾患(OCD)、双極性鬱病、およびツレット症候群を包含する急性精神病を処置するためである。実際に、その組み合わせドーパミン−セロトニン拮抗作用性質はそれらが統合失調症の陽性および陰性症状の両方の軽減を与えるため特に興味がある。
【0003】
オカペリドンは下記式(I):
【0004】
【化1】

【0005】
を表わす。
【0006】
その有用な薬理学的性質に鑑みて、課題化合物は薬理学的活性成分としての候補である。水溶解度は薬品の吸収に関する必須パラメーターでありそして一般的に容易に溶解する化合物は胃腸管内の積極的拡散によってより有効に吸収される。残念なことに、遊離塩基形態としてのオカペリドンは水中で微溶性であり(0.0007g/100ml)そして酸溶液中でも微溶性であり(pH=1.3において0.25g/100ml)、それがバイオアベイラビリティーにおける変動をもたらしうる。オカペリドンの酸付加塩はそれらの増加した水溶解度のために対応する塩基形態よりも製薬学的組成物の製造において有利でありうる。
【特許文献1】欧州特許第0453042号明細書
【発明の開示】
【0007】
出願人は、オカペリドンの特定の塩が調合に関する価値ある特徴を特別に示す明確な再現可能な非晶質および/または結晶性形態で得られうることを今回見出した。本発明は、特に少なくとも2.5mg/mlの、非常に興味ある水溶解度を示すオカペリドンの特定の塩に関する。調剤中のオカペリドンのそのような塩形態の使用は吸収における改良および血漿水準における比較的小さい変動から生ずるバイオアベイラビリティーの変動における減少をもたらしうる。
【0008】
本発明は、塩の全ての多形を包含する、非晶質および/または結晶性形態のオカペリドンの予期せぬ可溶性(1:1)塩に関する。
【0009】
より具体的には、本発明に従うオカペリドン塩の酸部分はピログルタミン酸、N−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸、ジグリコール酸、オロト酸、粘液酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択される。好ましい態様では、酸部分はピログルタミン酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択される。
【0010】
本発明によると、酸部分、特にピログルタミン酸は、存在するなら、D−、L−形態、またはそれらの混合物、より好ましくはL−形態、最も好ましくはL−ピログルタミン酸形態である。
【0011】
酸部分が琥珀酸、フマル酸、酒石酸、ピログルタミン酸、N−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸、ジグリコール酸、オロト酸、粘液酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択されるオカペリドン塩が比較のために製造された。以下でさらに詳細に示されるように、オカペリドン塩溶解度試験はL−ピログルタミン酸付加塩が琥珀酸付加塩よりそれぞれ31.2倍ほど可溶性が大きく、琥珀酸付加塩もオカペリドン遊離塩基形態より357倍ほど可溶性が大きいことを示す。
【0012】
本発明に従う化合物は当該技術で既知である種々の方法により製造することができる。しかしながら、本発明のオカペリドン塩は、一般に、オカペリドン、並びに以上で定義された有機酸の、好ましくは化学量論的割合での、そして有利には有機溶媒、例えば、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エーテル類またはそれらの混合物の中への溶解により製造される。この方法の温度は広範囲にわたり、好ましくは0℃〜使用される溶媒の沸騰温度の間で変動しうる。数秒間〜数日間の間にある時間後に塩が製造された時に、結晶性生成物が沈殿し、それらは単離するかまたは濾過により収集することができ、次に冷たい(すなわち0℃〜25℃)有機溶媒(好ましくは結晶化段階用に使用されたものと同じ)で洗浄しそして最後に、好ましくは真空下で乾燥することができる。本発明に従う結晶化方法では、いずれかの方法により得られる、特に遊離塩基形態としての式(I)の化合物を使用することが可能である。有利には、遊離塩基形態としての式(I)の化合物は欧州特許第0453042号明細書に記載された製造方法により得られる。
【0013】
本発明に従う方法の特定の態様では、溶媒中のオカペリドンの濃度は好ましくは10〜200g/リットルである。オカペリドンの濃度は好ましくは飽和付近である。
【0014】
本発明の化合物の他の製造方法は、当業者により、普遍的な一般知識に基づきそして本出願に含まれる指針に従い設定できることを理解すべきである。
【0015】
特定の態様によると、本発明は式(II)のL−ピログルタミン酸付加塩に関する。式(II)の塩はこの化合物の全ての多形を包含する非晶質および/または結晶性形態でありうる。式(II)は以下の通りである:
【0016】
【化2】

【0017】
より具体的には、本発明はX−線回折計(DRX)リガク・ミニフレックス(Rigaku MiniFlex)(銅対陰極)を用いて測定されそして平面内距離d(Å)、ブラッグ角度2テータ(°)、強度(I)および相対強度(最強線の百分率として表示される=Io)により表示される粉末X−線回折図(以下の表(1)参照)により特徴づけられる式(II)の化合物の結晶性形態に関する。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
同様な方法で、オカペリドンのニコチン酸付加塩(式(III))も製造された。式(III)の塩はこの化合物の全ての多形を包含する非晶質および/または結晶性形態でありうる。式(III)は以下の通りである:
【0021】
【化3】

【0022】
より具体的には、式(III)の化合物の結晶性形態はX−線回折計(DRX)リガク・ミニフレックス(銅対陰極)を用いて測定されそして平面内距離d(Å)、ブラッグ角度2テータ(°)、強度(I)および相対強度(最強線の百分率として表示される=Io)により表示される粉末X−線回折図(以下の表(2)参照)により特徴づけられる。
【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
同様な方法で、オカペリドンの馬尿酸付加塩(式(IV))も製造された。式(IV)の塩はこの化合物の全ての多形を包含する非晶質および/または結晶性形態でありうる。式(IV)は以下の通りである:
【0026】
【化4】

【0027】
従って、オカペリドンのN−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸、ジグリコール酸、オロト酸、または粘液酸付加塩も製造された。該塩はこの化合物の全ての多形を包含する非晶質および/または結晶性形態でありうる。
【0028】
本発明は、また、少なくとも1種の以上で定義されたオカペリドン塩を製薬学的に許容可能な賦形剤または担体の中に、場合により別の活性剤と組み合わせて含んでなる製薬学的組成物にも関する。
【0029】
製薬学的組成物はより特に中枢または末梢神経系の疾病、特に精神病を包含する中枢神経系の疾病を処置することを意図する。この塩は、統合失調症、強迫疾患(OCD)、双極性鬱病、不安症、躁病、およびツレット症候群を包含する急性精神病を処置する際に特に有効である。この塩は、陽性および陰性症状を包含する統合失調症、例えばアネルギー、無関心、社会的閉じこもりおよび鬱気分を処置する際に特により有効であり、そして伝統的な神経弛緩薬、すなわちドーパミン拮抗物質を用いる維持療法中の錐体外路副作用の発生を減ずるようである。
【0030】
本発明は、また、中枢または末梢神経系の疾病の処置のための、特に以上で特定された疾病の処置のための製薬学的組成物の製造のための以上で定義されたオカペリドン塩の使用にも関する。
【0031】
本発明は、また、処置を必要とする患者に対する有効量の以上で定義されたオカペリドン塩の投与を含んでなる、中枢または末梢神経系の疾病、特に以上で特定されたような疾病を処置する方法にも関する。
【0032】
以上で示されたように、本発明の別の目的は少なくとも1種の以上で定義されたオカペリドン塩および製薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含んでなる製薬学的組成物に関する。
【0033】
化合物は、固体および液体形態を包含する種々の形態、例えば錠剤、ゲル剤、シロップ剤、散剤、エーロゾル剤などに調合することができる。オカペリドン塩は結晶性および/または非晶質形態のいずれかに調合することができる。
【0034】
本発明の組成物は生理学的に許容可能な希釈剤、充填剤、潤滑剤、賦形剤、溶媒、結合剤、安定剤などを含有できる。組成物中で使用できる希釈剤は燐酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、粉末糖、および長期放出錠剤用のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を包含するが、それらに限定されない。組成物中で使用できる結合剤は澱粉、ゼラチン並びに充填剤、例えばスクロース、グルコース、デキストロースおよびラクトースを包含するが、それらに限定されない。組成物中で使用できる天然および合成ゴム類はアルギン酸ナトリウム、ガッチガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびビーガム(veegum)を包含するが、それらに限定されない。組成物中で使用できる賦形剤は微結晶性セルロース、硫酸カルシウム、燐酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース、およびスクロースを包含するが、それらに限定されない。使用できる安定剤は多糖類、例えばアラビアゴム、寒天、アルギン酸、グアーゴムおよびトラガカント、アンフォトシック類(amphotsics)、例えばゼラチン並びに合成および半合成重合体、例えばカルボマー樹脂、セルロースエーテル類およびカルボキシメチルキチンを包含するが、それらに限定されない。使用できる溶媒はリンゲル溶液、水、蒸留水、水中50%までのジメチルスルホキシド、プロピレングリコール(未希釈または水中)、燐酸塩緩衝食塩水、均衡塩溶液、グリコールおよび他の一般的な流体を包含するが、それらに限定されない。
【0035】
本発明の塩を投与する際の薬用量および薬用量処方は、薬用量形態、投与方式、処置される症状および処置される患者の特徴に応じて変動するであろう。従って、最適な治療濃度は実験によりその時期にそしてその場所で最良に決められるであろう。
【0036】
本発明に従うオカペリドン塩は腸内経由で使用することもできる。必要な服用量は1回もしくはそれ以上の回数で投与することができる。経口投与に適する形態は、例えば、錠剤、ゲル剤、エーロゾル剤、丸剤、坐剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、液剤、散剤および粒剤であり、好ましい投与方法は1人の患者および1日当たり約0.01mg〜約1mgの活性物質を含有する適当な形態を用いることにある。
【0037】
本発明に従う化合物は非経口的に皮膚内、静脈内灌流または筋肉内注射用の液剤または懸濁剤の形態で投与することもできる。静脈内灌流の場合には、本発明に従う化合物は一般的に1日当たり(そして約1時間以内で灌流される)1kgの体重当たり約80ng〜1000ngの割合で投与され、好ましい投与方法は1ml当たり約0.25μg〜3μgの活性物質を含有する静脈液剤の使用よりなる。筋肉内注射の場合には、本発明に従う化合物は一般的には1日当たり1kgの体重当たり約0.6μg〜5μgの服用量で投与され、好ましい投与方法は約30μg〜300μgを含有する1mlの量を注射することであろう。
【0038】
本発明の化合物に関すると、投与される服用量、すなわち1回服用量、複数回服用量、または1日服用量、はもちろん選択される投与経路、受容体の大きさ、疾病のタイプおよび患者症状の性質に応じて変動するであろう。投与される薬用量は明確な拘束を受けないが、それは一般的に有効量またはその所望する薬理学的および生理学的効果を得るために活性薬品の代謝放出時に薬用量調剤から製造される薬理学的に活性な遊離形態のモル基準における同等物であろう。疾病の処置に関する熟練医師が面倒な実験なしに、本発明の化合物の有効投与に関する適切な処方を、例えば処置しようとする疾病に対する効果を有することが見出されている化合物に関するこれまでに発表された試験を参考にすることにより確定することができよう。一般に、活性成分の有効な抗精神病薬量は0.00002mg/kg〜約0.009mg/kgの体重、特に約0.0001〜約0.009mg/kgの体重、好ましくは約0.0003mg/kg〜約0.004mg/kgの体重、より好ましくは約0.0004mg/kg〜約0.002mg/kgの体重であることが意図される。必要な服用量は有利には1日当たり1回、2回、3回もしくはそれ以上の回数で適切な間隔をおいて投与できる。
【0039】
別の面によると、本発明は処置を必要とする温血動物、特に人間に有効量の上記のオカペリドン塩を投与することを含んでなる中枢または末梢神経系の疾病の処置方法に関する。
【0040】
本発明によると、処置という用語は治癒、対症、および予防処置を示す。そのようなオカペリドン塩、それらを含んでなる組成物、または処置は、単独で或いは他の活性成分、組成物または処置と組み合わされて実行される。さらに、それは慢性または急性疾患の処置に対応しうる。
【0041】
経口投与に適する本発明の調剤は、予め決められた量の活性成分を含有する分離している単位、例えばカプセル剤、カシェ剤または錠剤として、散剤または粒剤として、水性液体もしくは非−水性液体中の液剤または懸濁剤、或いは水中油滴型液体乳剤または油中水滴型乳剤として提供できる。
【0042】
場合により1種もしくはそれ以上の補助成分と共に、圧縮または成型することにより、錠剤を製造することができる。適当な機械の中で、場合により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑化剤、界面活性剤または分散化剤と混合された、自由流動性の、例えば散剤または粒剤の形態の活性成分を圧縮することにより、圧縮錠剤を製造することができる。適当な機械の中で、不活性液体希釈剤で湿らされた粉末状化合物の混合物を成型することにより、成型錠剤を製造することができる。錠剤をコーティングすることまたは刻み目を付けることができ、そして内部の活性成分の遅延または調節放出を与えるように調合することができる。
【0043】
非経口的投与用調剤は、酸化防止剤、緩衝剤、殺細菌剤および調剤を意図する受容体の血液と等張性にする溶質を含有しうる水性および非−水性の殺菌性液剤、並びに懸濁化剤および濃稠化剤を包含しうる水性および非−水性の殺菌性懸濁剤を包含する。調剤は単位−服用量または複数−服用量容器、例えば密封アンプルおよび瓶の中で提供することができ、そして使用直前に殺菌性液体担体、例えば食塩水または注射用水の添加だけを必要とする凍結−乾燥された(凍結乾燥された)状態で貯蔵することができる。
【0044】
特定の態様では、本発明の組成物は口腔内の例えば頬または舌下の如き局部的投与のために適切に調合される。この特定の態様では、本発明のオカペリドン塩は結晶性および/または非晶質形態であることができ、それはより好ましくは非晶質状態である。この頬または舌下調剤は、活性成分を香味ベース、例えばスクロースおよびアラビアゴムもしくはトラガカントの中に含んでなるロゼンジ錠、活性成分を例えばゼラチンおよびグリセリンもしくはスクロースおよびアラビアゴムの如きベースの中に含んでなるパスティル剤、または口腔内での活性成分の即時放出に適合するいずれかの他の形態を包含する。
【0045】
即席注射液剤および懸濁剤は、上記種類の殺菌性散剤、粒剤および錠剤から製造することができる。
【0046】
直腸投与用調剤は、一般的な担体、例えばココアバターまたはポリエチレングリコールを有する坐剤として提供することができる。
【0047】
本発明のオカペリドンの塩の相対的な非−吸湿性および高い溶解性のためにそれらは液体および固体形態での投与に特に適する。好ましい単位薬用量調剤は、ここでこれまでに挙げたような有効服用量またはその適当な分数量の活性成分を含有するものである。特に以上で挙げられた成分の他に、本発明の調剤は当該調剤のタイプに関連する技術において普遍的な他の剤を包含することができ、例えば経口投与に適するものは香味剤を包含しうる。
図面
図1:25℃の水中での(24時間)オカペリドン遊離塩基および塩の溶解度試験、g/ml。
【0048】
本発明を以下の実施例により説明する。しかしながら、それらは単に代表的なものでありそしていずれかについて限定用であると解釈すべきでない。
【実施例】
【0049】
粉末X−線回折スペクトルを以下の実験条件下で測定した:
回折計:リガク・ミニフレックス(Rigaku MiniFlex)
検知器SC−M:シンチレーター:NaI(T1)
ウィンドウ物質:Be
X−線発生器:銅対陰極(ラムダ=1,5405)
管出力電圧:30kV
管出力電流:15mA
Kβ抑制フィルター:Ni−フィルター
ゴニオメーター:走査軸:交錯されたθ/2θ
2θ走査範囲:−3°〜+150°
測定範囲:+3°〜+60°
基準角度:2θ=10°
拡散:4.2度
受容:0.3mm
走査速度:2.00秒
各測定間の増分:0.02度
実験データをミニフレックス・プログラム・マネジャー(MiniFlex Program Manager)バージョン3.1を用いて処理した。
【0050】
NMRスペクトルは300MHzにおいてブルーカー(Bruker)AV300器具上で重水素化された溶媒を用いて得られた。化学シフトは溶媒の内部標準(例えば、DOに関する4.79)に関してppmで示される。
【0051】
実施例1
オカペリドン琥珀酸塩の製造
100mg(0.237ミリモル)のオカペリドンおよび28mgの琥珀酸を15mlのエタノール/THF(9/1)溶液の中に溶解させた。沈殿した結晶性生成物を濾過し、冷たいエタノールで洗浄しそして乾燥した。このようにして得られたオカペリドン琥珀酸塩(1/1)は184−185℃において溶融する。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.83(d、1H)、7.90(dd、1H)、7.77(d、1H)、7.38(dd、1H)、7.30−7.15(m、2H)、3.82(広いd、2H)、3.64−3.52(m、1H)、3.37−3.29(m、3H)、3.23−3.14(m、2H)、2.58(s、3H)、2.53(s、3H)、2.46(s、4H)、2.46−2.38(m、2H)、2.33−2.18(m、2H)。式:C2831FNに関して計算された分析:C、62.44;H、5.54;N、11.09。実測値:C、62.24;H、5.80;N、11.40。
【0052】
実施例2
オカペリドンピログルタミン酸塩の製造
1g(2.37ミリモル)のオカペリドンおよび357mgのL−ピログルタミン酸を10mlの沸騰THFの中に溶解させた。沈殿した結晶性生成物を濾過し、冷たいTHFで洗浄しそして乾燥した。このようにして得られたオカペリドンピログルタミン酸塩(1/1)は173−175℃において溶融する。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.79(d、1H)、7.89(dd、1H)、7.74(d、1H)、7.35(dd、1H)、7.21(t、1H)、7.18(dt、1H)、4.06(dd、1H)、3.82(広いd、2H)、3.56(広いt、1H)、3.40−3.25(m、4H)、3.20−3.12(m、2H)、2.56(s、3H)、2.50(s、3H)、2.47−2.36(m、3H)、2.35−2.20(m、3H)、2.08−1.95(m、1H)。式:C2932FNに関して計算された分析:C、63.37;H、5.67;N、12.74。実測値:C、62.98;H、5.91;N、12.84。
【0053】
実施例3
オカペリドン酸フマル酸塩の製造
実施例1に従い、琥珀酸の代わりにフマル酸を使用して、オカペリドンフマル酸塩が単離された。融点=204−206℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.81(d、1H)、7.86(dd、1H)、7.74(d、1H)、7.36(d、1H)、7.25−7.10(m、2H)、6.56(s、2H)、3.80(広いs、2H)、3.54(広いs、1H)、3.35−3.25(m、4H)、3.17−3.07(m、2H)、2.54(s、3H)、2.50(s、3H)、2.46−2.34(m、2H)、2.29−2.12(m、2H)。式:C2829FNに関して計算された分析:C、62.68;H、5.45;N、10.44。実測値:C、62.21;H、5.77;N、11.25。
【0054】
実施例4
オカペリドン酒石酸塩の製造
実施例1に従い、琥珀酸の代わりに酒石酸を使用して、オカペリドン酒石酸塩が単離された。融点=200−202℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.79(d、1H)、7.83(m、1H)、7.75(d、1H)、7.36(d、1H)、7.25−7.10(m、2H)、4.32(s、4H)、3.85(広いs、2H)、3.52(広いs、2H),3.35−3.25(m、4H)、3.17−3.07(m、2H)、2.53(s、3H)、2.50(s、3H)、2.46−2.34(m、2H)、2.29−2.12(m、2H)。
【0055】
実施例5
オカペリドンN−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりにN−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸を使用して、オカペリドンN−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸塩が単離された。融点=184−186℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.80(d、1H)、7.86(dd、1H)、7.73(m、2H)、7.34(dd、1H)、7.26−7.10(m、3H)、6.54−6.43(m、2H)、3.74(広いs、2H)、3.66(s、2H)、3.50(広いs、1H)、3.17−3.07(m、2H)、2.53(s、3H)、2.48(s、3H)、2.43−2.32(m、2H)、2.25−2.13(m、2H)。式:C3334FNに関して計算された分析:C、64.38;H、5.57;N、11.38。実測値:C、64.10;H、5.38;N、12.13。
【0056】
実施例6
ジグリコール酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりにジグリコール酸を使用して、オカペリドンジグリコール酸塩が単離された。融点=158−160℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.91(d、1H)、7.97(dd、1H)、7.85(dd、1H)、7.35−7.23(m、2H)、4.09(s、4H)、3.96(広いs、2H)、3.63(広いs、1H)、3.43−3.36(m、4H)、3.29−3.22(m、2H)、2.64(s、3H)、2.61(s、3H)、2.57−2.46(m、2H)、2.37−2.22(m、2H)。式:C2831FNに関して計算された分析:C、60.64;H、5.63;N、10.10。実測値:C、61.26;H、5.22;N、10.46。
【0057】
実施例7
オカペリドン粘液酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりに粘液酸を使用して、オカペリドン粘液酸塩が単離された。融点=180−182℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.81(d、1H)、7.87(dd、1H)、7.76(d、1H)、7.38(dd、1H)、7.23(t、1H)、7.18(dt、1H)、4.15(s、1H)、3.86(s、1H)、3.84(広いs、2H)、3.55(広いs、1H)、3.33−3.26(m、2H)、3.18−3.10(m、2H)、2.56(s、3H)、2.51(s、3H)、2.46−2.35(m、2H)、2.27−2.09(m、2H)。
【0058】
実施例8
オカペリドンオロト酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりにオロト酸を使用して、オカペリドンオロト酸塩が単離された。融点=245−246℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.80(d、1H)、7.87(dd、1H)、7.77(d、1H)、7.38(dd、1H)、7.25(t、1H)、7.18(広いt、1H)、6.04(s、1H)、3.75(広いs、2H)、3.53(広いs、1H)、3.18−3.10(m、2H)、2.55(s、3H)、2.51(s、3H)、2.45−2.35(m、2H)、2.26−2.10(m、2H)。
【0059】
実施例9
オカペリドン馬尿酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりに馬尿酸を使用して、オカペリドン馬尿酸塩が単離された。融点=163−165℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.77(d、1H)、7.82(dd、1H)、7.76(m、2H)、7.62(d、1H)、7.41(m、1H)、7.37−7.29(m、3H)、7.13−7.06(m、2H)、3.87(s、1H)、3.59(広いd、2H)、3.37(m、1H)、3.04(s、4H)、2.94(t、2H)、2.50(s、3H)、2.47(s、3H)、2.26(dd、2H)、2.20−2.06(m、2H)。
【0060】
実施例10
オカペリドンニコチン酸塩の製造
実施例2に従い、L−ピログルタミン酸の代わりにニコチン酸を使用して、オカペリドンニコチン酸塩が単離された。融点=160−161℃。H NMR(300MHz、CDOD+DO):8.93(d、1H)、8.82(d、1H)、8.53(dd、1H)、8.22(広いd、1H)、7.92(dd、1H)、7.75(d、1H)、7.44(t、1H)、7.40(dt、1H)、7.23(t、1H)、7.17(dt、1H)、3.89(広いs、2H)、3.61(広いs、1H)、3.45−3.33(m、3H)、3.26−3.17(m、2H)、2.62(s、3H)、2.49(s、3H)、2.47−2.40(m、2H)、2.38−2.23(m、2H)。
【0061】
実施例11
非晶質塩の製造のための一般的工程
オカペリドン(0.5ミリモル)および所望する酸(0.5ミリモル)の1:1混合物を8mlの水および2mlのTHFの中に加えて均質な溶液を得た。得られた混合物を冷浴(−78℃)の中で凍結させそしてそのまま一晩にわたり凍結乾燥して白色固体を得た。
【0062】
実施例12
オカペリドン塩の水中溶解度
実施例2のオカペリドンピログルタミン酸塩は実施例1、3−10に記載された他の塩およびオカペリドン遊離塩基より高い水中溶解度を示す。特に、オカペリドン塩の溶解度は以下の通りにして測定された:
紫外線/可視分光計:Agilent 8453E
秤:Mettler Toledo AX205
メスフラスコ(5ml、10ml、20ml、100ml)
機械的ピペット:Biohit(m1000, m200)
サーモスタット:Lauda E112T
磁気スタラー:Heidolph MR3001K
【0063】
100mgの結晶性オカペリドン塩またはオカペリドン遊離塩基の1mlのHPLC等級純水(pH=6)中懸濁液を製造した。懸濁液を一定な且つ調節された温度(例えば:25℃)に24時間にわたり磁気撹拌下で保った。試料を採取し、濾過しそしてオカペリドン塩またはオカペリドン遊離塩基の溶解度を1時間および24時間後に測定した。結果はg/100mlで示される。
【0064】
得られた結果は図1に表示される。これらの結果はオカペリドンピログルタミン酸塩の予期せぬほど高い溶解度を示している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は25℃の水中での(24時間)オカペリドン遊離塩基および塩の溶解度試験、g/mlである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸部分がピログルタミン酸、N−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸、ジグリコール酸、オロト酸、粘液酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択されるオカペリドン(ocaperidone)の塩。
【請求項2】
該塩の全ての多形を包含する、非晶質および/または結晶性形態の請求項1に記載の塩。
【請求項3】
酸部分が、存在するなら、D−、L−形態またはそれらの混合物である請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
酸部分がピログルタミン酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択される前記請求項のいずれか1項に記載の塩。
【請求項5】
下記式(II):
【化1】

のオカペリドンのL−ピログルタミン酸付加塩。
【請求項6】
請求項1〜5の1項で定義された少なくとも1種の塩および製薬学的に許容可能な賦形剤または担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
中枢または末梢神経系の疾病、特に精神病を包含する中枢神経系の疾病を処置することを意図する請求項6に記載の製薬学的組成物。
【請求項8】
統合失調症、強迫疾患(OCD)、双極性鬱病、不安症、躁病またはツレット症候群を処置することを意図する請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項9】
頬または舌下調剤に適する請求項6〜8のいずれか1項に記載の製薬学的組成物。
【請求項10】
オカペリドン、並びにピログルタミン酸、N−(2−カルボキシフェニル)−グリシン酸、ジグリコール酸、オロト酸、粘液酸、ニコチン酸および馬尿酸から選択される有機酸の、好ましくは化学量論的割合での、そして有利には有機溶媒中への、溶解、並びに得られる塩の単離を包含する請求項1〜5のいずれかで定義された塩の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−531544(P2008−531544A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556684(P2007−556684)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000688
【国際公開番号】WO2006/090285
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】